説明

接続部材、その製造方法及び接続構造体

【課題】導電性布帛に接続される接続部材、その製造方法、及び導電性布帛と、この導電性布帛に接続された接続部材とを備える接続構造体を提供する。
【解決手段】導線111が長手方向に延びるように配された帯状部11と、導線111の端部に取り付けられた接続端子12と、を備える接続部材10,経糸の一部に導線21を使用し、緯糸に少なくとも非導電糸を使用して、原帯状部材2を織成する織成工程と、原帯状部材2の端部の導線を剥き出して露出させる露出工程と、露出した導線(導線の露出部211)に接続端子12を取り付ける端子取付工程と、を備える接続部材の製造方法、及び導電性布帛の端部より露出させた導電糸に、接続部材の導線が電気的に接続されている接続構造体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部材、その製造方法及び接続構造体に関する。更に詳しくは、本発明は、導電性布帛に接続され、導電性布帛が有する導電糸に給電するための接続部材、導線を露出させる工程、露出した導線にエレクトロニックコントロールユニット(ECU)等に接続するための接続端子を取り付ける工程等を有する接続部材の製造方法、及び導電性布帛と、この導電性布帛に接続された接続部材とを備える接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物、編み物の構成糸の一部に導電糸を使用し、この導電糸に通電し、発熱させて昇温させる各種のヒータ部材が知られており、多くの用途において用いられている。例えば、車両、特に乗用車等のシートでは、シートクッションなどの表皮材の裏面にヒータ部材を貼着し、冬期等の寒冷時に乗員を下方等から暖めることができるシートが知られている。また、これらのヒータ部材では、通常、端部に接続部材が取り付けられており、導電性布帛の導電糸と、接続部材の導線とが電気的に接続され、この導線を介して電源から導電糸に給電され、導電糸が発熱して、導電性布帛が昇温する構成となっている。
【0003】
前記のように、導電性布帛に給電し、昇温させるために接続される接続部材としては、各種の構造の部材が知られている。例えば、第1導体と、抵抗値が第1導体より低く、第1導体上に設けられた第2導体と、第2導体に接続された電源線とを有する発熱、保温体が知られており(例えば、特許文献1参照)、発熱面全体が均一に発熱し、局部的に高熱になり被覆材を燃焼させることがないと説明されている。また、導電性を有する繊維製品の両端にニクロム線等を縫い付けて電極とし、電極の端部に電極板が接続された発熱シートが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3119584号公報
【特許文献2】特開2006−127779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された発熱、保温体では、例えば、車両シートのヒータ部材として用いる場合、発熱、保温体が貼着された表皮材と、他の表皮材とを縫い合わせてシートカバーを作製するときに、第2導体に予め接続された電源線が邪魔になって作業がし難いという問題がある。また、シートカバー作製後に電源線を接続するのは容易ではない。更に、特許文献2に記載された発熱シートでは、繊維製品の両端にニクロム線等(接続部材に相当する。)を縫い付けた後、その端部に電極板を接続する構成であるため、特に、シートカバー作製後に電極板を接続するときに、接続作業が容易ではない。
【0006】
本発明は前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、導電性布帛に接続され、導電性布帛が有する導電糸に給電するための接続部材、原帯状部材の端部の導線を露出させる工程、露出した導線にECU等に接続するための接続端子を取り付ける工程等を有する接続部材の製造方法、及び導電性布帛と、この導電性布帛に接続された接続部材とを備える接続構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.導電糸を有する導電性布帛に電気的に接続される接続部材であって、
導線が長手方向に延びるように配された帯状部と、
前記導線の端部に取り付けられた接続端子と、を備えることを特徴とする接続部材。
2.前記帯状部は織物であり、
前記導線は経糸の一部をなすとともに、緯糸には少なくとも非導電糸が用いられている前記1.に記載の接続部材。
3.経糸の一部に導線を使用し、緯糸に少なくとも非導電糸を使用して、原帯状部材を織成する織成工程と、
前記原帯状部材の端部の導線を剥き出して露出させる露出工程と、
