説明

接続端子、接続端子付きアルミケーブル

【課題】 異種材料間における超音波溶接でも、過剰な超音波印加エネルギーが付与されず、かつ素材自体に機械的ダメージを与えない接続端子、接続端子付きアルミケーブルを提供する。
【解決手段】 アルミケーブル10は、複数のアルミ素線11による撚線12を備える。接続端子120はCuを主体に構成され、バッテリー等に接続される接続部23、接続部23に一体化されている板状基部21、板状基部21の両側に形成された側壁21a等を備える。板状基部21の上面および側壁21aの内面には、AlまたはAl合金によるAl層24が、めっき等により設けられている。Al層24により、超音波溶接の界面は同種のAl同士になるので、接続部に付与される超音波印加エネルギーは、過剰になることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続端子とケーブルの撚線とが異種材料であり、両者が超音波で溶接される接続端子、接続端子付きアルミケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境調和や資源エネルギーの節減などに、高い関心が集まっている。例えば、自動車産業においては、従来のガソリン自動車に代わって、電気自動車やハイブリット車が、開発或いは実用化されている。このような電気化された車両では、内燃機関を車両に比べ、電気接続に用いる線材が多くなり、重量増になる。そこで、導体に使用されてきた銅に代わる材料として、軽量化による燃費向上、鉄鋼資源のリサイクル性、および可撓性の観点から、アルミニウム(以下、「アルミ」という)導体が注目されている。このため、ハイブリッド車や電気自動車の電源用ハーネス、バッテリー用ケーブル等の導体には、アルミ材料が使用されている。
【0003】
図12は、従来の接続端子付きアルミケーブルを示す。この接続端子付きアルミケーブル1は、アルミケーブル10と、このアルミケーブル10の端部に接続される接続端子100とを備える。
【0004】
アルミケーブル10は、複数のアルミ素線11を撚り合わせてアルミ撚線12とし、このアルミ撚線12の外周を絶縁層13で被覆して構成されている。
【0005】
接続端子100は、CuまたはCu合金による板材を加工して作られている。そして、この接続端子100は、超音波溶接されるアルミ撚線12が介在する一対の側壁101aを有するU字形断面の板状基部101と、板状基部101の端部に形成されてアルミケーブル10の端部の絶縁層13を固定する固定片102と、板状基部101の先端部に形成されて接続対象の電気機器に接続されるドーナツ形の端子部103と、を備える。上記のようなアルミケーブル10と接続端子100を溶接する方法の1つに、超音波接続がある。
【0006】
図13は、図12に示すアルミケーブルと接続端子を位置決めした状態を示す。同図中、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は(b)のE−E線の断面図である。図14は、従来の超音波溶接方法を示し、(a)は接続端子付きアルミケーブルおよび超音波接続装置の側面図、(b)は(a)の上面図、(c)は(b)のF−F線の断面図である。
【0007】
図13に示すように、接続端子100の固定片102にアルミケーブル10の端部の絶縁層13を固定し、板状基部101の上面にアルミ撚線12を配置する。この状態で、図14の(a),(b)に示すように、超音波接続装置のアンビル41の上に板状基部101の裏面を載置し、アルミ撚線12の上面にホーンチップ42の端面を押し当てて超音波振動を付与する。ホーンチップ42の押圧と超音波振動により、アルミ素線11が塑性変形してアルミ撚線12が略平坦に押し潰され、アルミ素線11と板状基部101との界面が相互に摺り合わされることにより、溶接が完了する。溶接後、図14の(c)の様に、ホーンチップ42を引き上げる。この溶接により、図15に示すように、接続端子付きアルミケーブル1が完成する。
【0008】
なお、アルミケーブルと接続端子とを超音波接続する方法については、アルミ撚線12のアルミ素線11がばらけるのを防止するため、銅撚線の先端部を半円状の溝を有する電極と平面を有する電極の間に配置して所定の形状に固め、この固めた先端部を銅、銅合金、アルミニウム合金の丸や平角線の被接続線に重合し、この重合部を超音波溶接により接合する接続方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
同様の目的で、複数の素線による芯線部の直径相当の内径および絶縁被覆部の直径相当の内径を有する導電性の接続部材を電線の端末側に被せた後、接続部材と端子を超音波溶接する接続方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
