説明

揮発性物質放出容器

【課題】含浸棒と含浸部材とを遮る蓋体を設け、蓋体を除去する作業の途中で含浸部材の抜け落ちを防止する係止片を有し、かつ簡易に製造できる揮発性物質放出容器を提案する。
【解決手段】容器体2の胴部4から起立する口頸部6に、胴部内から口頸部上方へ突出する含浸棒20を挿設させ、含浸棒の上部を覆う蓋体22を口頸部に嵌合させ、胴部4側へ嵌合させた揮発窓30付きのオーバーキャップ24の頂壁28から複数の取付板40を垂下し、これら取付板間の空所内に昇降自在に嵌挿した含浸部材46を、蓋体22に載置させ、さらに取付板の下部に、容器体からオーバーキャップ24を外したときに含浸部材46の脱落を防止する係止片42を付設している。この係止片は、取付板40の下端からヒンジを介して突出した鉤状の突起として成形し、この突起の先部側を、取付板の下部の止め孔を嵌着させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質放出容器、例えば消臭剤容器や芳香剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤容器などは、一般に、容器体の口頸部に、容器体胴部から口頸部上方へ延びる含浸棒を挿設するとともに、容器体の上部に揮発窓付きのオーバーキャップを嵌合し、かつ含浸棒の上端に板状の含浸部材を当接させ、含浸棒から含浸部材を介して浸入した液体が揮発するようにしている。
【0003】
しかしながら、容器として使用する前には液体が揮発しないようにする必要がある。そこで口頸部から外向きフランジを介して枠筒を起立した受皿を設け、この受皿の上面と同じ高さでオーバーキャップにスリットを穿設するとともに、枠筒の上端面に密着したシールの一端から摘み片をスリットを介して外方へ突出し、かつシールの上に含浸部材を載置し、シールの除去により含浸棒と接するようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−276831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが特許文献1の容器では、受皿にシールを貼着するとともにその一端側の摘み片がスリットを挿通するようにセットしなければならず、その組み付けが容易ではない。
【0006】
また上記容器では、例えばシールを剥離したときの弾みで含浸部材が傾いて受皿内に落ちると、含浸部材の下面と含浸棒の上端とが適切に接触しない可能性がある。
【0007】
本発明の第1の目的は、含浸棒と含浸部材とを遮る蓋体を設け、この蓋体を除去する作業の途中で含浸部材の抜け落ちを防止する係止片を有し、かつ簡易に製造できる揮発性物質放出容器を提案することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、含浸部材が下降して含浸棒に当接するタイプの揮発性物質放出容器において含浸部材と含浸棒との当接を確実にするものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段は、
容器体2の胴部4から起立する口頸部6に、胴部内から口頸部上方へ突出する含浸棒20を挿設させるとともに、含浸棒の上部を覆う蓋体22を口頸部に嵌合させ、
上記胴部4側へ嵌合させた揮発窓30付きのオーバーキャップ24の頂壁28の周辺部から複数の取付板40を垂下するとともに、これら取付板間の空所V内に昇降自在に嵌挿した含浸部材46を、上記蓋体22の上に載置させ、
さらに取付板の下部に、容器体からオーバーキャップ24を外したときに含浸部材46の抜け落ちを防止する係止片42を付設した揮発性物質放出容器であって、
上記係止片42は、予め取付板40と一体として、取付板の下端からヒンジ41を介して突出した、取付板の巾方向から見て鉤状の突起として成形するとともに、上記ヒンジ41を中心とする回動により、この突起の先部側を、取付板40の下部に穿設した止め孔40aを嵌着させてなる。
【0010】
本手段では、オーバーキャップ24の頂壁28から垂下した取付板40に含浸部材46を取り付け(図1参照)、オーバーキャップを外して蓋体を除去するときに取付板の係止片42が含浸部材を係止している。その係止片42は、図4の如く取付板の下端からヒンジ41を介して突出された鉤状の突起の先部を、取付板の止め孔40aに嵌着することで形成される(図3参照)。“鉤”とは、鉤カッコ“「”のように屈折した形状を指し、図示例のように当該屈折部(角部43)が鋭角のものを含む。本手段の構成によれば、下方からの各突起の突き上げにより一度に複数の突起を止め孔に嵌めることができ、便利である。
【0011】
