説明

接着塗料およびキャップ

【課題】 ライナーの接着強度を低下させることなく開栓トルクを低減させる。
【解決手段】 キャップ10の内面側に塗布されて、該内面側にライナー10bを接着する接着塗料であって、エポキシ−フェノール系樹脂、およびグリセリン・脂肪酸エステルを含有し、グリセリン・脂肪酸エステルは、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル缶の口金部に被着されるキャップの内面側に塗布される接着塗料およびキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のキャップは、天面部、および該天面部の周縁から略垂下してなる周壁部を備えたキャップ本体と、ライナー接着層を介してキャップ本体の内面側に接着されたライナーとを備える概略構成とされている。そして、ライナーをボトル缶の開口端部に密接させて、キャップをボトル缶の口金部に配置した状態で、口金部に形成された雄ねじ部に沿って前記周壁部を径方向内方に向けて押圧することによって、キャップがボトル缶の口金部に螺着されるようになっている。
【0003】
ここで、ライナー接着層は、キャップ本体の内面側の略全域に形成されているので、前記螺着の状態において、前記周壁部のライナー接着層と、前記雄ねじ部の外面塗料とが密接することになる。
【0004】
したがって、ライナー接着層に良好な滑り性を具備させて、開栓トルクを低減させるために、例えば下記特許文献1に示されるように、エポキシ−フェノール系樹脂を20〜50重量部、グリセリン・脂肪酸エステルを1〜10重量部それぞれ含有する構成が知られている。
【特許文献1】特開2002−264957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のキャップでは、ライナー接着層にグリセリン・脂肪酸エステルが含有され良好な滑り性を具備させることができるものの、同時に硬度およびライナーの接着強度が低下することになる。前者のライナー接着層の軟化により、キャップをボトル缶の口金部に対して缶軸回りに回転させて、開栓しようとしたときに、前記周壁部のライナー接着層が回転方向に延ばされることにより、開栓トルクを上昇させるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ライナーの接着強度を低下させることなく開栓トルクの低減を図ることができる接着塗料およびキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の接着塗料は、キャップの内面側に塗布されて、該内面側にライナーを接着する接着塗料であって、エポキシ−フェノール系樹脂、およびグリセリン・脂肪酸エステルを含有し、グリセリン・脂肪酸エステルは、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のキャップは、天面部、および該天面部の周縁から略垂下してなる周壁部を備え、これらの内面に塗膜が形成されたキャップ本体と、該キャップ本体の内面側に接着されたライナーとを備えたキャップであって、前記塗膜は、前記ライナーを前記キャップ本体の内面側に接着するライナー接着層を備え、該ライナー接着層は、エポキシ−フェノール系樹脂、およびグリセリン・脂肪酸エステルを含有するとともに、グリセリン・脂肪酸エステルを、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有する接着塗料により形成されていることを特徴とする。
【0009】
これらの発明によれば、接着塗料が、グリセリン・脂肪酸エステルを、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有しているので、ライナー接着層の硬度の低下、およびライナーの接着強度の低下を抑えつつ、良好な滑り性を具備させることが可能になる。したがって、このキャップが口金部に螺着されたキャップ付きボトル缶を、キャップを回転させて開栓しようとしたときに、前記周壁部のライナー接着層が回転方向へ延ばされることを抑え、口金部の雄ねじ部の外周面側を良好に滑らせることが可能になり、ライナーの接着強度を低下させることなく開栓トルクを低減させることができる。
ここで、前記グリセリン・脂肪酸エステルはオリーブ油であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る接着塗料およびキャップによれば、ライナーの接着強度を低下させることなく開栓トルクの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1および図2は、この発明の一実施形態として示したキャップの概略構成を示すものである。
キャップ10は、アルミニウム合金等からなる圧延材にカップ成形加工等が施されて形成され、天面部11、およびこの天面部11の周縁から略垂下してなる周壁部12を備えるキャップ本体10aと、このキャップ本体10aの内面側、具体的には天面部11の内面側に、当該内面の全域を覆うようにして接着されたライナー10bとを備えている。
【0012】
周壁部12は、天面部11側の端部、つまり上端部に全周にわたって複数の凹凸形状が形成されたナール13と、このナール13の下端に連設され当該ナール13より小径とされたグルーブ14と、このグルーブ14の下端に連設され当該グルーブ14より大径とされるとともに、平滑面とされた雌ねじ部形成予定部15と、この雌ねじ部形成予定部15の下端に連設され当該雌ねじ部形成予定部15より大径とされた破断部16と、この破断部16の缶軸方向略中央部に周方向に所定の間隙をあけて複数形成され当該周壁部12を貫通するスコア17と、破断部16の下端に連設され下方に向かうに従い漸次拡径したフレア18とを備えている。
【0013】
なお、ナール13の凹凸形状のうち凹部の上端部には、周壁部12を貫通するスリットが形成されている。また、キャップ本体10aの外径は約38mm、キャップ周壁部12の肉厚は約0.25mmとされている。
【0014】
このように構成されたキャップ10がボトル缶2に被着された状態を図2に示す。
この図において、キャップ10は、内容物が充填されたボトル缶2の口金部2dを被覆するように配設されている。キャップ天面部11の外面における外周縁部には、径方向外方に向かうに従い漸次缶軸方向下方に延びる段部11aが形成されており、この段部11aにより、ライナー10bをボトル缶カール部2eに密接させている。また、雌ねじ部形成予定部15に、ボトル缶雄ねじ部2cのリードに沿って雌ねじ部22が形成され、フレア18の下部がボトル缶口金部2dの膨出部2fの下部に巻き込まれている。
【0015】
次に、キャップ本体10aの内面に形成された塗膜について説明する。この塗膜は、キャップ本体10aの内面の全域に亙って形成された化成皮膜(クロム若しくはジルコニウム)または陽極酸化皮膜の表面に、サイズコート層とライナー接着層とがこの順に積層された構成とされている。なお、サイズコート層は、エポキシ−フェノール系樹脂、エポキシ−尿素系樹脂若しくはポリエステル−アミノ系樹脂により形成されている。
【0016】
ライナー接着層は、主剤としてのエポキシ−フェノール系樹脂と、ライナー接着成分としてのポリオレフィン系樹脂と、潤滑成分としてのグリセリン・脂肪酸エステルとを主として含有しており、これらを有機溶媒に分散させた塗料により形成されている。なお、これらの他、ライナー接着層を形成する際の取り扱い性向上を図る等のため、増粘剤、安定剤等が添加されている。