また、第1の押え部材と第2の押え部材とにより、複数の素線による芯線部をW1(接合幅)の厚みにし、さらにW1を維持したまま加圧部材で加圧して上下方向を所定の寸法にして平板状にし、この平板状部分を溶接端子に超音波接合する超音波接合方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭54−43588号公報
【特許文献2】特開2004−71372号公報
【特許文献3】特開2004−95293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の超音波溶接方法によると、Cuによる接続端子とAlによるアルミ撚線とを超音波接合した場合、異種材料間の溶接になるため、同種金属間の溶接の場合と比べて、超音波印加エネルギーを大きく設定し、かつ長時間にわたり超音波振動を付与しなければならない。このため、エネルギー印加時の高温により、アルミ素線の変形が大きくなると共に、アルミ撚線全体の機械的強度が低下して、接続性が低下するという問題があった。
【0013】
特に、図15に示すように、アルミ撚線12における超音波付与領域と非付与領域との境界部近傍において、アルミ素線11に断線が生じるおそれがある。
【0014】
従って、本発明の目的は、異種材料間における超音波溶接においても、接続部に過剰な超音波印加エネルギーが付与されず、かつ素材自体に余分な機械的ダメージが生ぜず、アルミ撚線の強度を維持し、効率良く高信頼な接合状態が得られる接続端子、接続端子付きアルミケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するため、第1の特徴として、AlまたはAl合金による複数の素線からなるアルミ撚線を備えるケーブルの前記アルミ撚線に接続される板状基部を備えた接続端子において、前記板状基部は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を積層し、圧延して形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置されることを特徴とする接続端子を提供する。
【0016】
本発明は、上記目的を達成するため、第2の特徴として、AlまたはAl合金による複数の素線からなるアルミ撚線を備えるケーブルの前記アルミ撚線に接続される板状基部を備えた接続端子において、前記板状基部は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を電気めっきにより形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置されることを特徴とする接続端子を提供する。
【0017】
本発明は、上記目的を達成するため、第3の特徴として、AlまたはAl合金による複数のアルミ素線からなるアルミ撚線を絶縁体で被覆したアルミケーブルに接続端子が接続されている接続端子付きアルミケーブルおいて、前記接続端子は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を積層し、圧延して形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置される板状基部を備え、前記アルミ撚線が前記Al層を介して前記接続端子と接続されていることを特徴とする接続端子付きアルミケーブルを提供する。
【0018】
本発明は、上記目的を達成するため、第4の特徴として、AlまたはAl合金による複数のアルミ素線からなるアルミ撚線を絶縁体で被覆したアルミケーブルに接続端子が接続されている接続端子付きアルミケーブルおいて、前記接続端子は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を電気めっきにより形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置される板状基部を備え、前記アルミ撚線が前記Al層を介して前記接続端子と接続されていることを特徴とする接続端子付きアルミケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異種材料間における超音波溶接においても、接続部に過剰な超音波印加エネルギーが付与されることがなく、アルミ撚線全体の強度を維持することができ、かつ効率良く信頼性の高い接合状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る接続端子付きアルミケーブルを示す斜視図である。
【図2】図1の接続端子付きアルミケーブルの分解斜視図である。
【図3】アルミケーブルの断面形状を示し、(a)は19本撚線の断面図、(b)は38本撚線の断面図、(c)は64本撚線の断面図、(d)は137本撚線の断面図、(e)は184本撚線の断面図、(f)は287本撚線の断面図である。
