説明

搬送ケース

【課題】複数の電子部品を平面状に載置することができる搬送ケースであって、一の搬送ケースを他の搬送ケースに対して水平方向に相対移動不能な状態で上下に積層することができ、且つ、前記一の搬送ケースの前記他の搬送ケースからの取り外し作業を極めて容易に行うことができる搬送ケースを提供する。
【解決手段】搬送ケース1の周縁部3は、板状内壁31、板状上壁32及び板状外壁33によって画される領域が空間Pとされ、板状外壁33は、下方へ行くに従って載置部2から離間するように傾斜され、板状内壁31は、下方へ行くに従って載置部2に近接するように傾斜される。周縁部3は、載置部2を挟んで対向する領域に、垂直方向に延びる板状縦壁41と水平方向に延びる板状横壁42とによって画される上方へ開く凹部4を有する。載置部2及び板状横壁42は、上下方向に関し板状外壁33の上端部及び下端部の間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドを支持するための磁気ヘッドサスペンション等の電子部品を搬送する際に用いられる搬送ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドサスペンション等の電子部品を搬送する際に使用される搬送ケースは、完成品の出荷時、又は、組立作業における次段の作業場所への搬送時等において、広く利用されている。
【0003】
前記搬送ケースは、一般的に、複数の電子部品が平面状に載置可能とされた平板状の載置部と前記載置部の周縁に設けられた周縁部とを一体的に有するように、金型を用いて樹脂成形される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
前記載置部は、搬送すべき電子部品の形状に対応した複数の係止部位を有しており、前記複数の係止部位にそれぞれ前記電子部品が載置される。
【0005】
前記周縁部は、前記載置部に載置された前記電子部品が前記搬送ケースから上方へ突出しないように、該電子部品を囲繞するように形成されている。
詳しくは、前記周縁部は、前記載置部の周縁から垂直上方へ延びる垂直壁によって形成されており、前記垂直壁の上端部が前記載置部に載置された前記電子部品よりも上方に位置するようになっている。
【0006】
ところで、前記搬送ケースを使って前記電子部品を搬送する際の搬送効率を考慮すると、複数の前記搬送ケースを積み重ねて行うのが好ましいが、前記従来の搬送ケースにおいてはかかる観点について考慮がなされていなかった。
即ち、前記従来の搬送ケースにおいては、前記周縁部が垂直方向に延びる前記垂直壁によって形成されている。従って、一の搬送ケースを他の搬送ケースに積み重ねた状態で搬送すると、前記一の搬送ケースが前記他の搬送ケースに対して水平方向に相対移動する恐れがある。
【0007】
また、前記電子部品を搬送する際には、前記電子部品が外部部材と接触することを防止するとともに、前記電子部品に塵等の不純物が付着することを防止する必要がある。
しかしながら、前記特許文献1に記載の搬送ケースにおいては、かかる観点について十分な考慮がなされていない。
【0008】
一方、前記電子部品の収容空間を密閉状態とし得る搬送ケースとして、上下方向に分離可能とされたケース本体及び蓋部材を有する箱状のケースと、前記ケース本体に水平方向相対移動不能に収容されるトレー体であって、複数の電子部品が積層された電子部品群が水平方向に複数個載置可能とされたトレー体と、前記トレー体に載置された複数の電子部品群の上面に載置される倒れ防止プレートとを備えた搬送ケースが提案されている(下記特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、前記ケース本体、前記蓋部材、前記トレー体及び前記倒れ防止プレートを樹脂成形するためには、各部材に対して専用の金型が必要となるとともに、各部材を個別に在庫管理しなければならず、製造コストが高騰する。
また、前記構成においては、前記トレー体及び前記倒れ防止プレートの間に複数の電子部品が互いに接触状態で積層されるため、搬送途中において前記電子部品が損傷する恐れもある。
【特許文献1】特開2001−049130号公報
