説明

搬送ローラおよびこれを備えた真空搬送装置

【課題】搬送部の被案内面に外周面を接触させて回転することにより前記搬送部を案内する搬送ローラにおいて、搬送部の被案内面が搬送ローラに衝突した時の耐久性を改善する。
【解決手段】搬送ローラ1を以下の方法で作製する。図2のミルポット内にジルコニア製のボール5を複数個入れるとともに、円柱体44に超硬合金製搬送ローラ1を外嵌して遊星ボールミルを作動させ、ボール5に、ミルポット内に発生する公転に伴う遠心力と自転に伴う遠心力を付与することで、ボール5を搬送ローラ1の外周面に衝突させて外周面の表層部に残留応力を導入するボールミル工程を行った後に、仕上げ研磨加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送部の被案内面に筒状体の外周面を接触させて回転することにより前記搬送部を案内する搬送ローラと、これを備えた真空搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネル、半導体装置、太陽電池パネル、ハードディスク装置等を製造する設備の一部として、スパッタリング装置、プラズマCVD装置、イオン注入装置等の真空処理装置がある。そして、これらの真空処理装置は、基板等の被処理品を真空状態で搬送する真空搬送装置を備えている。
前記真空処理装置の一例として、基板が設置された搬送部をガスプラズマの放電領域を通過させて、前記基板に膜を形成するインライン真空成膜装置がある。この装置は、前記搬送部の被案内面を搬送ローラで案内する真空搬送装置を備えている。
【0003】
この真空搬送装置の搬送ローラとしては、従来、ステンレス鋼(主にSUS440C)製で、焼き入れ・焼き戻し処理が施されたものが使用されている。また、この搬送ローラを回転自在に支持する転がり軸受としては、ステンレス鋼(主にSUS440C)製でフッ素系グリースで潤滑されたものが使用されている。
ところで、液晶ディスプレイパネル、半導体装置、太陽電池パネル、ハードディスク装置等は、表面に微細な粒子(異物)が付着することで機能が損なわれる。そのため、近年、これらの装置の小型化および集積化が進むにつれて、製品としての歩留まりを向上させるために、清浄度の高い環境で製造することが求められている。
【0004】
また、これらの製品を製造する設備のメンテナンスに係る費用を低減すること(メンテナンスフリーにするか、メンテナンス周期を長くすること)が、製品の製造コストの低減に繋がる。そのため、液晶ディスプレイパネル、半導体装置、太陽電池パネル、ハードディスク装置等の製造コストを低減することを目的として、前述の真空処理装置および真空搬送装置の耐久性を向上することが要求されている。
【0005】
この要求に応えるための技術として本出願人は、真空搬送装置の搬送ローラの外周面にDLC膜を設け、この搬送ローラを支持する転がり軸受の軌道面に潤滑膜を設けることを提案した(下記の特許文献1参照)。また、この搬送ローラの搬送部の被案内面に接触させる外周面を含む部分を、セラミックス材料で形成することを提案した(下記の特許文献2参照)。これらの提案によれば、真空搬送装置の発塵低減と耐久性向上に一定の効果があるが、更なる改善の余地がある。
【0006】
例えば、ディスクメディアの真空搬送装置は、図1に示すように、ディスクメディアDを取り付ける台車4の下部にレール4aが固定され、搬送ローラ1は、このレール(被案内面)4aに外周面を接触させて回転することにより台車(搬送部)4を案内する。
この台車4が、図示されない駆動装置によって、例えば図1の紙面の右から左に送られる場合、先ず、2個あるうちの右側の搬送ローラ1aにレール4aが接触することで、右側の搬送ローラ1aが回転を開始する。次に、左側に移動した台車のレールがさらに左側の搬送ローラ1bと接触することで、左側の搬送ローラ1bが回転を開始する。そして、台車の進行速度と搬送ローラの回転速度が同じになった時点で搬送ローラの回転が安定する。この安定回転となった後の耐久性は前述の提案の方法で改善されるが、レールと搬送ローラの接触開始時に、搬送ローラにレールからの衝撃力が加わる。前述の提案の方法では、この時の耐衝撃性の向上が不充分であり、さらに耐久性を改善する必要がある。
【0007】
下記の特許文献3には、セラミックス製品の表面強靱化方法として、硬さが、Hv(ビッカース硬さ)で500以上、且つ、対象となるセラミックス製品のHvに50を足した値以下であり、平均粒子サイズが0.1μm〜200μmであり、表面が凸曲面の微粒子からなる噴射材(ショット)を用いて、セラミックス製品の表面に均一に分布した直線状の転位組織を形成する方法が記載されている。
【0008】
また、下記の特許文献4には、駆動力によって回転する公転軸を中心として回転する公転回転アームと、垂直から前記公転軸側へ傾斜した自転軸を介して前記公転回転アームに自転自在に支持されているミルポットと、前記公転軸の周りの全周に亘って前記公転回転アームの上方に固定して配置され、前記公転回転アームの回転に伴って公転する前記ミルポットの外周面が接触して前記ミルポットに自転を生じさせる外周ポット受けと、を有することを特徴とする遊星ボールミルが記載されている。
