説明

接着性材料

【課題】インクジェットプリンタによる印刷することができ、またプリンタ適性が良好な接着性材料であって、ホットラミネート方式による接着が可能であると共に、耐熱ブロッキング性を有し、耐傷性、防汚性に優れた接着性材料、および、接着剤を使用せずに単純な工程で製造することができ、耐傷性、防汚性に優れたディスプレー材料を提供する。
【解決手段】接着層、接着層の上の基材層、および基材層の上の仮基材層を有する積層シートからなる接着性材料において、接着層を、融点が80℃以下の樹脂からなり、ホットメルト接着性を有する層とし、仮基材層を、接着層と接着しない層とする。また、この接着性材料を別素材に積層してディスプレー材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱ブロッキング性を有する接着性材料、およびこの接着性材料をホットメルト接着して作製されるディスプレー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレー材料、表示材料等の分野においては、耐久性を高めるために、ディスプレー材料に施した画像の表面にラミネート加工を施す場合がある。このようなラミネート加工としては、粘着加工を施したプラスチックフィルムを貼り付けるコールドラミネートといわれる方式と、ホットメルト接着剤をコーティングしたプラスチックフィルムを貼り付けるホットラミネートといわれる方式がある。
【0003】
上記ホットラミネート方式は、熱ラミネーターが必要であることから、新たな設備投資が必要であることが多く、日本国内では一般的にはコールドラミネート方式が主流である。ここで、コールドラミネート方式は、湿度や紫外線の影響を受けやすく、外的要因により粘着層の変色や反り等、不具合が発生しやすいという欠点を有する。これに対して、ホットラミネート方式は、加熱されたときのみ接着性を発揮することから、一般的に外的環境の影響を受けにくく、接着前の位置合わせ等が容易であるという利点を有する。よって、設備さえあれば、ホットラミネート方式は、簡易なディスプレー材料の製作方法として好ましい方法であるといえる。
【0004】
特許文献1には、透明基材の片面に、感熱接着性(ホットメルト接着性)と水性インクの受容性とを有するインク受容層を形成した記録媒体が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、着色樹脂層、基材層、および粘着材層がこの順に積層され、必要により粘着剤層に離型材層が貼着されている、粘着シートが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、基体上にインク受容層、および最外層として表面層を有するインクジェット用記録材が記載されている。
【特許文献1】特開2002−67481号公報
【特許文献2】特開2002−69398号公報
【特許文献3】特開2001−287447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の記録媒体のように、ホットメルト接着性のある層を有する場合、ホットメルト接着層を構成している樹脂が低融点である場合が多く、比較的低温で接着性を発現してしまうために、例えば、記録媒体を巻物にした場合においては、輸送中等の間に基材とホットメルト接着層がブロッキングしてしまう恐れがある。
【0008】
また、このようなブロッキングを防止するために、特許文献2の粘着シートのように、離型材層を接着層上に設けて、接着剤層と他の樹脂層との接触を防止し、巻取り時のブロッキングを防止することが考えられる。しかし、接着剤層上に離型材層が貼着されていたのでは、ラミネート前に離型材層を剥離する必要があり、その作業が面倒となる。また、インクジェット記録材料である場合においては、印刷層側に離型材層があったのでは、そのまま印刷することができないという不具合が生じることとなる。また、特許文献3のインクジェット用記録材においても、ロールに巻き取ったときに表面層と基体との間で密着し、ブロッキングを生じるという問題があった。
【0009】
また、基材層と接着層等とのブロッキングを防止する方法としては、接着層と基材層とをお互いに接着しない材料にて構成することが考えられる。しかし、このような接着層と基材層とを積層するためには、これらを接着することができる特別な接着層を設ける必要があり、生産コストが高くなってしまう問題があった。
【0010】
また、ディスプレー材料はその外観が重要であり、きれいな画像を印刷できても表面に傷がつくと外観が損なわれ、意匠性が低下してしまう。そのため、場合によっては加工時や取り付け時の傷付き防止のために事前に表面保護フィルムを貼り付け表面を保護することが必要とされる。
【0011】
また、最近のインクジェットプリンタは用紙をセットした際に、光学センサーによりフィルムの端部を感知し用紙幅を認識するものが多い。しかし、インクジェット記録材料が透明である場合は、光学センサーがこの記録材料を感知することができずに、用紙認識に不具合を生じる場合があった。よって、透明であるが、インクジェットプリンタが感知することができるような、プリンタ適性が良好であるインクジェット記録材料が求められていた。
【0012】
