説明

接着性組成物

【課題】 新規な接着性ポリマー複合材を提供する。
【解決手段】 30未満のムーニー粘度(ML1+4/100℃)を有する少なくとも1種の所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を含有する接着性ポリマー複合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を含有する接着性ポリマー複合材(composite)、30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種のニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を混合することを含む該ポリマー複合剤の製造方法、および所望により1または複数の支持手段に対して積層または介在させた該複合材を含有する自立造形品に関する。さらに別の観点によれば、本発明は、所望により1または複数の支持手段に対して積層または介在された該接着性ポリマー複合材を含有するテープに関する。さらにまた別の観点によれば、本発明は該接着性ポリマー複合材を含有するシーラント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム;NBR、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種の不飽和ニトリルおよび所望による他の成分を含有するコポリマー)の選択的水素化によって調製される水素化ニトリルゴム(HNBR)は特殊なゴムであって、非常に良好な耐熱性、優れた耐オゾン性と耐薬品性、および優れた耐油性有する。該ゴムに対して高度の機械的特性(特に、高い耐磨耗性)が付与される場合、NBRおよびHNBRが広範囲の分野において用途を有することは驚くべきことではなく、このような適用分野としては、特に、自動車産業(シール、ホース、ベアリングパッド)、オイル産業(ステーター、ウェルのヘッドシール、バルブプレート)、電気産業(ケーブルの外装)、機械工学産業(ホイール、ローラー)、および造船産業(パイプシール、カップリング)等が例示される。
【0003】
市販されているHNBRは、55〜105のムーニー粘度、200000〜500000g/molの分子量、3.0よりも大きな多分散性、および1〜18%の残留二重結合(RDB)含有量(IRスペクトロスコピーによる値)を有する。
【0004】
HNBRを加工する場合の1つの制約は、比較的高いムーニー粘度に起因する。実用上は、より小さな分子量とより低いムーニー粘度を有するHNBRはより良い加工性を有する。素練り(機械的破壊)および化学的手段(例えば、強酸を用いる処理)によってポリマーの分子量を低減させる試みが成されているが、このような方法は、ポリマー中へ官能基(例えば、カルボキシル基やエステル基)を導入してポリマーの微細構造を変化させるという難点を有する。これによって、ポリマーの特性に不利な変化がもたらされる。さらに、この種の試みは、これらの本来的な特性に起因して、広い分子量分布を有するポリマーをもたらす。
【0005】
55よりも低いムーニー粘度と改良された加工性を有すると共に、現時点で入手し得る水素化ニトリルゴムと同様の微細構造を有する水素化ニトリルゴムは、現在の技術を用いて製造することは困難である。HNBRを製造するためのNBRの水素化によって、原料ポリマーの粘度は増加する。ムーニー増加比(MIR)は、ポリマーのグレード、水素化度および供給原料の特性によってある程度左右されるが、一般的には約2である。さらに、NBR自体の製造に関連する制約は、HNBR供給原料の低い粘度範囲を決定する。現在のところ、最も低いムーニー粘度を有する入手可能な製品は、「サーバン(登録商標)VP KA 8837」(バイエル社製)であって、該製品は55(ML 1+4/100℃)のムーニー粘度と18%のRDBを有する。
【0006】
共係属中の特許文献1、2、3および4には、ムーニー粘度の低いNBRとHNBRおよびこれらの製造方法が開示されている。これらの特許文献に開示されているNBRまたはHNBRは本発明においても十分に適切なものであるが、これらの特許文献には、ムーニー粘度の低いNBRおよび/またはHNBRを含有するポリマー複合材並びにこれらの製造方法に関しては全く開示するところがない。
【0007】
接着剤(グルー)は、2つの表面の間に結合を形成させて該結合を維持する物質であり、また、シーラント(コーキング材)は、2つの物質の間のギャップまたはジョイントを充填して液体、固体または気体の透過を防止する物質である。これらの2群の物質は一緒に考察される場合が多い。これは、所定の配合物は両方の機能を発揮する場合が非常に多いからである。
【0008】
シーラントは1成分系の溶剤蒸発型硬化性製品および熱可塑性ホットメルトとして入手可能である。このようなシーラントにおいては硬化過程はなく、有効成分は、溶剤の消失および/または温度低下によってその機能を発揮する。シーラントが適用されると、溶剤は蒸発するか、または多孔性物質中へ移動し、強靭で弾性のある物資が残存する。このタイプのシーラントは、化学的に硬化するタイプの他のシーラントとは対照を成す。
【特許文献1】カナダ国特許出願CA−2351961号明細書
【特許文献2】カナダ国特許出願CA−2357470号明細書
【特許文献3】カナダ国特許出願CA−2350280号明細書
【特許文献4】カナダ国特許出願CA−2357465号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、当該分野の上記の事情に鑑み、新規な接着性ポリマー複合材、該ポリマー複合材の製造方法、並びに該ポリマー複合材を含有する自立造形品、テープおよびシーラント組成物を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの観点によれば、本発明は、30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を含有する接着性ポリマー複合材に関する。NBRは完全または部分的に水素化されているもの(「HNBR」)が好ましい。特に本発明は、20よりも低い(好ましくは10よりも低い)ムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマーを含有する接着性ポリマー複合材に関する。
【0011】
別の観点によれば、本発明は、30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を混合することを含む該ポリマー複合材の製造方法に関する。
【0012】
また、別の観点によれば、本発明は、所望により1または複数の支持手段に対して積層または介在された該複合材を含有する自立造形品に関する。
【0013】
さらに別の観点によれば、本発明は、所望により1または複数の支持手段に対して積層または介在された該接着性ポリマー複合材を含有するテープに関する。
【0014】
