説明

接着材リール

【課題】巻かれた状態の回路接続用テープを引き出す際、基材背面への接着剤層の転写を十分に抑制でき、優れた接続信頼性の回路接続体を製造するのに有用な接着材リールを提供すること。
【解決手段】本発明に係る接着材リールは、テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと、回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えたものであって、上記回路接続用テープは、終端部に接合されたエンドテープと、当該回路接続用テープの終端から始端の方向に向けて少なくとも巻芯の一巻き分の長さにわたって接着剤層が形成されていない領域と、当該領域を覆うように設けられたカバーテープとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと、この回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えた接着材リールに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電極を有する被接続部材同士を電気的に接続し、回路接続体を製造するための接続材料として、異方導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が使用されている。異方導電フィルムはプリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板に、IC、LSI等の半導体素子やパッケージなどの被接続部材を接続する際、相対する電極同士の導通状態を保ち、隣接する電極同士の絶縁を保つように電気的接続と機械的固着を行う接続材料である。異方導電フィルムの他にも非導電フィルム(NCF:Non−Conductive film)などの接続材料が知られている。
【0003】
上記接続材料は、熱硬化性樹脂を含有する接着剤成分と、異方導電フィルムの場合にあっては必要により配合される導電粒子とを含み、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)などの基材上にフィルム状に形成される。基材上に形成されたフィルムの原反を用途に適した幅となるようにテープ状に切断し、これを芯材に巻き付けて接着材リールが製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−34468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回路接続体の接続信頼性を低下させる原因の一つにブロッキングと称される現象がある。ブロッキングは、リールから回路接続用テープを引き出して使用する際、接着剤層が基材の背面に転写する現象である。この現象が生じると、被接続部材上の所定位置に必要量の接着剤層を配置できず、接続部の電気的接続又は機械的固着が不十分となるおそれがある。
【0006】
本発明者らは、リールに巻かれた回路接続用テープの残りが少なくなった段階で、上記現象が起こりやすいことに着目し、その改善策について検討した。その結果、回路接続用テープとエンドテープとの接合部に起因してこの現象が生じている可能性があることを見出した。エンドテープは、回路接続用テープの終端部に接合されるテープであり、回路接続用テープと巻芯とを連結している。
【0007】
エンドテープは、使用されずに破棄される接着剤層を削減する役割がある。すなわち、回路接続体の製造に使用する圧着装置は、接着材リールの装着位置から圧着作業を行う位置まで所定の距離がある。このため、巻芯に回路接続用テープを直接巻き付けたリールを使用した場合、巻き出しが終了して新たなリールに付け替えられると、残りの接着剤層は使用されることなく破棄される。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、巻かれた状態の回路接続用テープを引き出す際、基材背面への接着剤層の転写を十分に抑制でき、優れた接続信頼性の回路接続体を製造するのに有用な接着材リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る接着材リールは、テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと、回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えたものであって、上記回路接続用テープは、終端部に接合されたエンドテープと、当該回路接続用テープの終端から始端の方向に向けて少なくとも巻芯の一巻き分の長さにわたって接着剤層が形成されていない領域と、当該領域を覆うように設けられたカバーテープとを有する。
【0010】
上記の通り、回路接続用テープは、その終端から始端の方向に向けて少なくとも巻芯の一巻き分の長さにわたって接着剤層が形成されていない領域を有する。かかる構成により、巻芯に巻かれた状態にあっては、当該領域が回路接続用テープとエンドテープとの接合部の直上に位置する。接着剤層が形成されていない領域で接合部が覆われるため、この接合部に多少の凹凸等があったとしても、これを起因とするブロッキングの発生を十分に抑制できる。
【0011】