前記露出した導線に接続端子を取り付ける端子取付工程と、を備えることを特徴とする前記1.又は2.に記載の接続部材を製造する製造方法。
4.前記露出工程において、緯糸として織り込まれている前記非導電糸を解くことによって、前記原帯状部材の端部の導線を剥き出して露出させる前記3.に記載の接続部材の製造方法。
5.前記導電性布帛の端部より露出させた前記導電糸に、前記1.又は2.に記載の前記接続部材の前記導線が電気的に接続されていることを特徴とする接続構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接続部材では、露出した導線に予め接続端子が取り付けられているため、接続部材が接続された導電性布帛(本発明の接続構造体に相当する。)が貼着された表皮材と、他の表皮材とを縫い合わせて車両のシートカバーを作製するときなどに、縫製し易いとともに、給電のための電線の接続も容易である。また、接続部材の導線に直接接続端子が取り付けられているため、導線と接続端子とを引出リード線等を介して接続するときと比べて部品点数を削減することができる。更に、シートカバー作製後に接続端子を取り付けるときと比べて、作業が容易であるとともに、かしめ等による接続の信頼性を高めることもできる。
また、帯状部は織物であり、導線は経糸の一部をなすとともに、緯糸には少なくとも非導電糸が用いられている場合は、容易に所定長さの帯状の接続部材とすることができる。
本発明の接続部材の製造方法によれば、経糸の一部に導線を使用し、緯糸に少なくとも非導電糸を使用して織成された原帯状部材を用いているため、原帯状部材の端部の導線を露出させ易く、簡易な工程及び簡便な操作で、接続部材を容易に製造することができる。
また、露出工程において、緯糸として織り込まれている非導電糸を解くことによって、原帯状部材の端部の導線を剥き出して露出させる場合は、極めて簡便な操作で、より容易に導線を露出させることができる。
本発明の接続構造体は、導電性布帛の導電糸と、接続部材の導線とが接続されてなり、例えば、車両、特に乗用車等のシートクッション及びシートバックの表皮材の裏面に貼着され、冬期などの寒冷時に乗員を下方等から暖めることができるシートのヒータ部材などとして有用である
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、本発明の接続部材の製造に用いる原帯状部材の平面図であり、(b)は、横断面の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る図であり、(a)は本発明の接続部材の製造に用いる原帯状部材の平面図、(b)は原帯状部材の端部の導線を剥き出して露出させた状態を説明するための模式図、(c)は露出させた導線を縒った状態を説明するための模式図、(d)は縒られた導線の先端部に接続端子がかしめられて取り付けられた本発明の接続部材の平面図である。
【図3】本発明の接続構造体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図1〜3を参照して詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
[1]接続部材
本発明の接続部材[図2(d)の接続部材10参照]は、導電糸(図3の導電性布帛101が有する導電糸101a参照)を有する導電性布帛(図3の導電性布帛101参照)に電気的に接続される接続部材であって、導線[図2(d)の接続部材10が有する導線111参照]が長手方向に延びるように配された帯状部[図2(d)の帯状部11参照]と、導線111の端部に取り付けられた接続端子[図2(d)の接続端子12参照]と、を備える。
尚、図2(d)の中間部13は、図2(c)の導線21の縒り部211aのうちの接続端子12が接続された先端部を除く他部であり、帯状部11と接続端子13との間の中間部である。
【0012】
前記「接続部材10」は、帯状部11と接続端子12とを備える。
前記「帯状部11」は、帯状の絶縁部と、この絶縁部の長手方向に延びるように配された導線111とを有しており、絶縁部及び導線111の材質、導線111の配置形態等は特に限定されない。また、帯状部11は、織物により構成することができ、この場合、導線111が経糸の一部をなし、他部には、通常、非導電糸が用いられる。更に、緯糸としては少なくとも非導電糸が用いられ、これらの非導電糸によって絶縁部を形成することができる。尚、緯糸としては、非導電糸の他、導電糸等を用いてもよいが、特にその必要はなく、緯糸の全てが非導電糸であってもよい。
【0013】
