説明

接続端子及び接続端子の製造方法

【課題】芯材を除去した段階で、追加の工程を必要とすることなく、接続治具に取り付けられる絶縁被膜を有する接続端子を提供する。
【解決手段】対象物の対象点に電気的に接続される接続治具に組み込まれる接続端子である。その接続端子は、導電性材料のめっき層からなる円筒形状管を備え、円筒形状管が、その両端から対向する向きに所定の長さにわたる先端部及び後端部と、先端部と後端部との間に形成された、長軸方向のらせん状の壁面を有するばね部とを備え、ばね部が、らせん状の壁面に沿って形成される絶縁層を有し、さらに、円筒形状管の先端部及び後端部にサイドエッチングが存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に予め設定される対象点と検査装置等とを電気的に接続する接続治具に用いられる絶縁被覆を有する接続端子やこの接続端子の製造方法に関する。なお、本発明の接続端子は、接続対象として検査装置に限定されず、所定二点間を電気的に接続するためにも用いられる。
【背景技術】
【0002】
接続治具は、接続端子(接触子、プローブ、探針、接触ピン等)を備えていて、それらを経由して、対象物に予め設定される対象点に、検査装置等から電流或いは電気信号を供給するとともに、その対象点から電気信号を検出することによって、対象点間の電気的特性を検出して、導通検査やリーク検査の動作試験等をする。
【0003】
その対象物としては、例えば、プリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板又は半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板や、半導体ウェハや半導体チップやCSP (chip size package)などの半導体装置(LSI(Large Scale Integration)など)が該当する。尚、この接続端子は、上記の対象物と装置とを電気的に接続することを目的とすることもでき、更に、インターポーザやコネクタのように電極端と電極端とを接続する接続治具としても採用することができる。
【0004】
本明細書では、上記の対象物を総称して「対象物」と称し、対象物に設定されるとともに接続端子が当接して導通状態となる部位を単に「対象点」と称する。尚、対象点と対象点とで挟まれる部位は「対象点間」として設定されることになる。
【0005】
対象物が、LSIである場合には、LSIに形成される電子回路が対象部となり、この電子回路の表面パッドが夫々対象点となる。この場合には、LSIに形成される電子回路が所望の電気的特性を有していることを保証するために、対象点間の電気的特性を測定して、この電子回路の良否を判断する。
【0006】
また、対象物が、電気・電子部品を搭載する基板である場合には、基板に形成された配線が対象部となり、この配線の両端が対象点となる。この場合には、対象部となる配線が、それらに電気信号を正確に伝達できることを保証するため、電気・電子部品を実装する前の配線基板に形成された配線上の所定の対象点間の抵抗値やリーク電流等の電気的特性を測定して、その配線の良否を判断する。
【0007】
具体的には、その配線の良否の判定は、各対象点に、電流供給用端子及び/又は電圧測定用の接続端子の先端を当接させて、その接続端子の電流供給用端子から対象点に測定用電流を供給するとともに対象点に当接させた接続端子の先端間の配線に生じた電圧を測定し、それらの供給電流と測定した電圧とから所定の対象点間における配線の抵抗値を算出することによって行う。
【0008】
例えば、基板検査装置を用いて上記のいずれかの基板の検査を行う場合には、治具移動手段によって基板接続治具の検査用の接続端子(接触子、プローブ、探針、接触ピン等)を被検査基板の対象点まで移動させてそれに当接させて対象物の所定の検査を行い、検査が終了すると、治具移動手段により治具を対象点から待機位置まで移動させる、という制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】2004−115838号公報
【特許文献2】2008−25833号公報
【特許文献3】2009−160722号公報 特許文献1は、線形素材の外周面に金めっき層を形成し、その上にさらにニッケルめっき層を形成した後に、線形素材を引っ張って線形素材の断面積を小さくする等によって、線形素材を除去することによって、ニッケル電鋳パイプを製造する方法を開示する。
【0010】
特許文献2は、SUS線の外周面に絶縁被覆を形成し、それにレーザによりらせん状の溝を形成してSUS線の外周面を露出させ、そこに絶縁被覆と同じ厚さのニッケル被膜を形成し、それから、絶縁被覆を除去するとともにSUS線を引きぬいてコイル状スプリング構造を一部に備えるニッケル電鋳パイプを製造する方法を開示する。
【0011】
特許文献3は、マイクロパイプを別に製造し、そのマイクロパイプの外周面にレジスト膜を形成し、そのレジスト膜に、例えば現像によりらせん状に感光部分を溶かしてらせんスペースパターンを形成するとともに、そのマイクロパイプを周回するスペースパターンを所定間隔で形成し、それをエッチング処理することによって、スペースパターンで分断された複数のマイクロコイルを同時に形成する方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、LSIの形成プロセスが向上し、LSIの微細化が推進され、LSI検査用パッドの狭ピッチ化や多数化が進んだことにより、検査対象の基板の複雑化や微細化がより進み、基板に設定される対象点がより狭く又は小さく形成されるようになったため、接続端子がより細く形成されている。そのため、多数の微細な接続端子をより効率よく製造することが求められている。接続端子には、隣接配置される接続端子同士が接触して短絡することを防止するために、接続端子表面に絶縁被膜を形成することが好ましいが、接続端子が微細になればなるほど、この絶縁被膜を形成することも極めて困難となる。
【0013】
特許文献1及び2には、線形素材やSUS線を除去した段階で、微細なニッケル電鋳パイプやコイル状スプリング構造を一部に備えるニッケル電鋳パイプを製造する方法が開示されている。しかし、その製造されたニッケル電鋳パイプから接続治具に取り付けられる接続端子を製造するためには、さらに、そのパイプを接続端子に適した長さに切断したり、接続治具との係止部を形成したりする等の追加の工程が必要である。
【0014】
また、特許文献3には、特許文献1等により製造されたマイクロパイプを製造した後に、追加の工程によってマイクロコイルを製造する方法が開示されている。そのマイクロコイルから接続治具に取り付けられる接続端子を製造するためには、さらに、特許文献1及び2に関連して上述したような追加の工程が必要である。
【0015】
そこで、本発明は、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、追加の工程を必要とすることなく製造される、絶縁被膜を有する接続治具に取り付けられる接続端子を提供することを目的とする。
【0016】
