説明

揮発性有機化合物の低減された量とともに増大したオープンタイムを示す水性コーティング組成物

有効な可塑剤として作用することに加え、ジエチレンおよびジプロピレングリコールのジベンゾエートは、少なくとも1種の対応するモノエステルとの特定濃度範囲内での組合せで、水性ポリマー組成物によって示されるオープンタイムを延ばすこれらの能力において特異であり、従って、より揮発性の有機化合物(VOC),例えばジオール、グリコールならびに一価および二価アルコールのエステル、ならびに一価アルコールのベンゾエート(これらはこれらのポリマー組成物用の融合剤として典型的に用いられる)の少なくとも一部を置き換えることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は継続出願であり、そして米国特許出願第12/061,836号(2008年4月3日出願)(米国特許出願第11/554,301号(2006年10月30日出願)の一部継続出願)(その内容の全部をこの参照により本明細書に組入れる)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は水性コーティング組成物に関する。より特別には、本発明は、これらのコーティング組成物の、比較的低レベルの揮発性有機化合物(VOC)での、VOCの少なくとも一部をより少ない揮発性の可塑剤/融合剤で該組成物の他の所望の特性への不利な影響なく置き換えることによる、増大したオープンタイムに関する。これは、グリコールのモノ−およびジベンゾエートの組合せ(両者可塑剤として)ならびにこれらの組成物において融合剤として従来使用されるより揮発性の有機化合物に対する一部置換を用いることによって実現される。組成物としては、これらに限定するものではないが、コーティング(塗料等)、自己支持性フィルム、接着剤、シーラント、インク、オーバープリントワニスおよびコークが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
背景
例えばコーティング、インク、接着剤、コークおよびシーラントとして採用される水性ポリマー組成物は、典型的には、所望の特性を実現するために、揮発性有機化合物(VOC),例えばアルコール、グリコール、エステルおよびグリコールエーテルの存在を必要とする。これらの特性としては、これらに限定するものではないが、オープンタイム、フィルム形成性ポリマーの粒子がポリマーのガラス転移温度未満で融合する能力、凍結および融解の繰返しサイクル中の組成物の耐ゲル化性、および接着、レベリング、ツール・アビリティ、ウェットエッジ、光沢発現、ならびにスクラビングおよび有機溶媒に対する耐性(該組成物を用いて適用されるフィルムおよびコーティングによって示されるもの)が挙げられる。
【0004】
近年、幾つかの国および地域の政府は、揮発性有機化合物(VOC)(コーティング、インク、シーラント、接着剤および関連用途としての使用を意図する組成物中に存在する可能性がある)の量に関する制限を発令してきた。これらの制限により、これらの組成物の製造者および考案者による努力が、水性および非水性の両者のポリマー組成物中のVOCの濃度を、これらの化合物によって与えられる有益な特性への不利な影響なく、排除または少なくとも低減する手法を探すために始められている。
【0005】
多様な有機ポリマー組成物用の可塑剤としての安息香酸エステルの使用が周知である。二価アルコールのジベンゾエートの単独または対応するモノベンゾエートとの組合せの使用を開示する特許としては、米国特許第6,583,207号および第5,676,742号が挙げられる。グリコールおよび二価アルコールのモノ−およびジエステルの追加的な液体ブレンドは、米国特許第7,056,966号に開示されている。ベンゾエートブレンド物の、コーティング組成物中の融合剤としての有効性も、モノ−/ジベンゾエートブレンド物の、VOCの一部を置換する能力も、記載されていない。従来の先行技術の融合剤は、典型的には、比較的揮発性の液体有機化合物であり、これらに限定するものではないが、二価アルコール、グリコール、オリゴマー性グリコール、該アルコールおよびグリコールのエステル、ならびにエーテルが挙げられる。好ましい先行技術の融合剤としては、脂肪族ジオールのエステル,例えばTexanol(登録商標)およびTexanol(登録商標)ジイソブチレートが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約
本発明は、可塑剤/融合剤を含む低VOC水性コーティング組成物を提供する。可塑剤/融合剤は、少なくともコーティング組成物中のVOCに対する一部置換に利用できるベンゾエートエステルの組合せを含む。VOCの可塑剤/融合剤での置換は、低減されたVOCを有する組成物を与えるのに有効であり、そして、VOCの可塑剤/融合剤での置換なしで形成される組成物から形成されるコーティングバインダーと少なくとも同等またはこれより良好な特性を有するコーティングバインダーを与えるのに有効である。該水性コーティング組成物は、塗料、コーク、インク、自己支持性フィルム、接着剤、オーバープリントワニスおよびシーラントにおいて使用できる。
