説明

揺動式操作レバーの組付構造

【課題】ケースへの操作レバーの組み付けを作業者の負担なく短時間で簡単に行わせる。
【解決手段】操作レバー1を弾性部材9で操作反対方向に付勢しつつ、ケース2に操作レバーを揺動自在に軸支する揺動式操作レバーの組付構造で、操作レバーの被当接部16を前記付勢のもとで当接させる仮組付用の当接部19をケース2に設けた。当接部19は複数のリブである。被当接部16は軸支部8の周囲の湾曲面である。被当接部16を当接部19から離間させた状態で、操作レバー1を軸部材4で本組付することも有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の手動変速機に使用される揺動式操作レバーの組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の揺動式操作レバーの組付構造の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この揺動式操作レバー51は自動車のステアリングホイル52の裏側に近接して左右一対配置され、運転者が左右何れかの操作レバー51を手指で手前に引くことで、スポーティなマニュアル変速操作(シフトアップ又はシフトダウン)を行わせるものである。
【0004】
操作レバー51は軸部53でケース54に揺動自在に支持され、ケース内で操作レバー51の基端側の駆動部55がゴム材(弾性部材)56でスイッチ部57に向けて付勢され、ゴム材56とスイッチ部57との間に中立復帰機構としての小ローラ58が設けられている。スイッチ部57は図示しない変速制御装置に接続されている。
【0005】
操作レバー51の操作でスイッチ57がオンし、変速制御装置に信号が送られて、シフトアップ又はシフトダウンの操作が行われる。
【特許文献1】特開2005−104423号公報(図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の揺動式操作レバーの組付構造においては、ゴム材56で操作レバー51の駆動部55の付勢を行わせているが、例えば、ゴム材56に変えて力の強い金属ばね等の弾性部材を用い、弾性部材の付勢方向を、操作レバー51の軸部53をケース側の孔部59から離間させる方向に設定した場合には、ケース54に操作レバー51を組み付ける際に、軸部53と孔部59の位置がずれたり、操作レバー51が浮き上がったりしやすくなり、それを防ぐために操作レバー51を一々手で押えておかなければならず、組み付けに手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、ケースへの操作レバーの組み付けを作業者の負担なく短時間で簡単に行わせることのできる揺動式操作レバーの組付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る揺動式操作レバーの組付構造は、操作レバーを弾性部材で操作反対方向に付勢しつつ、該ケースに該操作レバーを揺動自在に軸支する揺動式操作レバーの組付構造において、前記操作レバーの被当接部を前記付勢のもとで当接させる仮組付用の当接部を前記ケースに設けたことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、操作レバーの被当接部を弾性部材の付勢力でケースの当接部に押し付けることで、操作レバーがケースに仮保持され、作業者が操作レバーから手を離しても操作レバーが浮き上がったり、位置ずれしたり、落ちたりすることがなくなる。この仮組付状態で操作レバーを軸部材でケースに本組付する。本組付が完了した時点で、被当接部は当接部に接触していてもよく、請求項4に記載するように非接触であってもよい。
【0010】
請求項2に係る揺動式操作レバーの組付構造は、請求項1記載の揺動式操作レバーの組付構造において、前記当接部が複数のリブであることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、複数のリブが操作レバーの被当接部に同時に当接して、操作レバーが各リブで安定に支持される。各リブは軸部材に対して周方向に間隔をおいて配置されることが好ましい。
【0012】