本発明は、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、接続治具に保持されるための係止部を備える接続端子を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、追加の工程を必要とすることなく接続治具に取り付けられる絶縁被膜を有する接続端子の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
さらに、本発明は、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、追加の工程を必要とすることなく接続治具に取り付けられる、絶縁被膜を有する接続端子の高い量産性を有する製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
さらに、本発明は、対象点との接触特性を高めるために、対象点との当接部を有する円筒形状部を備え、円筒形状部の内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との軸線方向に沿った位置が異なる、接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで、本発明に係る、接続治具に取り付けられる接続端子は、対象物に設けられる対象点に電気的に接続される接続治具に組み込まれる接続端子であって、導電性材料のめっき層からなる円筒形状管を備え、該円筒形状管が、その両端から対向する向きに所定の長さにわたる先端部及び後端部と、該先端部と該後端部との間に形成された、長軸方向のらせん状の壁面を有するばね部とを備え、該ばね部が、前記らせん状の壁面に沿って形成される絶縁層を有し、さらに、前記円筒形状管の前記先端部及び後端部にサイドエッチングが存在することを特徴とする。
【0021】
その接続端子において、前記ばね部は、サイドエッチングにより形成される側面を有する。
【0022】
その接続端子において、前記ばね部の前記らせん状の壁面の端面を形成する前記絶縁層の端面が、前記ばね部の前記らせん状の壁面の端面を形成する前記導電材性材料のめっき層の端面に対しオーバーハングしている。
【0023】
その接続端子において、前記ばね部の外径は30から100μmである。
【0024】
その接続端子において、前記円筒形状管がニッケルめっき層から構成されるようにしてもよい。
【0025】
その接続端子において、前記円筒形状管が、前記ニッケルめっき層の内側に金めっき層を備えるようにしてもよい。
【0026】
また、本発明に係る、対象物に設けられる対象点に電気的に接続される治具は、該治具に組み込まれる複数の接続端子であって、各接続端子が、導電性材料のめっき層からなる円筒形状管を備え、該円筒形状管が、その両端から対向する向きに所定の長さにわたる先端部及び後端部と、該先端部と該後端部との間に形成された、長軸方向のらせん状の壁面を有するばね部とを備え、該ばね部が、前記らせん状の壁面に沿って形成される絶縁層を有し、さらに、前記円筒形状管の前記先端部及び後端部にサイドエッチングが存在する、複数の接続端子と、該複数の接続端子の前記先端部が挿通される孔を有するヘッドプレートと、前記複数の接続端子の前記後端部に電気的に接続するための電極を備えるベースプレートと、前記ヘッドプレートと前記ベースプレートとを所定間隔離隔させて保持する支持プレートとを備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る、対象物の対象部に電気的に接続される接続治具に組み込まれる接続端子を製造する方法は、芯材の周囲に導電性材料のめっき層を形成して円筒形状管を作る工程と、該円筒形状管の外周面上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜の一部を除去して、等間隔に周回する溝を形成するとともに、隣り合う溝の間の絶縁膜にらせん状の溝を形成する工程と、該前記周回する溝の部分及び前記らせん状の溝に露出した前記円筒形状管をエッチング処理により除去する工程と、前記絶縁膜の前記周回する溝を形成する端面から所定の距離にわたって該絶縁膜を除去して前記円筒形状管を露出させる工程と、前記芯材を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0028】
その接続端子を製造する方法において、前記絶縁膜の一部を除去して、等間隔に周回する溝を形成するとともに、隣り合う溝の間の絶縁膜にらせん状の溝を形成する工程において、レーザを用いて前記絶縁膜の一部を除去するとともに、前記隣り合う溝の間の絶縁膜にらせん状の溝を形成するようにしてもよい。
【0029】
その接続端子を製造する方法において、前記芯材を除去する工程が終了すると前記接続端子が複数製造されることを特徴とする。
【0030】
その方法において、前記らせん状の溝を形成する前記絶縁膜の端面が、前記らせん状の溝を形成する前記導電材性材料のめっき層の端面に対しオーバーハングしている。
【0031】
その方法において、該接続端子の外径は30から100μmである。
【0032】
また、本発明に係る接続端子は、対象物に設けられる対象点と所定の接続点とを電気的に接続する接続端子であって、導電性材料のめっき層からなり、前記対象点との当接部を備える円筒形状部を備え、前記当接部が、前記円筒形状部の内側壁面の縁部、外側壁面の縁部及び該内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との間を結ぶ面を含み、前記当接部の内側壁面の縁部及び外側壁面の縁部の前記円筒形状部の軸線方向に沿った位置が異なることを特徴とする。
【0033】
その接続端子において、前記当接部の内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との間の面が、湾曲形状面を含むことを特徴とする。
【0034】
その接続端子において、前記湾曲形状面を含む前記当接部は、先端先細り形状に形成されていることを特徴とする。
【0035】
その接続端子において、前記湾曲形状面は、その底面が、該円筒形状部の軸線方向に沿って、前記当接部の内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との間に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0036】
その接続端子において、前記湾曲形状面は、その底面が、該円筒形状部の軸線方向に沿って、前記当接部の内側壁面の縁部及び外側壁面の縁部の位置よりも後端側に位置し、それにより、前記湾曲形状面が凹形状に形成されていることを特徴とする。
【0037】
その接続端子において、前記円筒形状部の導電性材料のめっき層には、少なくともニッケルめっき層が含まれてもよい。
【0038】
その接続端子において、前記円筒形状部の導電性材料のめっき層は、少なくとも外側の導電性材料のめっき層とその内側に形成された金めっき層とを含んでもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、追加の工程を必要とすることなく、絶縁被膜を有する接続治具に取り付けられる接続端子を提供することができる。
【0040】