【図4】アルミケーブルを接続端子に位置決めした状態を示し、(a)はその側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(b)のA−A線断面図である。
【図5】超音波溶接の工程を示し、(a)は超音波接続装置の主要部の配置を示す側面図、(b)は溶接後の溶接面の平面図、(c)は(b)のB−B線の断面図である。
【図6】本発明に係る超音波接続装置の概略構成図である。
【図7】図6のCの部分の拡大図である。
【図8】傾斜角度θを有しない場合の図6のCの部分の拡大図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る接続端子付きアルミケーブルの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る接続端子付きアルミケーブルの分解斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の超音波溶接の工程を示し、(a)は超音波接続装置の主要部の配置を示す側面図、(b)は溶接後の溶接面の平面図、(c)は(b)のD−D線の断面図である。
【図12】従来の接続端子付きアルミケーブルの分解斜視図である。
【図13】図12に示すアルミケーブルと接続端子を位置決めした状態を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は(b)のE−E線の断面図である。
【図14】従来の超音波溶接方法を示し、(a)は接続端子付きアルミケーブルおよび超音波接続装置の側面図、(b)は(a)の上面図、(c)は(b)のF−F線の断面図である。
【図15】従来の超音波溶接方法によるケーブルと端子との接続構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
(接続端子付きアルミケーブルの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る接続端子付きアルミケーブルを示す。また、図2は、図1の接続端子付きアルミケーブルの分解斜視図である。
【0022】
図1に示すように、接続端子付きアルミケーブル1は、アルミケーブル10と、このアルミケーブル10に取り付けられた接続端子20と、を備える。
【0023】
図2に示すように、アルミケーブル10は、アルミニウム(以下、「アルミ」という)またはアルミ合金による複数のアルミ素線11を撚り合わせたアルミ撚線(アルミ導体)12と、このアルミ撚線12の外周を被覆する絶縁層13とを備える。
【0024】
接続端子20は、アルミ撚線12に超音波溶接を施す場所を形成する一対の側壁21aを有するU字形断面の板状基部21と、板状基部21に隣接して形成され、ケーブル端部の絶縁層13を固定するU字形の固定片22と、板状基部21の先端部に形成されて接続対象の電気機器(例えば、バッテリー)等に接続されるドーナツ形の端子部23と、板状基部21の上面および内側面に形成されてアルミケーブル10のアルミ撚線12に接触するAl層(またはAl膜)24と、を備える。
【0025】
接続端子20は、Cu又は燐青銅等のCu合金を材料に用いて作られている。また、Al層24は、Al又はAl合金を用いている。Al合金として、例えば、Al−Fe合金、Al−Zr合金、Al−Fe−Zr合金等がある。このAl層24は、例えば、めっきにより形成される。
【0026】
ここで、Al層24と板状基部21のCu材の厚み(Cu層)の層厚比(TAl/TCu)は、0.01≦(TAl/TCu)≦1.0、好ましくは、0.1≦(TAl/TCu)≦1.0とする。層厚比(TAl/TCu)が1.0を超えると、導電性が悪化し、接続部において抵抗発熱による温度上昇が生じる。そこで、Al層24の厚みは、最大でも板状基部21の厚みと同じにする。
【0027】
また、板状基部21の凹部内の空間及びサイズは、アルミ撚線12の形状およびサイズに応じて適宜決定されるが、側壁21aの内面とアルミ撚線12との間に隙間が形成されないように、密着させることが好ましい。
【0028】
(アルミケーブル10の断面形状)
図3は、アルミケーブルの断面形状を示す。同図中、(a)は19本撚線の断面図、(b)は38本撚線の断面図、(c)は64本撚線の断面図、(d)は137本撚線の断面図、(e)は184本撚線の断面図、(f)は287本撚線の断面図である。
【0029】
例えば、図3の(a)に示す19本撚線(19本のアルミ素線を撚り合せて撚線にしたもの)のアルミケーブル10は、外径が8.0mmであり、そのアルミ素線11の径は1.0mm程度、アルミ撚線12の径は5.0mm程度である。
【0030】