カバーテープは、リールに巻かれた回路接続用テープが残り僅かであることを検知するのに利用できる。画像装置等で自動検出するには、カバーテープの色相は、接着剤層の色相と異なることが好ましい。また、カバーテープによって回路接続用テープとエンドテープと接合してもよい。すなわち、カバーテープは、エンドテープの先端部側にまで延在して回路接続用テープの終端部とエンドテープの先端部とを接合するものであってもよい。
【0012】
本発明においては、回路接続用テープは、その終端部とエンドテープの先端部とを覆うように設けられた粘着テープを備えたものであることが好ましい。粘着テープを用いることで、回路接続用テープとエンドテープとをより高い強度で接合できる。更に高い接合強度を達成する観点から、粘着テープ及びカバーテープを使用し、回路接続用テープとエンドテープとを接合してもよい。
【0013】
本発明においては、エンドテープの少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されていることが好ましい。これにより、巻芯上に巻かれた状態で互いに当接するエンドテープの外面と内面との間で滑りが生じにくくすることができる。その結果、所望の長さの回路接続用テープを十分に高い精度で引き出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、巻かれた状態の回路接続用テープを引き出す際、基材背面への接着剤層の転写を十分に抑制でき、優れた接続信頼性の回路接続体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る接着材リールの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の接着材リールが圧着装置の回転軸に装着された状態を示す断面図である。
【図3】異方導電テープの一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る異方導電テープの終端部を示す模式断面図である。
【図5】図4に示す終端部の変形例を示す模式断面図である。
【図6】比較例1に係る異方導電テープをリールから引き出す過程を示す模式断面図である。
【図7】回路電極同士が接続された回路接続体の一例を示す概略断面図である。
【図8】回路接続体の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る異方導電テープの終端部を示す模式図である。
【図10】比較例2に係る異方導電テープをリールから引き出す過程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0017】
<第1実施形態>
図1に示す接着材リール10は、筒状の巻芯1と、巻芯1の軸方向の両端面にそれぞれ設けられた円形の側板2とを備える。図2に示すように、巻芯1の外面1a上には異方導電テープ5が巻かれ、巻重体を構成している。接着材リール10は、圧着装置25の回転軸25aに装着するための軸穴10aを有する。巻芯1の外径は、特に制限されるものではないが、取り扱い性の点から4〜15cmであることが好ましい。
【0018】
異方導電テープ5は、図3に示すように、テープ状の基材6と、基材6の一方面上に形成された接着剤層8とを備える。
【0019】
基材6の長さは、1〜400m程度であり、好ましくは50〜300mである。基材6の厚さは、4〜200μm程度であり、好ましくは20〜100μmである。基材6の幅は、0.5〜30mm程度であり、好ましくは0.5〜3.0mmである。基材6の長さ、厚さ及び幅は上記の範囲に限定されるものではない。なお、基材6の幅は、その上に形成される接着剤層8の幅と同じであるか、接着剤層8の幅よりも広いことが好ましい。
【0020】
基材6は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる各種テープを使用することが可能である。もっとも、基材6を構成する材質はこれらに限定されるものではない。また、基材6として、接着剤層8との当接面等に離型処理が施されたものを使用してもよい。
【0021】
接着剤層8は、接着剤組成物からなり、この接着剤組成物は、例えば、接着剤成分8aと導電粒子8bとを含有する。接着剤層8の厚さは、使用する接着剤成分及び被接着物の種類等に合わせて適宜選択すればよいが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜40μmである。また、接着剤層8の幅は、使用用途に合わせて調整すればよいが、0.5〜5mm程度であり、好ましくは0.5〜3.0mmである。
【0022】
接着剤層8の接着剤成分8aとしては、熱や光により硬化性を示す材料が広く適用でき、エポキシ系接着剤又はアクリル系接着剤を使用できる。接続後の耐熱性や耐湿性に優れていることから、架橋性材料の使用が好ましい。なかでも熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分として含有するエポキシ系接着剤は、短時間硬化が可能で接続作業性がよく、分子構造上接着性に優れている等の特徴から好ましい。
【0023】
