説明

接触型拡大観察内視鏡

【課題】拡大観察用観察窓が被写体に適度な力で押し付けられるようにして、鮮明で良質な顕微鏡的拡大観察像を得ることができる接触型拡大観察内視鏡を提供すること。
【解決手段】挿入部1の先端に配置された先端部本体2に、外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓7が設けられた接触型拡大観察内視鏡の先端部において、拡大観察用観察窓7に隣接して拡大観察用観察窓7の外表面と略同一面位置に、拡大観察用観察窓7と同方向に向けて圧力センサ12を配置し、その圧力センサ12で検出された圧力検出結果を外部モニタ21に表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、拡大観察用観察窓の外表面に当接する被写体の顕微鏡的拡大観察像を観察することができるようにした接触型拡大観察内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
体内の管腔臓器内を内視鏡で視覚的に観察して病変等の有無を検査する手技が広く一般に行われている。しかし、そのような内視鏡検査で病変を見つけても、その病変が癌であるか否か等の確定診断を行うのは困難な場合が多い。
【0003】
そこで、内視鏡検査で怪しいと思われた部分については生検鉗子等を用いて組織採取が行われるが、癌でも何でもない場合が大半であるにもかかわらず、単なる検査のために体内の管腔壁の粘膜を損傷させて出血させてしまうことになる。
【0004】
そこで近年開発された共焦点内視鏡等のような拡大観察内視鏡では、生検組織を採取することなく、1mmに満たない範囲の顕微鏡的拡大像を内視鏡による直接観察だけで観察して、癌であるか否かの確定診断を行えるようになってきている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2007−202926
【特許文献2】特開2007−252835
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような拡大観察内視鏡で顕微鏡的拡大観察像を観察する際には、被写体である体内の粘膜面に拡大観察用観察窓を当接させた状態にする必要がある。そこで、特許文献1に記載された発明では、粘膜面との接触状態を検知するための検知手段を拡大観察用観察窓付近に設け、特許文献2に記載された発明では、拡大観察用観察窓が配置された拡大観察用対物鏡筒の先端部分を蛇腹状に形成して、拡大観察用観察窓を粘膜面に容易に押し付けることができるようにしている。
【0006】
ただし、共焦点内視鏡等のような高倍率の拡大観察内視鏡では、観察視野の全範囲が0.5mm程度のものなので、拡大観察用観察窓に対して粘膜面が僅かにぶれただけで鮮明な画像が得られなくなってしまう。したがって、拡大観察用観察窓を粘膜面に対してある程度以上の力で押し付け続ける必要がある。
【0007】
しかし、拡大観察用観察窓を粘膜面に強く押し付け過ぎると、粘膜面が変形してその自然な形状を観察することができなくなるので、正確な診断を行うのに支障が生じる場合がある。
【0008】
本発明は、拡大観察用観察窓が被写体に適度な力で押し付けられるようにして、鮮明で良質な顕微鏡的拡大観察像を得ることができる接触型拡大観察内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の接触型拡大観察内視鏡は、挿入部の先端に配置された先端部本体に、外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が設けられた接触型拡大観察内視鏡の先端部において、拡大観察用観察窓に隣接して拡大観察用観察窓の外表面と略同一面位置に、拡大観察用観察窓と同方向に向けて圧力センサを配置し、その圧力センサで検出された圧力検出結果を外部モニタに表示するようにしたものである。
【0010】
なお、先端部本体に吸引口が配置されていて、圧力センサが拡大観察用観察窓と吸引口との間の領域に配置されていてもよく、先端部本体の先端面にそこから前方に突出する突出部が形成されていて、圧力センサが拡大観察用観察窓と共に突出部の突出面に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、拡大観察用観察窓に隣接して拡大観察用観察窓の外表面と略同一面位置に、拡大観察用観察窓と同方向に向けて圧力センサを配置し、その圧力センサで検出された圧力検出結果を外部モニタに表示するようにしたことにより、被写体に対する拡大観察用観察窓の押し付け力を操作者がモニタで確認しながら拡大観察の操作を行うことができるので、拡大観察用観察窓が被写体に適度な力で押し付けられる状態を保って、鮮明で良質な顕微鏡的拡大観察像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
挿入部の先端に配置された先端部本体に、外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が設けられた接触型拡大観察内視鏡の先端部において、拡大観察用観察窓に隣接して拡大観察用観察窓の外表面と略同一面位置に、拡大観察用観察窓と同方向に向けて圧力センサを配置し、その圧力センサで検出された圧力検出結果を外部モニタに表示する。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1と図2は接触型拡大観察内視鏡の先端部を示しており、体内に挿入される可撓性の挿入部1の先端に連結された先端部本体2の先端面に、通常観察用観察窓3、照明窓4及び吸引口5等が配置されている。吸引口5は、前方に向けて開口していて、挿入部1内で吸引口5に接続された吸引チューブ6は処置具挿通チャンネルを兼用している。
【0014】
通常観察用観察窓3内には、広い視野角(例えば100°〜140°程度)を得るための対物光学系(図示せず)が配置されて、その対物光学系による被写体の投影位置に固体撮像素子の撮像面が配置されている。
【0015】
先端部本体1には、通常観察用観察窓3等が配置された先端面から局部的に前方に突出する突出部2aが形成されていて、その突出部2aの突出面に拡大観察用観察窓7が前方に向けて配置されている。拡大観察用観察窓7は平行平面ガラス等で形成されている。
