説明

接触シール

【課題】シール吸着現象の発生を防止することができながらシール性能の低下を抑制することができ、切欠の寸法を厳しく管理する必要がない接触シールを提供する。
【解決手段】内側部材IPの外周面よりも径方向外側に位置して回転する外側部材OPに取り付けられ、これらの間の環状開口Aを塞ぐ、環状の芯金12に弾性体13を被覆して弾性体13の内外周側端部をシールリップ14及び外径装着部15とした接触シール11であり、外径装着部15の外周面に軸方向内外に連通する切欠17Aを形成し、外径装着部15の軸方向内面に外径側遮断部18の径方向内側面から径方向内側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠17Bを形成した。被シール部が負圧になって芯金12及び弾性体13の内径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では遮断部18が外側部材OPの径方向に延びる側壁面7Aから離間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側部材の外周面よりも径方向外側に位置して回転する外側部材に取り付けられ、これら内側部材及び外側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の内周側端部をシールリップとし、該シールリップが内側部材に接触する構造、又は、外側部材の内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材に取り付けられ、これら外側部材及び内側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の外周側端部をシールリップとし、該シールリップが外側部材に接触する構造の接触シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のオルタネータ及びエアコン等のエンジンまわりの補機は、エンジンのクランクと連結されたタイミングベルトによって駆動され、このタイミングベルトの張力調整及びレイアウトを自在に行うために、テンションプーリ及びアイドラプーリが使用される。
これらのプーリ用転がり軸受には、降雨時又は悪路等を考慮して、泥水又は塵埃等の異物が前記軸受の外輪及び内輪間へ侵入することを防止し得る高いシール性能が要求されるため、環状の金属製芯金に合成ゴム等の弾性体を被覆して該弾性体の内周側端部をシールリップとし、該シールリップを内輪に接触させる構造の接触シールが使用される。
このような接触シールにおいては、温度上昇した軸受が冷却された際に被シール部(軸受内部)が負圧になり、シールリップが内輪のシール溝に押し付けられるシール吸着現象が発生することから、軸受の回転トルクが異常に増大して回転性能が大幅に低下するとともに、シールリップの摩耗が増大することやシールリップが破損するという問題があるため、この問題解決のために、接触シールの外径装着部に切欠(スリット、空気孔)を形成してシール内外(軸受内外)を連通させるようにしたものがある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−48186号公報
【特許文献1】特開2000−65074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のようなシール内外を連通させるようにした接触シールによれば、シール内外(軸受内外)の圧力をバランスさせることができるためシール吸着現象の発生を防止することができる。
しかしながら、外径装着部に切欠を形成してシール内外を常時連通させているため、シール性能が低下して必要なシール性能を確保することができない場合があるとともに、切欠の大きさがシール性能に直結することから厳しい寸法管理が必要になるため、製造コストが増大するという問題点がある。
【0005】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、シール吸着現象の発生を防止することができながらシール性能の低下を抑制することができ、切欠の寸法を厳しく管理する必要がない接触シールを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接触シールは、前記課題解決のために、内側部材の外周面よりも径方向外側に位置して回転する外側部材に取り付けられ、これら内側部材及び外側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の内外周側端部をシールリップ及び外径装着部とした接触シールであって、前記外径装着部の外周面に軸方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記外径装着部の軸方向内面に、外径側遮断部の径方向内側面から径方向内側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の内径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記外側部材の径方向に延びる側壁面から離間するものである。
【0007】
また、本発明に係る接触シールは、前記課題解決のために、内側部材の外周面よりも径方向外側に位置して回転する外側部材に取り付けられ、これら内側部材及び外側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の内外周側端部をシールリップ及び外径装着部とした接触シールであって、前記外径装着部の外周面に軸方向内外に連通する切欠を形成し、前記外径装着部の軸方向内面に径方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記外径装着部の軸方向外面に、内径側遮断部の径方向外側面から径方向外側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の内径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記外側部材の側面を押さえる押え部材の径方向に延びる内面から離間するものである。
