揮発成分放出ラベルおよびその製造方法
【課題】使用時まで揮発成分の放出を防止できるとともに使用中は使用感に優れ、一般的な装置で容易に製造することのできる揮発成分放出ラベルおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】揮発成分放出ラベル1は、剥離シート2側から順に、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13を有し、基材12の外周縁から所定の距離までの領域に剥離層14が形成され、基材12の剥離層14が形成されていない領域に揮発成分を含有する揮発成分保持層としての第2の粘着剤層15と、透過制御層16とが順に積層されている。また、剥離層14および透過制御層16を被覆するように第3の粘着剤層17およびカバー層18が順に積層されている。
【解決手段】揮発成分放出ラベル1は、剥離シート2側から順に、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13を有し、基材12の外周縁から所定の距離までの領域に剥離層14が形成され、基材12の剥離層14が形成されていない領域に揮発成分を含有する揮発成分保持層としての第2の粘着剤層15と、透過制御層16とが順に積層されている。また、剥離層14および透過制御層16を被覆するように第3の粘着剤層17およびカバー層18が順に積層されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物に貼付されて揮発成分を放出する揮発成分放出ラベルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫忌避成分等の揮発成分を放出するラベルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の揮発成分放出ラベルは、害虫忌避成分を含有する害虫忌避層を、害虫忌避成分の透過を制御する透過制御層と害虫忌避成分を実質的に透過しないバリア層とで挟み、バリア層に衣服や皮膚に貼付するための粘着剤層を積層した構成となっている。このような揮発成分放出ラベルは、使用時までは害虫忌避成分の放出を防止するために密閉包装体の中に保管され、屋外での活動等に際し、密閉包装体から取り出して衣服や皮膚に貼付して使用している。ここで、「ラベル」の語義は一般には情報表示体を指すものであるが、本発明においては情報表示の有無に関らず、シート状の物品を指す言葉である。
【0003】
一方で、販売促進用のうちわに揮発成分放出ラベルを貼付する場合や、香粧品の試供品として配布されるにおいのテスターに香料を含有させた揮発成分放出ラベルを貼付する場合は、大量に保管されているうちわやテスターをそれぞれ密閉包装体に入れておき、配布する際にそれぞれを密閉包装体から取り出す作業は非効率的である。そこで、密閉包装体に保管しなくても、害虫忌避層を阻止フィルムで被覆することで使用時まで揮発成分の拡散を防止する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1の揮発成分放出ラベルに阻止フィルムを積層する場合、透過制御層の上に阻止フィルムを積層し、一括して阻止フィルム、透過制御層、害虫忌避層、バリア層、および粘着剤層に切込を行って個々のラベルを作製すると、害虫忌避層、透過制御層、バリア層、及び阻止フィルムが同一の大きさで積層されているため、害虫忌避層の端部は外部に露出してしまい、微量ながら揮発成分が大気中へ放出され、長期的に保管した後では揮発成分の効力が薄れてしまう。また、このような構成のラベルが貼付された販売促進用のうちわ等を大量に保管する場合は、個々の放出量が僅かな量であっても全体量として多くなるため、保管場所での作業の支障となったり、他の保管物へのにおい移りが問題となったりする可能性がある。さらに、使用者は、阻止フィルムを剥離する前から芳香成分等のにおいを感知することができるため、阻止フィルムを剥離したときに初めてにおいを感じることによる驚きや新鮮さ等の精神的効果を得ることができない。
そこで、揮発成分を含有する部材を完全に被覆する阻止フィルムを設ける構成が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
【0005】
特許文献2では、うちわの所定位置に虫除け成分を拡散する薬剤拡散部材を設け、この薬剤拡散部材から空気中への虫除け成分の拡散を防止する阻止フィルムを被覆させた構成が記載されており、使用時に阻止フィルムを剥離するまでは虫除け成分の放出を防止することができる。
特許文献3では、粘着性を有する担持ストリップの表面に虫除け剤を浸潤させたパッドを固定し、パッドを完全に被覆するように、カバー部材が担持ストリップに粘着固定されている。担持ストリップは裏面も粘着性を有しており、この裏面に剥離材が貼り付けられた虫除け装置が開示されている。
特許文献4では、防虫剤含浸シートの防虫剤が飛散しないように、防虫剤含浸シート全体を保護被覆する保護フィルムが設けられた防虫シールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3149381号公報
【特許文献2】実開平04−22819号公報
【特許文献3】特開平02−142702号公報
【特許文献4】特開平09−40508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2では、阻止フィルムの貼付対象物はうちわに限定されるものであり、阻止フィルムはうちわに直接貼り付けられている。このため、揮発成分放出ラベルのように貼付対象物が特定されていない場合は、貼付対象物に揮発成分放出ラベルを貼付する際、揮発成分放出ラベルを完全に被覆するために、別に用意された阻止フィルムを貼付するという煩雑な作業を行わなければならない。また、阻止フィルムをラベルとは別に用意する必要があるため、非効率的である。
【0008】
特許文献3では、カバー部材を剥離した後、カバー部材を粘着固定していた担持ストリップの粘着性の面が露出するために、塵埃の付着や意図しないものへの付着が避けられないという問題がある。
特許文献4では、防虫剤含浸シート全体を被覆するために、防虫剤含浸シートの大きさが保護フィルムや基材よりも小さく形成されている。しかしながら、ラベルを製造する工程において、防虫剤含浸シートのみを異なる大きさで積層することは積層位置の微小な調整等が必要であり、大量生産に適さない。また、一般的なシール製造装置ではこのような微小な調整に対応できないため、特別な装置を新しく導入する必要があり、設備費等が多大になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、使用時まで揮発成分の放出を防止できるとともに使用中は使用感に優れ、一般的な装置で容易に製造することのできる揮発成分放出ラベルおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の揮発成分放出ラベルは、基材と、前記基材の主面の外周に沿って形成された剥離層と、前記基材の主面の前記剥離層の内側に形成された揮発成分保持層と、少なくとも前記剥離層に接着され、かつ前記揮発成分保持層を被覆可能なカバー層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、基材の主面には、基材の外周に沿って形成された剥離層の内側に揮発成分保持層が設けられていることで、基材とカバー層と剥離層とによって揮発成分保持層を封止することができる。したがって、揮発成分保持層からの揮発成分の放出を防止することができる。使用の際には、カバー層を剥離層および揮発成分保持層から剥離することで揮発成分保持層が露出するため、使用時に初めて揮発成分の放出を開始させることができる。
また、基材とカバー層とが積層された揮発成分放出ラベルであるので、このラベルをあらゆる物に貼付することで上記効果を発揮することができ、汎用性が高い。
【0012】
本発明の揮発成分放出ラベルにおいて、前記カバー層と前記剥離層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記剥離層の粘着力は、100mN/50mm以上であることが好ましい。
この構成によれば、基材の外周に沿って形成された剥離層とカバー層との粘着力が100mN/50mm以上であることで、揮発成分放出ラベルを被着体に凹凸のある面に貼り付けた場合でも、カバー層が剥がれることを防止することができる。すなわち、揮発成分の放出を確実に防止することができる。なお、カバー層と剥離層との粘着力は、150mN/50mm以上であることがより好ましく、200mN/50mm以上であることがさらに好ましい。また、カバー層と剥離層との粘着力の上限値は、5000mN/50mmであり、4000mN/50mm以下であることがより好ましく、3000mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明の揮発成分放出ラベルにおいて、前記カバー層と前記揮発成分保持層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記揮発成分保持層との粘着力は、5N/25mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、基材の外周に沿って形成された剥離層とカバー層との粘着力を大きくするために、カバー層の粘着手段として、強い粘着性を示す粘着剤を選択したような場合であっても、剥離層の内周より内側に設けられた揮発成分保持層とカバー層との粘着力が5N/25mm以下であるため、カバー層全体を容易に剥離することができる。したがって、基材側に糊残りを生じさせることなく、カバー層を剥離した後も美観を維持することができる。なお、揮発成分保持層とカバー層との粘着力は、3.5N/25mm以下であることがより好ましく、2N/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の揮発成分放出ラベルにおいて、前記揮発成分は、微生物増殖抑制成分、芳香成分、および生物忌避成分のうちいずれかであることが好ましい。
この発明では、揮発成分として微生物増殖抑制成分を用いることで、例えば、米に増殖する微生物が増殖することを抑制することができる。また、芳香成分を用いることで、例えば、においのテスターとして使用することができる。さらに、生物忌避成分を用いることで、例えば蚊などの生物を寄せ付けないため、屋外での活動に使用することができる。
【0015】
本発明の揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルの製造方法は、帯状の基材シートの主面に不連続な揮発成分保持層形成領域を画定し、この揮発成分保持層形成領域以外の領域に対して剥離層を形成する剥離処理工程と、前記基材シートの主面全体に揮発成分保持シートを接着させる揮発成分保持シート積層工程と、前記揮発成分保持層形成領域の境界線に沿って前記揮発成分保持シートに対して第1の切込を形成する第1の切込形成工程と、前記揮発成分保持層形成領域に積層された前記揮発成分保持シートと前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートとを前記第1の切込に沿って分離し、前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートを不要シートとして前記剥離層から剥離する第1の剥離工程と、前記基材シートの主面全体にカバーシートを接着させるカバーシート積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明は、基材シートの主面に不連続な揮発成分保持層形成領域を画定し、この揮発成分保持層形成領域以外の領域に対して剥離処理を施した後、基材シートの主面全体に揮発成分保持シートを接着させ、揮発成分保持層形成領域に沿って形成された第1の切込に沿って揮発成分保持シートを分離し、分離された揮発成分保持シートの不要部分を剥離して除去するものである。ここで、揮発成分保持層形成領域は、基材シートの主面において揮発成分保持層が形成される領域である。不要部分は、揮発成分保持層形成領域以外の領域の剥離層に接着されるため、第1の剥離工程における剥離を容易に行うことができる。揮発成分保持層形成領域は主面において不連続であるので、不要部分が除去されると、基材の剥離層が露出した領域に囲まれた揮発成分保持層を基材の主面に容易に形成できる。このため、主面全体にカバーシートを接着させることで、基材、カバー層、剥離層により揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルを容易に製造することができる。
また、予め揮発成分保持シートを特定形状に加工したり、この加工された揮発成分保持シートを所定の位置に配置するための位置合わせを行ったりする必要がないため、連続的に製造する場合に有利であり、大量生産に適している。また、一般的なラベル製造装置を用いて製造することができるため、新しい設備を導入する必要もなく設備費を低く抑えることができる。
【0017】
本発明の揮発成分放出ラベルの製造方法において、前記基材シートは、剥離シートに接着されており、前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートに対して、当該揮発成分放出ラベルの形状となる第2の切込を形成する第2の切込形成工程と、当該揮発成分放出ラベルとそれ以外の領域とを前記第2の切込に沿って分離し、当該揮発成分放出ラベル以外の領域となる前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートを不要シートとして前記剥離シートから剥離する第2の剥離工程と、をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、剥離シートに揮発成分放出ラベルのみが接着された状態にすることができるため、使用する際に剥離シートから揮発成分放出ラベルを剥離しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における揮発成分放出ラベルの斜視図である。
【図2】前記実施形態の揮発成分放出ラベルの断面図である。
【図3】前記実施形態の揮発成分放出ラベルを製造する第1の製造装置の概略図である。
【図4】前記実施形態の揮発成分放出ラベルを製造する第2の製造装置の概略図である。
【図5】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図6】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図7】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図8】前記実施形態において基材シートから不要部分を剥離する様子を示す斜視図である。
【図9】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図10】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
[1.揮発成分放出ラベルの構成]
図1において、本実施形態の揮発成分放出ラベル1は、生物忌避成分(揮発成分)を放出可能な平面視円形状のラベルであり、1枚の剥離シート2に複数が剥離可能に貼付されている。揮発成分放出ラベル1を使用する際には揮発成分放出ラベル1を剥離シート2から剥離して、うちわや香粧品の容器などに貼付して使用する。
【0021】
揮発成分放出ラベル1は、図2に示すように、剥離シート2側から順に、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13を有し、基材12の外周縁から所定の距離までの領域に剥離層14が形成され、基材12の剥離層14が形成されていない領域に揮発成分を含有する揮発成分保持層としての第2の粘着剤層15と、透過制御層16とが順に積層されている。また、剥離層14および透過制御層16を被覆するように第3の粘着剤層17およびカバー層18が順に積層されている。
【0022】
基材12は、主面12Bと反対側の面である裏面12Aに第1の粘着剤層11を介して剥離シート2に貼付されるとともに、主面12Bに第2の粘着剤層15および透過制御層16が印刷層13を介して積層される。基材12の外周は、第2の粘着剤層15および透過制御層16よりも大きく形成される。このことにより、基材12の主面12Bには、揮発成分保持層(第2の粘着剤層15および透過制御層16)に被覆されない剥離領域12Cがその外周に沿って存在することになり、この剥離領域12Cに剥離層14を設けることが可能となる。なお、基材12の主面12Bにおいて、揮発成分保持層が形成される領域を揮発成分保持層形成領域という。