さらにまた別の観点によれば、本発明は、該接着性ポリマー複合材を含有するシーラント組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による接着性ポリマー複合材は永続的に粘着性と柔軟性を維持するので、多種多様な分野において利用可能であり、特に高温条件下での用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書において、「ニトリルポリマー」または「NBR」という用語は広義で使用するものであって、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルおよび所望による1種もしくは複数種の共重合性モノマーから誘導される繰返単位を有するコポリマーも包含する。
【0017】
共益ジエンはいずれも既知の共役ジエンであってもよく、特にC4〜C6共役ジエンである。好ましい共役ジエンはブタジエン、イソプレン、ピペリレン、2,3-ジメチルブタジエンおよびこれらの混合物である。より好ましいC4〜C6共役ジエンはブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物である。最も好ましいC4〜C6共役ジエンはブタジエンである。
【0018】
α,β−不飽和ニトリルはいずれの既知のα,β−不飽和ニトリルであってもよく、特にC3〜C5α,β−不飽和ニトリルである。好ましいC3〜C5α,β−不飽和ニトリルはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルおよびこれらの混合物である。最も好ましいC3〜C5α,β−不飽和ニトリルはアクリロニトリルである。
【0019】
好ましくは、コポリマーは、1種もしくは複数種の共役ジエンから誘導される繰返単位40〜85重量%および1種もしくは複数種の不飽和ニトリルから誘導される繰返単位15〜60重量%含有する。より好ましくは、コポリマーは、1種もしくは複数種の共役ジエンから誘導される繰返単位60〜75重量%および1種もしくは複数種の不飽和ニトリルから誘導される繰返単位25〜40重量%含有する。最も好ましくは、コポリマーは、1種もしくは複数種の共役ジエンから誘導される繰返単位60〜70重量%および1種もしくは複数種の不飽和ニトリルから誘導される繰返単位30〜40重量%含有する。
【0020】
所望により、コポリマーは1種もしくは複数種の他の共重合性モノマー(例えば、不飽和カルボン酸)から誘導される繰返単位を含有していてもよい。適当な不飽和カルボン酸としては、特に限定的ではないが、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの混合物が例示された。1種もしくは複数種の共重合性モノマーから誘導される繰返単位は、ニトリルゴムのニトリル部分またはジエン部分と置換されてもよく、この場合、当業者には明らかなように、前記の数値は全体が100重量%になるように調整されなければならない。上記の不飽和カルボン酸の場合、ニトリルゴムは、1種もしくは複数種の不飽和カルボン酸から誘導される繰返単位を該ゴムの1〜10重量%の範囲で含有するのが好ましく、この含有量は共役ジオレフィンの対応する含有量と置換される。
【0021】
所望による他の好ましいモノマーは不飽和なモノ−もしくはジ−カルボン酸またはこれらの誘導体(例えば、エステルおよびアミド等)である(これらの混合物も含む)。
【0022】
本発明における「水素化」とは、出発ニトリルポリマー/NBR中に存在する残留二重結合(RDB)の50%よりも多くが水素化されることを意味し、好ましくはRDBの90%よりも多くが水素化され、より好ましくはRDBの95%よりも多くが水素化され、最も好ましくはRDBの99%よりも多くが水素化される。
【0023】
ゴムのムーニー粘度はASTMテストD1646に従って、決定した。
本発明によるポリマー複合材は、ムーニー粘度(ASTMテスト D1646によるML 1+4/100℃)が30未満(特に、25未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、さらに好ましくは10未満)の少なくとも1種の、所望により水素化されたNBRを含有する。
【0024】
低いムーニー粘度を有し、所望により水素化される本発明によるNBRは3未満の多分散性インデックスを有する。該インデックスの好ましさの順位は次の通りである:2.9未満<2.8未満<2.7未満<2.6未満<2.5未満<2.4未満<2.3未満<2.2未満。
【0025】
本発明は、所望により水素化されるNBRの特定の製造方法に限定されるものではない。しかしながら、本発明によるNBR/HNBRは、次の特許文献に開示されているような2工程合成法によって容易に得ることができ、該合成法は同一の反応装置または別々の反応器を用いて実施してもよい:CA-2351961、CA-2357470、CA-2350280およびCA-2357465。これらの特許文献は、該合成法の手順を実施するための本明細書の一部を成すものである。
【0026】
工程1:メタセシス
メタセシス反応は下記の一般式I、II、IIIまたはIVで表される1種または複数種の化合物の存在下でおこなわれる。
【化1】

【0027】
式Iにおいて、
MはOsまたはRuを示し、
RおよびR1は相互に独立して、水素原子またはC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C1〜C20アルキル、アリール、C1〜C20カルボキシレート、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C1〜C20アルキルチオ、C1〜C20アルキルスルホニルおよびC1〜C20アルキルスルフィニルから成る群から選択される炭素水素基を示し、
XおよびX1は相互に独立していずれかのアニオン性配位子を示し、
LおよびL1は相互に独立していずれかの中性配位子(例えば、ホスフィン、アミン、チオエーテルまたはイミダゾリジニリデン)またはいずれかの中性カルベンを示す(所望により、LとL1は相互に結合して中性の二座配位子を形成してもよい)。
【0028】
【化2】

【0029】
式IIにおいて、
M1はOsまたはRuを示し、
R2およびR3は相互に独立して、水素原子またはC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C1〜C20アルキル、アリール、C1〜C20カルボキシレート、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C1〜C20アルキルチオ、C1〜C20アルキルスルホニルおよびC1〜C20アルキルスルフィニルから成る群から選択される炭素水素基を示し、
X2はアニオン性配位子を示し、
L2は、単環式または多環式の化合物であることとは無関係に中性のπ−結合配位子を示し、
L3はホスフィン、スルホン化ホスフィン、フッ素化ホスフィン、3個までのアミノアルキル基、アンモニウムアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、ヒドロキシカルボニルアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはケトアルキル基を有する官能基化ホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット、ホスホニット、ホスフィンアミン、アルシン、スチベン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、チオエーテルおよびピリジンから成る群から選択される配位子を示し、