【0008】
さらに、本発明に係る接触シールは、前記課題解決のために、外側部材の内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材に取り付けられ、これら外側部材及び内側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の外内周側端部をシールリップ及び内径装着部とした接触シールであって、前記内径装着部の内周面に軸方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記内径装着部の軸方向内面に、内径側遮断部の径方向外側面から径方向外側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の外径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記内側部材の径方向に延びる側壁面から離間するものである。
【0009】
さらにまた、本発明に係る接触シールは、前記課題解決のために、外側部材の内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材に取り付けられ、これら外側部材及び内側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の外内周側端部をシールリップ及び内径装着部とした接触シールであって、前記内径装着部の内周面に軸方向内外に連通する切欠を形成し、前記内径装着部の軸方向内面に径方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記内径装着部の軸方向外面に、外径側遮断部の径方向内側面から径方向内側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の外径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記内側部材の側面を押さえる押え部材の径方向に延びる内面から離間するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る接触シールによれば、被シール部が負圧になった際にシール内外が連通してシール内外の圧力を瞬時にバランスさせることができるため、シール吸着現象の発生を防止することができるとともに、シール内外の圧力がバランスしている状態ではシール内外が連通しないため、前記切欠を形成してもシール性能が低下することがない。
その上、シール内外の圧力がバランスしている通常の使用状態ではシール内外が連通していないことから、従来のシール内外を連通させるようにした接触シールのようにシール性能の低下を防ぐために切欠の寸法を厳しく管理する必要がないため、製造コストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る接触シールを装着した転がり軸受の断面図であり、シール内外の圧力がバランスしている状態を示している。
【図2】同じく要部を拡大して示す断面図であり、(a)はシール内外の圧力がバランスしている状態を、(b)は被シール部が負圧になった瞬間を示している。
【図3】接触シールの断面図であり、(a)はシールリップから外径装着部にわたる断面を、(b)は(a)の矢視A1断面を、(c)は(a)の矢視A2断面を示している。
【図4】本発明の実施の形態2に係る接触シールを装着した転がり軸受の断面図であり、シール内外の圧力がバランスしている状態を示している。
【図5】同じく要部を拡大して示す断面図であり、(a)はシール内外の圧力がバランスしている状態を、(b)は被シール部が負圧になった瞬間を示している。
【図6】接触シールの断面図であり、(a)はシールリップから外径装着部にわたる断面を、(b)は(a)の矢視B1断面を、(c)は(a)の矢視B2断面を、(d)は(a)の矢視B3断面を示している。
【図7】本発明の実施の形態2に係る接触シールを装着したワンウェイクラッチの断面図であり、(a)はシール内外の圧力がバランスしている状態を、(b)は被シール部が負圧になった瞬間を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。また、以下において、回転軸の軸芯方向を「軸方向」といい、回転半径方向を「径方向」という。なお、図1〜図7の断面図において、これら図面の見やすさを考慮して切断部端面の向う側に見える外形線の一部を省略し、一部を切断部端面図として示している。
【0013】
実施の形態1.
図1及び図2は本発明の実施の形態1に係る接触シール11を装着した転がり軸受1を示しており、転がり軸受1は、内側部材IPである内輪2と外側部材OPである外輪3とが、保持器4により保持された転動体5,…を介して相対的に回転するものであり、内輪2と外輪3との間には潤滑剤としてグリース10が封入され、転動体5,…の軸受幅方向左右には、内輪2と外輪3との間の環状開口A,Aを塞ぐ、正面視略円環状の接触シール11,11が装着される。
【0014】
