説明

描画方法、および電気光学装置の製造方法、電気光学装置、ならびに電子機器

【課題】基板のサイズの変化、リニアスケール等の検出精度の変化、液滴吐出装置自体の
機械精度の変化などが発生しても、描画精度を向上することが可能な描画方法、表示性能
の良好な電気光学装置、電子機器を提供する。
【解決手段】描画方法は、液滴吐出ヘッド52と、基板Wとを相対的に移動させる移動工
程と、特徴点としてのアライメントマーク91、93の配置位置を検出して、間隔H2を
測定する工程と、測定された間隔H2と、設計値情報としての間隔H1とを比較して基板
Wの伸縮率δ(%)を確認する工程と、この伸縮率δ(%)に基づいてキャリッジユニッ
ト5の位置を調整する工程と、描画をする描画工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに配列されたノズルから機能液を選択的に吐出することによ
り、基板上に描画を行う描画方法、および電気光学装置の製造方法、電気光学装置、なら
びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の印刷ヘッドを用いた液滴吐出装置は、微小な液滴をドット
状に精度良く吐出することができるので、各種部品の製造分野で応用が期待されている。
ここで、例えば液晶表示装置や、有機EL表示装置などの製造方法にも用いられ、ガラス
基板上に、フィルタ材料や、発光材料などの機能液を吐出して、液晶表示装置におけるフ
ィルタエレメントの形成や、有機EL表示装置における画素の形成が行なわれている。
【0003】
特許文献1に開示されているように、基板上に機能性材料を含む機能液を液滴として吐
出描画する液滴吐出装置としては、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドを液
滴吐出ヘッドとして用い、複数の液滴吐出ヘッドが搭載されたキャリッジを介して複数の
液滴吐出ヘッドを主走査方向および副走査方向に移動させる移動手段を備えた描画装置や
、この描画装置を用いた描画方法が知られている。
【0004】
液晶表示装置や、有機EL表示装置などを製造する場合、エンコーダがガラス基板の領
域にわたって移動走査して、この移動走査によって得られるリニアスケールからのフィー
ドバックパルスの分周クロックの情報を検出していた。さらに、この検出結果から液滴吐
出ヘッドの位置を制御して機能液を吐出する方法であって、あらかじめガラス基板の所定
方向の全領域を検出してから機能液の着弾位置を決める方法であった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−267927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、液晶表示装置や、有機EL表示装置などで用いられるようなガラス基板は、
サイズが大きいために、温度変化による熱膨張でガラス基板に生じたサイズ変化や、リニ
アスケールの伸び・縮みの変化、装置自体の機械精度の変化などが生じることで、結果的
に誤差が発生してしまう恐れがあった。そして、このような誤差があった場合に、ガラス
基板の所定方向の全領域を検出してから機能液の着弾位置を決める方法だと、個々の描画
領域の狙った位置に対して、ずれた位置に機能液が着弾してしまう恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、基板のサイズの変化、リニアスケール等の検出精度の変化、液滴吐出
装置自体の機械精度の変化などが発生しても、描画精度を向上することが可能な描画方法
、表示性能の良好な電気光学装置、電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の描画方法は、キャリッジユニットに搭載された液滴吐出ヘッドが有するノズル
から機能液を選択的に吐出することにより、複数の特徴点を持つ基板上に描画を行う描画
方法であって、前記液滴吐出ヘッドと、前記基板とを相対的に移動させる移動工程と、前
記特徴点の配置位置を検出して、前記特徴点の間隔を測定する工程と、前記測定する工程
で測定された前記間隔と、設計値情報とを比較して前記基板の伸縮率を確認する工程と、
前記伸縮率に基づいて前記キャリッジユニットの位置を調整する工程と、描画をする描画
工程と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、特徴点の間隔を測定しておいて、この測定結果と、設計値情報にお
ける間隔とを比較して基板の伸縮率を求めておき、この伸縮率に合わせてキャリッジユニ
ットの位置を調整してから描画をする描画方法なので、狙った位置に機能液を着弾するこ
とができる。したがって、描画位置精度を向上することができる。
【0010】
本発明の描画方法は、前記キャリッジユニットは複数配置されており、前記キャリッジ
ユニットの位置を調整する工程では、前記伸縮率に基づき前記各キャリッジユニットの間
隔を按分してから、前記各キャリッジユニットの位置を調整することが望ましい。
【0011】
この発明によれば、基板の伸縮率に基づいてキャリッジユニットの間隔を按分してから
、キャリッジユニットの位置を調整するから、キャリッジユニットの配置位置精度をより
向上させることができるので、より精度よく機能液を着弾することができる。
【0012】
本発明の描画方法は、前記基板は、隔壁により区画された複数の区画領域を有し、前記
キャリッジユニットの位置を調整する工程では、予め決めておいた設計情報に基づく前記
区画領域の幅(画素幅)を選択することが望ましい。
【0013】
この発明によれば、予め決めておいた設計情報に基づく画素幅を選択して、画素幅の配
置位置に合うようにキャリッジユニットの配置位置を決めるから、キャリッジユニットの
配置位置精度をより向上させることができるので、より精度よく機能液を着弾することが
できる。
【0014】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前述に記載の描画方法で形成されたことを特徴と
する。
【0015】
この発明によれば、描画位置精度を向上させることが可能な描画方法で製造されている
ので、高精度な電気光学装置を製造することができる。
【0016】
本発明の電気光学装置は、前述に記載の電気光学装置の製造方法で製造されたことを特
徴とする。
【0017】
この発明によれば、高精度な電気光学装置なので、表示性能の向上した電気光学装置を
提供できる。
【0018】
本発明の電子機器は、前述に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、表示性能の向上した電気光学装置を備えることができるので、良好
な表示特性を有する電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を適用した描画方法について説明する。本実施形態