【0023】
基材12を構成する材料として、ラベルとしての性能を損なわない程度の可とう性を有する紙や樹脂フィルム等の1種単独または2種以上を組み合わせたものが挙げられる。紙を単独で使用する場合、第2の粘着剤層15に含有されている揮発成分が紙を透過して揮散したり、第1の粘着剤層11へ浸透して予期せぬ物性変化を生じさせたりする可能性があるため、樹脂フィルムの単独又は他の材料と組み合わせたものを用いることが好ましい。樹脂フィルムの中でも単独で揮発成分の透過をさらに抑制するものとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルロース系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなどが好ましく、これらの中でもポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。これらの樹脂フィルムは、揮発成分の透過をさらに抑制するために、樹脂フィルム内部に填料等が含有されていてもよいし、金属層、紫外線(UV)硬化樹脂からなる層等がいずれかの面に積層されたものであってもよいし、プラズマ化学気相成長法(CVD)、イオン注入等による表面改質がされていてもよい。また、主面12Bには、印刷層13の密着性を上げるために印刷密着層が設けられていてもよいし、コロナ処理等の物理的な表面改質がされていてもよい。また、裏面12Aには第1の粘着剤層11の密着性を上げるために粘着剤密着層が設けられていてもよいし、コロナ処理等の物理的な表面改質がされていてもよい。これらの材料は、用途に応じて透明又は不透明のものを適宜に選択して用いることができる。
【0024】
第1の粘着剤層11は、基材12の裏面12Aに設けられ、当該揮発成分放出ラベル1を使用する際に、貼付対象物となる衣服、皮膚、うちわ等に貼付される。これらに貼付可能であればどのような粘着剤でも用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられる。第1の粘着剤層11の基材12と接していない面には剥離シート2が貼付され、この剥離シート2により、使用時まで当該第1の粘着剤層11は保護されている。
第1の粘着剤層11の粘着剤は、再剥離性の粘着剤であってもよい。再剥離性の粘着剤については後述する第3の粘着剤層17に用いられるものを用いることができるが、被着体から、被着体や粘着剤自体の破壊を生ずることなく剥離することができる粘着剤である。このような再剥離性の粘着剤を第1の粘着剤層11に用いることで、被着体がうちわであり貼付する面が紙であるような場合であっても、うちわの損傷や、第1の粘着剤層11の一部がうちわの表面に残ることがなく本発明の揮発成分放出ラベル1を剥がすことができ、うちわ等を本発明の揮発成分放出ラベル1を貼る前の状態で使ったり、別途また本発明の揮発成分放出ラベル1を貼付して用いたりすることができる。
印刷層13は、基材12の主面12Bの全面に形成される。印刷層13の形成方法は特に限定されず、例えば、樹脂凸版印刷(平圧凸版印刷、輪転印刷等)、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷が挙げられる。なお、以降の説明では基材12に剥離層14や第2の粘着剤層15が積層される旨の説明を行う場合があるが、これらの層は全て印刷層13を介して基材12に積層されるものである。
【0025】
剥離層14は、基材12の剥離領域12C上に形成される。剥離領域12Cは、基材12の外周縁から径方向内側に所定の距離までの領域が基材12の外周全部に渡って形成された環状の領域であり、第2の粘着剤層15および透過制御層16で被覆されない領域である。この剥離領域12Cにおいて、一部または全部に剥離処理が施されることで剥離層14を形成している。剥離層14を構成する材料としては、シリコーン系樹脂、アルキッド系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。これらのうち、シリコーン系樹脂が粘着力の制御が容易である点で好ましい。これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。また、上記に挙げた以外の樹脂、樹脂以外の触媒、オイル、オリゴマー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0026】
第2の粘着剤層15は、基材12の剥離領域12C以外の領域に積層される層であり、基材12よりも小さい径を有する平面視円形状に形成された層が、基材12と同心円状に積層される。第2の粘着剤層15は、揮発成分を含有している。揮発成分としては、生物忌避成分のほかにも、微生物増殖抑制成分、芳香成分等を用いることができる。生物忌避成分のうち、特に有用性が高いものは害虫忌避成分である。害虫忌避成分としては、合成物及び天然物由来のものがある。合成物としてはN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)などが挙げられ、非常に忌避効果が高いことが知られる。一方、動物に対する安全性の高さという面では天然物由来のものが好ましい。かかる天然物由来の害虫忌避成分としては、例えば、ラベンダー油、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、タイム油、ティートリー油などの精油が挙げられ、それぞれ1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ラベンダー油やタイム油など、芳香性を有するものは芳香成分としての機能も兼ねることができる。微生物増殖抑制成分としては、食品管理の分野で用いられることが多いため、天然物由来のものが動物に対する安全性の面から好ましく、このようなものとしてイソチアン酸ステアリルなどが挙げられる。なお、イソチアン酸ステアリルはハエ等の害虫に対する忌避効果があることも知られ、これを用いた場合には双方の効果から食品管理の分野での有効利用が期待できる。芳香成分としては、公知の合成香料、天然物由来香料の1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。第2の粘着剤層15は、印刷層13を介して基材12に接着可能であればどのような材料で構成されていてもよいが、揮発成分と相溶性の高いものが好ましい。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられ、揮発成分として比較的極性の高いラベンダー油やイソチアン酸ステアリルを用いる場合は、相溶しやすく扱いやすいアクリル系粘着剤を用いることができる。また、用いる揮発成分の極性の高低や、製造の条件等に合わせ、適宜にゴム系粘着剤やシリコーン系粘着剤を選択することができる。
【0027】
透過制御層16は、揮発成分を含有する第2の粘着剤層15を介して基材12に接着され、第2の粘着剤層15から放出される揮発成分の透過速度を制御する。透過制御層16は、第2の粘着剤層15と同じ大きさであり、基材12の剥離領域12C以外の領域に第2の粘着剤層15を介して接着されるものである。透過制御層16を構成する材料としては、貫通孔を設けたフィルム、多孔性フィルム、低分子有機化合物の透過性の比較的高い樹脂フィルム(例えば、ポリオレフィン系フィルム)等が挙げられる。ポリオレフィン系フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0028】
これらの透過制御層16および剥離層14には、第3の粘着剤層17を介してカバー層18が接着される。透過制御層16および第2の粘着剤層15は剥離層14の内周側に位置するため、カバー層18によって第2の粘着剤層15からの揮発成分の放出を防止することができる。
第3の粘着剤層17により、カバー層18が粘着により揮発成分保持層に接着する構成とした場合に、カバー層18と透過制御層16との粘着力は、5N/25mm以下(JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて測定。)であることが好ましい。本発明のカバー層18と透過制御層16との粘着力は、透過制御層16に貼付されたカバー層18を剥がすときの粘着力を意味する。使用時の剥がしやすさの観点から、カバー層18と透過制御層16との粘着力は、より好ましくは3.5N/25mm以下、さらに好ましくは2N/25mm以下である。透過制御層16がポリオレフィン系材料であると、第3の粘着剤層17の粘着力が比較的強い場合でも、カバー層18と透過制御層16との粘着力を上記範囲に調整することが容易となる。また、カバー層18と透過制御層16との粘着力は、使用前の剥離を防止するため、0.03N/25mm以上であることが好ましい。また、接着性が弱いと揮発成分保持層からのガスの発生等によって、カバー層18と透過制御層16との間の接着に剥がれが生じる可能性があるので、0.05N/25mm以上であることがより好ましい。第3の粘着剤層17は、剥離層14と接する領域、すなわち基材12の剥離領域12C上にのみ形成される構成とすることができる。しかし、このような形態では、第3の粘着剤層17と剥離層14との接着性は、剥離層14の存在のゆえに本質的に弱いものであるために、剥離領域の幅が狭い場合には剥がれやすくなってしまう。そこで、カバー層18と透過制御層16が接着している図2のごとき形態が、上記の剥がれを防止でき、より好ましい。
【0029】
第3の粘着剤層17は、カバー層18を透過制御層16および剥離層14に接着させるための層であり、カバー層18と同じ径を有して形成されている。第3の粘着剤層17により、カバー層18の剥離層14および透過制御層16への接着に押圧以外の特別のトリガーを要せず製造が容易である。第3の粘着剤層17に使用される粘着剤は、剥離層14に粘着可能であればどのような材料で構成されていてもよいが、カバー層18と剥離層14との粘着力が100mN/50mm以上(JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じ、試験片の幅を50mmとして測定。)となる材料を選択することが好ましい。本発明のカバー層18と剥離層14との粘着力は、剥離層14に貼付されたカバー層18を剥がすときの粘着力を意味する。カバー層18と剥離層14との粘着力が100mN/50mm未満であると、例えば、被着体がうちわのような凹凸のある面であった場合に、カバー層18が剥がれてしまうおそれがある。また、図2に示すように、透過制御層16と剥離層14の表面には段差が生じている場合が多く、粘着力が弱いと浮きが生じてしまい、揮発成分の放出を防止するという効果が得られない可能性がある。また、カバー層18が透明である場合には美観を損ねたりするおそれがある。また、カバー層18と剥離層14との粘着力の上限値は、通常の粘着剤と剥離材との粘着力として許容される範囲であれば問題ないが、5000mN/50mm以下であることが好ましい。また、カバー層18と剥離層14との粘着力は、150mN/50mm以上であることがより好ましく、200mN/50mm以上であることがさらに好ましい。また、カバー層18と剥離層14との粘着力は、剥がしやすさの観点から4000mN/50mm以下であることがより好ましく、3000mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
このような粘着力範囲を満たす第3の粘着剤層17の材料としては、例えば、樹脂主剤に架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、及びその他添加物の1種単独又は2種以上の混合物を任意に添加した粘着剤が挙げられる。
樹脂主剤としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂等の1種単独又は2種以上の混合物が挙げられる。これらのうちでも、剥離材や被着体への粘着力を制御するための設計手法の確立されているアクリル系樹脂を用いることが好ましい。本明細書ではアクリル系樹脂を用いた粘着剤をアクリル系粘着剤と呼ぶ。
【0031】
架橋剤としては、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
粘着付与剤としては、テルペン系樹脂、ロジンエステル、スチレン系樹脂等が挙げられる。
可塑剤としては、ミリスチン酸イソプロピル等の合成油、ヒマシ油等の植物油等の、粘着剤を粘性的に改質しうる低分子化合物が挙げられる。
その他添加物として、樹脂主剤及び粘着付与樹脂以外の樹脂、架橋剤以外の硬化剤、シランカップリング剤、顔料、色素、填料、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤等の1種単独又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0032】
アクリル系粘着剤は一般に、塗工液が、アクリル系樹脂等が有機溶剤に溶解したものである溶剤系アクリル系粘着剤と、塗工液が、アクリル系樹脂等が水系分散媒に懸濁状態で分散したエマルジョン系アクリル系粘着剤に大別されるが、そのいずれも用いることができる。
アクリル系粘着剤の材料の選択と粘着性の関係は諸文献に知られるところであり、例えば架橋剤の量を増やせば粘着剤がより弾性的となり粘着性が弱くなり、アクリル系樹脂の単量体として被着体と親和性の高い単量体を用いると粘着性が強くなることなどが知られている。
【0033】
第3の粘着剤層17に用いる粘着剤として、再剥離性の粘着剤を用いることができる。このような粘着剤を用いることで、透過制御層16が、紙やポリエチレンテレフタレート等の、カバー層18と透過制御層16との粘着力が高くなる傾向のある材料により構成されていたとしても、容易に剥離することが可能であり好ましい。再剥離性の粘着剤は、紙やポリエチレンテレフタレート等を被着体としたときに、被着体の破壊や、粘着剤の凝集破壊を生じず、容易に剥がすことができるものであれば限定されないが、例えば、20〜60μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、10〜50μmの厚みの再剥離性の粘着剤を設けた粘着シートを、ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼付し、剥離するときの粘着力(JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて測定。)が、0.1〜3N/25mmであるものが好ましく、0.5〜2.5N/25mmであるものがより好ましく、0.5〜2N/25mmであるものがさらに好ましい。
第3の粘着剤層17に用いる粘着剤を、例えば上記のような粘着剤のうち、複数種のものであって、それらの間での同一の剥離材への粘着力の高低の傾向が既知のものを用いてカバー層18を作製し、剥離層14に貼付して粘着力を確認することによって、粘着力が上記の範囲となる粘着剤を選択することができる。
【0034】
また逆に、例えば複数種のシリコーン系剥離剤で、それらの間での同一の粘着材が貼付されたときの粘着力の傾向が既知のものを用いて剥離層14を形成し、任意に選択した粘着剤を用いて作製したカバー層18を貼付して、粘着力を確認することによっても、粘着力が上記の範囲となるシリコーン系剥離剤を選択することができる。
なお、透過制御層16の材料がポリオレフィン系の材料であると、第3の粘着剤層17に用いる粘着剤を、カバー層18と剥離層14との粘着力が高くなるように、強い粘着特性を有するものを選択したとしても、揮発成分保持層のカバー層18に隣接する層との粘着力が高くなりすぎず、好ましい範囲に保つことが容易である。
透過制御層16をポリオレフィン系フィルムにより形成した場合には、カバー層18との粘着力を抑えられる点と、揮発成分の透過性が高い点の双方の観点から好ましい。
【0035】