本発明によると、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、接続治具に取り付けられるための係止部を備える接続端子を提供することができる。
【0041】
また、本発明によると、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、追加の工程を必要とすることなく接続治具に取り付けられる絶縁被膜を有する接続端子を製造することができる。
【0042】
さらに、本発明によると、線形素材やSUS線を取り除いた段階で、追加の工程を必要とすることなく接続治具に取り付けられる絶縁被膜を有する接続端子を高い量産性で製造することができる。
【0043】
また、本発明の接続端子は、円筒形状の側面が傾斜して形成されることになるので、対象物に接触した場合に、接触安定性に優れるとともに、接続端子の当接部にはんだごみが付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】図1Aは、本発明に係る接続端子を製造する段階におけるニッケルめっき層形成工程の一実施例を示す断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明に係る接続端子を製造する段階における絶縁膜形成工程の一実施例を示す断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明に係る接続端子を製造する段階における一部の絶縁膜除去工程の一実施例を示す断面図である。
【図1D】図1Dは、本発明に係る接続端子を製造する段階におけるニッケルめっき層エッチング工程の一実施例を示す断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明に係る接続端子を製造する段階における所定の部位の絶縁膜除去工程の一実施例を示す断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明に係る接続端子を製造する段階における金めっき層除去工程の一実施例を示す断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明に係る接続端子を製造する段階における芯材の引き伸ばし工程の一実施例を示す断面図である。
【図1H】図1Hは、本発明に係る接続端子を製造する段階における芯材の引き抜き工程の一実施例を示す断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明に係る接続端子の一実施形態を示す正面図であり、図2(B)は、本発明に係る接続端子の他の実施形態を示す正面図である。
【図3A】図3Aは、図2(A)に示す本発明に係る一実施形態の接続端子を一実施形態の接続治具に取り付けた状態を説明するための概略構成図である。
【図3B】図3Bは、図2(B)に示す本発明に係る一実施形態の接続端子を他の実施形態に係る接続治具に取り付けた状態を説明するための概略構成図である。
【図3C】図3Cは、図2(B)に示す本発明に係る一実施形態の接続端子を他の実施形態に係る接続治具に取り付けた状態を説明するための概略構成図である。
【図4A】図4Aは、本発明の一実施形態に係る接続端子の当接部を示す拡大正面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aに示す本発明の一実施形態に係る接続端子の当接部を示す拡大底面図である。
【図5A】図5Aは、本発明の一実施形態に係る接続端子の当接部の一部拡大断面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の他の実施形態に係る接続端子の当接部の一部拡大断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の他の実施形態に係る接続端子の当接部を示す拡大正面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示す接続端子の当接部を示す拡大底面図である。
【図7】図7は、図6Aに示す形状の当接部を備える接続端子の一実施形態を示す正面図である。
【図8】図8は、図2(A)に示す接続端子の先端部を図6Aの当接部と同様な形状にした一実施形態を説明するための正面図である。
【図9】図9は、図6Aに示す当接部を備える接続端子の他の実施形態を示す正面図である。
【図10】図10は、図9に示す接続端子を一実施形態の接続治具に取り付けた状態を説明するための概略構成図である。
【図11A】図11Aは、図4A及び図4Bに係る接続端子の当接部に対応する当接部の走査電子顕微鏡による拡大写真である。
【図11B】図11Bは、図6A及び図6Bに係る接続端子の当接部に対応する当接部の走査電子顕微鏡による拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1Aから図1Hまでは、本発明に係る一実施形態の接続端子を製造するための各工程の一実施例を示す断面図である。なお、全図において、各部材の厚さ、長さ、形状、部材同士の間隔、隙間等は、理解の容易のために、適宜、拡大・縮小・変形・簡略化等をしている。図の説明の際の上下・左右の表現は、その図に向かった状態でのその図面の面に沿った方向を表すものとする。
【0046】
図1Aは、芯材10の外周面上に金めっき層12を形成し、さらにその上にニッケルめっき層14を形成して製造した電鋳管(円筒形状管)の断面図を示す。芯材10としては例えば外径が5μmから300μmの金属線や樹脂線を用いることができる。金属線としては例えばSUS線を用いることができ、樹脂線としてはナイロン樹脂やポリエチレン樹脂等の合成樹脂線を用いることができる。また、金めっき層12の厚さは約0.1μmから1μmであり、ニッケルめっき層14の厚さは、約5μmから50μmである。電鋳管の長さは、搬送作業の容易性等の観点から50cm以下が望ましいが、それに限定されるものではなく、切断することなく連続的に製造してもよい。
【0047】
図1Bは、図1Aに示された電鋳管のニッケルめっき層14の外周面上に絶縁膜16を形成したものを示す。絶縁膜16は後述の所定の溝の形成の際にレジストとしても機能する。その絶縁膜の厚さは約2μmから50μmである。絶縁膜16として、例えば、フッ素コーティング又はシリコーン樹脂材を用いて形成してもよい。
【0048】
次に、図1Cに示すように、絶縁膜16を例えば3mmから30mmの間隔を置いて所定の幅だけ周回して除去して溝22a,22b,22cを形成し、また、それらの溝と溝との間の絶縁膜の一部をらせん状に除去してらせん状の溝24a,24bを形成する。それらの溝を形成した部分には、ニッケルめっき層14が露出する。
【0049】
これらの溝を形成する際には、絶縁膜16にレーザービームを照射して、絶縁膜16を除去する方法を採用することができる。この場合、芯材10を周方向に回転させながら、溝の位置にレーザービームを直接照射し、その照射により絶縁膜16を除去する。なお、この方法で使用するレーザービームの出力は、絶縁膜16のみを除去することができ、且つニッケルめっき層を損傷することがない出力に調整される。
【0050】
