説明

接触気相酸化用の混合酸化物触媒

本発明は、アルデヒドおよびカルボン酸を製造するために、アルカン、またはアルカンとオレフィンとからなる混合物を、空気または酸素を用いて、不活性ガスの存在下に高い温度および圧力で接触気相酸化するための混合酸化物触媒、および該触媒の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカン、またはアルカンとオレフィンとからなる混合物を接触気相酸化するための混合酸化物触媒およびその使用、ならびに該触媒の製造方法に関する。
【0002】
本発明による触媒は特に、プロパンからアクロレインおよびアクリル酸への変換のため、またはイソブタンからメタクロレインおよびメタクリル酸への変換のために使用することができ、その際、アクロレインまたはメタクロレインは、少なくとも主生成物として形成される。不均一系触媒を用いたアルカンと酸素含有ガスとの反応は、所望の生成物であるアクロレインおよびアクリル酸以外に、一連の副生成物、たとえばCO2およびCOの形成につながる。
【0003】
混合酸化物の化学組成の種類によって(相形成および反応中心の形成)、また物理的な構成(たとえば多孔度、表面積、触媒の形状)の種類および熱除去の種類によって、生成物を形成するための性能(選択率)および生産性(空時収率)は、著しい影響を受けうることは知られている。アルカンの酸化の場合には、触媒として通常、その化学的および物理的な構成において、複雑な構造を有する混合酸化物が使用される。
【0004】
従来技術
酸素または空気を用いた、公知の触媒Mo−V−Teによるプロパンの反応は一般に、アクリル酸の形成につながる。アクロレインは全く形成されないか、または痕跡量で形成されるにすぎない。アクリル酸を製造するための刊行物は多数存在し、かつ多くの経済的な議論の対象である。
【0005】
WO2004105938は、一般式TeaMolbNbcx (I)またはSba′Molby (I′)の触媒の使用下でのプロパンからのアクリル酸の製造に関するが、この場合、アクロレインが0〜0.3%の選択率で形成される。
【0006】
WO2006058998には、一般式MoVaXbTacSidxの、タンタルを含有する触媒の製造が記載されている。該触媒系は同様にアクリル酸を製造するために使用される。アクロレインは副生成物として1%未満の選択率で形成される。
【0007】
US2005065370から、元素のMoおよびV、および少なくともTeおよびSb、ならびに元素のNb、Ta、W、CeおよびTiの少なくとも1つを含有する混合酸化物触媒による飽和炭化水素の反応によってメタ(アクリル酸)を製造する方法が公知であり、この場合、触媒床は、元素のMo、BiおよびFeを含有する混合酸化物触媒からなる別の触媒床によって中断されている。その際、実施例ではアクリル酸選択率について言及されているのみである。
【0008】
Xiamen Daxue Xuebao、Ziran Kexueban(2004)、43(2)、第203〜207頁には、Mo−V−Te触媒によるプロパンからアクロレインへの反応が記載されており、この場合、プロパンは20%前後の反応率で、およびアクロレインは30%までの選択率で得られる。Cuihua Xuebao(2002)、23(3)、第281〜284頁には、Ag0.3MoP0.6OおよびCe0.1Ag0.3MoP0.6yによるプロパンからアクロレインへの反応が記載されている。
【0009】
US2006004226によれば(アクロレインおよびアクリル酸が形成され、その際、プロパンは2つの反応帯域(触媒)によって反応される。この場合、第一段階でプロパンとプロペンとからなる混合物が形成され、第二段階の後で、特にアクリル酸98.48質量%およびアクロレイン0.002質量%の凝縮液が得られる。
【0010】
課題および相違点
本発明の課題は、アルデヒドの製造方法を提供することであるが、この場合、特にアクロレイン、またはアクロレインとアクリル酸とからなる混合物が良好な収率で、プロパンから、またはプロパン/プロペン混合物から、酸素を用いた酸化によって形成される。酸化は場合により不活性ガス、水蒸気または排ガスの存在下に高めた温度で、および不均一系混合酸化物触媒の存在下に実施される。
【0011】
アルカンまたはアルカンとオレフィンとからなる混合物の、酸化生成物であるアルデヒドおよび酸への反応は、高温で、および一般に1:0.5〜5:0〜10:0〜18のアルカン、酸素、(1もしくは複数の)不活性ガスおよび水の比で行われる。有利な実施態様では水の割合は0である。
【0012】
不活性ガスとして、前記の酸化条件下で不活性な全ての気体状化合物を使用することができる。たとえばこれは、窒素、ヘリウム、またはこれらからなる混合物であってよい。同様に、反応器からの「返送ガス」を再び供給することも可能である。
【0013】
本発明の対象は、一般式
(Mo1abcdefg)Ox (I)
[式中、
Aは、ビスマスを表し、
Bは、ニッケル、コバルトを含む少なくとも1の元素を表し、
