説明

接着剤組成物

【課題】本発明は、被着体と接着剤組成物との接着反応を促進し、接着力を更に高める新規な接着剤組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性不飽和炭化水素基をもつ官能基を少なくとも1つ末端に有する共役ジエン系重合体(A)、重合性化合物(B)、金属及び/又は金属化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、特に光硬化性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴムは高伸長、低弾性率を有する材料であるが、その特徴を生かして実用に供するために、プラスチックスなど他の材料と複合することが行われている。そして、ゴムと被着体とをゴム加硫の際に接着し両者を一体化することにより、接着面の形状が複雑なものにも容易、簡便に適用できるので、係る目的で種々の接着剤組成物が用いられている。
更に、近年は、環境保護のため、無溶剤の接着剤組成物あるいは接着剤組成物を固体化させる接着工程において接着層に溶剤が取り込まれる接着剤組成物が開発されている。
例えば、特許文献1では、紫外線、可視光線、電子線などの放射線の照射あるいは熱などの外的エネルギーにより重合できる単量体を含む接着剤組成物が開示されている。そして、この接着剤組成物を用いる接着方法として、ゴム上で、ゴム成分と接着剤組成物を網状化させて固着させており、ゴムと接着剤組成物の網状化において加硫剤としての硫黄を使用すること及び(又は)加硫促進剤を使用することを省くことができることを特徴としている。
そして、特許文献2においては、(A)重量平均分子量500〜100,000の共役ジエン系重合体及び(B)電子対供与性の塩基性化合物、(C)分子中に3個以上のアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の官能基を有する化合物及び(D)分子内に1個又は2個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物を含有する接着剤組成物であって、紫外線、可視光線あるいは電子線などの放射線で網状化する接着剤組成物が提案されている。
また、特許文献3においては、重量平均分子量が500〜100,000である紫外線硬化型、放射線硬化型又は熱硬化型のスチレン−ブタジエン共重合体を含有する接着剤組成物が提案されている。
しかしながら、それらの接着力は、まだ充分に満足できるものではなく、接着力の向上が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭55−145768号公報
【特許文献2】国際公開第2002/094962号パンフレット
【特許文献3】特開2005−247954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被着体と接着剤組成物との接着反応を促進し、接着力を更に高める新規な接着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、接着剤組成物に金属及び/又は金属化合物を配合することにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.光硬化性不飽和炭化水素基をもつ官能基を少なくとも1つ末端に有する共役ジエン系重合体(A)、重合性化合物(B)、金属及び/又は金属化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
2.金属及び/又は金属化合物(C)の金属が、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh、Pb、Ag、Sn、Pb、W、Re、Os及びIrの中から選ばれる少なくとも一種である上記1に記載の接着剤組成物。
3.金属及び/又は金属化合物(C)の金属が、元素周期律表における第3〜12族の第4周期の金属元素である上記2に記載の接着剤組成物。
4.金属及び/又は金属化合物(C)が金属の有機酸塩、有機錯体及びそれが解離して生成するイオンの中から選ばれる少なくとも一種である上記1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
5.有機酸塩を形成する有機酸が脂肪族又は脂環式カルボン酸である上記4に記載の接着剤組成物。
6.脂肪族又は脂環式カルボン酸がナフテン酸、オクチル酸、ステアリン酸及びバーサチック酸の中から選ばれる少なくとも一種である上記5に記載の接着剤組成物。
7.有機酸塩を形成する有機酸がジチオカルバミン酸である上記4に記載の接着剤組成物。
8.有機錯体がアセチルアセトナート金属錯体である上記4に記載の接着剤組成物。
9.金属及び/又は金属化合物(C)が金属の無機酸塩及び/又はそれが解離して生成するイオンである上記1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
10.無機酸塩を形成する無機酸が塩酸、硫酸、硝酸、次亜塩素酸、リン酸、けい酸又はそれらの混合物である上記9に記載の接着剤組成物。
11.金属化合物が金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物又はそれらの混合物である上記1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
12.更に、電子対供与性化合物(E)を含有する請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤組成物。
13.電子対供与性化合物(E)が、不対電子を有する窒素原子を含む化合物及び/又は熱分解により不対電子を有する構造を含む化合物を生成する化合物である上記12に記載の接着剤組成物。
14.不対電子を有する窒素原子を含む化合物が、アミン化合物、脂肪族アミン残基を含む化合物及び複素環系アミン残基を含む化合物の中から選ばれる少なくとも一種である上記13に記載の接着剤組成物。
15.アミン化合物が、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルデヒドアミン、グアニジン類、チオ尿素類及び複素環系アミンの中から選ばれる少なくとも一種である上記14に記載の接着剤組成物。