で用いられる描画装置は、液滴吐出装置である。液滴吐出装置は、基板上に区画形成され
た色要素領域に、色要素形成材料を含む複数種の液状体を、キャリッジに搭載された複数
の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出して複数種の色要素を形成するものである。ここで、
本実施形態に係る液滴吐出装置について説明する。
<液滴吐出装置>
【0021】
図1は、液滴吐出装置を示す概略斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置1は、ワークとしての基板Wを載置して
X軸方向(主走査方向)に移動させるワーク移動手段2と、複数(この場合、7つ)のキ
ャリッジユニット5をY軸方向(副走査方向)に移動させるヘッド移動手段3と、を備え
ている。複数のキャリッジユニット5には、複数(この場合、6つ)の液滴吐出ヘッド5
2(図2参照)を有しており、基板Wと対向するように搭載されたキャリッジ51が、備
えられている。また、ワーク移動手段2による基板WのX軸方向への移動(主走査)に同
期して、複数の液滴吐出ヘッド52を選択的に駆動して複数種の液状体を基板W上に吐出
させる描画制御手段としての制御部4(図3参照)を備えている。
【0023】
ワーク移動手段2は、基板Wが載置されるセットテーブル24と、セットテーブル24
をエアスライダ(図示省略)を介してX軸方向に移動させるリニアモータ22を備えた一
対のX軸ガイドレール23とを有している。一対のX軸ガイドレール23は、床上に設置
された共通架台9上に載置されX軸方向に延在する石定盤21上に配設されている。
【0024】
セットテーブル24には、基板Wが真空吸着して固定される吸着テーブル(図示省略)
と、基板Wの表面が複数の液滴吐出ヘッド52と所定の間隔を置いて精度よく対向するよ
うに基板Wの水平調整および角度調整が可能なθテーブル(図示省略)とを備えている。
【0025】
ヘッド移動手段3は、複数のキャリッジユニット5をエアスライダ(図示省略)を介し
てY軸方向に移動させるリニアモータ31を備えた一対のY軸ガイドレール32を有して
いる。一対のY軸ガイドレール32は、共通架台9上に間隔を置いて立脚した8本の支持
スタンド8上にワーク移動手段2を跨ぐように配設されている。
【0026】
一対のY軸ガイドレール32の間には、キャリッジ51に搭載された複数の液滴吐出ヘ
ッド52(図2(a)参照)のノズル61の目詰まりの解消、ノズル面の異物や汚れの除
去などのメンテナンスを行うメンテナンス手段14が、複数の液滴吐出ヘッド52(図2
(a)参照)を臨む位置に配設されている。
【0027】
キャリッジユニット5は、一対のY軸ガイドレール32に差し渡されるようにして配置
されている。差し渡されたキャリッジユニット5のプレート上には、各液状体が貯留され
たタンクから配管を経由して送り込まれた液状体を所定量貯留して、各液滴吐出ヘッド5
2(図2(a)参照)に液状体を供給する液状体供給ユニット6と、各液滴吐出ヘッド5
2(図2(a)参照)を駆動するための電気信号を供給するヘッド用電装ユニット7とが
、載置されている。
【0028】
また、共通架台9上には、ワークWの位置を検出するためのワーク認識カメラ15と、
液滴吐出ヘッド52(図2(a)参照)の位置を検出するためのヘッド認識カメラ16(
図示省略)とが、載置されている。そして、ワーク認識カメラ15は、特徴点としてのア
ライメントマーク91、93(図4参照)の位置を検出することができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドについて説明する。
【0030】
図2は、液滴吐出ヘッドを示す図である。同図(a)は、概略斜視図であり、同図(b
)は、ノズルの配置状態を示す平面図である。
【0031】
図2(a)に示すように、本実施形態の液滴吐出ヘッド52は、2連のものであり、2
連の接続針54を有する液状体の導入部53と、導入部53に積層されたヘッド基板55
と、ヘッド基板55上に配置され内部に液状体のヘッド内流路が形成されたヘッド本体5
6とを備えている。接続針54は、液状体供給ユニット6(図1参照)に配管を経由して
接続されており、液状体をヘッド内流路に供給することができる。ヘッド用電装ユニット
7に接続される2連のコネクタ59が、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介
して、ヘッド基板55に設けられている。
【0032】
ヘッド本体56は、ピエゾ素子等で構成されたキャビティを有する加圧部57と、ノズ
ル面58aに2つのノズル列62、62が、相互に平行に形成されたノズルプレート58
とを有している。
【0033】
図2(b)に示すように、2つのノズル列62、62は、それぞれ複数(この場合、1
80個)のノズル61がピッチP1で略等間隔に並べられており、互いにピッチP1の半
分のピッチP2ずれた状態でノズルプレート58に配設されている。ピッチP1は、およ
そ140μmである。よって、ノズル列62に直交する方向から見ると360個のノズル
61がおよそ70μmのノズルピッチで配列した状態となっている。以降説明上、ノズル
61の間隔は、ノズルピッチP2とする。
【0034】
液滴吐出ヘッド52は、ヘッド用電装ユニット7(図1参照)から電気信号としての駆
動波形がピエゾ素子等に印加されると、加圧部57のキャビティの体積変動が起こり、こ
れによるポンプ作用でキャビティに充填された液状体が加圧され、ノズル61から液状体
を液滴として吐出することができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る液滴吐出装置の制御系について説明する。
【0036】
図3は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。
【0037】
図3に示すように、液滴吐出装置1は、キーボード12と、ディスプレイ13と、が本
体11に接続された上位コンピュータ10と、液滴吐出ヘッド52と、ワーク移動手段2
と、ヘッド移動手段3と、メンテナンス手段14等を駆動する各種ドライバを有する駆動
部46と、駆動部46を含めた液滴吐出装置1を統括制御する制御部4と、を備えている

【0038】
駆動部46は、ワーク移動手段2およびヘッド移動手段3の各リニアモータ22、31
をそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド52を吐出駆動制御する
ヘッドドライバ48と、メンテナンス手段14の各メンテ用ユニットを駆動制御するメン
テナンス用ドライバ49と、を備えている。
【0039】
制御部4は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44と、を備え
、これらCPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44は、互いにバス4