図2及び図3に示すように、接触シール11は、鋼板等からなる環状の金属製芯金12の外周部と内周部に連続して合成ゴム等の弾性体13を加硫接着により被覆し、弾性体13の内周側端部をシールリップ14とし、外周側端部を外径装着部15としたものであり、内輪2の外周面に形成された周溝6内にシールリップ14の先端が位置するとともに、内輪2の径方向に延びる側壁面8にシールリップ14が圧接されることにより、軸受1内部に充填されたグリース10の漏洩を防止することができるとともに外部からの異物の浸入を防止することができる。
また、外輪3の内周面に形成された周溝7に外径装着部15を嵌着することにより、接触シール11が軸受1に対して位置決め固定されるとともに、シール11の外径部からの異物の浸入を防止することができる。
【0015】
ここで、弾性体13として使用するゴム材料としては、耐油性の良好なゴム素材として、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレン・アクリルゴム(AEM)、フッ素ゴム(FKM、FPM)、シリコーンゴム(VQM)等のゴムから、1種、あるいは2種以上のゴムを適当にブレンドして使用することができる。
また、ゴム材料の練り加工性、加硫成形性、金属板との接着性を考慮した場合、他種のゴム、例えば、液状NBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等とブレンドして使用することも好ましい使用態様である。
【0016】
図2(a)に示すように、接触シール11を外輪3に取り付けた状態で、上述のとおりシールリップ14は内輪2(側壁面8)に圧接されるが、接触シール11の芯金12の内周面12Aとシールリップ14との間には括れ部16が形成されているため、シールリップ14を内輪2に押し付けても、剛性が小さい括れ部16が主に変形し、該括れ部16が内輪2及び外輪3等の各部品の形状精度等に起因する誤差を吸収して内輪2への追従性が向上するため、安定かつ確実な接触シールを構成することができるとともに回転トルクの増大を抑制することができる。
【0017】
図3に示すように、接触シール11の外径装着部15には、その外周面に、例えば2箇所の切欠17A,17Aが180°等分で形成され、その軸方向内面(底面)に、例えば1箇所の切欠17Bが形成されている。
ここで、切欠17Aは軸方向内外に連通しているが、切欠17Bは径方向内外に連通していない。
すなわち、切欠17Bは、外径装着部15の軸方向内面の径方向全体にわたって形成されておらず外周側には遮断部18を残しており、遮断部18の径方向内側面から径方向内側端部まで延びている。
したがって、図1及び図2(a)に示すシール内外(軸受内外)の圧力がバランスしている状態では、外径装着部15の切欠17Bが形成されていない部分の軸方向内面と遮断部18の当接面18Aとが円環状に切れ目なく連続して外輪3の径方向に延びる側壁面7Aに当接した状態が保持されることから、この状態ではシール内外が連通しないため、切欠17A,17Bを形成してもシール性能が低下することがない。
【0018】
図1及び図2(a)に示すシール内外(軸受内外)の圧力がバランスしている状態から、温度上昇した軸受1が冷却され軸受内部が負圧になると、図2(b)に示すようにシールリップ14が内輪2(側壁面8)に押し付けられ、その結果、芯金12及び弾性体13の内径側が軸方向内側に移動するように接触シール11が傾き、この状態では遮断部18の当接面18Aが外輪3の側壁面7Aから離間することから、外径装着部15に形成された切欠17A,17Bによりシール内外が連通してシール内外の圧力を瞬時にバランスさせることができ、よって接触シール11は図1及び図2(a)の状態に瞬時に復帰するため、シール吸着現象の発生を防止することができる。
また、このように接触シール11が図1及び図2(a)の状態に復帰した状態では、上述のとおりシール内外が連通しないため、シール性能が低下することがない。
【0019】
実施の形態2.
図4及び図5は本発明の実施の形態2に係る接触シール11を装着した転がり軸受1を示しており、実施の形態1の図1及び図2と同一符号は同一又は相当部分を示している。
図4及び図5に示すように、転がり軸受1は、接触シール11の外径装着部15を、外側部材OPである外輪3の径方向に延びる側壁面9A及び軸方向に延びる内周面9Bにより形成された段部に嵌合させた状態で、外径装着部15の軸方向外面(表面)を円環状の押え部材9Cにより押さえている。
【0020】
図6に示すように、接触シール11の外径装着部15には、その軸方向外面(表面)に、例えば2箇所の切欠19A,19Aが180°等分で形成され、その外周面に、例えば1箇所の切欠19Bが形成され、その軸方向内面(底面)に、例えば2箇所の切欠19C,19Cが180°等分で形成されている。
ここで、切欠19Bは軸方向内外に連通しており、切欠19Cは径方向内外に連通しているが、切欠19Aは径方向内外に連通していない。
すなわち、切欠19Aは、外径装着部15の軸方向外面の径方向全体にわたって形成されておらず内周側には遮断部20を残しており、遮断部20の径方向外側面から径方向外側端部まで延びている。
したがって、図4及び図5(a)に示すシール内外(軸受内外)の圧力がバランスしている状態では、外径装着部15の切欠19Aが形成されていない部分の軸方向外面と遮断部20の当接面20Aとが円環状に切れ目なく連続して円環状の押え部材9Cの内面に当接した状態が保持されることから、この状態ではシール内外が連通しないため、切欠19A,19B,19Cを形成してもシール性能が低下することがない。
【0021】