次に、図1Dに示すように、絶縁膜16をマスクとして用いて、溝22a,22b,22c,24a,24bに露出したニッケルめっき層14をエッチング除去して金めっき層12を露出させる。その際、ニッケルめっき層14と芯材10との間に金めっき層12が存在するため、エッチングの際にニッケルエッチング液が芯材まで到達することを防止することができる。そのエッチング処理により除去されたニッケルめっき層14の溝22a,22b,22c,24a,24bに露出した端面は、エッチング液による腐食作用を利用するため、サイドエッチング部が形成されているという特徴を有する(後述する)。
【0051】
また、らせん状の溝24a、24bは、その部分にある絶縁膜16をレーザによって除去した後に、その部分に露出したニッケルめっき層14をエッチングによって除去することによって形成したため、そのらせん状の溝間にある部分(後述するばね部)のニッケルめっき層14の端面にはサイドエッチング部が形成されており、この積層された絶縁膜16が、そのニッケルめっき層14に対してオーバーハングしている状態となる。
【0052】
図1Eでは、レーザービームを照射して、溝22a,22b,22cを形成している絶縁膜16を端面から所定の長さを除去して、ニッケルめっき層14を露出させる。その露出したニッケルめっき層14は、接続治具用の接続端子に形成される際に、検査対象部に接触する先端部又は検査装置に接続される接続治具の電極に接触する後端部として機能する部分になり、接続治具の構造に応じて、それらの必要な長さが定まる。そのため、それらを考慮して絶縁膜16を除去する長さを決定すればよい。
【0053】
次に、超音波洗浄を行って、図1Fに示すように、溝22a,22b,22c,24a,24bに露出した金めっき層12を除去する。
【0054】
次に、図1Gに示すように、芯材10を白抜き矢印で示すように両端を離れる方向に引っ張って断面積が小さくなるように変形する。一端を固定して他端のみを引っ張るようにしてもよい。芯材10が延伸してその断面積が小さくなると、芯材10の外周面を被覆していた金めっき層12がその外周面から剥離して電鋳管の内側に残り、芯材10と金めっき層12との間に空間18が形成される。
【0055】
次に、図1Hに示すように、芯材10を抜き取ると、溝22a,22b,22cによって隣り合う部分が離れて、接続端子26と接続端子28とが、別個のものとして形成されることになる。このように、図1Hに示すように、芯材10を抜き取った段階で、他の追加の工程を必要とすることなく接続端子を完成させることができる。なお、図1Aから図1Hは、簡略化して電鋳管の一部のみを示しているため、図1Hの工程では、2個の接続端子のみが製造されたようになっているが、長い電鋳管を使用することによって、多数の接続端子を一度に製造することができる。
【0056】
図1Hに示すように、接続端子26,28は、導電性材料の円筒形状管のニッケルめっき層14を備え、その両端側には、ニッケルめっき層が露出した先端部及び後端部が形成されており、また、先端部と後端部との間には、長軸方向のらせん状の壁面を有するばね部が形成されており、そのらせん状の壁面に沿って絶縁層16が形成されている。
【0057】
本発明の接続端子は、上記の如き寸法の条件下において製造することができるが、特に、外径が30から100μm、内径が20から90μm、絶縁被覆の厚みが2〜15μmに形成される場合において、接続治具に用いられる接続端子として好適に用いることができる。
【0058】
図2(A)は、上述の図1Aから図1Hの工程を用いて製造した円筒形状の接続端子の一実施形態に係る接続端子21を開示する。接続端子21は、先端部21aと円筒形状管のばね部21cと後端部21bとからなる。後端部21bは先端部21aよりも短い。また、図2(B)は、図2(A)の接続端子21と同様に、上述の図1Aから図1Hの工程によって製造した円筒形状の接続端子の他の実施形態に係る接続端子20を開示する。ただし、図2(A)の接続端子と図2(B)の接続端子との製造工程の順序は同じであるが、図2(A)の接続端子の製造段階の図1Eの工程において、隣り合う2つの溝22a,22bにおいて除去する絶縁層16の幅が異なるため、図2(A)の接続端子21は上下が非対称に形成されている。一方、図2(B)の接続端子20の両端部20aの長さは同じである。
【0059】
図2(A)の接続端子21は、例えば、外径が約50μm、内径が約35μm、全長が約5mmであり、また、端部21aの長さが約1.5mmであるが、それらに限定されるものではない。
【0060】
図2(A)の接続端子21の先端部21aは対象物の検査対象部に接触し、後端部21bは検査装置に接続される接続治具の電極に接続される。ばね部21cには、らせん形状の空隙が形成されたばね部分が形成されていて、弾性力を発揮する。そのため、ばね部21cは伸縮することができ、その伸縮する変位の大きさに比例してばね荷重が定まる。図2(A)及び図2(B)に示すらせん形状のばね部分21c,20cは例示であり、それに限定されることなく、所定のばね荷重を発揮させる等のために、らせん部分を形成するばね部分の幅、ピッチ、厚み、巻数を変えることができる。
【0061】
図2(B)の接続端子20は、中央のばね部20cとそれの両側に位置する2つの同じ長さの端部20aとを備える。すなわち、この接続端子20は上下が対称である。そのため、その接続端子20の端部20aの一方を対象物の検査対象部に接触する先端部として用いると、他方は検査装置に接続される接続治具の電極に接続される後端部となる。
【0062】
図2(A)の接続端子21の先端部21a及び後端部21bの長さと、図2(B)の接続端子20の2つの端部20aの長さとは、図1Eの工程において、絶縁膜16を端面から除去してニッケルめっきを露出させたその長さによって定まる。
【0063】
図2(B)の接続端子20のように、同じ長さの2つの端部20aを有する接続端子を用いると、2つの端部が同一形状で、機能が特定されず、先端部又は後端部のどちらにも利用可能なため、接続治具に組み込む際に上下の認定が不要になり、組立が容易になる。
【0064】
図3Aは、一実施例に係る接続治具32に取り付けられた接続端子21の状態を説明するために、接続治具の一部のみを示す一部断面図である。この実施形態では、複数の接続端子21を保持するために、ヘッドプレート38と支持プレート36とベースプレート35とを備える。それらのプレートは、棒状又は枠状の図示せぬ支持部によって一定の距離離隔して保持されている。このため、この実施形態では、ヘッドプレート38と支持プレート36の間に空間が形成されることになる。
【0065】
ヘッドプレート38には貫通孔38hが形成されていて、各接続端子21の先端部21aが貫通され、この先端部21aを検査点へ案内する。貫通孔38hの内径は、先端部21aの外径より大きく、絶縁膜16の外径よりも小さい。そのため、絶縁膜16の部分がヘッドプレート38に係止されるため、接続端子21が貫通孔38hから抜け出ることはない。複数の貫通孔38hは、対象点の形成されている位置に対応するように高密度になるように接近して形成されるが、隣り合う接続端子21が接触しない程度の距離を置く必要がある。支持プレート36には、貫通孔36hが形成されていて、各接続端子21の後端部21bが貫通挿入され、この後端部21bを電極40へ案内する。この貫通孔36hの内径は、接続端子21の絶縁膜16の外径よりも僅かに大きく形成されている。なお、この支持プレート36の貫通孔36hは、その内部にばね部20cを収容しない程度の長さを有していることが好ましい。これは、ばね部20cの収縮運動時に、貫通孔36hを形成する支持プレート36に接触して、接続端子21が破損しないようにするためである。支持プレート36は、ベースプレート35と当接するように配置される。