【特許文献2】特開2002−037339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、複数の電子部品を平面状に載置することができる搬送ケースであって、一の搬送ケースを他の搬送ケースに対して水平方向に相対移動不能な状態で上下に積層することができ、且つ、前記一の搬送ケースの前記他の搬送ケースからの取り外し作業を極めて容易に行うことができる搬送ケースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る搬送ケースは、複数の電子部品が平面状に載置可能とされた平板状の載置部と前記載置部の周縁に設けられた周縁部とが一体的に成形された搬送ケースであって、前記周縁部は、前記載置部の外周縁から上方へ延びる板状内壁と、前記板状内壁の上端部から前記載置部を基準にして径方向外方へ水平に延びる板状上壁と、前記板状上壁の外周縁から下方へ延びる板状外壁とを有し、前記板状内壁、前記板状上壁及び前記板状外壁によって画される領域が空間とされ、前記板状外壁は、下方へ行くに従って前記載置部から離間するように傾斜され、前記板状内壁は、下方へ行くに従って前記載置部に近接するように傾斜され、前記周縁部は、前記載置部を挟んで対向する領域に、垂直方向に延びる板状縦壁と水平方向に延びる板状横壁とによって画される上方へ開く凹部を有し、前記載置部及び前記板状横壁は、上下方向に関し前記板状外壁の上端部及び下端部の間に位置していることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成の搬送ケースによれば、複数の電子部品を平板状の載置部に平面状に載置した状態で複数の搬送ケースを積み重ねると、前記板状外壁は、下方へ行くに従って前記載置部から離間するように傾斜されているとともに、前記板状内壁は、下方へ行くに従って前記載置部に近接するように傾斜されているため、上側の搬送ケースにおける前記載置部の周縁に設けられた周縁部の板状内壁、板状上壁及び板状外壁によって画される空間内に下側の搬送ケースにおける板状上壁が挿通される形で積み重ねられる。
この際、上下方向に関し板状外壁の上端部および下端部の間に、周縁部に設けられた凹部の板状横壁が位置するため、一の搬送ケースにおける前記板状内壁の内表面及び前記板状外壁の外表面が、それぞれ、他の搬送ケースにおける前記板状内壁の外表面及び前記板状外壁の外表面に全周に亘って密着した状態となることなく、凹部の板状横壁と周縁部の板状上壁とが当接した状態且つ前記載置部に載置された電子部品が他の搬送ケースの前記載置部に接触しない状態で積み重ねられる。
【0013】
このように、周縁部に設けられた凹部により、複数の搬送ケースを積み重ねた際に、一の搬送ケースにおける前記板状内壁の内表面及び前記板状外壁の内表面が、それぞれ、他の搬送ケースにおける前記板状内壁の外表面及び前記板状外壁の外表面に全周に亘って密着した状態となるのを防止することができるため、無理な力を入れることなく一の搬送ケースから他の搬送ケースを容易に取り外すことができる。
従って、一の搬送ケースを他の搬送ケースに対して水平方向に相対移動不能な状態で上下に積層することができ、且つ、前記一の搬送ケースの前記他の搬送ケースからの取り外し作業を極めて容易に行うことができる。
【0014】
好ましくは、前記周縁部は、前記載置部を挟んで互いに対して平行に延びる一対の第1辺と、前記一対の第1辺と直交する方向に延び且つ前記載置部を挟んで互いに対して平行に延びる一対の第2辺とを有する平面視矩形状とされており、前記一対の第1辺には、それぞれ、前記一対の第1辺の中心を通る仮想第1中心面を基準にして面対称に配置された一組又は複数組の前記凹部が形成され、前記一対の第2辺には、それぞれ、前記一対の第2辺の中心を通る仮想第2中心面を基準にして面対称に配置された一組又は複数組の前記凹部が形成されている。
【0015】
この場合、周縁部は、載置部を挟んで互いに平行に延びる一対の第1辺及び一対の第2辺により平面視矩形状に形成されている。そして、各辺を垂直に二等分する仮想第1中心面及び仮想第2中心面のそれぞれに面対称となるように一組又は複数組の凹部が形成されている。
このように、一の搬送ケースを他の搬送ケースに対して上下に積層する際に両搬送ケースが接触する箇所となる凹部(の板状横壁)を周縁部に略均等に配置することにより、上側の搬送ケースをより安定に載置することができる。