なお、アルミケーブルと接続端子とを超音波接続する場合、アルミ撚線12がばらけると、接続不良の部分が生じる。従って、アルミ撚線12は撚りの状態を保ったまま接続端子に位置決めされるのが望ましい。この問題を解決できる可能性のあるものに、例えば、特許文献1に示される接続方法がある。この接続方法は、銅撚線の先端部を半円状の溝を有する電極と平面を有する電極の間に配置して所定の形状に固め、この固めた先端部を銅、銅合金、アルミニウム合金の丸や平角線の被接続線に重合し、この重合部を超音波溶接により接合している。
【0031】
(アルミケーブルと接続端子の接続)
図4は、アルミケーブルを接続端子に位置決めした状態を示す。同図中、(a)はその側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(b)のA−A線断面図である。また、図5は超音波溶接の工程を示し、同図中、(a)は超音波接続装置の主要部の配置を示す側面図、(b)は溶接後の溶接面の平面図、(c)は(b)のB−B線の断面図である。
【0032】
図4の(a),(b)に示すように、まず、接続端子20の固定片22にアルミケーブル10の端部の絶縁層13部分を配置するとともに、図4の(c)のように、板状基部21のAl層24上にアルミ撚線12部分を配置する。この状態で、図5の(a)に示すように、板状基部21の上下に超音波接続装置のホーンチップ42とアンビル41を位置決めする。
【0033】
次に、超音波接続装置のアンビル41の上に板状基部21を載置し、アルミ撚線12の上面に超音波接続装置のホーンチップ42の下面を押し当てて超音波振動を付与する。ホーンチップ42の押圧と超音波振動により、アルミ素線11が塑性変形して、図5の(b),(c)のように、アルミ撚線12が略平坦に押し潰され、アルミ素線11と板状基部21との界面を相互に摺り合わせて超音波溶接が行われる。溶接後、図5の(c)のように、ホーンチップ42が引き上げられる。
【0034】
このように、板状基部21の上にAl層24を形成し、その上にアルミ撚線12を配置して超音波溶接することにより、Cuからなる接続端子20とAlからなるアルミ素線11との異種材料間における超音波溶接であっても、超音波溶接の界面においては同種のAl同士になる。このため、過剰な超音波印加エネルギーを付与することなく、かつ短時間で信頼性の高い接合状態が得られる。その結果、異種材料間における超音波溶接においても、素材自体に余分な機械的ダメージを与えることがなく、アルミ撚線12の全体の強度を保ったまま、超音波溶接を完了することができる。
【0035】
(超音波接続装置の構成)
図6は、超音波接続装置の概略構成を示す。図6を参照して、超音波接続装置50により接続端子20とアルミケーブル10を接続する方法について説明する。
【0036】
図6に示すように、本実施の形態に係る超音波接続装置50は、超音波発振器30と、接続ケーブル31を介して超音波発振器30に接続される本体部40と、を備えて構成される。本体部40は、前記アンビル41と、前記ホーンチップ42と、ホーン支持部43と、ホーン支持部43に根元部が支持されるとともに先端部にホーンチップ42が取り付けられた超音波ホーン44と、ホーン支持部43およびアンビル41を固定する基台45と、を備える。
【0037】
図7は、図6のCの部分の拡大図を示す。ホーンチップ42は、先端面(超音波付与面)42aが被接続物(アルミ撚線12と板状基部21)の水平面に対して所定の角度(θ)だけ傾斜している。この先端面の傾斜角度θは、アルミ撚線12のサイズに応じて適宜決定され、アルミ撚線12のサイズが大きいほど大きくする。例えば、傾斜角度θは、30°以内、好ましくは10〜20°である。ここで言う先端面42aとは、ホーンチップ42の先端全面の傾きの平均をとった面である。
【0038】
このような構成の超音波接続装置50のアンビル41上に図5に示したように、被接続物を載置し、ホーンチップ42の先端面42aを被接続物に当接させることで、超音波発振器30により発振した超音波振動が、被接続物に付与される。
【0039】
図8は、傾斜角度θを有しないホーンチップ42を用いた場合の図6のCの部分の拡大図を示す。図8に示すように、ホーンチップ42の先端面がフラットな超音波接続装置を用いた場合、領域61(アルミ撚線12における超音波付与領域と非付与領域との境界部付近)においてアルミ撚線12が潰れて(又は、伸びきって)しまい、アルミ素線11に断線を生じる可能性がある。
【0040】
しかし、図7に示したように、ホーンチップ42の先端面42aを被接続物に対して傾斜角度θに傾斜させた状態で当接させ、超音波の付与を行うことにより、アルミ撚線12における超音波付与領域と非付与領域との境界部付近(図8の領域51付近)において、アルミ撚線12の潰れが抑制される。従って、超音波接続の際、アルミ撚線12のアルミ素線11に断線が生じるおそれはない。