請求項3に係る揺動式操作レバーの組付構造は、請求項1又は2記載の揺動式操作レバーの組付構造において、前記被当接部が軸支部の周囲の湾曲面であることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、操作レバーの湾曲面がケースのリブ等の当接部に引っ掛かり等なくスムーズに当接し、操作レバーの仮組付がスムーズ且つ確実に行われる。また、当接部である複数のリブが湾曲面に対して周方向に間隔をおいて各方向から安定に当接する。また、操作レバーの軸支部の中心と湾曲面の中心とを一致させれば、本組付後の操作レバーの操作時に湾曲面と当接部とがスムーズに摺動して、操作レバーのスムーズな操作が可能となる。
【0014】
請求項4に係る揺動式操作レバーの組付構造は、請求項1〜3の何れかに記載の揺動式操作レバーの組付構造において、前記被当接部を前記当接部から離間させた状態で、前記操作レバーを軸部材で本組付することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、操作レバーの被当接部とケースの当接部が非接触の状態で操作レバーが本組付されることで、操作レバーの操作時に非当接部と当接部との摺動抵抗が皆無となり、操作レバーの揺動が小さな力でスムーズに行われる。操作レバーの仮組付時に被当接部を当接部に当接させた状態で、操作レバーを弾性部材の付勢に抗して少し移動させ、その位置で軸部材で操作レバーをケースに本組付する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、操作レバーが仮組付状態でケースに仮保持され、作業者が操作レバーから手を離すことができるから、操作レバーの本組付(軸支)を簡単に且つ確実に行うことができ、操作レバーの組付作業性と組付品質が向上する。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、複数のリブで操作レバーを安定に支持することができ、請求項1記載の発明の効果が促進される。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、操作レバーの湾曲面を複数のリブ等の当接部で安定に支持することができ、請求項1記載の発明の効果が促進される。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、操作レバーの操作時に被当接部と当接部との摺動摩擦がないから、操作レバーの操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図5は、本発明に係る揺動式操作レバーの組付構造の一実施形態を示すものである。
【0021】
この揺動式操作レバー1は金属材ないし合成樹脂材で形成され、合成樹脂製のケース2の穴部3に金属製ないし合成樹脂製の軸部材4(図1,図5)で揺動自在に支持されるものである。
【0022】
操作レバー1は自動車のステアリング廻りに左右一対配置され(図では右側のものを示す)、運転者の手指による引き操作で変速機のシフトアップ又はシフトダウンが行われる。
【0023】
図1の如く、操作レバー1はパドル状の操作部5と、操作部5から90゜方向に屈曲し、操作部5の操作で揺動する基端側の駆動部6とで構成され、屈曲部(交差部)7の近傍で駆動部6に軸部材4を挿通させる孔部(軸支部)8が貫通して設けられ、駆動部6の基端寄りにおいて引張コイルばね(リバーススプリング,弾性部材)9を支持するフック部10が操作部5の方向に突設されている。
【0024】
駆動部6の基端側にはコイルばね(トラクタイルスプリング)11を挿入する穴部12(図2)が設けられ、コイルばね11の先端に当接して位置決め用の鋼球13が配置される。鋼球13を穴部12の周縁で加締めて保持すれば、ばね付勢されたボールプランジャが構成される。
【0025】
図2の如く、操作レバー1の駆動部6は屈曲部7と同じ高さの短形部14と、短形部14から真直に延長された上側の長形部15とで構成され、短形部14の先端は長形部15に対して段部となり、段部(短形部14の先端)は断面半円状の湾曲面(被当接部)16となっており、湾曲面16の内側において短形部14を貫通して孔部8が設けられ、孔部8の中心と湾曲面16の中心が一致している。
【0026】
図1の如く、ケース2は、操作レバー1の駆動部6を挿通させる矩形状の切欠開口17を周壁部18に有し、開口17からケース内に少し入った位置に、軸部材4を圧入ないし挿入する穴部3を有し、穴部3からケース内に少し入った位置に、操作レバー1の駆動部6の湾曲面16を受ける三本のリブ(当接部)19(19,19,19)を有している。
【0027】