16.熱分解により不対電子を有する構造を含む化合物を生成する化合物が加硫促進剤である上記13に記載の接着剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、被着体と接着剤組成物との接着反応を促進し、接着力を更に高める接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の接着剤組成物に含有される光硬化性不飽和炭化水素基をもつ官能基を少なくとも1つ末端に有する共役ジエン系重合体(A)は、共役ジエン単独重合体又は共役ジエン共重合体の末端変性重合体をいう。共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。共役ジエン共重合体としては、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が好ましい。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン,α−メチルスチレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましい。また、これら共役ジエン系重合体の主鎖は、硫黄と架橋反応の架橋部位となりやすい、アリル位に水素原子を有する炭素−炭素二重結合を、分子鎖内の単位として含むことが好ましい。本発明における前記共役ジエン系重合体としては、ポリイソプレン,ポリブタジエン,スチレン−ブタジエン共重合体,イソプレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。また、前記共役ジエン系重合体は、接着剤組成物を配合する温度において液状、特に0℃以下でも液状であると作業性及び接着剤組成物の混合工程が容易で好ましく、また50℃以上の温度でも液状でかつ蒸気圧が小さいことが好ましい。但し、接着剤組成物を配合する温度において液状でなくても、接着剤組成物が液状になれば特に制限されない。
【0008】
本発明において、光硬化性不飽和炭化水素基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基をいう。アクリロイル基又はメタクリロイル基が好ましく、通常、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基として導入されることが多い。ブタジエン重合体の末端に、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を導入した変性重合体は、市販品として入手可能である。例えばアクリロイル基(CH2=CHCO−)をブタジエン重合体の末端に導入したアクリル化ポリブタジエンとして、大阪有機化学工業(株)製の商標「BAC−45」(ポリブタジエン部位のMw=2800、粘度=3.4 Pa・s、ケン化価=約49)などが挙げられる。また、例えば下記式(1)
【0009】
【化1】

で表されるメタクリル化ポリブタジエンとして、Ricon Resins INC.製の商標「RIACRYL3100」(Mw=5100,メタクリロイル(オキシ)基の個数=2/分子鎖);同社製の商標「RIACRYL3500」(Mw=6800,メタクリロイル基の個数=9/分子鎖);同社製の商標「RIACRYL3801」(Mw=3200,メタクリロイル(オキシ)基の個数=8/分子鎖)などが挙げられる。
また、共役ジエン系重合体(A)の重合後のリビングアニオンをアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド)で変性し、共役ジエン系重合体(A)の重合末端にOH基を導入した後、このOH基と2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート又は2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとを反応させ、共役ジエン系重合体(A)末端にアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を導入してもよい。
【0010】
前記共役ジエン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、接着剤組成物の粘度が高くなり過ぎて加工困難にならない限りその上限に特に制限はないが、100,000を超えると接着剤組成物の塗布が困難になることがある。一方、Mwが500未満では圧着した未加硫ゴムを加硫したときに充分な接着力が得られないことがある。この点から、好ましいMwの範囲は500〜100,000であり、更に好ましくは、1,000〜10,000である。
【0011】
前記重合性化合物(B)は、重合性モノマー(b1)及び重合性オリゴマー(b2)からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物である。これらは、未加硫ゴム組成物シートとの接着反応促進効果や接着組成物の粘度調節効果を奏するものである。
【0012】
前記重合性モノマー(b1)としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、m−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、p−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、1−ビニルイミダゾール、アリルアミン、2,5−ジスチリルピリジン、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニル−2H−インダゾール、4−ジイソプロピルアミノ−1−ブテン、トランス−2−ブテン−1,4−ジアミン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4−メチル−5−ビニルチアゾール、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン及びN,N−ジエチルアクリルアミド等及び単官能(メタ)アクリル系モノマー、2官能(メタ)アクリル系モノマー及び3官能以上の(メタ)アクリレート系のモノマーの中から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
また、前記重合性モノマー(b1)は、下記式(2)
【化2】

