説明

搬送性が優れた粘着シート積層体

【課題】粘着シートを使用する工程において複数枚密着することなく一枚ずつ容易に分離して搬送でき、またこの積層体を多数枚積み重ねたとき粘着シート部側の基材シート面は離型性シート側の非離型性面と相互に接触するが、粘着シートの非粘着剤層面の印刷性を損なうことが無い粘着シート積層体を提供する。
【手段】粘着シート積層体を構成する離型性シートの非離型性面に微粒子を含む樹脂層を形成してマット化し、その表面の粗度をRaで0.15〜1.1μmとし、好ましくはさらに当該非離型性面に非移行性の帯電防止剤を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関し、詳しくは、搬送性が優れた粘着シート積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の産業分野で、物品表面に別のシート状物を積層する目的で、あるいは表面を一時的に保護する目的で、シート状の粘着シートを貼り付ける工程が汎用されている。これらの粘着シートを枚葉状でこの工程に供給する前に、その粘着シートは、通常、ロール状の段階で、あらかじめその粘着剤層に離型性シートを積層してその粘着剤層を保護した粘着シート積層体とし、これを所定の寸法に裁断して枚葉状とし、これを山状に重ねて保管し、必要に応じてこの積層体の山から一枚ずつ分離して例えば印刷工程などに供給して基材シート面に図柄などが印刷される。
【0003】
上記のような粘着シートを特定の位置に貼り付ける場合、貼付方法によっては、貼付位置がずれたり、貼付の際に被着面と粘着シートとの界面に気泡を巻き込んだり、トンネルじわが生じて、貼り直しが必要となる場合がある。本発明者らはかかる貼り直しが容易な粘着剤として、貼付時には自己粘着性があり気泡の巻き込みが少なく、貼り直しのために剥離する時には引っ張りじわが生じない程度の小さいテンションで剥離できる粘着剤層を使用した粘着シートを開発してきた(特許文献1)。
このように、粘着シート自体は貼り付け操作はうまく進めることができても、これに離型性シートを積層して積層体の状態で一枚ずつ分離して次の工程へ供給する際、上記の粘着シートの基材シートおよび離型性シートの基材層は、通常プラスチックフィルムが汎用されていて一般に帯電し易いため、各枚葉間が帯電した静電気などにより密着し、スムーズに滑ることができず、うまく分離できないという搬送性のトラブルが生じやすいことが判明した。
【0004】
かかる枚葉状積層体を山状に重ねたときの密着トラブルの原因が、この離型性シート側の非離型性面と粘着シート側の非粘着剤層面(基材シート面)との間の静電気による密着も原因として考えられるため、その静電気の対策方法として、過去の文献を参照するまでもなく、帯電防止対策、例えば、上記の帯電を防止するために作業環境の湿度を高くしたり、離型性シート側の非離型性面や粘着シート側の非粘着剤層面に帯電防止剤等を用いて非帯電性にすることが知られている。また、密着を防ぐために、山状に積み重ねる際に各枚葉間に粉体を散布する方法も知られている。
【0005】
しかしながら、作業環境の湿度を高くする方法は、加工工程の他の材料への悪影響が生じ易く、また作業者の作業環境としても好ましいものではない。また、粘着シートの基材シートの非粘着剤層面は、通常種々の情報を表示(印刷)する面であるが、その面に従来の界面活性剤タイプの帯電防止剤等を含有させる方法は、その面の印刷性を損なうなど含有させることによるトラブルが生じ易い。また、離型性シートの非離型性面に従来の界面活性剤タイプの帯電防止剤等を配合する方法は、一見問題が無さそうであるが、粘着シートと離型性シートの積層体である粘着剤シート積層体を山状に積み重ねる場合のように離型性シート側の非離型性面と粘着シート側の非粘着剤層面とが交互に密接するような場合には、その密接によって離型性シートの非離型性面に含まれる帯電防止剤が粘着シートの非粘着剤層面に移行することによる汚染により、やはり印刷性を損なう場合もある。また、粉体を散布する方法も、印刷すべき表面に粉体が付着するため印刷性を阻害することには変わりない。
【0006】
本発明者らは、上記のような印刷性を損なう原因となりうる界面活性剤タイプの帯電防止剤の使用を必要最小限として、しかも各枚葉間の密着がなく搬送性が優れた離型性シートを粘着剤層表面に積層した粘着シート積層体を求めて種々検討した結果、本発明に達したものである。
【0007】
【特許文献1】特開2004−231694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、本発明の課題は、粘着シートを使用する工程において複数枚密着することなく一枚ずつ容易に分離して搬送でき、またこの積層体を多数枚積み重ねたとき粘着シート部側の基材シート面は離型性シート側の非離型性面と相互に接触するが、粘着シートの非粘着剤層面の印刷性を損なうことが無い粘着シート積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、基材シートの片面に粘着剤層を形成した粘着シートの粘着剤層表面に離型性シートをその離型性表面で貼り合わせて成る粘着シート積層体において、当該離型性シートの非離型性面にマット層が形成され、表面粗度Raが0.15〜1.1μmであることを特徴とする粘着シート積層体に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シート積層体は、粘着シートの粘着剤層表面に積層された離型性シートの非離型性面に形成されたマット層の滑り摩擦が小さく、しかもさらにマット層に非移行性帯電防止剤を添加したものは帯電による密着が無いため、粘着シート積層体を積み重ねた山から印刷工程等へ一枚ずつ分離して供給し或いは搬送する際の離れがよく、しかも、上記の帯電防止剤が非移行性であるため印刷時には帯電防止剤の移行による印刷トラブルが無い。