説明

接着製品の製造方法

【課題】 接着剤を介して貼り付けられる中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部と第二の物質とにおいて、貼り付け面の荒れの程度を細かくするとともに均一にして、かつ極性の高い処理加工を施し接着性を向上させる接着製品の製造方法を提供する。
【解決手段】 その中空体の殻部の層内または内側に、面状または擬似面状の通電性材料を設け、高分子材料殻部の外側面がコロナ放電処理なされた後に、接着剤として無溶剤型の接着剤を使用して接着されることを特徴とする接着製品の製造方法であり、表皮が中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面に接着剤を介して貼り付けられて構成される製品において、貼り付け面がコロナ放電加工処理により均一に表面処理されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面に第二の物質が貼り付けられて構成される接着製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面に第二の物質が貼り付けられて構成される接着製品は、スポーツ用具のラケットのグリップ、サッカー、バレーボール等の球技に使用されるボールを初めとし、椅子の肘掛けや各種ケース、自動車内のコンソールボックス他の部品、装飾用建築材料等、各種の製品が上げられる。これらの製品は、装飾や表面の風合い感や摩擦係数の向上目的で布、合成皮革、印刷の施されたシート等の表皮がラミネート接着されている。これらの製品の表皮接着前の高分子材料殻部は、機能性と価格の点で、ゴムやオレフィン系の材料が多用されている。
【0003】
この高分子材料殻部として多用されているゴムやオレフィン系の材料は、従来、サンディングやバフ加工処理等で表面を荒らす、または溶剤系のプライマーを塗布する等の処理がされ、その後に、溶剤系の接着剤を用いて表面材料が接着されてきた。
【0004】
特に、サッカーボール、バレーボール等のスポーツボールには、表皮がラミネートによる接着方法で取り付けられるボール(以下、ラミネートボールという)がある。このラミネートボールの製造方法については、後に記載する特許文献1ないし特許文献3に示されるものがある。
【0005】
すなわち、ラミネートボールは、ゴム製の球形チューブの外表面に糸を均一に巻き付けて補強層を形成され、その補強層の外表面にゴム層を設けて加硫されたカーカスが作成され、カーカスの外表面に五角形、六角形等の多角形の複数の表皮が接着剤を介して貼り付けられることにより製造されている。
【0006】
このようなボールの製造方法にいて、接着剤がカーカス外表面と表皮内表面とを強力に結合してカーカスと表皮とが強力に接着されるように、カーカスの外表面、さらには必要に応じて表皮の内表面がバフ加工処理して荒らされている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−321404号公報
【特許文献2】特開2003−33449号公報
【特許文献3】実用新案登録3085669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の接着工法によれば、サンディングやバフ加工処理等で表面を荒らすため、粉塵が発生し、または溶剤系のプライマーや溶剤系接着剤を使用するために、有機溶剤が職場に揮散し、職場環境を汚染し作業員の健康を害する問題が生じていた。また、有機溶剤の揮散は、火災の誘引としても問題であった。
【0009】
球技用ボールを例示すると、サッカー、バレーボール等の球技に使用されるボールは、球技の性質上非常に強力な外力が加えられる。従って、カーカスと表皮とを貼り付けたラミネートボールにおいて、カーカスと表皮とが剥がれないように強力に接着されていることが要求される。しかし、従来のボールの製造方法は上記のように構成されていたため、つぎのような課題が存在していた。
【0010】
すなわち、カーカスの外表面、さらには表皮の内表面のバフ加工処理では、荒れの程度が粗く、また、荒れの程度が部分的に不均一になる。その結果、バフ加工処理された表面に対する接着剤の親和性は、改善されてはいるが十分ではなくあるいはむらがある。カーカスと表皮との接着力は未だ不十分であり、部分的に接着力の弱い部分が発生し、必要な箇所に必要な接着力が得られない状態が発生する。従って、予想より短期間で表皮がカーカスから剥がれることがある。
【0011】