図4及び図5(a)に示すシール内外の圧力がバランスしている状態から、温度上昇した軸受1が冷却され軸受内部が負圧になると、図5(b)に示すようにシールリップ14が内輪2(側壁面8)に押し付けられ、その結果、芯金12及び弾性体13の内径側が軸方向内側に移動するように接触シール11が傾き、この状態では遮断部20の当接面20Aが押え部材9Cの内面から離間することから、外径装着部15に形成された切欠19A,19B,19Cによりシール内外が連通してシール内外の圧力を瞬時にバランスさせることができ、よって接触シール11は図4及び図5(a)の状態に瞬時に復帰するため、シール吸着現象の発生を防止することができる。
また、このように接触シール11が図4及び図5(a)の状態に復帰した状態では、上述のとおりシール内外が連通しないため、シール性能が低下することがない。
【0022】
図7は、図6と同様の接触シール11,11を装着したワンウェイクラッチ21を示しており、図4及び図5と同一符号は同一又は相当部分を示している。
図7の構成では、転がり軸受1の内輪2に連結部材23が、外輪3に内側部材IPが取り付けられ、連結部材23に外側部材OPが取り付けられ、外側部材OPは内側部材IPの外周面よりも径方向外側に位置して回転するものであり、内側部材IPと外側部材OPとの間にクラッチ機構部22が収容される。
ワンウェイクラッチ21は、接触シール11の外径装着部15を、外側部材OPの径方向に延びる側壁面及び軸方向に延びる内周面により形成された段部に嵌合させた状態で、外径装着部15の軸方向外面(表面)が連結部材23及び押え部材24により押さえられて位置決めされ、外側部材OPにシール11,11が取り付けられ、内側部材IP及び外側部材OP間の環状開口A,Aを塞いでいる。
【0023】
図7に示す接触シール11は図6に示す接触シール11と同様であり、その外径装着部15には、軸方向外面(表面)の切欠19A、外周面の切欠19B及び軸方向内面(底面)の切欠19Cが形成されており、切欠19Aは、外径装着部15の軸方向外面の径方向全体にわたって形成されておらず、内周側には遮断部20が残されている。
したがって、図7(a)に示すシール内外の圧力がバランスしている状態では、外径装着部15の切欠19Aが形成されていない部分の軸方向外面と遮断部20の当接面20Aとが円環状に切れ目なく連続して連結部材23及び押え部材24の内面に当接した状態が保持されることから、この状態ではシール内外が連通していないため、切欠19A,19B,19Cを形成してもシール性能が低下することがない。
【0024】
図7(a)に示すシール内外の圧力がバランスしている状態から、温度上昇したクラッチ機構部22が冷却されクラッチ機構部22が負圧になると、図7(b)に示すようにシールリップ14が軸方向内側に押し付けられ、その結果、芯金12及び弾性体13の内径側が軸方向内側に移動するように接触シール11が傾き、この状態では遮断部20の当接面20Aが連結部材23及び押え部材24の内面から離間することから、外径装着部15に形成された切欠19A,19B,19Cによりシール内外が連通してシール内外の圧力を瞬時にバランスさせることができ、よって接触シール11は図7(a)の状態に瞬時に復帰するため、シール吸着現象の発生を防止することができる。
また、このように接触シール11が図7(a)の状態に復帰した状態では、シール内外が連通していないため、シール性能が低下することがない。
【0025】
その上、以上の実施の形態1及び2におけるシール内外の圧力がバランスしている通常の使用状態(実施の形態1の図1及び図2(a)並びに実施の形態2の図4及び図5(a)並びに図7(a)参照。)では、シール内外が連通していないことから、従来のシール内外を連通させるようにした接触シールのようにシール性能の低下を防ぐために切欠の寸法を厳しく管理する必要がないため、製造コストの増大を抑制することができる。
【0026】
以上の実施の形態1及び2の説明においては、内側部材IPに対して外側部材OPが回転する構成を示したが、本発明は、外側部材OPに対して内側部材IPが回転する構成に対しても適用することができ、このような外側部材OPに対して内側部材IPが回転する構成であっても、上述の作用効果と同様の作用効果を奏する。
すなわち、実施の形態1の構成で外側部材OPに対して内側部材IPが回転する場合は、外側部材OPの内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材IPに取り付けられ、これら外側部材OP及び内側部材IP間の環状開口Aを塞ぐ、環状の芯金12に弾性体13を被覆して該弾性体13の外内周側端部をシールリップ及び内径装着部とした接触シール11であり、前記内径装着部の内周面に軸方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記内径装着部の軸方向内面に、内径側遮断部の径方向外側面から径方向外側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成し、被シール部(軸受内部)が負圧になって芯金12及び弾性体13の外径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記内径側遮断部が内側部材IPの径方向に延びる側壁面から離間するように構成される。
【0027】
また、実施の形態2の構成で外側部材OPに対して内側部材IPが回転する場合は、外側部材OPの内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材IPに取り付けられ、これら外側部材OP及び内側部材IP間の環状開口Aを塞ぐ、環状の芯金12に弾性体13を被覆して該弾性体13の外内周側端部をシールリップ及び内径装着部とした接触シール11であり、前記内径装着部の内周面に軸方向内外に連通する切欠を形成し、前記内径装着部の軸方向内面に径方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記内径装着部の軸方向外面に、外径側遮断部の径方向内側面から径方向内側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成し、被シール部(軸受内部等)が負圧になって芯金12及び弾性体13の外径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記外径側遮断部が内側部材IPの側面を押さえる押え部材の径方向に延びる内面から離間するように構成される。