【0066】
ここで、本発明に係る接続端子では絶縁膜が外周に形成されているため、かなりの高密度で接続端子を取り付けるように複数の貫通孔を接近させて形成することができる。
【0067】
また、図3Aに示すように、ベースプレート35には、ヘッドプレート38の貫通孔38hに対向する位置に電極40が固定されている。ベースプレート35がないとすると、接続端子21は、自然長において、後端部21bが、ベースプレート35の固定される位置よりも少し突出する程度の長さに設定されているため、図3Aに示す状態では、後端部21bが電極40に衝突し、ばね部21cが、少し縮んで電極を押す付勢力を発揮している。そのため、電極40と接続端子21とが確実に接触する状態を保持している。また、接続端子21は、絶縁膜16の下端部が貫通孔38hの周囲のヘッドプレート38に係止されているため、先端部21aの突出量が変動することがなく、対象点に対する押圧力を一定に保つことができる。
【0068】
図3Bは、一実施例に係る接続治具30に取り付けられた接続端子20の状態を説明するために、接続治具の一部のみを示す一部断面図である。接続治具30は、支持プレート36及びヘッドプレート38を備える。それらは樹脂材料やセラミックス等の絶縁材料からなる。支持プレート36は、ヘッドプレート38をベースプレート35から所定の距離離隔させて保持する。
【0069】
ヘッドプレート38には貫通孔38hが形成されていて、接続端子20の先端部20aが挿通されている。その際、貫通孔38hの内径は、先端部20aの外周を覆うニッケルめっき層14(図1H参照)の外径より大きいが、絶縁膜16の外径よりも小さい。
【0070】
また、支持プレート36には貫通孔36hが形成されていて、その貫通孔36hは、内径が、絶縁膜16の外径よりも僅かに大きく形成され、接続端子20を貫通保持する。
【0071】
貫通孔38hの内径が接続端子20の絶縁膜16の外径よりも小さい結果、絶縁膜16の部分がヘッドプレート38に係止されるため、接続端子20が貫通孔38hから抜け出ることがない。
【0072】
また、図3Bに示すように、電極40を保持するベースプレート35が、支持プレート36の貫通孔36hの開口部に対向するように固定されている。ベースプレート35がないとすると、接続端子20は、自然長において、後端部20aが、支持プレート36の貫通孔36hの上方の開口部分から少し突出する程度の長さに設定されているため、図3Bに示す状態では、後端部20aが電極40に衝突し、ばね部20cが、少し縮んで電極を押す付勢力を発揮している。そのため、電極40と接続端子20とが確実に接触する状態を保持している。また、接続端子20は、絶縁膜16の下端部が貫通孔38hの周囲のヘッドプレート38に係止されているため、先端部20aの突出量が変動することがなく、検査対象に対する押圧力を一定に保つことができる。
【0073】
図3Cは、他の実施例に係る接続治具31に接続端子20が取り付けられた状態を説明するために、その接続治具の一部のみを示す一部断面図である。接続治具31は、接続治具30とは、接続治具30の支持プレート36に相当する部分が、2つの支持プレート36a,36bからなる点が異なる。支持プレート36bでは、貫通孔36hにテーパ形状の傾斜面34iが形成されていて、ベースプレート35の電極40に向かう開口部分の内径が、接続端子20の絶縁膜16の外径よりも小さい。
【0074】
接続端子20を接続治具31に組み込む際には、ヘッドプレート38に支持プレート36aを取り付けたものに、接続端子20の先端部20aを上方から支持プレート36aの貫通孔36hを経由してヘッドプレート38の貫通孔38hに挿入する。挿入された先端部20aは、支持プレート36aに沿って貫通孔38hに入り込むが、ばね部20cの絶縁膜16の外径は貫通孔38hの内径よりも大きいため、その絶縁膜16の下端部は、貫通孔38hの周囲のヘッドプレート38に係止され、それにより、接続端子20がヘッドプレート38に保持される。
【0075】
次に、接続端子20をヘッドプレート38に保持させた後に、支持プレート36b及びベースプレート35を接続治具31に取り付けるために、広い開口部分を下方にして支持プレート36b及びベースプレート35を支持プレート36a上端部上に載せる。その際、後端部20aを支持プレート36bの貫通孔36hの広い開口部分に位置決めして挿入する。支持プレート36bの貫通孔36hは、傾斜面34iに沿って徐々に狭くなるため、後端部20aはその傾斜面34iに案内されて上方の狭い開口部分まで導かれる。そのように、貫通孔36hが、広い開口部分から狭い開口部分につながる傾斜面34iを有するように形成されているため、接続端子20の後端部20aの端面が貫通孔36hを形成する支持プレート36bに引っかかったりすることがなく、その支持プレート36bの貫通孔36hへの接続端子20の後端部20aの挿入が容易であり、さらに、傾斜面34iに沿って、確実に、接続端子20の後端部20aを貫通孔36hの狭い開口部分まで導くことができる。
【0076】
接続端子20の後端部20aは、狭い開口部分まで到達すると、検査装置に電気的に接続された電極40と接触する。なお、電極40がないとすると、接続端子20は、自然長において、後端部20aが、支持プレート36bの貫通孔36hの狭い開口部分から少し突出する程度の長さに設定されているため、図3Cにおいては、後端部20aが、電極40に衝突し、ばね部20cが少し縮んで電極を押す付勢力を発揮している。そのため、図3Bに示す接続治具30と同様に、この接続治具31においても電極40と接続端子20との確実な接触状態を保持することができる。また、接続端子20は、絶縁膜16の下端部が貫通孔38hの周囲のヘッドプレート38に係止されているため、先端部20aの突出量が変動することがなく、検査対象に対する押圧力を一定に保つことができる。
【0077】
例えば、基板等の検査時には、接続端子20の先端部20aの先端面を対象点に当接させる。その当接した際の押圧力による抗力によって先端部20aが後退するため、それに応じてばね部20cのばね部分が収縮し、そのばね部分が元に戻ろうという力によって、先端部20aの先端面と検査対象との接触が確実になる。その状態で、検査対象の抵抗値を検出したり導通の有無を判断したりすることができる。尚、このようにばね部20cを有していることにより、接続端子20の長さや対象物の高さにばらつきがある場合でも、対象点に圧接される際にはばね部20cが適宜に収縮して、接続端子20の端部20aが対象点に圧接されることができ、対象点が損傷したりすることを防止することができる。
【0078】
図4Aから図9は、接続端子の先端部の当接部の形状に特徴のあるいくつかの実施形態を示す。これらの接続端子も、検査用プローブのみならず、対象物と所定の装置とを電気的に接続する接続治具に、更に、インターポーザやコネクタのように電極端と電極端とを接続する接続治具にも使用することができる。