Cは、Fe、Ce、Mn、Cr、Vを含む少なくとも1の元素を表し、
Dは、W、Pを含む少なくとも1の元素を表し、
Eは、Li、K、Na、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Srを含む少なくとも1の元素を表し、
Fは、Zn、Nb、Se、Te、Sm、Gd、La、Y、Pd、Pt、Ru、Ag、Auを含む少なくとも1の元素を表し、
Gは、Si、Al、Ti、Zrを含む少なくとも1の元素を表し、かつ
aは、0〜1であり、有利には0〜0.1であり、
bは、0〜1であり、有利には0〜0.1であり、
cは、0.001〜1であり、有利には0.005〜0.1であり、
dは、0.01〜2であり、有利には0.01〜0.1であり、
eは、0〜1であり、有利には0〜0.1であり、
fは、0.01〜1.5であり、有利には0.01〜0.8であり、
gは、0〜800であり、
xは、酸素以外の元素の価数および頻度に依存して決定される数である]の混合酸化物触媒である。
【0014】
a〜xの文字は、相応する元素の原子比を、Moに対する比率で表している。
【0015】
一般式Iを有する触媒は、たとえばプロパンまたはプロパンとプロペンとからなる混合物から、アクロレインおよびアクリル酸への反応のために特に適切な触媒活性固体であり、かつ同様に本発明の対象である方法によって製造される。特に有利にはこの反応を、触媒を固定床または流動床として使用することが可能な反応器中で実施する。しかし同様に、触媒を反応空間の壁に施与することも可能である。ここで留意すべき点は、一般式Iの触媒は、イソ−ブタン、またはイソ−ブタンとイソ−ブテンとからなる混合物の、メタクロレインおよびメタクリル酸への反応のためにも利用することができることである。
【0016】
従来技術から公知の方法によれば、多金属酸化物材料の成分の適切な供給源から出発して、できるかぎり完全に混合された、有利には微粒子状の乾燥混合物を形成し、かつ該混合物を>150〜700℃、有利には400〜700℃、または特に450〜600℃の温度で熱処理する。該熱処理は原則として、酸化雰囲気下でも、不活性雰囲気下でも、および場合により水蒸気の存在下で行うこともできる。酸化雰囲気として、たとえば空気、分子酸素により富化された空気、または酸素が低減された空気が考えられる。しかし有利には熱処理は、不活性雰囲気下で、つまりたとえば分子窒素および/または希ガス下で実施する。通常、熱処理は標準圧力(1気圧)で行う。当然のことながら、熱処理は、真空下または過圧下で行うこともできる。
【0017】
総じて、熱処理は、、0.25時間〜24時間まで、または必要であればそれ以上でもよく、かつ複数の工程で行ってもよい。有利であるのは0.25〜10時間である。
【0018】
有利には乾燥混合物の熱処理を、不活性雰囲気下に、>150〜400℃、もしくは250〜450℃の温度で(=前分解工程)行う。これに引き続き、熱処理は有利意は>450〜700℃、特に450〜600℃の温度で実施される。
【0019】
形状付与が必要な場合には、熱処理を420〜490℃の温度範囲で中断し、形状付与を実施し、次いで、490〜700℃の温度範囲で、特に600℃までで、熱処理を継続することが有利である。しかし、か焼済みの粉末を型に導入することも可能である。
【0020】
出発化合物の完全な混合は、乾燥したまま、または湿った形で行うことができる。
【0021】
湿った形で製造を行う場合には、出発化合物を水性の溶液および/または懸濁液の形で相互に混合する。引き続き該混合物を一般に60℃〜<150℃、特に130℃で乾燥させ、かつ乾燥後に熱処理する。
【0022】
式(I)により記載される混合酸化物の成分のための供給源として、前記の方法を実施する範囲で、加熱(場合により空気中で)の際に、酸化物および/または水酸化物を形成することができる全てのものが考えられる。当然のことながら、このような出発化合物として、すでに元素成分の酸化物および/または水酸化物を併用するか、またはもっぱらこれらのみを使用することができる。
【0023】
前記の成分は理想的には、アンモニウム化合物、シュウ酸塩、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、カルボニルおよび/または硝酸塩の群から選択されるそれらの化合物の形で、単独で、または一緒に溶解され、かつ相互に混合される。特に有利であるのは、炭酸塩、硝酸塩およびリン酸塩、またはこれらの混合物である。同様に前記の塩の酸、たとえば硝酸、リン酸または炭酸、または相応する金属酸化物の懸濁液を使用することができる。
【0024】
沈殿で使用される金属塩の種類に依存して、塩および酸またはこれらの混合物を、沈殿混合物に添加することが必要な場合がある。この場合、理想的にはアンモニアまたはアンモニウム塩、たとえば炭酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウムまたは金属硝酸塩、たとえば硝酸コバルトを使用する。同様に相応する酸、たとえば硝酸を、イオン比の調整のために必要な量で使用することができる。沈殿の間のpH値は、通常、8未満、特に7未満である。