【0041】
(接続端子の製造方法)
次に、接続端子20の製造方法について説明する。
(1)まず、長尺で、幅が60mm〜80mm程度のフープ材(Cu原板)を用意する。
(2)前記フープ材を送り出しリールからreel to reel方式で搬送しながら、後の製造工程におけるAlめっきが不要な箇所に対してマスキングテープをロールラミネートすることで熱圧着し、部分的にマスキングテープが貼着されたフープ材を巻取りリールにより巻き取る。このとき、使用するマスキングテープには、耐めっき性の材料のものを使用する。例えば、ドライフィルムレジストを使用する。
(3)部分的にマスキングテープが貼着されたフープ材を、送り出しリールからreel to reel方式で搬送しながら、電気Alめっき処理槽に通過させ、マスキングテープが貼着されていない部分にAlめっきを施す。このとき、Alめっきの厚さは、例えば、0.1mmとする。
(4)電気Alめっき処理槽から出てきたマスキングテープ付きフープ材からマスキングテープを剥離するため、マスキングテープのみを選択的にリールに別途巻取り、Alめっき付きフープ材を巻取りリールにより巻き取る。
(5)前記Alめっき付きフープ材をreel to reel方式により打ち抜き金型へ搬送し、所望の形状に打ち抜き、さらに折り曲げ加工を施し、個片化する。以上により、接続端子20が完成する。
【0042】
ここでは、Al層24の成膜工程に電気めっき法を用いたが、本発明は電気めっき法に限定されるものではなく、例えば、イオンプレーティング法、蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法、溶射法等により、Al膜を成膜することができる。
【0043】
また、電気Alめっき膜を板状基部21の上面および側壁21aの内面の計3面に形成する方法によれば、フープ材に対して幅方向の両側をマスキングテープで覆い、フープ材の中央部分をその長尺方向全体にわたって電気Alめっきを施すことができるので、後述する本発明の他の実施の形態に比べて、マスキング工程等が容易になり、製造工程を簡略化することができる。
【0044】
さらに、板状基部21は、Cu板(Cu材)とAl板を積層し、圧延した複合材により形成することもできる。
【0045】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(イ)接続端子20は、Cuによる板状基部21の表面にAlまたはAl合金によるAl層24を形成することにより、超音波接続部が、アルミニウム同士による同種材料の接続になるため、超音波接続時の超音波印加エネルギーを小さくすることができ、過剰な超音波印加エネルギーが付与されるのを防止することができる。従って、素材自体に機械的ダメージを与えることがなく、アルミ撚線全体の強度を保ったまま超音波溶接を完了することができるため、短時間で信頼性の高い接合状態が得られ、アルミ素線11の導体強度の低下を防ぐことができ、ひいては接続性を向上させることができる。
(ロ)板状基部21のAl層24とCu層との層厚比(TAl/TCu)を0.1〜1.0に調整することにより、接続端子20は、Cuのみによる従来の接続端子とほぼ同等の導電性を得ることができる。従って、抵抗発熱による温度上昇が接続部に生じることがなく、変形や高温強度不足による断線が生じるおそれはない。
(ハ)接続端子20の端子部23には、Al層24を形成されていないため、端子部23とバッテリーなどの端子とは、Cu同士の同種材料間での接触になる。従って、各端子の接続部において、異種金属の接続に起因する電位差腐食の発生を防止することができる。
(ニ)板状基部21は、側壁21aが形成されていることにより、この側壁21aが、超音波接続時にアルミ撚線12を拘束する。このため、アルミ撚線12を超音波接続する際に、アルミ素線11が、ばらけるのを防止することができる。
(ホ)接続端子20とアルミ撚線12との接続領域は、板状基部21及び側壁21aで規制された平面になり、接触面積を広くできるため、接続端子20とアルミ撚線12との接続性を向上させることができる。
(ヘ)板状基部21は、Cu板とAl板を積層し、圧延することにより複合材を形成すれば、CuとAlの間の界面がより強固な状態になるため、接続端子20とアルミ撚線12との接続性を、より一層向上させることができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る接続端子付きアルミケーブルの構成を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態において、アルミケーブル10の絶縁層13の外周が、筒状の編組線(編組シールド層)14で被覆されている。さらに、編組線14の外周は、最外層絶縁体(シース)15で被覆されている。この最外層絶縁体15の一部は皮剥ぎされ、端末部分から編組線14が露出している。さらに、露出する編組線14上には、グランド接続端子(コネクタ部材)16および圧着スリーブ17が挿入されている。