そして、粘着剤層を構成する粘着剤として貼付時には自己粘着性があり気泡の巻き込みが少なく且つ貼り直しのために剥離する時には引っ張りじわが生じない程度の小さいテンションで剥離できるものを使用する場合は、貼り直し性が優れ、工程におけるロスを最小限に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の粘着シート積層体は、粘着シートの粘着剤層表面に離型性シートをその離型性表面で積層して成る。
【0012】
上記の粘着シートは、基材シート表面に粘着剤層を形成して成る。
【0013】
上記の基材シートとしては特に限定されるものではなく、従来自己粘着性フィルム又は表面保護フィルムとして使用されているものを使用することができ、例えば、プラスチックフィルムやその他紙類などのシート状材料を用いることができる。上記のプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのフィルムがあげられる。なお、上記の基材シートには、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤を含ませることができる。また、基材シートの粘着剤層を設けない面に、防汚性、耐候性、耐光性、反射防止性、視野角制御性を付与する被覆層やハードコート層が形成されていてもよい。
【0014】
上記の基材シートの厚さは、最終的に加工工程で使用される粘着シートに求められる耐久性・柔軟性などを考慮して適宜決定し得るが、例えば、10〜350μmであり、好ましくは25〜200μmである。なお、上記の基材シートは、通常無色透明であるが、製品である粘着シートの用途に応じて有色透明または不透明であってもよい。
【0015】
なお、上記の基材シートを選択する際、その表面に形成される粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤が、後述の自己粘着性粘着剤である場合、この自己粘着性を生かすためには、例えば、この粘着シートを被着面上にその粘着性フィルムの一端を貼り付け、他端を摘んでいた指先を離したとき、順にその他端へと向かって貼り付けを進めて貼り付けを完了させることが可能になるような、柔軟性、可撓性がある基材シートを選択するのが特に好ましい。かかる観点から、例えば、基材シートとしては、PETフィルムが好適に使用できる。そして、かかるPETフィルムの市販品としては、例えば、東レ株式会社製のルミラー50S10やユニチカ株式会社製のエンブレット38SC、東洋紡積株式会社製の東洋紡エステル#125A4100等が挙げられる。なお、本発明において“自己粘着性”とは、被着面への貼り付けの際、外から圧力を掛けなくても、粘着できる性質を意味する。
【0016】
上記の各基材シートは、上記の粘着剤層との接着性を改良するため、必要に応じて、その片面又は両面に、易接着処理、例えば、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理など、中でも実用的にはコロナ処理を施したものを好適に用いることができる。
【0017】
前記の基材シートの表面に形成される粘着剤層を構成する粘着剤層としては、特に限定されるものではないが、貼付の際に、貼り直しなどが容易にできる自己粘着性、易剥離性を有する易貼付性粘着剤が好適に使用できる。かかる易貼付性粘着剤としては、熱可塑性エラストマーと、それを可塑化しうる可塑剤とを主成分とした組成物をあげることができる。
【0018】
上記の熱可塑性エラストマーとしては、種々のものを用いることができるが、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットからなるブロック共重合体で構成されているポリマーであるのが好ましい。かかるポリマーとしては、例えば、SIS、SBS、SEBS、SEPS、SI、SB、SEPなどが挙げられ、中でもSEBS、SEPSが好ましい。上記のSEBSを用いる場合、その質量平均分子量は、例えば、20,000〜500,000であるのが好ましく、より好ましくは50,000〜350,000である
【0019】
また、前記の可塑剤としては、上記の熱可塑性エラストマーを可塑化し得るものであれば特に制限されないが、熱可塑性エラストマーがポリスチレン相とゴム相を有する場合に、ゴム相に対する親和性が高く、ポリスチレン相に対する親和性が低い高分子量の化合物が適している。このような可塑剤としては、例えば、ナフテン系オイル及びパラフィン系オイルを挙げることができる。
【0020】