(式中、Xは含窒素複素環式基、A、A’及びA”は単結合あるいは、−O−、−S−、−NH−結合、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数1〜12の二価の炭化水素基、R3、R’3及びR”3は単結合、あるいはヘテロ原子を介してXに結合してもよい炭素数1〜12の二価の炭化水素基を示し、mは1〜3の整数、kは0〜2の整数、lは0〜2の整数であり、1≦m+k+l≦3であることを示す。)で表される構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(b3)であることが好ましい。
(メタ)アクリル系モノマー(b3)の前記式(2)において、Xで表される含窒素複素環式基は、後述の電子対供与性の含窒素複素環式化合物由来の基である。また、R2で表される炭素数1〜12の二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基を挙げることができる。
ここで、アルキレン基としては、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、例えばエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基などが挙げられる。炭素数5〜12のシクロアルキレン基としては、例えばシクロペンチレン基、各種シクロへキシレン基が、炭素数6〜12のアリーレン基としては、各種フェニレン基、各種トリレン基等が、炭素数7〜12アラルキレン基としては、例えば各種ベンジレン基、各種フェネチレン基等が挙げられる。
これらの中で、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましい。
3、R’3及びR”3のうち炭素数1〜12の二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12アラルキレン基を挙げることができる。
ここで、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリーレン基、及び炭素数7〜12のアラルキレン基は、前記R2の場合と同様である。
前記式(2)で示される(メタ)アクリル系モノマー(b3)のA、A’及びA”は、−O−が好ましく、R1は高い光硬化性を示す観点から水素原子であることが好ましい。
【0014】
前記重合性モノマー(b1)として列挙した上述の各化合物及び3官能以上の(メタ)アクリレート系のモノマー、特に(メタ)アクリル系モノマー(b3)は、被着体又は未加硫ゴム組成物シートとの接着反応促進効果を奏するものとして用いられる。
【0015】
次に、(メタ)アクリル系モノマー(b3)は、下記式(3)
【0016】
【化3】

(式中、Xは含窒素複素環式基、R3、R'3及びR"3は単結合、あるいはヘテロ原子を介してXに結合してもよい炭素数1〜12の二価の炭化水素基、D、D’及びD”は水酸基、メルカプト基、アミノ基又はカルボキシル基、mは1〜3の整数、kは0〜2の整数、lは0〜2整数であり、1≦m+k+l≦3であることを示す。)で表される含窒素複素環式化合物(b3−a)と、
下記式(4)
【0017】
【化4】

(式中、R4は水素原子又はメチル基、R5は炭素数1〜12の二価の炭化水素基を示す。)で表されるイソシアネート基含有アクリル系化合物(b3−b)とを反応させることによって得ることができる。
前記含窒素複素環式化合物(b3−a)は電子対供与性の塩基性化合物であって、不対電子を有する窒素原子を含む化合物であれば特に制限はなく、酸素、硫黄などの他のヘテロ原子を含んでよい。また、単環式化合物であってもよく、複環式化合物であってもよい。
【0018】
単環式で窒素のみを含有する含窒素複素環式化合物としては、アジリン、アジリジン、アゼチジン、1H−ピロール、2H−ピロール、ピロリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、1,2,3−トリアゾール、ピラゾール、イミダゾール、1−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、1,2,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1H−アゼピン、2H−アゼピン、3H−アゼピン、4H−アゼピン、等が挙げられる。
また、複環式で窒素のみを含有する含窒素複素環式化合物としては、インドール、ベンズイミダゾ−ル、プリン、カルバゾール、β−カルボリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントリジン、キノキサリン、フタラジン等が挙げられる。
単環式で窒素及びその他のヘテロ原子を含有する含窒素複素環式化合物としては、3−オキサゾリン、2−オキサゾリン、4−オキサゾリン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,4−オキサジン、モルホリン、2−チアゾリン、3−チアゾリン、4−チアゾリン、1,2,3−チアジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,4−チアジン、1,4−チアザン等が挙げられる。
複環式で窒素及びその他のヘテロ原子を含有する含窒素複素環式化合物としては、ベンズオキサゾール、1H−Fluoro[3,4−c]ピラゾール、フェノキサジン、ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0019】
イソシアネート基含有アクリル系化合物(b3−b)のイソシアネート基と反応させるために、含窒素複素環式化合物(b3−a)の前記式(3)中、D、D’及びD”として活性水素を有する水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基等の少なくともいずれか1つの官能基が導入されている必要がある。前記官能基とイソシアネートは夫々次のような反応が行なわれ、1分子内に光重合可能な(メタ)アクロイル基と電子対供与性の塩基性化合物である含窒素複素環式基を持った(メタ)アクリル系モノマー(b3)を得ることができる。
イソシアネートは、通常、常温・常圧で容易に種々の活性水素を有する官能基と反応する。前記官能基の中で水酸基が好ましい。また、官能基は通常、R3を介して含窒素複素環に結合していることが好ましいが、前記官能基が直接含窒素複素環と結合していてもよい。中でも、R3、R’3及びR”3はメチレン基又はエチレン基であることが好ましい。
【0020】