エポキシ系接着剤の具体例として、高分子量エポキシ、固形エポキシ又は液状エポキシ、あるいは、これらをウレタン、ポリエステル、アクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、合成線状ポリアミド等で変性したエポキシを主成分とするものが挙げられる。エポキシ系接着剤は、主成分をなす上記エポキシに硬化剤、触媒、カップリング剤、充填剤等を添加してなるものが一般的である。
【0024】
アクリル系接着剤の具体例として、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体が挙げられる。本発明者らの検討によると、接着剤成分8aとしてアクリル系接着剤を使用した場合、エポキシ系接着剤を使用した場合と比較し、基材6の背面への接着剤層8の転写が起こりやすい。
【0025】
なお、ICチップをガラス基板やフレキシブルプリント基板(FPC)上に実装する場合、ICチップと基板の線膨張係数の差から生じる基板の反りを抑制する観点から、内部応力の緩和作用を発揮する成分を接着剤成分に配合することが好ましい。具体的には、接着材成分に、アクリルゴムやエラストマ成分を配合することが好ましい。また、国際公開第98/44067号に記載されているようなラジカル硬化系接着剤も使用することができる。
【0026】
導電粒子8bは、接着剤成分8a中に分散している。導電粒子8bとしては、例えばAu、Ag、Pt、Ni、Cu、W、Sb、Sn、はんだ等の金属やカーボンの粒子が挙げられる。あるいは、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核を上記の金属やカーボンで被覆した被覆粒子を使用してもよい。導電粒子8bの平均粒径は分散性、導電性の観点から1〜18μmであることが好ましい。なお、導電粒子を絶縁層で被覆してなる絶縁被覆粒子を使用してもよく、隣接する電極同士の絶縁性を向上させる観点から導電粒子と絶縁性粒子とを併用してもよい。
【0027】
導電粒子8bの配合割合は、接着剤層8に含まれる接着剤成分100体積部に対して、0.1〜30体積部であることが好ましく、0.1〜10体積部であることがより好ましい。この配合割合が0.1体積部未満であると対向する電極間の接続抵抗が高くなる傾向にあり、30体積部を超えると隣接する電極間の短絡が生じやすくなる傾向がある。なお、異方導電テープ5の用途によっては、導電粒子8bを配合せず、接着剤成分8aのみで接着剤層8を構成してもよい。
【0028】
次に、異方導電テープ5の終端部5aの構成について、図4を参照しながら説明する。図4に示すように、異方導電テープ5の終端部5aは、エンドテープ12、カバーテープ14及び粘着テープ16によって構成されている。
【0029】
エンドテープ12は、異方導電テープ5と巻芯1とを連結するテープであり、その終端部12aは巻芯1の外面1aに固定されている。終端部12aと外面1aの固定は、両面テープ(例えば、寺岡製作所のもの)を用いて行うことができる。他方、エンドテープ12の先端部12bは、カバーテープ14及び粘着テープ16によって、異方導電テープ5の終端部5aと接合されている。
【0030】
エンドテープ12の長さは、特に制限されるものではなく、圧着装置25の構成等に応じて、例えば、接着材リール10を装着する回転軸25aから圧着作業を行う位置まで所定の距離に応じて適宜設定すればよい。エンドテープ12の長さは0.5〜5m程度であり、好ましくは1〜3mである。エンドテープ12の厚さは、要求される強度等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは30〜70μmである。また、エンドテープ12の幅は、基材6又は接着剤層8の幅に合わせればよく、0.5〜5mm程度であり、好ましくは0.5〜3.0mmである。
【0031】
エンドテープ12を構成する材質としては、上述の基材6を構成する材質と同様のもの(例えば、ポリエチレンテレフタレート)が挙げられる。
【0032】
エンドテープ12は、少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されていることが好ましい。これにより、巻芯1上に巻かれた状態で互いに当接するエンドテープ12の外面と内面との間で滑りが生じにくくすることができる。その結果、所望の長さの異方導電テープ5を十分に高い精度で引き出すことが可能となる。滑り止め加工は、エンドテープ12の長さが1m以上である場合に特に有用である。なお、滑り止め加工の具体例として、エンドテープ12の表面に対するエンボス加工や当該表面へのゴムなどの塗布が挙げられる。
【0033】
カバーテープ14は、異方導電テープ5の接着剤層8が形成されていない領域5bを覆うテープである。カバーテープ14は、巻芯1に巻かれた異方導電テープ5が残り僅かであることを検知するのに利用できる。画像装置等で自動検出する観点から、カバーテープ14の表面の色相は、接着剤層8の色相と異なることが好ましい。
【0034】
本実施形態においては、カバーテープ14の一端14aがエンドテープ12の先端部12b側にまで延在して異方導電テープ5とエンドテープ12とを接合している。なお、カバーテープ14の他端14bは、接着剤層8の剥離を防止する観点から、接着剤層8の終端8cを覆うように延在させることが好ましい(図5参照)。また、接着剤層8の終端8cとカバーテープ14の他端14bとの間にスペースを設ける構造とすることもできる。