【特許文献1】特開2005−23965号公報
【特許文献2】特開2006−153187号公報
【特許文献3】特開2004−136372号公報
【特許文献4】特開2006−43578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、搬送部の被案内面に外周面を接触させて回転することにより前記搬送部を案内する搬送ローラにおいて、搬送部の被案内面が搬送ローラに衝突した時の耐久性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、搬送部の被案内面に外周面を接触させて回転することにより前記搬送部を案内する搬送ローラにおいて、超硬合金製であることを特徴とする搬送ローラを提供する。
本発明の搬送ローラによれば、超硬合金製とすることにより、従来のSUS440C製搬送ローラと比較して、搬送部の被案内面が搬送ローラに衝突した時の耐久性に優れたものとなる。
【0011】
超硬合金としては、WCを主成分とし、CoおよびNiの少なくとも一方をバインダとして3質量%以上25質量%以下の範囲で含有するものが好ましい。
例えば、WCにバインダCoを10質量%の含有率で加えて得られた超硬合金の硬度はHvで1150程度であり、Si3 4 焼結体(セラミックス)のHv1700〜1800程度よりは低いが、破壊靱性値はSi3 4 焼結体の6〜7MPa・√mに対して、12〜13MPa・√mと格段に大きい。つまり、超硬合金は耐摩耗性に優れるだけでなく、耐衝撃性にも優れている。
【0012】
本発明の搬送ローラは、外周面の表層部に絶対値で50MPa以上1500MPa以下の圧縮残留応力が導入されていることが好ましい。これにより、本発明の搬送ローラは、Co含有率が少なく硬い超硬合金に対して圧縮残留応力を導入することで、硬さを維持しながら破壊靱性値も高くできる。そして、このような圧縮残留応力が導入されていない超硬合金製搬送ローラと比較して、搬送部の被案内面が搬送ローラに衝突した時の耐久性に優れたものとなる。
【0013】
なお、「絶対値で50MPa以上1500MPa以下の圧縮残留応力」は「−1500MPa以上−50MPa以下の残留応力」に相当する。「−」の残留応力は圧縮残留応力であることを意味する。
超硬合金製搬送ローラの外周面の表層部の圧縮残留応力が、絶対値で50MPa未満であると、靱性が不充分となる場合がある。また、1500MPaを超えると、チッピングやクラックが生じやすくなる。
【0014】
外周面の表層部に圧縮残留応力が導入された搬送ローラは、遊星ボールミルのミルポット内に、複数個のセラミックス製または超硬合金製ボールと外周面が露出した搬送ローラを入れて遊星ボールミルを作動させ、前記ボールに、ミルポット内に発生する公転に伴う遠心力と自転に伴う遠心力を付与することで、前記ボールを前記搬送ローラの外周面に衝突させてその表層部に残留応力を導入するボールミル工程を行った後に、仕上げ研磨加工を行って得ることができる。
【0015】
前記ボールミル工程を、ミルポット内に、搬送ローラを外嵌する円柱体を回転可能に設けた遊星ボールミル(搬送ローラ回転支持装置をミルポット内に備えた遊星ボールミル)を用い、前記円柱体に搬送ローラを外嵌して遊星ボールミルを作動させることで行って得ることが好ましい。
前記ボールミル工程は、例えば、特許文献3に記載の遊星ボールミルのミルポット内に、搬送ローラを外嵌する円柱体を回転可能に設けたものを使用して行うことができる。
【0016】
なお、前記ボールミル工程を、搬送ローラ回転支持装置を備えない通常のミルポットで行う場合は、搬送ローラを、外周面が露出し、端面と内面がボールの衝突から保護された状態で、ミルポット内に入れる必要がある。また、搬送ローラがミルポットの内壁に衝突しないように、遊星ボールミルの回転速度や処理時間などをより綿密に調整する必要がある。
【0017】
ミルポットの材質としては、クロム鋼製、またはステンレススチール製でメノー、アルミナ、ジルコニア、クロム鋼、または窒化珪素からなる内張り材が設けてあるものが挙げられる。
遊星ボールミルの作動条件としては、公転速度:300rpm以上1000rpm以下(より好ましくは500rpm以上700rpm以下)、自転速度:600rpm以上2000rpm以下(より好ましくは1000rpm以上1400rpm以下)で、回転時間:1時間以上8時間以下(より好ましくは3時間以上5時間以下)が好ましい。
【0018】
また、ミルポット内へ入れるセラミックス製ボールの量は、最密充填量(ミルポットに最も密に充填した場合に入る量)の50%以上90%以下であることが好ましい。最密充填量の50%未満であると、衝突エネルギーが大きいためボールミル工程の処理時間を短くできるが、ポット内でのセラミック製ボールの動きが激しくなりすぎるため均一な表面が得られにくい。最密充填量の90%を超えると、ポット内でセラミック製ボールの動ける範囲が小さくなるため衝突回数は増えるが、衝突エネルギーが小さくなって処理に時間がかかるようになる。最密充填量の50%以上90%以下とすることで、衝突回数と衝突エネルギーのバランスがとれて効果的に処理できるようになる。より好ましい範囲は、最密充填量の70%以上90%以下である。
