説明

接続具付きフレキシブルフラットケーブル、回転コネクタ装置、及びフレキシブルフラットケーブルの接続方法

【課題】引張り力等が掛かった場合でも導体部が破断しにくい接続具付きフレキシブルフラットケーブルを提供する。
【解決手段】接続具付きのフレキシブルフラットケーブル14は、接続具と、フレキシブルフラットケーブル14と、を備える。接続具は、異なる部材を電気的に接続可能なバスバーを有する。フレキシブルフラットケーブル14は、バスバーに接続され、長手方向に垂直な方向に折り曲げられた屈曲部が溶接箇所の近傍に2箇所以上形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、端部に接続具が取り付けられたフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のステアリング側と車体側のように、回転側と固定側を電気的に接続するための回転コネクタ装置が知られている。一般的に、自動車のステアリング手段は、緊急時に確実な動作を要求されるエアバッグ等の構成を備えている。このため、動作の信頼性、コンパクト化等の観点から、リボン状に構成されたフレキシブルフラットケーブル等によってステアリング側と車体側とを接続する構成の回転コネクタ装置が採用されている。
【0003】
特許文献1は、この種の回転コネクタ装置を開示する。特許文献1の回転コネクタ装置は、ステータが有する筒状の外側筒部(外筒)と、ロテータが有する筒状の内側筒部(内筒軸部)と、の間に形成された環状の空間に、ある程度の長さを有するフレキシブルフラットケーブルを巻いた状態で収納した構成である。このフレキシブルフラットケーブルは、ステータが備えるコネクタと、ロテータが備えるコネクタと、を電気的に接続している。そして、このフレキシブルフラットケーブルは前記環状の空間内で一方向に巻かれた後、巻かれる方向をU字状に反転されて逆方向に巻かれている。この構成で、当該フレキシブルフラットケーブルの長さに対応する回数だけ、ロテータを時計回り又は反時計回りに回転させることが可能となっている。
【0004】
ところで、フレキシブルフラットケーブルは複数本の薄い導体部を樹脂等で被覆したものであり、フレキシブルフラットケーブルと外部の電気部品とを接続する場合は、特許文献2で示すようなバスバーによって接続する構成が一般的である。
【0005】
特許文献2で示すバスバーは、金属製のターミナル部を有している。このターミナル部の一端にはフレキシブルフラットケーブルの導体部が接続され、他端には電気部品の電線の芯線が接続される。この構成により、フレキシブルフラットケーブルと外部の電気部品とを電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−126836号公報
【特許文献2】特開平11−31542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、回転コネクタ装置等においては、バスバーとフレキシブルフラットケーブルの導体部とが溶接により接続されることがある。この場合、フレキシブルフラットケーブルの導体部は薄くて破断し易いため、溶接箇所に対して大きな外力が加わらないことが好ましい。溶接箇所に強い力が作用すると、フレキシブルフラットケーブルの導体部が破断したり、溶接が剥がれたりし、接続不良が発生するおそれがある。
【0008】
特に、回転コネクタ装置等の製造時においては、バスバーとフレキシブルフラットケーブルとが接続された状態で組付け作業が行われるため、作業中にフレキシブルフラットケーブルが引っ張られたりすることによって、導体部が破断してしまうことがあった。
【0009】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、引張り力等が掛かった場合でも導体部が破断しにくい接続具付きフレキシブルフラットケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の接続具付きフレキシブルフラットケーブルが提供される。即ち、この接続具付きフレキシブルフラットケーブルは、接続具と、フレキシブルフラットケーブルと、を備える。前記接続具は、異なる部材を電気的に接続可能なバスバーを有する。前記フレキシブルフラットケーブルは、前記バスバーに電気的に接続される。前記フレキシブルフラットケーブルを幅方向中央で切断した断面において、屈曲部が前記バスバーとの接続箇所の近傍に2箇所以上形成される。