そこで、本発明は、以上のような問題点に鑑みて、インクジェットプリンタにより印刷することができ、またプリンタ適性が良好な接着性材料であって、ホットラミネート方式による接着が可能であると共に、耐熱ブロッキング性を有し、耐傷性、防汚性に優れた接着性材料、および、接着剤を使用せずに単純な工程で製造することができ、耐傷性、防汚性に優れたディスプレー材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0014】
第一の本発明は、接着層(30)、接着層の上の基材層(20)、および基材層の上の仮基材層(10)を有する積層シートであって、接着層(30)が、融点が80℃以下の樹脂からなると共に、ホットメルト接着性を有する層であり、仮基材層(10)が、接着層(30)と接着しない層である、接着性材料(100)である。
【0015】
上記の接着性材料(100)において、接着層(30)および仮基材層(10)の溶解度パラメーター(SP値)の差は、3以上であることが好ましい。
【0016】
上記の接着性材料(100)において、仮基材層(10)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物のいずれかからなる層であることが好ましい。
【0017】
上記の接着性材料(100)において、仮基材層(10)は充填剤を含有している層であることが好ましい。
【0018】
上記の接着性材料(100)において、仮基材層(10)の光線透過率が30%以下であることが好ましい。
【0019】
上記の接着性材料(100)において、接着層(30)はインク受容性を有する層であることが好ましい。
【0020】
上記の接着性材料(100)において、接着層(30)は下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂からなる層であることが好ましい。
【0021】
【化1】

[一般式(1)において、Xは活性水素基を2個有する有機化合物の残基であり、Rはジカルボン酸類化合物残基であり、Aは下記一般式(2)によって表される。]
【0022】
【化2】

[一般式(2)において、Zは炭素数2以上の炭化水素基であり、a、b、cはそれぞれ1以上の整数であり、a、b、cより計算される質量比、{44×(a+c)/(炭素数4以上のアルキレンオキシドの分子量)×b}は、80/20〜94/6である。また、c/(a+c)は0.5以上1.0未満である。]
【0023】
第二の本発明は、上記の接着性材料(100)、および、この接着性材料(100)における接着層(30)側がホットメルト接着した別素材(40)を備えて構成される、ディスプレー材料(200)である。
【0024】
第三の本発明は、上記の接着性材料(100)の接着層(30)側を、別素材(40)にホットメルト接着する工程、を有するディスプレー材料(200)の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、インクジェットプリンタにより印刷することができ、またプリンタ適性が良好な接着性材料であって、ホットラミネート方式による接着が可能であると共に、耐熱ブロッキング性を有し、耐傷性、防汚性に優れた接着性材料を提供することができる。また、本発明の接着性材料を用いることによって、接着剤を使用せずに単純な工程で、耐傷性、防汚性に優れたディスプレー材料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に本発明の接着性材料の層構成を模式的に示す。本発明の接着性材料100は、接着層30、この接着層30の上に形成される基材層20、およびこの基材層20の上に形成される仮基材層10を有する積層フィルムから構成されている。言い換えると、この積層フィルムは、基材層20の片面に接着層30が形成され、他方の面に仮基材層10が形成されている。
【0027】
<接着層30>
接着層30は、ホットメルト接着性を有する層であり、後で説明する基材層20および別素材40と、接着剤を使用せずに積層することができる。接着層30は、融点が80℃以下の、ホットメルト接着性を有する樹脂から構成されている層である。融点が80℃以下の、ホットメルト接着性を有する樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ゴム系の樹脂を挙げることができる。接着層30を構成するホットメルト接着性を有する樹脂の融点が大きすぎると、ホットメルト接着性を発揮する温度が高すぎてしまい、積層するときの熱で基材層20や別素材40に変形などの悪影響が生じる(別素材40については図2を参照。)。
【0028】
また、接着層30は、ホットメルト接着性のみならず、インク受容性をも有する層であることが好ましい。これにより、接着層30に画像を印刷後、別素材40にホットラミネートすることによって、簡易にディスプレー材料200を製造することができる。
【0029】
接着層30を、ホットメルト接着性およびインク受容性の両方を有する層とするために、接着層30は、ホットメルト接着性およびインク受容性の両方の性質を併せ持つ親水性樹脂を主成分とする単一成分系として構成することもできるし、あるいは、ホットメルト接着性を有する樹脂に、インク受容性を持たせるための親水性樹脂および/または添加剤を混合して複合成分系として構成することもできる。
【0030】