前記「導線111」は、ECU等から給電された電力を、導電性布帛101が有する導電糸(図3の導電糸101a参照)に供給し、発熱させることができればよく、その材質及び線径等は特に限定されない。導線111としては、銅、アルミニウム、銀等の金属、及び銅合金、アルミニウム合金等の合金からなる導線を用いることができ、低コスト、高導電率であるため、銅、アルミニウムからなる導線、特に銅からなる導線が好ましい。また、導線111の線径は、100〜2000μmとすることができ、500〜1500μm、特に500〜1000μmであることが好ましい。線径が100〜2000μm、特に500〜1000μmであれば、導電性布帛101が有する導電糸101aに給電するための電線等を直接カシメることができるため好ましい。
【0014】
帯状部11が織物により構成される場合、緯糸として少なくとも非導電糸が用いられ、経糸の他部としても、通常、非導電糸が用いられる。織物に用いられる非導電糸の材質は特に限定されず、植物系及び動物系の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド及びポリエステル等の合成樹脂からなる合成繊維等を用いてなる糸が挙げられる。これらの非導電糸は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、これらの非導電糸は、通常、比抵抗が10Ω・cmを超え、絶縁性である。
【0015】
接続部材における導線の配置は特に限定されず、導線は、接続部材の幅方向において纏まって織り込まれていてもよく、分散して織り込まれていてもよいが、纏まって織り込まれていることが好ましい。また、纏まって織り込まれている場合、導線は、中央部に織り込まれていてもよく、一方側に片寄って織り込まれていてもよいが、中央部に織り込まれていることが好ましい。即ち、接続部材の幅方向の中央部に導線が経糸として織り込まれており、その両側部に非導電糸が織り込まれていることが好ましい。一方、導線が分散して織り込まれている場合、導線は、非導電糸の間に1本のみが織り込まれていてもよく、非導電糸の間に複数本、例えば、2〜10本、特に2〜5本の導線が連続して織り込まれていてもよい。更に、分散して織り込まれている場合、導線は、略等間隔に織り込まれていてもよく、等間隔でなくてもよい。
【0016】
導線111の端部に取り付けられる前記「接続端子12」としては、電線等の接続に用いられる接続端子を特に限定されることなく用いることができる。この接続端子としては、縒られた導線の先端部を挿入し、かしめて取り付ける圧着端子を用いることができる。この圧着端子には、絶縁被覆が施されていてもよく、施されていなくてもよいが、絶縁被覆を有する圧着端子が好ましい。また、着脱容易な対になった2個の端子からなるギボシ端子、ファストン端子等でもよく、着脱はできないものの、ギボシ端子、ファストン端子より圧着強度に優れる圧着接続子でもよく、これらは接続部材の用途等によって選択して用いることができる。
【0017】
中間部13は、帯状部11と接続端子12との間の中間部であり、導線が縒られているときは、この縒られた部分である。即ち、経糸として導線111とともに非導電糸111が織り込まれている帯状部11と、露出した導線の先端部に接続された接続端子12との中間部である。中間部13の長さは特に限定されないが、露出された導線21[図2(b)の導線21の露出部211参照]を縒る場合、容易に縒ることができ[図2(c)の縒り部211a参照]、且つ先端部を接続端子12に接続することができればよく、特に長くする必要はない。また、中間部13は絶縁材料によって被覆されていてもよく、被覆されていなくてもよいが、絶縁被覆されていることが好ましい。
【0018】
[2]接続部材の製造方法
本発明の接続部材の製造方法は、経糸の一部に導線を使用し、緯糸に少なくとも非導電糸を使用して、原帯状部材[図1(a)、(b)及び図2(a)の原帯状部材2参照]を織成する織成工程と、原帯状部材2の端部の導線21を剥き出して露出させる露出工程[図2(b)の導線21の露出部211参照]と、露出した導線に接続端子を取り付ける端子取付工程[図2(d)の帯状部11、中間部13及び接続端子12参照]と、を備える。
【0019】
前記「織成工程」は、原帯状部材[図2(a)の原帯状部材2参照]を織成する工程であり、経糸の一部に導線[図2(a)の導線21参照]が使用され、緯糸に少なくとも非導電糸が使用される。この経糸の一部に使用される導線21は、前記[1]接続部材における導電糸111と同一物であり、前記の記載をそのまま適用することができる。また、経糸の他部材には、通常、非導電糸が用いられること、緯糸として、非導電糸の他、導電糸等を用いてもよいこと、緯糸の全てが非導電糸であってもよいこと、も前記のとおりである。更に、非導電糸の材質については、前記の記載をそのまま適用することができる。また、原帯状部材2における導線21の配置についても、前記[1]接続部材10における導線111の配置についての記載をそのまま適用することができる。
