説明

接地電極に装着された貴金属パッドを有する点火プラグおよびその製造方法

【課題】接地電極の良好な熱管理および接地電極の強化された局所的「磨耗」保護による、点火プラグの耐久性の改善をもたらす。
【解決手段】点火プラグは、接地電極を有し、貴金属パッドが一連の溶接ステップを通して接地電極に溶接される。貴金属パッドは、接地電極の側面に、以下の装着プロセスを通して装着される、Ptベースのパッドである。この装着プロセスは、最初にパッドを適所に固定する抵抗タック溶接と、このパッドを平坦にするコイニングステップと、接地電極に対するパッドの永久的な溶接を形成する第2の抵抗溶接と、抵抗溶接を封止する、パッドの露出した周囲におけるレーザキャップ溶接とを含む。レーザキャップ溶接は、重なり合う多数の溶接スポットを含み、これらのスポットが、パッドの放電面にまたはその直下にある環状の溶接ビードを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般的には内燃機関において使用される点火プラグに関し、より具体的には接地電極の側面に装着された貴金属パッドを有する点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
当該技術では、点火プラグ電極の寿命を、その点火端に、さまざまな種類の貴金属のチップの構造を装着することによって延ばすことが、知られている。この技術の最も初期の例のうちいくつかは、Hellerに対する1942年9月15日に発行された米国特許第2,296,033号およびPowell他に対する1938年に公開された英国特許明細書第479,540号に見られる。これら引用文献に開示された貴金属チップは、プラチナ、プラチナ−ロジウム、プラチナ−イリジウムおよびプラチナ−ルテニウムなどのプラチナ合金、イリジウム、イリジウム−ロジウムなどのイリジウム合金、ルテニウム、オスミウムおよびこれらの合金を含む、耐食性材料からなる。
【0003】
さらに、貴金属チップを装着するためのさまざまな方法、技術および動作パラメータも、開発されて長年にわたり利用されている。使用される特定の材料またはチップ構造は、どの装着技術または方法が最も有効かに影響し得る。これらの方法のいくつかの例は、以下の、Chiu他に対して発行された米国特許第5,558,575号、Eves他に対して発行された米国特許第5,179,313号およびMatsutaniに対して発行された米国特許第
6,304,022号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2,296,033号
【特許文献2】英国特許明細書第479,540号
【特許文献3】米国特許第5,558,575号
【特許文献4】米国特許第5,179,313号
【特許文献5】米国特許第6,304,022号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の1つの局面に従い、点火プラグが提供され、この点火プラグは、シェルと、絶縁体と、中心電極を有する中心ワイヤアセンブリと、側面を有する接地電極と、火花面、直径および厚みを有する貴金属パッドとを含む。貴金属パッドは、溶接ビードを用いて、接地電極の側面に装着される。この溶接ビードは、貴金属パッドを円周方向において取囲むとともに、重なり合う溶接スポットの内径(I)、外径(J)および深さ(G)に全体的に関連する特徴を含む。
【0006】
本発明の別の局面に従い、点火プラグが提供され、この点火プラグは、接地電極と、プラチナベースの貴金属パッドとを含み、接地電極の厚み(B)および幅(C)と、貴金属パッドの直径(E)および厚み(K)とに全体的に関連する特徴を含む。
【0007】
本発明のさらに他の局面に従い、貴金属パッドを接地電極の側面に装着する方法が提供される。この方法は、第1および第2の抵抗溶接ステップと、コイニングステップと、レーザ溶接ステップとを含む。
【0008】
本発明の目的、特徴および利点は、特に、接地電極用の貴金属パッド、および、点火プラグ電極の耐久性を高める寸法上の特徴の組合せを有する、改良された点火プラグを提供することを含むが、これに限定されるわけではない。
【0009】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付の図面との関連で説明する。図中、同じ