【0047】
グランド接続端子16は、長手方向に延在する図示しない筒状部分とフランジ部分とからなり、上記筒状部分に圧着スリーブ17が位置している。その後、圧着スリーブ17の部分から、編組線14の露出部、圧着スリーブ17、およびグランド接続端子16の筒状部分を一体的に圧縮成形し、図9に示すように、圧着スリーブ17を、例えば6角形に成形する。
【0048】
このように、圧着スリーブ17に圧縮成形を施す理由は、編組線14の露出部とグランド接続端子16の筒状部分との接触面積を確保し、電気的接触を増加させるためである。また、編組線14の露出部、圧着スリーブ17、およびグランド接続端子16の筒状部分を一体的に接合し、圧着スリーブ17の部分における露出シールドの機械的強度を確保するためでもある。
【0049】
アルミケーブル10と接続端子20との超音波溶接を終えた後、溶接箇所に相当する部分の全体を熱収縮チューブ18で封止する。熱収縮チューブ18は、予め板状基部21から編組線14の露出部に至る部分を被覆できる長さのものを用意し、溶接箇所に相当する部分に被せられる。その後、熱収縮チューブ18に対してホットブローを行うことにより、熱収縮チューブ18が収縮する。熱収縮チューブ18は、端子部23を除く接続端子20の外表面に密着し、図9に示すように、絶縁被覆を形成する。
【0050】
第2の実施の形態によれば、アルミケーブル10と接続端子20との超音波溶接部分を熱収縮チューブ18で覆うことにより、板状基部21およびAl層24との超音波溶接界面が外部に露出しないため、板状基部21とアルミ層24との隙間から水が侵入せず、異種金属間における電位差腐食の発生を防止することができる。
【0051】
[第3の実施の形態]
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る接続端子付きアルミケーブルの分解斜視図を示す。また、図11は、第3の実施の形態の超音波溶接の工程を示し、同図中、(a)は超音波接続装置の主要部の配置を示す側面図、(b)は溶接後の溶接面の平面図、(c)は(b)のD−D線の断面図である。
【0052】
本実施の形態は、第1の実施の形態において、Al層24を板状基部21の上面にのみ設け、側壁21aには設けない構成にしたものであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。本実施の形態における溶接方法は、図5、図6および図7で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0053】
第3の実施の形態によれば、溶接は、ホーンチップ42とアンビル41とにより上下方向からアルミ撚線12を挟み込んで超音波振動を付与して行うため、板状基部21の上面のみにAl層24を設けた構成であっても、アルミ撚線12と接続端子20との接合界面における接合強度は、十分に得ることができる。
【0054】
次に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0055】
Cu板(Cu材)の所定部(アルミ撚線12と接続する領域に相当)にAl板を積層し、これを圧延することで、厚さ1.0mmの複合材を作製した。この複合材は、Al層の厚みが0.1mm、Cu材(Cu層)の厚みが0.9mm、層厚比(TAl/TCu)は0.11であった。
【実施例2】
【0056】
Cu板(Cu材)の所定部とAl板を積層し、これを圧延することで、厚さ1.0mmの複合材を作製した。この複合材は、Al層の厚みが0.5mm、Cu材(Cu層)の厚みが0.5mm、層厚比(TAl/TCu)は1.0であった。
【実施例3】
【0057】
Cu板(Cu材)の所定部にAl層24を電気めっきすることで、厚さ1.0mmの複合材を作製した。この複合材は、Al層24の厚みが0.1mm、Cu材(Cu層)の厚みが0.9mm、層厚比(TAl/TCu)は0.11であった。
【実施例4】
【0058】
Cu板(Cu材)の所定部に対しAlを電気めっきすることで、厚さ1.0mmの複合材を作製した。この複合材は、Al層24の厚みが0.5mm、Cu材(Cu層)の厚みが0.5mm、層厚比(TAl/TCu)が1.0であった。
【0059】
(比較例1)
Cu板のみを圧延し、厚さ1.0mmの板材を作製した。
【0060】
(比較例2)
Cu板の全面にAl板を積層して圧延することにより、厚さ1.0mmの複合材を作製した。この複合材は、Al層の厚みが0.1mm、Cu材(Cu層)の厚みが0.9mm、層厚比(TAl/TCu)が0.11であった。
【0061】
