説明

搬送用容器

【課題】棚部材を格納する際、極めて簡単に、しかも操作し忘れることなく棚部材を立設状態に保持でき、また、棚部材の転倒を確実に防止することが可能な搬送用容器を提供する。
【解決手段】被搬送物が収容される収容空間を形成し、前面に被搬送物を出し入れするための開口部25を有する容器本体13と、容器本体13内に配設され、収容空間を上下に区画することが可能な棚部材31と、棚部材31が、水平方向に横架される使用位置と、収容空間の後部側で立設される跳上位置との間で回動するように、棚部材31の後端側を軸として棚部材31を回動可能に支持する回転軸部材56と、立設された棚部材31を、跳上位置と、その跳上位置よりも低い格納位置との間で、垂直方向に案内する長孔部57と、格納位置における棚部材31の回動を規制する前側当接片58とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用容器に関し、特に、建築現場で建築部材等を上げ下ろす際に用いられる搬送用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建築現場では、高所の足場と地上との間で、建築部材を上げ下ろす作業が一般的に行われているが、この作業の省力化を図るため、例えば特許文献1に示すようなリフト(荷上装置)が提案されている。このリフトは、足場用パイプに固定され垂設された一対のガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能なカゴ形の容器と、足場の上方に配置され、チェーンを介して容器を吊り下げるとともに電動力によって容器を昇降させるチェーンブロックとを備えるものである。つまり、チェーンブロックのチェーンを巻き上げまたは巻き下げることにより、容器に収容された建築部材を上げ下げするものである。
【0003】
ところで、容器に収容される建築部材には、建築資材、器材、または足場の構成部材等が含まれるが、これらの大きさは一様でなく、小物もあれば、横幅が大きいもの、または長尺のものもあるため、容器のサイズとしては、一番大きな建築部材でも収容できる大きさとすることが好ましい。一方で、このような大きなサイズの容器を用いて、比較的小さな建築部材または厚みの薄い建築部材を複数個搬送する場合には、容器の中に積み重ねて収容することとなるが、数多く積み重ねたり、異なる部材同士を積み重ねたりすると、容器の中が煩雑となり、必要な建築部材を速やかに取出すことが困難となる。
【0004】
そこで、容器の中に平板状の棚部材を設け、収容空間を上下に区画するとともに、棚部材が水平方向に横架される使用位置(展開状態)と、収容空間の後部側で立設される格納位置(折畳み状態)との間で回動するように、棚部材の後端側を回転軸として棚部材を回動可能に支持する構成が提案されている。これによれば、収容される全ての建築部材が、上下に区画されたそれぞれの収容空間よりも小さな場合(すなわち収容可能な場合)には、棚部材を使用位置(展開状態)とすることで複数の建築部材を整った状態で収容することが可能となり、一方、長尺物など区画された収容空間では収まりきらない場合には、棚部材を格納位置に折畳むことで全体の収容空間を用いた収容が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の容器によれば、棚部材が格納位置に達すると、棚部材は、その重心が回転軸よりも上方に位置するため、不安定な状態となり、例えば、搬送途中で振動が発生した場合、または建築部材を出し入れする際に棚部材に力が加わった場合には、前向きに倒れる可能性があり、これによれば、建築部材を前側(開口部側)に押し出したり傷つけたりするおそれがある。
【0006】
なお、この不具合を解消する手段として、棚部材の先端部分(格納位置では上端部分)にフックを設け、格納された際、フックを、容器本体に設けた係止部に係止させる構成を想定することができる。しかし、この構成によれば、建築部材を取り出す際、建築部材がフックに引っ掛かかり、フックが係止部から外れるおそれがあり、ひいては棚部材の転倒が懸念される。
【0007】
また、建築部材が引っ掛かっても外れないように、フックの代わりに複雑なロック装置を備えることも想定できるが、これによれば、製造コストが増加するとともに、施錠操作及び開錠操作に手間がかかり作業者の負担が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0008】