カバー層18は、第2の粘着剤層15からの揮発成分の放出を防止するための層であり、第3の粘着剤層17を介して剥離層14および透過制御層16に接着される。カバー層18は、その外周が第2の粘着剤層15および透過制御層16よりも大きく、また、基材12の外周と同一かまたはそれより小さく形成される。カバー層18を構成する材料としては、揮発成分の透過を防止でき、ラベルとしての性能を損なわない程度の可とう性を有していれば特に限定されないが、樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムの中でも揮発成分の透過をさらに抑制するものとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルロース系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなどが好ましく、これらの中でもポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。これらの樹脂フィルムは、揮発成分の透過をさらに抑制するために、樹脂フィルム内部に填料等が含有されていてもよいし、金属層、UV硬化樹脂からなる層等がいずれかの面に積層されたものであってもよいし、プラズマCVD、イオン注入等による表面改質がされていてもよい。また、第3の粘着剤層17を設ける場合には、第3の粘着剤層17を設ける面に、密着性を上げるために接着剤密着層が設けられていてもよいし、コロナ処理等の物理的な表面改質がされていてもよい。カバー層18を構成する材料として、自己粘着性のある材料や、熱接着性のある材料等を用いる場合などは、カバー層18自体が接着手段を兼ねるので、第3の粘着剤層17を設けずにカバー層18を揮発成分保持層及び剥離層14に接着することができる。
カバー層18は、用途に応じて透明又は不透明とすることができる。透明なものとした場合には、印刷層13が設けられているときは、カバー層18を除去する前から印刷層13の画像を視認することができ、カバー層18には何ら印刷等の画像表示を行わなくても、カバー層18の除去前の揮発成分放出ラベル1に意匠性や情報表示等を付与できるので安価である。一方、不透明なものを用いた場合で、印刷層13が設けられているときには、印刷層13の画像表示は不透明な樹脂フィルムにより遮蔽され、カバー層18を除去しない限り視認できない。そこで、例えばカバー層18に、不透明な樹脂フィルムよりも揮発成分保持層から遠い側に、印刷層13の画像表示とは異なる画像表示とした印刷層等を設けることで、カバー層18の除去前と除去後で異なる画像表示の効果が得られる。
【0036】
また、カバー層18と剥離層14との間のカバー層18の外周縁に沿った一部には非接着領域19が形成されている。非接着領域19は、第2の粘着剤層15または透過制御層16とは隣接しない領域である。この領域には第3の粘着剤層17は設けられないため、非接着領域19ではカバー層18は剥離層14に接着されていない。カバー層18と剥離層14が接着されることにより揮発成分保持層を封止することが本発明の本旨であるので非接着領域19は揮発成分保持層と接しない限度の領域に設けることができる。
【0037】
[2.揮発成分放出ラベルの製造方法]
次に、上述した揮発成分放出ラベル1を製造する方法について説明する。揮発成分放出ラベル1は、図3に示す第1の製造装置100と図4に示す第2の製造装置200とにより製造される。以下、各製造装置の構成を説明するとともに、各工程におけるシートの層構成を図面に基づいて説明する。
【0038】
第1の製造装置100は、図3において、剥離シートRLに第1の粘着剤層PSA1、基材シートBの順に積層された第1原反R1を繰り出し、基材シートBに対して印刷処理および剥離処理を施した後、透過制御シートRCに第2の粘着剤シートPSA2が積層された第3原反R3を積層し、この第3原反R3に所定形状の切込を形成した後、第3原反R3の不要部分S1を除去し、第2原反R2として巻き取るものである。ここで、第3原反R3は、第2粘着剤シートPSA2に害虫忌避成分が含有された状態で予め用意されている。また、不要部分S1は第4原反(不要ロール)R4として巻き取られる。
すなわち、第1の製造装置100は、図2における剥離シート2、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13、剥離層14、第2の粘着剤層15、および透過制御層16に該当する部分を形成する。
【0039】
具体的に、第1の製造装置100は、図3に示すように、第1原反R1を繰り出す繰出手段110と、基材シートBに対して印刷処理を施す印刷手段120と、印刷処理が施された基材シートBに対して剥離処理を施す剥離処理手段130と、第3原反R3を印刷処理および剥離処理が施された基材シートBに接着する接着ローラ140と、第3原反R3を所定形状に切断する切断手段150と、第3原反R3の不要部分S1を剥離して第4原反(不要ロール)R4として巻き取る巻取手段160と、第1原反R1に所定形状の第3原反R3が積層されたシートを第2原反R2として回収する回収手段170と、を備えている。
【0040】
繰出手段110は、第1原反R1をロール状に巻回して支持するとともに図示しない回転モータにより駆動される支持ローラ111と、支持ローラ111から引き出された第1原反R1を案内するとともに図示しない回転モータにより駆動するガイドローラ112と、を備えている。
印刷手段120は、繰出手段110から繰り出された第1原反R1の基材シートBに対して、平圧凸版印刷法により印刷処理を施し、図5(A)に示すように、基材12の上に印刷層13を形成する。
剥離処理手段130は、印刷層13が形成された基材シートBに対して、揮発成分保持層形成領域以外の領域12Dのみに剥離処理を施す。ここで、揮発成分保持層形成領域は、揮発成分保持層を形成することが予定されている円状の領域で、その外周は直径34mmである。揮発成分保持層形成領域は、円状であるので幾何学的に閉じた形状であり、基材シートBの主面において他の揮発成分保持層形成領域と連続していない(不連続である)。この揮発成分保持層形成領域以外の領域12Dのみに剥離剤を塗布する。このように、基材シートBの一部にのみ剥離剤を塗布する方法としては、基材シートBの塗布部分のみに接触するように設計された版を作製し、この版に剥離剤を展開し、これを基材シートBに接触させることで剥離剤を基材シートBの所定の部分にのみ転写塗布することができる。具体的には、樹脂凸版印刷で用いる版を用いて、UV硬化性インクの代わりにUV硬化性の剥離剤を用いて、印刷を施すのと同様の方法により剥離剤を基材シートBの所定の部分にのみ塗布し、UVを照射して硬化することで剥離層を形成できる。これにより、図5(B)に示すように、基材12の揮発成分保持層形成領域以外の領域12D上にのみ剥離層14が形成される(剥離処理工程)。
【0041】
接着ローラ140は、一対のローラで構成され、第3原反R3と印刷処理および剥離処理が施された第1原反R1とを一対のローラで挟み込むことにより、第3原反R3を印刷処理および剥離処理が施された第1原反R1に接着させ、図3中左方向に誘導する。これにより、図6(A)に示すように、基材12の表面全体に第3原反R3が接着される(揮発成分保持シート積層工程)。
切断手段150は、接着ローラ140と巻取手段160との間に設けられ、第3原反R3に直径34mmの円形状の切り込みを形成する切込刃151を備えたダイカット部152と、このダイカット部を支持して昇降させる図示しないシリンダと、シリンダを駆動する図示しない駆動モータとを有している。切込刃151は、上述した揮発成分保持層形成領域の外周と同じ径(直径34mm)を有する円形状の刃である。具体的に、シリンダが駆動モータにより下降することで、切込刃151が第3原反R3のみに対して揮発成分保持層形成領域と剥離層の境界線に沿った円形状の切込部C1を形成する(第1の切込形成工程、図6(B)参照)。
【0042】
巻取手段160は、切断手段150により形成された円形状の切込部C1に沿って、円形部分以外の帯状の不要部分S1を、基材シートBから剥離する剥離ローラ161と、この剥離ローラ161で剥離された不要部分S1を巻き取る巻取ローラ162と、を備えている。図8に示すように、不要部分S1は揮発成分保持層形成領域以外の領域12Dに対応して剥離層14上に積層されているため、剥離ローラ161により簡単に基材シートBから剥離することができる。このようにして、揮発成分保持層形成領域以外の領域12D上の不要部分S1を除去することで、円形状の第3原反R3、すなわち第2の粘着剤層15および透過制御層16が基材シートBに積層された状態となる(第1の剥離工程、図7(A)参照)。
【0043】
回収手段170は、図示しない回転モータにより回転するガイドローラ171と回収ローラ172とを備え、これらのローラの回転により、第1原反R1に印刷処理および剥離処理が施され、揮発成分保持層形成領域に第2の粘着剤層15および透過制御層16が積層された第2原反R2(図7(B)参照)を回収する。
【0044】
次に、第2の製造装置200について説明する。第2の製造装置200は、図4において、第1の製造装置200で回収した第2原反R2を繰り出し、第2原反R2に対してカバーシートCSに第3の粘着剤シートPSA3が積層された第6原反R6を接着させ、揮発成分放出ラベル1としての所定形状に切断した後、不要部分を剥離シート2から除去して第5原反R5として巻き取るものである。ここで、第6原反R6は、カバーシートCSに第3の粘着剤シートPSA3および剥離材が接着された状態で予め用意されており、剥離材を剥離しながら第6原反R6として繰り出している。
すなわち、第2の製造装置200は、図2における第3の粘着剤層17およびカバー層18に該当する部分を形成し、揮発成分放出ラベル1としての所定形状に形成している。
【0045】
具体的に、第2の製造装置200は、図7(B)に示す層構成の第2原反R2を繰り出す繰出手段210と、カバーシートCSに第3の粘着剤シートPSA3が積層された第6原反R6を第2原反R2に接着する接着ローラ220と、第2原反R2と第6原反R6とが積層されたシートを揮発成分放出ラベル1の所定形状に切断する切断手段230と、不要部分を剥離シート2から剥離して第7原反(不要ロール)R7に巻き取る巻取手段240と、剥離シート2に所定形状の揮発成分放出ラベル1が所定間隔で複数貼り付けられたシートを回収する回収手段250と、を備えている。
【0046】
繰出手段210は、第2原反R2をロール状に巻回して支持するとともに図示しない回転モータにより駆動される支持ローラ211と、支持ローラ211から引き出された第2原反R2を案内するとともに図示しない回転モータにより駆動する駆動ローラ212と、を備えている。
接着ローラ220は、繰り出された第6原反R6と第2原反R2とを駆動ローラ212との間に挟み込むことにより、第6原反R6を第2原反R2に接着させ、図4中左方向に誘導する。これにより、図9に示すように、基材12の主面全体にカバー層18が第3の粘着剤層17を介して接着される(カバーシート積層工程)。
【0047】
切断手段230は、接着ローラ220と巻取手段240との間に設けられ、全ての層が積層された図9に示す層構成のシートに直径45mmの円形状の切り込みを形成する切込刃231を備えたダイカット部232と、このダイカット部232を支持して昇降させる図示しないシリンダと、シリンダを駆動する図示しない駆動モータとを有している。切込刃231は、揮発成分放出ラベル1の外周と同じ径(直径45mm)を有する円形状の刃であり、基材12の剥離領域12Cの外周に切込みを形成する。シリンダが駆動モータにより下降することで、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13、剥離層14、第3の粘着剤層17、およびカバー層18に対して円形状の切込部C2を形成する(第2の切込形成工程、図10(A)参照)。
【0048】
巻取手段240は、切断手段230により揮発成分放出ラベル1として切込形成された円形状の領域以外の不要部分S2を、剥離シート2から剥離する剥離ローラ241と、この剥離ローラ241で剥離された不要シートS2を巻き取る巻取ローラ242と、を備えている。巻取手段240により、図10(B)に示すように不要部分S2を除去することにより、剥離シート2に円形状の揮発成分放出ラベル1が所定間隔で複数配列された状態となる(第2の剥離工程、図1参照)。
回収手段250は、図示しない回転モータにより回転する駆動ローラ251と回収ローラ252とを備え、これらのローラの回転により、剥離シート2に揮発成分放出ラベル1が複数貼り付けられたシートを第5原反R5として回収する。
【0049】
[3.本実施形態の作用効果]
以上の本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
揮発成分放出ラベル1は、基材12上に揮発成分を保持する第2の粘着剤層15および透過制御層16が積層され、その周囲の基材12上に剥離層14が形成され、透過制御層16および剥離層14に対してカバー層18が第3の粘着剤層17を介して接着されている。このため、揮発成分保持層である第2の粘着剤層15および透過制御層16は、基材12とカバー層18と剥離層14との間に封止され、第2の粘着剤層15からの揮発成分の放出を防止することができる。一方で、第2の粘着剤層15および透過制御層16は剥離層14の形成されていない領域に接着しているため剥がれにくく、カバー層18が揮発成分保持層に接着している場合にこれを剥がすときに同時に剥がれてしまうこと、及びその他使用者の意図していない揮発成分保持層の剥離を防止できる。そして、揮発成分保持層を接着により基材12に固定する場合には、揮発成分保持層を基材12の全面に接着した後、剥離領域の内周で揮発成分保持層のみを分離し、剥離領域の揮発成分保持層を除去することで、基材の周縁部のみに揮発成分保持層が形成されていない揮発成分放出ラベル1を容易に製造できる。
【0050】
また、使用の際には、カバー層18を剥離層14および透過制御層16から剥離することで透過制御層16が露出するため、使用時に初めて揮発成分の放出を開始させることができる。
また、カバー層18と剥離層14との粘着力は100mN/50mm以上であるため、被着体に凹凸がある場合にであっても、浮きを生じさせることなく確実に接着させることができる。また、カバー層18と透過制御層16との粘着力は5N/25mm以下であるため、透過制御層16からカバー層18を容易に剥離することができる。したがって、糊残りが生じないため、カバー層18を剥離した後の美観を維持することができる。
【0051】
また、カバー層18は、基材12の外周と同一かまたはそれより小さく形成されている。このため、基材12からカバー層18および第3の粘着剤層17がはみ出すことがなく、第3の粘着剤層17に対する意図せぬ付着が発生しないため、使用感に優れる。
さらに、カバー層18と剥離層14との間に非接着領域19を設けていることで、非接着領域19に対応するカバー層18を持ち手とすることができ、カバー層18の剥離が容易となる。上述したように、カバー層18と剥離層14との剥離力が上限値である5000mN/50mmと大きい場合でも、持ち手があることで剥離が容易となる。
【0052】
揮発成分放出ラベル1の製造において、基材12の外周に沿った剥離領域12C上に剥離層14を設けたことで、揮発成分保持シート(第2の粘着剤シートPSA2および透過制御シートRC)を基材12上に一旦積層した後、揮発成分保持シートのみが分離されるように剥離領域12Cに沿って切込を形成し、揮発成分保持シートの不要部分を剥離層14から剥離する。剥離領域12Cに剥離層14が形成されていることにより、剥離層14に接着している揮発成分保持シートの不要部分を容易に剥離することができる。
このように、帯状の揮発成分保持シートを基材シートに積層した後、不要部分のみを除去する方法では、予め揮発成分保持シートを特定形状に加工したり、この加工された揮発成分保持シートを所定の位置に配置するための位置合わせを行ったりする必要がないため、連続的に製造する場合には有利であり、大量生産に適している。
【0053】
[4.変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態では、揮発成分を含有する第2の粘着剤層15と透過制御層16とにより揮発成分保持層を構成したが、第2の粘着剤層15に揮発成分を含有させずに、別途揮発成分を含有させるための層を設けてもよい。例えば、基材12側から粘着剤層、揮発成分保持層、粘着剤層、透過制御層の順に積層した構成としてもよいし、粘着剤層、揮発成分保持層、透過制御機能を有する粘着剤層の順に積層した構成としてもよい。
また、上記実施形態では、第2の粘着剤層15により揮発成分保持層を基材12に固定しているが、これに限られず、粘着剤以外の接着剤などで固定してもよい。