以下、接着層30を構成する成分として、単一成分系を用いる場合について説明する。ホットメルト接着性およびインク受容性の両方の性質を併せ持つ親水性樹脂としては、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂を挙げることができる。
【0031】
【化3】

【0032】
一般式(1)において、Xは活性水素基を2個有する有機化合物の残基であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールA、アニリンプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。Rはジカルボン酸類化合物残基であり、例えば、環状ジカルボン酸化合物または直鎖状ジカルボン酸化合物が望ましく、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。
【0033】
上記ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、イタコン酸が挙げられる。上記ジカルボン酸無水物としては、上記各種ジカルボン酸の無水物が挙げられる。また、上記ジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、上記各種のジカルボン酸のメチルエステル、ジメチルエステル、エチルエステル、ジエチルエステル、プロピルエステル、ジプロピルエステル等が挙げられる。特に好ましくは、炭素数12〜36の直鎖状ジカルボン酸およびその低級アルキルエステルが挙げられ、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1,32−ドトリアコンタンメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
上記の低級アルキルエステルとしては、これらジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ジプロピルエステル等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、反応の容易性という観点から、上記ジカルボン酸無水物およびジカルボン酸の低級アルキルエステルを用いることが好ましい。これらは単独で、または2種以上併用して用いることができる。
【0035】
また、Aは下記一般式(2)によって表される。
【0036】
【化4】

【0037】
一般式(2)において、Zは炭素数2以上の炭化水素基であり、例えば好ましいものとしてはエチル基、プロピル基等のアルキル基が挙げられる。a、b、cはそれぞれ1以上の整数であり、a、b、cより計算される質量比、{44×(a+c)/(炭素数4以上のアルキレンオキシドの分子量)×b}は、80/20〜94/6である。80/20より小さくても、前記親水性樹脂として使用することができるが、この場合は、親水性が低下したり、インク吸水性、印刷適性が劣るものとなったり等の問題が生じる。一方、94/6を超えても、前記親水性樹脂として使用することがきできるが、この場合は、インクの滲み耐水性等の点で劣るという問題が生じる。a、b、cの割合を上述の範囲内とすることにより、親水性を失わず、かつ水に対して不溶化することができる。また、c/(a+c)は0.5以上1.0未満に設定される。
【0038】
接着層30を構成するポリアルキレンオキシド系樹脂の具体例としては、エチレングリコールにエチレンオキシドを付加重合した後、ブチレンオキシドを付加重合し、さらにエチレンオキシドを付加重合して得たポリアルキレンオキシドに、オクタデカン−1,18−ジカルボン酸メチルを加えエステル交換反応を行って得た樹脂(重量平均分子量:15万、融点:50℃、分解温度:230℃)を挙げることができる。
【0039】
上記の親水性樹脂を押出成形する場合に、親水性樹脂にトコフェロールなどの酸化防止剤を添加することで、熱分解等の問題を回避できる。
【0040】
以下、接着層30を構成する成分として、複合成分系を用いる場合について、説明する。ホットメルト接着性を有する樹脂に、インク受容性を持たせるための親水性樹脂および/または添加剤を混合して複合成分系として構成する場合における、インク受容性を持たせるための親水性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンオキシド等を用いることができる。
【0041】
この中で、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを親水性樹脂として用いた場合は、これらを単独で用いたのでは、接着層30に十分なインク受容性を持たせることができない。そこで、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを親水性樹脂として用いた場合は、以下において説明する多孔質の無機微粒子を添加剤として加える必要がある。
【0042】
上記インク受容性を持たせるための親水性樹脂の中でも、ポリエチレンオキシドが、親水性が非常に高いことから、好ましい。また、例えば、インク受容性を持たせるための新水性樹脂としては、上記した一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂を用いることもできる。
【0043】