5を介して接続されている。ROM42は、CPU41で処理される制御プログラム等を
記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理等を行うための制御データ等を
記憶する制御データ領域と、を有している。
【0040】
RAM43は、基板Wに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部と、
基板Wおよび液滴吐出ヘッド52の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶
部と、を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON44には、
駆動部46の各種ドライバのほか、ワーク認識カメラ15や、ヘッド認識カメラ16等が
接続されており、CPU41の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取
り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON44は、上
位コンピュータ10からの各種指令等をそのまま、あるいは加工してバス45に取り込む
と共に、CPU41と連動して、CPU41等からバス45に出力されたデータや、制御
信号をそのまま、あるいは加工して駆動部46に出力することができる。ワーク認識カメ
ラ15は、アライメントマーク91、93の位置を検出することができる。そして、制御
部4は、P−CON44を介してアライメントマーク91、93の位置検出結果のデータ
をROM42内に格納することができる。液滴吐出装置1は、ROM42内に格納された
アライメントマーク91、93の位置検出結果に基づいて、キャリッジユニット5の配置
位置を制御することができる。
【0041】
そして、制御部4は、ROM42内の制御プログラムに従って、P−CON44を介し
て各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM43内の各種データ等を処理
した後、P−CON44を介して駆動部46等に各種の制御信号を出力することにより、
液滴吐出装置1を制御している。制御部4は、ワーク移動手段2およびヘッド移動手段3
を制御することにより、所定の移動条件でワークWを移動させて、基板Wに液滴吐出ヘッ
ド52から液状体を吐出させて吐出制御することにより、所定の描画条件で描画を行うこ
とができる。
<伸縮率補正方法>
【0042】
次に、本実施形態に係る基板の伸縮率補正方法について説明する。
【0043】
図4は、基板の伸縮度合いを説明するための図である。
【0044】
図4に示すように、基板Wは、液滴吐出装置1(図1参照)の上に載置されており、こ
こで示す基板W1は、熱などで膨張していない場合を示すものである。基板W1上には特
徴点としてのアライメントマーク91、91が配置されている。片方のアライメントマー
ク91の中心をOとして、他方のアライメントマーク91の中心をO1とする。これら中
心Oと、中心O1とのX軸方向における距離がワーク認識カメラ15によって測定できる
。この距離が間隔H1である。ここでは、ワーク認識カメラ15は、1台使用した。なお
、基板W1が熱などで膨張していない状態であるので、間隔H1は、設計値情報と等しく
なる。また、これらアライメントマーク91、91は、実際の描画に影響の無いエリアに
形成されていることが好ましく、描画領域以外の非描画領域に形成されていることが望ま
しい。
【0045】
次に、破線で示す基板W2は、基板Wに加えられた熱などで膨張した場合を示すもので
あり、基板Wより大きくなっている状態である。加熱されて膨張した基板W2は、特徴点
としてのアライメントマーク93の位置がアライメントマーク91の位置より多少ずれて
いる。ここでアライメントマーク93の中心をO2として、中心Oと、中心O2とのX軸
方向における距離がワーク認識カメラ15によって測定できる。この距離が間隔H2であ
る。
【0046】
ここで、基板Wは、熱膨張によって中心O1と、中心O2との距離の分だけ伸びている
。この伸びは、X軸方向、Y軸方向ともに、等倍の度合いで伸びていることを前提にして
(逆に、縮むこともある)、伸びの度合いを伸縮率δ(%)で表す。
【0047】
液滴吐出装置1のX軸方向におけるキャリッジユニット5の配置位置の調整方法は、伸
縮率δ(%)が決まったら、キャリッジユニット5の間隔hに伸縮率δ(%)を補正する
ことでできる。キャリッジユニット5の配置位置は、間隔hに伸縮率δ(%)を補正する
ことで、キャリッジユニット5の配置位置の誤差が少なくなるように按分される。そして
、描画領域としての色素領域Aに対してキャリッジユニット5を精度よく配置することが
できる。そして、機能液を液滴吐出ヘッド52(図2(a)参照)から基板W上に吐出さ
せて描画をすれば、液滴吐出装置1は、基板WのX軸方向において機能液の着弾位置精度
の高い描画ができる。
【0048】
液滴吐出装置1のY軸方向におけるキャリッジユニット5の配置位置の調整方法は、伸
縮率δ(%)を加味した画素幅のデータを制御部4のROM42内に設計値情報として予
め格納しておいて、このROM42内に格納された画素幅のデータを制御部4から抽出し
てから、キャリッジユニット5の配置位置に合うように画素幅を選択する。そして、制御
部4に制御された液滴吐出装置1は、画素幅に合うようにキャリッジユニット5を精度よ
く配置しながら描画をする。したがって、液滴吐出装置1は、Y軸方向においても機能液
の着弾位置精度の高い描画ができる。
【0049】
基板Wが熱膨張などによって伸縮していたとしても、キャリッジユニット5の間隔hに
対して伸縮率δ(%)を補正することにより、液滴吐出装置1は、基板WのX軸方向およ
びY軸方向の両方向において、キャリッジユニット5の配置位置精度を向上させることが
できる。キャリッジユニット5の配置位置精度が向上すれば、機能液の着弾位置精度を向
上させることが可能な描画ができる。また、温度変化などによってリニアスケールや、液
滴吐出装置1の精度が変化したとしても、機能液の着弾位置精度を維持することが可能な
描画ができる。
【0050】
次に、本実施形態に係る描画方法を用いて製造された液晶表示装置について説明する。
<液晶表示装置>
【0051】
図5は、液晶表示装置の構造を示す概略斜視図である。
【0052】
図5に示すように、本実施形態の液晶表示装置500は、TFT(Thin Film
Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照
明する照明装置516と、を備えている。液晶表示パネル520は、色要素としてのカラ
ーフィルタを有する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続され
たTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501、508によって挟持され
た液晶(図示省略)と、を備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基
板501、508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と、下偏光板51
5と、が配設される。
【0053】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部504
によってマトリクス状に区画された複数の色要素領域に複数種の色要素としてRGB3色
のカラーフィルタ505R、505G、505Bが形成されている。隔壁部504は、C
rなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる
下層バンク502と、下層バンク502の上(図5では、下向き)に形成された有機化合
物からなる上層バンク503と、で構成されている。また対向基板501は、隔壁部50
4と隔壁部504によって区画されたカラーフィルタ505R、505G、505Bとを
覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように
形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向
電極507と、を備えている。
【0054】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜
509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して
形成された複数のTFT素子511と、を有している。TFT素子511の3端子のうち
、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510
を囲むように格子状に配設された走査線512と、データ線513と、に接続されている

【0055】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源
からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板や、反
射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0056】
液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin
Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板
にカラーフィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配
置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。また、上下偏光板514、515は、視角
依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合
わされたものでもよい。
<液晶表示装置の製造方法>
【0057】
次に、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法について説明する。
【0058】
図6は、液晶表示装置の製造方法を示すフローチャートである。図7(a)〜(e)は
、液晶表示装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0059】
液晶表示装置の製造方法は、隔壁部を形成する工程と、表面処理する工程と、色要素描
画工程と、成膜工程と、OC層を形成する工程と、対向電極を形成する工程とで、概略構
成される。図6および図7を参照しながら、液晶表示装置の製造方法について詳細に説明
する。なお、基板に描画をする際には、図4に示した基板の伸縮度合いを確認してから描
画をする描画方法を採用したので、ここでは、これらの確認方法や、補正方法などについ
ての説明は、省略する。
【0060】
図6のステップS1では、図7(a)に示すように、隔壁部504を形成する工程であ
る。まずブラックマトリクスとしての下層バンク502を対向基板501上に形成する。
下層バンク502の材料は、例えば、Cr、Ni、Al等の不透明な金属、あるいはこれ
ら金属の酸化物等の化合物を用いることができる。下層バンク502の形成方法としては
、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜を対向基板501上に成膜する。膜厚
は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい。例えば、Crなら
ば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法により開口部502
aに対応する部分以外をレジストで膜を覆い、上記材料に対応する酸等のエッチング液を
用いて膜をエッチングする。これにより開口部502aを有する下層バンク502が形成
される。
【0061】
そして、上層バンク503を下層バンク502の上に形成する。上層バンク503の材
料としては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料
は、遮光性を有することが好ましい。上層バンク503の形成方法としては、例えば、下
層バンク502が形成された対向基板501の表面に感光性樹脂材料をロールコート法や
スピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そ
して、色要素領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを対向基板501と所
定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク503を形成する方法が挙
げられる。これにより対向基板501上に複数の色要素領域Aをマトリクス状に区画する
隔壁部504が形成される。
【0062】
次に、図7のステップS2では、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッ素系ガスを
処理ガスとして、隔壁部504によって区画された色要素領域Aに対してプラズマ処理を
行う表面処理工程である。色要素領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層
バンク503の表面(壁面を含む)が撥液処理される。
【0063】
次に、図6のステップS3では、図7(b)に示すように、描画をする描画工程である
。ここでは、表面処理された各色要素領域Aのそれぞれに、対応する液状体80R、80
G、80Bを付与してカラーフィルタ505を描画する。液状体80Rは、R(赤色)の