以上の主剤、ポリオレフィン系樹脂、グリセリン・脂肪酸エステル、および有機溶媒等を含有する塗料を以下、「接着塗料」という。
【0017】
エポキシ−フェノール系樹脂は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを調整することにより得られる。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基若しくは水酸基に各種変性剤を反応させた変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのエポキシ樹脂のうち1種で、または2種以上を混合して用いることができる。
フェノール樹脂は、例えばフェノール類とアルデヒド類とを反応触媒の存在下で縮合反応させて得られる。フェノール類としては、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、フェノール、p−エチルフェノール、キシレノール、m−エチルフェノール、ビスフェノールA等が挙げられ、これらのうち1種で、または2種以上混合して用いることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トリオキサン、フルフラール等が挙げられ、これらのうち1種で、または2種以上混合して用いることができる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂は、形成するライナー接着層とライナー10bとの良好な接着を実現するものであって、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のオレフィン類の共重合体としてのポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはこれらを変性させた変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等が挙げられ、これらのうち1種で、または2種以上混合して用いることができる。
【0019】
グリセリン・脂肪酸エステルは、脂肪酸とポリオール化合物とがエステル結合したもの(例えばオリーブ油)であって、形成するライナー接着層に滑り性を具備させることができるようになっている。
そして、このグリセリン・脂肪酸エステルは、前記接着塗料中にエポキシ−フェノール系樹脂の重量の0%より大きく1%以下の重量で含有されている。
【0020】
以上説明したように本実施形態に係るキャップ10によれば、接着塗料が、グリセリン・脂肪酸エステルを、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有しているので、ライナー接着層の硬度の低下、およびライナー10bの接着強度の低下を抑えつつ、良好な滑り性を具備させることが可能になる。したがって、このキャップ10が口金部2dに螺着されたキャップ付きボトル缶を、キャップ10を回転させて開栓しようとしたときに、周壁部12のライナー接着層が回転方向へ延ばされることを抑え、口金部2dの雄ねじ部2cの外周面側を良好に滑らせることが可能になり、ライナー10bの接着強度を低下させることなく開栓トルクを確実に低減させることができる。
【0021】
ここで、以上説明した作用効果を検証するために、エポキシ−フェノール系樹脂、およびグリセリン・脂肪酸エステルの含有量を異ならせた複数種のキャップを形成し、これらのキャップをそれぞれ、ボトル缶2の口金部2dに螺着して、その開栓トルクを測定した。開栓トルクは、キャップが口金部2dに対して回転し始めるときのトルク値をトルクメータにより測定した。
【0022】
この結果、図3に示すように、グリセリン・脂肪酸エステルが、前記接着塗料中に、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%より多く含有されている、または全く含有されていないと開栓トルクは約200N・cmと大きくなり、グリセリン・脂肪酸エステルが、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有されていれば、開栓トルクが165N・cm以下と小さくできることが確認された。
【0023】
また、前記複数種のキャップそれぞれについて、ライナーの接着強度を測定した。結果、図3に示すように、グリセリン・脂肪酸エステルが、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%より多く含有されていると、ライナーの接着強度は、グリセリン・脂肪酸エステルを全く含有していない比較例4の接着強度の半分より小さくなるが、グリセリン・脂肪酸エステルが、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有されていれば、比較例4の接着強度と同等に維持できることが確認された。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
ライナーの接着強度を低下させることなく開栓トルクを低減させることができる接着塗料およびキャップを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したキャップの一部破断側面図である。
【図2】図1のキャップがボトル缶の口金部に螺着された状態を示す一部破断側面図である。
【図3】本発明の作用効果を検証した試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 キャップ
10a キャップ本体
10b ライナー
11 天面部
12 周壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップの内面側に塗布されて、該内面側にライナーを接着する接着塗料であって、
エポキシ−フェノール系樹脂、およびグリセリン・脂肪酸エステルを含有し、グリセリン・脂肪酸エステルは、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有されていることを特徴とする接着塗料。
【請求項2】
天面部、および該天面部の周縁から略垂下してなる周壁部を備え、これらの内面に塗膜が形成されたキャップ本体と、該キャップ本体の内面側に接着されたライナーとを備えたキャップであって、
前記塗膜は、前記ライナーを前記キャップ本体の内面側に接着するライナー接着層を備え、該ライナー接着層は、エポキシ−フェノール系樹脂、およびグリセリン・脂肪酸エステルを含有するとともに、グリセリン・脂肪酸エステルを、エポキシ−フェノール系樹脂の重量の1%以下の重量で含有する接着塗料により形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項3】
請求項1記載の接着塗料、または請求項2記載のキャップにおいて、
前記グリセリン・脂肪酸エステルはオリーブ油であることを特徴とする接着塗料、またはキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−22585(P2007−22585A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206716(P2005−206716)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】