ホットメルト接着性を有する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ロジン系ポリマー、ピネン系ポリマーおよびこれらの混合物、誘導体、共重合体や変性体等を用いることができる。また、ホットメルト接着性を有する樹脂としては、上記において例示した樹脂に対して、シランカップリング機能を付与したものや酸変性を行ったもの等を使用することもできる。これらの樹脂を用いた場合は、基材層20との接着強度、およびディスプレー材料200にするときにおける別素材40との接着強度をより高く維持することができる。
【0044】
親水性樹脂のインク吸収性を向上させるため多孔質の無機微粒子を添加することができるが、ここでいう無機微粒子としては、シリカやアルミナなどを用いることができる。また、空孔を制御したナノポーラスシリカやメソポーラスシリカ等の吸収能力の非常に高い無機微粒子を使用することもできる。
【0045】
接着層30において、疎水性成分であるホットメルト接着性を有する樹脂(以下、「疎水性成分」ということがある。)と、親水性成分であるインク受容性を持たせるための親水性樹脂(以下、「親水性成分」ということがある。)を混合する場合においては、疎水性成分であるホットメルト接着性を有する樹脂を海、親水性成分であるインク受容性を持たせるための親水性樹脂を島とする、海島構造とすることが好ましい。これは、高湿度下等において接着層30が吸湿し、親水性樹脂の凝集力が低下したときに、親水性樹脂が接着層30の組成の大部分すなわち海の構造をとっている場合においては、凝集力の低下すなわち基材層20および別素材40との接着力の低下が発現するからである。これに対して、疎水性成分が海の構造をとっている場合においては、接着層30が吸湿した際においても、その疎水性成分での接着力にて基材層20および別素材40との接着力を保持することができる。
【0046】
上記のような好ましい構造である海島構造とするために、親水性成分と疎水性成分の比率は、60:40〜30:70(親水性成分:疎水性成分)、好ましくは、50:50〜45:65(親水性成分:疎水性成分)とすることが望ましい。親水性成分が多すぎると、親水性部分が多くなり吸湿時の凝集力低下が発現する。一方、疎水性成分が多すぎると、接着層30のインク吸収性が低下する。
【0047】
親水性成分と疎水性成分との構造的結合性を高めるために、架橋構造を構築することが有効である。架橋には電子線、紫外線、ガンマ線などの放射線などで架橋を施す方法等の他、以下の方法を挙げることができる。
【0048】
親水性成分と疎水性成分とのインタラクションを持たせるための架橋を施す方法としては、例えば、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤を添加して製膜した後、紫外線光を適宜照射することにより架橋を行う等の方法を挙げることができる。ここで、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤とは、他の分子から水素を引き抜く形でラジカルを生成する光重合開始剤であり、本発明で用いることができる代表的な水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、あるいは、ベンジル、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、チオキサンソン、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、ミヒラーケトン、テトラ(t−ブチルパーオキシカルカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体の中から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。上記で例示した水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の中でも、透明性、硬化性の点でベンゾフェノンを用いることが好ましい。
【0049】
また、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤は、解裂タイプ光重合開始剤と混合して用いることもできる。
【0050】
水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の含有量は、接着層30の厚みや、紫外線照射条件に合わせて選択されるが、親水性成分および疎水性成分の全体を基準(100質量%)として、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、厚膜硬化性、透明性、経時安定性を考慮すると、0.05〜2.0質量%であることがより好ましい。水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の含有量が少なすぎると架橋が進行し難く、また、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の含有量が多すぎると、未反応の水素引き抜きタイプラジカル重合開始剤が多量に存在し、経時反応により吸水性に影響が出る。
【0051】
また、上記した接着層30を構成する成分としては、吸水性の調整のためにさらに、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル等を添加することができる。