Yは非配位性アニオンを示し、
nは0〜5の整数を示す。
【0030】
【化3】

【0031】
式IIIにおいて、
M2はMoまたはWを示し、
R4およびR5は相互に独立して、水素原子またはC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C1〜C20アルキル、アリール、C1〜C20カルボキシレート、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C1〜C20アルキルチオ、C1〜C20アルキルスルホニルおよびC1〜C20アルキルスルフィニルから成る群から選択される炭素水素基を示し、
R6およびR7は相互に独立して非置換またはハロゲン置換されたアルキル基、アリール基、アラルキル基またはケイ素を含有するこれらの類似基を示す。
【0032】
【化4】

【0033】
式IVにおいて、
MはOsまたはRuを示し、
RおよびR1は相互に独立して、水素原子および置換もしくは非置換のアルキル基から成る群から選択される基を示し、
XおよびX1は相互に独立してアニオン性配位子を示し、
LおよびL1は相互に独立して中性配位子(例えば、ホスフィン、アミン、チオエーテルまたはイミダゾリジニリデン)または中性カルベンを示す(所望により、LとL1は相互に連結して中性二座配位子を形成してもよい)。
【0034】
式Iで表される化合物が好ましい。式Iにおいて、LとL1がトリアルキルホスフィンを示し、XとX1が塩化物イオンを示し、MがRuを示す化合物はより好ましい。
【0035】
上記の化合物の使用量は、使用する化合物の性質と触媒活性によって左右される。一般的には、NBRに対する該化合物の量比は0.005〜5、好ましくは0.025〜1、より好ましくは0.1〜0.5である。
【0036】
メタセシス反応はコオレフィン(好ましくは、C2〜C16の線状もしくは分枝状のオレフィン、例えば、エチレン、イソブテン、スチレンまたは1-ヘキセン)の存在下でおこなわれる。コオレフィンが液体(例えば、1-ヘキセン)の場合、コオレフィンの使用量は1〜200重量%にするのが好ましい。コオレフィンが気体(例えば、エチレン)の場合、コオレフィンの使用量は、反応容器内の圧力が1×105Pa〜1×107Pa、好ましくは5.2×105Pa〜4×106Paになるようにする。
【0037】
メタセシス反応は、触媒を不活性化させないか、または該反応を妨げない適当な溶剤中でおこなうことができる。好ましい溶剤としては、特に限定的ではないが、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサン等が例示される。最も好ましい溶剤はモノクロロベンゼン(MCB)である。場合によっては、コオレフィン自体が溶剤として作用するので(例えば、1-ヘキセンの場合)、このような場合には、他の溶剤は不要である。
【0038】
反応混合物中のニトリルポリマー(NBR)の濃度は臨界的ではないが、例えば、反応混合物の粘度が、効率的な攪拌がおこなえるように過度に高くならないようにすべきことは当然である。好ましくは、NBRの濃度は1〜20重量%であり、最も好ましくは6〜15重量%である。
【0039】
メタセシス反応は20〜140℃、好ましくは60〜120℃の温度範囲においておこなわれる。
【0040】
反応時間は、セメント濃度、触媒の使用量および反応温度等の多くの要因によって左右される。一般的な反応条件下においては、通常、メタセシスは最初の2時間以内に完結する。メタセシス反応の進行度は標準的な分析法、例えばGPCまたは溶液の粘度を利用する方法によって監視することができる。本明細書において言及するポリマーの分子量分布はゲル透過クロマトグラフィー(BPC)によって決定した。この場合、ウォーターズ社製のミレニウム・ソフトウエア・バージョン3.05.01を作動させるウォーターズ社製の2690分離モジュールとウォーターズ社製の410示差屈折計を使用した。試料は、0.025%のBHTで安定化させたテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。測定用カラムとしては、ポリマー・ラブズ社製の3本の連続混合Bゲルカラムを使用した。標準品としては、アメリカン・ポリマー・スタンダーズ社製のポリスチレンを使用した。
【0041】
工程2:水素化
メタセシス反応後、ニトリルポリマーは、部分的または完全に水素化されたニトリルポリマー(HNBR)を生成させるために水素化反応に付さなければならない。本発明においては、HNBRは好ましいポリマーである。メタセシス反応によって得られる生成物の還元は、当該分野において既知の標準的な還元法を用いておこなうことができる。例えば、ウィルキンソン触媒[(PPh3)3RhCl]等の当業者に既知の均一水素化触媒を使用することができる。
【0042】
水素化はその場でおこなってもよい。即ち、水素化反応は、メタセシス反応を実施した同一の反応容器内において、メタセシス反応の生成物を単離することなくその場でおこなってもよい。水素化触媒は反応容器内へ単に添加すればよく、該触媒は水素で処理され、これによってHNBRがもたらされる。
【0043】
水素の存在下においては、グルブ触媒は二水素化物錯体(PR3)2RuCl2H2に変換されるが、該錯体自体がオレフィンの水素化触媒である。従って、有利なワンポット(one-pot)反応においては、グルブ触媒は、コオレフィンの存在下でNBRの分子量を低減させるのに使用された。次いで、反応混合物は水素で処理され、これによってグルブ錯体は二水素化物に変換され、該二水素化物はメタセシス生成物を水素化して本発明によるNHBRをもたらす。この場合の水素化度は、水素化工程のためにウィルキンソン触媒を使用する場合よりも低いが、このような方法が実用的な方法であることは明らかである。
【0044】
本発明によるポリマー複合材の好ましい成分を形成するムーニー粘度の低いNBRとHNBRは、当該分野において既知の標準的な方法によって特徴づけることができる。例えば、該ポリマーの分子量分布は、ウォーターズ社製のミレニアム・ソフトウエア・バージョン3.05.01を作動させるウォーターズ社製の2690分離モジュールと410示差屈折計を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。試料は0.025のBHTで安定化させたテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。この測定用カラムとしては、3本の連続混合Bゲルカラム(ポリマー・ラブズ社製)を使用した。標準品としては、アメリカン・ポリマー・スタンダーズ社製のポリスチレンを使用した。
【0045】
本発明によるポリマー複合材は所望により少なくとも1種のフィラーをさらに含有する。フィラーは活性フィラーもしくは不活性フィラーまたはこれらの混合物であってもよい。フィラーは特に下記のものであってもよい:
(i)例えば、シリケート溶液の沈殿またはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって調製される高分散シリカ(比表面積:5〜1000m2/g、一次粒径:10〜400nm)。このようなシリカは所望により他の金属酸化物(例えば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、ZrおよびTiの酸化物)との混合酸化物の形態であってもよい。
(ii)合成シリケート(例えば、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムやケイ酸カルシウム等のアルカリ土類金属のシリケート)(BET比表面積:20〜400m2/g、一次粒径:10〜400nm)。
(iii)中性シリケート(例えば、カオリンおよびその他の天然シリカ)。
(iv)ガラス繊維、ガラス繊維製品(マット類、押出物)またはガラス微小球。
(v)金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウム)。
【0046】
(vi)金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび炭酸亜鉛)。
(vii)金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニムおよび水酸化マグネシウム)。
(viii)カーボンブラック[本発明で使用されるカーボンブラックはランプブラック、ファーネスブラックもしくはガスブラックプロセスによって調製され、好ましくは20〜200m2/gのBET比表面積(DIN66 131)を有するものであって、SAF、ISAF、HAF、FEFもしくはGPFカーボンブラックが例示される。]。
(iv)ゴムゲル、特にポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーおよびポリクロロプレンに基づくゴムゲル。
(x)上記のフィラーの任意の混合物。
【0047】
好ましい無機フィラーとしては、シリカ、シリケート、ベントナイトのようなクレー、石膏、アルミナ、二酸化チタン、タルクおよびこれらの任意の混合物等が例示される。これらの無機粒子は表面上にヒドロキシル基を有しており、該基によって親水性と疎油性が付与される。このため、フィラー粒子とゴムとの間の良好な相互作用の達成の困難性がさらに悪化する。多くの目的にとって好ましい無機フィラーはシリカ、特にケイ酸ナトリウムの二酸化炭素沈殿法によって調製されるシリカである。本発明に従って使用するのに適した乾燥非晶質シリカ粒子1〜100ミクロン(好ましくは10〜50ミクロン、最も好ましくは10〜25ミクロン)の平均凝集粒径を有していてもよい。凝集粒子の10容量%未満が5ミクロン未満または50ミクロンよりも大きな粒径を有しているのが好ましい。適当な乾燥非晶質シリカは、通常、下記の特性を有する:
BET表面積[DIN(ドイツ工業規格)66131]:50〜450m2/g
DBP吸収(DIN53601):150〜400(シリカ100gあたり)
乾燥損失(drying loss)(DIN ISO 787/11):0〜10重量%
適当なシリカフィラーとしてはPPGインダストリーズ社の次の市販品が例示される:ハイシル(HiSil)(登録商標)210、ハイシル233およびハイシル243。バイエルAG社の次の市販品も適当である:バルカシル(Vulkasil)(登録商標)SおよびバルカシルN。
【0048】
多くの場合、カーボンブラックのフィラーとしての使用は有利である。通常、ポリマー複合材中のカーボンブラックの含有量は20〜200重量部(好ましくは30〜150重量部、より好ましくは40〜100重量部)である。さらに、本発明によるポリマー複合材においては、カーボンブラックと無機フィラーを併用することが有利である。この併用の場合、カーボンブラックに対する無機フィラーの量比は、通常0.05〜20であり、好ましくは0.1〜10である。
【0049】
ポリマー複合材は、次に例示するような他の天然ゴムもしくは合成ゴムをさらに含有するのが有利である:BR(ポリブタジエン)、ABR(ブタジエン/アクリル酸のC1〜C4-アルキルエステル-コポリマー)、CR(ポリクロロプレン)、IR(ポリイソプレン)、SBR(スチレン/ブタジエン-コポリマー)[スチレン含有量:1〜60重量%]、NBR(ブタジエン/アクリロニトリル-コポリマー)[アクリロニトリル含有量:5〜60重量%]、ムーニー粘度(ASTMテストD1646によるML 1+4/100℃)が少なくとも30のHNBR(部分的もしくは完全に水素化されたNBR-ゴム)、EPDM(エチレン/プロピレン/ジエン-タ-ポリマー)、FKM(フルオロポリマーまたはフルオロゴム)、および上記のポリマーの任意の混合物。常套のHNBRを注意深く配合することによって、加工性を犠牲にすることなく、ポリマー複合材のコストを低減させることができる場合が多い。常套のHNBRおよび/または他の天然ゴムもしくは合成ゴムの配合量は、造形品の製造中に適用される作業条件によって左右されるが、わずかな予備実験によって容易に決定することができる。
【0050】
ポリマー複合材は、所望により、1種もしくは複数種の架橋剤または硬化系をさらに含有していてもよい。本発明は特定の硬化系に限定されるものではないが、過酸化物硬化系が好ましい。さらに、本発明は特定の過酸化物硬化系に限定されない。例えば、無機過酸化物または有機過酸化物が適当である。次に例示する有機過酸化物が好ましい:ジアルキルペルオキシド、ケタールペルオキシド、アラルキルペルオキシド、ペルオキシドエーテル、ペルオキシドエステル、例えば、ジ-t-ブチルペルオキシド、ビス-(t-ブチルペルオキシドイソプロピル)-ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキセン-(3)、1,1-ビス-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドおよびt-ブチルパーベンゾエート。ポリマー複合材中の過酸化物の配合量は、通常は1〜10phr(ゴム100部あたり)であり、好ましくは4〜8phrである。後続の硬化は、通常は100〜200℃の温度範囲でおこなわれるが、好ましくは130〜180℃でおこなわれる。過酸化物はポリマーに結合した形態で適用するのが有利である。適当な硬化系としては、ライン・ヘミー・ライナウ社(独国)の市販品「ポリディスパージョン(Polydispersion)T(VC)D-40P」(ポリマーに結合したジ-t-ブチルペルオキシ-イソプロピルベンゼン)が例示される。
【0051】
上記配合物は、所望により少なくとも1種の希釈剤をさらに含有していてもよい。希釈剤は、配合物の粘度を低減させるために使用されるものであって、配合物が最終状態に調製された後は蒸発させるのが好ましい。「希釈剤」という用語には、ポリマー成分、または全配合物の溶剤が包含される。本発明は特定の希釈剤に限定されない。例えば、トルエンやシクロヘキサンのような芳香族もしくは環状の炭化水素およびヘキサンのような脂肪族炭化水素が適当である。ポリマー成分に対する好ましい希釈剤は脂肪族炭化水素および環状炭化水素である。配合物中の希釈剤の含有量は、通常0〜200phr(ゴム100部あたり)であり、好ましくは、0〜150phrである。