【0016】
拡大観察用観察窓7内には、拡大観察用の対物レンズである共焦点光学系8が配置され、共焦点光学系8に近接してその奥側には、拡大観察用観察窓7の外表面と共焦点の関係になる位置に、光学単ファイバ9(シングルモードファイバ)の先端面9aが前方に向けて配置されている。
【0017】
光学単ファイバ9の先端面9aは、例えば電磁力等を用いた走査機構10により共焦点光学系8の光軸に対して垂直な平面上で2次元的に走査され、光学単ファイバ9内を伝送されてきてその先端面9aから射出されたレーザ光が拡大観察用観察窓7の外表面に当接する粘膜で焦点を結んでそこから反射されると、その反射光が光学単ファイバ9の先端面9aに焦点を結ぶ。
【0018】
したがって、光学単ファイバ9内を通って基端側に戻される反射光をその先端面9aの走査運動に対応する位置に表示させることにより、拡大観察用観察窓7の外表面に接触する被写体の1mm以下程度の領域(例えば0.5mmの領域)の鮮明な顕微鏡的拡大観察像を得ることができる。
【0019】
ただし、拡大観察用観察窓7内の光学系が、光学単ファイバ9の先端面9aをピンホールの代用とする共焦点光学系8を用いていない、いわゆる通常の拡大観察光学系により顕微鏡的拡大観察を行えるようにしたもの等であっても差し支えない。
【0020】
先端部本体2の突出部2aの突出面には、拡大観察用観察窓7に隣接して拡大観察用観察窓7の外表面と略同一面位置に、拡大観察用観察窓7と同方向に向けて圧力センサ12が配置されている。吸引口5はそれより一段下がった先端部本体2の先端面に配置されていて、圧力センサ12は、正面から見て拡大観察用観察窓7と吸引口5との間の領域に配置されている。
【0021】
圧力センサ12は、拡大観察用観察窓7が押し付けられる体内粘膜面に拡大観察用観察窓7と並んで押し付けられてその体内粘膜面から受ける圧力を検出し、その検出結果を電気信号として出力するものである。13は、その信号を伝送するために挿入部1内に挿通配置された信号線である。
【0022】
図3は、接触型拡大観察内視鏡装置の全体構成を略示しており、挿入部1の基端に連結された操作部15には、吸引操作ボタン16が配置されていて、吸引口5からの吸引動作を操作者が任意に制御することができる。
【0023】
外部装置であるビデオプロセッサ20には、通常観察用観察窓3から取り込まれた通常観察画像を表示するためのメインモニタ21が接続されている。また、共焦点像プロセッサ30には、拡大観察用観察窓7から取り込まれた拡大観察画像を表示するための拡大像モニタ31が接続されている。
【0024】
ビデオプロセッサ20には、圧力センサ12からの出力信号を圧力値等に変換してその表示信号をメインモニタ21に出力する変換/表示回路22が内蔵されていて、圧力センサ12で検出された圧力検出結果がメインモニタ21(外部モニタ)に表示される。
【0025】
なお、メインモニタ21での表示は圧力値そのものでもよいが、段階毎に区切ったレベル表示であってもよく、例えば青(適正)、黄(注意)、赤(不適)等のような色表示でもよい。また、そのような表示を拡大像モニタ31側に表示させるようにしてもよい。そうすることにより、拡大観察像と同一モニタ画面中で、粘膜面に対する拡大観察用観察窓7の押し付け状態を把握することができる。
【0026】
その結果、このように構成された接触型拡大観察内視鏡においては、拡大観察用観察窓7が粘膜面にどの程度の圧力で押し付けられているかを操作者がリアルタイムで確認しながら拡大観察の操作を行うことができるので、拡大観察用観察窓7が被写体である粘膜面に適度な力で押し付けられるように内視鏡操作を行って、鮮明で良質な顕微鏡的拡大観察像を得ることができる。
【0027】
拡大観察用観察窓7を粘膜面に押し付ける操作は、吸引口5から体内の空気を吸引し、粘膜面を吸引口5に吸いつけることで容易に行うことができるが、圧力センサ12が拡大観察用観察窓7と吸引口5との間の領域の突出部2aの突出面に拡大観察用観察窓7の外表面と並んで配置されていることにより、粘膜面への拡大観察用観察窓7の押し付け力を圧力センサ12で相当に正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例の接触型拡大観察内視鏡の先端部の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の接触型拡大観察内視鏡の先端部の斜視図である。
【図3】本発明の実施例の接触型拡大観察内視鏡装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1 挿入部
2 先端部本体
2a 突出部
5 吸引口
7 拡大観察用観察窓
8 共焦点光学系
12 圧力センサ
21 メインモニタ(外部モニタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端に配置された先端部本体に、外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が設けられた接触型拡大観察内視鏡の先端部において、
上記拡大観察用観察窓に隣接して上記拡大観察用観察窓の外表面と略同一面位置に、上記拡大観察用観察窓と同方向に向けて圧力センサを配置し、その圧力センサで検出された圧力検出結果を外部モニタに表示するようにしたことを特徴とする接触型拡大観察内視鏡。
【請求項2】
上記先端部本体に吸引口が配置されていて、上記圧力センサが上記拡大観察用観察窓と上記吸引口との間の領域に配置されている請求項1記載の接触型拡大観察内視鏡。
【請求項3】
上記先端部本体の先端面にそこから前方に突出する突出部が形成されていて、上記圧力センサが上記拡大観察用観察窓と共に上記突出部の突出面に配置されている請求項1又は2記載の接触型拡大観察内視鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−219514(P2009−219514A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63858(P2008−63858)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】