「含浸部材」は、表面積を出来るだけ大きくするためにオーバーキャップの断面形状に対応した形状とするとよい。「取付板」は、含浸部材の昇降を案内する手段であり、相互の間隙が一定になるように垂直に設けている。「係止片」は、容器体からオーバーキャップを取り外したときに含浸部材を抜止めする手段であり、含浸部材が蓋体に載置されている状態で含浸部材を係止している必要はない。
【0012】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記複数の取付板40は、オーバーキャップ24の中心部に一面を向けて配置され、
上記係止片42は、上記ヒンジ41から上内方へ延びる支持板部42aと、支持板部の上端から止め孔40a内へ突入する係止板部42bと、係止板部の先部から止め孔40a付近の取付板部分外面に掛止する係合端部42cとで構成されている。
【0013】
本手段では、図3に示すように、係止片42を、上記含浸部材を係止するための係止板部42bと、係止板部を支える支持板部42aと、係止板部の外端を止め孔付近の取付板部分外面に掛止する係合端部42cとで形成することを提案している。
【0014】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ上記含浸部材46を、下面平坦な板状に形成し、かつオーバーキャップ24の係止片42の上面を、容器体へのオーバーキャップの嵌合状態で、含浸棒20の上端より下方に位置させている。
【0015】
本手段では、図1に示す初期状態で係止片42の上面(図示例では係止板部42bの上面)を含浸棒20の上端より下方に配置することで、図8に示すように蓋体を除去して含浸部材46を下降させたときに含浸部材の下面に含浸棒20の先端が確実に突き当たるようにしている。
【0016】
第4の手段は、第1の手段から3の手段のいずれかを有し、かつ上記オーバーキャップ24の頂壁28中央部に含浸部材46を下方へ押し込む付勢手段32を形成している。
【0017】
本手段では、オーバーキャップの頂壁に含浸部材を下方へ押し下げる付勢手段32を設けることで、含浸部材に対する含浸棒の突き当てをさらに確実としている。
【発明の効果】
【0018】
第1の手段に係る発明によれば、オーバーキャップの取付板40の下部に成形時にほぼ鉤状の突起の先部を取付板の止め孔40aに嵌着するから、簡易に係止片42を形成することができ、かつ含浸部材の取付も容易であり、かつパーツ数の増加も避けられる。
【0019】
第2の手段に係る発明によれば、係止片は、止め孔付近の取付板部分外面に掛止する係合端部を有するから、含浸部材46を確実に支持できる。
【0020】
第3の手段に係る発明によれば、係止片42の上面を含浸棒の上端より下方に位置させたから、含浸部材へ含浸棒を確実に突き当てることができる。
【0021】
第4の手段に係る発明によれば、付勢手段32で含浸部材46を下方へ押し込んだから、含浸部材46への含浸棒の当接をより確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る揮発性物質放出容器の正面図である。
【図2】図1容器の平面図である。
【図3】図1容器の要部の側面図である。
【図4】図1容器のオーバーキャップに含浸部材を挿入する直前の段階での図3の要部の側面図である。
【図5】図4の段階でのオーバーキャップ及び含浸部材を下方から見上げた図である。
【図6】図3の要部を含浸体が押し上げる段階を示す図である。
【図7】図1容器のオーバーキャップを外した状態を示す正面図である。
【図8】さらに蓋体を外してオーバーキャップを再嵌合した状態を示す正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る揮発性物質放出容器の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1から図8は、本発明の第1の実施形態に係る揮発性物質放出容器を示している。この揮発性物質放出容器は、容器体2と、保持具8と、含浸棒20と、蓋体22と、オーバーキャップ24と、含浸部材46とで構成されている。容器体2と保持具8と蓋体22とオーバーキャップ24とは合成樹脂で形成することができる。
【0024】
容器体2は、直筒状(図示例では楕円筒状)の胴部4から肩部を介して口頸部6を起立している。胴部の上部4aは、オーバーキャップの載置部に形成されている。
【0025】
保持具8は、上記口頸部6内面に嵌合させた固定筒10を有し、この固定筒の上端に内向きフランジ状の頂板12を付設している。この頂板12は、側外方へ延長され、この延長部分を口頸部6上面に係止している。また上記頂板の裏面からは、垂下筒14を垂設している。垂下筒の上部は短い大径筒、中間部は下端小径のテーパ状筒、垂下筒の下部は小径筒にそれぞれ形成している。そのテーパ状筒には透孔16を形成している。