【0079】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る接続端子46の当接部41aを示す拡大正面図である。当接部41aは、対象物の対象点に少なくともその一部が接触して電気的接続を行う部分である。図4Bは、図4Aの接続端子46の底面図である。接続端子46は、対象物に設けられた対象点と所定の接続点とを電気的に接続するもので、導電性材料のめっき層からなる円筒形状部41を備える。
【0080】
図4Bに示すように、円筒形状部41は、内側壁面と外側壁面とから形成されていて、中央に空間を有する。円筒形状部41の先端部(図4Aにおいて下側の部分)には、外側壁面の縁部42と内側壁面の縁部44とそれらの間を結ぶ面43とを含む当接部41aが形成されている。
【0081】
当接部41aの面43は、例えば、エッチングにより形成することができる。その方法を説明する。例えば、図1Bに示すように、電鋳管のニッケルめっき層14の外周面上に絶縁膜16を形成して円筒形状体を作る。接続端子の長さに応じて、絶縁膜16をマスクとして用いて、レーザービームによって、円筒形状体から、接触子としての必要性に応じて所定の長さの絶縁膜16を除去し、エッチング処理すると、図4Aに示す当接部が露出する。
【0082】
その等方的なエッチングにより、ニッケルめっき層14の端部にサイドエッチング部が形成される。その際、円筒形状体の各端部において、エッチング液が、絶縁膜16から近いニッケルめっき層14の円筒形状体の外側壁面に回り込んでその外側壁面を侵食するため、外側壁面は、内側壁面よりも侵食される。なお、絶縁膜16は必ずしも必要ではないので、絶縁膜を形成しない場合には、レジスト膜を使用してエッチングを行う。
【0083】
円筒形状体の端部にサイドエッチング部が形成された結果、図4Aに現れているように、面43の形状は、平坦ではなく、湾曲したものとなる(湾曲形状面43)。その湾曲の広さや大きさや曲率は、エッチング液の薬液の配合率、濃度、温度等を変更したり、又はエッチングの際の印加電圧の大きさ等の諸条件を変更することによって変えることができる。
【0084】
図5Aは、接続端子56−1の当接部51−1aの一部の断面を示す。当接部51−1aは、外側壁面の縁部52−1と内側壁面の縁部54−1とそれらの間の面53−1とを含む。当接部51−1aは、図4A及び図4Bに示す当接部41aと同様に、湾曲する面53−1を有する。その図に示すように、接続端子56−1の軸線方向(図5Aにおいて、上下方向)に沿って、外側壁面の縁部52−1と内側壁面の縁部54−1とが異なる位置にある。つまり、図5Aにおいて、外側壁面の縁部52−1の位置が、内側壁面の縁部54−1の位置よりも、軸線方向に沿って、上方(接続端子の後端部側)にある。そのため、面53−1は、外側壁面の縁部52−1と内側壁面の縁部54−1とを斜め方向に結ぶように延在し、それにより、内側壁面の縁部54−1は鋭利な先端を形成している。これにより、その鋭利な先端が対象物の対象点に容易に食い込むことができるため、接続端子と対象物との接触特性(接触安定性)が向上する。また、その鋭利な先端部への付着物は、次の当接の際に剥がれ易く、その自浄作用により、接続端子と対象物との接触特性が向上する。
【0085】
また、図5Bは、他の実施形態に係る接続端子56−2の当接部51−2aの一部の断面を示す。当接部51−2aは、外側壁面の縁部52−2と内側壁面の縁部54−2とそれらの間の面53−2とを含む。図5Bに示すように、図5Aの当接部51−1aと同様に、当接部51−2aの内側壁面の縁部54−2は鋭利な先端を有するが、図5Aの当接部51−1aの面53−1と比べて、図5Bの当接部51−2aの面53−2の湾曲面の曲率が小さく、外側壁面の縁部52−2よりも図面の上方(接続端子56−2の後端側)に面53−2の頂点(又は底面)が位置し、凹形状に形成なっている。
【0086】
図11Aは、円筒形状体のニッケルめっき層の端部に、サイドエッチングにより、当接部を形成した一例を説明するための走査電子顕微鏡による拡大写真である。その写真に示す接続端子の当接部は、外径が約50μm、内径が約40μm、外側壁面の縁部と内側壁面の縁部との軸線方向の距離が約4μmであり、その写真から明らかなように、外側壁面の縁部と内側壁面の縁部との間の面は湾曲している。
【0087】
図5Aと図5Bとにそれぞれ示す内側壁面の縁部54−1,54−2の近く、つまり、先端部に近い面53−1,53−2の傾斜の大きさの相違の概略は、図5Aにおいては、内側壁面から面54−1の接線までの角度は、接線の接点の位置が内側壁面の縁部54−1から外側壁面の縁部52−1まで移動する間に、約20度から80度まで変化するのに対し、図5Bにおいては、内側壁面から面53−2の接線までの角度は、接線の位置が内側壁面の縁部54−2から外側壁面の縁部52−2まで移動する間に、約15度から120度まで変化する。すなわち、図5Aの当接部51−1aの先端部の方が、図5Bの当接部51−2aの先端部よりも鋭利である。
【0088】
図6Aは、図4Aの接続端子46の当接部41aと異なる形状の当接部61aを備える接続端子66の拡大正面図である。図6Bは、図6Aの接続端子66の底面図である。接続端子66は、図4Aの接続端子46と同様に、対象物に設けられた対象点と所定の接続点とを電気的に接続するもので、導電性材料のめっき層からなる円筒形状部61を備える。
【0089】
図6Bに示すように、円筒形状部61は、内側壁面と外側壁面とから形成されていて、中央に空間を有する。円筒形状部61の先端部(図6Aにおいて下側の部分)には、外側壁面の縁部62と内側壁面の縁部64とそれらの間を結ぶ面63とを含む当接部61aが形成されている。
【0090】
ただし、図4Aの面43とは異なり、図6Aに示すように、当接部61aの面63の縁部62,64には、円筒形状部61の円周面に沿って、等間隔に、略U字形状の切欠き部が形成されている。このような切欠き部は、当接部41aの面43同様に、エッチング処理により形成することができる。
【0091】
例えば、図1Bに示すように、電鋳管のニッケルめっき層14の外周面上に絶縁膜16を形成して円筒形状体を作る。接続端子の長さに応じて、レーザービームにより、円筒形状体の各端部の円周に沿って、絶縁膜16を略U字形状に除去してニッケルめっき層14を露出させる。その状態で、残りの絶縁膜16をマスクとして用いて、円筒形状体をエッチング処理する。その際、円筒形状体の各端部において、エッチング液が、絶縁膜16の縁からニッケルめっき層14の円筒形状体の外側壁面に回り込んでその外側壁面を侵食するため、外側壁面は、内側壁面よりも腐食される。その結果、絶縁膜16を略U字形状に除去した位置にあるニッケルめっき層14も略U字形状に侵食される。
【0092】
その結果、図6Aに示すように、当接部61aにおいては、外側壁面の縁部62の最も突出した位置62tと外側壁面の縁部62の最も引っ込んだ位置62bとは、接続端子66の軸線方向に沿って大きく離れており、また、内側壁面の縁部64の最も突出した位置64tと内側壁面の縁部64の最も引っ込んだ位置64bも、接続端子66の軸線方向に沿って大きく離れている。
【0093】