この発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面に接着剤を介して第二の物質が貼り付けられる製品において、粉塵や有機溶剤が発生すること無く、均一な表面改質を行い、強い接着力を有する接着製品の製造方法を提供することを目的とするボール例について具体的に説明すると、接着剤を介して貼り付けられるカーカスと表皮とにおいて、クリーンな職場環境を保ち、貼り付けられる表面の荒れの程度を細かくするとともに均一な表面改質を行い強い接着力を有するボールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による接着製品の製造方法は、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の層内または内側に、面状または擬似面状の通電性材料を設け、この高分子材料殻部の外側面がコロナ放電処理され、接着剤として無溶剤型の接着剤を使用して接着されることを特徴とする。ボールの製造方法を特記すると、複数の多角形の表皮がカーカスの外表面に接着剤を介して貼り付けられて構成されるラミネートボールにおいて、カーカスの層内または内側に、面状または擬似面状の通電性材料を設け、このカーカスの外表面、必要に応じて表皮の内表面がコロナ放電加工処理され、無溶剤型の接着剤が使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によるボールの製造方法は以上のように構成されていることにより、以下のような効果を得ることができる。すなわち、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面が均一にコロナ放電処理でき、そのコロナ放電加工処理により、非常に微細なミクロンメートル単位の荒れた状態となり、かつ化学的にはカルボニル基やカルボキシル基等の酸素含有官能基が生じ、極性の高い表面が形成され、接着性が向上する。このため、溶剤型接着剤に比べ、流動性の低い無溶剤型接着剤を用いても高い接着強さを発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明は、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面に接着剤を介して第二の物質が貼り付けられて構成される製品において、その中空体の殻部の層内または内側に、面状または擬似面状の通電性材料を設け、高分子材料殻部の外側面がコロナ放電処理なされた後に、接着剤として無溶剤型の接着剤を使用して接着される接着製品の製造方法であり、この発明による接着製品、特に、ボールの製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。ラミネートボールは、ゴム製の球形チューブの外表面に糸を均一に巻き付けられて補強層が形成され、その補強層の外表面にゴム層を設けて加硫されたカーカスが作成され、カーカスの外表面に複数の多角形の表皮が接着剤を介して貼り付けられることにより製造される。
【0015】
以上のような製造工程において、この発明では、まず、前記球形チューブの製作に際し、球形チューブの内表面全面に、通電性塗料が塗布されている、金属箔が貼り付けられている、あるいは内表面に接して球形に成形された金網、すなわち通電体が設けられている状態に製作される。また、球形チューブのバルブ用孔からリード線が挿入され、通電体に連結されている。なお、金属箔あるいは金網は、後述するコロナ放電加工処理後の何れかの工程において、バルブ用孔から引出す、あるいは、内部にそのまま放置する。
【0016】
つぎに、補強層が形成され、ゴム層を設けて加硫された前記カーカスにおいて、前記リード線を陰極に接続し、所定の間隔を維持しながら外表面に沿って移動可能に針電極を装着する。カーカスが球形に膨らんだ状態で、針電極に電圧をかけ、内表面の通電体との間に電位差を発生させる。その結果、針電極と通電体との間、すなわち針電極とカーカスの外表面との間にコロナ放電現象が発生し、針電極先端周辺のカーカスの外表面に、開口部の大きさがミクロンメートル単位の放電痕である無数の傷が発生する。
【0017】
コロナ放電状態で前記針電極を前期カーカスの外表面に沿って移動させてコロナ放電加工処理を行い、カーカスの外表面全面に放電痕を発生させ、荒らす。電位差を一定に保持し、移動速度を一定に保持することにより、均一な放電痕の大きさおよび分布の荒れた状態を得ることができる。また、カーカス外表面と針電極先端との間隔、電位差、移動速度の何れかを適宜に選択することにより、所望の放電痕の大きさあるいは分布の荒れた状態に加工することができる。さらには、適宜に選択した網目模様状に、たとえば多角形の表皮の周囲に沿った網目状に、針電極を移動させることも可能である。また、コロナ放電状態で前記針電極を固定させ、前期カーカスの外表面を移動させてコロナ放電加工処理を行うことも可能である。
【0018】
前記カーカスの外表面に接着剤を介して貼り付けられる前記表皮の内表面についても、同様にコロナ放電加工処理を行うことができる。すなわち、陰極となる金属板の上に内表面を上にして表皮を固定し、カーカスの場合と同様に、内表面に沿って電圧をかけた針電極を移動させ、あるいはカーカス側を移動させて放電痕を発生させる。
【0019】
また、以上のコロナ放電加工処理により表面を荒れさせた前記カーカスの外表面、あるいは前記表皮の内表面では、その素材が樹脂系材料である場合、コロナ放電により極性官能基すなわち活性基が生成される。この活性基は濡れ性を向上させ、接着剤の接着機能を高め、カーカスと表皮との接着をより強固なものにする。
【実施例】
【0020】
以下、この発明の製造方法における構成材料と工程及びその作用について説明すると、(a)中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の層内または内側に設ける面状または擬似面状の通電性材料について