【0007】
本明細書で記載する水性コーティング組成物は、延長されたオープンタイムおよび低減されたVOC濃度を示す。該水性組成物は、
A.少なくとも1種のフィルム形成性有機ポリマー;
B.該ポリマー用の可塑剤/融合剤であって、
i)式PhC(O)(OR1qO(O)CPhの少なくとも1種のジエステル;
ii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で6〜99質量パーセントの、式PhC(O)(OR2rOH(式中、R1およびR2は個別に、2個または3個の炭素原子を含有するアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つであり、Phは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、そしてqおよびrは個別に、1〜6の整数(1および6を含めて)である)を有する少なくとも1種のモノエステル;
iii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で0〜10質量パーセントの、安息香酸または対応するアルキル安息香酸;
を含む可塑剤/融合剤;
C.少なくとも1種の水混和性の揮発性有機化合物(VOC)であって、二価アルコール、グリコール、オリゴマー性グリコール、該アルコールおよびグリコールのエステル、ならびにエーテルからなる群から選択され、組成物が1リットル当たり約250グラム未満のVOCを有する、揮発性有機化合物(VOC);ならびに
D.水;
を含む。
【0008】
可塑剤/融合剤の濃度は、該可塑剤/融合剤の不存在下で既定レベルのオープンタイムを実現する場合に必要であるVOCの濃度を低減するのに十分である。
【0009】
別の側面において、低VOC水性ポリマー組成物の製造方法を提供する。該方法は、
少なくとも1種のフィルム形成性有機ポリマー;
該ポリマー用の可塑剤/融合剤であって
i)式PhC(O)(OR1qO(O)CPhの少なくとも1種のジエステル;
ii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で6〜99質量パーセントの、式PhC(O)(OR2rOH(式中、R1およびR2は個別に、2個または3個の炭素原子を含有するアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つであり、Phは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、そしてqおよびrは個別に、1〜6の整数(1および6を含めて)である)を有する少なくとも1種のモノエステル;
iii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で0〜10質量パーセントの、安息香酸または対応するアルキル安息香酸;
を含む可塑剤/融合剤;
少なくとも1種の水混和性の揮発性有機化合物(VOC)であって、二価アルコール、グリコール、オリゴマー性グリコール、該アルコールおよびグリコールのエステル、ならびにエーテルからなる群から選択され、組成物が1リットル当たり約250グラム未満のVOCを有する、揮発性有機化合物(VOC);ならびに水;
をブレンドすることを含む。
該可塑剤/融合剤の濃度は、該可塑剤/融合剤の不存在下で既定レベルのオープンタイムを実現する場合に必要であるVOCの濃度を低減するのに十分である。
【0010】
別の側面において、本明細書で記載する水性コーティングから形成されるコーティングバインダーを提供する。水性コーティングは、少なくとも一部のVOCが可塑剤/融合剤で置換されていない水性コーティングから形成されるコーティングバインダーと同じ改善された特性を有するコーティングバインダーを提供するのに有効である。同じまたは改善された特性としては、増大したオープンタイム、スクラビング耐性、溶媒および塩霧に対する耐性、湿潤能力(wet-ability)、ウェットエッジ(wet-edge)、レベリング、光沢発現、接着、ツール・アビリティ(tool-ability)、および耐ゲル化性(凍結−融解サイクル中の組成物の)が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、有効な融合剤および可塑剤であることに加え、1)モノマー性またはオリゴマー性のエチレン、エチレンオキサイド、プロピレンおよび/またはプロピレンオキサイドのグリコールの1種以上のジベンゾエート、2)6〜99質量パーセント(モノ−およびジベンゾエートの総質量基準)の、少なくとも1種の対応するモノベンゾエート、ならびに3)10質量パーセント以下の未反応安息香酸の組合せが、水性ポリマー組成物のオープンタイムを延長することによって、別の方法でこれらの組合せの不存在下でこの時間のオープンタイムを実現する場合に必要である揮発性有機化合物のレベルの低減を可能にするという発見に基づく。