さらに、フックの場合もロック装置の場合も、棚部材を格納位置まで回動させた後に、棚部材の転倒を防止するための操作(具体的にはフックを係止部に係止する操作、またはロック装置の施錠操作)を別途行わなければならず、面倒であるとともに、これらの操作をし忘れるおそれもある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、棚部材を格納する際、極めて簡単に、しかも操作し忘れることなく棚部材を立設状態に保持でき、また、棚部材の転倒を確実に防止することが可能な搬送用容器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる搬送用容器は、
「被搬送物が収容される収容空間を形成し、前面の少なくとも一部に前記被搬送物を出し入れするための開口部を有する容器本体と、
該容器本体内に配設され、前記収容空間を上下に区画することが可能な棚部材と、
該棚部材が、横架されて使用される使用位置と、前記収容空間の後部側へ跳ね上げられて立設される跳上位置との間で回動するように、前記棚部材の後端側を軸として前記棚部材を回動可能に支持する回動支持部と、
立設された前記棚部材を、前記跳上位置と、該跳上位置よりも低い格納位置との間で、垂直方向に案内する昇降ガイド部と、
前記格納位置における前記棚部材の回動を規制する回動規制部と
を具備する」
ことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、「被搬送物」としては、資材または器材等の建築部材を例示することができるが、建築部材とは無関係のものを被搬送物とすることも可能である。つまり、「搬送用容器」は、建築現場以外でも使用可能なものである。
【0012】
また、「容器本体」は、カゴ状の構造(網状部材からなる構造)としてもよく、箱状の構造(板状部材からなる構造)としてもよい。また同様に、「棚部材」も、網状部材で形成してもよく板状部材で形成してもよい。さらに、「棚部材」の枚数は一枚のみでもよいが、複数枚の棚部材を上下方向に並設してもよい。また、「棚部材」の奥行方向の長さは、収容空間の前後方向の寸法と略一致する大きさとしてもよいが、前後方向の寸法よりも短くしてもよい。つまり、「棚部材」によって収容空間全体が上下に区画されるようにしてもよく、収容空間の一部(例えば後側部分)のみが上下に区画されるようにしてもよい。
【0013】
また、「開口部」は、容器本体の前面にのみ備えるようにしてもよいが、上面や左右の側面にも備えるようにしてもよい。また、「開口部」は常に開放されていてもよいが、開口部を閉鎖する扉体を備え、開閉可能に構成してもよい。
【0014】
また、「回動支持部」としては、例えば棚部材または容器本体のいすれか一方から突出する回転軸と、いずれか他方に設けられ回転軸が嵌挿される軸受孔とから構成することができる。また、「昇降ガイド部」としては、回転軸の相対的な移動方向を垂直方向に案内する長孔部から構成することができる。
【0015】
本発明の搬送用容器によれば、水平方向に横架された棚部材(使用位置の棚部材)を格納する場合には、棚部材を後側に跳ね上げる。すると、棚部材は後端側を軸とし跳上位置に向かって回動する。跳上位置に達すると、収容空間の後部側で立設した状態となる。また、跳上位置に達した棚部材は、昇降ガイド部によって案内され、立設されたまま、跳上位置よりも低い格納位置へ落とし込まれる。つまり、棚部材の自重によって跳上位置から格納位置に自然に移動する。そして格納位置に達した棚部材は、回動規制部によって回動が規制され、立設した状態で保持される。
【0016】
一方、格納された棚部材を使用(展開)する場合には、立設された棚部材を格納位置から跳上位置まで持ち上げる。すると、棚部材は回動規制部による規制を受けなくなり、使用位置に向かって前側に回動させることが可能になる。そして、使用位置に達すると、水平方向に横架された状態となり、棚部材の上に被搬送物を載置することが可能となる。
【0017】
このように、棚部材を格納する場合には、跳ね上げた棚部材を自重によって格納位置に落とし込むだけで、棚部材の回動が規制されるため、作業者の手を煩わせることなく、また、操作し忘れることなく、棚部材を立設状態で保持することができる。特に、格納位置に格納された棚部材は、跳上位置まで持ち上げなければ回動しないため、被搬送物を出し入れする際に被搬送物が棚部材に引っ掛かっても、棚部材の転倒を確実に防止することができる。また、棚部材を使用する場合には、棚部材を持ち上げるだけで回動可能となるため、極めて簡単な操作で保持状態を解除することができ、作業者の負担を大幅に軽減できる。