【0016】
好ましくは、前記凹部は、上方及び前記板状外壁の外表面に開いている。
【0017】
この場合、凹部は上方及び板状外壁の外表面に開いている。即ち、板状上壁と板状外壁とにわたって開かれた凹部を有している。
これにより、搬送ケース同士の接地部が可及的に搬送ケースの径方向外側に設けられるため、搬送ケースを積層した際の安定性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る搬送ケースによれば、周縁部に設けられた凹部により、複数の搬送ケースを積み重ねた際に、一の搬送ケースにおける前記板状内壁の内表面及び前記板状外壁の外表面が、それぞれ、他の搬送ケースにおける前記板状内壁の外表面及び前記板状外壁の外表面に全周に亘って密着した状態となるのを防止することができるため、無理な力を入れることなく一の搬送ケースから他の搬送ケースを容易に取り外すことができる。
従って、一の搬送ケースを他の搬送ケースに対して水平方向に相対移動不能な状態で上下に積層することができ、且つ、前記一の搬送ケースの前記他の搬送ケースからの取り外し作業を極めて容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態における搬送ケースの斜視図及び上面図である。また、図3は、前記搬送ケースを積層した際の図2におけるIII−III断面図であり、図4は、図3の周縁部近傍における部分拡大図である。
【0020】
本実施形態の搬送ケース1は、図1から図4に示すように、複数の電子部品Dが平面状に載置可能とされた平板状の載置部2と前記載置部の周縁に設けられた周縁部3とが一体的に成形された搬送ケース1であって、前記周縁部3は、前記載置部の外周縁から上方へ延びる板状内壁31と、前記板状内壁31の上端部から前記載置部2を基準にして径方向外方へ水平に延びる板状上壁32と、前記板状上壁32の外周縁から下方へ延びる板状外壁33とを有し、前記板状内壁31、前記板状上壁32及び前記板状外壁33によって画される領域が空間Pとされ、前記板状外壁33は、下方へ行くに従って前記載置部2から離間するように傾斜され、前記板状内壁31は、下方へ行くに従って前記載置部2に近接するように傾斜されている。
本実施形態の搬送ケース1は、例えば、金型を用いてPET材料等を真空成型等することにより一体形成される。
【0021】
本実施形態における前記載置部2には、電子部品Dに設けられた穴部に嵌合されることで、電子部品Dの基端部を係止する係止部21と、電子部品Dの先端部が水平方向に移動するのを防止する一対の規制ピン22とがそれぞれ複数設けられる。これにより、複数の電子部品Dが載置部2に平面状に載置された状態で、水平方向の移動が規制される。前記載置部2に載置された電子部品Dは、前記載置部2から上方へ延びる前記周縁部3の板状内壁31によって前記搬送ケース1から上方へ突出しない状態で囲繞される。
【0022】
複数の電子部品Dを平板状の載置部2に平面状に載置した状態で複数の搬送ケース1を積み重ねると、前記板状外壁33は、下方へ行くに従って前記載置部2から離間するように傾斜されているとともに、前記板状内壁31は、下方へ行くに従って前記載置部2に近接するように傾斜されているため、上側の搬送ケース1における前記載置部2の周縁に設けられた周縁部3の板状内壁31、板状上壁32及び板状外壁33によって画される空間P内に下側の搬送ケース1における板状上壁32が挿通される形で積み重ねられる。
なお、本実施形態においては、図3及び4に示すように、前記載置部2の規制ピン22の最上部が前記周縁部3の板状上壁32と略同じ位置に位置している。これにより、複数の搬送ケース1を積層した際、前記規制ピン22が上側の搬送ケース1の載置部2と当接するため、載置部2の面積が大きい場合でも載置部2が周縁部3に対して重力により撓むことなく積層される。従って、上側の搬送ケース1が載置部2の撓みにより電子部品Dに接触することを防止することができる。
【0023】
ここで、前記電子部品Dが外部部材と接触することを防止するとともに、前記電子部品Dに塵等の不純物が付着することを防止するために、例えば、図5に示す搬送ケース1’のように、搬送ケース1’の上方を覆う蓋部材100を別途に備えることも考えられる。