さらに、上記実施形態では、第3の粘着剤層17によりカバー層18を透過制御層16および剥離層14に接着させているが、粘着剤以外の接着剤などで接着させてもよい。
【0054】
上記実施形態において、カバー層の外周上の一点から他の一点までを結ぶ線上のカバー層のみに切込を施してもよい。この切込は、カバー層の厚さ方向を完全に貫通するものであってもよいし、カバー層の深さ方向の途中まで形成されるものであってもよい。これによれば、この切込に沿ってカバー層を剥がすことが容易となり、特に被着体の可とう性が高い場合にはより効果的である。
上記実施形態では、揮発成分として害虫忌避成分を使用したが、芳香成分や微生物増殖抑制成分等も使用することができる。揮発成分が芳香成分である場合には、カバー層18を剥離する前には全くにおいがしないため、初めてカバー層18を剥離した際の驚きや新鮮さなどの精神的効果がより一層高い。
【0055】
上記実施形態では、印刷層13を設ける構成としたが、印刷層13を設けない構成としてもよい。
また、上記実施形態では、透過制御層16を設ける構成としたが、透過制御層16を設けない構成としてもよい。この場合、上述したカバー層18と透過制御層16との接着についての記載(それに関る透過制御層16の材料に関する記載を含む。)は、カバー層18と揮発成分保持層一般との接着についての記載に置き換えることができ、これにより本発明の効果は影響されない。
また、上記実施形態では第3の粘着剤層17を設ける構成としたが、上述したカバー層18自体が接着手段を兼ねている場合などにはこれを設けない構成とすることができる。
さらに、上記実施形態では、第1の粘着剤層11により、基材12を被着体に接着する構成としたが、第1の粘着剤層11を設けない構成としてもよい。各種貼り付け方法で物に貼り付ければよい。
また、上記実施形態では、非接着領域19を設ける構成としたが、これを設けない構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態の製造方法では、基材シートBには予め剥離シートRL及び第1の粘着剤層PSA1が積層されて、基材Bが剥離シートRLに接着されているが、PSA1を積層せずに、他の接着手段により剥離シートRLが接着されていてもよい。
また、基材シートBに剥離シートRLを接着する時期については、カバーシート積層工程を経た後に基材シートBを剥離シートRLに接着してもよいし、剥離処理工程、揮発成分保持シート積層工程、第1の切込形成工程、第1の剥離工程、及びカバーシート積層工程のいずれか2の連続する工程の間に接着してもよい。カバーシート積層工程の後に第2の切込形成工程及び第2の剥離工程を行う場合には、遅くとも第2の切込形成工程を行う前までに剥離シートRLが基材シートBに接着されている必要がある。
第2の切込形成工程及び第2の剥離工程を行わずに、カバーシート積層工程を経た第2原反R2を、例えば基材12の剥離領域12Cの外周にフルカット(図9のカバーシート層18から剥離シート2にいたるまでのすべての層を切断する。)して、図2における基材12の剥離領域12Cの外周と同一形状の個々のラベルとしてもよい。
【0057】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET3811」,厚さ38μm)上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製,製品名「PK」)を、乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して乾燥させ、第2の粘着剤層を形成した。次にこの粘着剤層に、害虫忌避成分としてのラベンダー油をグラビアロールにて含有量が6g/m2になるように塗布して、害虫忌避層(揮発成分保持層)を形成した。この害虫忌避層に、透過制御層としての無延伸ポリエチレンフィルム(林一二社製,厚さ70μm)を貼り合わせて揮発成分保持層形成用シートを得た。
【0060】
次に、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,製品名「クリスパー」,厚さ38μm)上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製,製品名「PLシン」)を乾燥後の塗布量が22g/m2になるように塗布して乾燥させ、第1の粘着剤層を形成した。この第1の粘着剤層に、剥離シート(リンテック社製剥離紙,製品名「SP−8LK})を貼り合わせた。さらに、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1の粘着剤塗布面と反対の面に、意匠性のある模様の印刷層を平圧凸版印刷により設け、その上に、等間隔に直径34mmの円形の剥離剤非塗布部が設けられるように、剥離剤として剥離性のあるUV硬化インク(DICグラフィックス株式会社製、製品名「ダイキュアセプターDT OPニスEM」)を平圧凸版印刷と同様の方法により、0.14g/m2になるように塗布および硬化を行い、剥離層を形成し、剥離層の形成された基材を得た。
【0061】
揮発成分保持層形成用シートから剥離フィルムを除去し、第2の粘着剤層を介して基材の剥離領域の設けられた面と接着するように、基材に貼り合わせた。その後、揮発成分保持層形成用シートのみが剥離剤非塗布部の外周に沿って分離されるようにハーフカットを行い、剥離剤非塗布部と接着した部分以外の揮発成分保持層形成用シートを除去し、揮発成分保持層を基材上に形成させた。
カバー層として、再剥離性の粘着シート(リンテック社製、製品名「リピール6041(PET50A)」)を、剥離材を除去した後に、基材の揮発成分保持層の形成された面に、カバー層の粘着剤層(第3の粘着剤層)が対向するようにして貼り合わせ、積層体を得た。その後、積層体の剥離シート以外が分離されるように、直径が45mmで、揮発成分保持層と同心円の形状に積層体をハーフカットし、積層体の剥離シート以外の部分を除去することで、基材の剥離シート上に形成された揮発成分放出ラベルを得た。
【0062】
[実施例2]
カバー層として、再剥離性の粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) MF 8LK2」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0063】
[実施例3]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PLN05 PET25」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0064】
[実施例4]
透過制御層として、1cm2あたりに2個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0065】
[実施例5]
カバー層として、再剥離性の粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) MF 8LK2」)を用い、透過制御層として、1cm2あたりに2個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0066】
[実施例6]
カバー層として、微粘性の粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) RT−BN」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0067】
[実施例7]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) PAT1 8LK」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0068】
[実施例8]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) PAT1 8LK」)を用い、透過制御層として、1cm2あたりに4個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてカバー層付き揮発成分放出ラベルを得た。
【0069】
[実施例9]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PLN05 PET25」)を用い、透過制御層として、1cm2あたりに2個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてカバー層付き揮発成分放出ラベルを得た。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1の粘着剤塗布面と反対の面に印刷層を設けた後、剥離層を設けず、また、揮発成分保持層形成用シートを基材に貼り合せた後、揮発成分保持層形成用シート、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び第1の粘着剤層のみが分離されるように直径34mmの円形にハーフカットを行い、切断した円形の外側の部分の揮発成分保持層形成用シート、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び第1の粘着剤層を除去して、カバー層を有していない揮発成分放出ラベルを得た。
【0071】
[比較例2]
実施例1において、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1の粘着剤塗布面と反対の面に、印刷層を設けた後、剥離層を設けずにカバー層付き揮発成分放出ラベルを得ようとしたが、剥離剤非塗布部に相当する領域に接着した部分以外の揮発成分保持層形成用シートを除去しようとしたところ、剥がれずに除去することができず、カバー層付き揮発成分放出ラベルを得ることができなかった。
【0072】
<試験1>
前述の実施例で得られた揮発成分放出ラベルのカバー層の浮きや剥がれについて以下のように評価した。
各揮発成分放出ラベルを100mm×100mmのアート紙に貼付し、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した。その後、アート紙を、ラベルの貼られた面が外側になるようにして、アート紙の端部同士が接触するように屈曲させ、ラベルのカバー層の剥離領域からの剥がれを下記の基準で評価した。
【0073】
○:剥がれが生じない。
×:剥がれが生じる。
【0074】
<試験2>
前述の実施例および比較例で得られた揮発成分放出ラベルを密閉包装材に保管しておき、密閉包装材から取り出してうちわに貼付して5日間放置した。その後、カバー層付きの揮発成分放出ラベル(実施例1〜9)についてはカバー層を剥離し、剥離の際の剥がし易さを下記の基準で評価した。
○:容易に剥がれる。
△:やや剥がしにくいものの、剥がれる
×:強固に接着しており、剥がすのが困難である。
【0075】
また、剥離後のにおいの有無から、揮発成分の残存性を下記の基準で評価した。
○:強いにおいを感じる。
×:においが微弱である。
【0076】
<試験3>
直径34mmの円形の、剥離剤非塗布部を設けなかったほかは、実施例1と同様にして、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムに第1の粘着剤層を形成し、第1の粘着剤に剥離シートを貼り合わせ、また、剥離層を形成し、剥離層の形成された基材を得た。この剥離層に、前述の実施例で用いたカバー層を第3の粘着剤層により接着させた。接着は、ラミネート装置を用いて行い、接着してから測定まで23℃、相対湿度50%の環境下で24時間保管した。基材の第1の粘着剤層から剥離シートを剥がし、平板な板に貼り合わせ、基材の剥離領域からカバー層を剥離する際の剥離力、すなわち基材(剥離領域)とカバー層との粘着力を、JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて測定した。なお、試験片の幅を50mmとして測定した。また、JIS Z0237:2000の10.2.2〜10.3.1の、試験板及び圧着に関する項目は、上記の手順に代えた。
【0077】
<試験4>
実施例1で用いた揮発成分保持層形成用シートの剥離シートを除去し、揮発成分保持層形成用シートを平板な板に貼り合わせ、試験板とした。揮発成分保持総計静養シートの透過制御層に対して、前述の実施例で用いたそれぞれのカバー層を第3の粘着剤層により試験板に貼付し、貼付後24時間後の粘着力を、JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて粘着力を測定した。なお、実施例1,6については、カバー層と透過制御層との粘着力が低く、試験片の幅が小さいと測定される力の絶対値が低く誤差による影響が大きいため、粘着力が試験片の幅に比例するものとして、試験片の幅を50mmとして測定した値から試験片が25mmの幅の場合に対応する粘着力を算出し、これを粘着力の値とした。
【0078】
上記試験1〜4の試験結果を以下の表1に示す。なお、表中PEは無延伸ポリエチレンフィルム、PETはポリエチレンテレフタレートフィルムを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1〜9はカバー層付きの揮発成分放出ラベルであるため、揮発成分の残存性が良好であった。一方、比較例1はカバー層を有していない揮発成分放出ラベルであるため、揮発成分はほとんど放出されていた。また、剥離層を設けなかった比較例2ではカバー層付き揮発成分放出ラベルを製造することができなかった。
【符号の説明】
【0081】
1…揮発成分放出ラベル
2…剥離シート
11…第1の粘着剤層
12…基材
13…印刷層
14…剥離層
15…第2の粘着剤層
16…透過制御層
17…第3の粘着剤層
18…カバー層
【技術分野】
【0001】
本発明は、物に貼付されて揮発成分を放出する揮発成分放出ラベルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫忌避成分等の揮発成分を放出するラベルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の揮発成分放出ラベルは、害虫忌避成分を含有する害虫忌避層を、害虫忌避成分の透過を制御する透過制御層と害虫忌避成分を実質的に透過しないバリア層とで挟み、バリア層に衣服や皮膚に貼付するための粘着剤層を積層した構成となっている。このような揮発成分放出ラベルは、使用時までは害虫忌避成分の放出を防止するために密閉包装体の中に保管され、屋外での活動等に際し、密閉包装体から取り出して衣服や皮膚に貼付して使用している。ここで、「ラベル」の語義は一般には情報表示体を指すものであるが、本発明においては情報表示の有無に関らず、シート状の物品を指す言葉である。
【0003】
一方で、販売促進用のうちわに揮発成分放出ラベルを貼付する場合や、香粧品の試供品として配布されるにおいのテスターに香料を含有させた揮発成分放出ラベルを貼付する場合は、大量に保管されているうちわやテスターをそれぞれ密閉包装体に入れておき、配布する際にそれぞれを密閉包装体から取り出す作業は非効率的である。そこで、密閉包装体に保管しなくても、害虫忌避層を阻止フィルムで被覆することで使用時まで揮発成分の拡散を防止する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1の揮発成分放出ラベルに阻止フィルムを積層する場合、透過制御層の上に阻止フィルムを積層し、一括して阻止フィルム、透過制御層、害虫忌避層、バリア層、および粘着剤層に切込を行って個々のラベルを作製すると、害虫忌避層、透過制御層、バリア層、及び阻止フィルムが同一の大きさで積層されているため、害虫忌避層の端部は外部に露出してしまい、微量ながら揮発成分が大気中へ放出され、長期的に保管した後では揮発成分の効力が薄れてしまう。また、このような構成のラベルが貼付された販売促進用のうちわ等を大量に保管する場合は、個々の放出量が僅かな量であっても全体量として多くなるため、保管場所での作業の支障となったり、他の保管物へのにおい移りが問題となったりする可能性がある。さらに、使用者は、阻止フィルムを剥離する前から芳香成分等のにおいを感知することができるため、阻止フィルムを剥離したときに初めてにおいを感じることによる驚きや新鮮さ等の精神的効果を得ることができない。
そこで、揮発成分を含有する部材を完全に被覆する阻止フィルムを設ける構成が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