【0052】
配合物をホットメルトとしての用途に供する場合には、配合物中に希釈剤をほとんど(好ましくは、全く)存在させない。
【0053】
本発明によるゴム組成物は、ゴム工業の分野において既知の下記の補助剤をさらに含有することができる:反応促進剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、起泡剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着性付与剤、発泡剤、色素、顔料、ワックス、エキステンダー、有機酸、抑制剤、金属酸化物および活性剤(例えば、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールおよびヘキサントリエタノール等)。
これらのゴム用助剤は常套量で使用され、該量は、特に目的とする用途に応じて左右される。常套量は、例えば、ゴムに基づいて0.1〜50重量%である。好ましくは、ゴム組成物は助剤として0.1〜20phrの有機脂肪酸(好ましくは分子中に1個、2個またはそれよりも多くの炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸)を含有し、さらに好ましくは、分子中に少なくとも1個の共役炭素−炭素二重結合を有する共役ジエン酸を10重量%以上含有する。好ましくは、この種の脂肪酸の炭素原子数は8〜22であり、より好ましくは、12〜18である。このような脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸並びにこれらのカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩が例示される。
【0054】
好ましくは、ゴム組成物は補助剤としてアクリレートを5〜50phr含有する。適当なアクリレートは次の特許文献に記載されている:ヨーロッパ特許EP-A1-0319320号明細書(特に、第3頁、第16行〜第35行)、米国特許US5208294号明細書(特に、第2欄、第25行〜第40行)および米国特許US4983678号明細書(特に、第2欄、第45行〜第62行)。特に言及すべきものはアクリル酸亜鉛、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛および液状アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)、ブタンジオールジメタクリレート(BDMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(DEMA)である。異種のアクリレートおよび/またはそれらの金属塩を併用するのが有効である。多くの場合、金属アクリレートとスコーチ加硫遅延剤、例えば、立体ヒンダードフェノール類(例えば、メチル置換アミノアルキルフェノール類、特に、2,6-ジ-t-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール)を併用するのが特に有効である。
【0055】
最終的なポリマー複合材の成分は25〜200℃の温度範囲において適当に混合される。一般的には、混合時間は1時間を越えることはなく、通常は2〜30分間で十分である。この混合は、密閉式ミキサー内において適当におこなわれる。この種のミキサーとしては、バンバリーミキサー、ハーク小型密閉式ミキサーおよびブラベンダー小型密閉式ミキサーが例示される。2本ロール機ミキサーを用いることによっても、エラストマー中への添加剤の良好な分散がもたらされる。また、押出機を使用することによっても良好な混合がもたらされ、しかも混合時間の短縮が可能となる。混合は2段階以上の多段階でおこなうことも可能であり、また、混合を異なる装置を用いておこなうことも可能である。例えば、第一段階の混合は密閉式ミキサーを用いておこない、第二段階の混合は押出機を用いておこなってもよい。しかしながら、混合段階中において望ましくない早期架橋(スコーチ)が発生しないように留意すべきである。配合と加硫に関しては次の文献を参照されたい:エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・エンジニアリング、第4巻、第66頁以降(配合)、および第17巻、第666頁以降(加硫)。
【0056】
ポリマー複合材の低粘度に起因して、該ポリマー複合材は、特に限定的ではないが、成形射出テクノロジーによって加工する態様に対して理想的に適している。ポリマー複合材はトランスファー成形、圧縮成形および液相射出成形に対しても有用である。架橋系を含有するポリマー複合材は、通常は常套の射出成形機内へ導入された後、約160〜230℃に加熱された型内へ射出され、該型内においては、ポリマー複合材の組成と成形温度に応じて架橋/加硫がおこなわれる。
【0057】
一般に、本発明による粘着性ゴム組成物は粘着付与剤を含有しないが、使用する用途によっては、粘着付与剤を含有するのが有利な場合がある。石油樹脂はこのような目的のためにしばしば使用される。この種の樹脂は、石油分解法によって得られる留出物(通常25〜80℃で沸騰する)とC8〜C9-モノビニル芳香族モノマーとの混合物(両者の混合比は、核磁気共鳴分析(NMR)で測定したときに、5〜15重量%のモノビニル芳香族化合物を含有する樹脂が形成されるようにする)の重合により調製される場合が多い。
【0058】
石油分解法によって得られる留出物は飽和モノマーと不飽和モノマーとの混合物を含有する(不飽和モノマーはモノオレフィンである)。この場合、不飽和物質は主としてC5オレフィンであるが、C6オレフィンやジオレフィンのような高級物質や低級物質がある程度存在していてもよい。この留出物は、重合溶剤として作用する飽和物質または芳香族物質を含んでいてもよい。
【0059】
別の粘着付与剤としては、不飽和C5〜C9-炭化水素モノマーの重合において形成される樹脂およびテルペン樹脂が挙げられる。C5オレフィン留分に基づく市販のこの種の樹脂は「ウイングタック(Wingtack)(登録商標)95および115」[グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー社製]。別の炭化水素樹脂としては次の市販品が挙げられる:「レーガルレツ(Regalrez)(登録商標)1078および1126」[ヘルキュルス・ケミカル社製(ウィルミントン、デラウエア)製]、「アルコン(Arkon)(登録商標)P115」のようなアルコン樹脂[アラカワ・フォーレスト・ケミカル・インダストリーズ社(シカゴ・イリノイ)製]、「エスコレツ(Escorez)(登録商標)樹脂」[エクソン・ケミカル社(ヒューストン、テキサス)製]。
【0060】