本発明に用いる面状または擬似面状の通電性材料とは、金属箔、金属蒸着膜、金属繊維、炭素繊維、通電性の有機繊維、導電性塗料等の通電性材料が単独で、あるいは組み合わせて、使用できる。擬似面状とは、例えば、通電性の有機繊維が、平行、または、クロス状に並べられ、または織物上、網状、ウェブ状等で、擬似面を形成していることを意味し、通電繊維に間隔を有する場合も含んでいる。
【0021】
(b)中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側面のコロナ放電処理について、
この発明の中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側面のコロナ放電処理は、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の層内または内側に設ける面状または擬似面状の通電性材料にリード線を結合し、このリード線は、陰極に接続される。移動可能な放電電極を中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側に配置させ、この放電電極と内側の通電体間に、高周波電源により供給される高周波・高電圧出力を印加することでコロナ放電を発生させる。放電電極は、特に限定されるものではないが、針状、刃型状、U字状、くつ型状等のセグメント電極や、クオーツ電極等が有効に使用できる。
【0022】
従来、2電極間でコロナを発生させその間の物質表面を処理するコロナ放電処理は、フィルム等の薄い平滑性の材料にのみ有効であり、中空体の表面に均一あコロナ処理加工は出来なかった。また、コロナ発生処理装置内部で放電させプラズマ状態を作り、それを風で押出し、コロナ処理をする装置もあるが、処理効果が低いことや装置が大型化する等の欠点がある。
【0023】
この発明の方法で、外側の放電電極を、あるいは中空自体を動かすことにより、中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側面に均一なコロナ処理加工を行うことができる。
【0024】
(c)反応性の官能基として少なくともイソシアネート基を有する反応性ホットメルト接着剤について、
この発明には、上述の均一かつ有効なコロナ処理加工をすることにより、環境上好ましい溶剤を含まない常温液状の接着剤、常温固形のホットメルト、フィルム状の無溶剤型接着剤が使用できる。本発明は、無溶剤接着剤の種類を限定するものではないが、より好ましい例は、反応性の官能基として少なくともイソシアネート基を有する反応性ホットメルト接着剤の使用である。
【0025】
この反応性ホットメルト接着剤とは、水分や水酸基等の活性水素と反応する官能基を分子端末に有するプレポリマーを成分中に有し、かつ塗布時には加熱溶融して用いる湿気硬化型の接着剤を示称する。例えば、具体的には、常温固形のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタンエンポリオール、水添ポリブタジエンオール等の1種または2種以上にポリイソシアネート化合物やアルコキシ化合物を付加または共重合させて得られるプレポリマーを主成分とする。このような反応性ホットメルト接着剤は、120°Cにて、1000〜50000mPa’sの粘度を有する。
【0026】
反応型ホットメルト接着剤は、コロナ処理加工によって生じる酸素含有官能基との相互作用が大きく固い接着力を発現する。また、この接着剤は、有機溶剤を含まないので、接着製品の部材に物性変化を与えず、接着製品本来の機能を有効に発現させることができる。さらに、反応後に有害な揮発成分を含有しないので、接着製品は衛生上安全に扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部の外側表面に接着剤を介して第二の物質が貼り付けられて構成される製品において、その中空体の殻部の層内または内側に、面状または擬似面状の通電性材料を設け、高分子材料殻部の外側面がコロナ放電処理なされた後に、接着剤として無溶剤型の接着剤を使用して接着されることを特徴とする接着製品の製造方法。
【請求項2】
中空体の高分子材料殻部の層内または内側に設けた面状または擬似面状の通電性材料が、金属箔、金属蒸着膜、金属繊維、炭素繊維、通電性の有機繊維、導電性塗料の一種類以上であることを特徴とする請求項1記載の接着製品の製造方法。
【請求項3】
中空体または凹み構造を形成する高分子材料殻部がラミネートボール芯材のカーカスであり、接着を介して貼り付けられる第二の物質が表皮片であり、接着製品がラミネートボールであることを特徴とする請求項1記載の接着製品の製造方法。
【請求項4】
無溶剤型の接着剤が、反応性の官能基として少なくともイソシアネート基を有する反応性ホットメルト接着剤であることを特徴とする請求項1記載の接着製品の製造方法。

【公開番号】特開2006−312269(P2006−312269A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135738(P2005−135738)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(505168067)有限会社潮財務 (3)
【Fターム(参考)】