【0012】
これにより、フレキシブルフラットケーブルが引っ張られたり捻られたりした場合においても、折り曲げられた屈曲部が変形することにより、バスバーとフレキシブルフラットケーブルとの接続箇所に大きな外力が伝わりにくい。従って、引っ張りや捻り等によって、フレキシブルフラットケーブルの導体部が破断することを防止できる。
【0013】
前記の接続具付きフレキシブルフラットケーブルにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この接続具付きフレキシブルフラットケーブルは、前記接続箇所の近傍で、当該フレキシブルフラットケーブルを前記接続具に固定する固定部を備える。2箇所以上の前記屈曲部は、前記固定部を挟んで前記接続箇所と反対側に位置する。
【0014】
即ち、接続箇所の近傍に固定部を備える場合、通常は、固定部を挟んで接続箇所と反対側の部分から、フレキシブルフラットケーブルに対して引張り力等が加えられることになる。この点、上記の構成においては、接続箇所と反対側に屈曲部が形成されているため、屈曲部でのフレキシブルフラットケーブルの変形によって外力を大きく吸収しつつ、固定部でフレキシブルフラットケーブルが動かないように固定することができる。この結果、フレキシブルフラットケーブルの導体部の破断を効果的に防止できる。
【0015】
前記の接続具付きフレキシブルフラットケーブルにおいては、前記フレキシブルフラットケーブルの断面には、鋭角に折り曲げられた第1屈曲部と、前記第1屈曲部とほぼ等しい角度で反対側に折り曲げられた第2屈曲部と、が形成されることが好ましい。
【0016】
これにより、2つの屈曲部が形成される箇所の前後で、フレキシブルフラットケーブルの向きが変わらないため、接続具等のレイアウト等を大きく変更することなく、本発明の効果を発揮させることができる。また、2箇所が鋭く折り曲げられる構成であるため、様々な形態で加えられる外力を安定して効果的に吸収することができる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、前記の接続具付きフレキシブルフラットケーブルを備える回転コネクタ装置が提供される。
【0018】
これにより、組付作業時等において力が掛かっても導体部が破断しにくいフレキシブルフラットケーブルを備える回転コネクタ装置が実現できる。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、以下のフレキシブルフラットケーブルの接続方法が提供される。即ち、このフレキシブルフラットケーブルの接続方法は、屈曲工程と、取付工程と、を含む。前記屈曲工程では、フレキシブルフラットケーブルを、当該フレキシブルフラットケーブルを幅方向中央で切断した断面において屈曲部が2箇所以上形成されるように屈曲させる。前記取付工程では、異なる部材を電気的に接続可能なバスバーを前記屈曲部の近傍に配置し、当該バスバーに前記フレキシブルフラットケーブルを取り付ける。
【0020】
なお、このフレキシブルフラットケーブルの接続方法において、屈曲工程と取付工程の何れを先に行うかは問わないものとする。
【0021】
これにより、上記の方法でフレキシブルフラットケーブルとバスバーとを接続することで、フレキシブルフラットケーブルが引っ張られたり捻られたりした場合においても、折り曲げられた屈曲部が変形するため、接続箇所に外力が直接伝わらない。従って、引っ張りや捻り等によってフレキシブルフラットケーブルの導体部が破断することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】ステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】接続具の構成を示す斜視図。
【図4】屈曲工程により山状部を形成したフレキシブルフラットケーブルを接続具に差し込んだ様子を示す斜視図。
【図5】溶接工程後のフレキシブルフラットケーブル及び接続具の構成を示す斜視図。
【図6】フレキシブルフラットケーブルに加えられる外力が溶接箇所に伝達されるのを山状部によって抑制することを説明する断面図。