【0018】
本発明の搬送用容器において、
「前記容器本体の内面に取着され、前記棚部材の後端側左右両側面に対向する一対の支持金具をさらに備え、
前記回動支持部は、それぞれの前記支持金具に設けられ、前記棚部材の前記後端側左右両側面を外側から貫通する一対の回転軸部材からなり、
前記昇降ガイド部は、前記棚部材の前記後端側左右両側面に設けられ、前記回転軸部材が挿通されるとともに、前記使用位置の際、前方に向かって延出される横長の長孔部からなり、
前記回動規制部は、前記支持金具に形成され、前記棚部材が前記格納位置の際、前記棚部材を挟むように前記棚部材の上面及び底面にそれぞれ当接する一対の当接片からなる」
構成とすることができる。
【0019】
これによれば、棚部材の後端側左右両側面(以下、「後側両面」という)に対向する容器本体の内面に一対の支持金具が取着されており、その支持金具に設けられた一対の回転軸部材が棚部材の後側両面に外側から貫通することで、棚部材が回動可能に支持されている。また、回転軸部材が貫通する棚部材の孔は、長孔部からなり、後側両面に穿設されるとともに、使用位置の際、前方に向かって延出されている。つまり、使用位置では、回転軸が長孔部の後端部に位置している。このため、棚部材を使用位置から跳上位置に向かって回動させると、長孔部も回転軸部材を中心に旋回し、跳上位置では、回転軸部材が、長孔部の下端部に位置する。したがって、長孔部の上端(使用位置では前端)が回転軸部材に当接するまで、棚部材を下方に移動させることが可能になる。つまり、回転軸部材と長孔部との協働により、棚部材を跳上位置から格納位置に移動させることが可能となる。そして、長孔部の上端が回転軸部材に当接すると(格納位置に達すると)、棚部材をそれ以上降下させることができなくなり、棚部材における垂直方向の移動が規制される。
【0020】
また、支持金具には、棚部材が格納位置の際に、棚部材の上面及び底面にそれぞれ当接可能な一対の当接片が形成されており、これにより棚部材の回動が規制されている。特に、一対の当接片は棚部材を挟むように配置されているため、棚部材の前方への回動だけでなく、後方への回動も阻止され、格納位置における棚部材のガタツキを防止することが可能である。
【0021】
このように、回転軸部材が挿入される長孔部によって昇降ガイド部が構成され、また、回転軸部材が設けられた支持金具によって回動規制部が構成されているため、極めてシンプルな構成となり、安価に製造することができる。
【0022】
また、上記の搬送用容器においては、
「前記支持金具は、前記棚部材の後面に当接することで、前記棚部材が前記使用位置から後方へ移動することを規制するストッパー片をさらに備える」
構成とすることが好ましい。
【0023】
ところで、上記のように、棚部材の後側両面に長孔部を設け、使用位置のとき、回転軸部材が長孔部の後端部に位置するように構成した場合には、使用位置の棚部材が後方に向かって移動したり、搬送中に棚部材が前後方向に移動し、被搬送物を安定して載置させることが困難となるおそれがある。
【0024】
これに対し、本発明では、支持金具にストッパー片が形成され、棚部材の後面に当接するようになっているため、棚部材が使用位置から後方へ移動すること、すなわち前後方向に動くことが規制される。したがって、被搬送物を棚部材に安定して載置させることが可能となる。
【0025】
また、本発明の搬送用容器において、
「前記容器本体の右側面または左側面のいずれか一方の面に、前記被搬送物の出し入れが可能な側面側開口部をさらに有する」
構成とすることができる。
【0026】
これによれば、容器本体には、前面の開口部に加え、右側面または左側面のいずれか一方の側面にも開口部(側面側開口部)が形成されている。このため、例えば、本発明の搬送用容器を、建築現場におけるリフトの容器として使用した場合には、前面側の開口部を、足場において建築部材(被搬送物)を出し入れするための開口部として用い、側面側開口部を、地上において建築部材を出し入れするための開口部として用いることが可能となる。つまり、足場及び地上(足場がない部分)では建築部材を出し入れする方向が互いに異なるが、このように開口部を前面及び側面にそれぞれ設けることで、搬送容器を旋回させることなく建築部材を出し入れすることができ、作業性及び安全性を高めることができる。また、側面側開口部が設けられた面は、容器本体の背面側ではないため、棚部材が格納位置に格納された場合でも、棚部材によって塞がれず、建築部材を出し入れすることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