【0005】
特許文献2では、うちわの所定位置に虫除け成分を拡散する薬剤拡散部材を設け、この薬剤拡散部材から空気中への虫除け成分の拡散を防止する阻止フィルムを被覆させた構成が記載されており、使用時に阻止フィルムを剥離するまでは虫除け成分の放出を防止することができる。
特許文献3では、粘着性を有する担持ストリップの表面に虫除け剤を浸潤させたパッドを固定し、パッドを完全に被覆するように、カバー部材が担持ストリップに粘着固定されている。担持ストリップは裏面も粘着性を有しており、この裏面に剥離材が貼り付けられた虫除け装置が開示されている。
特許文献4では、防虫剤含浸シートの防虫剤が飛散しないように、防虫剤含浸シート全体を保護被覆する保護フィルムが設けられた防虫シールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3149381号公報
【特許文献2】実開平04−22819号公報
【特許文献3】特開平02−142702号公報
【特許文献4】特開平09−40508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2では、阻止フィルムの貼付対象物はうちわに限定されるものであり、阻止フィルムはうちわに直接貼り付けられている。このため、揮発成分放出ラベルのように貼付対象物が特定されていない場合は、貼付対象物に揮発成分放出ラベルを貼付する際、揮発成分放出ラベルを完全に被覆するために、別に用意された阻止フィルムを貼付するという煩雑な作業を行わなければならない。また、阻止フィルムをラベルとは別に用意する必要があるため、非効率的である。
【0008】
特許文献3では、カバー部材を剥離した後、カバー部材を粘着固定していた担持ストリップの粘着性の面が露出するために、塵埃の付着や意図しないものへの付着が避けられないという問題がある。
特許文献4では、防虫剤含浸シート全体を被覆するために、防虫剤含浸シートの大きさが保護フィルムや基材よりも小さく形成されている。しかしながら、ラベルを製造する工程において、防虫剤含浸シートのみを異なる大きさで積層することは積層位置の微小な調整等が必要であり、大量生産に適さない。また、一般的なシール製造装置ではこのような微小な調整に対応できないため、特別な装置を新しく導入する必要があり、設備費等が多大になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、使用時まで揮発成分の放出を防止できるとともに使用中は使用感に優れ、一般的な装置で容易に製造することのできる揮発成分放出ラベルおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の揮発成分放出ラベルは、基材と、前記基材の主面の外周に沿って形成された剥離層と、前記基材の主面の前記剥離層の内側に形成された揮発成分保持層と、少なくとも前記剥離層に接着され、かつ前記揮発成分保持層を被覆可能なカバー層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、基材の主面には、基材の外周に沿って形成された剥離層の内側に揮発成分保持層が設けられていることで、基材とカバー層と剥離層とによって揮発成分保持層を封止することができる。したがって、揮発成分保持層からの揮発成分の放出を防止することができる。使用の際には、カバー層を剥離層および揮発成分保持層から剥離することで揮発成分保持層が露出するため、使用時に初めて揮発成分の放出を開始させることができる。
また、基材とカバー層とが積層された揮発成分放出ラベルであるので、このラベルをあらゆる物に貼付することで上記効果を発揮することができ、汎用性が高い。
【0012】
本発明の揮発成分放出ラベルにおいて、前記カバー層と前記剥離層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記剥離層の粘着力は、100mN/50mm以上であることが好ましい。
この構成によれば、基材の外周に沿って形成された剥離層とカバー層との粘着力が100mN/50mm以上であることで、揮発成分放出ラベルを被着体に凹凸のある面に貼り付けた場合でも、カバー層が剥がれることを防止することができる。すなわち、揮発成分の放出を確実に防止することができる。なお、カバー層と剥離層との粘着力は、150mN/50mm以上であることがより好ましく、200mN/50mm以上であることがさらに好ましい。また、カバー層と剥離層との粘着力の上限値は、5000mN/50mmであり、4000mN/50mm以下であることがより好ましく、3000mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明の揮発成分放出ラベルにおいて、前記カバー層と前記揮発成分保持層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記揮発成分保持層との粘着力は、5N/25mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、基材の外周に沿って形成された剥離層とカバー層との粘着力を大きくするために、カバー層の粘着手段として、強い粘着性を示す粘着剤を選択したような場合であっても、剥離層の内周より内側に設けられた揮発成分保持層とカバー層との粘着力が5N/25mm以下であるため、カバー層全体を容易に剥離することができる。したがって、基材側に糊残りを生じさせることなく、カバー層を剥離した後も美観を維持することができる。なお、揮発成分保持層とカバー層との粘着力は、3.5N/25mm以下であることがより好ましく、2N/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の揮発成分放出ラベルにおいて、前記揮発成分は、微生物増殖抑制成分、芳香成分、および生物忌避成分のうちいずれかであることが好ましい。
この発明では、揮発成分として微生物増殖抑制成分を用いることで、例えば、米に増殖する微生物が増殖することを抑制することができる。また、芳香成分を用いることで、例えば、においのテスターとして使用することができる。さらに、生物忌避成分を用いることで、例えば蚊などの生物を寄せ付けないため、屋外での活動に使用することができる。
【0015】
本発明の揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルの製造方法は、帯状の基材シートの主面に不連続な揮発成分保持層形成領域を画定し、この揮発成分保持層形成領域以外の領域に対して剥離層を形成する剥離処理工程と、前記基材シートの主面全体に揮発成分保持シートを接着させる揮発成分保持シート積層工程と、前記揮発成分保持層形成領域の境界線に沿って前記揮発成分保持シートに対して第1の切込を形成する第1の切込形成工程と、前記揮発成分保持層形成領域に積層された前記揮発成分保持シートと前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートとを前記第1の切込に沿って分離し、前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートを不要シートとして前記剥離層から剥離する第1の剥離工程と、前記基材シートの主面全体にカバーシートを接着させるカバーシート積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明は、基材シートの主面に不連続な揮発成分保持層形成領域を画定し、この揮発成分保持層形成領域以外の領域に対して剥離処理を施した後、基材シートの主面全体に揮発成分保持シートを接着させ、揮発成分保持層形成領域に沿って形成された第1の切込に沿って揮発成分保持シートを分離し、分離された揮発成分保持シートの不要部分を剥離して除去するものである。ここで、揮発成分保持層形成領域は、基材シートの主面において揮発成分保持層が形成される領域である。不要部分は、揮発成分保持層形成領域以外の領域の剥離層に接着されるため、第1の剥離工程における剥離を容易に行うことができる。揮発成分保持層形成領域は主面において不連続であるので、不要部分が除去されると、基材の剥離層が露出した領域に囲まれた揮発成分保持層を基材の主面に容易に形成できる。このため、主面全体にカバーシートを接着させることで、基材、カバー層、剥離層により揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルを容易に製造することができる。
また、予め揮発成分保持シートを特定形状に加工したり、この加工された揮発成分保持シートを所定の位置に配置するための位置合わせを行ったりする必要がないため、連続的に製造する場合に有利であり、大量生産に適している。また、一般的なラベル製造装置を用いて製造することができるため、新しい設備を導入する必要もなく設備費を低く抑えることができる。
【0017】
本発明の揮発成分放出ラベルの製造方法において、前記基材シートは、剥離シートに接着されており、前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートに対して、当該揮発成分放出ラベルの形状となる第2の切込を形成する第2の切込形成工程と、当該揮発成分放出ラベルとそれ以外の領域とを前記第2の切込に沿って分離し、当該揮発成分放出ラベル以外の領域となる前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートを不要シートとして前記剥離シートから剥離する第2の剥離工程と、をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、剥離シートに揮発成分放出ラベルのみが接着された状態にすることができるため、使用する際に剥離シートから揮発成分放出ラベルを剥離しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における揮発成分放出ラベルの斜視図である。
【図2】前記実施形態の揮発成分放出ラベルの断面図である。
【図3】前記実施形態の揮発成分放出ラベルを製造する第1の製造装置の概略図である。
【図4】前記実施形態の揮発成分放出ラベルを製造する第2の製造装置の概略図である。
【図5】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図6】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図7】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図8】前記実施形態において基材シートから不要部分を剥離する様子を示す斜視図である。
【図9】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【図10】前記実施形態において揮発成分放出ラベルを製造する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
[1.揮発成分放出ラベルの構成]
図1において、本実施形態の揮発成分放出ラベル1は、生物忌避成分(揮発成分)を放出可能な平面視円形状のラベルであり、1枚の剥離シート2に複数が剥離可能に貼付されている。揮発成分放出ラベル1を使用する際には揮発成分放出ラベル1を剥離シート2から剥離して、うちわや香粧品の容器などに貼付して使用する。
【0021】
揮発成分放出ラベル1は、図2に示すように、剥離シート2側から順に、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13を有し、基材12の外周縁から所定の距離までの領域に剥離層14が形成され、基材12の剥離層14が形成されていない領域に揮発成分を含有する揮発成分保持層としての第2の粘着剤層15と、透過制御層16とが順に積層されている。また、剥離層14および透過制御層16を被覆するように第3の粘着剤層17およびカバー層18が順に積層されている。
【0022】
基材12は、主面12Bと反対側の面である裏面12Aに第1の粘着剤層11を介して剥離シート2に貼付されるとともに、主面12Bに第2の粘着剤層15および透過制御層16が印刷層13を介して積層される。基材12の外周は、第2の粘着剤層15および透過制御層16よりも大きく形成される。このことにより、基材12の主面12Bには、揮発成分保持層(第2の粘着剤層15および透過制御層16)に被覆されない剥離領域12Cがその外周に沿って存在することになり、この剥離領域12Cに剥離層14を設けることが可能となる。なお、基材12の主面12Bにおいて、揮発成分保持層が形成される領域を揮発成分保持層形成領域という。
【0023】
基材12を構成する材料として、ラベルとしての性能を損なわない程度の可とう性を有する紙や樹脂フィルム等の1種単独または2種以上を組み合わせたものが挙げられる。紙を単独で使用する場合、第2の粘着剤層15に含有されている揮発成分が紙を透過して揮散したり、第1の粘着剤層11へ浸透して予期せぬ物性変化を生じさせたりする可能性があるため、樹脂フィルムの単独又は他の材料と組み合わせたものを用いることが好ましい。樹脂フィルムの中でも単独で揮発成分の透過をさらに抑制するものとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルロース系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなどが好ましく、これらの中でもポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。これらの樹脂フィルムは、揮発成分の透過をさらに抑制するために、樹脂フィルム内部に填料等が含有されていてもよいし、金属層、紫外線(UV)硬化樹脂からなる層等がいずれかの面に積層されたものであってもよいし、プラズマ化学気相成長法(CVD)、イオン注入等による表面改質がされていてもよい。また、主面12Bには、印刷層13の密着性を上げるために印刷密着層が設けられていてもよいし、コロナ処理等の物理的な表面改質がされていてもよい。また、裏面12Aには第1の粘着剤層11の密着性を上げるために粘着剤密着層が設けられていてもよいし、コロナ処理等の物理的な表面改質がされていてもよい。これらの材料は、用途に応じて透明又は不透明のものを適宜に選択して用いることができる。
【0024】
第1の粘着剤層11は、基材12の裏面12Aに設けられ、当該揮発成分放出ラベル1を使用する際に、貼付対象物となる衣服、皮膚、うちわ等に貼付される。これらに貼付可能であればどのような粘着剤でも用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられる。第1の粘着剤層11の基材12と接していない面には剥離シート2が貼付され、この剥離シート2により、使用時まで当該第1の粘着剤層11は保護されている。
第1の粘着剤層11の粘着剤は、再剥離性の粘着剤であってもよい。再剥離性の粘着剤については後述する第3の粘着剤層17に用いられるものを用いることができるが、被着体から、被着体や粘着剤自体の破壊を生ずることなく剥離することができる粘着剤である。このような再剥離性の粘着剤を第1の粘着剤層11に用いることで、被着体がうちわであり貼付する面が紙であるような場合であっても、うちわの損傷や、第1の粘着剤層11の一部がうちわの表面に残ることがなく本発明の揮発成分放出ラベル1を剥がすことができ、うちわ等を本発明の揮発成分放出ラベル1を貼る前の状態で使ったり、別途また本発明の揮発成分放出ラベル1を貼付して用いたりすることができる。
印刷層13は、基材12の主面12Bの全面に形成される。印刷層13の形成方法は特に限定されず、例えば、樹脂凸版印刷(平圧凸版印刷、輪転印刷等)、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷が挙げられる。なお、以降の説明では基材12に剥離層14や第2の粘着剤層15が積層される旨の説明を行う場合があるが、これらの層は全て印刷層13を介して基材12に積層されるものである。
【0025】