【0019】
前記仕上げ研磨加工は、研削盤による加工等の一般的な方法で行うことができる。
このようなボールミル工程と仕上げ研磨工程からなる方法以外で、「表層部に絶対値で50MPa以上1500MPa以下の圧縮残留応力が導入された超硬合金製製搬送ローラ」を得る方法としては、ショットブラスト処理による方法がある。
ショットブラスト処理は、被処理物の表面に噴射材を噴射する処理であるが、処理時の環境温度は常温であることが好ましく、噴射材は超硬合金よりも硬さが低く且つ表面が凸曲面でエッジを有していない微粒子(例えばジルコニア粒子)であることが好ましい。
【0020】
また、ショットブラスト処理前後の被処理物の表面粗さRaの変化が、0.1μm未満であることが好ましい。表面粗さRaの変化が0.1μm以上となると、表面の摩耗量が大き過ぎる。また、被処理物の表面粗さはできるだけ小さい方が好ましいが、コストも考慮して一般的な値であるRaで1.6μm以下、好ましくは0.4μm以下とする。なお、ショットブラスト処理の後にバレル処理やホーニング処理を施して、表面粗さを良好にしてもよい。
【0021】
表面粗さRaの変化が0.1μm未満となるようにするためには、ショットブラスト処理の条件を以下のように設定することが好ましい。
噴射材の平均粒径:50μm以上100μm以下
噴射圧:0.1MPa以上0.6MPa以下(より好ましくは0.2MPa以上0.5MPa以下)
噴射速度:30m/s以上90m/s以下
噴射量:200g/min以上800g/min以下
このような条件でショットブラスト処理を施せば、圧縮残留応力をより好ましい値である150MPa以上1500MPa以下で導入することができる。
【0022】
本発明の搬送ローラは、外径、内径、最大幅の各寸法がすべて同じSUS440C製の搬送ローラの慣性モーメントの1.0倍以上1.6倍以下の慣性モーメントを有することが好ましい。
超硬合金はSUS440Cより比重が大きく、SUS440Cは7.7であるのに対して、超硬合金は組成によって異なるが13.6〜14.9程度である。そのため、同寸法の物体で比較すると、超硬合金製のものは慣性モーメントがSUS440C製のものの約2倍になる。そのため、止まっている状態から回転を開始するのに同じ寸法のものでは、より大きな力が必要である。この点を考慮した超硬合金製搬送ローラの軽量化と強度との兼ね合いから、後述の試験を経て、超硬合金製の搬送ローラの慣性モーメントを前記範囲とした。超硬合金製搬送ローラは、外周面以外の部分でローラの幅を狭くするなどの工夫により軽量化することで、慣性モーメントを低下できる。
【0023】
本発明の搬送ローラは、外周面の表面硬さが、搬送部の被案内面の表面硬さよりHRAで1.8以上5.3以下の範囲で硬く形成されていることが好ましい。これにより、搬送ローラの外周面と搬送部の被案内面の両方の摩耗を少なくすることができる。
本発明はまた、本発明の搬送ローラと、前記搬送ローラを軸に対して回転自在に支持する転がり軸受と、前記搬送ローラの外周面に接触させる被案内面を備えた搬送部と、を備え、内部を真空にして使用する真空搬送装置において、前記転がり軸受の軌道面に、以下の3種の潤滑被膜(以下「DFO潤滑被膜」と称する)のいずれか一つが形成されていることを特徴とする真空搬送装置を提供する。
【0024】
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含 有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
本発明の真空搬送装置によれば、搬送ローラを軸に対して回転自在に支持する転がり軸受の軌道面にDFO潤滑被膜が形成されているため、フッ素油やフッ素系グリースを用いた場合と比較して、良好な潤滑性能を確保しながらガス放出量を少なくでき、転がり軸受の耐久性も良好となる。
【0025】
なお、本発明の真空搬送装置は、搬送ローラが転がり軸受に外嵌される場合と、転がり軸受の外輪の外周部分が搬送ローラをなす場合がある。
【発明の効果】
【0026】
本発明の搬送ローラによれば、搬送部の被案内面が搬送ローラに衝突した時の耐久性に優れたものとなる。
本発明の真空搬送装置によれば、搬送ローラの耐久性が高く、転がり軸受の潤滑性能を良好にしながら、高い清浄度を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に相当する真空搬送装置を示す正面図(a)と、その部分断面図(b)である。
この真空搬送装置は、搬送ローラ1と、転がり軸受2と、真空搬送装置内の壁から水平に延びる回転軸3と、ディスクメディアDを取り付ける台車(搬送部)4と、を備えている。搬送ローラ1は、転がり軸受2により回転軸3に対して回転自在に支持されている。台車4の下部にSUS440C製のレール(被案内面)4aが固定されている。搬送ローラ1は、レール4aに外周面を接触させて回転することにより台車4を案内する。