しかしながら、図5に示す構成においては、前記搬送ケース1’及び前記蓋部材100を樹脂成形するためにそれぞれに専用の金型が必要となるとともに、前記搬送ケース1’及び前記蓋部材100を個別に在庫管理しなければならない。
また、前記蓋部材100は、前記搬送ケース1’の前記周縁部3の全周に亘って密着する(後述する図7参照)ため、前記蓋部材100を前記搬送ケース1’から外す際の作業性が問題となる。
【0024】
一方、図6に示すように、一の搬送ケース1’を他の搬送ケース1’に水平方向相対移動不能な状態で上下方向に積層することも考えられる。
図6に示す構成によれば、前記一の搬送ケース1’を蓋部材として用いることができるため、複数の金型を用意することなく、搬送される電子部品Dが外部部材に接触したり、搬送される外部部品に不純物が付着することを有効に防止できる。
しかしながら、図6に示す構成においては、図7に示すように、一の搬送ケース1’を他の搬送ケース1’に重ね合わせると、一の搬送ケース1’における前記板状内壁31の内表面及び前記板状外壁33の内表面が、それぞれ、他の搬送ケース1’における前記板状内壁31の外表面及び前記板状外壁33の外表面に、全周に亘って密着することになる。
従って、一の搬送ケース1’を他の搬送ケース1’から外す際の作業性が悪くなるととともに、場合によって一の搬送ケース1’を取り外す際に意に反した力が作用して前記電子部品Dが係止部位から脱離するおそれがある。
【0025】
この点を考慮して、本実施形態の搬送ケース1においては、図1から図4に示すように、前記周縁部3は、前記載置部2を挟んで対向する領域に、垂直方向に延びる板状縦壁41と水平方向に延びる板状横壁42とによって画される上方へ開く凹部4を有し、前記載置部2及び前記板状横壁42は、上下方向に関し前記板状外壁33の上端部及び下端部の間に位置している。
より具体的には、前記凹部4の板状横壁42と前記板状外壁33の上端部(即ち、板状上壁32)との距離H1と、前記載置部2の電子部品設置領域の最下部と電子部品設置部上面との距離H2と、電子部品Dの高さH3との関係がH1>H2+H3となるように構成されている。
このとき、下側の搬送ケース1に載置される電子部品Dと上側の搬送ケース1における前記載置部2の電子部品設置領域の最下部との距離(クリアランス)H4は、H4=H1−(H2+H3)で示され、このクリアランスH4は、輸送時の振動や落下による衝撃が加わっても損傷しない程度の寸法となるように、経験的又は実験的に決定される。
【0026】
上記構成の搬送ケース1によれば、複数の搬送ケース1を積層した際、上下方向に関し板状外壁33の上端部および下端部の間に、周縁部3に設けられた凹部4の板状横壁42が位置するため、一の搬送ケース(上側の搬送ケース)1における前記板状内壁31の内表面及び前記板状外壁33の内表面が、それぞれ、他の搬送ケース(下側の搬送ケース)1における前記板状内壁31の外表面及び前記板状外壁33の外表面に全周に亘って密着した状態となることなく、凹部4の板状横壁42と周縁部3の板状上壁32とが当接した状態且つ前記載置部2に載置された電子部品Dが他の搬送ケース1の前記載置部2に接触しない状態で積み重ねられる。即ち、一の搬送ケース1における前記板状内壁31の内表面と他の搬送ケース1における前記板状外壁33の外表面との間及び一の搬送ケース1における前記板状外壁33の内表面と他の搬送ケース1における前記板状内壁31の外表面との間に微小な隙間を生じた状態で、複数の搬送ケース1が積層される。
【0027】
このように、周縁部3に設けられた凹部4により、複数の搬送ケース1を積み重ねた際に、一の搬送ケース1における前記板状内壁31の内表面及び前記板状外壁33の内表面が、それぞれ、他の搬送ケース1における前記板状内壁31の外表面及び前記板状外壁33の外表面に全周に亘って密着した状態となるのを防止することができるため、無理な力を入れることなく一の搬送ケース1から他の搬送ケース1を容易に取り外すことができる。
従って、一の搬送ケース1を他の搬送ケース1に対して水平方向に相対移動不能な状態で上下に積層することができ、且つ、前記一の搬送ケース1の前記他の搬送ケース1からの取り外し作業を極めて容易に行うことができる。
【0028】