参照符号は同じ構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】接地電極に装着された貴金属パッドを有する点火プラグの部分切断図を示す。
【図2】図1の点火プラグの軸方向下端の拡大図を示す。
【図3】装着方法の実施例の動作ステップを示すフローチャートである。
【図4】図3に示される装着方法に従い接地電極に装着された貴金属パッドの正面図を示す。
【図5】図4の貴金属パッドおよび接地電極の切断図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施例の詳細な説明
図1を参照して、浸食および/または腐食の効果を最小限にすることによって点火プラグの動作寿命をさらに延ばすために、貴金属部品を中心電極および接地電極双方に用いる、点火プラグの実施例が示される。この特定の実施例に従うと、点火プラグ10は一般的に、シェル12と、絶縁体14と、中心ワイヤアセンブリ16と、貴金属チップ18と、接地電極20と、貴金属パッド22とを含む。
【0012】
当該技術では一般に知られているように、シェル12は、好ましくは、その軸を中心として概ね対称となるようにその軸方向の長さに沿って延びる中空のボアを有する金属部品である。そのボアの中には、絶縁体の直径に沿って拡大する部分を支持するように大きさが定められた一連の円周方向のショルダがある。絶縁体14は、細長い中心ボアを備えた概ね円筒形の部品であるが、絶縁体は、その名の通り、一般に非導電性の材料から作られる。絶縁体14の軸方向下側の端部は、好ましくはシェル12の最下部からこの最下部を超えて延びるノーズ部分を形成する。絶縁体の軸方向のボアは、高電圧点火パルスを点火リード線から点火ギャップに伝える、伝導性絶縁コアとも呼ばれる中心ワイヤアセンブリ16を受け入れるように設計される。好ましくは、中心ワイヤアセンブリ16は、点火プラグの軸方向の全長にわたって延び、一般に、点火リード線と結合するための端子電極30と、1つ以上の伝導性および/または抑制シール32と、無線周波干渉(RFI)などの電磁放射を減じるための抵抗素子34と、貴金属チップ18を支えるための中心電極36とを含む。貴金属チップ18は、好ましくはIrRhなどのイリジウムベースの合金から作られるが、必ずしもこれに限定されない。貴金属チップは、中心電極36の最下部または点火端に装着される。ここに示される中心ワイヤアセンブリ16は、単に一般的な中心ワイヤ部品の組合せの例を示したものであり、他の組合せも多数存在する。
【0013】
接地電極20は、シェル12の軸方向下端に機械的および電気的に接続され、概ねL字型の構成で曲げられている。中心電極および接地電極36、20の対向する表面にはそれぞれ、貴金属チップ18および貴金属パッド22があり、これらが点火ギャップ24を形成する。ある好ましい実施例に従うと、点火ギャップ24の寸法(A)は、0.5mm以上1.5mm以下である。貴金属部品は、従来の電極材料よりも、電気的腐食、酸化および化学的浸食に対する耐性が高い火花または放電面を提供することにより、点火プラグの動作寿命を延ばす。点火プラグ10についての上記説明は、例示を目的としたものであり、ここに開示されている装着方法は、任意の数の異なる点火プラグ実施例のうち1つに対して利用できるが、上記特定の実施例に限定されるものではない。
【0014】
具体的に図2、図4および図5を参照して、接地電極20は、高電圧点火パルスを電気的に運ぶとともに、点火ギャップ24近くの火花面から熱を運び熱を逃がす。接地電極は概ねL字型の構成で曲げられ、好ましくは、シェル12の下面に接続された装着端40と、自由端42と、貴金属パッド22を受ける側面44と、銅またはそれ以外の熱伝導性コア46と、インコネル600/601などのニッケルベースの材料とすることができるクラッド材料48とを含む。図面からわかるように、銅のコア46は、装着端40と自由端42との間の接地電極の長さ全体にわたって延びているのではなく、好ましくは、パッド22の近傍において、パッドの下またはパッドの少し手前の位置で終端をなす。これに代えて、接地電極を、銅またはそれ以外の種類のコアなしで、単に電極材料から作られたものであってもよい。接地電極22は、円形、正方形、矩形またはそれ以外の断面を有してもよく、示されているような直線状で四角形の自由端42、または先細りになった自由端(図示せず)を含んでもよい。接地電極20は、電極の厚み(B)0.75mm以上2.25mm以下、電極の幅(C)2mm以上4mm以下、銅のコア46と自由端42との間