【0020】
前記「露出工程」は、原帯状部材2の端部の導線を剥き出して露出させ、露出部[図2(b)の露出部211参照]を形成する工程である。このように導線を剥き出して露出させるのは、露出部211に接続端子12を接続するためである。従って、接続端子12を接続することができる限り、露出部211は必ずしも導線21のみで構成される必要はなく、経糸として織り込まれた非導電糸22等の一部が混在していてもよい。但し、低い接触抵抗で、電気的に確実に接続させるためには、露出部211には非導電糸22等が混在していないことが好ましく、露出部211の全体が導線21により構成されていることが好ましい。
【0021】
また、接続端子12を、低い接触抵抗で、電気的に確実に接続させるためには、導線21の露出部211を縒って縒り部[図2(c)の縒り部211a参照]を形成し、この縒り部211aの先端部に接続端子12を接続することが好ましい。このように、縒り部211aを形成する場合は、緯糸として織り込まれた非導電糸等は縒りの妨げになるため除去する必要がある。尚、このように縒り部211aを形成する場合、経糸として織り込まれた非導電糸22等が混在していても縒りは可能であるが、縒りのし易さ、及び低い接触抵抗で、電気的に確実に接続させる等の観点では、経糸として織り込まれた非導電糸22等も除去することが好ましい。
【0022】
原帯状部材2の端部の導線21を剥き出して露出させる方法は特に限定されない。例えば、原帯状部材2の端部を加熱することによって、非導電糸22等の非導電材を溶融させ、又は燃焼させて除去することができる。非導電材である非導電糸22等は、導線と比べて融点が低く、又はより低温で燃焼が開始されるため、加熱することによって容易に除去することができる。加熱手段は特に限定されず、電熱加熱により昇温した発熱部材等を接触させる方法、及び炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザを照射する方法等が挙げられるが、レーザを照射する方法が好ましい。
【0023】
更に、原帯状部材2の端部の導線21は、緯糸として織り込まれている非導電糸を解くことによって露出させることもできる。この場合、経糸として織り込まれている非導電糸22等は、前記のように、除去してもよく、除去しなくてもよいが、除去することが好ましい。また、原帯状部材2の端部の導線21は、原帯状部材2の長手方向の所定位置(この位置より先端側が端部となる。)に櫛歯状の刃物を挿入し、この刃物を先端側へ移動させることにより非導電糸等を除去し、露出させることもできる。このようにすれば、経糸として織り込まれた非導電糸等ばかりでなく、緯糸として織り込まれた非導電糸等も同時に除去することができる。
【0024】
[3]接続構造体
本発明の接続構造体は、導電性布帛(図3の導電性布帛101参照)の端部より露出させた導電糸(図3の導電性布帛101が有する導電糸101a参照)に、本発明の接続部材[図2(d)及び図3の接続部材10参照]の導線が電気的に接続されてなる(図3の接続構造体100参照)。
接続部材及び導線については、前記[1]接続部材における各々についての記載をそのまま適用することができる。
【0025】
前記「導電性布帛」は、織物であってもよく、編み物であってもよい。織物も特に限定されず、平織り、綾織り、朱子織り等のいずれの織り組織であってもよい。また、編み物も特に限定されず、緯編み及び経編みのいずれの編み組織であってもよい。更に、織物及び編み物に用いる非導電糸の材質も特に限定されず、前記の接続部材の帯状部が織物であるときの緯糸及び経糸として用いられる各種の天然繊維、再生繊維、半合成繊維、及び合成樹脂からなる合成繊維等を用いてなる糸を用いることができる。これらの非導電糸は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの非導電糸は、通常、比抵抗が10Ω・cmを超え、絶縁性である。
【0026】
織物及び編み物の構成糸の一部として用いられる前記「導電糸」(図3の導電糸101a参照)は、通電可能な導電性の繊維状材料であり、特にJIS K 7194に準拠して測定した比抵抗(体積抵抗率)が100〜10−12Ω・cmの導電糸を使用することができる。このような導電糸としては、例えば、金属線、めっき線材及び炭素繊維のフィラメント等が挙げられる。
【0027】