本実施形態において、前記周縁部3は、特に図2に示すように、前記載置部2を挟んで互いに対して平行に延びる一対の第1辺34と、前記一対の第1辺34と直交する方向に延び且つ前記載置部2を挟んで互いに対して平行に延びる一対の第2辺35とを有する平面視矩形状とされている。
そして、前記一対の第1辺34には、それぞれ、前記一対の第1辺34の中心を通る仮想第1中心面34Cを基準にして面対称に配置された一組又は複数組の前記凹部4が形成され、前記一対の第2辺35には、それぞれ、前記一対の第2辺35の中心を通る仮想第2中心面35Cを基準にして面対称に配置された一組又は複数組の前記凹部4が形成されている。
【0029】
このように、一の搬送ケース1を他の搬送ケース1に対して上下に積層する際に両搬送ケース1が接触する箇所となる凹部4(の板状横壁42)を周縁部3に略均等に配置することにより、上側の搬送ケース1をより安定に載置することができる。
ただし、全ての凹部4が前記面対称でなくてもよい。
【0030】
本実施形態において、前記凹部4は、上方及び前記板状外壁33の外表面に開いている。
即ち、板状上壁32と板状外壁33とに亘って開かれた凹部4を有している。
【0031】
これにより、搬送ケース1同士の接地部(板状上壁32と当接する凹部4の板状横壁42)が可及的に搬送ケース1の径方向外側に設けられるため、搬送ケース1を積層した際の安定性をより向上させることができる。
【0032】
ここで、上記のように、一の搬送ケース1における前記板状内壁31の内表面と他の搬送ケース1における前記板状外壁33の外表面との間及び一の搬送ケース1における前記板状外壁33の内表面と他の搬送ケース1における前記板状内壁31の外表面との間に微小な隙間が生じているため、積層した搬送ケース1は、互いに上下に外れ易く、輸送時や梱包時において搬送ケース1から電子部品Dがずれてしまう場合も生じ得る。
【0033】
そこで、本実施形態においては、搬送時に複数の搬送ケース1による積層状態が安定となるように、前記一対の第1辺34側の周縁部3に、所定数の搬送ケース1が積層した状態で当該積層状態を保持する弾性の保持部材5が取り付け可能に構成されている。弾性の保持部材5としては、例えば、金属製(ステンレス等)のクリップを用いることができる。
本実施形態において、前記周縁部3には、前記板状外壁33の下端部から載置部2の径方向外側に向けて水平に鍔部36が設けられており、前記一対の第1辺34における鍔部36の中央部には、さらに切り欠き部37が設けられている。そして、前記保持部材5は、前記一対の第1辺34における切り欠き部37のそれぞれに保持部材5が嵌合することにより、保持部材5が水平方向に移動不能となった状態で取り付けられる。
具体的には、前記保持部材5の一端部は、最も下に位置する搬送ケース1の前記切り欠き部37に係合され、前記保持部材5の他端部は、最も上に位置する搬送ケース1の前記周縁部3の板状上壁32を超えて前記板状内壁31の外表面に係合されることにより、複数の搬送ケース1の積層状態が保持される。
【0034】
より詳しくは、前記保持部材5は、搬送ケース1に取り付けた状態で載置部2の載置面に対して略垂直なアーム部51と、前記アーム部51の下端部から当該アーム部51に対して略垂直に延出された下側延出部52であって、搬送ケース1に取り付けた状態で搬送ケース1の鍔部36に密接される下側延出部52と、搬送ケース1に取り付けた状態で搬送ケース1の前記板状外壁33の内表面に密接されるように前記下側延出部52の先端部から斜め上方へ延出された下側爪部53と、前記アーム部51の上端部から前記下側延出部52と略同じ方向に延出された上側延出部54と、搬送ケース1に取り付けた状態で搬送ケース1の前記板状内壁31に当接した状態で当該板状内壁31する方向へ付勢されるように前記上側延出部54の先端部から斜め下方へ延出された上側爪部55と、前記上側爪部55を前記板状内壁31から離間する方向へ移動させ得るように、前記上側爪部55の先端部から斜め上方に延出された把持部56とを有する。
このような保持部材5を用いることにより、積層状態を保持した状態で複数の搬送ケース1を安定且つ容易に搬送することができる。
【0035】