【0028】
この搬送ローラ1は、WC−Co系超硬合金で形成され、外周面の表層部に絶対値で50MPa以上1500MPa以下の圧縮残留応力が導入されたものである。この搬送ローラ1の外周面の表面硬さはHRAで89.0(HV:1350)であり、レール4の表面硬さはHRAで87.0(HV:1150)である。また、この搬送ローラの形状を内径から外径に向かう間で幅を狭くすることで、その慣性モーメントを、SUS440C製の場合の慣性モーメントの1.6倍にした。さらに、転がり軸受2の軌道面には、フッ素グリースよりもガス放出量が少ないDFO潤滑被膜が形成されている。
【0029】
したがって、この真空搬送装置によれば、台車4レール4aが搬送ローラ1a,1bに衝突した時の耐久性が改善されるとともに、転がり軸受2の潤滑剤からのガス放出量が少ないため、ディスクメディアDの歩留まりが高く、メンテナンスに係る費用を低減することができる。
この搬送ローラ1は、図2に示すミルポットを備えた遊星ボールミルを用いたボールミル工程と、仕上げ研磨加工を行うことで得られる。
【0030】
図2のミルポット40は、4個の搬送ローラ1を同時に処理できるものであって、ミルポット40の底面に、4個のハウジング41が、ミルポット40の自転円と同心の円に沿って等間隔に固定されている。また、各ハウジング41に、転がり軸受42を介して回転軸43が取り付けられ、この回転軸43の上部に、搬送ローラ1を外嵌する円柱体44が軸をずらして一体化されている。
【0031】
遊星ボールミルの駆動により、このミルポット40は、図2(b)に矢印で示すように自転しながら、図示されない軸を中心に公転する。これに伴って、円柱体44が慣性力により相対的に回転するため、これに外嵌された搬送ローラ1はランダムに向きを変えながら回転する。
よって、このミルポット内40にボール5を入れて遊星ボールミルを駆動すると、ボール5に、ミルポット40内に発生する公転に伴う遠心力と自転に伴う遠心力が付与されて、ボール5がミルポット40内を跳ね回って、ランダムに向きを変えながら回転する搬送ローラ1の外周面に衝突する。その結果、搬送ローラ1の外周面の表層部に圧縮残留応力が導入される。
〔第1実施例〕
この実施例では、図2のクロム鋼製で容積が1200mlであるミルポット40内に、表面粗さ(Ra)が0.002μmでHv1500の直径4.768mmのジルコニア製ボール5を、ミルポット40の最密充填量の50体積%となる量だけ入れ、各円柱体44に表面粗さ(Ra)が0.2μmでHv1350のWC−Co系超硬合金製の搬送ローラ1を外嵌して、遊星ボールミルを下記の条件で作動させた。
【0032】
公転速度:500rpm(No. 1−1)、300rpm(No. 1−2)
自転速度:1000rpm(No. 1−1)、600rpm(No. 1−2)
回転時間:7時間(No. 1−1)、4時間(No. 1−2)
このボールミル工程を行った後に、円柱体44から搬送ローラ1を外し、ボールラップ盤で仕上げ研磨工程を行い、搬送ローラ1の表層部を3μmの厚さで除去した。また、ボール5についてもボールラップ盤で仕上げ研磨工程を行い、表層部を3μmの厚さで除去して直径4.762mmとした。
【0033】
このようにして得られた4個の搬送ローラ1のうちの2個(No. 1−1、No. 1−2)と、Hv1350のWC−Co系超硬合金製の搬送ローラ1であって、ボールミル工程を行わない以外は同じ方法で得られたもの(No. 1−3)について、その耐久性を、図3の耐久試験装置を用いて調べた。
図3の試験装置は、段61aが付いたカム61と、カム61の回転軸62と、直動装置63と、バネ64とで構成されている。バネ64は、その上端が壁面から垂直に延びる部材に固定され、下端に直動装置63が固定されている。この直動装置63から垂直に延びる回転軸3に転がり軸受2を介して搬送ローラ1を取り付け、カム61の周面に搬送ローラ1の外周面が常に接触するようにして、回転軸62の駆動によりカム61を回転する。
【0034】
カム61の図3(a)に示す矢印方向への回転に伴って、搬送ローラ1は図3(a)の状態からカム61により押し下げられながら回転し、カム61の段61aの位置が通り過ぎた時に搬送ローラ1の外周面に衝撃が加わる。
この試験装置を用い、真空、常温の環境で、1分間に150回の回転速度で搬送ローラ1を回転させ、500万回の時点と1000万回の時点で、走行跡の表面粗さ(最大高さ)を測定した。その結果を図4にグラフで示す。
【0035】
なお、仕上げ研磨後の表面粗さを、HRA89.0(Hv1350)のWC−Co系超硬合金製で、10mm×10mm×厚さ5mmの板状試験片を用いて測定した。すなわち、No. 1−1と1−2では、この試験片の表面に対して、上述のNo. 1−1と1−2と同じ方法でボールミル工程と仕上研磨工程を行ったものを用いた。No. 1−3ではこの試験片をそのまま用いた。
【0036】
また、HRA89.0(Hv1350)のWC−Co系超硬合金製のビッカース硬さ測定用試験片に対して、上述のNo. 1−1と1−2と同じ方法でボールミル工程と仕上研磨工程を行ったものを用いて、ビッカース硬さを測定したところ、No. 1−1では1440、No. 1−2では1420であった。No. 1−3は処理を行っていないので1350のままである。