適当なテルペル樹脂としては、テルペンポリマー、例えば、非環式、単環式および二環式のモノテルペン並びにこれらの混合物のようなテルペン炭化水素の重合および/または共重合によって得られるポリマー樹脂含有物質のようなテルペンポリマーが例示される。市販のテルペン樹脂としては、アリゾナ・ケミカル社(ワイン、ニュージャージー)製の「ゾナレズム(Zonarezm)テルペン樹脂」(Bシリーズおよび7000シリーズ)が例示される。粘着付与性樹脂はエチレン性不飽和結合を有していてもよいが、耐酸化性が重要な用途に対しては粘着付与性飽和樹脂が好ましい。また、ライン・ヘミー社(独国)の市販品も適当である:クマロン−インデン樹脂[レノシン(Rhenosin)(登録商標)タイプ:C10、C30、C90、C100、C110、C120、C150]、炭化水素樹脂(レノシンタイプ:TP100、TT10、TT30、TT90、TT100、TD90、TD100、TD110)フェノール樹脂(レノシンタイプ:P9447K、P7443K、P6204K)およびビチューメン樹脂(レノシンタイプ:145、260)。
【0061】
これらの樹脂の通常の使用量は、ニトリルポリマー100重量部あたり0.1〜150重量部である。
【0062】
本発明による接着性複合材は高温(特に80℃よりも高温、より好ましくは100℃よりも高温)において優れた接着特性を発揮するので、本発明は、少なくとも1種の所望により水素化されたニトリルゴムポリマー[ムーニー粘度(ML 1+4/100℃):30未満]、所望による少なくとも1種のフィラーおよび少なくとも1種の架橋剤を含有する接着性ポリマー複合材に特に向けられる。この場合、該接着性ポリマー複合材は80〜150℃(特に100〜150℃、より好ましくは100〜120℃)において接着特性を低下させる。
【0063】
さらに、本発明は、所望により1もしくは複数の支持手段に対して積層または介在される少なくとも1種の好ましくは水素化されたニトリルゴムポリマー[ムーニー粘度(ML 1+4/100℃):30未満]を含有する該接着性ポリマー複合材を含有する自立造形品を提供する。支持手段を有さない自立造形品は三次元物品、例えば、シート、ペレット、スティック、フィルムまたはビーズ等である。
【0064】
本発明の別の観点によれば、所望により1もしくは複数の支持手段に対して積層または介在される少なくとも1種の好ましくは水素化されたニトリルゴムポリマー[ムーニー粘度(ML 1+4/100℃):30未満]を含有する該接着性ポリマー複合材を含むテープが提供される。
【0065】
このような用途に対しては、本発明による接着性ゴム組成物を、好ましくは下塗りされた適当な支持手段(即ち、基体)の表面上に塗布される。通常、ゴム組成物の層厚は6〜250μm(特に10〜100μm)である。好ましい基体はポリオレフィン(例えば、LDPE、HDPE、PP、BOPP)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、PVC、ABS、ポリカーボネート、ポリアミドおよびポリエステルである。
【0066】
下塗り材料は、例えば、中性水素化コロホニー(colophony)である。この組成物を基体上に下塗りすることにより、基体複合材が被適用面に適用された後であっても、接着剤は該組成物に対して強固な付着力を保持する。本発明による下塗り組成物(primer composition)は、粘着性組成物が接着できる高極性表面をもたらす。
【0067】
下塗り組成物として適したコロホニーとしては、酸性基を有する極性コロホニーが例示される。少なくとも部分的に水素化されたコロホニーが好ましい。市販のコロホニーとしては次のものが例示される:ヘルキュルス・ケミカルス社製の「フォラル(Foral)(登録商標)AX水素化コロホニー」、「ドレシノール(Dresinol)(登録商標)205コロホニー」および「スタイベライト(Staybelite)(登録商標)水素化コロホニー」並びにアラカワ社製の「ハイペール(Hypale)(登録商標)コロホニー」。酸含有コロホニーは極性が高く、本発明による粘着性組成物においては界面活性剤および/または粘着性付与剤として使用してもよい。しかしながら、この種のコロホニーは、基体に対するゴム組成物の付着性を改良するために下塗りとして使用される。
【0068】
酸含有コロホニーを中性化するためには、該コロホニーを、例えば、該コロホニーと反応して金属塩を形成する塩基性化合物の溶液と反応させる。適当な塩基としてはアルカリ金属水酸化物(例えば、LiOH、NaOH、KOH)およびアルカリ土類金属水酸化物[例えば、Ca(OH)2、Mg(OH)2]が例示される。溶解特性の観点からは、アルカリ金属水酸化物、特にKOHとNaOHが好ましい。この種の水酸化物は水のような極性溶剤に溶解させてもよい。
【0069】
コロホニーと塩基性化合物を反応させるためには、両方の化合物を通常は溶剤、好ましくは極性溶剤(これらの化合物は極性を示す傾向があるからである)、最も好ましくは水に溶解させる。次いで、これらの化合物は酸−塩基反応に付される。一般にこの種の反応は自発的に発生するので、特別な手段(例えば、加熱または加圧)は不要であるが、所望によりこのような手段を採用してもよい。通常、化学量論量のコロホニーと塩基が使用されるが、幾分過剰量の塩基を使用してもよい。
【0070】
中性コロホニーは所望により基体に塗布する前に弾性物質(エラストマー)と混合してもよい。弾性物質は、コロホニーの有機部分およびテープ基体中に使用される飽和剤に対して高い適合性を示すのが好ましい。また、該エラストマーとしては水中に分散し得るものが好ましい。入手し得る多くの基体は、アクリレートポリマーまたはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)で飽和されたクレープ紙を含んでおり、また、アクリレートとSBRは大部分の種類の水素化コロホニーの有機部分に対して適合性を示すので、これらは好ましいタイプのエラストマーである。
【0071】
SBRは当該分野においては既知であり、多くの供給業者から入手可能である。一般的な製品としてはBASF社(パーシッパニー、ニュージャージー)製の「ブトファン(Butofan)(登録商標)NS209、NS222、NS155およびNS248ゴム」およびポリマー・ラテックス社(独国)の「ペルブナン・ラテックス」が例示される。他の適当なポリマーとしてはニトリルゴム、例えば「ハイカー(Hycar)(登録商標)ポリマーシリーズ」[B.F.グッドリッチ社(アクロン、オハイオ)製]および(メタ)アクリレートポリマーが例示される。また、エラストマーとしては次のものも適当である:カルボキシル化NBR、HNBRおよび液状NBR、例えば、バイエル社製の「サーバン(Therban)(登録商標)VBKA 8889」および「クリナック(Krynac)(登録商標)K.X.7.40、K.X.7.50、K.X.90およびK.E.34.38」。
【0072】
バーナードらによる米国特許第5385965号明細書には、ゴムを基材とするエマルションポリマー、コロホニーを基材とする界面活性剤およびコロホニーを基材とする粘着性付与剤との混合物が記載されている。
【0073】
ゴムを基材とする適当なポリマーのリストの中には、カルボキシル化ランダムスチレン−ブタジエンコポリマーが含まれる。「フォラル(Foral)(登録商標)AX」コロホニー化合物は適当な粘着性付与樹脂のリストの中に含まれる。
【0074】