【0035】
カバーテープ14の厚さは、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは30〜70μmである。また、カバーテープ14の幅は、基材6又は接着剤層8の幅に合わせればよく、0.5〜5mm程度であり、好ましくは0.5〜3.0mmである。
【0036】
粘着テープ16は、異方導電テープ5とエンドテープ12との接合強度を高めるためのテープである。粘着テープ16は一方の面が粘着面となっており、異方導電テープ5とエンドテープ12の接合部であって、異方導電テープ5の背面5c側に粘着面が貼り付けられている。なお、カバーテープ14のみで十分な接合強度を達成できる場合は、粘着テープ16を使用しなくてもよい。あるいは、粘着テープ16のみで十分な接合強度を達成できる場合は、カバーテープ14をエンドテープ12の先端部12b側にまで延在させなくてもよい。
【0037】
粘着テープ16の長さは5〜30mm程度であり、好ましくは10〜20mmである。粘着テープ16の厚さは、要求される強度等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは30〜70μmである。また、粘着テープ16の幅は、基材6又は接着剤層8の幅に合わせればよく、0.5〜5mm程度であり、好ましくは0.5〜3.0mmである。
【0038】
本実施形態においては、上記の通り、異方導電テープ5の終端部5aに、接着剤層8が存在しない領域5bが形成されている。領域5bは、異方導電テープ5の終端から始端の方向に向けて少なくとも巻芯1の一巻き分の長さにわたって設けられている。領域5bは、例えば、異方導電フィルムを所定の幅に切断して異方導電テープ5を製造する過程において、異方導電フィルムの所定の領域について接着剤層を除去することによって形成できる。
【0039】
異方導電テープ5の終端部5aに接着剤層8が存在しない領域5bを形成することで、以下のような効果が奏される。すなわち、異方導電テープ5が巻芯1に巻かれた状態にあっては、領域5bが異方導電テープ5とエンドテープ12との接合部(粘着テープ16)の直上に位置する。当該接合部が領域5bで覆われるため、接合部に多少の凹凸等があったとしても、これを起因とするブロッキングの発生を十分に抑制できる。なお、領域5bを設ける長さは、巻芯1の一巻き分の長さ以上であれば、特に制限はなく、二巻き分であっても、三巻き分であってもよい。ただし、巻芯1の直径にもよるが、領域5bの長さは0.5m以下であることが好ましい。領域5bの長さが0.5mを超えると、領域5b上にカバーテープ14を貼り合わせ際にずれが生じやすくなる。
【0040】
図6を参照しながら、比較例1に係る接着材リールのブロッキング現象について説明する。比較例1に係る接着材リールは、接着剤層8がエンドテープ12との接合部にまで形成されていることの他は、第1実施形態に係る接着材リール10と同様の構成を有する。すなわち、当該接着材リールは、接着剤層8が存在しない領域5b及びこれを覆うカバーテープ14を具備しない異方導電テープ55を巻芯1に巻き付けたものである。なお、図6においては、便宜上、巻芯1の外面1aが直線で描かれているが、実際は円弧をなすものである(図4参照)。
【0041】
図6(a)に示す通り、異方導電テープ55が巻芯1に巻かれた状態にあっては、異方導電テープ55とエンドテープ12との接合部(粘着テープ16)の直上にも接着剤層8が存在する。この状態から異方導電テープ55を引き出すと、粘着テープ16の厚みや粘着剤の影響によって接着剤層8が基材6から剥離する可能性がある(図6(b)参照)。このようにして接着剤層8が基材6の背面に転写すると、圧着装置25に接着剤層8が適切に供給することができなくなる(図6(c)参照)。その結果、回路接続体の接続信頼性が不十分となるおそれがある。
【0042】
(回路接続体)
次に、本実施形態に係る接着材リール10の接着剤層8を回路接続材料として使用して製造された回路接続体について説明する。図7は、回路電極同士が接続された回路接続体を示す概略断面図である。図7に示す回路接続体100は、相互に対向する第1の回路部材30及び第2の回路部材40を備えており、第1の回路部材30と第2の回路部材40との間には、これらを接続する接続部50aが設けられている。
【0043】
第1の回路部材30は、回路基板31と、回路基板31の主面31a上に形成された回路電極32とを備えている。第2の回路部材40は、回路基板41と、回路基板41の主面41a上に形成された回路電極42とを備えている。
【0044】
回路部材の具体例としては、半導体チップ(ICチップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品などが挙げられる。これらの回路部材は、回路電極を備えており、多数の回路電極を備えているものが一般的である。上記回路部材が接続される、もう一方の回路部材の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板などの配線基板が挙げられる。外部に静電気を放電可能な接着材リール10から巻き出した異方導電テープ5を使用することで、回路部材同士を効率的且つ高い接続信頼性をもって接続することができる。したがって、本実施形態に係る異方導電テープ5は、微細な接続端子(回路電極)を多数備えるチップ部品の配線基板上へのCOG実装(Chip On Glass)もしくはCOF実装(Chip On Flex)に好適である。