の距離(D)1mm以上5mm以下という、寸法に関する特徴を有することが望ましい。寸法(B)が1mm以上1.75mm以下、寸法(C)が2.25mm以上3.25mm以下、寸法(D)が2mm以上4mm以下であることが、より好ましい。なお、ここに示した範囲のすべておよびこの明細書の他の部分で示される範囲は、上限および下限双方を含むことに注意されたい。
【0015】
貴金属パッド22は、接地電極の寿命を延ばすように、点火ギャップ24の領域における接地電極の側面44に装着される。好ましくは、貴金属パッドは、プラチナ−ニッケル(Pt−10Ni)またはプラチナ−タングステンなどのプラチナベースの合金から作られる。プラチナ−ニッケル合金の場合、ニッケルの量は1−15%wtであることが好ましい。イリジウム、イリジウム合金、パラジウム合金等といった他の貴金属を使用してもよい。図2に示される完成した実施例では、貴金属パッド22は概ね、接地電極の側面44からわずかな大きさ突出しただけの平坦な円筒形のパッドである。貴金属パッド22の上面または露出した面は、貴金属チップ18の下面または露出した面と点火ギャップ24を形成する、火花または放電面である。図面から明らかにわかるように、貴金属パッド22の直径は、対向する貴金属チップ18の直径より大きいことが好ましい。さらに、貴金属パッド22が、接地電極20に装着された後の状態で、直径(E)が0.5mm以上2mm以下、側面44からの突出距離(F)が0mm以上0.5mm以下、貴金属パッドの厚み(K)が0.025mm以上0.75mm以下という、寸法上の特徴を有することが望ましい。寸法(E)が1mm以上1.5mm以下、寸法(F)が0.05mm以上0.15mm以下、寸法(K)が0.15mm以上0.35mm以下であることが、より好ましい。
【0016】
当業者にはわかるように、点火プラグ部品の寸法上の特徴は、それら単独でも、他の部品と組み合わされた場合でも、プラグの性能、耐久性および生産性に影響し得るだけでなく、点火プラグアセンブリが使用される応用例に影響する。少し例を挙げれば、寸法の選択の結果生じる影響である。たとえば、銅のコア46と接地電極の自由端42との間の距離(D)といった、熱伝導コアの長さおよび位置に関連する寸法は、点火プラグのその点火端近くでの熱伝導特性に影響し得る。点火プラグの点火端の部品の熱伝導性は、結果として、先に説明したように点火プラグの耐久性および性能に影響し得る。さらに、貴金属パッド22の直径(E)および点火ギャップ24の距離(F)は、点火ギャップにおいて生じる火花の強さおよび性質に影響を与えることが可能な2つの寸法の例である。したがって、これらの寸法の選択は、性能に関する問題を考慮して行なわれることが多い。ここでは述べられていない他の考慮すべきことも、存在し、点火プラグの部品の設計、より具体的には点火プラグの部品の寸法の選択に、関与する。これを考慮した実験から、いくつかの寸法の組合せが有利な結果を示すことがわかった。
【0017】
有利な結果を生み出すこのような寸法の組合せの1つは、点火プラグの接地電極の厚み(B)が0.75mm以上2.25mm以下、接地電極の幅(C)が2mm以上4mm以下、貴金属パッドの直径(E)が貴金属チップ18の直径より大きく0.5mm以上2mm以下、貴金属パッドの厚み(K)が0.025mm以上0.75mm以下である。この組合せは、貴金属パッドの極近傍における、接地電極の良好な熱管理および接地電極の強化された局所的「磨耗」保護による、点火プラグの耐久性の改善をもたらす。
【0018】
次に図3を参照して、貴金属パッド22を接地電極の側面44に装着するためのいくつかのステップを含む、装着方法の実施例を示すフローチャートが示される。まずステップ100において、貴金属材料の塊が最初に、タック溶接を形成するように、第1の組の抵抗溶接パラメータに従い、接地電極20の側面44に抵抗溶接される。「タック溶接」は広く、貴金属の塊を適所で全体的に支えるのに十分な強度を有する半永久的なすべての溶接を含むものと定義されるが、その強度は典型的にはさらなる溶接によって増す。好まし