6〜99質量パーセント、好ましくは6〜30質量パーセントの範囲のモノベンゾエートを用い、所望のコーティング特性,例えばスクラビングおよび溶媒に対する耐性の観測されるレベルは、より高濃度のより揮発性の融合剤およびオープンタイム延長剤(先行技術のもの),例えばアルキルベンゾエート、を含有する組成物を用いて調製されるコーティングと少なくとも同等である。重要な側面において、可塑剤/融合剤は、水性ポリマー組成物を与える量のVOCを、0.1〜250グラム/リットルのVOCで置換する。一側面において、水性ポリマー組成物は、約250g未満毎/リットルのVOCを含み、別の側面では約200g未満毎リットル/VOC、別の側面では約175g未満毎リットル/VOC、別の側面では約150g未満毎リットル/VOC、別の側面では約125g未満毎リットル/VOC、別の側面では約100g未満毎リットル/VOC、別の側面では約75g未満毎リットル/VOC、別の側面では約50g未満毎リットル/VOC、別の側面では約25g未満毎リットル/VOC、および別の側面では約10g未満毎リットル/VOCを含む。
【0012】
水性ポリマー組成物は、VOCが可塑剤/融合剤で置換されていない水性コーティング組成物から形成されるコーティングバインダーと比べて、スクラビング耐性、溶媒および塩霧に対する耐性、湿潤能力、光沢発現、接着、ならびにツール・アビリティ等の同じまたは改善された特性を有するコーティングバインダーを与えるために基材に適用できる。本明細書で用いるコーティングバインダーは、溶媒が蒸発した後のフィルムのポリマー部分を意味する。
【0013】
フィルム形成性有機ポリマー
本発明の水性組成物中のフィルム形成性含有成分として使用するのに好適な有機ポリマーとしては、これらに限定するものではないが、アクリル酸およびメタクリル酸およびそのエステルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルとスチレン、ビニルモノマーおよびエチレンとのコポリマー;酢酸ビニル−エチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、エポキシドポリマー、エポキシ変性アクリルポリマー、ならびに上記ポリマーの2種以上の混合物が挙げられる。重要な側面において、フィルム形成性有機ポリマーは、アクリル、ビニル/アクリルコポリマー、スチレン化アクリルおよび酢酸ビニル/エチレンコポリマーからなる群から選択される。
【0014】
可塑剤/融合剤
安息香酸エステルの本発明の組合せは、一般式PhC(O)(OR1qO(O)CPhの少なくとも1種のジエステルと、一般式PhC(O)(OR2rOH(式中、R1およびR2は個別に、2個および3個の炭素原子を含有するアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つであり、Phは、フェニルまたはアルキル置換フェニルであり、そしてqおよびrは個別に、1〜6の整数(1および6を含めて)である)の少なくとも1種のモノベンゾエートとを含む。1種または複数種のモノベンゾエートは、エステルの組合せの6〜99質量パーセント、好ましくは6〜30質量パーセントを構成し、そして未反応の安息香酸の濃度は、10質量パーセント未満である。一側面において、R1およびR2は個別に、エチレンおよびイソプロピレンの少なくとも1つであり、そして該アルキルフェニルはトリルである。
【0015】
本発明のベンゾエート混合物(可塑剤/融合剤)の濃度は、典型的には約1〜200質量パーセント(組成物中のフィルム形成性ポリマーの質量基準)である。別の側面において、可塑剤/融合剤の濃度は、約1〜約10質量パーセント、別の側面において約10〜約20質量パーセント、別の側面において約20〜約30質量パーセント、別の側面において約30〜約50質量パーセント、別の側面において約50〜約100質量パーセント、および別の側面において約100〜約200質量パーセント(全て、組成物中のフィルム形成性ポリマーの質量基準)である。これらの混合物は、所望レベルのオープンタイム、融合およびフィルム特性を実現するために従来用いられているより揮発性の液体有機化合物の少なくとも一部を置換する。
【0016】
オープンタイムを延長し、VOCのレベルを低減し、そして融合剤として機能することに加え、本発明の好ましいベンゾエートエステルの組合せは、合計6〜30質量パーセントのモノベンゾエートおよび10質量パーセント未満の安息香酸を含有し、ポリマー組成物および/または該組成物を用いて適用されるコーティングの他の特性を改善する。これらの特性としては、これらに限定するものではないが、凍結−融解サイクル中のポリマー組成物の耐ゲル化性、ならびに、適用されるコーティングの、スクラビング、溶媒および塩霧に対する耐性が挙げられる。上記特性およびそれらを評価するための試験手順の定義は、コーティング組成物の配合の分野における当業者に公知である。
【0017】
本発明の水性ポリマー組成物の最終用途としては、これらに限定するものではないが、コーティング材料,例えば塗料および工業用コーティング、接着剤、シーラント、オーバープリントワニス、コーク、インク、および自己支持性フィルムが挙げられる。