弾性物質と中性コロホニーを下塗り(プライマー)中で併用されるときには、これらの2成分は0.01:99.99〜75:25(好ましくは50:50)の重量比で混合してもよい。この場合、使用するコーティングプロセスに応じてこれ以外の重量比で混合することが適当なときもある。混合は、中性の水性コロホニー混合物中へエラストマーを単に添加することによっておこなわれる。得られる混合物はコーティングのための所望の濃度まで希釈される。好ましい濃度は5〜25重量%(より好ましくは10〜20重量%)である。
【0075】
SBRで飽和されたテープ基体用の好ましいプライマー組成物は、加熱水(例えば88℃)中において、フォラルAXコロホニーをほぼ化学量論量の強塩基(例えば、KOHの水溶液)で中和することによって調製してもよい。加熱源から中性コロホニー混合物を移動させた後、該混合物はほぼ等重量のブトファンNS209(SBR)と混合し、得られた混合物は、固形分濃度が約15%になるまで水を用いて希釈する。少量の二重結合を有するプライマー組成物、例えば、酢酸ビニル含有量が40重量%未満のエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−α−オレフィンコポリマーまたはエチレン−α−オレフィン−ジエンタ−ポリマーが好ましい。
【0076】
プライマー組成物および/または粘着性組成物は多くの種々の方法によって基体[例えば、テープ基体(tape substrate)]に塗布することができる。このような塗布方法としては溶剤コーティング法、溶剤噴霧法、エマルションコーティング法、低圧コーティング法およびその他の当業者に既知の塗布方法が例示される。適当な基体としては、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレンフィルムおよびポリプロピレンフィルム)、特にコロナ放電処理ポリオレフィンフィルムおよびエラストマーで飽和された紙が例示される。適当な塗布量は0.1〜5mg/cm2(好ましくは0.2〜1.0mg/cm2、より好ましくは0.3〜0.5mg/cm2)である。基体上にプライマー層が塗布された後、該層は乾燥処理に付すのが好ましい。乾燥処理は昇温下および/または減圧下でおこなうのが好ましい。
【0077】
被覆基体の別の好ましい製造法は、通常はコーティング装置内において粘着性組成物の溶融フィルムを用いておこなう共押出コーティング法である。この場合、該粘着性組成物は押出機内で溶融された後、1または複数のポリマー層から構成されていてもよい基体上へ平板押出ダイ(flat sheeting die)を介して塗布される。これによって形成される複合材は冷却/加圧ロールユニット内で冷却されて平滑化される。複合材ストリップは対応する巻取り機によって巻取られる。
【0078】
さらに別の好ましい積層法においては、コーティング組成物のキャリヤーストリップへの塗布手順、平滑化と冷却、およびストリップ化と巻取りはコーティング法の場合と同様にして実施される。実用的な押出積層化においては、予備調製されたキャリヤーストリップを4個のローラーを備えたカレンダーロールフレーム(calender roll frame)内へ供給される。この場合、キャリヤーストリップは、第1のローラーギャップの前において、押出機内で溶融されて平板押出ダイを介して塗布される溶融フィルムによって被覆される。第2の予備調製されたストリップは第2のローラーギャップの前に供給される。これによって形成される複合材は第2のローラーギャップの通過によって平滑化され、次いで、巻取りユニット内において冷却され、ストリップ化された後、巻取られる。これらのいわゆる「キャストフィルム(cast film)」は、キャリヤーフィルムと粘着性組成物との間の複合材結合力を改良するために、予備処理に付してもよい。ポリオレフィン製キャリヤーフィルムは、一般的には、コロナ放電酸化処理に付すか、またはシリコーン層による被覆処理に付される。
【0079】
さらに別の好ましい吹込み/平板押出ダイを用いる押出法によれば、本発明による乾燥形態の組成物および種々のポリマーは、一般的には、第一に異なる押出機内において適当な条件下で溶融され、次いで押出装置内において溶融流(melt stream)の形態で組合せることによって、多層溶融流を形成させる。次いで、粘着性組成物を含有する多層溶融ストリップの吐出、ストリップ化および冷却並びに複合材料の巻取りがおこなわれる。複合材フィルムはこのようにして得られる。この場合、平板押出ダイを用いる押出法を使用するのが好ましい。
【0080】
これらの方法に使用するのに適当なポリマーとしては、特に熱可塑性ポリマー、例えばポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィン、例えば、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマーまたはランダムプロピレン−エチレンコポリマーを使用するのが好ましい。このようなポリオレフィンの製造は、当業者に既知の常套の重合法、例えば、チーグラー・ナッタ重合法、フィリップス触媒を用いる重合法、高圧重合法またはメタロセン含有触媒を用いる重合法によっておこなってもよい。
【0081】
一般的には、コーティング/押出法は、次の条件下でおこなわれる:170〜300℃の温度、250〜400barの圧力および5〜20分間の平均通過時間。溶融状態およびフィルム状態のコポリマーは全ての接触表面に対して高い付着傾向を示すので、複合材の製造に使用されるローラーおよびストリップ化用ローラーに、該コポリマーに対して抗付着性を示す物質(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を用いて被覆するのが有利である。これによって、複合材料の十分な巻取りのために適当なストリップの張力を、例えば、維持することができる。
【0082】
このようにして得られる少なくとも1種の好ましくは水素化されたニトリルゴムポリマー[ムーニー粘度(ML1+4/100℃):30未満]を含有する接着性ポリマー複合材で被覆されたフィルムは、ガラス、木材およびセラミックスの被覆、フロアカバーの製造またはあらゆるタイプのラッカー塗装物品、例えば、金属、合金およびプラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステルおよびABS)の製造において有効に利用することができる。一般的には、このような用途は、高品質表面が一定の期間にわたって保護されなければならないような用途である。
【0083】
本発明のさらにまた別の観点によれば、少なくとも1種の好ましくは水素化されたニトリルゴムポリマー[ムーニー粘度(ML1+4/100℃):30未満]を含有する接着性ポリマー複合材を含むシーラント組成物、特にホットメルト系が提供される。
【0084】
ホットメルト系は固形分が100%系であって、このような組成物は通常は小さな粒子(例えばペレット)またはその他の造形品(例えばスティック)として提供される。造形品は適当な手段によって軟化温度(好ましくは200〜215℃)まで加熱され、次いで封止または接着すべき物質の表面上または該物質の間へ塗布される。造形品の粘着性を低減させて該造形品が顧客へ輸送された後で相互に付着しないようにするためには、該造形品をポリオレフィン粉末のような粉状物質で被覆するのが有利である。