【0045】
各回路電極32,42の表面は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種で構成されてもよく、2種以上で構成されていてもよい。また、回路電極32,42の表面の材質は、すべての回路電極において同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
接続部50aは接着剤層8に含まれる接着剤成分8aの硬化物8Aと、これに分散している導電粒子8bとを備えている。そして、回路接続体100においては、対向する回路電極32と回路電極42とが、導電粒子8bを介して電気的に接続されている。すなわち、導電粒子8bが、回路電極32,42の双方に直接接触している。
【0047】
このため、回路電極32,42間の接続抵抗が十分に低減され、回路電極32,42間の良好な電気的接続が可能となる。他方、硬化物8Aは電気絶縁性を有するものであり、隣接する回路電極同士は絶縁性が確保される。従って、回路電極32,42間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
【0048】
(回路接続体の製造方法)
次に、回路接続体100の製造方法について説明する。図8は、回路接続体の製造方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。本実施形態では、異方導電テープ5の接着剤層8を熱硬化させ、最終的に回路接続体100を製造する。
【0049】
まず、接続装置(図示せず)の回転軸に接着材リール20を装着する。この接着材リール20から異方導電テープ5を、接着剤層8が下方に向くようにして引き出す。異方導電テープ5を所定の長さに切断して回路部材30の主面31a上に載置する(図8(a))。
【0050】
次に、図8(a)の矢印A及びB方向に加圧し、接着剤層8を第1の回路部材30に仮接続する(図8(b))。このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30.0MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は接着剤層8が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜100℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.1〜2秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0051】
基材6を剥がした後、図8(c)に示すように、第2の回路部材40を、第2の回路電極42を第1の回路部材30の側に向けるようにして接着剤層8上に載せる。そして、接着剤層8を加熱しながら、図8(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、接着剤層8の接着剤成分8aが硬化可能な温度とする。加熱温度は、60〜180℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜160℃が更に好ましい。加熱温度が60℃未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、180℃を超えると望まない副反応が進行し易い傾向がある。加熱時間は、0.1〜180秒が好ましく、0.5〜180秒がより好ましく、1〜180秒が更に好ましい。
【0052】
接着剤成分8aの硬化により接続部50aが形成されて、図7に示すような回路接続体100が得られる。接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。なお、接着剤層8の接着剤成分として、光によって硬化するものを使用した場合には、接着剤層8に対して活性光線やエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
【0053】
本実施形態によれば、接着材リール10を使用することで、巻かれた状態の異方導電テープ5を引き出す際にブロッキングの発生を十分に抑制できる。このため、接続信頼性に優れた回路接続体100を十分安定的に製造できる。また、接着材リール10に巻かれた異方導電テープ5を最後まで使用することができ、使用されずに破棄される接着剤組成物を十分に低減できる。
【0054】
<第2実施形態>
図9を参照しながら、第2実施形態に係る接着材リール20について説明する。本実施形態に係る接着材リール20は、粘着テープ16が異方導電テープ5とエンドテープ12の接合部であって、カバーテープ14と同じ側に設けられてカバーテープ14で覆われていることの他は、接着材リール10と同様の構成を有する。なお、粘着テープ16のみで十分な接合強度を達成できる場合は、カバーテープ14をエンドテープ12の先端部12b側にまで延在させなくてもよい。
【0055】