【0037】
また、No. 1−1〜1−3のボールミル工程と仕上研磨工程を行った試験片を用いて、破壊靱性値を測定したところ、No. 1−1では18MPa・√m、No. 1−2では13MPa・√m、No. 1−3では7MPa・√mであった。破壊靱性値は、ダイヤモンド圧子の押し込み条件を196N、20秒とし、発生した圧痕とクラックの大きさを測定し、その測定値から求めた。
【0038】
また、破壊靱性値を試験片の表面から各深さ位置で測定したところ、破壊靱性値が一定の値に収束する位置(強靱化深さ)はNo. 1−1で40μm、No. 1−2で30μmであり、No. 1−3の破壊靱性値は深さ方向で一定であった。
また、No. 1−1〜1−3の試験片の圧縮残留応力をX線回折により測定したところ、圧縮残留応力の絶対値で、No. 1−1では1200MPa、No. 1−2では300MPa、No. 1−3では0MPaであった。搬送ローラ1の圧縮残留応力も試験片と同じになっていると推定される。
【0039】
これらの結果を下記の表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】

【0041】
図4のグラフから、圧縮残留応力を導入しているNo. 1−1と1−2の搬送ローラ1は、1000万回回転後の走行跡の表面粗さが2〜3μmであったのに対して、圧縮残留応力を導入していないNo. 1−3の搬送ローラ1は6.5μm程度と大きく、No. 1−1と1−2の搬送ローラ1は耐摩耗性に優れていることが分かる。
また、窒化珪素製試験片のX線回折によるピークの半値幅を測定して、破壊靱性値との関係を調べたところ図5のグラフが得られた。X線回折の条件は、CrKα線、電圧40kV、電流40mA、無歪回折角2θ0 =125.40°(β−Si3 4 (411))、コリメータレンズ直径1mm、測定時間120秒である。
【0042】
圧縮残留応力の絶対値はX線回折ピークの半値幅に比例するため、図5のグラフから破壊靱性値が高いほど圧縮残留応力の絶対値が大きいことが分かる。
〔第2実施例〕
まず、HRA89.0(Hv1350)のWC−Co系超硬合金製で、10mm×10mm×厚さ5mmの板状試験片に、平均粒径100μmのジルコニア粒子(Hv1300)を噴射材として用いたショットブラスト処理を施して、それによる強靱化,高硬度化,及び表面粗さRaの変化の度合いをそれぞれ評価した。
【0043】
ショットブラスト処理の条件及び評価結果を表2に示す。なお、破壊靱性値は、「JIS R 1607」に規定された方法により測定した。
【0044】
【表2】

【0045】
No. 2−1と2−2は、ショットブラスト処理が施され、圧縮残留応力が絶対値で50MPa以上1500MPa以下の範囲内となっている。そして、ショットブラスト処理が施されていないNo. 2−3の数値から分かるように、ショットブラスト処理によりビッカース硬さ及び破壊靱性値が上昇している。
No. 2−4は、ショットブラスト処理は施されているものの、圧縮残留応力が絶対値で50MPa未満であるので、ショットブラスト処理の効果が現れておらず、ビッカース硬さ及び破壊靱性値が変化しなかった。また、No. 2−5は、ショットブラスト処理は施されているものの、圧縮残留応力が絶対値で1500MPaを超えるので、破壊靱性値の測定の際に大きなクラックが発生して試験片が破損した。
【0046】
次に、図1の搬送ローラ1をHv1350のWC−Co系超硬合金で形成したもの(No. 2−3)と、これに対してNo. 2−1、2−2、2−4と同じ方法で処理を行ったものについて、その耐久性を、第1実施例と同じ条件で図3の耐久試験装置を用いて調べた。その結果を図6にグラフで示す。
図6のグラフから、圧縮残留応力が本発明の範囲内であるNo. 2−1と2−2の搬送ローラ1は、1000万回回転後の走行跡の表面粗さが4〜5μm程度であったのに対して、圧縮残留応力が本発明の範囲外であるNo. 2−3と2−4の搬送ローラ1は7μm程度と大きく、No. 2−1と2−2の搬送ローラ1は耐摩耗性に優れていることが分かる。
〔SUS440C製搬送ローラと超硬合金製搬送ローラの差について〕
本発明には、上述のような外周面に圧縮残留応力を導入した超硬合金製の搬送ローラだけでなく、圧縮残留応力を導入しない超硬合金製の搬送ローラも含まれる。
【0047】
No. 3−1およびNo. 3−2として、WC−Co系超硬合金で形成して、表面硬さがHRAで89.0(HV:1350)であり、圧縮残留応力を導入していない搬送ローラを作製した。
No. 3−3およびNo. 3−4として、SUS440Cで形成して、表面硬さがHRAで57.0(HV:650)であり、圧縮残留応力を導入していない搬送ローラを作製した。
【0048】
これらについて、第1実施例と同じ条件で図3の耐久試験装置を用いて調べた。その結果を図7にグラフで示す。