【0026】
含浸棒20は、上記垂下筒14の下部(小径筒)内に嵌着させている。この含浸棒20の下端部は容器体の底部へ延びており、また含浸棒20の上端部は上記口頸部6の上端よりやや上方まで延出している。
【0027】
蓋体22は、上記含浸棒20の上端部を覆う閉塞具であり、本実施形態では容器体の口頸部6外面へ螺合させたキャップとしている。但し、蓋体の構造は適宜変更することができ、特許文献1のシールと同様に例えば口頸部の上面に貼着したフィルム片としてもよい。
【0028】
オーバーキャップ24は、図示例においては有頂の楕円筒であって、その筒壁26下端部を上記胴部の上部4aに嵌合されている。その筒壁26及び頂壁28には、複数の揮発窓30を開口している。一部の揮発窓30は、後述の係止片を含む取付板外方の筒壁部分及び取付板上方の頂壁部分に位置させており、型抜き孔を兼ねている。
【0029】
またオーバーキャップ24の頂壁28の中央部には、付勢手段32を形成している。図示例では、図2に示す如く頂壁の当該箇所に渦巻き状の切込みを穿設している。この付勢手段は、図7の如く下方へ伸びた状態で成形する。付勢手段の構造は適宜変更することができる。
【0030】
上記オーバーキャップ24の頂壁28の外周部からは、その頂壁の図形中心を囲む仮想の円に沿ってその中心に一面を向けた複数の帯板状の取付板40を垂下している。取付板の下端部よりやや上方には横長スリット状の止め孔40aを穿設する。
【0031】
上記取付板40には係止片42を一体的に形成する。この係止片42は、取付板40の下端(図示例では下端の巾方向中間部)からヒンジを介して鋭角な角部43を有する突起を突出形成し、この突起の先部を上記止め孔40aに掛止するように突起を回動することで形成する(図4、図6参照)。
【0032】
各係止片42は、図3に示すように、取付板の下端のヒンジ41から上内方へ突出する支持板部42aと、この支持板部の上端部から止め孔40a内へ突入する係止板部42bと、係止板部の先端から止め孔付近の取付板部分の外面へ掛止する係合端部42cとで構成している。
【0033】
図示例の係止片42は、図2(又は図4)に示すように全体として取付板部より巾狭に形成しているが、少なくとも止め孔に挿入される係合端部及び係止板部の先部を止め孔の横巾に対応して巾狭に形成していればよい。
【0034】
上記支持板部42aは、係止板部42bとの間に一定角度の角部43を存して、係止板部を支える役割を有する。
【0035】
上記係止板部42bは、図3に示す止め孔40a内に先端部を貫入した状態で含浸部材の係止面である水平な上面を有する。係止片は、その止め孔40a下方の取付板部分と係止板部42bと支持板部42aとが略直角三角形状をなすように組み付けられており、係止板部の上面に作用する外力に抵抗するように形成している。また取付板40は、或る程度の可撓性を有し、後述の含浸部材を取付板の空所内に取り付けるときに係止板部の内端が側外方へ変位することが可能に形成する。
【0036】
上記係合端部42cは、上記係止板部の上面への外力に抵抗できる程度の強度を有し、かつ先端側を尖鋭とすることで、係止片の回動により容易に止め孔を通り、取付板40の外面に掛止するように形成している。図示の係合端部42cは、止め孔上方の取付板部分外面に係止している。係合端部を止め孔下方の取付板部分外面へ係止するように設けた場合と比べて、係止板部上面に外力が作用したときに十分な係止力を発揮できるからである。
【0037】
含浸部材46は、一定の厚さを有する部材であり、蓋体22の上に載置され、取付板の間の空所V内に収納されている。図示の含浸部材は、円盤状であるが、容器体の平面形状に対応する楕円形状あるいはその他の形状とすることができる。
【0038】
上記含浸部材46は、例えば不織布で形成することができる。
【0039】
次に係止片をセットするための工程を説明しながら、係止片及び含浸部材の構造を開設する。係止片42形成用の突部を回転させる手段としては、例えば全部の突起を突き上げることが可能な冶具を、オーバーキャップの下方から挿入させることができる。一度の操作で全ての係止片をセットできるので、便利である。しかしながら、上記冶具に代えて、含浸部材を取付板間の空所へ挿入する際に含浸部材46が係止片形成用突起を押し上げ、回転させるようにしてもよい。
【0040】
図3〜図6には、含浸部材46を取付板間の空所V内に挿入する作業における含浸部材と係止片との関係を描いている。
【0041】
図4は、含浸部材46が係止片42の下側に接している状態を取付板の巾方向から見た図、図5は、図4と同じ状態を下方から見た図である。図5から判るように全ての係止片用突片の角部43が平面視円形の含浸部材46の外縁部と当接する位置に配置されている。