【図7】フレキシブルフラットケーブルに形成する屈曲部の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタ1の全体的な構成を示す斜視図、図2はステアリングロールコネクタ1の分解斜視図である。
【0024】
図1及び図2に示す回転コネクタ装置としてのステアリングロールコネクタ1は、互いに相対回転可能なステータ11とロテータ12とから構成されるケーブルハウジング13を備えている。
【0025】
ステータ11は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図略)に固定されている。前記ケーブルハウジング13の中心には貫通状の差込孔19が形成され、この差込孔19に、前記ステアリングコラムに支持されたステアリングシャフトが挿入されている。前記ステータ11はステアリングシャフトに対して相対回転可能に取り付けられる一方、ロテータ12はステアリングシャフトとともに一体的に回転するように構成されている。また、ステアリングホイール(回転操作具)は、前記ステアリングシャフトに固定されている。
【0026】
図2等に示すように、前記ステータ11は、固定側リング板21と、この固定側リング板21の外縁の部分に固定された円筒状の外側筒部31と、を備えている。固定側リング板21と外側筒部31とは、互いに垂直となるように取り付けられている。また、前記ロテータ12は、リング状に形成された回転側リング板22と、この回転側リング板22の内縁から垂直に延びる円筒状の内側筒部32と、を備えている。ロテータ12はステータ11に対し、前記ステアリングシャフトの回転軸と同一の軸線を中心にして回転することができる。
【0027】
図2に示すように、ステータ11には挿通孔11aが、ロテータ12には係止凹部12aがそれぞれ形成されている。前記挿通孔11aには、回転止めのための固定ピン17を差し込むことができる。この固定ピン17には係止突起17aが形成されており、当該固定ピン17を前記挿通孔11aに挿通させるとともに係止突起17aを係止凹部12aに係合させることにより、ステータ11に対してロテータ12が回転しないようにロックすることができる。
【0028】
この固定ピン17は、ステアリングロールコネクタ1を車体に取り付ける際に、ロテータ12の位置が中間位置(ロテータ12を時計方向に最大に回した位置と、反時計方向に最大に回した位置と、の中間の位置)からズレないように、当該ステアリングロールコネクタ1の製造時に一時的に取り付けられるものである。これにより、ステアリングロールコネクタ1の車体への組付作業の効率を向上させるとともに、組付ミスを防止することができる。なお、ステアリングロールコネクタ1を適切に車体に取り付けた後は、当該固定ピン17を挿通孔11aへの差込み部分の根元で折り取ることにより、ステータ11に対してロテータ12を回転させることが可能となる。
【0029】
固定側リング板21と回転側リング板22は、ロテータ12の回転軸の方向で互いに対面するとともに、それぞれが外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置されている。また、内側筒部32は外側筒部31より内側に配置され、前記外側筒部31と内側筒部32は、径方向で互いに対面するように配置されている。以上の構成で、固定側リング板21と回転側リング板22、及び外側筒部31と内側筒部32によって囲まれた環状の空間である収容空間15が形成されている。
【0030】
また、ロテータ12にはスリーブ16が固定されている。このスリーブ16には突起58が形成されており、ロテータ12の前記突起58に対応する位置には爪59が形成されている。そして、前記爪59に前記突起58を引っ掛けることにより、スリーブ16がロテータ12に相対回転不能に取り付けられている。
【0031】
前記収容空間15の内部には、図2に示すように、リテーナ25と、フレキシブルフラットケーブル14と、が収容されている。リテーナ25は、ベースリング26と、複数の回転ローラ27とを備えている。
【0032】
前記ベースリング26は環状に形成された板状の部材として構成されており、固定側リング板21に近接して配置されている。このベースリング26は、ロテータ12の回転軸を中心にして回転可能に構成されている。回転ローラ27はベースリング26の一面側に周方向に等間隔で並べて配置され、それぞれが、前記ロテータ12の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。前記フレキシブルフラットケーブル14は、このベースリング26の上に巻かれるようにして、収容空間15内に収容されている。