【0025】
同様に、沈殿溶液の温度が重要である。たとえば温度が高すぎると、触媒の後の活性が明らかに低下する場合がある。沈殿は原則として、25〜90℃の温度で実施することができる。
【0026】
共沈物は一段階で沈殿させることができる。特に有利であるのは、沈殿を多段階で、それぞれの成分または該成分の混合物を段階的に添加することによって実施することである。沈殿段階の数は原則として限定されていない。しかし有利であるのは、1〜3段階の沈殿である。
【0027】
得られた懸濁液は、直接さらに加工することができるか、または該懸濁液を有利には>0〜24時間熟成させることができる。有利には>0〜12時間、特に有利には0〜6時間である。沈殿懸濁液を、その後の加工前にたとえば攪拌によって均質化することは自明である。
【0028】
熟成後に、懸濁液の液体を、蒸発、遠心分離または濾過により除去することができる。液体を蒸発させ、かつ同時に固体を乾燥させることも同様に可能であり、かつたとえば噴霧乾燥により行うことができる。液体は80〜130℃の温度で蒸発させるべきである。固体の乾燥は、空気により、酸素を含有する不活性ガスにより、または不活性ガス、たとえば窒素により行うことができる。乾燥を炉中で実施する場合、温度は100〜150℃である。噴霧乾燥器中では、乾燥媒体の開始温度は200〜500℃であり、かつ乾燥させた粉末を分離する際の温度は、80〜200℃であることが考えられる。得られた粒子は、有利には15〜160μmの粒径分布と、15〜80μmの平均粒径とを有する。
【0029】
乾燥させた粉末は原則として、種々のタイプの炉中で、たとえば循環空気炉、回転管、棚型炉、シャフト炉またはコンベア式加熱炉中でか焼することができる。炉の制御特性もしくは温度検出のための特性は、できる限り高い方がよい。炉中での粉末の滞留時間は、炉のタイプに応じて0.25〜10時間であってよい。
【0030】
同様に、か焼およびその際に開始される塩の熱分解を、1もしくは複数の段階で実施することも可能である。その際、200〜650℃、特に300〜650℃の温度を利用することができる。熱分解は、酸素と不活性ガスとの混合物からなる不活性ガスの添加下で実施することができる。
【0031】
不活性ガスとして使用することができるのは、たとえば窒素、ヘリウム、水蒸気またはこれらの気体の混合物である。
【0032】
熱処理の後で、得られた触媒材料を有利には粉砕し、かつ場合により分級することができる。
【0033】
こうして得られた粉末は、触媒として適切である。工業的な適用のためには、市販の形状付与剤または結合剤を添加した後で、粉末を成形することが特に有利である。これはタブレット化、押出成形により、または担体の被覆により行うことができる。担体の形状寸法はこの場合、限定されていない。これはむしろ反応器の規格(たとえば管直径、触媒堆積物の長さ)に応じて決定される。たとえば担体は、ピラミッド形、円筒形、クラ形、球形、リング形または多角形であってよいし、あるいはまた、反応成分の反応がその中で行われる反応器の壁であってもよい。
【0034】
担体のための材料として、本発明によれば特に酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、たとえば粘土、カオリン、軽石、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム、炭化ケイ素および酸化ジルコニウムが考えられる。
【0035】
担体の表面は、平滑であっても、粗面であってもよい。担体の表面が粗面であると有利である。
【0036】
シェル触媒上に存在する活性酸化物材料シェルの厚さは通常、10〜1000μmである。しかしこの厚さは50〜700μm、100〜600μm、または150〜400μmであってよい。可能なシェル厚さは、10〜500μm、100〜400μmであるか、または150〜300μmであってもよい。
【0037】
結合剤として、種々の油、ポリオール、たとえばグリセリンおよびポリビニルアルコール、セルロース、多糖類、アクリレート、ならびにアルキル誘導体、これらの混合物または濃縮物を使用することができる。触媒粉末を形状付与する際に、触媒を有利には490〜650℃の温度範囲で熱により後処理することができ、これによって活性材料が工業用の反応器中での使用のために固化される。
【0038】
本発明の対象は同様に、不飽和アルデヒドおよび場合により相応する酸を製造するために、本発明による触媒の存在下に、アルカンおよびアルカン/オレフィンからなる混合物を酸化する方法である。
【0039】
この場合、オレフィンは、二重結合によって、そのつど使用されるアルカンから区別される。
【0040】