い実施例に従うと、直径約0.75mmのPt−10Ni材料の球面体が、第1の組の抵抗溶接パラメータに従い、側面44に抵抗溶接される。これらのパラメータは、好ましくは13kgf−23kgfの量の力を加えること、および、600amp−1500ampの量の電流を2−4周期(60Hzで概ね33−67msの間)、印加することを含む。ステップ100の間に形成されるタック溶接は、抵抗溶接プロセスのためにいくぶん平坦化され変形した貴金属の塊を、この装着プロセスの残りを通し、適所で保持する。もちろん、貴金属の塊が球面形状を有する必要はなく、多数の他の非球面形状を用いてもよいことが理解されるはずである。
【0019】
次に、ステップ102において、タック溶接された貴金属の塊を、貴金属パッド22が形成されるようにコイニングする。ここでも、コイニング力を含む、コイニングプロセスを成功させるために使用可能な多数の動作パラメータがあるが、これはコイニング力に限定されるわけではない。予め定められた力によって貴金属の塊をコイニングする代わりに、所望の形状および大きさのコイニングされた物体を生み出すコイニング力を選択する。過剰な力の使用は避けねばならない。なぜなら、このような力は、単純に貴金属パッド22をコイニングする代わりに、寸法(B)および(C)を含め接地電極20の寸法を変形し得るからである。このコイニング動作の結果、全体的に平坦な貴金属パッド22となり、貴金属パッドの表面は全体的に滑らかで傷がない。先に述べたように、コイニングされた貴金属パッドは、接地電極の側面44から、距離(F)だけ突出するはずである。
【0020】
このコイニング動作に続き、好ましくは第2の抵抗溶接ステップ104が、貴金属パッド22と接地電極の側面44との結合をさらに強化するために行なわれる。この第2の抵抗溶接ステップは、第2の組の動作パラメータに従って行なわれ、これは、好ましくは、18kgf−28kgfの量の力を加えること、および、800apm−1650ampの量の電流を2−5周期(60Hzで概ね33−83msの間)印加することとを含む。どのような特定の動作パラメータが使用されても、第2の組の抵抗溶接パラメータが、第1の組の抵抗溶接パラメータより大きな力および/または電流の量を含むことにより、貴金属パッド22と接地電極20との間に永久的な溶接を形成することが望ましい。ステップ100−104を実行することにより、貴金属パッド22の直下にある電極材料の密度が増すが、電極材料がパッドの周辺において目に見えるように突出することはないはずである。第2の組の抵抗溶接パラメータに従って貴金属パッド22が側面44に抵抗溶接されると、手動または自動検査が行なわれ、過剰な溶接フラッシュ、貴金属パッドの位置決めの偏心、パッド面に角度がつくこと、接地電極のバリなどが、生じないようにする。
【0021】
次に、レーザ溶接ステップ106は、1つ以上のレーザを用い、貴金属パッド22の周囲を囲む溶接ビード60を作ることにより、パッドと接地電極との間の結合をさらに強化する。特に図4および図5を参照して、接地電極の側面44にレーザ溶接されている貴金属パッド22が示される。溶接ビード60は、重なり合うスポット溶接62からなる1つのビードを含み、このビードは、貴金属パッド22を接地電極20に固定するだけでなく、これら2つの部品間の界面を封止することにより抵抗溶接が酸化しないように、さもなければ劣化しないようにする。好ましい実施例に従うと、シングルパルスNd−YAGレーザを、1組のレーザ溶接パラメータに従って動作させる。これは、15−45個のスポット溶接62が形成されるように、レーザに、0.75J/パルス−1.5J/パルスの量のエネルギを、60Hz−100Hzのパルス周波数で与えることを含む。実験は、これらレーザ溶接パラメータは、特に貴金属パッドがPtベースの合金からなり接地電極がNiベースの合金であるとき、貴金属パッドを接地電極に保持するとともにこれらの間の領域を封止することができる、溶接ビード60を生み出すのに特に適することを示している。レーザ放射中、レーザビームは、好ましくは側面44に対し概ね垂直に保たれる。電極のアンダーカットを避けようとする場合において、貴金属パッド22の火花面が側面44と平行でないときは、少量の角度のずれは許容可能であるが、この概ね垂直な方向付け