このように、本発明によれば、棚部材を格納する際、極めて簡単に、しかも操作し忘れることなく棚部材を立設状態に保持することができる。また、格納位置における棚部材の転倒を確実に防止することができる。さらに、棚部材を使用する場合には、極めて簡単な操作で保持状態を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の搬送用容器を用いたリフトの構成を示す側面図である。
【図2】搬送用容器を斜め前から見た斜視図である。
【図3】(a)は、搬送用容器の棚部材を展開した状態を示す主要部の斜視図であり、(b)は、搬送用容器の棚部材を跳ね上げた状態を示す主要部の斜視図である。
【図4】棚部材の格納動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態である搬送用容器1について図1乃至図4に基づき説明する。また、搬送用容器1の説明に先立ち、搬送用容器1が適用されるリフト2の構成について説明する。なお、本実施形態に記載された「右」及び「左」は、足場側から搬送用容器1を見た場合の方向である。
【0030】
図1に示すように、リフト2は、地上(図示しない)と高所の足場3との間で、建築部材等の被搬送物(図示しない)を上げ下ろす装置であり、鉛直方向に配設された足場用パイプ4に固定される一本のレールパイプ5と、レールパイプ5に沿って移動可能な搬送用容器1と、搬送用容器1をレールパイプ5に対し鉛直方向に摺動可能に支持する上部レールガイド6及び下部レールガイド7とを備えている。また、リフト2は、レールパイプ5の上部に取着されたハンガー9と、ハンガー9に取付けられたチェーンブロック10とを備えており、チェーンブロック10のチェーン11の先端が、上部レールガイド6と一体的に構成された吊下支持部8に接続されている。つまり、搬送用容器1は、1本のレールパイプ5に上下一対のレールガイド6,7を介して接続されており、電動力によりチェーンブロック10のチェーン11を巻き上げたり巻き下げたりすることにより、搬送用容器1に収容された被搬送物を上げ下げすることが可能になっている。
【0031】
続いて、搬送用容器1の構成について、図2及び図3に基づき説明する。なお、図3は、説明の便宜上、搬送用容器1から前面扉27及び側面扉28を取外した状態を示している。図2に示すように、搬送用容器1は、全体が略直方体形状である籠形の容器本体13を有しており、容器本体13は、横幅が奥行よりも大きくなるように平面視長方形状に形成されている。この容器本体13は、金属製のパイプで形成された四本の支柱14(すなわち右前支柱15,左前支柱16,右後支柱17,及び左後支柱18)と、それらの支柱14の間に掛け渡された複数枚の網状部材(後述する)とによって構成されており、内部に被搬送物が収容される収容空間Sが形成されている。なお、左前支柱16の側面には、搬送用容器1を上部レールガイド6(図1参照)及び下部レールガイド7に連結するために、上下一対の連結部19が設けられている。
【0032】
また、搬送用容器1は、容器本体13の収容空間Sを上下に区画することが可能な棚部材31を備えるとともに、棚部材31の下方に中央空間部22を有することにより、上段の上部籠部20と、下段の下部籠部21とを備える形態となっている。つまり、棚部材31は、上部籠部20の底板として機能しており、被搬送物を、上部籠部20及び下部籠部21に振り分けて収容させることが可能となっている。
【0033】
上部籠部20について詳細に説明する。上部籠部20は、上面が開放されるとともに、足場3において被搬送物を出し入れするための開口部25(図3参照)が前面に設けられ、地上において被搬送物を出し入れするための右側開口部26(図3参照)が右側面に設けられている。なお、前面の開口部25は、網状の前面扉27によって閉鎖され、右側開口部26は側面扉28によって閉鎖されている。また、上部籠部20における、右後支柱17及び左後支柱18の間には、網状の背面部材29が固定状態に設けられ、左前支柱16及び左後支柱18の間には、網状の側面部材30が固定状態に設けられている。ここで、右側開口部26が本発明の側面側開口部に相当する。