【0052】
<基材層20>
基材層20としては、例えば、ハンドリングの良い二軸延伸ポリエステルフィルム、耐候性の良いアクリルシート、加工性の良いポリエステルやポリ塩化ビニル等の無延伸フィルム、透明性と耐衝撃性のよいポリカーボネートシート等を用いることができる。特に画像の視認性を良好なものとするため、できる限り透明性の高いフィルムを用いることが必要である場合は、ポリエステル樹脂からなるフィルムを用いることが好ましい。
【0053】
また、基材層20の表面は、易接着処理により接着力を向上されていることが好ましい。特に、基材層20の表面における接着層30を積層する側には、アンカーコートによる易接着処理が施されていることが好ましい。これにより、基材層20と接着層30との密着性を向上させることができる。ここで、アンカーコートによる易接着処理とは、きわめて薄い接着剤成分をコートし乾燥させておくことをいい、例えば、基材層20の表面にアンカー剤を塗布することによって行う処理をいう。アンカー剤の塗布方法としては、グラビアコート法で乾燥厚さ1〜10μmとなるように塗布するのが好ましい。
【0054】
<仮基材層10>
仮基材層10は、基材層20において接着層30を形成した面とは反対の面に形成され、接着性材料100の表層を形成する。また、接着性材料100における接着層30側が、別素材40にホットメルト接着して、後に説明するディスプレー材料200が形成されるので、仮基材層10は、ディスプレー材料200の表層を形成する。このように、仮基材層10は、基材層20の上に存在し、接着性材料100およびディスプレー材料200の保護フィルムとしての役割を有する。仮基材層10は、必要によって取り除かれ、表面に汚れおよび傷がない基材層20を有する接着性材料100およびディスプレー材料200とすることができる。
【0055】
仮基材層10は、接着層30と接着しない層である。これにより本発明の接着性材料100に耐熱ブロッキング性を付与することができる。つまり、接着性材料100を巻き取って保存、輸送等した場合において、仮基材層10と接着層30とが接触しても、これらの層間で接着することはない。
【0056】
接着層30と仮基材層10とを、接着しないようにするために、接着層30と仮基材層10との溶解度パラメーター(SP値)の差を、3以上とすることが好ましい。
【0057】
溶解度パラメーター(SP値)とは、凝集エネルギー密度の平方根で表される値である。この溶解度パラメーターが近い物質は、互いに溶解しやすいという性質を有すると共に、互いに接着し易いという性質を有する。本発明は、この溶解度パラメーターの差が一定値以上となるように、接着層30および仮基材層10の材料を選択して、接着性材料100に耐熱ブロッキング性を付与したものである。
【0058】
仮基材層10を形成する樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物のいずれかであることが好ましい。仮基材層10をこれら溶解性パラメーターの小さいオレフィン系の材料により構成することによって、仮基材層10および接着層30の溶解度パラメーターの差を3以上にすることが容易となる。
【0059】
仮基材層10は、充填剤を含有している層であることが好ましい。これにより、仮基材層を着色し、インクジェットプリンタの光学センサーが感知できるものとして、本発明の接着性材料100にプリンタ適性を付与することができる。充填剤としては、特に限定なく、無機系および有機系充填剤を使用することができる。この中でも、発色に悪影響を与えない点から、無機系充填剤である酸化チタンを使用することが好ましい。
【0060】
充填剤の添加量としては、仮基材10全体の質量を基準(100質量%)として、0.1〜10質量%であることが好ましい。充填剤の添加量が少なすぎると、プリンタの光学センサーが感知することができず、プリンタ適性を付与できない場合がある。一方、充填剤の添加量が多すぎると、フィルムの引き裂き性等機械物性に悪影響を及ぼすのに加え製膜性にも劣るものになる。
【0061】
仮基材層10の光透過率は、30%以下であることが好ましい。光透過率をこのように調整することで、本発明の接着性材料100を、プリンタの光学センサーが感知することができる、プリンタ適性に優れたものとすることができる。
【0062】
仮基材層10における、基材層20と積層する側には、粘着剤が塗布されている。粘着剤としては、仮基材層10を基材層20上に保持することができ、かつ、仮基材層10を剥離した場合に、粘着成分が基材層20上に残存しないものであれば、制限なく使用することができ、例えば、日本合成化学工業社製のコーボニールWO−4158を使用することができる。粘着剤の塗布量としては、5〜40g/mとすることが好ましい。
【0063】
<接着性材料100の製造方法>
本発明の接着性材料100の製造方法について以下説明する。本発明の接着性材料100は、接着層30、基材層20、仮基材層10が、この順で積層された構成を有するが、各層を積層する順序は特に限定されず、どれを先に積層してもよい。
【0064】
以下、一例として、基材層20と接着層30とを積層した後に、仮基材層10を積層する製造方法について説明する。
【0065】