水酸基が導入された含窒素複素環式化合物としては、例えば、2−ピリジルメタノール、3−ピリジルメタノール、4−ピリジルメタノール、2−クロロ−5−ヒドロキシメチルピリジン、2−ヒドロキシピリジンメタノール、4−メチル−5−(2−ヒドロキシエチル)チアゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−ブチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−メチル−5−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、4−ヒドロキシピペリジンなどが挙げられる。中でも4−ピリジルメタノールが好ましい。
また、アミノ基が導入された含窒素複素環式化合物としては、3−アミノメチルピリジン、2−アミノ−5−アミノメチルピリジン、3−アミノメチル−6−クロロピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリジン、2−アミノチアゾール等が挙げられる。
更に、メルカプト基が導入された含窒素複素環式化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンズチアゾール等があげられる。
また、カルボキシル基が導入された含窒素複素環式化合物としては、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、キノリンカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、2,4−ジアルキルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸等が挙げられる。
水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の複数の官能基が導入された含窒素複素環式化合物としては、4−ヒドロキシピリジン−2,6−ジカルボン酸、6−ヒドロキシニコチン酸アミド、6−アミノニコチン酸等があげられる。
【0021】
前記(メタ)アクリル系モノマー(b3)の具体的な例として、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−メタクロイルオキシプロピルイソシアネートなどが挙げられる。これらイソシアネート基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量は前記官能基を有する含窒素複素環式化合物(b3−a)に対して1倍当量〜3倍当量が好ましく、更に好ましくは1倍当量〜1.5倍当量である。
【0022】
更に、触媒として(R62Sn[OC(=O)R72で代表されるスズ化合物を前記含窒素複素環式化合物(b3−a)及び前記イソシアネート基含有アクリル系化合物(b3−b)に対して0.001〜1質量%加えることによって反応時間を短縮することができ好ましい。ここでR6は炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表し、R7は炭素数1〜23のアルキル基を表す。触媒の代表的な例としてジ−n−ブチルスズジラウレートが挙げられる。
なお、反応に用いられる溶媒としては不活性であれば特に制約はないが。トルエン、キシレン等が取り扱い上好ましい。
尚、反応温度は、通常室温〜100℃、反応時間は、通常5分〜10時間程度で行なわれる。
以上の工程を経て、1分子内に光重合可能な(メタ)アクロイル基と電子対供与性の塩基性官能基である含窒素複素環式基を持った(メタ)アクリル系モノマー(b3)を得ることができる。
【0023】
重合性モノマー(b1)として上述したもの以外に、各種の単官能(メタ)アクリル系モノマー、2官能(メタ)アクリル系モノマー及び3官能以上の(メタ)アクリレート系のモノマーが用いられる。
【0024】
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシトリエチレングリコールアクリレート等の(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0025】
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート(PO2mol)(新中村化学工業(株)製 APG−100)、トリプロピレングリコールジアクリレート(PO3mol)(新中村化学工業(株)製 APG−200)、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(PO7mol)(新中村化学工業(株)製 APG−400)、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート(PO12mol)(新中村化学工業(株)製 APG−700)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業(株)製 A−DCP)等が挙げられる。
【0026】
1官能、2官能の(メタ)アクリル系モノマーは粘度調整剤として使用され、このような粘度調整剤は市販品として入手可能であり、単官能の化合物としては、例えば、フェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート(新中村化学工業(株)製;商標「AMP−60G」),フェノキシエチレングリコールモノアクリレート(新中村化学工業(株)製;商標「AMP−10G」)、フェノキシジエチレングリコールモノアクリレート(新中村化学工業(株)製;商標「AMP−20GY」)、テトラヒドロフルフリルモノアクリレート(SARTOMER社製,商標「SR−285」),イソオクチルモノアクリレート(SARTOMER社製,商標「SR−440」)などが挙げられる。
また、2官能の低分子化合物としては例えば、ポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業(株)製,商標「APG−400」),ポリプロピレングリコールジメタクリレート(同社製,商標「9PG」)などが挙げられる。
【0027】