上記のナフテン系オイルは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.83〜0.87であるのが好ましく、より好ましくは0.837〜0.868である。また、その質量平均分子量が100〜1000であるのが好ましく、より好ましくは150〜450である。
【0021】
一方、上記のパラフィン系オイルは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.89〜0.91であるのが好ましく、より好ましくは0.8917〜0.9065である。また、その質量平均分子量が100〜1000であるのが好ましく、より好ましくは150〜450である。本発明においては、前記ナフテン系オイル、パラフィン系オイルのいずれかを単独で用いることができるが、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0022】
上記の熱可塑性エラストマーと可塑剤の配合割合は、質量部ベースで通常10:90〜90:10であり、貼付時のエア抜け性の観点から、好ましくは、20:80〜80:20とされる。
【0023】
上記の粘着剤には、基材シートへの密着性及び被着体への接着性を改良するために、必要により、さらに、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とから成る接着剤成分を配合させることができる。
【0024】
また、上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーなど、種々のものを用いることができ、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、アクリル酸、プロピロル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びオレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸で変性されたものを挙げることができる。中でも、脂肪族不飽和ジカルボン酸変性で変性したものが好ましく、最も好ましくは、無水マレイン酸変性したものである。
【0025】
上記のカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーであってもよい。この例としては、例えば、水素添加された無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー(無水マレイン酸変性SEBSエラストマー)が挙げられる。そして、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして、水素添加された無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるものが好ましく、より好ましくは3〜7g/10分のものである。
また、上記の水素添加されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、水素添加率が実質的に100%であるのが好ましいが、本発明の効果が得られる限りにおいてそれ未満であってもよい。
【0026】
また、カルボン酸変性SEBSを用いる場合、そのスチレン:(エチレン+ブチレン)の質量比は、例えば、10:90〜40:60であるのが好ましく、より好ましくは、20:80〜30:70である。更に、本発明においては、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価が、好ましくは2〜10である。酸価が3未満であると無色透明なフィルムとすることができ、一方、酸価が3〜10であると黄色がかったものとすることができる。
【0027】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして市場で入手できるものとして、例えば、旭化成工業株式会社製のタフテックM1911、M1913、M1943、及びクレイトンポリマー製のクレイトンFG−1901Xなどが挙げられる。
【0028】
また、前記の架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤など、及びこれらを複数種類配合したものを挙げることが出来る。
【0029】
上記のイソシアネート系架橋剤の市販品としては例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート HDI−TMPアダクト)が好適に使用できる。
【0030】
上記のアジリジン系架橋剤の市販品としては、例えば、BXX5134(東洋インキ製造株式会社製)が好適に使用できる。
【0031】
また、上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤との配合割合は、質量部ベースで99.2:0.8〜85:15程度である。
【0032】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とから成る接着剤成分の粘着剤への配合量は、粘着剤層の全質量中に、通常5〜65質量%、実用的には10〜40質量%となる範囲で設定される。
【0033】