図11Bは、円筒形状体のニッケルめっき層の端部に、サイドエッチングにより、図11Aの形状とは異なる図6Aに示す形状(以下、「クラウン形状」という)の当接部を形成した一例を説明するための走査電子顕微鏡による拡大写真である。その写真に示す接続端子の当接部は、外径が約50μm、内径が約40μm、外側壁面の縁部と内側壁面の縁部との軸線方向の距離が約5μmである。また、外側壁面の縁部の最も突出した位置と外側壁面の縁部の最も低い位置との距離は約18μmであり、内側壁面の縁部の最も突出した位置と内側壁面の縁部の最も低い位置との距離は約15μmである。その写真から明らかなように、外側壁面の縁部と内側壁面の縁部との間の面は湾曲している。
【0094】
図7から図10は、図6Aに示すクラウン形状の当接部を備える接続端子の異なる実施形態を示す。
【0095】
図7は、外側円筒形状部78の内に内側円筒形状部71が組み込まれた接続端子76の側面図である。外側円筒形状部78は先端部78aと後端部78bとの間にばね部78cを備える。内側円筒形状部71は、先端部に、クラウン形状の当接部71aを備える。また、内側円筒形状部71は、外側円筒形状部78に、かしめ78dによって固定されている。当接部71aの先端は鋭利であり、対象物に当接した際に、外側壁面の縁部の最も突出した位置74tからU字形状にわたる部分が、その対象物に食い込むように機能する。このため、対象物に対する先端部の接触特性が向上する。
【0096】
図8は、図2(A)に示す接続端子21に、クラウン形状の当接部81aを形成した接続端子86を示す。つまり、接続端子86は、円筒形状体を図1Aから図1Hの工程の中で、クラウン形状の当接部81aをその円筒形状体の先端に形成して製造する。
【0097】
接続端子86は、金めっき層12の上にニッケルめっき層14が形成された円筒形状体に、先端の当接部81aとばね部81cと後端部81bとが形成されている。また、その円筒形状体の外周面上には絶縁膜16が形成されている。
【0098】
当接部81aの先端は鋭利で、対象物に当接した際に、外側壁面の縁部の最も突出した位置84tからU字形状にわたる部分が、その対象物に食い込むように機能する。このため、対象物に対する先端部の接触特性が向上する。
【0099】
図9は、他の実施形態に係る接続端子96を示す。接続端子96は、図8の接続端子86から外側の絶縁膜16が除去されたものが円筒形状体になっている。つまり、円筒形状体は、金めっき層12の上にニッケルめっき層14が形成されたもので、先端の当接部91aとばね部91cと後端部91bとからなる。
【0100】
また、当接部91a及び後端部91bの外周には、それぞれ、絶縁体の環状部95a及び95bが固定されている。絶縁体の環状部95a,95bとして、例えば、樹脂を円環状に成型したものを用いることができる。それらの機能は、図10に基づいて説明する。
【0101】
先端の当接部91aには、クラウン形状が形成されている。その先端は鋭利で、対象物に当接した際に、外側壁面の縁部の最も突出した位置94tからU字形状にわたる部分が、その対象物に食い込むように機能する。このため、対象物に対する先端部の接触特性が向上する。
【0102】
図10は、図3Aに示す接続治具32と同様な接続治具132に、図9に示す接続端子96を複数個取り付けた状態を説明するための一部断面図である。その図に示すように、ヘッドプレート38の貫通孔38hには、各接続端子96のクラウン形状の当接部91aが挿通されていて、その外側壁面の縁部の最も突出した位置94tが接触対象物へ案内される。
【0103】
当接部91aの絶縁体の環状部95aは、ヘッドプレート38の上側に位置していて、接続端子96の係止部として機能する。つまり、絶縁体の環状部95aがヘッドプレート38の上側の面に当接する場合には、絶縁体の環状部95aは、接続端子96と支持プレート36及びヘッドプレート38との間での絶縁の確保するとともに、接続端子同士の間を所定距離離隔させることによってそれらの間の接触を防止する。
【0104】
また、絶縁体の環状部95aは、接続端子96が貫通孔38hから抜け落ちるのを防止するとともに、ばね部91cに予圧を与えるようにも機能する。
【0105】
また、後端部91bの環状部95bは、支持プレート36の貫通孔36hの内径よりもやや小さい外径に形成されており、それにより、接続端子96の後端部91bが貫通孔36h内で大きく動いてしまうことを防止して接続端子96の中心軸線を適切な位置に保持するため、後端部91bの電極側の端部が電極40と容易かつ確実に接触することができる。また、環状部95a,95bにより、接続端子96を接続治具132に取り付ける際に、貫通孔36h内で位置決めが容易にでき、ヘッドプレート38に係止されて貫通孔38hから接続端子96が抜け落ちるのを防止できるため、接続治具132の組み立てを容易に行うことができる。
【0106】
本発明の製造方法で記載される製造方法を用いて製造した接触端子は、その端面(側面)が内側から外側に湾曲に傾斜する。
【0107】
上記の図1から図3Cの実施例においては、絶縁膜16を形成し、それを必要に応じて、レジスト膜として使用した。上記の図4Aから図11Bの実施例においては、絶縁膜は必ずしも必要ではないので、エッチングの際には、レジスト膜を使用してもよい。
【0108】
また、上記の図4Aから図11Bの実施例において、円筒形状部41等の当接部41a等は、単一のめっき層からなるように描いているが、その層の内側、つまり、円筒形状部41等の中心軸線側に、面43等の形成や対象物の対象点との接触安定性の観点から、例えば、金めっき層を形成してもよい。ただし、その場合、金めっき層は当接部の先端部の内側壁面の縁部周辺では剥離してしまって存在しないことがある。
【0109】
そのため、円筒形状部41等の当接部41a等が、ニッケルめっき層とその内側の金めっき層とから構成されているように、複数のめっき層によって形成されている場合には、外側壁面の縁部42等は、当接部において、最も外側に形成されているめっき層の外側壁面の縁部を意味し、内側壁面の縁部44等は、内側のめっき層の内側壁面の縁部を意味するが、当接部の先端部において、一部のめっき層が剥がれていて存在しない場合には、存在する内側のめっき層の内側壁面の縁部を意味する。
【0110】
以上、本発明に係る接続治具用の接続端子のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に拘束されるものではなく、当業者が容易になしえる追加、削除、改変等は、本発明に含まれるものであり、また、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められることを承知されたい。
【符号の説明】
【0111】
10・・・芯材
12・・・金めっき層
14・・・ニッケルめっき層
16・・・絶縁膜
18・・・空間
20,21・・・接続端子
20a,21a,21b・・・端部
20c,21c・・・ばね部
22a,22b,22c,24a,24b・・・溝
30,32,132・・・接続治具
36,36a,36b・・・支持プレート
38・・・ヘッドプレート
36h,38h・・・貫通孔
41a,51−1a,51−2a,61,71,81a,91a・・・当接部
42,52−1,52−2,62・・・外側壁面の縁部