【0033】
具体的には、後述の固定側ケーブル端部収容部41aから前記収容空間15へ引き出されたフレキシブルフラットケーブル14は、その一部がリテーナ25の外側でステータ11の外側筒部31の内周面に沿うように巻かれる。そして、フレキシブルフラットケーブル14は途中で、複数の前記回転ローラ27のうち1つに巻き掛かるようにして向きを反転する。その後は、フレキシブルフラットケーブル14はリテーナ25の内側でロテータ12の内側筒部32の外周面に沿うように巻かれ、最終的には収容空間15から引き出されて、後述の回転側ケーブル端部収容部42a内に導入される。
【0034】
このように、前記収容空間15の内部において、フレキシブルフラットケーブル14は適宜の長さの弛みを有するように巻かれており、この弛みの長さは、ロテータ12がステータ11に対して回転することにより変化する。この弛み長さの変化に追従するようにリテーナ25が適宜回転することにより、フレキシブルフラットケーブル14を収容空間15内で常に整列させた状態で保持することができる。
【0035】
ステータ11の固定側リング板21には第1コネクタ41が取り付けられる。一方、前記ロテータ12の回転側リング板22には第2コネクタ42が取り付けられる。なお、第2コネクタ42は、ロテータ12の回転に伴って一体的に回転する。
【0036】
図1及び図2に示すように、第1コネクタ41の内部には固定側ケーブル端部収容部41aが形成されている。前述のように、固定側ケーブル端部収容部41aには、収容空間15から引き出されたフレキシブルフラットケーブル14の端部が導入されるようになっている。
【0037】
また、図1及び図2に示すように、第1コネクタ41には、固定側端子挿入孔41bが形成されている。この固定側端子挿入孔41bは、所定形状の端子を挿入可能に形成されている。具体的には、車体側の電気回路を構成しているワイヤハーネスに接続された端子を挿入することができる。
【0038】
また、図2に示すように、第1コネクタ41には、接続具50が2つ並べて配置されている。それぞれの接続具50は、固定側ケーブル端部収容部41a内のフレキシブルフラットケーブル14の導体部と、固定側端子挿入孔41bに装着された図示しない端子と、を電気的に接続可能に構成されている。なお、この接続具50の詳細な構成については後述する。
【0039】
一方、第2コネクタ42の内部は、第1コネクタ41と同様に、収容空間15から引き出されたフレキシブルフラットケーブル14の端部が導入される回転側ケーブル端部収容部42aを備えている。また、第2コネクタ42には、ステアリングホイールが備える電気部品(例えば、ホーンスイッチ、エアバッグモジュール等)から引き出されたケーブルの端子を挿入可能な回転側端子挿入孔42bが形成されている。このケーブルの端子とフレキシブルフラットケーブル14の導体部とは、図略の接続具によって接続されている。
【0040】
以上の構成で、ステアリングホイール側のエアバッグモジュール等と、車体側の電気回路とを、フレキシブルフラットケーブル14を介して電気的に接続することができる。
【0041】
次に、図3から図5を参照して、フレキシブルフラットケーブル14及び接続具50の構成及びそれらの接続方法について説明する。図3は、接続具50の構成を示す斜視図である。図4は、屈曲工程により山状部141を形成したフレキシブルフラットケーブル14を接続具50に差し込んだ様子を示す斜視図である。図5は、溶接工程後のフレキシブルフラットケーブル14及び接続具50の構成を示す斜視図である。
【0042】
初めに、接続具50及びフレキシブルフラットケーブル14の構成について説明する。
【0043】
接続具50は、図3に示すように、複数の金属製のバスバー51と、このバスバー51を保持する合成樹脂製のバスバーケース52と、を備えている。
【0044】
バスバーケース52には、複数本のバスバー51が取り付けられている。それぞれのバスバー51は、バスバーケース52から突出する第1端子部51aと、バスバーケース52から露出する第2端子部51bと、これらの2つの端子部を相互に接続する図略の中間部と、で構成されている。なお、バスバー51の中間部は、バスバーケース52の内部に収容されている。