アクロレインまたは場合によりアクロレインとアクリル酸とからなる混合物を製造するための本発明による反応は、一般に350〜500℃の温度および1.0〜2.2バール(絶対)の圧力で実施される。反応相手であるアルカンまたはアルカンとオレフィンとからなる混合物の、酸化生成物であるアルデヒドおよび場合により酸への反応は、高温で、および1:0.5〜5:0〜10:0〜15のアルカン、酸素、(1もしくは複数の)不活性ガスおよび水の比率で、アルカンまたはアルカンとオレフィンとからなる混合物2〜20モル/l触媒堆積物/hの負荷で行う。
【0041】
不活性ガスの代わりに、凝縮可能な成分を分離した、反応からの排ガスを使用することもできる。特に良好な結果は、管束反応器、プレート型反応器(たとえばEP0995491、EP1147807)、またはウォール型反応器(たとえばRedlingshoefer H.、Fischer A.等、Ind.Eng.Chem.Res.2003、42、第5482〜5488頁、EP1234612)を使用する際に得られるが、これらの場合には触媒は壁上に施与されている。
【0042】
反応管の内径もしくはプレートの間隔は、18〜28mm、有利には20〜26mmであるべきであり、鉄を含有する鋼の壁の厚さは、1〜3.5mmであるべきである。典型的な反応器長さは、3.00〜4.00mである。触媒は有利には反応器長さに均一に、希釈成形体による希釈を有することなく使用されるが、当然のことながら、これはたとえば不活性成形体により希釈する適用が必要であってもよい。
【0043】
本発明による触媒は、アクロレインの製造に関して、高い相対負荷率でも改善された活性および選択性を有している。
【0044】
本発明を以下では、実施例に基づいて詳細に説明する。この場合の定義は以下のとおりである:
生成物の収率(%)は、(モル/h形成された生成物)/(モル/h供給された反応成分)×100、
アルカンの反応率(%)は、[1−(モル/h反応管から排出されたアルカン)/(モル/h反応管に導入されるアルカン)]×100、
選択率(%)は、(生成物の収率/反応率)×100。
【0045】
上記の発明を、その理解を高めるために以下の実施例により記載するが、しかし本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0046】
実施例
例1
80℃で、七モリブデン酸アンモニウム2118.6gを水2.7l中に溶解することによって溶液Iを製造した。80℃で所望の量のH2TeO4×2H2Oおよび硝酸コバルトを溶解することによって、溶液IIが得られた。両方の溶液を撹拌下に合して、形成されるスラリー(懸濁液)を、濃縮乾固させる。得られた、まだ湿っている粉末を150℃で乾燥させ、かつ600℃の温度で酸化物に変換させた。得られた混合金属酸化物粉末は、組成(MoCo0.1Te0.2)Oxを有していた。
【0047】
例2
例1の触媒に、プロパン(化学グレード)1部(混合物の全量の50%)および酸素1部(混合物の全量の50%)の組成の混合物を供給した。生じる空間速度は、3000h-1であった。熱媒の温度は、450℃であった。プロパンの反応率は、48.9モル%であり、その際、アクロレインの生成物選択率は32%であった。
【0048】
例3
80℃で、七モリブデン酸アンモニウム2118.6gを水2.7l中に溶解することによって溶液Iを製造した。80℃で所望の量の硝酸Bi(III)および硝酸クロム(III)を溶解することによって、溶液IIが得られた。両方の溶液を撹拌下に合して、形成されるスラリーを、濃縮乾固させる。得られた、まだ湿っている粉末を150℃で乾燥させ、かつ600℃の温度で酸化物に変換させた。得られた混合金属酸化物粉末は、組成(MoCr0.0286Bi0.05)Oxを有していた。
【0049】
例4
例3の触媒に、プロパン(化学グレード)1部および酸素1部の組成の混合物を供給した。生じる空間速度は、3000h-1であった。熱媒の温度は、500℃であった。プロパンの反応率は、38モル%であり、その際、アクロレインの生成物選択率は43%であった。
【0050】
例5
例4の生成物ガスを返送し、かつ例3の触媒により反応させた。生じる空間速度は、3000h-1であった。熱媒の温度は、500℃であった。プロパンの反応率は、76モル%であり、その際、アクロレインの生成物収率は33%であった。
【0051】
例6
80℃で、七モリブデン酸アンモニウム2118.6gを水2.7l中に溶解することによって溶液Iを製造した。80℃で所望の量の硝酸Cr(III)およびH2TeO4・2H2Oを溶解することによって、溶液IIが得られた。両方の溶液を撹拌下に合して、形成されるスラリーを、濃縮乾固させる。得られた、まだ湿っている粉末を150℃で乾燥させ、かつ600℃の温度で酸化物に変換させた。得られた混合金属酸化物粉末は、組成(MoCr0.0286Te0.05)Oxを有していた。
【0052】
例7
例6の触媒に、プロパン(化学グレード)1部および酸素1部の組成の混合物を供給した。生じる空間速度は、3000h-1であった。熱媒の温度は、450℃であった。プロパンの反応率は、27.5モル%であり、その際、アクロレインの生成物選択率は58%であった。
【0053】
例8