44,54−1,54−2,64・・・内側壁面の縁部
43,53−1,53−2,63・・・面
46,56−1,56−2,66,76,86,96・・・接続端子
95a,95b・・・環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に設けられる対象点に電気的に接続される接続治具に組み込まれる接続端子であって、
導電性材料のめっき層からなる円筒形状管を備え、
該円筒形状管が、その両端から対向する向きに所定の長さにわたる先端部及び後端部と、該先端部と該後端部との間に形成された、長軸方向のらせん状の壁面を有するばね部とを備え、
該ばね部が、前記らせん状の壁面に沿って形成される絶縁層を有し、さらに、前記円筒形状管の前記先端部及び後端部にサイドエッチングが存在する、接続端子。
【請求項2】
請求項1の接続端子において、前記ばね部の前記導電性材料のめっき層は、サイドエッチングにより形成される側面を有する、接続端子。
【請求項3】
請求項1又は2の接続端子において、前記ばね部の前記らせん状の壁面の端面を形成する前記絶縁層の端面が、前記ばね部の前記らせん状の壁面の端面を形成する前記導電材性材料のめっき層の端面に対しオーバーハングしている、接続端子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの接続端子において、前記ばね部の外径は30から100μmである、接続端子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの接続端子において、前記円筒形状管がニッケルめっき層から構成されている、接続端子。
【請求項6】
請求項5の接続端子において、前記円筒形状管が、前記ニッケルめっき層の内側に金めっき層を備える、接続端子。
【請求項7】
対象物に設けられる対象点に電気的に接続される接続治具であって、
該治具に組み込まれる複数の接続端子であって、各接続端子が、
導電性材料のめっき層からなる円筒形状管を備え、
該円筒形状管が、その両端から対向する向きに所定の長さにわたる先端部及び後端部と、該先端部と該後端部との間に形成された、長軸方向のらせん状の壁面を有するばね部とを備え、
該ばね部が、前記らせん状の壁面に沿って形成される絶縁層を有し、さらに、前記円筒形状管の前記先端部及び後端部にサイドエッチングが存在する、複数の接続端子と、
該複数の接続端子の前記先端部が挿通される孔を有するヘッドプレートと、
前記複数の接続端子の前記後端部に電気的に接続するための電極を備えるベースプレートと、
前記ヘッドプレートと前記ベースプレートとを所定間隔離隔させて保持する支持部とを備える、接続治具。
【請求項8】
対象物の対象部に電気的に接続される接続治具に組み込まれる接続端子を製造する方法であって、
芯材の周囲に導電性材料のめっき層を形成して円筒形状管を作る工程と、
該円筒形状管の外周面上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の一部を除去して、等間隔に周回する溝を形成するとともに、隣り合う溝の間の絶縁膜にらせん状の溝を形成する工程と、
該前記周回する溝の部分及び前記らせん状の溝に露出した前記円筒形状管をエッチング処理により除去する工程と、
前記絶縁膜の前記周回する溝を形成する端面から所定の距離にわたって該絶縁膜を除去
して前記円筒形状管を露出させる工程と、
前記芯材を除去する工程とを含む、接続端子を製造する方法。
【請求項9】
請求項8の接続端子を製造する方法において、前記絶縁膜の一部を除去して、等間隔に周回する溝を形成するとともに、隣り合う溝の間の絶縁膜にらせん状の溝を形成する工程において、レーザを用いて前記絶縁膜の一部を除去するとともに、前記隣り合う溝の間の絶縁膜にらせん状の溝を形成する、接続端子を製造する方法。
【請求項10】
請求項8又は9の接続端子を製造する方法において、前記芯材を除去する工程が終了すると前記接続端子が複数製造される、接続端子を製造する方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかの接続端子を製造する方法において、前記らせん状の溝を形成する前記絶縁膜の端面が、前記らせん状の溝を形成する前記導電材性材料のめっき層の端面に対しオーバーハングしている、接続端子を製造する方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれかの接続端子を製造する方法において、該接続端子の外径は30から100μmである、接続端子を製造する方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれかの接続端子を製造する方法において、前記絶縁膜の前記周回する溝を形成する端面から所定の距離にわたって該絶縁膜を除去して前記円筒形状管を露出させる工程において、該絶縁膜の除去をレーザによって行う、接続端子を製造する方法。
【請求項14】
対象物に設けられる対象点と所定の接続点とを電気的に接続する接続端子であって、
導電性材料のめっき層からなり、前記対象点との当接部を備える円筒形状部を備え、
前記当接部が、前記円筒形状部の内側壁面の縁部、外側壁面の縁部及び該内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との間を結ぶ面を含み、
前記当接部の内側壁面の縁部及び外側壁面の縁部の前記円筒形状部の軸線方向に沿った位置が異なる、接続端子。
【請求項15】
請求項14の接続端子において、
前記当接部の内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との間の面が、湾曲形状面を含むことを特徴とする、接続端子。
【請求項16】
請求項14又は15の接続端子において、
前記湾曲形状面を含む前記当接部は、先端先細り形状に形成されていることを特徴とする、接続端子。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれかの接続端子において、
前記湾曲形状面は、その底面が、該円筒形状部の軸線方向に沿って、前記当接部の内側壁面の縁部と外側壁面の縁部との間に位置するように形成されていることを特徴とする、接続端子。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれかの接続端子において、
前記湾曲形状面は、その底面が、該円筒形状部の軸線方向に沿って、前記当接部の内側壁面の縁部及び外側壁面の縁部の位置よりも後端側に位置し、それにより、前記湾曲形状面が凹形状に形成されていることを特徴とする、接続端子。
【請求項19】
請求項14乃至18のいずれかの接続端子において、
前記円筒形状部の導電性材料のめっき層には、少なくともニッケルめっき層が含まれる、接続端子。
【請求項20】
請求項14乃至18のいずれかの接続端子において、
前記円筒形状部の導電性材料のめっき層は、少なくとも外側の導電性材料のめっき層とその内側に形成された金めっき層とを含む、接続端子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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