は保たれねばならない。上記好ましいレーザ溶接ステップでは1つのレーザが使用されるが、代わりに、溶接ビード60を作るために複数のレーザを用いることが可能であることは注目に値する。
【0022】
溶接ビード60は、環状またはリング状の溶接であり、貴金属パッド22を同心で取囲み、多数の個々のスポット溶接62からなる。好ましい実施例において、溶接ビード60は、貴金属パッドを円周方向において取囲む完全な円を形成するが、溶接ビード60が、貴金属パッド22の周囲の周りで角度で分離された重なり合わない多数の溶接スポット62を含むことも可能である。各溶接スポット62は、側面44およびパッド22を上から見たときに(図4)概ね円形状の溶接プールを有し、軸方向の大きさでは概ね先細りの形状を有する(図5)。この先細りの形状により、スポット溶接62の上部分66の幅は、このスポット溶接の下部分68の幅よりも大きいため、スポット溶接にアンダーカットはない。言い換えると、スポット溶接62は、上部分66から下部分68に向かい着実に幅が狭くなる。また、図5から明らかにわかるように、スポット溶接62は、貴金属パッド22の深さ(K)を上回る深さ(G)だけ、接地電極20の中に延びる。これは、密な溶接の形成を促進し、貴金属パッドが意図に反してずれないようにする。好ましい実施例に従うと、溶接ビード60は次の寸法を含む。溶接スポット直径(H)が0.3mm以上0.8mm以下、溶接ビード内径(I)が貴金属パッド直径(E)より小さく0.5mm以上1mm以下、溶接ビード外径(J)が貴金属パッド直径(E)より大きく1.0mm以上2.5mm以下、溶接ビード深さ(G)が貴金属パッドの厚み(K)より大きく0.25mm以上0.75mm以下である。寸法(H)が約0.5mm、寸法(I)が0.65mm以上0.85mm以下、寸法(J)が1.5mm以上2.0mm以下であることが、より好ましい。内径(I)には特別に注意しなければならない。なぜなら、これがもし小さすぎると、貴金属火花面の面積は、十分でむらのない火花を確実に生じさせるには不十分だからである。
【0023】
先に説明したように、特定の、実験でテストした、いくつかの寸法の組合せを用いることは、点火プラグの性能、耐久性および生産性に影響し得る。たとえば、溶接ビードの内径および外径(I)、(J)、溶接スポットの直径(H)、溶接ビード深さ(G)ならびに貴金属パッドの厚み(K)に関する寸法の異なる組合せは、貴金属パッド22を接地電極20に装着する結合の強度および耐久性に影響し得るものであり、したがって点火プラグ10の総寿命に影響し得る。有利な結果をもたらした、寸法の1つの組合せは、貴金属パッドの直径(E)が0.5mm以上2mm以下で、溶接ビードの内径(I)が0.5mm以上1mm以下、外径(J)が1.0mm以上2.5mm以下の、点火プラグに向けられている。もう1つの、実験でテストした寸法の組合せは、溶接スポットを有する溶接ビードで貴金属パッドを接地電極に装着した点火プラグを含み、各溶接スポットの直径(H)が0.3mm以上0.8mm以下、溶接ビードの深さ(G)が0.25mm以上0.75mm以下である。これらの寸法の組合せは、点火プラグの耐久性、より具体的には貴金属チップと接地電極との間の結合の強度および頑丈さを改善し、特にPtベースの合金から作られた貴金属パッドの装着に適している。
【0024】
本実施の形態の点火プラグは、内燃機関において使用される点火プラグであって、軸方向のボアを有するシェルと、中心ボアを有し前記シェルの軸方向のボアの中で少なくとも部分的に位置する絶縁体と、前記絶縁体の中心ボアを通して延在する中心ワイヤアセンブリとを備え、前記中心ワイヤアセンブリは中心電極を含み、前記点火プラグはさらに、装着端、自由端および側面を有する接地電極を備え、前記接地電極は、前記自由端に隣接する前記側面の一部が前記中心電極の点火端に対向して位置するように、前記シェル側の前記装着端から前記自由端まで延在し、前記点火プラグはさらに、火花面、直径(E)および厚み(K)を有する貴金属パッドを備え、前記貴金属パッドは、溶接ビードを介して前記接地電極の側面の前記一部に溶接され、前記溶接ビードは、i)前記溶接ビードは前記貴金属パッドを全体的に円周方向において取囲み、ii)前記溶接ビードの内径(I)は前記貴金属パッドの直径(E)より小さく、iii)前記溶接ビードの外径(J)は前記貴金属パッドの直径(E)より大きく、iv)前記溶接ビードは重なり合う複数の溶接スポットを含み、v)前記溶接スポットは各々前記貴金属パッドの厚み(K)より全体的に大きい溶接ビード深さ(G)を有するという、特徴を有する。