剥離層14は、基材12の剥離領域12C上に形成される。剥離領域12Cは、基材12の外周縁から径方向内側に所定の距離までの領域が基材12の外周全部に渡って形成された環状の領域であり、第2の粘着剤層15および透過制御層16で被覆されない領域である。この剥離領域12Cにおいて、一部または全部に剥離処理が施されることで剥離層14を形成している。剥離層14を構成する材料としては、シリコーン系樹脂、アルキッド系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。これらのうち、シリコーン系樹脂が粘着力の制御が容易である点で好ましい。これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。また、上記に挙げた以外の樹脂、樹脂以外の触媒、オイル、オリゴマー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0026】
第2の粘着剤層15は、基材12の剥離領域12C以外の領域に積層される層であり、基材12よりも小さい径を有する平面視円形状に形成された層が、基材12と同心円状に積層される。第2の粘着剤層15は、揮発成分を含有している。揮発成分としては、生物忌避成分のほかにも、微生物増殖抑制成分、芳香成分等を用いることができる。生物忌避成分のうち、特に有用性が高いものは害虫忌避成分である。害虫忌避成分としては、合成物及び天然物由来のものがある。合成物としてはN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)などが挙げられ、非常に忌避効果が高いことが知られる。一方、動物に対する安全性の高さという面では天然物由来のものが好ましい。かかる天然物由来の害虫忌避成分としては、例えば、ラベンダー油、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、タイム油、ティートリー油などの精油が挙げられ、それぞれ1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ラベンダー油やタイム油など、芳香性を有するものは芳香成分としての機能も兼ねることができる。微生物増殖抑制成分としては、食品管理の分野で用いられることが多いため、天然物由来のものが動物に対する安全性の面から好ましく、このようなものとしてイソチアン酸ステアリルなどが挙げられる。なお、イソチアン酸ステアリルはハエ等の害虫に対する忌避効果があることも知られ、これを用いた場合には双方の効果から食品管理の分野での有効利用が期待できる。芳香成分としては、公知の合成香料、天然物由来香料の1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。第2の粘着剤層15は、印刷層13を介して基材12に接着可能であればどのような材料で構成されていてもよいが、揮発成分と相溶性の高いものが好ましい。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられ、揮発成分として比較的極性の高いラベンダー油やイソチアン酸ステアリルを用いる場合は、相溶しやすく扱いやすいアクリル系粘着剤を用いることができる。また、用いる揮発成分の極性の高低や、製造の条件等に合わせ、適宜にゴム系粘着剤やシリコーン系粘着剤を選択することができる。
【0027】
透過制御層16は、揮発成分を含有する第2の粘着剤層15を介して基材12に接着され、第2の粘着剤層15から放出される揮発成分の透過速度を制御する。透過制御層16は、第2の粘着剤層15と同じ大きさであり、基材12の剥離領域12C以外の領域に第2の粘着剤層15を介して接着されるものである。透過制御層16を構成する材料としては、貫通孔を設けたフィルム、多孔性フィルム、低分子有機化合物の透過性の比較的高い樹脂フィルム(例えば、ポリオレフィン系フィルム)等が挙げられる。ポリオレフィン系フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0028】
これらの透過制御層16および剥離層14には、第3の粘着剤層17を介してカバー層18が接着される。透過制御層16および第2の粘着剤層15は剥離層14の内周側に位置するため、カバー層18によって第2の粘着剤層15からの揮発成分の放出を防止することができる。
第3の粘着剤層17により、カバー層18が粘着により揮発成分保持層に接着する構成とした場合に、カバー層18と透過制御層16との粘着力は、5N/25mm以下(JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて測定。)であることが好ましい。本発明のカバー層18と透過制御層16との粘着力は、透過制御層16に貼付されたカバー層18を剥がすときの粘着力を意味する。使用時の剥がしやすさの観点から、カバー層18と透過制御層16との粘着力は、より好ましくは3.5N/25mm以下、さらに好ましくは2N/25mm以下である。透過制御層16がポリオレフィン系材料であると、第3の粘着剤層17の粘着力が比較的強い場合でも、カバー層18と透過制御層16との粘着力を上記範囲に調整することが容易となる。また、カバー層18と透過制御層16との粘着力は、使用前の剥離を防止するため、0.03N/25mm以上であることが好ましい。また、接着性が弱いと揮発成分保持層からのガスの発生等によって、カバー層18と透過制御層16との間の接着に剥がれが生じる可能性があるので、0.05N/25mm以上であることがより好ましい。第3の粘着剤層17は、剥離層14と接する領域、すなわち基材12の剥離領域12C上にのみ形成される構成とすることができる。しかし、このような形態では、第3の粘着剤層17と剥離層14との接着性は、剥離層14の存在のゆえに本質的に弱いものであるために、剥離領域の幅が狭い場合には剥がれやすくなってしまう。そこで、カバー層18と透過制御層16が接着している図2のごとき形態が、上記の剥がれを防止でき、より好ましい。
【0029】
第3の粘着剤層17は、カバー層18を透過制御層16および剥離層14に接着させるための層であり、カバー層18と同じ径を有して形成されている。第3の粘着剤層17により、カバー層18の剥離層14および透過制御層16への接着に押圧以外の特別のトリガーを要せず製造が容易である。第3の粘着剤層17に使用される粘着剤は、剥離層14に粘着可能であればどのような材料で構成されていてもよいが、カバー層18と剥離層14との粘着力が100mN/50mm以上(JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じ、試験片の幅を50mmとして測定。)となる材料を選択することが好ましい。本発明のカバー層18と剥離層14との粘着力は、剥離層14に貼付されたカバー層18を剥がすときの粘着力を意味する。カバー層18と剥離層14との粘着力が100mN/50mm未満であると、例えば、被着体がうちわのような凹凸のある面であった場合に、カバー層18が剥がれてしまうおそれがある。また、図2に示すように、透過制御層16と剥離層14の表面には段差が生じている場合が多く、粘着力が弱いと浮きが生じてしまい、揮発成分の放出を防止するという効果が得られない可能性がある。また、カバー層18が透明である場合には美観を損ねたりするおそれがある。また、カバー層18と剥離層14との粘着力の上限値は、通常の粘着剤と剥離材との粘着力として許容される範囲であれば問題ないが、5000mN/50mm以下であることが好ましい。また、カバー層18と剥離層14との粘着力は、150mN/50mm以上であることがより好ましく、200mN/50mm以上であることがさらに好ましい。また、カバー層18と剥離層14との粘着力は、剥がしやすさの観点から4000mN/50mm以下であることがより好ましく、3000mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
このような粘着力範囲を満たす第3の粘着剤層17の材料としては、例えば、樹脂主剤に架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、及びその他添加物の1種単独又は2種以上の混合物を任意に添加した粘着剤が挙げられる。
樹脂主剤としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂等の1種単独又は2種以上の混合物が挙げられる。これらのうちでも、剥離材や被着体への粘着力を制御するための設計手法の確立されているアクリル系樹脂を用いることが好ましい。本明細書ではアクリル系樹脂を用いた粘着剤をアクリル系粘着剤と呼ぶ。
【0031】
架橋剤としては、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
粘着付与剤としては、テルペン系樹脂、ロジンエステル、スチレン系樹脂等が挙げられる。
可塑剤としては、ミリスチン酸イソプロピル等の合成油、ヒマシ油等の植物油等の、粘着剤を粘性的に改質しうる低分子化合物が挙げられる。
その他添加物として、樹脂主剤及び粘着付与樹脂以外の樹脂、架橋剤以外の硬化剤、シランカップリング剤、顔料、色素、填料、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤等の1種単独又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0032】
アクリル系粘着剤は一般に、塗工液が、アクリル系樹脂等が有機溶剤に溶解したものである溶剤系アクリル系粘着剤と、塗工液が、アクリル系樹脂等が水系分散媒に懸濁状態で分散したエマルジョン系アクリル系粘着剤に大別されるが、そのいずれも用いることができる。
アクリル系粘着剤の材料の選択と粘着性の関係は諸文献に知られるところであり、例えば架橋剤の量を増やせば粘着剤がより弾性的となり粘着性が弱くなり、アクリル系樹脂の単量体として被着体と親和性の高い単量体を用いると粘着性が強くなることなどが知られている。
【0033】
第3の粘着剤層17に用いる粘着剤として、再剥離性の粘着剤を用いることができる。このような粘着剤を用いることで、透過制御層16が、紙やポリエチレンテレフタレート等の、カバー層18と透過制御層16との粘着力が高くなる傾向のある材料により構成されていたとしても、容易に剥離することが可能であり好ましい。再剥離性の粘着剤は、紙やポリエチレンテレフタレート等を被着体としたときに、被着体の破壊や、粘着剤の凝集破壊を生じず、容易に剥がすことができるものであれば限定されないが、例えば、20〜60μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、10〜50μmの厚みの再剥離性の粘着剤を設けた粘着シートを、ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼付し、剥離するときの粘着力(JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて測定。)が、0.1〜3N/25mmであるものが好ましく、0.5〜2.5N/25mmであるものがより好ましく、0.5〜2N/25mmであるものがさらに好ましい。
第3の粘着剤層17に用いる粘着剤を、例えば上記のような粘着剤のうち、複数種のものであって、それらの間での同一の剥離材への粘着力の高低の傾向が既知のものを用いてカバー層18を作製し、剥離層14に貼付して粘着力を確認することによって、粘着力が上記の範囲となる粘着剤を選択することができる。
【0034】
また逆に、例えば複数種のシリコーン系剥離剤で、それらの間での同一の粘着材が貼付されたときの粘着力の傾向が既知のものを用いて剥離層14を形成し、任意に選択した粘着剤を用いて作製したカバー層18を貼付して、粘着力を確認することによっても、粘着力が上記の範囲となるシリコーン系剥離剤を選択することができる。
なお、透過制御層16の材料がポリオレフィン系の材料であると、第3の粘着剤層17に用いる粘着剤を、カバー層18と剥離層14との粘着力が高くなるように、強い粘着特性を有するものを選択したとしても、揮発成分保持層のカバー層18に隣接する層との粘着力が高くなりすぎず、好ましい範囲に保つことが容易である。
透過制御層16をポリオレフィン系フィルムにより形成した場合には、カバー層18との粘着力を抑えられる点と、揮発成分の透過性が高い点の双方の観点から好ましい。
【0035】
カバー層18は、第2の粘着剤層15からの揮発成分の放出を防止するための層であり、第3の粘着剤層17を介して剥離層14および透過制御層16に接着される。カバー層18は、その外周が第2の粘着剤層15および透過制御層16よりも大きく、また、基材12の外周と同一かまたはそれより小さく形成される。カバー層18を構成する材料としては、揮発成分の透過を防止でき、ラベルとしての性能を損なわない程度の可とう性を有していれば特に限定されないが、樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムの中でも揮発成分の透過をさらに抑制するものとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルロース系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなどが好ましく、これらの中でもポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。これらの樹脂フィルムは、揮発成分の透過をさらに抑制するために、樹脂フィルム内部に填料等が含有されていてもよいし、金属層、UV硬化樹脂からなる層等がいずれかの面に積層されたものであってもよいし、プラズマCVD、イオン注入等による表面改質がされていてもよい。また、第3の粘着剤層17を設ける場合には、第3の粘着剤層17を設ける面に、密着性を上げるために接着剤密着層が設けられていてもよいし、コロナ処理等の物理的な表面改質がされていてもよい。カバー層18を構成する材料として、自己粘着性のある材料や、熱接着性のある材料等を用いる場合などは、カバー層18自体が接着手段を兼ねるので、第3の粘着剤層17を設けずにカバー層18を揮発成分保持層及び剥離層14に接着することができる。
カバー層18は、用途に応じて透明又は不透明とすることができる。透明なものとした場合には、印刷層13が設けられているときは、カバー層18を除去する前から印刷層13の画像を視認することができ、カバー層18には何ら印刷等の画像表示を行わなくても、カバー層18の除去前の揮発成分放出ラベル1に意匠性や情報表示等を付与できるので安価である。一方、不透明なものを用いた場合で、印刷層13が設けられているときには、印刷層13の画像表示は不透明な樹脂フィルムにより遮蔽され、カバー層18を除去しない限り視認できない。そこで、例えばカバー層18に、不透明な樹脂フィルムよりも揮発成分保持層から遠い側に、印刷層13の画像表示とは異なる画像表示とした印刷層等を設けることで、カバー層18の除去前と除去後で異なる画像表示の効果が得られる。
【0036】
また、カバー層18と剥離層14との間のカバー層18の外周縁に沿った一部には非接着領域19が形成されている。非接着領域19は、第2の粘着剤層15または透過制御層16とは隣接しない領域である。この領域には第3の粘着剤層17は設けられないため、非接着領域19ではカバー層18は剥離層14に接着されていない。カバー層18と剥離層14が接着されることにより揮発成分保持層を封止することが本発明の本旨であるので非接着領域19は揮発成分保持層と接しない限度の領域に設けることができる。
【0037】
[2.揮発成分放出ラベルの製造方法]
次に、上述した揮発成分放出ラベル1を製造する方法について説明する。揮発成分放出ラベル1は、図3に示す第1の製造装置100と図4に示す第2の製造装置200とにより製造される。以下、各製造装置の構成を説明するとともに、各工程におけるシートの層構成を図面に基づいて説明する。
【0038】
第1の製造装置100は、図3において、剥離シートRLに第1の粘着剤層PSA1、基材シートBの順に積層された第1原反R1を繰り出し、基材シートBに対して印刷処理および剥離処理を施した後、透過制御シートRCに第2の粘着剤シートPSA2が積層された第3原反R3を積層し、この第3原反R3に所定形状の切込を形成した後、第3原反R3の不要部分S1を除去し、第2原反R2として巻き取るものである。ここで、第3原反R3は、第2粘着剤シートPSA2に害虫忌避成分が含有された状態で予め用意されている。また、不要部分S1は第4原反(不要ロール)R4として巻き取られる。
すなわち、第1の製造装置100は、図2における剥離シート2、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13、剥離層14、第2の粘着剤層15、および透過制御層16に該当する部分を形成する。
【0039】