本発明の粘着シート積層体の粘着剤層は、前記の熱可塑性エラストマー及び可塑剤と、必要により配合されるカルボン酸変性熱可塑性エラストマー及び架橋剤から成る接着剤成分とを、通常、トルエン等の溶剤に溶解して粘着剤塗布液とし、塗布し、乾燥して形成される。かかる粘着剤塗布液の固形分濃度は、通常20〜40質量%とされる。
【0034】
また、上記の粘着剤塗布液には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、電磁波防止剤、帯電防止剤、および、これらを組み合わせて配合することができる。
【0035】
上記の粘着剤に添加する帯電防止剤としては、例えば、日本油脂製のエレガン264waxなどを用いることができ、その添加量は、粘着剤層の質量をベースとして、通常0.1〜3.6質量%であり、好ましくは0.6〜1.8質量%である。このような割合で帯電防止剤を用いることにより、いわゆる「ゆずはだ」の発生および静電気による引火を良好に防止することができる。
【0036】
上記の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0037】
上記のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C7〜C9)等を挙げることができる。
【0038】
また、上記のベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0039】
前記の粘着剤への上記の紫外線吸収剤の添加量は、特に制限されるものではないが、通常、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0040】
前記の粘着剤塗布液の塗布方法としては、液状のものが塗布できるものであれば特に制限はないが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、コンマコーターを用いる方法が挙げられる。上記の塗布厚みは、特に制限されないが、通常、乾燥後の厚さとして、1〜100μmであり、好ましくは5〜75μmであり、実用的には15〜50μmである。これにより、例えば、コスト面及び加工適性面において所望の結果が得られる。
【0041】
前記の乾燥条件は、塗布厚みや選択した溶剤の種類などにより変動し得るが、例えば、80〜150℃で20〜180秒間とすることができ、好ましくは100〜130℃で30〜150秒間とする。これにより、1〜100μmの厚さを有する粘着剤層を基材シート上に設けることができる。次いで、この粘着剤層材料上に、後述の剥離層を設ける。その後、これを40〜80℃で2〜10日間エージングさせることにより、本発明の粘着シートを得ることができる。
【0042】
なお、前記の基材シートに粘着剤層を形成する前に、基材シートと粘着剤層との密着性を改良するために、必要により前記の接着剤成分塗布液を塗布、乾燥してアンカー層を設けることができる。かかる塗布液の接着剤成分の濃度は、通常5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%程度とされる。
【0043】
上記のアンカー剤溶液には、帯電防止剤を添加するのが好ましい。かかる帯電防止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、カチオン性帯電防止剤であるエレガン264wax(商標、日本油脂株式会社製)を挙げることができ、その添加量は、上記の接着剤の質量に対して、通常0.1〜3.6質量%であり、好ましくは0.6〜1.8質量%とされる。このような添加量範囲にすることにより、アンカー層におけるいわゆる「ゆずはだ」の発生を良好に防止することができる。
【0044】
上記のアンカー剤溶液の塗布方法は、公知の方法でよいが、具体例としては、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーターあるいはメイヤーバーなどを用いた塗布方法が挙げられる。また、そのアンカー層の厚さは、通常、1〜50μm、好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは2〜5μmである。そして、塗布後の乾燥条件は、通常80〜150℃の温風中で20〜60秒間、好ましくは100〜130℃の温風中で30〜50秒間である。このアンカー層を設けた場合は、粘着剤層はこの表面に形成される。
【0045】
本発明の粘着シート積層体に使用される離型性シートは、粘着シートの保存時および搬送時の便宜のため粘着剤層の上に積層される。かかる離型性シートとしては、上記の粘着シート積層体を多数枚積み重ねたときに離型性シート側の非離型性面とその面が接触する基材シート部側の非粘着剤層面との間の滑り性および分離性が改善されるよう、この非離型性面にマット層を形成したものが使用される。
【0046】
上記の離型性シートの基材層を構成するシートとしては特に限定されないが、従来公知の離型性シートに使用されているものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂シート、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等の紙、不織布等のシートが用いられる。厚さは12〜100μm程度である。なお、上記の基材シートには、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤を含ませることができる。