【0025】
また、上記の点火プラグは、前記中心電極は、前記点火端に装着された貴金属チップを有し、前記貴金属チップは、IrまたはIrベースの合金を含み、前記貴金属パッドはPtまたはPtベースの合金を含んでいてもよい。
【0026】
また、前記貴金属パッドは、量が1%wt以上15%wt以下のNiを有するPtNi合金を含んでいてもよい。
【0027】
また、上記の点火プラグは、前記溶接ビードは、前記貴金属パッドを、円周方向において取囲むので、前記貴金属パッドと前記接地電極の側面との間の界面は封止されてもよい。
【0028】
また、上記の点火プラグは、前記溶接スポットは各々、全体的に円形状であり、アンダーカットを有することのないよう、上部分から下部分にかけて先細りになってもよい。
【0029】
また、上記の点火プラグは、前記貴金属パッドを前記側面に装着することにより、前記貴金属パッドの直下にある電極材料の密度は増すが、前記貴金属パッドの周囲において前記電極材料の目に見える表面突出は生じないものである。
【0030】
また、上記の点火プラグは、前記貴金属パッドの直径(E)は0.5mm以上2mm以下、前記溶接ビードの内径(I)は0.5mm以上1mm以下、前記溶接ビードの外径(J)は1.0mm以上2.5mm以下であってもよい。
【0031】
また、上記の点火プラグは、前記溶接スポット各々の直径(H)は0.3mm以上0.8mm以下、溶接ビードの深さ(G)は0.25mm以上0.75mm以下であってもよい。
【0032】
また、上記の点火プラグは、前記溶接ビードは、15個以上45個以下の、前記重なり合う溶接スポットを含んでいてもよい。
【0033】
また、上記の点火プラグは、前記接地電極はさらに、熱伝導性コアおよび金属クラッドを含み、前記コアは、前記接地電極の前記自由端から、1mm以上5mm以下の距離(D)だけ、間隔が置かれていてもよい。
【0034】
また、上記の点火プラグは、前記貴金属パッドは、前記側面から、0mm以上0.5mm以下の突出距離(F)だけ延在していてもよい。
【0035】
また、前記貴金属パッドは、前記接地電極の側面に、以下のステップを含むプロセスに従い装着され、このステップとは、貴金属の塊を前記接地電極に抵抗溶接するステップと、貴金属パッドが形成されるように前記貴金属の塊をコイニングするステップと、前記貴金属パッドを前記接地電極に抵抗溶接するステップと、前記貴金属パッドを前記接地電極にレーザ溶接するステップとであってもよい。
【0036】
本実施の形態の点火プラグは、内燃機関において使用される点火プラグであって、軸方向のボアを有するシェルと、中心ボアを有し前記シェルの軸方向のボアの中で少なくとも部分的に位置する絶縁体と、前記絶縁体の中心ボアを通して延在する中心ワイヤアセンブリと、側面、厚み(B)および幅(C)を有する接地電極と、前記接地電極の側面に装着され、直径(E)および厚み(K)を有するPtまたはPtベースの貴金属パッドとを備え、前記接地電極および前記貴金属パッドは、好ましくは、i)前記接地電極の厚み(B)が0.75mm以上2.25mm以下、ii)前記接地電極の幅(C)が2mm以上4mm以下、iii)前記貴金属パッドの直径(E)が0.5mm以上2mm以下、(iv)前記貴金属パッドの厚み(K)が0.025mm以上0.75mm以下という特徴を有する。
【0037】
また、本実施の形態の方法は、貴金属パッドを点火プラグの接地電極の側面に装着するための方法であって、(a) 接地電極に側面を与えるステップと、(b) 貴金属の塊を与えるステップと、(c) 前記貴金属の塊を、前記側面に、第1の組の抵抗溶接パラメータに従って抵抗溶接するステップと、(d) 貴金属パッドを形成するように前記貴金属の塊をコイニングするステップと、(e) 前記貴金属パッドを、前記側面に、第2の組の抵抗溶接パラメータに従って抵抗溶接するステップとを含み、前記第2の組のパラメータは、前記第1の組のパラメータよりも大きな量の力および/または電流を含み、(f) 前記貴金属パッドの周囲の少なくとも一部を、前記側面に、レーザ溶接するステップとを含んでいる。