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、市販品として入手可能なものとして、例えば、ペンタエリスリトールポリエトキシアクリレート(日本化薬(株)製の商標「KAYARAD THE−330」)、ペンタエリスリトールポリプロポキシアクリレート(同社製、商標「KAYARAD TPA−320」;同社製,商標「KAYARAD TPA−330」)や、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(荒川化学工業(株)製、商標「ビームセット700」)、ペンタエリスリトールポリアクリレート(同社製、商標「ビームセット710」)などが挙げられる。
【0028】
重合性オリゴマー(b2)は、(メタ)アクリル系オリゴマーであることが好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、ポリブタジエン(メタ)アクリレート系、シリコーン(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0029】
前記重合性化合物(B)は、前記共役ジエン系重合体(A)100質量部当たり、20〜400質量部含まれることが好ましい。20〜400質量部範囲内であれば(B)成分による粘度調節効果を奏することができる。
【0030】
次に、前記金属及び/又は金属化合物(C)の金属としては、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh、Pb、Ag、Sn、Pb、W、Re、Os及びIrの中から選ばれる少なくとも一種の金属を好ましく挙げることができるが、これらの金属の内、元素周期律表における第3〜12族の第4周期の金属元素であることがより好ましく、これらは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから選択される。
前記金属及び/又は金属化合物(C)は、前記共役ジエン系重合体(A)100質量部当たり、金属分として、0.1〜10質量部含まれることが好ましい。この範囲内であれば(C)成分による接着力向上効果をより好適に奏することができる。
【0031】
また、前記金属及び/又は金属化合物(C)が金属の有機酸塩、有機錯体及びそれらが解離して生成するイオンの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。有機酸塩を形成する有機酸としては、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸又はジチオカルバミン酸が好ましく、脂肪族カルボン酸としては、オクチル酸、ステアリン酸及びバーサチック酸が、脂環式カルボン酸としては、ナフテン酸が、ジチオカルバミン酸としては、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。更に、有機錯体としては、アセチルアセトナート金属錯体が好ましく、コバルトアセチルアセトナートが特に好ましい。
【0032】
前記金属及び/又は金属化合物(C)は、金属の無機酸塩及び/又はそれが解離して生成するイオンであってもよい。ここで、無機酸塩を形成する無機酸が塩酸、硫酸、硝酸、次亜塩素酸、リン酸、けい酸又はそれらの混合物であることが好ましい。そして、金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物又はそれらの混合物であってもよい。
【0033】
また、前記光重合開始剤(D)は、本発明の接着剤組成物が、活性エネルギー線として、紫外線、可視光などの活性光を使用するために用いられる。
前記光重合開始剤(D)としては、2,4−ジエチルチオキサントン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ベンゾインやベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノンなどが挙げられるが、2,4−ジエチルチオキサントン(例えば日本化薬(株)製;商標「KAYACURE DETX−S」)やp−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル(同社製;商標「KAYACURE DMBI」が好ましい。
前記光重合開始剤(D)は、前記共役ジエン系重合体(A)100質量部当たり、0.1〜10質量部配合することが好ましい。
【0034】
本発明の接着剤組成物においては、金属及び/又は金属化合物(C)の接着力を高める効果をより向上するために、更に、電子対供与性化合物(E)を配合することが好ましい。ここで、電子対供与性化合物(E)としては、不対電子を有する窒素原子を含む化合物及び/又は熱分解により不対電子を有する構造を含む化合物を生成する化合物を用いることができる。
【0035】
前記不対電子を有する窒素原子を含む化合物としては、アミン化合物、脂肪族アミン残基を含む化合物及び複素環系アミン残基を含む化合物の中から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0036】
アミン化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルデヒドアミン、グアニジン類、チオ尿素類又は複素環系アミンを挙げることができる。
ここで、脂肪族アミンとしては、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、エチレンジアミン等のジアミン類、ポリエチレンポリアミン等の高分子アミン等が例示され、芳香族アミンとしては、アニリン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルイレンジアミン等が例示される。アルデヒドアミンとしては、n−ブチルアルデヒドとアニリンとの反応生成物(例えば、商品名:ノクセラー8(大内新興化学工業(株)製)が、グアニジン類としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、o−トリル−ビグアニジン等が、チオ尿素類としては、チオカルバニリド、N,N'−ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素等が、複素環系アミンとしては、ピリジン、2−メチルイミダゾール等の窒素含有複素環系化合物が例示される。
【0037】