実施例1,2、及び比較例1,2の各板材の諸元(板材の厚さ、Al層及びCu層の各厚さ(Al層/Cu層)、層厚比(TAl/TCu)を示したのが、表1である。
【0062】
【表1】

【0063】
次に、実施例1,2の複合材及び比較例1,2の各板材を、幅20mm、長さ30mmの短冊状の試験片に切り出した。これらの試験片の幅方向の両端を5mmの幅で内側に90°折り曲げ、図2に示した接続端子の模擬体を作製した。各模擬体とアルミ撚線12とを、図6に示した超音波接続装置50を用いて接続した。アルミケーブル10として、外径1.0mmのアルミ素線11を19本撚り合わせた図3の(a)に示す撚線導体を用いた。超音波接続装置50におけるホーンチップ42としては、図7のように、先端面が傾斜しているものを使用し、先端面サイズは、10mm×8mmとした。また、超音波接続の条件は、周波数:40kHz、加圧力:0.1〜0.4MPa、超音波印加エネルギー:1〜3000Jとした。
【0064】
次に、超音波接続後における接続部の接続性について評価を行った。その評価結果(超音波印加エネルギー、引張強度、ピール強度(引き剥がし強さ)、軽量性、及びそれらの総合評価)を示したのが、表2である。超音波印加エネルギーについては、接続に要するエネルギーが2600Jよりも大きいものを高、接続に要するエネルギーが2600Jよりも小さいものを低とした。引張強度については、実際の引張強さと、アルミ撚線12の母材強度(120MPa)を1.0とした時の相対値とで表した。ピール強度については、アルミ撚線12の母材強度(120MPa)を1.0とした時の相対値で表した。軽量性及び総合評価については、良好なものを○、不十分なものを△、不良を×とした。
【0065】
【表2】

【0066】
表2から明らかなように、比較例1の板材を用いた模擬体とアルミ撚線12との接続部は、引張強度が120MPa(相対値が1.0)、ピール強度が0.5であり、十分な引張強度及びピール強度を有している。しかし、この模擬体とアルミ撚線12との接続は異種材料間であることから、接続に要する超音波印加エネルギーが高くなった。また、この模擬体はCuのみで構成されていることから、軽量性が不十分であった。よって、総合評価は不良(×)であった。
【0067】
これに対して、実施例1,2の場合、模擬体とアルミ撚線12との接続部は、引張強度及びピール強度が共に比較例1と同じであり、十分な引張強度及びピール強度を有していた。また、これらの模擬体とアルミ撚線12との接続は同種材料間であることから、接続に要する超音波印加エネルギーは低かった。さらに、これらの模擬体はAlとCuの複合材で構成されていることから、Cuのみにより構成される比較例1の模擬体と比較して、軽量性が良好であった。よって、総合評価も良好(○)であった。
【0068】
なお、比較例2の板材を用いた模擬体とアルミ撚線12との接続部は、十分な引張強度及びピール強度を有し、接続に要する超音波印加エネルギーも低く、さらに軽量性が良好であった。しかし、端子部23もCu−Al複合材であるため、異種金属間における電位差腐食が生じた。よって、総合評価は不十分(△)であった。
【0069】
次に、上記実施例1〜4に示した各複合材を用いて作製した模擬体をそれぞれ2つ用意した。一方の各模擬体は、ホーンチップ42の先端面が傾斜している超音波接続装置50を用いて、アルミ撚線12との超音波接続を行った(実施例1〜4)。また、他方の各模擬体は、ホーンチップ42の先端面がフラットな従来の超音波接続装置を用いて、アルミ撚線との超音波接続を行った(比較例3〜6)。
【0070】
超音波接続後における各接続部の接続性について評価を行った。その評価結果を示したのが、表3である。ここでは、アルミ撚線12の潰れなどの外観評価、具体的にはAl素線断線の有無を評価した。
【0071】
【表3】

【0072】
表3に示すように、上記実施例1〜4の各複合材を用いた模擬体とアルミ撚線12との接続部においては、アルミ素線11の断線は観察されなかった(断線無し)。これに対して、比較例3〜6の各複合材を用いた模擬体とアルミ撚線12との接続部においては、アルミ素線11に断線が観察された(断線有り)。よって、ホーンチップ42の先端面を被接続物に対して傾斜させた状態で当接させ、超音波付与を行うと、アルミ撚線12において、アルミ素線11に断線を生じないことが確認された。
【0073】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、アルミケーブルのアルミ撚線にCu製の接続端子を接続する場合について説明したが、ケーブル以外の被接続物であってもよい。
【0074】