図7のグラフから、超硬合金製であるNo. 3−1と3−2の搬送ローラ1は、1000万回回転後の走行跡の表面粗さが5〜6μm程度であったのに対して、SUS440C製であるNo. 3−3と3−4の搬送ローラ1は15〜17μm程度と大きく、No. 3−1と3−2の搬送ローラ1はNo. 3−3と3−4の搬送ローラ1との比較で、耐摩耗性に優れていることが分かる。
〔使用する超硬合金について〕
また、圧縮残留応力を導入する前の超硬合金自体の破壊靱性値が高いほど、圧縮残留応力を導入した後の破壊靱性値が高くなる。超硬合金としては、WCを主成分とし、CoおよびNiの少なくとも一方をバインダとして3質量%以上25質量%以下の範囲で含有するものが好ましい。
【0049】
バインダの含有率が少なくなるに従って、破壊靱性値が小さくなって耐衝撃性が低下する。バインダの含有率が多くなるに従って、硬度が小さくなって耐摩耗性が低下する。WC−Co(WCを主成分とし、Coをバインダとした超硬合金)の場合のCo含有率と破壊靱性値および硬さ(HRA)との関係を図8にグラフで示す。
このグラフから分かるように、破壊靱性値はCo含有率が25質量%の時が最も高く、Co含有率がこれより多いと低くなる。硬さはCo含有率が25質量%より多いと極端に低くなる。Co含有率が25質量%の時に、破壊靱性値と硬さの両方が良好な値となって、それより多いといずれも低くなるため、Co含有率25質量%を上限値とした。下限値に関しては、Co含有率が3質量%より少なくなると、硬さは格段に上昇するが、破壊靱性値は極端に減少するため、Co含有率3質量%を下限値とした。
〔超硬合金製搬送ローラの慣性モーメントについて〕
図9の試験装置を用いて、超硬合金製搬送ローラ1の回転同期試験を実施した。
【0050】
先ず、Hv1350のWC−Co系超硬合金製搬送ローラ1の外周面でない面を削る等して、慣性モーメントがSUS440C製搬送ローラ1と同じもの、SUS440C製搬送ローラ1の慣性モーメントの1.2倍のもの、1.4倍のもの、1.5倍のもの、1.6倍のもの、1.7倍のものを用意した。
図9の試験装置は、SUS440C製で表面粗さがRaで0.1μmである円板61Aと、円板61Aの回転軸62と、直動装置63と、バネ64とで構成されている。バネ64は、その上端が壁面から垂直に延びる部材に固定され、下端に直動装置63が固定されている。この直動装置63から垂直に延びる回転軸3に転がり軸受2を介して搬送ローラ1を取り付け、円板61Aの周面に搬送ローラ1の外周面が常に接触するようにして、回転軸62の駆動により円板61Aを回転する。
【0051】
円板61Aを、下記の条件で、図9(a)に示す矢印方向への回転させて、これに接触している超硬合金製搬送ローラ1が円板61Aと同期回転速度に達するまでの時間を、ストップウオッチを用い、ストロボによって回転同期を確認する方法で測定した。この測定値をSUS440C製搬送ローラの場合の値(同期回転速度に達するまでの時間)で除算し、SUS440C製搬送ローラの場合を「1」とした比を求めた。その結果を図10にグラフで示す。
<試験条件>
環境:真空
軸姿勢:水平
温度:常温
回転速度:150回/分
荷重条件:純ラジアルを、直動装置63を一定荷重で引っ張り、搬送ローラ1を円板61に押し付けることで負荷する。
【0052】
超硬合金は曲げ強度が大きい(3点曲げ強度で2000〜3000MPa)ため、軽量化をしても強度不足にはなりにくいが、限界があるため、図10のグラフから、1.0倍から1.6倍までの慣性モーメントはさほど変わらないが、1.7倍になると回転同期するまでの時間が極端に長くなる。よって、SUS440C製搬送ローラの慣性モーメントの1.0以上1.6倍以下とすることで、超硬合金製搬送ローラの強度と回転起動のし易さが両立できる。
〔搬送部の被案内面の表面硬さと、搬送ローラの外周面の表面硬さとの関係について〕
図9の装置に、表面硬さがHRA90.8であるWC−Co系超硬合金製の搬送ローラ1と、表面硬さが異なる4種類(HRA83.8〜90.8)の円板61Aを取り付けて、軸姿勢が水平、真空、常温の環境で、1分間に150回の回転速度で搬送ローラ1を回転させ、2000万回の時点で、搬送ローラ1の走行跡の表面粗さ(最大高さ)を測定した。その結果を図11にグラフで示す。
【0053】
このグラフから分かるように、円板61Aの表面硬さがHRA85.5〜89.0の場合に、搬送ローラ1の走行跡の表面粗さが低く、搬送ローラ1の摩耗量が少なくなっている。この結果から、搬送ローラの外周面の表面硬さが、搬送部の被案内面の表面硬さよりHRAで1.8以上5.3以下の範囲で硬く形成されていることで、搬送ローラの外周面と搬送部の被案内面の両方の摩耗を少なくできることが分かる。
〔転がり軸受の潤滑被膜(フッ素油被膜)について〕
図12の試験装置で潤滑剤のガス放出性について調べた。この装置は、オリフィス71を介して左右に分けられた第1の真空槽72および第2の真空槽73と、ターボポンプ74と補助ポンプ75とヒータ76と各真空槽72,73に設けた真空計77,78とからなる。ヒータ76は、第1の真空槽72に設けた転がり軸受2を置く台79を加熱する。
【0054】