カラーフィルタ形成材料を含むものであり、液状体80Gは、G(緑色)のカラーフィル
タ形成材料を含むものであり、液状体80Bは、B(青色)のカラーフィルタ形成材料を
含むものである。各液状体80R、80G、80Bを付与する方法は、液滴吐出装置1を
用い、液滴吐出ヘッド52に各液状体80R、80G、80Bを充填し、液滴として色要
素領域Aに着弾させる。各液状体80R、80G、80Bは、色要素領域Aの面積に応じ
て必要量が付与され、色要素領域Aに濡れ拡がり、表面張力によって盛り上がる。そして
、3種の異なる液状体80R、80G、80Bを略同時に吐出して描画することができる
液滴吐出装置1を用いているため、各液状体80R、80G、80Bごとに別々の液滴吐
出装置1で描画する場合に比べて、効率よく描画することが可能である。
【0064】
次に、図6のステップS4では、図7(c)に示すように、描画されたカラーフィルタ
505を乾燥して成膜化する工程である。ここでは、吐出描画されたカラーフィルタ50
5を一括乾燥し、各液状体80R、80G、80Bから溶剤成分を除去してカラーフィル
タ505R、505G、505Bを成膜する。乾燥方法としては、溶剤成分を均質に乾燥
可能な減圧乾燥などの方法が望ましい。
【0065】
次に、図6のステップS5では、図7(d)に示すように、OC層形成工程である。こ
こでは、カラーフィルタ505と、上層バンク503とを覆うようにOC層506を形成
する。OC層506の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。
形成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層5
06は、カラーフィルタ505が形成された対向基板501の表面の凹凸を緩和して、後
にこの表面に膜付けされる対向電極507を平担化するために設けられている。また、対
向電極507との密着性を確保するために、OC層506の上にさらにSiO2などの薄
膜を形成してもよい。
【0066】
最後に、図6のステップS6では、図7(e)に示すように、対向電極507を形成す
る工程である。スパッタ法や蒸着法を用いてITOなどの透明電極材料を真空中で成膜し
て、OC層506を覆うように全面に対向電極507を形成する。
【0067】
第1実施形態では、以下の効果が得られる。
【0068】
(1)液滴吐出装置1が、アライメントマーク91、93の間隔H2を測定しておいて
、この測定結果と、設計値情報における間隔H1とを比較してから伸縮率δ(%)を求め
る。そして、基板Wが熱膨張の影響などで伸縮をしても、この伸縮率δ(%)に合わせて
キャリッジユニット5の位置を調整してから描画をする描画方法なので、狙った位置に機
能液としての液状体80R、80G、80Bを着弾することができる。したがって、描画
位置精度を向上することができる。
(2)液滴吐出装置1が、キャリッジユニット5の間隔hを伸縮率δ(%)に基づいて
按分してキャリッジユニット5の位置を調整するから、キャリッジユニット5の配置位置
精度をより向上させることができるので、より精度よく機能液としての液状体80R、8
0G、80Bを着弾させることができる。
(3)液滴吐出装置1が、予め決めておいた設計値情報に基づく画素幅を選択して、画
素幅の配置位置に合うようにキャリッジユニット5の配置位置を決めるから、キャリッジ
ユニット5の配置位置精度をより向上させることができるので、より精度よく機能液とし
ての液状体80R、80G、80Bを着弾させることができる。
(4)液晶表示装置500が、高精度な描画方法で製造されているので、精度が高く、
しかも品質の良好な液晶表示装置500を製造することができる。
(5)そして、品質が良好で、表示性能の向上した電気光学装置としての液晶表示装置
500を提供できる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本実施形態に係る描画方法を用いて製造された電気光学装置としての有機EL表
示装置について説明する。第1実施形態と異なる点は、液晶表示装置でなく、有機EL表
示装置に本発明の描画方法を適用したことである。
<有機EL表示装置>
【0070】
図8は、有機EL表示装置の構造を示す概略断面図である。
【0071】
図8に示すように、本実施形態の電気光学装置としての有機EL表示装置600は、発
光素子部603を有する素子基板601と、素子基板601と空間622を隔てて封着さ
れた封止基板620とを備えている。また素子基板601は、素子基板601上に回路素
子部602を備えており、発光素子部603は、回路素子部602上に重畳して形成され
、回路素子部602により駆動されるものである。発光素子部603には、3色の発光層
617R、617G、617Bがそれぞれの色要素領域Aに形成され、ストライプ状とな
っている。素子基板601は、3色の発光層617R、617G、617Bに対応する3
つの色要素領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板601の回路素子部602上に
マトリクス状に配置されたものである。有機EL表示装置600は、発光素子部603か
らの発光が素子基板601側に出射するものである。
【0072】
封止基板620は、ガラス又は金属からなるもので、封止樹脂を介して素子基板601
に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤621が貼り付けられている
。ゲッター剤621は、素子基板601と封止基板620との間の空間622に侵入した
水又は酸素を吸収して、発光素子部603が侵入した水又は酸素によって劣化することを
防ぐものである。
【0073】
素子基板601は、回路素子部602上に複数の色要素領域Aを有するものであって、
複数の色要素領域Aを区画する隔壁部としてのバンク618と、複数の色要素領域Aに形
成された電極613と、電極613に積層された正孔注入/輸送層617aとを備えてい
る。また複数の色要素領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成され
た発光層617R、617G、617Bを有する色要素としての発光素子部603を備え
ている。バンク618は、下層バンク618aと色要素領域Aを実質的に区画する上層バ
ンク618bとからなり、下層バンク618aは、色要素領域Aの内側に張り出すように
設けられて、電極613と各発光層617R、617G、617Bとが直接接触して電気
的に短絡することを防止するためにSiO2等の無機絶縁材料により形成されている。
【0074】
素子基板601は、例えばガラス等の透明な基板からなり、素子基板601上にシリコ
ン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上に多結晶シリコ