【0018】
以下の例は、本発明のベンゾエートの組合せを含有する好ましいコーティング組成物を説明する。例は、特許請求の範囲によって包含されるベンゾエートの組合せおよびフィルム形成性組成物の範囲の限定と解釈すべきではない。特記がない限り、例中の全ての部およびパーセントは質量基準であり、そして特性は25℃で測定した。
【0019】
例1
本発明の2つの安息香酸エステルの組合せ(1および2とする)、および1つの比較目的のもの(1Cとする)を、安息香酸をジエチレングリコールおよび/またはジプロピレングリコールと、表1に示すモル比で、0.03質量パーセントの炭酸ジルコニウムをエステル化触媒として用いて反応させることによって調製した。これらの組合せの組成を、質量パーセント単位で、表1に列挙する。
【0020】
【表1】

【0021】
a=ジエチレングリコールモノベンゾエートとジプロピレングリコールモノベンゾエートとの混合物
b=ジエチレングリコールモノベンゾエート
ベンゾエート組成物1Cは、Texanol(登録商標)との組合せでのみ評価した(対照として)。
【0022】
比較の目的で、以下の融合剤もまた評価した:
Texanol(登録商標);Texanol(登録商標)イソブチレート;およびTexanol(登録商標)とベンゾエートの組合せ(表1中で1Cと特定)との1:2質量比ブレンド物。
【0023】
4つの塗料組成物(以下、A,B,CおよびDという)を、表2の上部の含有成分をペイントミルにて混合することによって調製した。得られた材料(表中で「グラインド物」という)を、次いで、表の下部(「グラインド物に添加」より下)の含有成分と組合せて、最終塗料を形成した。表2中に列挙する全含有成分の濃度は、質量部単位である。
【0024】
【表2】

【0025】
ベンゾエートの組合せ1,2および1C/Texanol(登録商標)混合物を融合剤として、表2中の4つの塗料配合物の各々の別個の部分中にブレンドした。融合剤の濃度(質量部単位)を、表4中に、最終組成物のVOCレベル(グラム毎リットル単位)とともに列挙する。
【0026】
表2および後続の表(配合のもの)において列挙する全含有成分は、以下の表3中で特定する。
【0027】
【表3】

【0028】
表2中に記載される配合物は、スクラブ耐性について、ASTM試験方法 D 2486に記載される手順に従って評価した。
【0029】
融合剤の濃度(質量部基準)、配合物のVOCおよび評価結果を表4中に記録する。
【0030】
【表4】

【0031】
NE=配合物は評価していない
DPG=ジプロピレングリコール
【0032】
組成物A,BおよびC(本発明の融合剤1を含有する)によって示される、TexanolおよびTexanolイソブチレートを含有する同じ組成物に対する、より高いスクラブ耐性は、ベンゾエートのより低いVOCレベルに基づき予期しないものである。
【0033】
融合剤2のモノベンゾエート濃度は、好ましい範囲である、全部のベンゾエートの組合せの6〜30質量パーセントの外側である。融合剤1(12質量パーセントのモノベンゾエートを含有する)はこの範囲の内側である。融合剤1は、融合剤2よりも、4つの配合物のうち2つで、より高いスクラブ耐性を示した。
【0034】
コーティング組成物A(4種の融合剤の各々を含有)の凍結および融解のサイクルに対する耐性を、ASTM試験方法 D 2243を用いて評価した。融合剤1を含有するサンプルは3サイクル耐え、Texanolを含有するサンプル(僅か1サイクル後で不合格となった)と比べて優れた耐性を示した。
【0035】
組成物CおよびDのサンプルは、全て1凍結/融解サイクル後に不合格となり、Texanolに対する本発明のベンゾエート組成物についてと同等の性能を示した。
【0036】
組成物Cのサンプルは、ブロッキング耐性について、ASTM試験方法 D 4946を用いて評価した。融合剤1を含有するサンプルは、対照組成物に対して同等の性能を示した。
【0037】
例2
この例は、塩霧およびメチルエチルケトンに対してより高い耐性を示し(高光沢塗料によって示される)、以後組成物Dという。市販製品を先の表3で特定する。
【0038】
塗料は、下記含有成分を均質にペイントミルでブレンドすることによって調製した:50部の水;7.9部のTamol(登録商標);2.0部のSurfynol(登録商標)CT−111;1.0部のDrew Plus(登録商標)L−493;2.0部の28%アンモニア水性溶液;および220.0部のTi−Pure R−706。得られた混合物を530部のAvanse MV−100;132部の水;7.0部の28%アンモニア水性溶液;18.5部のプロピレングリコールおよび下記融合剤の1種:融合剤1−19.4部(例1より);融合剤2−15.2部の1:1質量比のTexanol(登録商標)およびDPnBの混合物;とブレンドした。
【0039】
塗料組成物の各々を、適切な基材に適用して、特定時間乾燥させ、その後、得られるコーティングを、耐錆性について400時間塩霧暴露後に(ASTM試験B117を用いて)、および耐化学性を、メチルエチルケトンで、ASTM試験D4752に記載される手順を用いて摩擦することにより、評価した。