接着材リール20は、図9に示すように、接着材リール10と同様の範囲にわたって異方導電テープ5に接着剤層8が存在しない領域5bが形成されている、かかる構成によって以下のような効果が奏される。すなわち、異方導電テープ5が巻芯1に巻かれた状態にあっては、領域5bが異方導電テープ5とエンドテープ12との接合部の直上に位置する。当該接合部が領域5bで覆われるため、異方導電テープ5に張力が加わって接合部に隙間ができたとしても、粘着テープ16の粘着剤を起因とするブロッキングの発生を十分に抑制できる。
【0056】
図10を参照しながら、比較例2に係る接着材リールのブロッキング現象について説明する。比較例2に係る接着材リールは、接着剤層8がエンドテープ12との接合部にまで形成されていることの他は、第2実施形態に係る接着材リール20と同様の構成を有する。すなわち、当該接着材リールは、接着剤層8が存在しない領域5b及びこれを覆うカバーテープ14を具備しない異方導電テープ56を巻芯1に巻き付けたものである。なお、図10においては、便宜上、巻芯1の外面1aが直線で描かれているが、実際は円弧をなすものである(図4参照)。
【0057】
図10(a)に示す通り、異方導電テープ56が巻芯1に巻かれた状態にあっては、異方導電テープ56とエンドテープ12との接合部の直上にも接着剤層8が存在する。この状態から異方導電テープ56を引き出すと、粘着テープ16の厚みや粘着剤16aの影響によって接着剤層8が基材6から剥離する可能性がある(図10(b)参照)。接着剤層8が基材6の背面に転写すると、圧着装置25に接着剤層8が適切に供給することができなくなる(図10(c)参照)。その結果、回路接続体の接続信頼性が不十分となるおそれがある。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、異方導電テープ5の量が残り僅かであることを検知するため、カバーテープ14と接着剤層8との間に色相差を設ける場合を例示したが、エンドテープ12と基材6又は接着剤層8との間に色相差を設けてもよい。例えば、エンドテープ12として黒色のものを使用してもよい。あるいは、エンドテープ12の表面と裏面との間で色相差を設けるなどしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、単層構造の接着剤層8を有する異方導電テープ5を例示したが、接着剤層は多層構造であってもよい。多層構造の接着剤層を有する異方導電テープは、接着剤成分及び導電粒子の種類あるいはこれらの含有量が異なる層を基材6上に複数積層することによって製造することができる。例えば、導電粒子を含有しない導電粒子非含有層及び導電粒子を含有する導電粒子含有層によって二層構造の接着剤層を構成してもよい。なお、導電粒子非含有層及び導電粒子含有層の接着剤成分としては、上述の接着剤層8の接着剤成分と同様のものを使用できる。
【0061】
更に、上記実施形態においては、回路接続用テープとして異方導電テープ5を例示したが、接着剤層8が接着剤成分8aからなり導電粒子8bを含有しない非導電テープに対して上記実施形態1,2に係る構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…巻芯、5…異方導電テープ(回路接続用テープ)、5a…異方導電テープの終端部、5b…接着剤層が形成されていない領域、6…基材、8…接着剤層、8A…硬化物、8a…接着剤成分、8b…導電粒子、10,20…接着材リール、12…エンドテープ、12b…エンドテープの先端部、14…カバーテープ、16…粘着テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと、前記回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えた接着材リールであって、
前記回路接続用テープは、終端部に接合されたエンドテープと、当該回路接続用テープの終端から始端の方向に向けて少なくとも前記巻芯の一巻き分の長さにわたって前記接着剤層が形成されていない領域と、当該領域を覆うように設けられたカバーテープとを有する接着材リール。
【請求項2】
前記カバーテープは、前記エンドテープの先端部側にまで延在して前記回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部とを接合している、請求項1に記載の接着材リール。
【請求項3】
前記回路接続用テープは、当該回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部とを覆うように設けられた粘着テープを更に有する、請求項1又は2に記載の接着材リール。
【請求項4】
前記エンドテープの少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着材リール。
【請求項5】
前記カバーテープの色相は、前記接着剤層の色相と異なる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着材リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−222144(P2010−222144A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39154(P2010−39154)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】