ヒータ76により第1の真空槽72内に設置した転がり軸受2を100℃に加熱し、ターボポンプ74と補助ポンプ75で、第2の真空槽73の圧力P2を8×10-6Paとなるようにする。転がり軸受2から放出されたガスはオリフィス71を通過して、第2の真空槽73に移動する。第1の真空槽72の真空計77で測定された圧力P1と、第2の真空槽73の真空計78で測定された圧力P2から下記の(1)式により、オリフィス71を通過したガス量Qが算出できる。Cはオリフィス71のコンダクタンスである。
【0055】
Q=C(P1−P2)‥‥(1)
この装置を使用して、転がり軸受2の軌道面にフッ素油の被膜を、0.5g/m2 、1.0g/m2 、1.5g/m2 、2.0g/m2 、3.0g/m2 、5.0g/m2 、10.0g/m2 、15.0g/m2 の各量となるように形成した場合の、100℃での放出ガス量を測定した。その結果を図8のグラフに曲線Aで示す。図13のグラフの直線Bは、転がり軸受2の軸受空間にフッ素グリースを充填して、図12の装置を用いて放出ガスを測定した場合の結果を示す。
【0056】
このグラフから、フッ素油被膜量が12g/m2 以上になると、フッ素油被膜からの放出ガス量がフッ素グリースの場合の放出ガス量より多くなる。よって、フッ素油被膜量は10g/m2 以下とすることが好ましい。
また、転がり軸受2の軌道面に0.5g/m2 、1.0g/m2 、1.5g/m2 のフッ素油被膜を形成して、回転試験を行った。試験条件は、軸受姿勢:水平軸、回転速度:150min-1、温度:100℃、圧力環境:真空であり、軸受トルクが初期値の2倍を超えた時の総回転数を寿命とした。また、総回転数が1.0×107 を超えても軸受トルクが初期値の2倍を超えない場合は、その時点で試験を打ち切った。
【0057】
その結果も図13に「△」で示してある。図13において矢印は試験打ち切りを意味し、フッ素油被膜量が1.0g/m2 以上で、良好な耐久性が得られることが分かる。
これらの結果から、フッ素油被膜量は1.0g/m2 以上10g/m2 以下とすることが好ましい。
〔転がり軸受の潤滑被膜(DFO潤滑被膜)について〕
転がり軸受2の軌道面に2.0g/m2 のDFO潤滑被膜を形成して、上記と同じ方法で100℃での放出ガス量を測定したところ、PFPE基油で2.1×10-8Pa・m3 /sであり、MAC基油で1.3×10-8Pa・m3 /sであり、2.0g/m2 のフッ素油被膜を形成した場合の3.0×10-8Pa・m3 /sよりも放出ガス量が少なかった。
【0058】
また、これらの各転がり軸受を縦軸の回転試験機に取り付けて、回転方向を1回ごとに逆向きにして寿命を調べた。試験条件は、回転速度:150min-1、温度:100℃、圧力環境:真空であり、軸受トルクが初期値の2倍を超えた時の総サイクル数を寿命とした。また、総サイクル数が5×106 を超えても軸受トルクが初期値の2倍を超えない場合は、その時点で試験を打ち切った。
【0059】
その結果を図14のグラフに示す。この結果から、転がり軸受の潤滑被膜をDFO潤滑被膜とした方がフッ素油被膜とした場合よりも耐久性に優れていることが分かる。
〔搬送ローラの形状について〕
図15および16に示すように、搬送ローラ1の外周面を凸状に形成し、レール4aを凹状に形成することにより、レール4aが搬送ローラ1から外れにくくなる。図15の例では、搬送ローラ1の凸部11のアールの曲率をレール4aの凹部4bのアールの曲率よりも小さくしている。図16の例では、搬送ローラ1の凸部11をアール状とし、レール4aの凹部4bをV字状としている。
【0060】
なお、この実施形態では、搬送ローラ1が転がり軸受2とは別体で、搬送ローラ1が転がり軸受の外輪に外嵌されている例について説明しているが、図17に示すように、転がり軸受2の外輪21を搬送ローラとする場合もあり、その場合は、外輪21の外周面の表層部に、絶対値で50MPa以上1500MPa以下の圧縮残留応力を導入する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に相当する真空搬送装置を示す断面図である。
【図2】搬送ローラのボールミル工程で使用する遊星ボールミルのミルポットを示す断面図(a)とそのA−A断面図(b)である。
【図3】耐久性を調べるために使用した試験装置を示す概略構成図(a)とそのB−B断面図(b)である。
【図4】第1実施例で行った試験の結果を、搬送ローラの総回転数と走行跡の表面粗さ(最大高さ)との関係で示すグラフである。
【図5】X線回折によるピークの半値幅と破壊靱性値との関係を示すグラフである。
【図6】第2実施例で行った試験の結果を、搬送ローラの総回転数と走行跡の表面粗さ(最大高さ)との関係で示すグラフである。
【図7】SUS440C製搬送ローラおよび超硬合金製搬送ローラの総回転数と、走行跡の表面粗さ(最大高さ)との関係で示すグラフである。
【図8】WC−Co(WCを主成分とし、Coをバインダとした超硬合金)の場合のCo含有率と破壊靱性値および硬さ(HRA)との関係を示すグラフである。
【図9】超硬合金製搬送ローラの回転同期試験を実施するために使用した試験装置を示す図である。