【0038】
また、前記貴金属は、量が1%wt以上15%wt以下のNiを有するPtNi合金であってもよい。
【0039】
また、前記ステップ(b)はさらに、Ptベースの貴金属の球形の塊を与えることを含んでいてもよい。
【0040】
また、前記第1の組の抵抗溶接パラメータは、タック溶接が形成されるように、13kgf−23kgfの間の力および600amp−1500ampの間の電流を加えることを含んでいてもよい。
【0041】
また、前記第2の組の抵抗溶接パラメータは、永久的な溶接が形成されるように、18kgf−28kgfの間の力および800amp−1650ampの間の電流を加えることを含んでいてもよい。
【0042】
また、前記ステップ(c)における抵抗溶接により、前記貴金属の塊と前記接地電極との間にタック溶接が作られ、前記ステップ(e)における抵抗溶接により、前記貴金属パッドと前記接地電極との間に永久的な溶接が作られてもよい。
【0043】
また、前記ステップ(f)はさらに、15個−45個のスポット溶接が形成されるように、0.75J/パルス−1.5J/パルスを、周波数60Hz−100Hzで与えることを含む、1組のレーザ溶接パラメータに従ってレーザ溶接することを含んでいてもよい。
【0044】
また、前記レーザ溶接ステップ(f)はさらに、前記貴金属パッドを円周方向において取囲み、外径(J)1.0mm以上2.5mm以下で内径(I)0.5mm以上1mmの、溶接ビードを形成することを含んでいてもよい。
【0045】
また、前記レーザ溶接ステップ(f)はさらに、重なり合う複数の溶接スポットを有する溶接ビードを形成することを含み、前記溶接スポットは各々、直径(H)0.3mm以上0.8mm以下、溶接深さ(G)0.25mm以上0.75mmであってもよい。
【0046】
上記説明は、本発明自体の説明ではなく、本発明の好ましい1つ以上の代表的な実施例の説明であることが理解されるべきである。本発明は、ここに開示される特定の実施例に限定されるのではなく、請求の範囲によってのみ規定される。さらに、上記説明に含まれる表現は、特定の実施例に関連し、ある用語または表現が上記説明で明確に定義されている場合を除き、発明の範囲に対するまたは請求の範囲で使用される用語の定義に対する限定であると解釈されるべきではない。他のさまざまな実施例および開示された実施例に対するさまざまな変更および変形は、当業者には明らかになるであろう。たとえば、図3の第2の抵抗溶接を、コイニングステップとともに、1つの動作で実施することができる。また、ここで教示される装着方法を、貴金属チップ18を、特にこれがPt−またはPt
合金ベースのチップの場合、中心電極の点火端に装着するのに用いることが可能である。すなわち、上記装着方法は、貴金属チップおよび/またはパッドを、中心電極または接地電極に装着するのに使用できる。このような他の実施例、変更および変形は、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【0047】
この明細書および特許請求の範囲で使用される、「たとえば」、「例として」、「など」といった用語、「備える」、「有する」、「含む」といった動詞、およびこれら動詞の他の形は、各々、1つ以上の構成要素または他のアイテムを列挙したものとともに用いられる場合、列挙したものは他の追加の構成要素またはアイテムを除外しないことを意味する、オープンエンドと解釈されるべきである。「約」など、程度の用語は、特定された寸法または他の数値のみならず、その数値が関連する特徴または応用例に実質的な影響を与えない変化も含む。その他の用語は、異なる解釈を要求するような文脈で用いられるのでない限り、その用語の最も広い妥当な意味を用いて解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
10 点火プラグ、12 シェル、14 絶縁体、16 中心ワイヤアセンブリ、18 貴金属チップ、20 接地電極、22 貴金属パッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において使用される点火プラグであって、
軸方向のボアを有するシェルと、
中心ボアを有し前記シェルの軸方向のボアの中で少なくとも部分的に位置する絶縁体と、