【0034】
前面扉27は、右端部にL字形の軸部42を上下に一対備えており、右前支柱15の側面に固定された上下一対の軸受部41にそれぞれ上方から嵌合させることで、軸部42を中心に回動させることが可能になっている。なお、前面扉27を持ち上げることにより、軸部42を軸受部41から引抜き、前面扉27を搬送用容器1から取外すことも可能である(図3参照)。また、前面扉27の左端部には、貫木(かんぬき)43が設けられており、左前支柱16に対し係合させることで、前面扉27を閉状態に保持できるようになっている。また、前面扉27の高さは、上部籠部20の高さよりも低くなっている。これは、例えば、搬送用容器1が足場3の高さよりも多少高い位置で停止した場合でも、前面扉27が上の階の足場3に干渉する可能性を少なくするためである。
【0035】
側面扉28は、前面扉27と同じように、L字形の軸部45を前端部に備えており、右前支柱15の側面に固定された軸受部44にそれぞれ上方から嵌合させることで、軸部45を中心に回動させることが可能になっている。なお、側面扉28も搬送用容器1から取外すことも可能である(図3参照)。また、側面扉28の後端部には、貫木46が設けられており、右後支柱17に対し係合させることで、側面扉28が閉状態に保持されるようになっている。
【0036】
一方、棚部材31は、図3に示すように、金属製の網状部50と、網状部50の周囲を囲む四角形のフレーム51と、網状部50の底面に掛け渡された十字形の補強部材52とから構成されている。棚部材31の横幅は、背面部材29の横幅よりもわずかに短いが、棚部材31の奥行は、側面部材30の奥行よりも長くなっており、棚部材31の先端部分が右前支柱15及び左前支柱16に交わるように配置されている。
【0037】
また、棚部材31は、前側支持部53及び後側支持部54によって支持されており、図3(a)に示すように展開した場合には、水平方向に横架され、図3(b)示すように跳ね上げた場合には、垂直方向に立設されるようになっている。詳しく説明すると、前側支持部53は、右前支柱15及び左前支柱16の側面(互いに対向する面)に設けられており、金属製の板材を「く」の字形に折り曲げて形成されている。
【0038】
後側支持部54は、右後支柱17及び左後支柱18の側面にそれぞれ取着され、棚部材31の後端側左右両側面と対向する一対の支持金具55と、それぞれの支持金具55から内側に延設され棚部材31のフレーム51に外側から貫通する回転軸部材56と、フレーム51に穿設され回転軸部材56が挿通される横長の長孔部57とから構成されている。特に、長孔部57は、回転軸部材56から前方に延出されるように、換言すれば回転軸部材56が長孔部57の後端に位置するように形成されている(図3(a)に示す状態の場合)。ここで、回転軸部材56が本発明の回動支持部に相当し、長孔部57が本発明の昇降ガイド部に相当する。
【0039】
また、それぞれの支持金具55には、内側に向かって直角に折曲げ形成された前側当接片58、後側当接片59、及びストッパー片60(図4(a)参照)が設けられている。前側当接片58及び後側当接片59は、棚部材31の回動を規制するものであり、垂直の板状形状を呈し、回転軸部材56よりも下側に配置されている。また、前側当接片58及び後側当接片59の間隔は、棚部材31におけるフレーム51の厚みよりもわずかに大きくなっており、前側当接片58及び後側当接片59の間に棚部材31を立設状態で挿入させることが可能になっている。また、ストッパー片60は、棚部材31が展開状態の場合(図3(a)参照)に、後方に移動することを規制するものであり、板状形状を呈し、回転軸部材56よりも後方で回転軸部材56と略同じ高さに配置されている。ここで、前側当接片58及び後側当接片59が本発明の当接片及び回動規制部に相当する。
【0040】
次に、下部籠部21について説明する。図2に示すように、下部籠部21は、四本の支柱14に固定された前面部材36、背面部材37、及び一対の側面部材38と、これらで
囲まれた下側収容空間33の底面を閉鎖する底面部材39とを備えており、上面のみが開放されている。つまり、下部籠部21は、足場3においても地上においても中央空間部22を通して、被搬送物を出し入れするようになっている。
【0041】