【図10】超硬合金製搬送ローラ1が円板61Aと同期回転速度に達するまでの時間の比と、SUS440C製搬送ローラの場合を「1」とした慣性モーメントの比との関係を示すグラフである。
【図11】図9の装置の円板61Aの表面硬さを変化させて2000万回回転させたの時点での、搬送ローラ1の走行跡の表面粗さ(最大高さ)を示すグラフである。
【図12】転がり軸受の潤滑剤からのガス放出性を調べる試験装置を示す概略構成図である。
【図13】転がり軸受の軌道面に形成したフッ素油の被膜量と、転がり軸受からの放出ガス量および転がり軸受の寿命との関係を示すグラフである。
【図14】転がり軸受の軌道面に形成する潤滑被膜が異なる場合の試験温度と寿命との関係を示すグラフである。
【図15】搬送ローラの外周面を凸状に形成し、レールを凹状に形成した第一の例を示す断面図である。
【図16】搬送ローラの外周面を凸状に形成し、レールを凹状に形成した第二の例を示す断面図である。
【図17】転がり軸受の外輪を搬送ローラとする例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 搬送ローラ
11 搬送ローラの凸部
2 転がり軸受
3 回転軸
D ディスクメディア
4 台車(搬送部)
4a レール(被案内面)
4b レールの凹部
40 ミルポット
41 ハウジング
42 転がり軸受
43 回転軸
44 搬送ローラを外嵌する円柱体
5 ボール
61a 段
61 カム
61A 円板
62 カムの回転軸
63 直動装置
64 バネ
71 オリフィス
72 第1の真空槽
73 第2の真空槽
74 ターボポンプ
75 補助ポンプ
76 ヒータ
77,78真空計
79 転がり軸受を置く台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部の被案内面に外周面を接触させて回転することにより前記搬送部を案内する搬送ローラにおいて、
超硬合金製であることを特徴とする搬送ローラ。
【請求項2】
WCを主成分とし、CoおよびNiの少なくとも一方をバインダとして3質量%以上25質量%以下の範囲で含有する超硬合金からなる請求項1記載の搬送ローラ。
【請求項3】
前記外周面の表層部に絶対値で50MPa以上1500MPa以下の圧縮残留応力が導入されていることを特徴とする請求項1または2記載の搬送ローラ。
【請求項4】
遊星ボールミルのミルポット内に、複数個のセラミックス製または超硬合金製ボールと外周面が露出した搬送ローラを入れて遊星ボールミルを作動させ、前記ボールに、ミルポット内に発生する公転に伴う遠心力と自転に伴う遠心力を付与することで、前記ボールを前記搬送ローラの外周面に衝突させてその表層部に残留応力を導入するボールミル工程を行った後に、仕上げ研磨加工を行って得られたものである請求項3記載の搬送ローラ。
【請求項5】
請求項4のボールミル工程を、ミルポット内に、搬送ローラを外嵌する円柱体を回転可能に設けた遊星ボールミルを用い、前記円柱体に搬送ローラを外嵌して遊星ボールミルを作動させることで行って得られた請求項3記載の搬送ローラ。
【請求項6】
外径、内径、最大幅の各寸法がすべて同じSUS440C製の搬送ローラの慣性モーメントの1.0倍以上1.6倍以下の慣性モーメントを有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送ローラ。
【請求項7】
外周面の表面硬さが、搬送部の被案内面の表面硬さよりHRAで1.8以上5.3以下の範囲で硬く形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の搬送ローラ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の搬送ローラと、前記搬送ローラを軸に対して回転自在に支持する転がり軸受と、前記搬送ローラの外周面に接触させる被案内面を備えた搬送部と、を備え、内部を真空にして使用する真空搬送装置において、
前記転がり軸受の軌道面に、以下の3種の潤滑被膜のいずれか一つが形成されていることを特徴とする真空搬送装置。
(1)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑被膜
(2)官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテルとフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜
(3)アルキル化シクロペンタン又はポリフェニルエーテルを主成分とする潤滑油とフッ素樹脂とを含有する潤滑被膜

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−210014(P2009−210014A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53204(P2008−53204)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】