穴部3はケース2の水平な底壁20からボス状に突出した環状壁21の内側に形成されて、開口17の下端とほぼ同じ高さに位置している。穴部3は操作レバー1の駆動部6の突出方向の長穴となっており、例えば軸部材4の先端の長形の突部(図示せず)を係合して軸部材4を回動不能に保持可能である。長穴3に代えて軸部材4と同一径の真円の穴を形成することも可能である。各リブ19は底壁20から立ち上がった直交する二つの垂直な壁部22(22,22)から穴部3に向けて突出形成されている。
【0028】
一方のリブ19は一方の壁部22から突出し、他方のリブ19は他方の壁部22から突出し、中間(中央)のリブ19は両壁部22の交差部から突出している。一方のリブ19と他方のリブ19は直交する方向に突出し、中間のリブ19は一方と他方の各リブ19,19の交差方向に突出し、各リブ19は穴部3の中心に向けて突出している。
【0029】
穴部3に向けての各リブ19の突出長さは、操作レバー1の中間(孔部周縁)の湾曲面16を各リブ19の先端に当接させた際に、操作レバー1の孔部8とケース2の穴部3とが一致する(好ましくは孔部8と穴部3との中心が一致する)ように設定されている。
【0030】
他方のリブ19は操作レバー1の短形部14の一側面14aと湾曲面16との境部ないし境部の近傍の湾曲面16に当接し、操作レバー1の一側面14aに対するストッパとして作用する。他方のリブ19に対向する壁部34は操作レバー1の短形部14の他側面14bに対するストッパとして作用する。一方のリブ19は操作レバー1の湾曲面16の中央ないしその付近に当接する。
【0031】
各リブ19を突設した各壁部22は底壁20よりも一段高くなった第二の底壁23に直交して続き、第二の底壁23の円弧状の突条27に沿って操作レバー1の駆動部6の上側の長形部15が揺動自在に位置する。ケース2の穴部3とは180゜反対側の周壁部24の内側には、コイルばね11の先端の鋼球13を受ける孔部25を有する金属製等のプレート26が配設され、プレート26の側方で第二の底壁23に引張コイルばね9の一端を支持するフック部28が設けられている。ケース2は上蓋部(図示せず)を装着した状態でボルト等でステアリング廻り(例えばコンビスイッチ等)に固定される。
【0032】
図1の如く操作レバー1に各ばね等の部品9,11,13が装着された状態で、図3〜図4の如く、引張コイルばね9の一端をケース2のフック部28に引っ掛けて固定し、且つ操作レバー1の中間の湾曲面16を各リブ19の先端に当接させる。各リブ19の先端が操作レバー1の湾曲面16に当接した状態で、引張コイルばね9は圧縮方向の引張力に抗して少し長く引き伸ばされる。
【0033】
図3の状態で操作レバー1は引張コイルばね9の引張力で操作部側が持ち上がろうとするが、各リブ19がリブ先端面の全長に渡って操作レバー1の湾曲面16に当接しているから、操作レバー1の持ち上がりが抑止され、後述の操作レバー1の本組付が簡単且つ確実に行われる。
【0034】
図3〜図4の操作レバー1の仮組付状態で、操作レバー1の孔部8とケース2の穴部3(図1)とが一致し、その状態で上方から断面円形のピン状の軸部材4(図1)を孔部8に挿入し、且つ穴部3に圧入ないし挿入することで、図5の如く、操作レバー1が軸部材4で揺動自在に本組み付けされる。図5で操作レバー1は引張コイルばね9で反時計回り(引張コイルばね9の圧縮方向)に引張付勢されている。操作レバー1の操作部5(図4)は図5でケース2とは離間する方向(引張コイルばね9の伸び方向)に引き操作される。軸部材4の上端部は例えば上蓋部(図示せず)の穴部に係合し、それにより軸部材4が上下で支持される。
【0035】
図5の如く、ケース内には引張コイルばね9とは反対側において回路基板29が配設され、回路基板29に接続されたスイッチ30に操作レバー1の駆動部6の側面が接して位置する。回路基板29の組み付けは操作レバー1の組み付けの前でも後でもよい。回路基板29はコネクタ31に接続され、コネクタ31はケース2の外側のホルダ32に保持される。ケース2と操作レバー1とスイッチ30等とで操作レバー組立構造体33が構成される。操作レバー1の揺動操作でスイッチ30がオンし、回路基板29やコネクタ31を経て信号が変速制御装置(図示せず)に伝達されて、変速操作が行われる。
【0036】