金属線としては、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、ステンレス鋼及び耐熱鋼等の鋼、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン等からなる線材が挙げられる。これらのうちでは、ステンレス鋼製の金属線が、優れた耐食性及び強度等を有するため好ましい。ステンレス鋼は特に限定されず、SUS304,SUS316及びSUS316L等が挙げられ、SUS304は汎用性が高いため好ましく、SUS316及びSUS316Lはモリブデンが含有されており、優れた耐食性を有するため好ましい。
【0028】
金属線の線径も特に限定されないが、強度及び柔軟性の観点で、10〜150μm、特に20〜60μmであることが好ましい。更に、金属線は、例えば、ポリエステル繊維等の他の繊維材料を芯糸とし、金属線を鞘糸とし、S及びZのうちの少なくとも一方の撚方向に金属線を巻き付けてなる複合糸の形態で用いることもできる。この場合、線径の小さい金属線を使用すれば、優れた柔軟性を有するとともに、芯糸による十分な引張強度を併せて有する導電糸とすることができるため好ましい。
【0029】
また、金属線として、その表面に樹脂コーティング(電気絶縁性の被覆)が施された金属線を用いることもできる。このような金属線は、被覆された樹脂層により保護されるため優れた防錆性を有する。更に、導電糸の露出部と導線とを接続するときは、樹脂層を剥がして金属線を露出させ、電気的に確実に接続させることができる。コーティングに用いる樹脂は特に限定されず、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、耐久性の観点でポリウレタン樹脂が好ましい。
【0030】
樹脂層の厚さは、樹脂の種類及びその耐久性等、並びに導電性布帛の用途等によって設定することができ、例えば、0.05〜500μm、特に1〜10μmとすることができる。また、樹脂コーティングの方法も特に限定されないが、金属線を樹脂分散液に浸漬し、又は液中を通過させて樹脂分散液を付着させ、その後、加熱して媒体を除去し、次いで、冷却して固着させる方法が挙げられる。また、樹脂粉末を金属線に付着させ、その後、加熱し、次いで、冷却して固着させることもできる。更に、溶融樹脂を金属線に融着させ、必要に応じて加熱し、その後、冷却して固着させることもできる。
【0031】
めっき線材としては、非導電性又は導電性の繊維材料を芯材とし、この芯材の表面のうちの全面又は幅方向の一部において全長さに亘って形成された、単体金属又は合金からなるめっき層を有する線材を用いることができる。このように芯材の表面にめっき層を形成することで、芯材が非導電性の繊維材料であっても導電糸とすることができる。一方、芯材が導電性の繊維材料の場合、めっき層を形成することで耐久性を向上させることができる。
【0032】
めっき線材の芯材として用いることができる導電性繊維としては、各種の金属繊維等が挙げられる。一方、非導電性繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びボロン繊維等が挙げられる。更に、めっき処理に用いられる金属としては、錫、ニッケル、金、銀、銅、鉄、鉛、白金、亜鉛、クロム、コバルト及びパラジウム等の単体金属、並びにニッケル−錫、銅−ニッケル、銅−錫、銅−亜鉛及び鉄−ニッケル等の合金が挙げられる。
【0033】
導電糸として用いられる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらの炭素繊維のうちでは、1000℃以上の焼成温度で製造される炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維等の炭素繊維が、優れた電気伝導性を有するため好ましい。
【0034】
前記の各種の導電糸は、導電性布帛に用いられる他の糸である非導電糸と比べて高い耐熱性を有していることが好ましい。言い換えれば、加熱により溶融する温度、又は溶融しない糸である場合は、燃焼開始温度が非導電糸より高いことが好ましい。即ち、非導電糸より高融点であるか、又は燃焼し難い糸であることが好ましい。この燃焼性の指標としては、JIS K 7201及びJIS L 1091(1999) 8.5E−2法に準拠して測定される限界酸素指数(LOI)を用いることができ、LOIが26以上である導電糸が好ましい。前記の導電糸のうち、金属線は、一般に、非導電糸として用いられる天然繊維及び合成繊維より高融点であって、且つLOIは、通常、26以上であり、例えば、ステンレス鋼繊維のLOIは49.6である。また、炭素繊維は溶融せず、LOIは60以上である。
【0035】