ンからなる島状の半導体膜607が形成されている。尚、半導体膜607には、ソース領
域607a及びドレイン領域607bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。
なお、Pが導入されなかった部分がチャネル領域607cとなっている。さらに下地保護
膜606及び半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、ゲート絶縁膜
608上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極609が形成され、ゲー
ト電極609及びゲート絶縁膜608上には透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶
縁膜611bが形成されている。ゲート電極609は、半導体膜607のチャネル領域6
07cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜611aおよび第2層間
絶縁膜611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607
bにそれぞれ接続されるコンタクトホール612a、612bが形成されている。そして
、第2層間絶縁膜611b上に、ITO(Indium Tin Oxide)等からな
る透明な電極613が所定の形状にパターニングされて配置され(電極形成工程)、一方
のコンタクトホール612aがこの電極613に接続されている。また、もう一方のコン
タクトホール612bが電源線614に接続されている。このようにして、回路素子部6
02には、各電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615が形成されている
。尚、回路素子部602には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成され
ている(図示省略)。
【0075】
発光素子部603は、陽極としての電極613と、電極613上に順次積層された正孔
注入/輸送層617a、各発光層617R、617G、617B(総称して発光層617
b)と、上層バンク618bと発光層617bとを覆うように積層された陰極604とを
備えている。尚、陰極604と封止基板620およびゲッター剤621を透明な材料で構
成すれば、封止基板620側から発光する光を出射させることができる。
【0076】
有機EL表示装置600は、ゲート電極609に接続された走査線(図示省略)とソー
ス領域607aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号に
よりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線
の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ6
15のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ615のチャネル領
域607cを介して、電源線614から電極613に電流が流れ、更に正孔注入/輸送層
617aと発光層617bとを介して陰極604に電流が流れる。発光層617bは、こ
れを流れる電流量に応じて発光する。有機EL表示装置600は、このような発光素子部
603の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また発
光層617bが液滴吐出装置1を用いて精度の高い描画方法で形成されているため、表示
不具合の少ない高い表示品質を有している。
<有機EL表示装置の製造方法>
【0077】
次に、本実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法について説明する。
【0078】
図9は、有機EL表示装置の製造方法を示すフローチャートであり、図10(a)〜(
f)は、有機EL表示装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0079】
有機EL表示装置の製造方法は、電極を形成する工程と、バンク(隔壁部)を形成する
工程と、表面処理をする工程と、正孔注入/輸送層を描画する工程と、乾燥・成膜をする
工程と、表面処理をする工程と、発光層を描画する工程と、乾燥・成膜をする工程と、陰
極を形成する工程とで、概略構成される。図9および図10を参照しながら、有機EL表
示装置の製造方法について詳細に説明する。なお、基板に描画をする際には、図4に示し
た基板の伸縮度合いを確認してから描画をする描画方法を採用したので、ここでは、これ
らの確認方法や、補正方法などについての説明は、省略する。
【0080】
図9のステップS11では、図10(a)に示すように、電極(陽極)形成工程である
。回路素子部602がすでに形成された素子基板601の色要素領域Aに対応する位置に
電極613を形成する。形成方法としては、例えば、素子基板601の表面にITO等の
透明電極材料を用いて真空中でスパッタ法あるいは蒸着法で透明電極膜を形成する。その
後、フォトリソグラフィ法にて必要な部分だけを残してエッチングして電極613を形成
する方法が挙げられる。また、フォトレジストで素子基板601を先に覆って、電極61
3を形成する領域が開口するように露光・現像する。そして開口部にITO等の透明電極
膜を形成し、残存したフォトレジストを除去する方法でもよい。
【0081】
次に、図9のステップS12では、図10(b)に示すように、バンク(隔壁部)形成
工程である。素子基板601の複数の電極613の一部を覆うように下層バンク618a
を形成する。下層バンク618aの材料としては、無機材料である絶縁性のSiO2(酸
化珪素)を用いている。下層バンク618aの形成方法としては、例えば、後に形成され
る発光層617bに対応して、各電極613の表面をマスキングする。そしてマスキング
された素子基板601を真空装置に投入し、SiO2をターゲットあるいは原料としてス
パッタリングや真空蒸着することにより下層バンク618aを形成する方法が挙げられる
。レジスト等のマスキングは、後に剥離する。尚、下層バンク618aは、SiO2によ
り形成されているため、その膜厚が200nm以下であれば十分な透明性を有しており、
後に正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが積層されても発光を阻害すること
はない。
【0082】
続いて、各色要素領域Aを実質的に区画するように下層バンク618aの上に上層バン
ク618bを形成する。上層バンク618bの材料としては、後述する発光層形成材料を
含む3種の液状体100R、100G、100Bの溶媒に対して耐久性を有するものであ
ることが望ましい。さらに、フッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理によりテトラフ