【0045】
第1端子部51aは、固定側端子挿入孔41bに装着される端子等を接続可能に構成されている。一方、第2端子部51bは、フレキシブルフラットケーブル14の導体部と電気的に接続可能に構成されている。
【0046】
以下、第2端子部51bについて具体的に説明する。前記バスバーケース52には、フレキシブルフラットケーブル14の幅とほぼ等しい幅を有する浅い凹み部52bが形成されており、この凹み部52bの内壁面に露出するようにバスバー51が適宜の間隔で並べて配置されている。バスバー51の表面が凹み部52bの内壁に露出する部分が前記第2端子部51bを形成しており、この第2端子部51bには、フレキシブルフラットケーブル14の導体部を溶接できるようになっている。
【0047】
前記凹み部52bにおいては、フレキシブルフラットケーブル14の幅方向で互いに対面する内壁が形成されている。この内壁には、後述のモールドキー53を取付け可能な凸部52aがそれぞれ形成されている。一対の凸部52aは相互に対応する位置に配置され、互いに近づく向きに突出している。
【0048】
フレキシブルフラットケーブル14は、並べて配置された複数の平型の導体部と、これらの導体部を覆うように形成された被覆部と、で構成されている。フレキシブルフラットケーブル14の端部においては、図4等に示すように、上記被覆部が除去されて複数の導体部14bが露出している。この導体部14bが第2端子部51bと溶接され、図5のように溶接部14eが形成されることで、フレキシブルフラットケーブル14と第2端子部51bとが機械的に結合するとともに、電気的に接続される。
【0049】
次に、フレキシブルフラットケーブル14を接続具50に接続する方法について説明する。初めに、作業者は、フレキシブルフラットケーブル14を、その端部に近い所定の位置で折り曲げる(屈曲工程)。本実施形態では、谷折り、山折り、谷折りというように交互に折り曲げることで、3箇所の屈曲部14aを形成している。
【0050】
次に、作業者は、フレキシブルフラットケーブル14の端部(屈曲部14aより先端側の部分)をバスバーケース52の凹み部52bに差し込み、被覆が除去されて露出している導体部14bを、対応する第2端子部51bに対して近接させる。そして、フレキシブルフラットケーブル14の位置を維持しながら、モールドキー(規制部材、拘束部材、固定部)53をバスバーケース52に取り付ける(図4を参照)。
【0051】
このモールドキー53は、細長い直方体形状の樹脂製の部材であり、その長手方向の両端部には凹部53aが形成されている。この構成で、凹部53aを前記凸部52aに係合させることにより、モールドキー53を凹み部52bの内部に嵌め込んで固定することができる。この結果、フレキシブルフラットケーブル14は凹み部52bの内壁とモールドキー53との間で挟み込まれる形となって、後の溶接工程等において位置ズレやバタツキが生じないように規制される。また、フレキシブルフラットケーブル14に形成された屈曲部14aは、モールドキー53の近傍であって、前記モールドキー53を挟んで第2端子部51b(後述の溶接部14e)と反対側に位置することになる。
【0052】
フレキシブルフラットケーブル14の規制が完了した後は、超音波溶接機等を用いて、フレキシブルフラットケーブル14の導体部14bとバスバー51の第2端子部51bとを溶接し、溶接部14eを形成する(溶接工程、取付工程)。なお、溶接部14eと第2端子部51bとを電気的に接続可能であれば、超音波溶接に限られず適宜の接続方法を用いることができる。
【0053】
図5には、前述したように3箇所の屈曲部14aをフレキシブルフラットケーブル14に形成することで山状部141を構成し、その後に溶接工程を行った様子が示されている。その後、フレキシブルフラットケーブル14の他端部(回転側ケーブル端部収容部42aに挿入される側)に対して所定の接続具が取り付けられる。そして、フレキシブルフラットケーブル14を所定の形状にして後にロテータ12等が組み合わせられ、ステアリングロールコネクタ1が完成する。
【0054】
次に、図6を参照して、フレキシブルフラットケーブル14に形成した山状部141の効果を説明する。図6は、フレキシブルフラットケーブル14に加えられる外力が溶接箇所に伝達されるのを山状部141によって抑制することを説明する断面図である。なお、図6は、フレキシブルフラットケーブル14の幅方向中央部を通る平面で切った断面を示している。