【0047】
上記の基材層に離型性を付与する方法としては、公知の方法を援用することができ、たとえば、表面にシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、メラミン系樹脂等の離型性の高い樹脂、パラフィン類等から成る離型剤を塗布したものが挙げられるが、中でもシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂から成る離型剤を用いたものが離型効果が高い。
【0048】
また、上記のマット層を形成する方法としては、たとえば微粒子を添加した硬化性樹脂液を主成分とするマット層用塗布液を非離型性面に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。かかるマット層用塗布液を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、実用性の観点から、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂を挙げることができる。
【0049】
上記のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、公知のものを使用することが出来、具体的には、アルキル基が、メチル基、エチル基、n−プロビル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基などであるアルキル(メタ)アクリレートモノマー;2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いて共重合できる。さらに、これらはその他のモノマーと併用することができる。
【0050】
上記のその他のモノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー;アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0051】
上記のアクリル系樹脂は、分子内の官能基で自己架橋することができるが、さらに必要により、前記の粘着剤層に添加することができるイソシアネート類などの架橋剤やメラミン樹脂やエポキシ化合物等の架橋剤を追加して架橋させることもできる。これらの架橋剤の添加量は、例えばイソシアネートの場合、上記の樹脂分100質量部に対して通常0.5〜15質量部である。
【0052】
また、上記共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0053】
また、前記の微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、カオリン、タルク、グラファイト、炭酸カルシウム、長石、二硫化モリブデン、カーボンブラック、硫酸バリウム等の如き無機質微粒子;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン樹脂等の有機質微粒子のいずれを用いてもよいが、中でもシリカ粒子がより好ましい。上記の微粒子の大きさは、通常、平均粒径0.1〜10μmであり、好ましくは1〜6μm程度である。かかる微粒子のマット層用塗布液への添加量は、上記の樹脂成分に対して、通常1〜200質量%、好ましくは5〜80質量%であり、塗布液を塗布し乾燥して得られたマット層の表面粗度Ra(JIS B 0601 1994年改訂)が0.15〜1.1μm、好ましくは0.15〜0.9μmになるように調節される。
【0054】
以上の様に非離型性面に微粒子などを添加したマット層を形成した離型シートを積層した本発明の粘着シート積層体を枚葉状に裁断し、多数枚積み上げた山から印刷工程などに供給する場合、枚葉間のスリップ性が優れているため円滑に搬送出来るが、印刷工程の後に引き続き他の工程に搬送しようとする場合は、印刷工程における摩擦により帯電して枚葉状の積層体が相互に密着し複数枚重なって搬送されることがある。かかる帯電によるトラブルを回避するため、上記のマット層用塗布液に非移行性の帯電防止剤、例えば、導電性ポリマータイプ帯電防止剤、高分子量帯電防止剤などを配合するのが好ましい。なお、この非移行性とは、この非移行性の帯電防止剤を含む層を他のフィルム等の表面に密着した時フィルム表面に帯電防止剤が移行しない性質を言う。かかる非移行性帯電防止剤の市販品としては、例えばエレコンドPQシリーズ(綜研化学株式会社製)、PELシリーズ、TCQMシリーズ(日本カーリット株式会社製)、コルコートシリーズ(コルコート株式会社製)等が知られている。
【0055】
上記の非移行性の帯電防止剤の配合量は、帯電防止剤の帯電防止性能により異なるが、通常、全マット層中で1〜50質量%程度であり、エレコンドPQシリーズの場合は10〜20質量%で十分である。また、前記のマット層用塗布液は、上記の硬化性樹脂、微粒子およびその他の成分を配合し、有機溶媒に溶解・分散して調製することができる。なお、このマット層用塗布液調製の際、樹脂と微粒子が良好な混合状態を形成させるため、必要により界面活性剤を添加することができるが、添加した界面活性剤が接触する面に移行するとその面の印刷適性を損なうため、必要最小限に抑制するのが好ましい。
