説明

推進工法における管路接続工法

【課題】 接続時に地下水や土砂の噴出を防止できる安全性の高い低コストの管路接続工法を提供する。
【解決手段】 掘進機10で推進して既設構造物Aの直前位置で停止し、先行掘削ヘッド30を排土管13内に進退可能に設置し、先行掘削ヘッド30を前進させて既設構造物Aの側壁を削孔し、先行掘削ヘッド30を取り外してロッド31の先端に掘進機10の外径よりやや大径のリングカッター40を連結し、リングカッター40を先行掘削ヘッド30の駆動力で回転させながら掘進機10の方向へ後退させ、リングカッター40で既設構造物Aの側壁を切削しながらリングカッター40が掘進機10の前部外周を覆う位置まで挿入し、リングカッター40とリングカッター40で切削された開口との間に筒状の土留鋼板60を圧入し、その後リングカッター40を撤去して回収し、さらに掘進機10の外殻11を残置してそれ以外の部品を撤去して回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法において、到達立坑が不要で既設構造物や既設マンホールの側壁を直接切削して管路を接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の推進工事では、一般的に発進立坑や到達立坑が必要となるが、最近では既設構造物や既設マンホールの側壁に掘進機を直接到達させて到達立坑を不要にできる技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。しかし、このような接続工法は、既設構造物と到達した掘進機のカッターフェイスとの間に数センチメートルの空間が存在することとなり、その狭い空間から地下水や土砂が噴出して地盤沈下等のトラブルが発生する可能性があった。
【0003】
また、新しい接続工法として、掘進機が既設構造物に到達した後、掘進機の外殻部に装備された貫入式のリングカッターが回転・切削して側壁を除去できるようにした技術も開発されている(例えば特許文献2参照)。しかし、既設構造物に使用している鋼材の量や強度が明らかでないため、リングカッターに有する超硬チップの摩耗限界が不明瞭で、切削の進捗もわかりにくく、しかも、リングカッターに取り付けられた超硬チップの交換は掘進機内からは不可能で、最後まで切削しないうちに摩耗限界に達してしまう可能性もあった。また、このような掘進機は構造が複雑となり、高価格となる問題もあった。
【特許文献1】特許第3534657号公報
【特許文献2】特開2004−218280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、到達側に切削用のリングカッターを装備し、接続時に地下水や土砂の噴出を防止できる安全性の高い低コストの推進工法における管路接続工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 前端部に掘削カッターを備えた掘進機で地盤を掘削しながら推進管を接続させて地中に管路を構築する推進工法において、既設構造物に管路を直接接続する接続工法であって、掘進機で推進して既設構造物の直前位置で停止し、ロッドの先端に小径の先行掘削ヘッドを脱着可能に取り付けて掘進機の前部中央に進退可能に設置し、先行掘削ヘッドを掘進機の掘削カッターより前進させて既設構造物の側壁を削孔し、既設構造物内に突出した先行掘削ヘッドを取り外して掘進機の外径よりやや大径のリングカッターをロッドの先端に既設構造物側より連結して組立て、リングカッターを先行掘削ヘッドの駆動力又は既設構造物内の駆動手段で回転させながら掘進機の方向へ後退させ、リングカッターで既設構造物の側壁を切削しながらリングカッターが掘進機の前部外周を覆う位置まで挿入し、リングカッターとリングカッターで切削された開口との間に筒状の土留鋼板を圧入して土留壁とし、その後リングカッターを撤去して回収して再利用可能とし、さらに掘進機の外殻を地中に残置してそれ以外の部品を撤去して回収することを特徴とする、推進工法における管路接続工法
2) リングカッターによる切削時に、既設構造物内に設置したジャッキでリングカッターを掘進機の方向へ押し付けるようにした、前記1)記載の推進工法における管路接続工法
3) 掘進機が中央部に排土管を備えた構造で、先行掘削ヘッドを排土管に挿入して取り付けた、前記1)又は2)記載の推進工法における管路接続工法
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リングカッターで既設構造物の側壁を切削する際、リングカッターが掘進機の前部外周を覆うから、接続時に地盤が露出するような隙間を生じることがなく、地下水や土砂の流入を防止できて安全である。また、リングカッターは既設構造物側から切削するから目視で確認できて進捗がわかりやすく、超硬チップの交換も可能となる。また、接続後は筒状の土留鋼板を圧入してリングカッターを撤去・再利用でき、しかも掘進機も一般的な構造のものが使用できるから、低コストで実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、リングカッターによる切削時に、既設構造物内に設置したジャッキでリングカッターを掘進機の方向へ押し付けると、掘進機側への後退力(回転するロッドの引戻し力)を補助できる。また、リングカッターによる切削時に、既設構造物内に設置したモータ等の駆動手段でリングカッターを回転させると、回転力を補助できる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例の掘進機の説明図、図2,3は実施例の管路の接続工程を示す説明図である。図中、10は掘進機、11は外殻、12は掘削カッター、13は排土管、14は排土バルブ、15は注入口、16は止水スイベルジョイント、20は推進管、30は先行掘削ヘッド、31はロッド、32は回転用モータ、33はラック、34はギヤ、35は進退用モータ、40はリングカッター、41は超硬チップ、42は回転ローラー、50は油圧ジャッキ、51は押付け板、60は土留鋼板、70は押輪、Aは既設構造物、Gは地盤である。
【0009】