また、上記各実施の形態においては、ホーンチップ42の先端面が、全体にθの角度に傾斜した構造を示したが、アルミ撚線12における超音波付与領域(ホーンチップ42の押圧により潰れた部分)と非付与領域(アルミ撚線12がホーンチップ42と接することなく外形を保っている部分)との境界部近傍に相当する位置において、ホーンチップ42の角を面取り(R形状)すれば、ホーンチップ42の先端面は、ほぼ平坦であってもよい。
【0075】
この構造でも、アルミ撚線12における超音波付与領域と非付与領域との境界部付近(図8内の領域51の付近)において、アルミ撚線12の潰れが抑制される。その結果、超音波接続時、アルミ撚線12において、アルミ素線11に断線が生じるおそれはない。
【符号の説明】
【0076】
1 接続端子付きアルミケーブル
10 アルミケーブル
11 アルミ素線
12 アルミ撚線
13 絶縁層
14 編組線
15 最外層絶縁体
16 グランド接続端子
17 圧着スリーブ
18 熱収縮チューブ
20 接続端子
21 板状基部
21a 側壁
22 固定片
23 端子部
24 アルミ層
30 超音波発振器
31 接続ケーブル
40 本体部
41 アンビル
42 ホーンチップ
42a 先端面
43 ホーン支持部
44 超音波ホーン
45 基台
50 超音波接続装置
51,61 領域
100 接続端子
101 板状基部
101a 側壁
102 固定片
103 端子部
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlまたはAl合金による複数の素線からなるアルミ撚線を備えるケーブルの前記アルミ撚線に接続される板状基部を備えた接続端子において、
前記板状基部は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を積層し、圧延して形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置されることを特徴とする接続端子。
【請求項2】
AlまたはAl合金による複数の素線からなるアルミ撚線を備えるケーブルの前記アルミ撚線に接続される板状基部を備えた接続端子において、
前記板状基部は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を電気めっきにより形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置されることを特徴とする接続端子。
【請求項3】
前記Al層と前記Cu層との層厚比TAl/TCuが、0.11以上1.0以下である請求項1又は2に記載の接続端子。
【請求項4】
AlまたはAl合金による複数のアルミ素線からなるアルミ撚線を絶縁体で被覆したアルミケーブルに接続端子が接続されている接続端子付きアルミケーブルおいて、
前記接続端子は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を積層し、圧延して形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置される板状基部を備え、前記アルミ撚線が前記Al層を介して前記接続端子と接続されていることを特徴とする接続端子付きアルミケーブル。
【請求項5】
AlまたはAl合金による複数のアルミ素線からなるアルミ撚線を絶縁体で被覆したアルミケーブルに接続端子が接続されている接続端子付きアルミケーブルおいて、
前記接続端子は、CuまたはCu合金からなるCu材にAlまたはAl合金からなるAl材を電気めっきにより形成されたAl層とCu層とで構成される複合材からなり、前記Al層が前記アルミ撚線に接触するように配置される板状基部を備え、前記アルミ撚線が前記Al層を介して前記接続端子と接続されていることを特徴とする接続端子付きアルミケーブル。
【請求項6】
前記接続端子は、前記Al層と前記前記Cu層との層厚比TAl/TCuが、0.11以上1.0以下である請求項4又は5に記載の接続端子付きアルミケーブル。
【請求項7】
前記アルミ撚線が超音波溶接により前記接続端子に接続されている請求項4〜6のいずれかに記載の接続端子付きアルミケーブル。
【請求項8】
前記接続端子と前記アルミ導体との超音波溶接の界面が、熱収縮チューブによって覆われていることを特徴とする請求項7に記載の接続端子付きアルミケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−60778(P2011−60778A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266532(P2010−266532)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2005−189010(P2005−189010)の分割
【原出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】