【0056】
上記の界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤等を挙げることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石ケン、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、第4級アンモニウムクロライド塩、アルキルアミン塩酸塩等を挙げることができる。この中でもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが好ましい。
【0057】
上記のマット層用塗布液は、以上の樹脂分およびその他の各成分を酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒に溶解して調製される。この塗布液の樹脂分濃度は、通常、15〜35質量%程度であり、好ましくは20〜30質量%程度である。そして、離型性シートの非離型性面への塗布量は、通常、乾燥後のマット層の塗布量として0.5〜10g/mとされるが、その際、添加される微粒子の径が大きい場合は多くするのが好ましく、実用的には、微粒子が小粒径の場合は、1〜3g/mである。
【0058】
上記のマット層用塗布液の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独または組み合わせて適用するとよい。
【0059】
上記のマット層用塗布液の塗布層の乾燥条件は、公知の条件を適用することができるが、例えば、80〜150℃の熱風環境下で20〜120秒間とすることができ、通常100〜130℃で30〜100秒間である。次いで、通常、これを40〜80℃で2〜6日間エージングさせることにより、本発明に使用する離型性シートを得ることができる。
【0060】
以上のようにして非離型性層にマット層が形成された離型性シートのマット層の表面粗さ(Ra)は、前記の微粒子の添加量の調節により0.15〜1.1μm、好ましくは0.15〜0.9μmとなる。Raが1.1μmを超えると、その表面粗度により、接触する面に傷をつけ易く、また、Raが0.15μm未満であると、搬送性に支障が生じ易い。そして、このような離型性シートの搬送性は後述のスリップ開始角度により評価できるが、その搬送性はスリップ開始角度として30度程度以下にすることができる。
なお、本発明の粘着シート積層体は、前記の粘着シートの粘着剤層表面に上記の離型性シートをその離型性面で積層して得られる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
なお、本実施例において、粘着剤層および離型性シートのマット層の特性は、以下の方法で評価した。
【0062】
(搬送性:スリップ開始角度)
23℃×65%RHの室内において、評価対象である離型性シートをあらかじめ同室内で24時間調湿した後、10cm×15cmの試験片を採取し、この試験片を傾斜角0度から90度まで連続的に変化させ得る斜面ガラス基板の斜面上に傾斜角を増加するとき長辺が立ち上がる向きに、マット層を外面にして載置し、両短辺部を斜面基板に密接するように粘着テープにより固定した。この傾斜角度を0度(水平方向)にした状態で、この試験片上に5cm×5cm大のポリエステルフィルム(ルミラー250S10、東レ株式会社製)を静かに載置し、傾斜角を水平状態から毎分5度の速さで増加させ、上記のポリエステルフィルムが試験片上を滑り始めたスリップ開始角度を読み取る。試験片を取り替えて試験を3回繰り返し、得られた角度を平均して評価結果とした。
【0063】
(搬送性:プリンター通紙性および次工程における搬送性)
得られた粘着シート積層体からA4版大に裁断して200枚の試験片を作製し、この200枚の試験片の基材層側の面に印刷される様にレーザープリンター(Xerox社製、Docucentre Color 320CP)に装填し、印刷操作を行ってプリンターに通紙した(プリンター通紙性)。次いで、引き続き行われる後工程における搬送性の代替評価として、上記の通紙した粘着シート積層体を山積みにし、再度、同様にしてレーザープリンターに装填し、印刷操作を行ってプリンターに通紙した(次工程における搬送性)。
その結果、第一の印刷機および第二の印刷機に共に各200枚が一枚ずつすべて分離して供給された場合を◎、第一の印刷機では各200枚が一枚ずつすべて分離して供給されたが第二の印刷機では少なくとも一部が重なって印刷機に供給されたことがあった場合を○、第一の印刷機で少なくとも一部が重なって印刷機に供給されたことがあった場合を×と評価した。
【0064】
(エア抜け速さ)