ルオロエチレン化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミド
などといった有機材料が好ましい。上層バンク618bの形成方法としては、例えば、下
層バンク618aが形成された素子基板601の表面に感光性の前記有機材料をロールコ
ート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成
する。そして、色要素領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板6
01と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク618bを形成す
る方法が挙げられる。これにより下層バンク618aと上層バンク618bとを有する隔
壁部としてのバンク618が形成される。
【0083】
次に、図9のステップS13では、バンク618が形成された素子基板601の表面の
色要素領域Aを表面処理する工程である。ここでは、O2ガスを処理ガスとしてプラズマ
処理する。これにより電極613の表面、下層バンク618aの張り出し部および上層バ
ンク618bの表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。つぎにCF4等のフッ
素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂から
なる上層バンク618bの表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。
【0084】
次に、図9のステップS14では、図10(c)に示すように、正孔注入/輸送層形成
工程である。ここでは、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体90を色要素領域Aに付
与する。液状体90を付与する方法としては、液滴吐出装置1を用いる。液滴吐出ヘッド
52から吐出された液状体90は、液滴として素子基板601の電極613に着弾して濡
れ拡がる。液状体90は、色要素領域Aの面積に応じて必要量が液滴として吐出され表面
張力で盛り上がった状態となる。
【0085】
次に、図9のステップS15では、乾燥・成膜工程である。ここでは、素子基板601
を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体90の溶媒成分を乾燥さ
せて除去し、電極613の下層バンク618aにより区画された領域に正孔注入/輸送層
617aが形成される。ここでは、正孔注入/輸送層形成材料としてPEDOT(Pol
yethylene Dioxy Thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェ
ン)を用いた。尚、この場合、各色要素領域Aに同一材料からなる正孔注入/輸送層61
7aを形成したが、発光層の形成材料に対応して正孔注入/輸送層617aの材料を色要
素領域Aごとに変えてもよい。
【0086】
次に、図9のステップS16では、正孔注入/輸送層617aが形成された素子基板6
01を表面処理する工程である。ここでは、正孔注入/輸送層形成材料を用いて正孔注入
/輸送層617aを形成した場合、その表面が、次のステップS17で用いられる3種の
液状体100R、100G、100Bに対して撥液性を有するので、少なくとも色要素領
域Aの領域内を再び親液性を有するように表面処理を行う。表面処理の方法としては、3
種の液状体100R、100G、100Bに用いられる溶媒を塗布して乾燥する。溶媒の
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法等の方法が挙げられる。
【0087】
次に、図9のステップS17では、図10(d)に示すように、RGB発光層描画工程
である。ここでは、液滴吐出装置1を用いて異なる液滴吐出ヘッド52から複数の色要素
領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体100R、100G、100Bを付与する。
液状体100Rは、発光層617R(赤色)を形成する材料を含み、液状体100Gは、
発光層617G(緑色)を形成する材料を含み、液状体100Bは、発光層617B(青
色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体100R、100G、100Bは、
色要素領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。
【0088】
次に、図9のステップS18では、図10(e)に示すように、乾燥・成膜工程である
。ここでは、吐出描画された各液状体100R、100G、100Bの溶媒成分を乾燥さ
せて除去し、各色要素領域Aの正孔注入/輸送層617aに各発光層617R、617G
、617Bが積層されるように成膜化する。各液状体100R、100G、100Bが吐
出描画された素子基板601の乾燥方法としては、溶媒の蒸発速度をほぼ一定とすること
が可能な、減圧乾燥法が好ましい。
【0089】
最後に、図9のステップS19では、図10(f)に示すように、陰極形成工程である
。ここでは、素子基板601の各発光層617R、617G、617Bと上層バンク61
8bの表面とを覆うように陰極604を形成する。陰極604の材料としては、Ca、B
a、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層
に近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大き
いAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極604の上にSiO2、SiN等の保
護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極604の酸化を防止することができる。
陰極604の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に発
光層の熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0090】
以上のような第2実施形態では、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる他に以下
の効果が得られる。
【0091】
(6)有機EL表示装置600が、高精度な描画方法で製造されているので、品質が良
好で、表示性能の向上した電気光学装置としての有機EL表示装置600を提供できる。
【0092】
次に、本実施形態で説明した描画方法を用いて製造された液晶表示装置、あるいは有機
EL表示装置を搭載した電子機器について説明する。
【0093】