80℃で、七モリブデン酸アンモニウム2118.6gを水2.7l中に溶解することによって溶液Iを製造した。80℃で所望の量の硝酸Cr(III)、H3PO4およびH2TeO4・2H2Oを溶解することによって、溶液IIが得られた。両方の溶液を撹拌下に合して、形成されるスラリーを、濃縮乾固させる。得られた、まだ湿っている粉末を150℃で乾燥させ、かつ600℃の温度で酸化物に変換させた。得られた混合金属酸化物粉末は、組成(MoCr0.0286Te0.050.05)Oxを有していた。
【0054】
例9
例8の触媒に、プロパン(化学グレード)1部および酸素1部の組成の混合物を供給した。生じる空間速度は、3000h-1であった。熱媒の温度は、450℃であった。プロパンの反応率は、30モル%であり、その際、アクロレインの生成物選択率は70%であった。
【0055】
例10
80℃で、七モリブデン酸アンモニウム2118.6gを水2.7l中に溶解することによって溶液Iを製造した。80℃で所望の量の硝酸Cr(III)、硝酸Co(II)およびH2TeO4・2H2Oを溶解することによって、溶液IIが得られた。両方の溶液を撹拌下に合して、形成されるスラリーを、濃縮乾固させる。得られた、まだ湿っている粉末を150℃で乾燥させ、かつ600℃の温度で酸化物に変換させた。得られた混合金属酸化物粉末は、組成(MoCr0.0286Te0.05Co0.15)Oxを有していた。
【0056】
例11
組成(MoCr0.0286Te0.05Co0.8)Oxの触媒に、プロパン(化学グレード)1.2部および酸素1部の組成の混合物を供給した。生じる空間速度は、3000h-1であった。熱媒の温度は、450℃であった。プロパンの反応率は、18モル%であり、その際、アクロレインの生成物選択率は72%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
(Mo Aabcdefg)Ox (I)
[式中、
Aは、ビスマスを表し、
Bは、ニッケルおよび/またはコバルトを含む少なくとも1の元素を表し、
Cは、Fe、Ce、Mn、Cr、Vを含む少なくとも1の元素を表し、
Dは、W、Pを含む少なくとも1の元素を表し、
Eは、Li、K、Na、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Srを含む少なくとも1の元素を表し、
Fは、Zn、Nb、Se、Te、Sm、Gd、La、Y、Pd、Pt、Ru、Ag、Auを含む少なくとも1の元素を表し、
Gは、Si、Al、Ti、Zrを含む少なくとも1の元素を表し、かつ
aは、0〜1であり、
bは、0〜1であり、
cは、0.001〜1であり、
dは、0.01〜2であり、
eは、0〜1であり、
fは、0.01〜1.5であり、
gは、0〜800であり、
xは、酸素以外の元素の価数および頻度に依存して決定される数である]の混合酸化物触媒。
【請求項2】
粉末状の混合酸化物触媒が、不活性担体材料上に施与されているか、またはペースト状で押出成形されることを特徴とする、請求項1記載の混合酸化物触媒。
【請求項3】
式Iにより記載される混合酸化物触媒の製造方法において、式Iにより記載される混合酸化物触媒中に含有されている金属の化合物の溶液を混合し、共沈物を製造し、得られた粉末状の固体を分離し、乾燥させ、熱処理し、かつ場合により成形することを特徴とする、式Iにより記載される混合酸化物触媒の製造方法。
【請求項4】
共沈物を製造する間のpH値が、8未満であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
式Iにより記載される触媒中に含有されている金属の化合物が、アンモニウム化合物またはアミン化合物、シュウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、カルボニル、水酸化物、酸化物および/または硝酸塩からなる群から選択されており、これを単独で、もしくは一緒に使用することを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
炭酸塩、水酸化物、酸化物、硝酸塩またはリン酸塩またはこれらの塩の混合物を使用することを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
使用される塩のアニオンに相応する酸を場合により使用することを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
共沈物を製造するために、炭酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、および硝酸クロム(III)、硝酸ビスマス、硝酸コバルトを含む少なくとも1の金属硝酸塩、および/または場合により硝酸を使用することを特徴とする、請求項3から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
沈殿を、5〜90℃の温度で実施することを特徴とする、請求項3から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