【0040】
以下の結果が観察された:
【0041】
【表5】

【0042】
この評価の結果は、ベンゾエートの組合せ1が有効な融合剤であることを示す。組合せ1(モノベンゾエート量12質量パーセントを有し、これは好ましい範囲6〜30の範囲内である)は、耐塩霧性および耐化学性の試験の両者において最高の評定を示した。
【0043】
例3
先の例において融合剤1として特定される本発明の安息香酸エステル組成物を、オープンタイムおよび耐水性について、2つの異なる塗料組成物において、Texanolとともに、3つの異なる濃度レベルで評価した。
【0044】
2つの塗料組成物のうち1つは、Rhoplex(登録商標)SG20をフィルム形成性ポリマーとして含有し、表5の上部の含有成分をペイントミルで混合することによって調製した。得られた材料(表中で「グラインド物」という)を、次いで、表の下部(「グラインド物に添加」より下)の含有成分と組合せて、最終塗料を形成した。表5中に列挙する全含有成分の濃度は、質量部単位である。
【0045】
【表6】

【0046】
1=比較の目的で評価した対照組成物
14.3質量部のTexanolまたは融合剤1のいずれかを、最終塗料中にブレンドした。最終塗料中の融合剤の濃度を列挙する。
【0047】
第2の塗料組成物(Aquamac(登録商標)440をフィルム形成性ポリマーとして含有する)を、先の段落および表2に記載したのと同じ様式で調製した。この塗料組成物の種類および含有成分を表6に列挙する。表5でのように、融合剤1およびTexanolの濃度を列挙する。
【0048】
【表7】

【0049】
1=比較の目的で評価した対照組成物
【0050】
表5および表6に列挙する全含有成分は、下記表7で特定する:
【0051】
【表8】

【0052】
組成物HおよびLは融合剤1を含んでいた。組成物E,FおよびGおよびI,JおよびKはTexanolを含んでおり、比較の目的で評価した。
【0053】
全ての組成物のオープンタイムは、これらを、3インチ幅ブラシを用いて垂直ストロークで紙基材(Lenetaから入手可能なBHチャートとして入手可能)上に適用することによって評価した。コーティングの適用直後、図形「X」を各々の塗料サンプル上に、ブラシの柄を用いて刻み、そしてタイマーを開始させた。既定時間間隔で、ブラシを再度濡らして水平ストライプを「X」に交差させて塗った。この後の、「X」の直近の塗料が新たに適用された塗料とブレンドされることができる最長の間隔を「オープンタイム」という。これらの評価によるデータを下記表8に示す。
【0054】
全ての組成物はまた、耐水性について、ボールピーンハンマー(2”×2”ゲージパッド付)を用いて評価した。ゲージを水で湿らせる。ハンマーの前後1回の引き摺りを2回摩擦と記録する。基材を露呈させる2回摩擦の数を記録する。オープンタイムおよび耐水性の評価の結果を下記表8に記録する。
【0055】
【表9】

【0056】
表8中のデータは以下を示す:
組成物EからHについて、配合物H(VOCレベルが50g/lのベンゾエート組成物を含有する)は、塗料配合物F(Texanolを含有し、VOCレベル106を示す)と同等のオープンタイムを示した。塗料配合物Hの耐水性は、同じVOCレベルを示す配合物Eのほぼ2倍であった。
【0057】
配合物IからLについて、本発明の配合物L(VOCレベル50g/lを有する)によって示されたオープンタイム180秒は、対照配合物I(VOCレベル60g/lを有していた)の3倍であった。オープンタイム255秒を実現するために、VOCレベル188g/l(配合物J)が必要であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.少なくとも1種のフィルム形成性有機ポリマー;
B.該ポリマー用の可塑剤/融合剤であって、
i)式PhC(O)(OR1qO(O)CPhの少なくとも1種のジエステル;
ii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で6〜99質量パーセントの、式PhC(O)(OR2rOH(式中、R1およびR2は個別に、2個または3個の炭素原子を含有するアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つであり、Phは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、そしてqおよびrは個別に、1〜6の整数(1および6を含めて)である)を有する少なくとも1種のモノエステル;
iii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で0〜10質量パーセントの、安息香酸または対応するアルキル安息香酸;
を含む可塑剤/融合剤;
C.少なくとも1種の水混和性の揮発性有機化合物(VOC)であって、二価アルコール、グリコール、オリゴマー性グリコール、該アルコールおよびグリコールのエステル、ならびにエーテルからなる群から選択され、組成物が1リットル当たり約250グラム未満のVOCを有する、揮発性有機化合物(VOC);ならびに