非導電糸は、加熱により溶融する温度、又は溶融せず燃焼する場合は、燃焼開始温度が導電糸より低く、溶融せず燃焼する非導電糸の場合は、LOIが26未満であることが好ましい。天然繊維のLOIは26未満であることが多く、例えば、綿のLOIは18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。更に、合成繊維は、導電糸より低融点であることが多く、燃焼性は導電糸より高いことが多い。例えば、ポリエステル繊維のLOIは18〜20であり、ポリアミド繊維のLOIは20〜22である。
【0036】
織物又は編み物の構成糸として織成される又は編成される非導電糸中の導電糸の間隔は特に限定されないが、例えば、接続構造体が乗用車のシートクッション等のヒータ部材として用いられる場合は、2〜100mm、特に5〜50mm程度が好ましい。間隔が狭いと均等に暖めることができるが導電糸1本当たりの電流が少なくなり温度が低下する、若しくは温度を上げるために電圧を高くすれば、消費電力が増加することになる。一方、間隔が広いと導電糸1本当たりの電流が多くなり温度が上がる、若しくは電圧を下げて消費電力を抑制することができる。しかし、間隔が広いためシートクッション表面等の温度ムラが生じ易くなる。
【0037】
また、導電性布帛における導電糸の配置も特に限定されず、導電糸は略等間隔に織成又は編成されていてもよく、等間隔でなくてもよい。導電糸が略等間隔に織成又は編成されておれば、導電性布帛の全面をより均等に暖めることができる。一方、導電性布帛の特定箇所を特に十分に昇温させたい場合は、対応する箇所において導電糸を相対的に密に配置させ、他の箇所において相対的に粗に配置させることもできる。
【0038】
更に、導電糸は、非導電糸の間に1本のみを織成又は編成してもよく、非導電糸の間に複数本、例えば、2〜10本、特に2〜5本の導電糸を連続して織成又は編成してもよい。この場合も、連続して織成又は編成された複数の導電糸の、導電性布帛における配置は等間隔でもよく、等間隔でなくてもよい。このように、導電性布帛の全面を均等に暖めるか、特定箇所をより十分に暖めるかは、導電糸を配置させる間隔、及び連続して織成又編成するときの導電糸の本数等によって調整することができる。
【0039】
[4]導電糸の露出
導電性布帛101の端部に露出している導電糸(導電糸101aの端部)に、接続部材2が有する導線111[図2(d)の導線111参照]が接続され、この導線111が接続端子12[図2(d)の接続端子12参照]及びワイヤハーネス等の電線を介してECU(図示せず)に接続され、電源から供給される電力により導電糸101aが発熱し、導電性布帛101が昇温する。この場合、導電性布帛101の端部の導電糸101aが露出する部分には、織成された、又は編成された非導電糸、及び導電糸に電気絶縁性の被覆がなされているときは、その被覆材が混在しており、これらの非導電材は、露出した導電糸101aと導線111とを接続する前に除去する必要がある。
【0040】
非導電材は、導電性布帛の端部を加熱することによって、溶融させ、又は燃焼させて除去することができる。非導電材である非導電糸及び被覆材は、ともに導電糸と比べて融点が低く、又はより低温で燃焼が開始されるため、加熱することによって容易に除去することができる。加熱手段は特に限定されず、前記の原帯状部材2の端部の導線21を剥き出して露出させるときと同様に、電熱加熱により昇温した発熱部材等を接触させる方法、及び各種のレーザを照射する方法等が挙げられるが、レーザを照射する方法が好ましい。
【0041】
レーザを照射する方法であれば、非導電材の材質等によって、レーザの強度及び出力を非導電材の溶融、燃焼に必要とされるレベルに容易に調整することができ、非導電材を容易に、且つ効率よく除去することができる。更に、レーザは、導電性布帛のいずれの面から照射してもよく、導電性布帛の表面に対して焦点位置をずらして照射することにより、一時に幅広に加工することもでき、導電性布帛の長さ方向に往復して照射して非導電材を帯状に除去することもできる。また、レーザの照射とともに、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを吹き付けることにより、過熱による導電体の酸化劣化を防止、又は少なくとも抑えることもできる。
【0042】
導電性布帛の端部の非導電材は、全てを加熱により除去してもよいが、導電性布帛の端部の全面を加熱し、溶融又は燃焼させて除去するのは容易ではない。そのため、導電性布帛の本体部と端部との境界部で、非導電材を導電性布帛の長さ方向に帯状に除去し、その後、端部側を外方に引っ張って導電糸から抜き取り、導電性布帛の端部の非導電材の全てを一時に除去することが好ましい。このようにすれば、非導電材をより効率よく除去することができる。
【0043】