本実施例の掘進機10は、図1に示すように自転公転する複数の掘削カッター12と、掘削土砂を排土する排土管13と、排土管13を開閉する排土バルブ14と、図示しないバルブを開閉して地盤Gの前方側へ薬液を注入する複数の斜めの注入口15と、先行掘削ヘッド30のロッド31を連通させる際に排土管13の後端を閉塞して止水する止水スイベルジョイント16と、これらを収容する筒状の外殻11とで構成されている。
【0010】
先行掘削ヘッド30は、これを先端に脱着自在に取り付けるロッド31と、ロッド31を回転させる回転用モータ32と、外殻11に固定されるラック33と、ラック33と歯合するギヤ34と、ギヤ34を回転させてロッド31及び回転用モータ32を進退させる進退用モータ35とで構成されている。リングカッター40は、掘進機10の掘削外径よりやや大径で、掘進機10側の外縁部に備えた多数の超硬チップ41と、既設構造物A側に備えた回転ローラー42とで構成されている。
【0011】
まず、図2(a)に示すように、推進管20を後続させながら掘進機10を地中を推進させて既設構造物Aの直前位置で停止させ、注入口15から薬液を注入して地盤Gを改良する。次に、先行掘削ヘッド30とロッド31と回転用モータ32とラック33とギヤ34と進退用モータ35を掘進機10内に搬入して組み立て、先行掘削ヘッド30とロッド31を排土管13内に挿入して排土バルブ14で閉塞し、先行掘削ヘッド30を掘削カッター12より前進させて既設構造物Aの側壁を削孔してコア抜きを行う。
【0012】
次に、図2(b)に示すように、既設構造物A内に突出した先行掘削ヘッド30をロッド31から取り外し、そのロッド31の先端にリングカッター40を超硬チップ41が掘進機10側へ向くように取り付け、既設構造物A内に油圧ジャッキ50を設置してその先端に押付け板51を取り付け、回転ローラー42を介してリングカッター40を押付け板51で支承する。
【0013】
次に、図2(c)に示すように、回転用モータ32でロッド31を回転させるとともに進退用モータ35で掘進機10側へ後退させ、リングカッター40で既設構造物Aの側壁を切削する。同時に油圧ジャッキ50を伸張させてリングカッター40を掘進機10の方向へ押し付け、後退力を補助する。リングカッター40は押付け板51で押し付けられながら回転ローラー42で円滑に回動し、図3(a)に示すように、リングカッター40が掘進機10の前部を覆う位置まで掘削する。
【0014】
次に、図3(b)に示すように、リングカッター40とリングカッター40で切削された開口との間に筒状に組み立てた分割式の土留鋼板60を押輪70を介して油圧ジャッキ50で圧入して土留壁とする。これにより、地盤Gが露出するような隙間を生じることがなく、地下水や土砂の流入を防止できて安全である。
【0015】
次に、図3(c)に示すように、掘進機10内から止水注入を行った後にリングカッター40及び油圧ジャッキ50を既設構造物A側に撤去して回収し、掘進機10を既設構造物Aに到達させ、土留鋼板60と外殻11とを溶接する。そして、掘進機10を分解して外殻11を地中に残置し、それ以外の部品を既設構造物A側及び推進管20側へ回収する。その後、外殻11の内面にコンクリート(図示せず)を打設する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の技術は、到達立坑が不要又はその構築が困難な場合において、既設構造物や既設マンホールの側壁を直接切削して管路を接続するための工事に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例の掘進機の説明図である。
【図2】実施例の管路の接続工程を示す説明図である。
【図3】実施例の管路の接続工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
10 掘進機
11 外殻
12 掘削カッター
13 排土管
14 排土バルブ
15 注入口
16 止水スイベルジョイント
20 推進管
30 先行掘削ヘッド
31 ロッド
32 回転用モータ
33 ラック
34 ギヤ
35 進退用モータ
40 リングカッター
41 超硬チップ
42 回転ローラー
50 油圧ジャッキ
51 押付け板
60 土留鋼板
70 押輪
A 既設構造物
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部に掘削カッターを備えた掘進機で地盤を掘削しながら推進管を接続させて地中に管路を構築する推進工法において、既設構造物に管路を直接接続する接続工法であって、掘進機で推進して既設構造物の直前位置で停止し、ロッドの先端に小径の先行掘削ヘッドを脱着可能に取り付けて掘進機の前部中央に進退可能に設置し、先行掘削ヘッドを掘進機の掘削カッターより前進させて既設構造物の側壁を削孔し、既設構造物内に突出した先行掘削ヘッドを取り外して掘進機の外径よりやや大径のリングカッターをロッドの先端に既設構造物側より連結して組立て、リングカッターを先行掘削ヘッドの駆動力又は既設構造物内の駆動手段で回転させながら掘進機の方向へ後退させ、リングカッターで既設構造物の側壁を切削しながらリングカッターが掘進機の前部外周を覆う位置まで挿入し、リングカッターとリングカッターで切削された開口との間に筒状の土留鋼板を圧入して土留壁とし、その後リングカッターを撤去して回収して再利用可能とし、さらに掘進機の外殻を地中に残置してそれ以外の部品を撤去して回収することを特徴とする、推進工法における管路接続工法。
【請求項2】
リングカッターによる切削時に、既設構造物内に設置したジャッキでリングカッターを掘進機の方向へ押し付けるようにした、請求項1記載の推進工法における管路接続工法。
【請求項3】
掘進機が中央部に排土管を備えた構造で、先行掘削ヘッドを排土管に挿入して取り付けた、請求項1又は2記載の推進工法における管路接続工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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