脂肪族アミン残基や複素環系アミン残基を含む化合物としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、m−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、p−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、1−ビニルイミダゾール、アリルアミン、2,5−ジスチリルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニル−2H−インダゾール、4−ジイソプロピルアミノ−1−ブテン、トランス−2−ブテン−1,4−ジアミン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4−メチル−5−ビニルチアゾール等を挙げることができる。
【0038】
一方、熱分解により不対電子を有する構造を含む化合物を生成する化合物としては、加硫促進剤を好ましく挙げることができる。加硫促進剤とは、ジエン系ゴムの硫黄加硫の促進剤として通常用いられるものをいう。このような加硫促進剤としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS、通称名:DM)等のチアゾール類、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS、通称名:NS)、N,N'−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(通称名:DZ)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS、通称名:CZ)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS、通称名:NOBS)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)等のチウラム類などを挙げることができる。
【0039】
前記電子対供与性化合物(E)は、前記共役ジエン系重合体(A)100質量部当たり、1〜30質量部含まれることが好ましい。この範囲内であれば(E)成分による接着力向上効果を更に高めることができる。
【0040】
更に、本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性向上のための、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤、チタンブラック等の着色剤、シリカ等の無機充填剤等の添加剤を添加することができる。
【0041】
本発明の接着剤組成物は、ゴム組成物及び樹脂材料の広範囲の被着体の接着に用いられる。特に、ゴム組成物と樹脂材料との接着に好適である。
ここで、樹脂被着体として、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアクリレート、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;塩化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらの中では、機械的強度が高く、かつ通常の方法ではゴムとの接着が比較的困難なポリエステルが特に好ましい。また 本発明で用いられる樹脂被着体の形態は、フィルム、繊維、不織布、モノフィラメントコード、マルチフィラメントコードのいずれでもよく、押出成形品や射出成形品でもよい。これらの形態のなかで、樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0042】
また、ゴム組成物被着体としては、例えば天然ゴム;ポリイソプレン合成ゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ポリシロキサンゴムなどか挙げられるが、これらの中では天然ゴム及び共役ジエン系合成ゴムが好ましい。また、ゴムは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのゴムの加硫は、例えば硫黄;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイドなどのチウラムポリサルファイド化合物;4,4−ジチオモルフォリン;p−キノンジオキシム;p,p'−ジベンゾキノンジオキシム;環式硫黄イミド;過酸化物を加硫剤として行うことができるが、好ましくは硫黄である。
また、ゴムには、前記の配合成分以外に通常ゴム業界で用いられるカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤などの各種配合剤を、適宜配合することができる。更に、各種材質の粒子、繊維、布などとの複合体としてもよい。
ゴム組成物被着体の形態は、シート、押出成形品や射出成形品のいずれでもよい。
【0043】
本発明の接着剤組成物の使用方法について、以下、説明する。
先ず少なくとも一方の被着体表面の少なくとも一部、例えばシート状被着体の一方の面に、浸漬、はけ塗り、流延、噴霧、ロール塗布、ナイフ塗布などにより前記接着剤組成物を用い、接着剤層の塗膜を形成する。ゴム組成物と樹脂材料との接着の場合は、通常、樹脂材料の表面に接着剤層の塗膜を形成する。かかる被着体表面は、予め電子線、マイクロ波、コロナ放電、プラズマ処理等の前処理加工されたものでもよい。接着剤層の厚みは0.5〜50μmが好ましく、1〜10μmが特に好ましい。
次に、このようにして形成された接着剤層は、活性エネルギー線照射される。ここで、活性エネルギー線とは、紫外線、可視光レーザー等の可視光線の活性光をいう。電子線、α線等の荷電粒子線、非荷電粒子線である中性子線やX線、ガンマ線等の電離放射線は本発明に係る活性エネルギー線には含まれない。活性エネルギー線の中では、紫外線が好ましい。一般に、紫外線照射の場合、照射量は100〜3000mJ/cm2であり、照射時間は1〜30秒である。活性エネルギー線照射は、空気雰囲気下で行ってもよいが、照射効果を低下させないために、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等が好ましく、取り扱いの簡便さ、コスト等から窒素が特に好ましい。
次いで、未加硫ゴム組成物シートを接着剤層に好ましくは0.5〜5MPaの圧力で圧着しながら好ましくは140〜190℃で好ましくは10〜30分間加熱することにより、接着剤組成物の共役ジエン系重合体(A)とゴムとの間で共加硫反応が生じ、接着剤組成物とゴムとの間の強力な接着力が得られる。
【0044】