次に、本実施形態の搬送用容器1の使用方法及び作用について、図3及び図4に基づき説明する。収容される被搬送物が、上側収容空間32(図2参照)または下側収容空間33に収容可能な場合には、図3(a)または図4(a)に示すように、棚部材31を使用位置(展開状態)とする。これによれば、棚部材31は、前側が前側支持部53によって支持され、後側が後側支持部54によって支持されることで、水平状態に保たれる。したがって、被搬送物を数多く搬送する場合、または多種類の被搬送物をまとめて搬送する場合であっても、上部籠部20及び下部籠部21に振り分けることで、整った状態で搬送することができるとともに、必要な被搬送物を速やかに取出すことが可能になる。
【0042】
一方、足場3の踏み板など長尺の被搬送物を搬送する際に、上側収容空間32または下側収容空間33では収まりきらない場合には、水平方向に横架された棚部材31(使用位置の棚部材31)を格納位置に格納する。具体的には、まず、図4(a)の矢印に示すように、棚部材31を後側に跳ね上げるように操作する。すると、棚部材31は回転軸部材56を中心に跳上位置に向かって回動する。図4(b)に示すように、棚部材31が跳上位置に達すると、棚部材31は上側収容空間32の後部側で立設した状態となる。さらに詳しく説明すると、棚部材31を使用位置から跳上位置に向かって回動させると、棚部材31のフレーム51に形成された横長の長孔部57も回転軸部材56を中心に旋回し、跳上位置では、回転軸部材56が、長孔部57の下端部に位置する。したがって、長孔部57の上端(使用位置では前端)が回転軸部材56に当接するまで、棚部材31を下方に移動させることが可能になる。つまり、回転軸部材56と長孔部57との協働により、棚部材31は、その自重によって、跳上位置から、下方の格納位置に自然に落とし込まれる。図4(c)に示すように、棚部材31が格納位置に達すると、長孔部57の上端が回転軸部材56に当接し、棚部材31をそれ以上降下させることができなくなる。つまり、棚部材31における垂直方向の移動が規制される。また、格納位置では、前側当接片58及び後側当接片59によって棚部材31の回動が規制され、棚部材31は立設した状態で保持される。
【0043】
一方、格納された棚部材31を使用(展開)する場合には、立設された棚部材31を格納位置(図4(c)参照)から跳上位置(図4(b)参照)まで持ち上げる。すると、棚部材31は前側当接片58による規制を受けなくなり、使用位置に向かって前側に回動させることが可能になる。そして、使用位置に達すると、前述したように水平方向に横架され、棚部材31の上に被搬送物を載置することが可能となる。
【0044】
このように、本実施形態の搬送用容器1によれば、棚部材31を格納する場合には、跳ね上げた棚部材31を自重によって格納位置に落とし込むだけで、棚部材31の回動が規制されるため、作業者の手を煩わせることなく、また、操作し忘れることなく、棚部材31を立設状態で保持することができる。特に、格納位置に格納された棚部材31は、跳上位置まで持ち上げなければ回動しないため、被搬送物を出し入れする際に被搬送物が棚部材31に引っ掛かっても、棚部材31の転倒を確実に防止することができる。また、棚部材31を使用する場合には、棚部材31を持ち上げるだけで回動可能となるため、極めて簡単な操作で保持状態を解除することができ、作業者の負担を大幅に軽減できる。
【0045】
また、本実施形態の搬送用容器1によれば、回転軸部材56が挿入される長孔部57によって棚部材31が垂直方向に案内され、また、回転軸部材56が設けられた支持金具55によって棚部材31の回動が規制されるため、極めてシンプルな構成となり、安価に製造することができる。また、前側当接片58によって前方への回動を規制するだけでなく、後側当接片59によって後方への回動も規制するため、格納位置における棚部材31のガタツキを防止することができる。
【0046】
また、本実施形態の搬送用容器1によれば、支持金具55にストッパー片60が形成され、棚部材31の後面に当接するようになっているため、棚部材31が使用位置から後方へ移動すること、すなわち前後方向に動くことを防止でき、ひいては被搬送物を棚部材31上に安定して載置させることが可能となる。
【0047】