【0055】
上記のように、ステアリングロールコネクタ1の組立て時には、接続具50が第1コネクタ41に組み付けられ、フレキシブルフラットケーブル14は適宜曲げられながらドーナツ状の前記収容空間15に収容される。そのため、この作業の過程でフレキシブルフラットケーブル14が引っ張られたり捻られたりすることがあり、このときの外力が溶接部14eに直接伝達されると、フレキシブルフラットケーブル14の導体部14bが溶接部14eの近傍において破断したり、溶接部14eが剥がれたりしてしまうおそれがある。
【0056】
この点、本実施形態では、屈曲方向が反対となる屈曲部14aが交互に現れるようにフレキシブルフラットケーブル14が折り曲げられ、この結果、フレキシブルフラットケーブル14に山状部141が形成されている。従って、例えば図6(a)に示す状態から図6(b)に示す方向に引張り力を受けた場合においても、この山状部141が図6(b)に示すように変形する。この結果、外力が溶接部14e側に伝達されにくくなるため、フレキシブルフラットケーブル14の導線の破断を防止できる。
【0057】
なお、フレキシブルフラットケーブル14が曲げられたり捻られたりした場合においても、その曲げ及び捻りの殆どは、山状部141の変形によって吸収される。従って、フレキシブルフラットケーブル14の導線の破断を防止できる。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態の接続具50付きのフレキシブルフラットケーブル14は、接続具50と、フレキシブルフラットケーブル14と、を備える。接続具50は、異なる部材を電気的に接続可能なバスバー51を有する。フレキシブルフラットケーブル14は、バスバー51に電気的に接続される。フレキシブルフラットケーブル14を幅方向中央で切断した断面において、屈曲部14aが、バスバー51との接続箇所(溶接部14e)の近傍に2箇所以上形成される。
【0059】
これにより、フレキシブルフラットケーブル14が引っ張られたり捻られたりした場合においても、折り曲げられた屈曲部14aが変形することにより、溶接部14eに外力が直接伝わらない。従って、引っ張りや捻り等によって、フレキシブルフラットケーブル14の導体部14bが破断することを防止できる。
【0060】
また、本実施形態の接続具50付きのフレキシブルフラットケーブル14においては、溶接部14eの近傍で、当該フレキシブルフラットケーブル14を接続具50に固定するモールドキー53を備える。2箇所以上の屈曲部14aは、モールドキー53を挟んで溶接箇所と反対側に位置する。
【0061】
この構成においては、通常は、モールドキー53を挟んで溶接部14eと反対側の部分から、フレキシブルフラットケーブル14に対して引張り力等が加えられることになる。この点、上記の構成においては、溶接部14eと反対側に屈曲部14aが形成されているため、屈曲部14aでのフレキシブルフラットケーブル14の変形によって外力を大きく吸収しつつ、モールドキー53でフレキシブルフラットケーブル14が動かないように固定することができる。この結果、フレキシブルフラットケーブル14の導体部14bの破断を効果的に防止できる。
【0062】
次に、図7を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0063】
即ち、上記実施形態では、モールドキー53を挟んで溶接部14eの反対側に山状部141を形成する構成であったが、フレキシブルフラットケーブル14を折り曲げる方法については上記に限定されず、例えば図7(a)〜図7(d)のように変更することができる。図7は、フレキシブルフラットケーブル14に形成する屈曲部の変形例を示す断面図である。
【0064】
図7(a)の変形例では、モールドキー53よりも溶接部14e側に山状部141が形成されている。この構成であっても、引張り等による外力が溶接部14eに伝達されにくくできるので、フレキシブルフラットケーブル14の導体部の破断を防止できる。
【0065】
図7(b)の変形例では、モールドキー53よりも溶接部14e側と、その反対側と、に山状部141が形成されている。この構成にでは、山状部141が2つ形成されるため、フレキシブルフラットケーブル14に加わる外力を効果的に吸収することができる。
【0066】