本発明の接着剤組成物を使用する方法としては、必要に応じて、被着体表面の少なくとも一部にアンダーコート層(プライマー層)を形成した後、その上に前記接着剤組成物を塗膜することが好ましい。アンダーコート層の厚みは1〜10μmが好ましい。アンダーコート組成物としては、被着体の材質に応じて適宜公知の接着処理剤を使用することができる。アンダーコート組成物は特に限定されるものではないが、好ましくは、下記式(5)
【0045】
【化5】

(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基を表す。nは1〜3の整数である。)で表されるビスフェノール骨格を有する化合物(F)100質量部に対して、分子内に3個以上のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物(G)を5〜50質量部含む組成物である。
(G)成分は、前記式(5)で表されるビスフェノール骨格に加えて、下記式(6)
【0046】
【化6】

(式中、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、好ましくはエチレン基を示す。pは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)で表される末端基を有する化合物が好ましい。
(G)成分は市販品として入手可能であり、例えば、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート(日本化薬(株)製、商標「KAYARAD R−712」)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(同社製、商標「KAYARAD R−551」)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(SARTOMFR社製、商標「SR−348」、商標「SR−480」、商標「SR9036」)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(荒川化学工業(株)製、商標「ビームセット750」)などが挙げられる。
【0047】
更に、アンダーコート組成物には、塗膜の強度向上のために、前記接着剤組成物の共役ジエン系重合体(A)と同じ共役ジエン系重合体を成分(G)100質量部に対して0.5〜10質量部程度混合することもでき、所望により、前記粘度調整剤や光開始剤を成分(G)100質量部に対して、それぞれ、5〜30質量部、0.1〜5質量部添加することもできる。また、ラジカル反応の促進剤としてスチレンモノマーを成分(G)100質量部に対して、1〜20質量部程度加えることもできる。更に、前記の成分に加えて、前記接着剤組成物で説明したのと同じエポキシ化合物,無機フィラー,高分子フィラー及び塩基性化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの添加剤を成分(G)100質量部に対して、合計で5〜10質量部程度加えることができる。
このような組成のアンダーコート組成物の塗布面には、活性エネルギー線又は放射線を照射することが好ましい。
【0048】
本発明の接着剤組成物の使用方法の典型例としては、被着体にアンダーコート層を形成し、アンダーコート層の上に接着剤組成物層を積層し、更に必要に応じて紫外線又は放射線照射をした後、未加硫ゴムを圧着して加硫を行い、被着体/アンダーコート層/接着剤組成物層/ゴムがこの順で積層された複合体を得る場合を挙げることができる。
【0049】
本発明の接着剤組成物は、被着体表面の少なくとも一部に前記接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成し、活性エネルギー線照射により被着体との接着反応が進行するが、接着剤組成物に金属及び/又は金属化合物(C)が配合されているので、接着力を高めることができる。また、未加硫ゴムを該接着剤層に圧着しながら加硫処理する際に、未加硫ゴム中の硫黄が接着剤層に移行し、接着剤組成物の共役ジエン系重合体(A)成分と未加硫ゴム組成物のゴム成分とが共加硫するので、接着剤層を介して被着体とゴム組成物シートとの間に強固な接着が形成される。重合性モノマー(b1)は、(A)成分の不飽和部分と未加硫ゴムから移行してくる硫黄との反応を触媒し、加硫促進する。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、ポリエステルフイルム・ゴム複合体の剥離強力及びゴム付着は、以下の方法により行った。
1.剥離強力及びゴム付着
ポリエステルフイルムゴム複合体をそれぞれ25mm幅にカットして剥離テスト用試験片を調製した。
この試験片を用いて、ゴム層とポリエステルフイルムとの剥離テストを、剥離角180度(T形剥離)、引張り速度50mm/分で行い、剥離強度を求めた。また、剥離後ポリエステルフイルムの表面積に対する被覆ゴムの面積率(ゴム付着率)を測定し、表1に従いゴム付着のランク付を行った。
【0051】
実施例1及び2並びに比較例1及び2
1.ポリエステルフイルム・ゴム複合体の調製
厚さ188μmのポリエステルフイルム(東洋紡績(株)製ポリエチレンテレフタレートフイルム、商標:A4100)の一方の面に、フイルムコーター装置を用いて、表3に示す組成の接着剤を厚さ3〜5μmで塗布して接着剤層を形成した。紫外線照射は、空気雰囲気中で照射量500mJ/cm2にて行った。
このようにして得られた接着剤処理ポリエステルフイルムを、表2に示した配合組成の未加硫ゴム組成物シートを圧力1.5MPa、温度160℃で20分間加硫を行い厚さ2.3mm、80mm×80mmの大きさのポリエステルフイルム・ゴム複合体を4種得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表3に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
実施例3及び4
表4に示す接着剤組成物を用いた外は、実施例1と同様にして、2種類のポリエステルフイルム・ゴム複合体を得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表4に示す。比較のため、表4に比較例1及び2を再掲する。
【0056】
【表4】

【0057】
実施例5及び6
表5に示す接着剤組成物を用いた外は、実施例1と同様にして、2種類のポリエステルフイルム・ゴム複合体を得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表5に示す。比較のため、表5に比較例1及び2を再掲する。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例7及び比較例3