ループ式エア抜け測定により評価した。その手順は、長さ9cm、幅4cmの大きさで厚さが125μmのPETシート(商品名:ルミラー125T60、東レ株式会社製)の長辺をループ状に丸めて指先で摘んで円周が9cmの筒を形成し、摘み部分が天になるように維持しつつその底部(中央)を、机上に広げた評価対象の粘着性シート上に接した後、摘んだ指先を離してPETシートが長さ方向に左右に広がり粘着性シートとの間の空気を排除しつつ接触して接着して行くとき、左右の部分(4.5cm長)の内、全部分が先に粘着剤層に接着した側の接着が完了するまでの時間t(秒)を測定し、4.5cm/t(秒)の式で算出される速度をエア抜け速さ(cm/秒)とした。
【0065】
(窓ガラスへの貼合作業性)
粘着シートから剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ガラス板表面(平面)上に対して、前記フィルムの一端を最初に貼り付けておき、次第に他端へとその貼り付け面を拡大して貼り付けを行った。その際の作業性を下記の基準で評価した。
◎:気泡をかみ込むことなく、スムーズに貼合可能
○:気泡を僅かにかみ込むが、実用上は問題なし
×:気泡を多数かみ込み、貼合せが困難
【0066】
(粘着性シートの粘着力)
評価対象の粘着性シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、これを被着体としてのPETフィルム25T60(東レ株式会社製)に貼り合わせた後、短冊の幅方向の両側にはみ出しているPETフィルムを切除したものを試験片とし、これを、25℃環境下において30分間放置した後、その長さ方向の一端にて基材シートと被着体フィルムとの間に剥離口を設け、そのシートとフィルムとの間の剥離強度を、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて、島津製作所製AUTOGRAPH AGS−50Dを用い、それぞれについて剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mmの条件で測定し、3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。
【0067】
(表面粗さ:Ra)
JIS B 0601(1994年改訂)に基づき、表面粗さ測定器SE1700α(KOSAKA Labolatory Ltd.社製)を用いて、触針R2μm、送り速度0.500mm/秒、カットオフλc=0.800mmの条件で4.0mm長についてRaを測定した。
【0068】
[実施例1]
(粘着シート)
SEBS熱可塑性エラストマー(クレイトンG1651、スチレン/(エチレン+ブチレン)質量比33/67、クレイトン社製)30質量部と可塑剤(パラフィン系オイル、質量平均分子量330)70質量部とをトルエン274質量部に溶解し、さらに、接着性成分として無水マレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業株式会社製)15質量部、コロネートHL(イソシアネート系硬化剤、日本ポリウレタン工業株式会社製)の0.7質量部、TINUVIN384−2(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)の3.2質量部、エレガン264wax(カチオン系帯電防止剤 日本油脂株式会社製)の0.3質量部とを配合し、よく攪拌して粘着剤層用塗布液とした後、この塗布液を基材シートとしてのA4版大で厚さ125μmのポリエステルフィルム:東洋紡エステル#125−A4100(片面が易接着処理面、東洋紡績株式会社製)の易接着処理されていない面にメイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して自己粘着性の粘着剤層を形成し、自己粘着性の粘着シートを得た。
【0069】
(マット層用塗布液)
平均粒径3μmのシリカ微粒子を固形分ベースで9.1質量%且つ平均粒径5μmのポリエチレンワックスを含むアクリルポリオール系樹脂VM−D・PM−3(大日精化株式会社製)100質量部をメチルエチルケトン34質量部加えて希釈した後、コロネートHL6.7質量部を添加し、さらにポリマータイプの帯電防止剤であるエレコンドPQ50B(綜研化学株式会社製)15質量部 を添加し、よく攪拌してマット層用塗布液を得た。
【0070】
(離型性シートの作製)
上記の塗布液を、厚さ75μmのPETフィルムの表面にシリコーン処理した市販の離型性シートであるPET75−6010(リンテック株式会社製)の非離型性面に、ダイレクトグラビアコーターを用いて、乾燥後のマット層の塗布量が1.5g/mとなるように塗布し、105℃の熱風中で1分間乾燥し、非離型性面にマット層が形成された離型性シートを得た。
【0071】
(粘着シート積層体)
前記の粘着シートの粘着剤表面に、上記の離型性シートをその離型層を対面させて積層し、これを45℃にて3日エージングさせることによって本発明の粘着シート積層体を得た。この粘着シート積層体を構成する粘着シートの粘着剤層および離型性シートの諸特性を前記の評価方法に基づき評価し、その評価結果を、この積層体の主な構成とともに表1に記した。
【0072】
[実施例2]