【0042】
図6は、含浸部材46が係止片42と同じ高さにある状態を示している。この状態からさらに含浸部材を上昇させると、支持板部42aは上内方へ傾斜し、係合端部42c及び係止板部42bの先部が止め孔内へ押込まれる。
【0043】
上記構成によれば、オーバーキャップ内に組み込まれた含浸部材46は、図3に示すように状態で蓋体22と付勢手段32との間に挟持され、確実に保持される。
【0044】
本願容器を使用するときには、図7のようにカバーキャップ24を容器体2から外す。このとき含浸部材46は付勢手段32によって下方へ押されてより取付板に沿って下降し、係止片42により係止する。この状態で蓋体22を外し、再びオーバーキャップ24を容器体2に嵌合する。そうすると、図8に示すように含浸部材46は、付勢手段32と含浸棒20との間に挟持され、含浸棒から含浸部材46を介して容器体内の液体が吸い上げられ、揮発性成分が放出される。
【0045】
図9は、本発明の第2実施形態に係る揮発性物質放出容器を示している。本実施形態は、オーバーキャップ24の頂壁28の付勢手段32の構成を変形したものである。その他の構成は同じであるので、説明を省略する。
【0046】
具体的には、上記頂壁28の当該箇所を、円板状の押圧板32aとスプリングである渦巻き状の連結片32bとを残して除去した形状とし、かつその連結片が予め延びた形態で成形することで形成している。
【符号の説明】
【0047】
2…容器体 4…胴部 4a…上部6…口頸部 8…保持具 10…固定筒
12…頂板 14…垂下筒 16…透孔 20…含浸棒 22…蓋体
24…オーバーキャップ 26…筒壁 28…頂壁 30…揮発窓
32…付勢手段 32a…押圧板 32b…連結片
40…取付板 40a…止め孔 41…ヒンジ
42…係止片 42a…支持板部 42b…係止板部 42c…係合端部
43…角部 46…含浸部材
V…空所


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体(2)の胴部(4)から起立する口頸部(6)に、胴部内から口頸部上方へ突出する含浸棒(20)を挿設させるとともに、含浸棒の上部を覆う蓋体(22)を口頸部に嵌合させ、
上記胴部(4)側へ嵌合させた揮発窓(30)付きのオーバーキャップ(24)の頂壁(28)の周辺部から複数の取付板(40)を垂下するとともに、これら取付板間の空所(V)内に昇降自在に嵌挿した含浸部材(46)を、上記蓋体(22)の上に載置させ、
さらに取付板の下部に、容器体からオーバーキャップ(24)を外したときに含浸部材(46)の抜け落ちを防止する係止片(42)を付設した揮発性物質放出容器であって、
上記係止片(42)は、予め取付板(40)と一体として、取付板の下端からヒンジ(41)を介して突出した、取付板の巾方向から見て鉤状の突起として成形するとともに、上記ヒンジ(41)を中心とする回動により、この突起の先部側を、取付板(40)の下部に穿設した止め孔(40a)を嵌着させてなることを特徴とする、揮発性物質放出容器。
【請求項2】
上記複数の取付板(40)は、オーバーキャップ(24)の中心部に一面を向けて配置され、
上記係止片(42)は、上記ヒンジ(41)から上内方へ延びる支持板部(42a)と、支持板部の上端から止め孔(40a)内へ突入する係止板部(42b)と、係止板部の先部から止め孔(40a)付近の取付板部分外面に掛止する係合端部(42c)とで構成されていることを特徴とする、請求項1記載の揮発性物質放出容器。
【請求項3】
上記含浸部材(46)を、下面平坦な板状に形成し、かつオーバーキャップ(24)の係止片(42)の上面を、容器体へのオーバーキャップの嵌合状態で、含浸棒(20)の上端より下方に位置させたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の揮発性物質放出容器。
【請求項4】
上記オーバーキャップ(24)の頂壁(28)中央部に含浸部材(46)を下方へ押し込む付勢手段(32)を形成したことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の揮発性物質放出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76784(P2012−76784A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222967(P2010−222967)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】