具体的に、第1の製造装置100は、図3に示すように、第1原反R1を繰り出す繰出手段110と、基材シートBに対して印刷処理を施す印刷手段120と、印刷処理が施された基材シートBに対して剥離処理を施す剥離処理手段130と、第3原反R3を印刷処理および剥離処理が施された基材シートBに接着する接着ローラ140と、第3原反R3を所定形状に切断する切断手段150と、第3原反R3の不要部分S1を剥離して第4原反(不要ロール)R4として巻き取る巻取手段160と、第1原反R1に所定形状の第3原反R3が積層されたシートを第2原反R2として回収する回収手段170と、を備えている。
【0040】
繰出手段110は、第1原反R1をロール状に巻回して支持するとともに図示しない回転モータにより駆動される支持ローラ111と、支持ローラ111から引き出された第1原反R1を案内するとともに図示しない回転モータにより駆動するガイドローラ112と、を備えている。
印刷手段120は、繰出手段110から繰り出された第1原反R1の基材シートBに対して、平圧凸版印刷法により印刷処理を施し、図5(A)に示すように、基材12の上に印刷層13を形成する。
剥離処理手段130は、印刷層13が形成された基材シートBに対して、揮発成分保持層形成領域以外の領域12Dのみに剥離処理を施す。ここで、揮発成分保持層形成領域は、揮発成分保持層を形成することが予定されている円状の領域で、その外周は直径34mmである。揮発成分保持層形成領域は、円状であるので幾何学的に閉じた形状であり、基材シートBの主面において他の揮発成分保持層形成領域と連続していない(不連続である)。この揮発成分保持層形成領域以外の領域12Dのみに剥離剤を塗布する。このように、基材シートBの一部にのみ剥離剤を塗布する方法としては、基材シートBの塗布部分のみに接触するように設計された版を作製し、この版に剥離剤を展開し、これを基材シートBに接触させることで剥離剤を基材シートBの所定の部分にのみ転写塗布することができる。具体的には、樹脂凸版印刷で用いる版を用いて、UV硬化性インクの代わりにUV硬化性の剥離剤を用いて、印刷を施すのと同様の方法により剥離剤を基材シートBの所定の部分にのみ塗布し、UVを照射して硬化することで剥離層を形成できる。これにより、図5(B)に示すように、基材12の揮発成分保持層形成領域以外の領域12D上にのみ剥離層14が形成される(剥離処理工程)。
【0041】
接着ローラ140は、一対のローラで構成され、第3原反R3と印刷処理および剥離処理が施された第1原反R1とを一対のローラで挟み込むことにより、第3原反R3を印刷処理および剥離処理が施された第1原反R1に接着させ、図3中左方向に誘導する。これにより、図6(A)に示すように、基材12の表面全体に第3原反R3が接着される(揮発成分保持シート積層工程)。
切断手段150は、接着ローラ140と巻取手段160との間に設けられ、第3原反R3に直径34mmの円形状の切り込みを形成する切込刃151を備えたダイカット部152と、このダイカット部を支持して昇降させる図示しないシリンダと、シリンダを駆動する図示しない駆動モータとを有している。切込刃151は、上述した揮発成分保持層形成領域の外周と同じ径(直径34mm)を有する円形状の刃である。具体的に、シリンダが駆動モータにより下降することで、切込刃151が第3原反R3のみに対して揮発成分保持層形成領域と剥離層の境界線に沿った円形状の切込部C1を形成する(第1の切込形成工程、図6(B)参照)。
【0042】
巻取手段160は、切断手段150により形成された円形状の切込部C1に沿って、円形部分以外の帯状の不要部分S1を、基材シートBから剥離する剥離ローラ161と、この剥離ローラ161で剥離された不要部分S1を巻き取る巻取ローラ162と、を備えている。図8に示すように、不要部分S1は揮発成分保持層形成領域以外の領域12Dに対応して剥離層14上に積層されているため、剥離ローラ161により簡単に基材シートBから剥離することができる。このようにして、揮発成分保持層形成領域以外の領域12D上の不要部分S1を除去することで、円形状の第3原反R3、すなわち第2の粘着剤層15および透過制御層16が基材シートBに積層された状態となる(第1の剥離工程、図7(A)参照)。
【0043】
回収手段170は、図示しない回転モータにより回転するガイドローラ171と回収ローラ172とを備え、これらのローラの回転により、第1原反R1に印刷処理および剥離処理が施され、揮発成分保持層形成領域に第2の粘着剤層15および透過制御層16が積層された第2原反R2(図7(B)参照)を回収する。
【0044】
次に、第2の製造装置200について説明する。第2の製造装置200は、図4において、第1の製造装置200で回収した第2原反R2を繰り出し、第2原反R2に対してカバーシートCSに第3の粘着剤シートPSA3が積層された第6原反R6を接着させ、揮発成分放出ラベル1としての所定形状に切断した後、不要部分を剥離シート2から除去して第5原反R5として巻き取るものである。ここで、第6原反R6は、カバーシートCSに第3の粘着剤シートPSA3および剥離材が接着された状態で予め用意されており、剥離材を剥離しながら第6原反R6として繰り出している。
すなわち、第2の製造装置200は、図2における第3の粘着剤層17およびカバー層18に該当する部分を形成し、揮発成分放出ラベル1としての所定形状に形成している。
【0045】
具体的に、第2の製造装置200は、図7(B)に示す層構成の第2原反R2を繰り出す繰出手段210と、カバーシートCSに第3の粘着剤シートPSA3が積層された第6原反R6を第2原反R2に接着する接着ローラ220と、第2原反R2と第6原反R6とが積層されたシートを揮発成分放出ラベル1の所定形状に切断する切断手段230と、不要部分を剥離シート2から剥離して第7原反(不要ロール)R7に巻き取る巻取手段240と、剥離シート2に所定形状の揮発成分放出ラベル1が所定間隔で複数貼り付けられたシートを回収する回収手段250と、を備えている。
【0046】
繰出手段210は、第2原反R2をロール状に巻回して支持するとともに図示しない回転モータにより駆動される支持ローラ211と、支持ローラ211から引き出された第2原反R2を案内するとともに図示しない回転モータにより駆動する駆動ローラ212と、を備えている。
接着ローラ220は、繰り出された第6原反R6と第2原反R2とを駆動ローラ212との間に挟み込むことにより、第6原反R6を第2原反R2に接着させ、図4中左方向に誘導する。これにより、図9に示すように、基材12の主面全体にカバー層18が第3の粘着剤層17を介して接着される(カバーシート積層工程)。
【0047】
切断手段230は、接着ローラ220と巻取手段240との間に設けられ、全ての層が積層された図9に示す層構成のシートに直径45mmの円形状の切り込みを形成する切込刃231を備えたダイカット部232と、このダイカット部232を支持して昇降させる図示しないシリンダと、シリンダを駆動する図示しない駆動モータとを有している。切込刃231は、揮発成分放出ラベル1の外周と同じ径(直径45mm)を有する円形状の刃であり、基材12の剥離領域12Cの外周に切込みを形成する。シリンダが駆動モータにより下降することで、第1の粘着剤層11、基材12、印刷層13、剥離層14、第3の粘着剤層17、およびカバー層18に対して円形状の切込部C2を形成する(第2の切込形成工程、図10(A)参照)。
【0048】
巻取手段240は、切断手段230により揮発成分放出ラベル1として切込形成された円形状の領域以外の不要部分S2を、剥離シート2から剥離する剥離ローラ241と、この剥離ローラ241で剥離された不要シートS2を巻き取る巻取ローラ242と、を備えている。巻取手段240により、図10(B)に示すように不要部分S2を除去することにより、剥離シート2に円形状の揮発成分放出ラベル1が所定間隔で複数配列された状態となる(第2の剥離工程、図1参照)。
回収手段250は、図示しない回転モータにより回転する駆動ローラ251と回収ローラ252とを備え、これらのローラの回転により、剥離シート2に揮発成分放出ラベル1が複数貼り付けられたシートを第5原反R5として回収する。
【0049】
[3.本実施形態の作用効果]
以上の本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
揮発成分放出ラベル1は、基材12上に揮発成分を保持する第2の粘着剤層15および透過制御層16が積層され、その周囲の基材12上に剥離層14が形成され、透過制御層16および剥離層14に対してカバー層18が第3の粘着剤層17を介して接着されている。このため、揮発成分保持層である第2の粘着剤層15および透過制御層16は、基材12とカバー層18と剥離層14との間に封止され、第2の粘着剤層15からの揮発成分の放出を防止することができる。一方で、第2の粘着剤層15および透過制御層16は剥離層14の形成されていない領域に接着しているため剥がれにくく、カバー層18が揮発成分保持層に接着している場合にこれを剥がすときに同時に剥がれてしまうこと、及びその他使用者の意図していない揮発成分保持層の剥離を防止できる。そして、揮発成分保持層を接着により基材12に固定する場合には、揮発成分保持層を基材12の全面に接着した後、剥離領域の内周で揮発成分保持層のみを分離し、剥離領域の揮発成分保持層を除去することで、基材の周縁部のみに揮発成分保持層が形成されていない揮発成分放出ラベル1を容易に製造できる。
【0050】
また、使用の際には、カバー層18を剥離層14および透過制御層16から剥離することで透過制御層16が露出するため、使用時に初めて揮発成分の放出を開始させることができる。
また、カバー層18と剥離層14との粘着力は100mN/50mm以上であるため、被着体に凹凸がある場合にであっても、浮きを生じさせることなく確実に接着させることができる。また、カバー層18と透過制御層16との粘着力は5N/25mm以下であるため、透過制御層16からカバー層18を容易に剥離することができる。したがって、糊残りが生じないため、カバー層18を剥離した後の美観を維持することができる。
【0051】
また、カバー層18は、基材12の外周と同一かまたはそれより小さく形成されている。このため、基材12からカバー層18および第3の粘着剤層17がはみ出すことがなく、第3の粘着剤層17に対する意図せぬ付着が発生しないため、使用感に優れる。
さらに、カバー層18と剥離層14との間に非接着領域19を設けていることで、非接着領域19に対応するカバー層18を持ち手とすることができ、カバー層18の剥離が容易となる。上述したように、カバー層18と剥離層14との剥離力が上限値である5000mN/50mmと大きい場合でも、持ち手があることで剥離が容易となる。
【0052】
揮発成分放出ラベル1の製造において、基材12の外周に沿った剥離領域12C上に剥離層14を設けたことで、揮発成分保持シート(第2の粘着剤シートPSA2および透過制御シートRC)を基材12上に一旦積層した後、揮発成分保持シートのみが分離されるように剥離領域12Cに沿って切込を形成し、揮発成分保持シートの不要部分を剥離層14から剥離する。剥離領域12Cに剥離層14が形成されていることにより、剥離層14に接着している揮発成分保持シートの不要部分を容易に剥離することができる。
このように、帯状の揮発成分保持シートを基材シートに積層した後、不要部分のみを除去する方法では、予め揮発成分保持シートを特定形状に加工したり、この加工された揮発成分保持シートを所定の位置に配置するための位置合わせを行ったりする必要がないため、連続的に製造する場合には有利であり、大量生産に適している。
【0053】
[4.変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態では、揮発成分を含有する第2の粘着剤層15と透過制御層16とにより揮発成分保持層を構成したが、第2の粘着剤層15に揮発成分を含有させずに、別途揮発成分を含有させるための層を設けてもよい。例えば、基材12側から粘着剤層、揮発成分保持層、粘着剤層、透過制御層の順に積層した構成としてもよいし、粘着剤層、揮発成分保持層、透過制御機能を有する粘着剤層の順に積層した構成としてもよい。
また、上記実施形態では、第2の粘着剤層15により揮発成分保持層を基材12に固定しているが、これに限られず、粘着剤以外の接着剤などで固定してもよい。
さらに、上記実施形態では、第3の粘着剤層17によりカバー層18を透過制御層16および剥離層14に接着させているが、粘着剤以外の接着剤などで接着させてもよい。
【0054】
上記実施形態において、カバー層の外周上の一点から他の一点までを結ぶ線上のカバー層のみに切込を施してもよい。この切込は、カバー層の厚さ方向を完全に貫通するものであってもよいし、カバー層の深さ方向の途中まで形成されるものであってもよい。これによれば、この切込に沿ってカバー層を剥がすことが容易となり、特に被着体の可とう性が高い場合にはより効果的である。
上記実施形態では、揮発成分として害虫忌避成分を使用したが、芳香成分や微生物増殖抑制成分等も使用することができる。揮発成分が芳香成分である場合には、カバー層18を剥離する前には全くにおいがしないため、初めてカバー層18を剥離した際の驚きや新鮮さなどの精神的効果がより一層高い。
【0055】
上記実施形態では、印刷層13を設ける構成としたが、印刷層13を設けない構成としてもよい。
また、上記実施形態では、透過制御層16を設ける構成としたが、透過制御層16を設けない構成としてもよい。この場合、上述したカバー層18と透過制御層16との接着についての記載(それに関る透過制御層16の材料に関する記載を含む。)は、カバー層18と揮発成分保持層一般との接着についての記載に置き換えることができ、これにより本発明の効果は影響されない。
また、上記実施形態では第3の粘着剤層17を設ける構成としたが、上述したカバー層18自体が接着手段を兼ねている場合などにはこれを設けない構成とすることができる。
さらに、上記実施形態では、第1の粘着剤層11により、基材12を被着体に接着する構成としたが、第1の粘着剤層11を設けない構成としてもよい。各種貼り付け方法で物に貼り付ければよい。
また、上記実施形態では、非接着領域19を設ける構成としたが、これを設けない構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態の製造方法では、基材シートBには予め剥離シートRL及び第1の粘着剤層PSA1が積層されて、基材Bが剥離シートRLに接着されているが、PSA1を積層せずに、他の接着手段により剥離シートRLが接着されていてもよい。
また、基材シートBに剥離シートRLを接着する時期については、カバーシート積層工程を経た後に基材シートBを剥離シートRLに接着してもよいし、剥離処理工程、揮発成分保持シート積層工程、第1の切込形成工程、第1の剥離工程、及びカバーシート積層工程のいずれか2の連続する工程の間に接着してもよい。カバーシート積層工程の後に第2の切込形成工程及び第2の剥離工程を行う場合には、遅くとも第2の切込形成工程を行う前までに剥離シートRLが基材シートBに接着されている必要がある。
第2の切込形成工程及び第2の剥離工程を行わずに、カバーシート積層工程を経た第2原反R2を、例えば基材12の剥離領域12Cの外周にフルカット(図9のカバーシート層18から剥離シート2にいたるまでのすべての層を切断する。)して、図2における基材12の剥離領域12Cの外周と同一形状の個々のラベルとしてもよい。
【0057】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET3811」,厚さ38μm)上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製,製品名「PK」)を、乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して乾燥させ、第2の粘着剤層を形成した。次にこの粘着剤層に、害虫忌避成分としてのラベンダー油をグラビアロールにて含有量が6g/m2になるように塗布して、害虫忌避層(揮発成分保持層)を形成した。この害虫忌避層に、透過制御層としての無延伸ポリエチレンフィルム(林一二社製,厚さ70μm)を貼り合わせて揮発成分保持層形成用シートを得た。
【0060】