基材層20と接着層30との積層は、基材層20上に接着層30を溶融押出ラミネートすることによって行うことができる。具体的には、接着層30を構成する樹脂と必要によって添加される無機微粒子等の添加剤とを、押出機において溶融混練し、これをダイから連続的に押し出して、基材層20上に積層することによって行われる。
【0066】
仮基材層10は、この積層工程とは別工程で製造される。仮基材層10を構成する樹脂と必要により添加される充填剤とを、押出機において溶融混練し、これをダイから連続的に押し出して、仮基材層10を形成する。形成した仮基材層10には、基材層20と積層する面に、粘着剤が塗布される。そして、仮基材層10は、この粘着剤を介して、基材層20における接着層30を積層した面とは反対の面に、粘着され、本発明の接着性材料100が製造される。
【0067】
なお、基材層20と接着層30との積層は、上記の押出ラミネート以外の方法によって行うこともできる。例えば、あらかじめ接着層30を形成しておいてから、基材層20と接着層30とを重ね合わせた状態で加熱加圧することによって、基材層20と接着層30とを積層することができる。
【0068】
<ディスプレー材料200の製造方法>
本発明のディスプレー材料200は、接着性材料100における接着層30の基材層20が積層された面とは反対の面を、別素材40にホットメルト接着することによって製造することができる。別素材40としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS等の樹脂からなるシート、プレート、発泡成形体等を用いることができる。このように、本発明のディスプレー材料200は、接着剤を使用せずに、単純な工程により製造することができる。よって、得られたディスプレー材料200は、外的環境によって反りが生じることがない。
【0069】
なお、本発明の接着性材料100における接着層30がインク受容性を有するものである場合は、接着性材料100の接着層30側に印刷を施してから、別素材40に積層される。印刷方法は、特に限定されないが、接着層30をインク受容性が良好な層とした場合は、インクジェットプリントによっても、良好な印刷を施すことができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
エチレングリコールにエチレンオキシドを付加重合した後、ブチレンオキシドを付加重合し、さらにエチレンオキシドを付加重合して得たポリアルキレンオキシドにオクタデカン−1,18−ジカルボン酸メチルを加えエステル交換反応を行って重量平均分子量15万の樹脂A(融点50℃、分解温度230℃)を得た。
【0071】
この樹脂AをT型マルチマニホールドダイにて、基材層である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーU94♯100)に押出ラミネートして、基材層上に接着層を形成した(接着層の厚さ:30μm)。
【0072】
別工程において、ポリエチレンと、このポリエチレンの質量を基準(100質量%)として5質量%の酸化チタンとを溶融混練して、押出成形することにより厚さ30μmの仮基材層を得た。そして、この仮基材層上に、コーボニールWU4158を20g/mで塗布し、基材層における接着層を形成した面とは反対側の面に、塗布した粘着剤を介して積層して接着性材料を得た。
【0073】
(実施例2)
実施例1において、市販のホットメルト接着剤(ヤスハラケミカル社製ヒロダイン7524)を用いて接着層を形成した外は、実施例1と同様にして、接着性材料を得た。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、基材層上の接着層が積層された面とは反対側の面に、仮基材層を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、接着性材料を得た。
【0075】
(比較例2)
実施例2において、基材層上の接着層が積層された面とは反対側の面に、仮基材層を積層しなかった以外は、実施例2と同様にして、接着性材料を得た。
【0076】
(比較例3)
市販のインクジェット記録材料「ピクトリコ(透明フィルム品)」(ピクトリコ社製)を使用した。
【0077】
<評価方法>
(耐熱ブロッキング性)
上記実施例および比較例で得られた、接着性材料およびインクジェット記録材料を、幅300mm、長さ20mの大きさとし、これを直径2インチ(5.08cm)の紙巻で巻き取って、小巻加工を施した。そして、この小巻加工を施したサンプルに対して、熱風乾燥機内で80℃にて24時間保管した。その後、サンプルを巻き出した際に、フィルム同士が接着することなくスムーズに広げることができた場合を「○」、フィルム同士が接着しているためスムーズに広げることができない箇所が一部でもある場合を「×」として評価した。
【0078】
(プリンタ適性)
上記実施例および比較例で得られた、接着性材料およびインクジェット記録材料を、HP社製インクジェットプリンタ「デザインジェット5500」にセットして印刷を行った。そして、プリンタの光学センサーがサンプルの端部を感知して用紙幅を認識でき、問題なく印刷ができた場合を「○」、プリンタの光学センサーに感知されず用紙幅が認識できないため、印刷時に用紙エラーが発生した場合を「×」として、プリンタ適性を評価した。
【0079】
(耐傷性)