表6に示す接着剤組成物を用いた外は、実施例1と同様にして、2種類のポリエステルフイルム・ゴム複合体を得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表6に示す。
【0060】
【表6】

【0061】
実施例8及び9
表7に示す接着剤組成物を用いた外は、実施例1と同様にして、2種類のポリエステルフイルム・ゴム複合体を得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表7に示す。比較のため、表7に比較例1及び2を再掲する。
【0062】
【表7】

【0063】
実施例10及び11
表8に示す接着剤組成物を用いた外は、実施例1と同様にして、2種類のポリエステルフイルム・ゴム複合体を得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表8に示す。比較のため、表8に比較例1及び2を再掲する。
【0064】
【表8】

【0065】
実施例12及び13
表9に示す接着剤組成物を用いた外は、実施例1と同様にして、2種類のポリエステルフイルム・ゴム複合体を得た。これら複合体の剥離強力及びゴム付着の評価結果を表8に示す。比較のため、表8に比較例1及び2を再掲する。
【0066】
【表9】

【0067】
表3〜9より明らかなように、実施例1〜13の接着剤組成物は、剥離強力及びゴム付着のいずれも良好であり、本発明の接着剤組成物に金属及び/又は金属化合物(C)を配合することにより、接着力が大幅に高められた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の接着剤組成物は、2種の被着体の接着を必要とするゴム・樹脂複合体、ゴム物品、樹脂フィルム積層体及び樹脂成形品の製造に広範囲に好適に適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性不飽和炭化水素基をもつ官能基を少なくとも1つ末端に有する共役ジエン系重合体(A)、重合性化合物(B)、金属及び/又は金属化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
金属及び/又は金属化合物(C)の金属が、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh、Pb、Ag、Sn、Pb、W、Re、Os及びIrの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
金属及び/又は金属化合物(C)の金属が、元素周期律表における第3〜12族の第4周期の金属元素である請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
金属及び/又は金属化合物(C)が金属の有機酸塩、有機錯体及びそれが解離して生成するイオンの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
有機酸塩を形成する有機酸が脂肪族又は脂環式カルボン酸である請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
脂肪族又は脂環式カルボン酸がナフテン酸、オクチル酸、ステアリン酸及びバーサチック酸の中から選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
有機酸塩を形成する有機酸がジチオカルバミン酸である請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
有機錯体がアセチルアセトナート金属錯体である請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
金属及び/又は金属化合物(C)が金属の無機酸塩及び/又はそれが解離して生成するイオンである請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
無機酸塩を形成する無機酸が塩酸、硫酸、硝酸、次亜塩素酸、リン酸、けい酸又はそれらの混合物である請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
金属化合物が金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物又はそれらの混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項12】
更に、電子対供与性化合物(E)を含有する請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項13】
電子対供与性化合物(E)が、不対電子を有する窒素原子を含む化合物及び/又は熱分解により不対電子を有する構造を含む化合物を生成する化合物である請求項12に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
不対電子を有する窒素原子を含む化合物が、アミン化合物、脂肪族アミン残基を含む化合物及び複素環系アミン残基を含む化合物の中から選ばれる少なくとも一種である請求項13に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
アミン化合物が、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルデヒドアミン、グアニジン類、チオ尿素類及び複素環系アミンの中から選ばれる少なくとも一種である請求項14に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
熱分解により不対電子を有する構造を含む化合物を生成する化合物が加硫促進剤である請求項13に記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2007−146112(P2007−146112A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216117(P2006−216117)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】