沈殿を、20〜90℃の温度で実施することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
沈殿により得られた懸濁液を、0時間以上24時間まで、有利には0時間以上12時間まで、特に有利には0時間以上6時間まで熟成させることを特徴とする、請求項3から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
共沈物を分離し、かつ乾燥させることを特徴とする、請求項3から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
乾燥させた共沈物が、か焼前に、15〜160μmの粒径分布を有する噴霧乾燥粒子からなることを特徴とする、請求項3から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
乾燥させた共沈物の平均粒径分布が、15μm〜80μmであることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
熱処理のための炉中での、乾燥させた粉末の滞留時間が、0.25〜13時間であり、かつその際、>150〜700℃の温度を調整することを特徴とする、請求項3から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
熱処理を、1もしくは複数の段階で実施することを特徴とする、請求項3から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
熱処理を、不活性ガスからなるか、酸素と不活性ガスとの混合物からなる雰囲気中で、および/または水蒸気の存在下もしくは非存在下で実施することを特徴とする、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
熱処理された粉末を、タブレット化、押出成形により成形するか、または担体上に施与することを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
触媒粉末の形状付与の後に得られた成形体を、450〜650℃の温度範囲で熱処理することを特徴とする、請求項3から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
アルカン、またはアルカンと相応するオレフィンとからなる混合物から、空気または酸素を用いて、場合により不活性ガス、水蒸気または反応からの排ガスの存在下に、高温で接触酸化することによって、アルデヒドおよび場合により酸を製造する方法において、一般式
(Mo1abcdefg)Ox (I)
[式中、
Aは、ビスマスを表し、
Bは、ニッケルおよび/またはコバルトを含む少なくとも1の元素を表し、
Cは、Fe、Ce、Mn、Cr、Vを含む少なくとも1の元素を表し、
Dは、W、Pを含む少なくとも1の元素を表し、
Eは、Li、K、Na、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Srを含む少なくとも1の元素を表し、
Fは、Zn、Nb、Se、Te、Sm、Gd、La、Y、Pd、Pt、Ru、Ag、Auを含む少なくとも1の元素を表し、
Gは、Si、Al、Ti、Zrを含む少なくとも1の元素を表し、かつ
aは、0〜1であり、
bは、0〜1であり、
cは、0.001〜1であり、
dは、0.01〜2であり、
eは、0.001〜1であり、
fは、0.01〜1.5であり、
gは、0〜800であり、
xは、酸素以外の元素の価数および頻度に依存して決定される数である]の触媒を使用することを特徴とする、アルデヒドの製造方法。
【請求項21】
アクロレイン、またはアクロレインとアクリル酸とを、プロパンまたはプロペンの酸化により製造することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
メタクロレイン、またはメタクロレインとメタクリル酸とを、イソブタンまたはイソブテンの酸化により製造することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項23】
触媒に、アルカン、またはアルカンと相応するオレフィンとからなる混合物、酸素および不活性ガスおよび水を、1:0.5〜5:0〜10:0〜18の比で含有する反応ガス混合物を供給することを特徴とする、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−506711(P2010−506711A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532792(P2009−532792)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061062
【国際公開番号】WO2008/046843
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】