なお、前記所定数の搬送ケース1を積層した状態において最も下に位置する搬送ケース1の鍔部36の下面と最も上に位置する搬送ケース1の板状上壁32の上面との距離H5は、搬送ケース1の板厚のばらつきにより、一定とならないおそれがある。このため、前記距離H5がある程度ばらつきを生じても前記保持部材5により保持可能なように、前記上側延出部54は、前記アーム部51に対して略垂直な角度よりわずかに鋭角を有して(わずかに下方に)延出される。これにより、前記搬送ケース1の積層高さ(距離H5)にばらつきが生じても保持部材5による保持性を良好に維持することができる。
また、搬送ケース1を積層した状態において最も上に位置する搬送ケース1には、電子部品Dを載置せず、蓋部材として利用することにより、積層状態の搬送ケース1に載置された全ての電子部品Dに対して外部部材との接触及び塵等の不純物の付着を有効に防止することができる。なお、前記最も上に位置する搬送ケース1の代わりに、別途蓋部材(図5に示す蓋部材100に前記凹部4と同様の凹部を設けたもの)を積み重ねることとしてもよい。
【0036】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態における搬送ケースの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における搬送ケースの上面図である。
【図3】前記搬送ケースを積層した際の図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図3の周縁部近傍における部分拡大図である。
【図5】搬送ケースにおいて課題を解決するための構成を考察するための一例を示す図である。
【図6】搬送ケースにおいて課題を解決するための構成を考察するための他の例を示す図である。
【図7】図5及び図6の例における周縁部近傍の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 搬送ケース
2 載置部
3 周縁部
31 板状内壁
32 板状上壁
33 板状外壁
34 第1辺
34C 仮想第1中心面
35 第2辺
35C 仮想第2中心面
4 凹部
41 板状縦壁
42 板状横壁
D 電子部品
P 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品が平面状に載置可能とされた平板状の載置部と前記載置部の周縁に設けられた周縁部とが一体的に成形された搬送ケースであって、
前記周縁部は、前記載置部の外周縁から上方へ延びる板状内壁と、前記板状内壁の上端部から前記載置部を基準にして径方向外方へ水平に延びる板状上壁と、前記板状上壁の外周縁から下方へ延びる板状外壁とを有し、前記板状内壁、前記板状上壁及び前記板状外壁によって画される領域が空間とされ、
前記板状外壁は、下方へ行くに従って前記載置部から離間するように傾斜され、
前記板状内壁は、下方へ行くに従って前記載置部に近接するように傾斜され、
前記周縁部は、前記載置部を挟んで対向する領域に、垂直方向に延びる板状縦壁と水平方向に延びる板状横壁とによって画される上方へ開く凹部を有し、
前記載置部及び前記板状横壁は、上下方向に関し前記板状外壁の上端部及び下端部の間に位置していることを特徴とする搬送ケース。
【請求項2】
前記周縁部は、前記載置部を挟んで互いに対して平行に延びる一対の第1辺と、前記一対の第1辺と直交する方向に延び且つ前記載置部を挟んで互いに対して平行に延びる一対の第2辺とを有する平面視矩形状とされており、
前記一対の第1辺には、それぞれ、前記一対の第1辺の中心を通る仮想第1中心面を基準にして面対称に配置された一組又は複数組の前記凹部が形成され、
前記一対の第2辺には、それぞれ、前記一対の第2辺の中心を通る仮想第2中心面を基準にして面対称に配置された一組又は複数組の前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ケース。
【請求項3】
前記凹部は、上方及び前記板状外壁の外表面に開いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−132443(P2009−132443A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312003(P2007−312003)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】