なお、図4の操作レバー1の仮組付状態で操作レバー1の孔部8とケース2の穴部3(図1)との中心を引張コイルばね9の圧縮方向に若干ずらしておき、軸部材4の挿入時に操作レバー1を引張コイルばね9の付勢力に抗して引張コイルばね9の伸ばし方向に引きつつ、リブ19(図1)の先端から操作レバー1の湾曲面16を離間させた状態で、軸部材4をケース2の穴部3に圧入なし挿入することも可能である。この場合は、リブ19と操作レバー1との摺動が皆無となり、軸部材4のみの摺動により一層スムーズなレバー操作が可能となる。
【0037】
また、ケース2のリブ19の数は三本に限らず、例えば60゜の間隔で二本等としたり、操作レバー1の湾曲面16の中央に当てる一本のみとしたりすることも可能である。また、リブ19に代えて湾曲状ないし半環状の壁部(図示せず)をケース2に設けることも可能である。リブ19をケース2ではなく操作レバー1の湾曲面16ないしそれに代わる壁面に設け、ケース2にリブ19ではなく湾曲状ないし半環状の壁部(図示せず)を設けることも可能である。
【0038】
また、ケース2の穴部3を貫通した孔部とすることも可能である。その場合、軸部材4を操作レバー側からではなく、ケース2の底側から操作レバー1の孔部8に挿入してもよい。また、操作レバー1に孔部8ではなく軸部材(軸支部)4を直接設けておき、操作レバー1の仮組付と同時に本組付させることも可能である。
【0039】
また、引張コイルばね9に代えて圧縮コイルばね(図示せず)を設け、フック部28に代えて操作レバー1の基端側に設けた突片(図示せず)を圧縮コイルばねで押圧するようにすることも可能である。弾性部材として各コイルばねに代えて板ばねやゴム材等(図示せず)を使用することも可能である。
【0040】
また、操作レバー1のコイルばね11や鋼球13を省略しても操作レバー1の揺動は軸部材4を中心に引張コイルばね9の付勢に抗して行われる。また、回路基板29は必ずしも必須なものではなく、スイッチ30の種類は必要に応じて適宜設定される。
【0041】
また、上記操作レバー1を変速機の操作以外の用途で使用することも可能である。例えば、操作レバー1によって車高やライトの照度やオーディオの音量やワイパー速度等を段階的に調整したりすることにも使用可能である。
【0042】
また、上記した構成は揺動式操作レバーの組付構造の他に、揺動式操作レバーの組付方法や操作レバー組立構造体としても有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る揺動式操作レバーの組付構造の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】操作レバーを裏側から見た状態示す斜視図である。
【図3】操作レバーの仮組付状態を示す全体斜視図である。
【図4】同じく操作レバーの仮組付状態を角度を変えて見た状態を示す全体斜視図である。
【図5】操作レバーの本組付状態を示す全体斜視図である。
【図6】従来の揺動式操作レバーの組付構造の一形態を示す断面図(円内は要部拡大図)である。
【符号の説明】
【0044】
1 操作レバー
2 ケース
4 軸部材
8 孔部(軸支部)
9 引張コイルばね(弾性部材)
16 湾曲面(被当接部)
19 リブ(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーを弾性部材で操作反対方向に付勢しつつ、該ケースに該操作レバーを揺動自在に軸支する揺動式操作レバーの組付構造において、前記操作レバーの被当接部を前記付勢のもとで当接させる仮組付用の当接部を前記ケースに設けたことを特徴とする揺動式操作レバーの組付構造。
【請求項2】
前記当接部が複数のリブであることを特徴とする請求項1記載の揺動式操作レバーの組付構造。
【請求項3】
前記被当接部が軸支部の周囲の湾曲面であることを特徴とする請求項1又は2記載の揺動式操作レバーの組付構造。
【請求項4】
前記被当接部を前記当接部から離間させた状態で、前記操作レバーを軸部材で本組付することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の揺動式操作レバーの組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−226698(P2007−226698A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49641(P2006−49641)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】