【0085】
自立造形品(例えばテープ)は建築作業およびガラスシーリングの絶縁化において特に有用である。本発明による複合材を含有するホットメルト系はガラス製の窓やドアの絶縁シーラントとして特に有用である。その他の適用分野としては次の分野が例示される:自動車産業(特にフード(hood)および/または比較的高い周囲温度条件下での適用)、建築/建設、橋、道路、輸送、木工と木材接合、製本、グラフィック産業、包装産業、使捨て物品、ラミネート、履物製造、最終ユーザー用接着剤、およびシーラントと絶縁産業。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
ルテニウム、[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクキヘジルホスフィン)[グルブ(Grubb)の第2発生メタセシス触媒]、エチレンおよびモノクロロベンゼン(MCB)としてはそれぞれマテリア社、プラキサイル社およびPPG社からの市販品をそのまま使用した。ペルブナンはバイエル社から入手した。
【0087】
メタセシス反応は、下記の条件下において実験室用反応器を用いておこなった:
セメント濃度 15%
コ−オレフィン エチレン
コ−オレフィン濃度 500psi
撹拌速度 600rpm
反応器の温度 80℃
触媒の装填量 0.05phr
溶剤 モノクロロベンゼン
基材 ランデムブタジエン−アクリロニトリルコポリマー[アクリロニトリル含有量:33重量%、メタクリル酸含有量:5重量%、ムーニー粘度(ML1+4/100℃):30]
【0088】
ポリマー(490g)をモノクロロベンゼン(2.8kg)に溶解させた。反応器を所定の温度まで加熱し、次いでグルブ触媒を含有するモノクロロベンゼン溶液40mlを反応器内へ添加した。反応器内へエチレンを導入して500psiの圧力まで加圧した。反応中の温度は一定に保持した。冷却コイルを温度コントローラーへ連結し、温度センサーを使用して温度を調節した。
【0089】
水素化反応は、メタセシスの場合と同じ反応器を使用し、下記の条件下でおこなった:
セメント固形分濃度 15%
H2(g)の圧力 1200psi
撹拌速度 600rpm
反応器の温度 138℃
触媒の装填量(ウィルキンソン触媒) 0.075phr
トリフェニルホスフィン 1phr
溶剤 モノクロロベンゼン
【0090】
メタセシス反応からのセメントを、激しく撹拌しながらH2(100psi)を用いる脱ガス処理に3回付した。反応器の温度を130℃まで上昇させ、次いで、ウィルキンソン触媒とトリフェニルホスフィンを含有するモノクロロベンゼン溶液40mlを反応器内へ添加した。温度を138℃まで上昇させ、反応中はこの温度を保持した。この水素化反応は、種々の時間間隔における残留二重結合(RDB)の濃度をIRスペクトロスコピーを用いて測定することによって監視した。
上記のポリマーの水素化にはルテニウムメタセシス触媒も使用することができた。
【0091】
(実施例2および3:配合と物理的試験)
ポリマー複合材はオープンミル(open mill)を用いて混合した。加硫剤は別の混合工程における冷却オープンミル内へ添加した。この評価において使用した配合物は、以下の表1に示す簡単化された配合表に基づく。
【0092】
カーボンブラックN660ステルリング(Sterling)-Vはキャボット・タイヤ・ブラックス社の市販品である。マグライト(Maglite)(登録商標)DはC.P.ホール社から市販されているMgOである。ナウガード(Naugard)445はユニロイヤル・ケミカル社から市販されているジフェニルアミンである。プラストホール(Plasthall)TOTMはC.P.ホール社から市販されているトリオクチルトリメリテートである。ヴァルカノックス(Vulkanox)(登録商標)ZMB-2/C5はバイエルAG社から市販されている4−および5−メチル−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩である。DIAK#7はデュポン・ドゥ・エラストマーズ社から市販されているトリアリルイソシアヌレートである。ヴァルカップ(Vulcup)40KEはハンヴィック・スタンダード社から市販されている2,2'−ビス(t−ブチルペルオキシジ−イソプロピルベンゼン)である。
【0093】
【表1】

【0094】
ポリマーの特性
原料ポリマーの特性は以下の表2にまとめて示す。実施例1のポリマーの分子量(Mw)は、レギュラーグレード品であるサーバン(登録商標)A3407の分子量の1/4であるが、多分散性(PDI)はレギュラーグレード品の場合(3.2)に比べて狭い(2.0)。
【0095】
【表2】

【0096】
ポリマー複合材の特性
実施例2および3のポリマー複合材の特性を以下の表3にまとめて示す。実施例2は比較例である。
【0097】
【表3】

【0098】
粘着力は、未硬化ゴム上におけるそれ自体と鋼に対する90°引張力を用いて測定した。表3から明らかなように、実施例3におけるゴム対ゴムの結合力は未硬化試料の内部凝集力よりも強く、また、鋼に対する粘着力は比較例の場合に比べて3.5倍優れている。
【0099】
黄銅に対する接着性はインストロン4501計測器IDを用いて測定した。この測定法により、加硫された試験試料の離層に必要な力を試験した。表3から明らかなように、実施例3の試料は、黄銅に対して著しく改良された接着性を示した。この新規な生成物は、その高い流動性と相俟って、接着剤の用途に対しては理想的なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を含有する接着性ポリマー複合材。
【請求項2】
ポリマー複合材が過酸化物、樹脂または硫黄硬化系を含有する請求項1記載の複合材。
【請求項3】
30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマー、所望による少なくとも1種のフィラーおよび所望による少なくとも1種の架橋剤を混合することを含む請求項1または2記載のポリマー複合材の製造方法。
【請求項4】
30よりも低いムーニー粘度(ML 1+4/100℃)を有する少なくとも1種の、所望により水素化されていてもよいニトリルゴムポリマーを含有する接着性複合材を含む自立造形品。
【請求項5】
請求項1または2記載の複合材および所望による1または複数の支持手段を含むテープ。
【請求項6】
請求項1または2記載の複合材を含有するシーラントまたは接着性組成物。

【公開番号】特開2011−179014(P2011−179014A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−128620(P2011−128620)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2003−407592(P2003−407592)の分割
【原出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(504351677)ランクセス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Inc.
【Fターム(参考)】