前記絶縁体の中心ボアを通して延在する中心ワイヤアセンブリと、
側面、厚み(B)および幅(C)を有する接地電極と、
前記接地電極の側面に装着され、直径(E)および厚み(K)を有するPtまたはPtベースの貴金属パッドとを備え、前記接地電極および前記貴金属パッドは、好ましくは、i)前記接地電極の厚み(B)が0.75mm以上2.25mm以下、ii)前記接地電極の幅(C)が2mm以上4mm以下、iii)前記貴金属パッドの直径(E)が0.5mm以上2mm以下、(iv)前記貴金属パッドの厚み(K)が0.025mm以上0.75mm以下という特徴を有する、点火プラグ。
【請求項2】
貴金属パッドを点火プラグの接地電極の側面に装着するための方法であって、
(a) 接地電極に側面を与えるステップと、
(b) 貴金属の塊を与えるステップと、
(c) 前記貴金属の塊を、前記側面に、第1の組の抵抗溶接パラメータに従って抵抗溶接するステップと、
(d) 貴金属パッドを形成するように前記貴金属の塊をコイニングするステップと、
(e) 前記貴金属パッドを、前記側面に、第2の組の抵抗溶接パラメータに従って抵抗溶接するステップとを含み、前記第2の組のパラメータは、前記第1の組のパラメータよりも大きな量の力および/または電流を含み、
(f) 前記貴金属パッドの周囲の少なくとも一部を、前記側面に、レーザ溶接するステップとを含む、貴金属パッドを点火プラグの接地電極の側面に装着するための方法。
【請求項3】
前記貴金属は、量が1%wt以上15%wt以下のNiを有するPtNi合金である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)はさらに、Ptベースの貴金属の球形の塊を与えることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の組の抵抗溶接パラメータは、タック溶接が形成されるように、13kgf−23kgfの間の力および600amp−1500ampの間の電流を加えることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の組の抵抗溶接パラメータは、永久的な溶接が形成されるように、18kgf−28kgfの間の力および800amp−1650ampの間の電流を加えることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(c)における抵抗溶接により、前記貴金属の塊と前記接地電極との間にタック溶接が作られ、前記ステップ(e)における抵抗溶接により、前記貴金属パッドと前記接地電極との間に永久的な溶接が作られる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(f)はさらに、15個−45個のスポット溶接が形成されるように、0.75J/パルス−1.5J/パルスを、周波数60Hz−100Hzで与えることを含む、1組のレーザ溶接パラメータに従ってレーザ溶接することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザ溶接ステップ(f)はさらに、前記貴金属パッドを円周方向において取囲み、外径(J)1.0mm以上2.5mm以下で内径(I)0.5mm以上1mmの、溶接ビードを形成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザ溶接ステップ(f)はさらに、重なり合う複数の溶接スポットを有する溶接ビードを形成することを含み、前記溶接スポットは各々、直径(H)0.3mm以上0.8mm以下、溶接深さ(G)0.25mm以上0.75mmである、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−160458(P2012−160458A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49159(P2012−49159)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2008−540046(P2008−540046)の分割
【原出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】