次に、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,製品名「クリスパー」,厚さ38μm)上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製,製品名「PLシン」)を乾燥後の塗布量が22g/m2になるように塗布して乾燥させ、第1の粘着剤層を形成した。この第1の粘着剤層に、剥離シート(リンテック社製剥離紙,製品名「SP−8LK})を貼り合わせた。さらに、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1の粘着剤塗布面と反対の面に、意匠性のある模様の印刷層を平圧凸版印刷により設け、その上に、等間隔に直径34mmの円形の剥離剤非塗布部が設けられるように、剥離剤として剥離性のあるUV硬化インク(DICグラフィックス株式会社製、製品名「ダイキュアセプターDT OPニスEM」)を平圧凸版印刷と同様の方法により、0.14g/m2になるように塗布および硬化を行い、剥離層を形成し、剥離層の形成された基材を得た。
【0061】
揮発成分保持層形成用シートから剥離フィルムを除去し、第2の粘着剤層を介して基材の剥離領域の設けられた面と接着するように、基材に貼り合わせた。その後、揮発成分保持層形成用シートのみが剥離剤非塗布部の外周に沿って分離されるようにハーフカットを行い、剥離剤非塗布部と接着した部分以外の揮発成分保持層形成用シートを除去し、揮発成分保持層を基材上に形成させた。
カバー層として、再剥離性の粘着シート(リンテック社製、製品名「リピール6041(PET50A)」)を、剥離材を除去した後に、基材の揮発成分保持層の形成された面に、カバー層の粘着剤層(第3の粘着剤層)が対向するようにして貼り合わせ、積層体を得た。その後、積層体の剥離シート以外が分離されるように、直径が45mmで、揮発成分保持層と同心円の形状に積層体をハーフカットし、積層体の剥離シート以外の部分を除去することで、基材の剥離シート上に形成された揮発成分放出ラベルを得た。
【0062】
[実施例2]
カバー層として、再剥離性の粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) MF 8LK2」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0063】
[実施例3]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PLN05 PET25」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0064】
[実施例4]
透過制御層として、1cm2あたりに2個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0065】
[実施例5]
カバー層として、再剥離性の粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) MF 8LK2」)を用い、透過制御層として、1cm2あたりに2個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0066】
[実施例6]
カバー層として、微粘性の粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) RT−BN」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0067】
[実施例7]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) PAT1 8LK」)を用いた以外は、実施例1と同様にして揮発成分放出ラベルを得た。
【0068】
[実施例8]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PET50(A) PAT1 8LK」)を用い、透過制御層として、1cm2あたりに4個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてカバー層付き揮発成分放出ラベルを得た。
【0069】
[実施例9]
カバー層として、粘着シート(リンテック社製、製品名「PLN05 PET25」)を用い、透過制御層として、1cm2あたりに2個の、直径1mmの貫通孔の設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてカバー層付き揮発成分放出ラベルを得た。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1の粘着剤塗布面と反対の面に印刷層を設けた後、剥離層を設けず、また、揮発成分保持層形成用シートを基材に貼り合せた後、揮発成分保持層形成用シート、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び第1の粘着剤層のみが分離されるように直径34mmの円形にハーフカットを行い、切断した円形の外側の部分の揮発成分保持層形成用シート、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び第1の粘着剤層を除去して、カバー層を有していない揮発成分放出ラベルを得た。
【0071】
[比較例2]
実施例1において、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1の粘着剤塗布面と反対の面に、印刷層を設けた後、剥離層を設けずにカバー層付き揮発成分放出ラベルを得ようとしたが、剥離剤非塗布部に相当する領域に接着した部分以外の揮発成分保持層形成用シートを除去しようとしたところ、剥がれずに除去することができず、カバー層付き揮発成分放出ラベルを得ることができなかった。
【0072】
<試験1>
前述の実施例で得られた揮発成分放出ラベルのカバー層の浮きや剥がれについて以下のように評価した。
各揮発成分放出ラベルを100mm×100mmのアート紙に貼付し、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した。その後、アート紙を、ラベルの貼られた面が外側になるようにして、アート紙の端部同士が接触するように屈曲させ、ラベルのカバー層の剥離領域からの剥がれを下記の基準で評価した。
【0073】
○:剥がれが生じない。
×:剥がれが生じる。
【0074】
<試験2>
前述の実施例および比較例で得られた揮発成分放出ラベルを密閉包装材に保管しておき、密閉包装材から取り出してうちわに貼付して5日間放置した。その後、カバー層付きの揮発成分放出ラベル(実施例1〜9)についてはカバー層を剥離し、剥離の際の剥がし易さを下記の基準で評価した。
○:容易に剥がれる。
△:やや剥がしにくいものの、剥がれる
×:強固に接着しており、剥がすのが困難である。
【0075】
また、剥離後のにおいの有無から、揮発成分の残存性を下記の基準で評価した。
○:強いにおいを感じる。
×:においが微弱である。
【0076】
<試験3>
直径34mmの円形の、剥離剤非塗布部を設けなかったほかは、実施例1と同様にして、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムに第1の粘着剤層を形成し、第1の粘着剤に剥離シートを貼り合わせ、また、剥離層を形成し、剥離層の形成された基材を得た。この剥離層に、前述の実施例で用いたカバー層を第3の粘着剤層により接着させた。接着は、ラミネート装置を用いて行い、接着してから測定まで23℃、相対湿度50%の環境下で24時間保管した。基材の第1の粘着剤層から剥離シートを剥がし、平板な板に貼り合わせ、基材の剥離領域からカバー層を剥離する際の剥離力、すなわち基材(剥離領域)とカバー層との粘着力を、JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて測定した。なお、試験片の幅を50mmとして測定した。また、JIS Z0237:2000の10.2.2〜10.3.1の、試験板及び圧着に関する項目は、上記の手順に代えた。
【0077】
<試験4>
実施例1で用いた揮発成分保持層形成用シートの剥離シートを除去し、揮発成分保持層形成用シートを平板な板に貼り合わせ、試験板とした。揮発成分保持総計静養シートの透過制御層に対して、前述の実施例で用いたそれぞれのカバー層を第3の粘着剤層により試験板に貼付し、貼付後24時間後の粘着力を、JIS Z0237:2000の「10.4.1 試験板に対する180度引きはがし粘着力」に準じて粘着力を測定した。なお、実施例1,6については、カバー層と透過制御層との粘着力が低く、試験片の幅が小さいと測定される力の絶対値が低く誤差による影響が大きいため、粘着力が試験片の幅に比例するものとして、試験片の幅を50mmとして測定した値から試験片が25mmの幅の場合に対応する粘着力を算出し、これを粘着力の値とした。
【0078】
上記試験1〜4の試験結果を以下の表1に示す。なお、表中PEは無延伸ポリエチレンフィルム、PETはポリエチレンテレフタレートフィルムを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1〜9はカバー層付きの揮発成分放出ラベルであるため、揮発成分の残存性が良好であった。一方、比較例1はカバー層を有していない揮発成分放出ラベルであるため、揮発成分はほとんど放出されていた。また、剥離層を設けなかった比較例2ではカバー層付き揮発成分放出ラベルを製造することができなかった。
【符号の説明】
【0081】
1…揮発成分放出ラベル
2…剥離シート
11…第1の粘着剤層
12…基材
13…印刷層
14…剥離層
15…第2の粘着剤層
16…透過制御層
17…第3の粘着剤層
18…カバー層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の主面の外周に沿って形成された剥離層と、
前記基材の主面の前記剥離層の内側に形成された揮発成分保持層と、
少なくとも前記剥離層に接着され、かつ前記揮発成分保持層を被覆可能なカバー層と、を備える
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の揮発成分放出ラベルにおいて、
前記カバー層と前記剥離層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記剥離層の粘着力は、100mN/50mm以上である
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の揮発成分放出ラベルにおいて、
前記カバー層と前記揮発成分保持層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記揮発成分保持層との粘着力は、5N/25mm以下である
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の揮発成分放出ラベルにおいて、
前記揮発成分は、微生物増殖抑制成分、芳香成分、および生物忌避成分のうちいずれかである
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項5】
帯状の基材シートの主面に不連続な揮発成分保持層形成領域を画定し、この揮発成分保持層形成領域以外の領域に対して剥離層を形成する剥離処理工程と、
前記基材シートの主面全体に揮発成分保持シートを接着させる揮発成分保持シート積層工程と、
前記揮発成分保持層形成領域の境界線に沿って前記揮発成分保持シートに対して第1の切込を形成する第1の切込形成工程と、
前記揮発成分保持層形成領域に積層された前記揮発成分保持シートと前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートとを前記第1の切込に沿って分離し、前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートを不要シートとして前記剥離層から剥離する第1の剥離工程と、
前記基材シートの主面全体にカバーシートを接着させるカバーシート積層工程と、を備える
ことを特徴とする揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の揮発成分放出ラベルの製造方法において、
前記基材シートは、剥離シートに接着されており、
前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートに対して、当該揮発成分放出ラベルの形状となる第2の切込を形成する第2の切込形成工程と、
当該揮発成分放出ラベルとそれ以外の領域とを前記第2の切込に沿って分離し、当該揮発成分放出ラベル以外の領域となる前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートを不要シートとして前記剥離シートから剥離する第2の剥離工程と、をさらに備える
ことを特徴とする揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルの製造方法。
【請求項1】
基材と、
前記基材の主面の外周に沿って形成された剥離層と、
前記基材の主面の前記剥離層の内側に形成された揮発成分保持層と、
少なくとも前記剥離層に接着され、かつ前記揮発成分保持層を被覆可能なカバー層と、を備える
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の揮発成分放出ラベルにおいて、
前記カバー層と前記剥離層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記剥離層の粘着力は、100mN/50mm以上である
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の揮発成分放出ラベルにおいて、
前記カバー層と前記揮発成分保持層とが、粘着により接着しており、前記カバー層と前記揮発成分保持層との粘着力は、5N/25mm以下である
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の揮発成分放出ラベルにおいて、
前記揮発成分は、微生物増殖抑制成分、芳香成分、および生物忌避成分のうちいずれかである
ことを特徴とする揮発成分放出ラベル。
【請求項5】
帯状の基材シートの主面に不連続な揮発成分保持層形成領域を画定し、この揮発成分保持層形成領域以外の領域に対して剥離層を形成する剥離処理工程と、
前記基材シートの主面全体に揮発成分保持シートを接着させる揮発成分保持シート積層工程と、
前記揮発成分保持層形成領域の境界線に沿って前記揮発成分保持シートに対して第1の切込を形成する第1の切込形成工程と、
前記揮発成分保持層形成領域に積層された前記揮発成分保持シートと前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートとを前記第1の切込に沿って分離し、前記揮発成分保持層形成領域以外の領域に積層された前記揮発成分保持シートを不要シートとして前記剥離層から剥離する第1の剥離工程と、
前記基材シートの主面全体にカバーシートを接着させるカバーシート積層工程と、を備える
ことを特徴とする揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の揮発成分放出ラベルの製造方法において、
前記基材シートは、剥離シートに接着されており、
前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートに対して、当該揮発成分放出ラベルの形状となる第2の切込を形成する第2の切込形成工程と、
当該揮発成分放出ラベルとそれ以外の領域とを前記第2の切込に沿って分離し、当該揮発成分放出ラベル以外の領域となる前記基材、前記剥離層、および前記カバーシートを不要シートとして前記剥離シートから剥離する第2の剥離工程と、をさらに備える
ことを特徴とする揮発成分保持層を封止した揮発成分放出ラベルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−144460(P2012−144460A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2273(P2011−2273)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(597152814)株式会社まつよ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(597152814)株式会社まつよ (1)
【Fターム(参考)】
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