図7(c)の変形例では、モールドキー53を挟んで溶接部14eの反対側に、Z字状に折り曲げられたZ折り部142が形成されている。このZ折り部142は、鋭角に折り曲げられた第1屈曲部14cと、第1屈曲部とほぼ等しい角度で反対側に折り曲げられた第2屈曲部14dと、で構成される。
【0067】
図7(c)の構成にすることにより、Z折り部142の前後でフレキシブルフラットケーブル14の向きが変わらないため、接続具50のレイアウト等を変更することなく、外力が溶接部14eに伝達されにくい構成にすることができる。また、2箇所が鋭く折り曲げられる構成であるため、様々な形態で加えられる外力を安定して効果的に吸収することができる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
フレキシブルフラットケーブル14を折り曲げる形態は任意であり、例えば、山状部141が連続して複数個形成されるようにジグザグ状に折り曲げても良い。
【0070】
接続具50の構成は、上記で示した例に限られない。例えば、バスバー51の本数及びレイアウトやバスバーケース52の形状も適宜変更しても良い。
【0071】
溶接工程の前にフレキシブルフラットケーブル14を折り曲げて山状部141を形成しておくことに代えて、溶接後にフレキシブルフラットケーブル14に山状部141を形成する構成に変更することができる。
【0072】
上記では、第1コネクタ41側の接続具50とフレキシブルフラットケーブル14との構成及び接続方法を説明したが、この構成及び接続方法は、第2コネクタ42側にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ステアリングロールコネクタ(回転コネクタ装置)
11 ステータ
12 ロテータ
14 フレキシブルフラットケーブル
14a 屈曲部
14e 溶接部(接続箇所)
50 接続具
51 バスバー
51a 第1端子部
51b 第2端子部
52 バスバーケース
53 モールドキー(固定部)
141 山状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる部材を電気的に接続可能なバスバーを有する接続具と、
前記バスバーに電気的に接続されるフレキシブルフラットケーブルと、
を備え、
前記フレキシブルフラットケーブルを幅方向中央で切断した断面において、屈曲部が前記バスバーとの接続箇所の近傍に2箇所以上形成されることを特徴とする接続具付きフレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の接続具付きフレキシブルフラットケーブルであって、
前記接続箇所の近傍で、当該フレキシブルフラットケーブルを前記接続具に固定する固定部を備え、
2箇所以上の前記屈曲部は、前記固定部を挟んで前記接続箇所の反対側に位置することを特徴とする接続具付きフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接続具付きフレキシブルフラットケーブルであって、
前記フレキシブルフラットケーブルの断面には、鋭角に折り曲げられた第1屈曲部と、前記第1屈曲部とほぼ等しい角度で反対側に折り曲げられた第2屈曲部と、が形成されることを特徴とする接続具付きフレキシブルフラットケーブル。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の接続具付きフレキシブルフラットケーブルを備えることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項5】
フレキシブルフラットケーブルを、当該フレキシブルフラットケーブルを幅方向中央で切断した断面において屈曲部が2箇所以上形成されるように屈曲させる屈曲工程と、
異なる部材を電気的に接続可能なバスバーを前記屈曲部の近傍に配置し、当該バスバーに前記フレキシブルフラットケーブルを取り付ける取付工程と、
を含むことを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69478(P2012−69478A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215394(P2010−215394)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】