前記のように、境界部の非導電材を長さ方向に帯状に除去し、その後、他の非導電材を導電糸から引き抜いて除去する場合、複数の導電糸の各々の端部は、ニット及びタックをされていない、即ち、略直線状であることが好ましい。又は少なくともニット及びタックを極力減らして、多くの部分が直線状になるようにすることが好ましい。このように、複数の導電糸の各々の露出される部分が直線状、又は多くの部分が直線状であれば、非導電材を容易に導電糸(被覆がなされているときは、この非導電材である被覆が除去された導電体)から引き抜いて除去することができ、導電糸を容易、且つ確実に露出させることができる。
【0044】
[5]導電性布帛の導電糸と接続部材の導線との接続
導電性布帛の露出された導電糸と接続部材の露出された導線との接続方法は特に限定されず、導電糸と導線とが接触した状態で、接続部材を導電性布帛の両側端部に接合させる、及び縫製する等の接続方法が挙げられる。接合方法としては、溶着、及び接着剤を用いて接合させる等の方法が挙げられるが、溶着であれば、接続部材をより強固に固定することができるため、溶着可能であれば、加熱し、溶着させて接続させることが好ましい。また、接合させたうえで、更に縫製することもでき、このようにすれば、接続部材をより強固に固定することができ、且つ電気的により確実に接続させることができる。更に、露出された導電糸と露出された導線とは、合成樹脂等の絶縁材料を用いてなり、特定の構造を有する絶縁部材によって圧接させた状態で接続させることもできる。
【0045】
また、接続構造体を表皮材の裏面に貼着し、例えば、乗用車のシートクッションに用いる場合、露出された導電糸と露出された導線との接続部がシートクッションの幅方向のどの位置になるかは特に限定されないが、接続部がシートクッションのうちの人の臀部、大腿部などが触れる箇所にあると、硬さを感じて違和感がある。更に、シートバックでは、接続部がシートバックのうちの人の肩、背部等が触れる箇所にあると、硬さを感じて違和感がある。そのため、接続部は、表皮材と、この表皮材に隣接するサイド材等の他の部材との縫製部より外側に位置するように配設することが好ましい。このようにすれば、着座した人が違和感を感じることがないとともに、耐久性を向上させることもできる。
【0046】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両用のシートクッション及びシートバック、ホットカーペット、電気毛布、家庭用電動マッサージシート、屋外及びバイク用ヒータ付きジャケットなどの、昇温させ、暖めることが必要とされる各種の製品に利用することができる。特に乗用車等の車両のシートのように屋内ではないところで用いられる製品を暖めるヒータ部材において有用である。
【符号の説明】
【0048】
100;接続構造体、101;導電性布帛、101a;導電糸、10;接続部材、11;帯状部、111;導線、112;非導電糸、12;接続端子、13;中間部、2;原帯状部材、21;導線、211;導線の露出部、211a;縒り部、22;非導電糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電糸を有する導電性布帛に電気的に接続される接続部材であって、
導線が長手方向に延びるように配された帯状部と、
前記導線の端部に取り付けられた接続端子と、を備えることを特徴とする接続部材。
【請求項2】
前記帯状部は織物であり、
前記導線は経糸の一部をなすとともに、緯糸には少なくとも非導電糸が用いられている請求項1に記載の接続部材。
【請求項3】
経糸の一部に導線を使用し、緯糸に少なくとも非導電糸を使用して、原帯状部材を織成する織成工程と、
前記原帯状部材の端部の導線を剥き出して露出させる露出工程と、
前記露出した導線に接続端子を取り付ける端子取付工程と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の接続部材を製造する製造方法。
【請求項4】
前記露出工程において、緯糸として織り込まれている前記非導電糸を解くことによって、前記原帯状部材の端部の導線を剥き出して露出させる請求項3に記載の接続部材の製造方法。
【請求項5】
前記導電性布帛の端部より露出させた前記導電糸に、請求項1又は2に記載の前記接続部材の前記導線が電気的に接続されていることを特徴とする接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127023(P2012−127023A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279701(P2010−279701)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】