さらに、本実施形態の搬送用容器1によれば、容器本体13には、前面の開口部25に加え、右側面にも右側開口部26が形成されているため、足場3または地上において、搬送用容器1を旋回させることなく被搬送物を出し入れすることができ、作業性及び安全性を高めることができる。また、右側開口部26が設けられた面は、容器本体13の背面側ではないため、棚部材31が格納位置に格納された場合でも、右側開口部26を開放させ被搬送物を出し入れすることが可能である。また、棚部材31を、前面側の開口部25(足場3において被搬送物を出し入れする開口部)の反対側(奥側)に格納することから、棚部材31を格納した状態においても、開口部25の間口を狭めることがなく、ひいては足場3において幅広の被搬送物を出し入れする場合でも、作業者の手が棚部材31に引っ掛からず、円滑に作業を行うことが可能となる。
【0048】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0049】
すなわち、上記実施形態では、支持金具55に回転軸部材56を設け、棚部材31のフレーム51に長孔部57を形成するものを示したが、棚部材側に回転軸部材を設け、支持金具側に長孔部を形成してもよい。この場合、支持金具の長孔部は、使用位置の際、回転軸部材の下方に延出された状態となるが、棚部材を前側当接片58によって支持することで、回転軸部材56が長孔部に案内されて下方へ移動すること(すなわち棚部材の後部側が落下すること)が防止される。
【符号の説明】
【0050】
1 搬送用容器
13 容器本体
25 開口部
26 右側開口部(側面側開口部)
31 棚部材
55 支持金具
56 回転軸部材(回動支持部)
57 長孔部(昇降ガイド部)
58 前側当接片(当接片,回動規制部)
59 後側当接片(当接片,回動規制部)
60 ストッパー片
S 収容空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特許4397431号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物が収容される収容空間を形成し、前面の少なくとも一部に前記被搬送物を出し入れするための開口部を有する容器本体と、
該容器本体内に配設され、前記収容空間を上下に区画することが可能な棚部材と、
該棚部材が、横架されて使用される使用位置と、前記収容空間の後部側へ跳ね上げられて立設される跳上位置との間で回動するように、前記棚部材の後端側を軸として前記棚部材を回動可能に支持する回動支持部と、
立設された前記棚部材を、前記跳上位置と、該跳上位置よりも低い格納位置との間で、垂直方向に案内する昇降ガイド部と、
前記格納位置における前記棚部材の回動を規制する回動規制部と
を具備することを特徴とする搬送用容器。
【請求項2】
前記容器本体の内面に取着され、前記棚部材の後端側左右両側面に対向する一対の支持金具をさらに備え、
前記回動支持部は、それぞれの前記支持金具に設けられ、前記棚部材の前記後端側左右両側面を外側から貫通する一対の回転軸部材からなり、
前記昇降ガイド部は、前記棚部材の前記後端側左右両側面に設けられ、前記回転軸部材が挿通されるとともに、前記使用位置の際、前方に向かって延出される横長の長孔部からなり、
前記回動規制部は、前記支持金具に形成され、前記棚部材が前記格納位置の際、前記棚部材を挟むように前記棚部材の上面及び底面にそれぞれ当接する一対の当接片からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送用容器。
【請求項3】
前記支持金具は、前記棚部材の後面に当接することで、前記棚部材が前記使用位置から後方へ移動することを規制するストッパー片をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送用容器。
【請求項4】
前記容器本体の右側面または左側面のいずれか一方の面に、前記被搬送物の出し入れが可能な側面側開口部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の搬送用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−60778(P2013−60778A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201284(P2011−201284)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(306035122)信和株式会社 (35)
【Fターム(参考)】