図11は、電子機器としての携帯型情報処理装置を示す概略斜視図である。
【0094】
図11に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯型情報処理装置700は、入
力用のキーボード702を有する情報処理装置本体701と、表示部703とを備えてい
る。表示部703には、液晶表示装置500あるいは有機EL表示装置600が搭載され
ている。
【0095】
携帯型情報処理装置700は、液晶表示装置500、あるいは有機EL表示装置600
を搭載しているため、色ムラ等の表示不具合の少ない、高い表示品質で文字や画像等の情
報を確認することが可能な電子機器としての携帯型情報処理装置700を提供することが
できる。
【0096】
以上、好ましい実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に
限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含み、本発明の目的を達成できる範
囲で、他のいずれの具体的な構造および形状に設定できる。
【0097】
(変形例1)前述の第1実施形態および第2実施形態で、ワークWとしてガラス基板を
用いたが、これに限らない。例えば温度変化により熱膨張や変形を生じる樹脂製のフィル
ム状テープ基板などにも適用可能である。このようにしても、本発明の描画方法を適用で
きる上に、前述の第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(変形例2)前述の第1実施形態および第2実施形態で、ワーク認識カメラ15を1台
使用したが、これに限らない。例えば複数台(2台以上)使用してもよい。このようにす
れば、前述の第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が得られる上に、アライメン
トマーク91、93の位置を短時間で測定できることになるから、測定効率を向上させる
ことができるので、効率的である。
【0099】
(変形例3)前述の第1実施形態および第2実施形態で、液晶表示装置500、あるい
は有機EL表示装置600を電子機器としての携帯型情報処理装置700に搭載したが、
これに限らない。例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital A
ssistants)と呼ばれる携帯型情報機器や携帯端末機器、卓上型パーソナルコン
ピュータ、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデオカメラ、液晶テレビ、
ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、
ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、P
OS端末機等々の画像表示手段として好適に用いることができる。このようにすれば、液
晶表示装置500、あるいは有機EL表示装置600の用途は広がり、いろいろな電子機
器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第1実施形態における液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は、概略斜視図、(b)は、ノズルの配置状態を示す平面図。
【図3】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図4】基板の伸縮度合いを説明するための図。
【図5】液晶表示装置の構造を示す概略斜視図。
【図6】液晶表示装置の製造方法を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(e)は、液晶表示装置の製造方法を示す概略断面図。
【図8】第2実施形態における有機EL表示装置の構造を示す概略断面図。
【図9】有機EL表示装置の製造方法を示すフローチャート。
【図10】(a)〜(f)は、有機EL表示装置の製造方法を示す概略断面図。
【図11】電子機器としての携帯型情報処理装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0101】
1…液滴吐出装置、5…キャリッジユニット、51…キャリッジ、52…液滴吐出ヘッ
ド、80R、80G、80B…機能液としての液状体、91、93…アライメントマーク
としての特徴点、100R、100G、100B…機能液としての液状体、500…電気
光学装置としての液晶表示装置、600…電気光学装置としての有機EL表示装置、70
0…電子機器としての携帯型情報処理装置、A…描画領域としての色素領域、H1、H2
…間隔、h…間隔、δ…伸縮率、W、W1、W2…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジユニットに搭載された液滴吐出ヘッドが有するノズルから機能液を選択的に
吐出することにより、複数の特徴点を持つ基板上に描画を行う描画方法であって、
前記液滴吐出ヘッドと、前記基板とを相対的に移動させる移動工程と、
前記特徴点の配置位置を検出して、前記特徴点の間隔を測定する工程と、
前記測定する工程で測定された前記間隔と、設計値情報とを比較して前記基板の伸縮率
を確認する工程と、
前記伸縮率に基づいて前記キャリッジユニットの位置を調整する工程と、
描画をする描画工程と、
を備えていることを特徴とする描画方法。
【請求項2】
請求項1に記載の描画方法において、
前記キャリッジユニットは複数配置されており、前記キャリッジユニットの位置を調整
する工程では、前記伸縮率に基づき前記各キャリッジユニットの間隔を按分してから、前
記各キャリッジユニットの位置を調整することを特徴とする描画方法。
【請求項3】
請求項1に記載の描画方法において、
前記基板は、隔壁により区画された複数の区画領域を有し、前記キャリッジユニットの
位置を調整する工程では、予め決めておいた設計情報に基づく前記区画領域の幅を選択す
ることを特徴とする描画方法。
【請求項4】
電気光学装置の製造方法であって、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の描画方
法で形成されたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学装置の製造方法で製造されたことを特徴とする電気光学装置

【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−130605(P2007−130605A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327926(P2005−327926)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】