【符号の説明】
【0028】
A 環状開口
IP 内側部材
OP 外側部材
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 保持器
5 転動体
6,7周溝
7A 側壁面
8 側壁面
9A 側壁面
9B 内周面
9C 押え部材
10 グリース
11 接触シール
12 芯金
13 弾性体
14 シールリップ
15 外径装着部
16 括れ部
17A,17B 切欠
18 遮断部
18A 当接面
19A,19B,19C 切欠
20 遮断部
20A 当接面
21 ワンウェイクラッチ
22 クラッチ機構部
23 連結部材
24 押え部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側部材の外周面よりも径方向外側に位置して回転する外側部材に取り付けられ、これら内側部材及び外側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の内外周側端部をシールリップ及び外径装着部とした接触シールであって、
前記外径装着部の外周面に軸方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記外径装着部の軸方向内面に、外径側遮断部の径方向内側面から径方向内側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、
被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の内径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記外側部材の径方向に延びる側壁面から離間することを特徴とする接触シール。
【請求項2】
内側部材の外周面よりも径方向外側に位置して回転する外側部材に取り付けられ、これら内側部材及び外側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の内外周側端部をシールリップ及び外径装着部とした接触シールであって、
前記外径装着部の外周面に軸方向内外に連通する切欠を形成し、前記外径装着部の軸方向内面に径方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記外径装着部の軸方向外面に、内径側遮断部の径方向外側面から径方向外側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、
被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の内径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記外側部材の側面を押さえる押え部材の径方向に延びる内面から離間することを特徴とする接触シール。
【請求項3】
外側部材の内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材に取り付けられ、これら外側部材及び内側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の外内周側端部をシールリップ及び内径装着部とした接触シールであって、
前記内径装着部の内周面に軸方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記内径装着部の軸方向内面に、内径側遮断部の径方向外側面から径方向外側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、
被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の外径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記内側部材の径方向に延びる側壁面から離間することを特徴とする接触シール。
【請求項4】
外側部材の内周面よりも径方向内側に位置して回転する内側部材に取り付けられ、これら外側部材及び内側部材間の環状開口を塞ぐ、環状の芯金に弾性体を被覆して該弾性体の外内周側端部をシールリップ及び内径装着部とした接触シールであって、
前記内径装着部の内周面に軸方向内外に連通する切欠を形成し、前記内径装着部の軸方向内面に径方向内外に連通する切欠を形成するとともに、前記内径装着部の軸方向外面に、外径側遮断部の径方向内側面から径方向内側端部まで延びる径方向内外に連通しない切欠を形成してなり、
被シール部が負圧になって前記芯金及び弾性体の外径側が軸方向内側に移動するように傾いた状態では前記遮断部が前記内側部材の側面を押さえる押え部材の径方向に延びる内面から離間することを特徴とする接触シール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−265969(P2010−265969A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116862(P2009−116862)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】