実施例1において、マット層用塗布液において使用したアクリルポリオール系樹脂VM−D・PM−3の代わりにアクリルポリオール系樹脂VM−D・PM−1(改−1)(平均粒径1μmのシリカ微粒子を固形分ベースで9.6質量%を含み、且つ平均粒径5μmのポリエチレンワックスが添加されていない点でVM−D・PM−3と異なる。)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして離型性シートを得、これを用いて粘着シート積層体を作製した。この粘着シート積層体に使用した離型性シートの諸特性を、実施例1の場合と同様にして評価し、その評価結果を、この積層体の主な構成とともに表1に記した。
【0073】
[実施例3]
実施例1において、ポリマータイプの帯電防止剤を加えなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして調製したマット層用塗布液を使用した離型性シートを粘着シートに積層して粘着シート積層体を得た。この粘着シート積層体に使用した離型性シートの諸特性を、実施例1の場合と同様にして評価し、その評価結果を、この積層体の主な構成とともに表1に記した。
【0074】
[比較例1]
実施例1において、同じ離型性シートとして非離型性面にマット層の形成をしないこと以外は実施例1と同様にして粘着シート積層体を得た。この粘着シート積層体に使用した離型性シートの諸特性を、実施例1の場合と同様にして評価し、その評価結果を、この積層体の主な構成と共に表1に記した。
【0075】
【表1】



【0076】
表1の結果から明らかなように、離型性シートの非離型性面にマット層を形成しなかったものは、スリップ開始角度が大きく、即ち、急斜面にしないと乗せたフィルムがスリップを開始しなかった。そしてそのプリンター通紙性は、連続した2枚が重なって供給されるものが発生し、通紙性は不良であった。しかし、離型性シートの非離型性面に微粒子を添加したマット層を形成した実施例1〜3のものは、表面粗度が0.15以上であり、スリップ開始角度も30度以下で滑りやすく、プリンターによる通紙性も良好であった。ただし、マット層に帯電防止剤を添加しなかった実施例3のものは、第一のプリンター工程では搬送性(通紙性)は良好であったか、第一のプリンター工程の後に引き続き行われた第二のプリンター工程では第一のプリンター工程における摩擦により帯電して枚葉状の積層体が相互に密着し重なって搬送されるものがあった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の粘着シート積層体は、自己粘着性接着剤から成る粘着剤層を有する粘着シートに、非離型性面にマット層を形成した離型性シートをその離型性面で対面させて積層した粘着シート積層体であり、使用する工程において複数枚密着することなく一枚ずつ分離して供給できるため工程が円滑となり、しかも、この積層体を多数枚積み重ねたとき粘着シート側の基材シート面は離型性シート側の非離型性面と相互に接触するが、粘着シートの基材シート面の印刷性が損なわれることが無く、その産業上の利用効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの片面に粘着剤層を形成した粘着シートの粘着剤層表面に離型性シートをその離型性表面で貼り合わせて成る粘着シート積層体において、当該離型性シートの非離型性面にマット層が形成され、表面粗度Raが0.15〜1.1μmであることを特徴とする粘着シート積層体。

【請求項2】
離型性シートの非離型性面のマット層が平均粒径0.1〜10μmの微粒子を1〜200質量%含有する塗布液を塗布し乾燥して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート積層体。

【請求項3】
マット層にさらに非移行性の帯電防止剤が1〜50質量%配合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート積層体。

【請求項4】
粘着剤層を構成する粘着剤が、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットとからなるブロック共重合体で構成されている熱可塑性エラストマーと、質量平均分子量が100〜1000のナフテン系オイル及び/又はパラフィン系オイルである可塑剤とを主成分として含有するものであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の粘着シート積層体。

【請求項5】
粘着剤層を構成する粘着剤が、さらに、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とから成る接着剤成分を含有するものであることを特徴とする請求項4に記載の粘着シート積層体。

【請求項6】
基材シート層と粘着剤層との界面にカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とから成る接着剤層を介在させて成ることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の粘着シート積層体。


【公開番号】特開2007−314710(P2007−314710A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147849(P2006−147849)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】