D.水;
を含む水性コーティング組成物であって、該可塑剤/融合剤の濃度が、該可塑剤/融合剤の不存在下で既定レベルのオープンタイムを実現する場合に必要であるVOCの濃度を低減するのに十分であり、そして、可塑剤/融合剤が、該組成物から形成されるフィルムの特性を改善するために有効である、組成物。
【請求項2】
該組成物から形成されるフィルムが、VOCを該可塑剤/融合剤で置き換えていない組成物から形成されるフィルムと比べて、該組成物の、増大したオープンタイム、スクラビング耐性、溶媒および塩霧に対する耐性、湿潤能力、ウェットエッジ、レベリング、光沢発現、接着、ツール・アビリティ、および耐ゲル化性からなる群から選択される改善された特性を、凍結−融解サイクル中に有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該可塑剤/融合剤が、該フィルム形成性有機ポリマーの総質量の1〜200パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該フィルム形成性有機ポリマーが、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルとスチレン、ビニルモノマーおよびエチレンとのコポリマー;酢酸ビニル−エチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、エポキシドポリマー、エポキシ変性アクリルポリマー、ならびにこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
フィルム形成性有機ポリマーが、アクリル、ビニル/アクリルコポリマー、スチレン化アクリルおよび酢酸ビニル/エチレンコポリマーからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
1およびR2が個別に、エチレンおよびイソプロピレンの少なくとも1つであり、そして該アルキルフェニルがトリルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該モノエステルが、該可塑剤/融合剤の6〜30質量パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該組成物が、コーティング、塗料、インク、オーバープリントワニス、フィルム、接着剤、コークまたはシーラントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
低VOC水性ポリマー組成物を製造する方法であって、
少なくとも1種のフィルム形成性有機ポリマー;
該ポリマー用の可塑剤/融合剤であって
i)式PhC(O)(OR1qO(O)CPhの少なくとも1種のジエステル;
ii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で6〜99質量パーセントの、式PhC(O)(OR2rOH(式中、R1およびR2は個別に、2個または3個の炭素原子を含有するアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つであり、Phは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、そしてqおよびrは個別に、1〜6の整数(1および6を含めて)である)を有する少なくとも1種のモノエステル;
iii)該可塑剤/融合剤の総質量基準で0〜10質量パーセントの、安息香酸または対応するアルキル安息香酸;
を含む可塑剤/融合剤;
少なくとも1種の水混和性の揮発性有機化合物(VOC)であって、二価アルコール、グリコール、オリゴマー性グリコール、該アルコールおよびグリコールのエステル、ならびにエーテルからなる群から選択され、組成物が1リットル当たり約250グラム未満のVOCを有する、揮発性有機化合物(VOC);ならびに
水;
をブレンドすることを含み、該可塑剤/融合剤の濃度が、該可塑剤/融合剤の不存在下で既定レベルのオープンタイムを実現する場合に必要であるVOCの濃度を低減するのに十分であり、そして、可塑剤/融合剤が、該組成物から形成されるフィルムの特性を改善するために有効である、方法。
【請求項10】
該組成物から形成されるフィルムが、VOCを該可塑剤/融合剤で置き換えていない組成物から形成されるフィルムと比べて、該組成物の、増大したオープンタイム、スクラビング耐性、溶媒および塩霧に対する耐性、湿潤能力、ウェットエッジ、レベリング、光沢発現、接着、ツール・アビリティ、および耐ゲル化性からなる群から選択される改善された特性を、凍結−融解サイクル中に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該可塑剤/融合剤が、該フィルム形成性有機ポリマーの総質量の1〜200パーセントである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該フィルム形成性有機ポリマーが、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルとスチレン、ビニルモノマーおよびエチレンとのコポリマー;酢酸ビニル−エチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、エポキシドポリマー、エポキシ変性アクリルポリマー、ならびにこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