上記実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2で得られた接着性材料について、上記のプリンタ適性における印刷を行った後に、接着層をポリ塩化ビニル板(厚さ:1mm)に熱ラミネートしてディスプレー材料を作製した。熱ラミネートは、ロール温度100℃、ロール線圧118N/cm、の一対のロール間で、0.5m/分の速度で行った。
【0080】
また、上記比較例3のインクジェット記録材料については、上記のプリンタ適性における印刷を行った後に、粘着材であるコーポニールWU−4158を塗布して、ポリ塩化ビニル板(厚さ:1mm)にコールドラミネートしてディスプレー材料を作製した。
【0081】
そして得られた各ディスプレー材料に対して、90度折り曲げ加工を施し、10枚を重ねて車に載積し、60分間輸送を行った後、展示場所にて展示を行った。そして、その間についた表面の傷の有無を目視にて確認した。ディスプレー材料の表面に傷が視認できない場合を「○」、傷が視認できる場合を「×」として評価した。
【0082】
【表1】

【0083】
<評価結果>
実施例1および実施例2の接着性材料においては、すべての評価項目において良好な結果を示した。なお、実施例2および比較例2においては、インクジェット印刷可能な接着層を用いていないので、プリンタ適性については評価していない。
【0084】
これに対して、比較例1および2の接着性材料においては、仮基材層が存在していないため、耐熱ブロッキング性が劣っていた。
【0085】
また、比較例1および3の接着性材料は、着色された仮基材層を有していないので、いずれも透明なフィルムである。よって、プリンタの光学センサーで用紙を認識することができず、プリンタ適性が劣ったものであった。
【0086】
また、比較例1〜3の接着性材料は、表面を保護する仮基材層を有していないので、耐傷性が劣ったものであった。
【0087】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う接着性材料、ディスプレー材料、および、ディスプレー材料の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の接着性材料の一実施形態の層構成を示す模式図である。
【図2】本発明のディスプレー材料の一実施形態の層構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0089】
10 仮基材層
20 基材層
30 接着層
40 別素材
100 接着性材料
200 ディスプレー材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層、前記接着層の上の基材層、および前記基材層の上の仮基材層を有する積層シートであって、
前記接着層が、融点が80℃以下の樹脂からなると共に、ホットメルト接着性を有する層であり、前記仮基材層が、前記接着層と接着しない層である、接着性材料。
【請求項2】
前記接着層および前記仮基材層の溶解度パラメーター(SP値)の差が、3以上である、請求項1に記載の接着性材料。
【請求項3】
前記仮基材層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物のいずれかからなる層である、請求項1または2に記載の接着性材料。
【請求項4】
前記仮基材層が充填剤を含有している層である、請求項1〜3のいずれかに記載の接着性材料。
【請求項5】
前記仮基材層の光線透過率が30%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の接着性材料。
【請求項6】
前記接着層がインク受容性を有する層である、請求項1〜5のいずれかに記載の接着性材料。
【請求項7】
前記接着層が、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂からなる層である、請求項1〜6のいずれかに記載の接着性材料。
【化1】

[一般式(1)において、Xは活性水素基を2個有する有機化合物の残基であり、Rはジカルボン酸類化合物残基であり、Aは下記一般式(2)によって表される。]
【化2】

[一般式(2)において、Zは炭素数2以上の炭化水素基であり、a、b、cはそれぞれ1以上の整数であり、a、b、cより計算される質量比、{44×(a+c)/(炭素数4以上のアルキレンオキシドの分子量)×b}は、80/20〜94/6である。また、c/(a+c)は0.5以上1.0未満である。]
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の接着性材料、および、この接着性材料における接着層側がホットメルト接着した別素材を有する、ディスプレー材料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の接着性材料の接着層側を、別素材にホットメルト接着する工程、を有するディスプレー材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−7637(P2008−7637A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179548(P2006−179548)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】