フィルム形成性有機ポリマーが、アクリル、ビニル/アクリルコポリマー、スチレン化アクリルおよび酢酸ビニル/エチレンコポリマーからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1およびR2が個別に、エチレンおよびイソプロピレンの少なくとも1つであり、そして該アルキルフェニルがトリルである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
該モノエステルが、該可塑剤/融合剤の6〜30質量パーセントである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
水性コーティング組成物から形成されるコーティングバインダーであって、該水性コーティング組成物が:
A.少なくとも1種のフィルム形成性有機ポリマー;
B.該ポリマー用の可塑剤/融合剤であって、
1)式PhC(O)(OR1qO(O)CPhの少なくとも1種のジエステル;
2)該可塑剤/融合剤の総質量基準で6〜99質量パーセントの、式PhC(O)(OR2rOH(式中、R1およびR2は個別に、2個または3個の炭素原子を含有するアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つであり、Phは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、そしてqおよびrは個別に、1〜6の整数(1および6を含めて)である)を有する少なくとも1種のモノエステル;
3)該可塑剤/融合剤の総質量基準で0〜10質量パーセントの、安息香酸または対応するアルキル安息香酸;
を含む可塑剤/融合剤;
C.少なくとも1種の水混和性の揮発性有機化合物(VOC)であって、二価アルコール、グリコール、オリゴマー性グリコール、該アルコールおよびグリコールのエステル、ならびにエーテルからなる群から選択され、組成物が1リットル当たり約250グラム未満のVOCを有する、揮発性有機化合物(VOC);ならびに
D.水;
を含み、
該可塑剤/融合剤の濃度が、該可塑剤/融合剤の不存在下で既定レベルのオープンタイムを実現する場合に必要であるVOCの濃度を低減するのに十分であり、そして、可塑剤/融合剤が該組成物から形成されるフィルムの特性を改善するために有効であり;
該水性コーティング組成物が、VOCを該可塑剤/融合剤で置き換えていない水性コーティング組成物から形成されるコーティングバインダーと比べて、スクラビング耐性、溶媒および塩霧に対する耐性、湿潤能力、光沢発現、接着、およびツール・アビリティからなる群から選択される改善された特性を有するコーティングバインダーを与えるのに有効である、コーティングバインダー。
【請求項17】
該可塑剤/融合剤が、該フィルム形成性有機ポリマーの総質量の1〜200パーセントである、請求項16に記載のコーティングバインダー。
【請求項18】
該フィルム形成性有機ポリマーが、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステルとスチレン、ビニルモノマーおよびエチレンとのコポリマー;酢酸ビニル−エチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、エポキシドポリマー、エポキシ変性アクリルポリマー、ならびにこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項16に記載のコーティングバインダー。
【請求項19】
1およびR2が個別に、エチレンおよびイソプロピレンの少なくとも1つであり、そして該アルキルフェニルがトリルである、請求項16に記載のコーティングバインダー。
【請求項20】
該モノエステルが、該可塑剤/融合剤の6〜30質量パーセントである、請求項16に記載のコーティングバインダー。

【公表番号】特表2011−516667(P2011−516667A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503142(P2011−503142)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/039161
【国際公開番号】WO2009/124126
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510153939)ジェノビク スペシャルティーズ ホールディングス コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】