説明

搬送用組成物及び部材の搬送方法

【課題】搬送時に部材を傷や汚染から保護し、量産性が向上する組成物と搬送方法の提供。
【解決手段】(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤を含有し、硬化体のガラス転移温度が−50℃〜40℃である搬送用組成物。該組成物を硬化して、部材を接着、固定し、該仮固定された部材を加工、搬送した後、該搬送された部材を90℃以下の温水に浸漬して、該組成物の硬化体を取り外すことを特徴とする部材の搬送方法。組成物中に(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上を含有しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用組成物及び部材の搬送方法である。本発明は、例えば、仮固定用接着剤により固定し加工された部材、特にガラス部材を搬送する際に際して、当該部材を仮固定に好適な光硬化性の接着性組成物を用い、仮固定された部材の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品等の仮固定用接着剤としては、両面テープやホットメルト系接着剤が使用されている。これらの接着剤にて接合又は積層した部材を、所定の形状に切削加工後、接着剤を除去し、加工部材を製造することが行われている。例えば、半導体実装部品では、これらの部品を両面テープにて基材に固定した後、所望の部品に切削加工を行い、更に両面テープに紫外線を照射することにより部品からの剥離を行っている。ホットメルト系接着剤の場合には、部材を接合後、加熱により間隙に接着剤を浸透させた後、所望の部品に切削加工を行い、有機溶剤中で接着剤の剥離を行っている。
【0003】
しかし、両面テープは、厚み精度を出すのが困難である、接着強度が弱いため部品加工時にチッピング性が劣る、100℃以上の熱をかけないと剥離できない、紫外線照射により剥離させる場合には被着体の透過性が乏しいので剥離できない、といった課題があった。
【0004】
ホットメルト系接着剤は、接着時に100℃以上の熱をかけなければ貼ることができず、使用できる部材に制約があった。ホットメルト系接着剤は、剥離時に有機溶剤を使用する必要があり、アルカリ溶液やハロゲン系有機溶剤の洗浄処理工程が煩雑であり、作業環境的に課題があった。
【0005】
これらの課題を解決するために、水溶性ビニルモノマー等の水溶性化合物を含有する仮固定用の光硬化型接着剤又は加熱型接着剤が提案されている。これらの接着剤は、部品固定時の接着強度が低い、切削加工後の部材の寸法精度に乏しい、といった課題があった。特定の親水性の高い(メタ)アクリレートの使用により接着性を向上させるとともに、膨潤や一部溶解により剥離性を向上させた仮固定用接着剤も提案されている。この接着剤は、切削加工時に摩擦熱を発生するために、大量の水で冷却させる必要があった。上記の親水性の高い仮固定用接着剤は、切削時に硬化物が膨潤し柔軟になるため、より高い寸法精度に到達できない、剥離した部材に一部溶解した硬化物が糊残りするために外観が不良である、といった課題があった(特許文献1、2、3参照)。
【0006】
これらの課題に対し、本発明者は、特定の(メタ)アクリレートを使用した仮固定用接着剤を提案している(特許文献4、5参照)。この仮固定用接着剤を用いることにより、加工時に用いる切削水等に影響せずに高い接着強度を発現する、部材の加工時にずれを生じ難く、寸法精度面で優れた部材が容易に得られる、特に90℃以下の温水に接触することにより容易に部材の回収ができる、高価で、発火性の強く、人体に有害なガスを発生する有機溶媒を用いる必要がない、といった格段の効果が得られる。特定の好ましい組成の仮固定用接着剤が、硬化体が90℃以下の温水と接触して膨潤し、フィルム状に部材から組成物を回収できるので、作業性に優れることを見いだした(特許文献4、5参照)。
【0007】
温水中での剥離性を向上させるため、特定の極性有機溶剤や脂肪酸エステル等を添加することにより、剥離性を向上する仮固定用接着剤を提案している(特許文献6、7参照)。
【0008】
このような仮固定用接着剤により固定し、加工された部材は、一旦、取り外した後、次工程として生産工場内や工場外に搬送される。この時、キャリアケース等に部材を1枚ずつ詰め込みや取り出し等を行う。その際、表面に傷や塵埃、油分等が付着し、汚染する、といった課題があった。
【0009】
水晶振動子、光学フィルターをはじめとする光学素子はもちろんのこと、コンピューター等の記録媒体に使用されるハードディスクとしては、近年の携帯電話や携帯音楽プレイヤー等の小型製品化や高容量化に伴い、高精度加工ができるガラス等の硬脆性材料が使用されている。この硬脆性材料を使用した場合も、搬送時の傷や塵埃の付着といった課題があった。
【0010】
加工方法としては、多数のガラス部材を仮固定用接着剤で積層し、これらの積層体を一気に高精度に加工することにより、量産性が向上する方法が提案されている(特許文献8参照)。
【0011】
加工されたガラス部材を取り外した後の部材の搬送方法としては、新たに特殊な保治具やキャリアケースを使用して傷を防止する方法が提案されている。しかし、十分な解決策とはなっていない(特許文献9、10、11参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平6−116534号公報。
【特許文献2】特開平11−71553号公報。
【特許文献3】特開2001−226641号公報。
【特許文献4】特開2006−257312号公報。
【特許文献5】特開2006−290957号公報。
【特許文献6】特開2006−328094号公報。
【特許文献7】特開2007−9131号公報。
【特許文献8】特開2007−283651号公報。
【特許文献9】特開平6−168445号公報。
【特許文献10】特開2000−195939号公報。
【特許文献11】特開2001−80693号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
加工された部材を、搬送時の傷や汚染から保護する搬送方法が望まれている。部材としては、加工金属板、金型、アルミサッシ、プラスチック板、半導体ウエハ、回路基板、セラミック、ガラスや石英等の光学部品やセンサー、ハードディスク等の電子・電気部等が挙げられる。加工としては、切断、研削、研磨等が挙げられる。特に仮固定用接着剤により接着固定し、高精度に加工されたガラス部材の搬送方法に関して、搬送時の傷や汚染から保護するための優れた搬送方法が望まれている。
【0014】
本発明者は、これら従来技術の課題を解決し、発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤を含有し、硬化体のガラス転移温度が−50℃〜40℃である搬送用組成物であり、(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質を含有する該搬送用組成物であり、(D)が架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上である該搬送用組成物であり、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤を含有し、硬化体のガラス転移温度が−50℃〜40℃である組成物を硬化し、部材を接着、固定し、該仮固定された部材を加工、搬送した後、該搬送された部材を90℃以下の温水に浸漬して、該組成物の硬化体を取り外すことを特徴とする部材の搬送方法であり、組成物中の(A)及び(B)がいずれも疎水性であること特徴とする該部材の搬送方法であり、組成物中、(A)を15〜95質量部、(B)を5〜85質量部、(C)を0.1〜20質量部を含有することを特徴とする該部材の搬送方法であり、組成物中に、(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質を含有することを特徴とする該部材の搬送方法であり、(D)の比重が、当該組成物の比重と等しいか又は小さいことを特徴とする該部材の搬送方法であり、(D)の形状が球状であることを特徴とする該部材の搬送方法であり、(D)が、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする該部材の搬送方法であり、レーザー法による(D)の平均粒径が20〜200μmであることを特徴とする該部材の搬送方法であり、レーザー法による粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25の範囲にあることを特徴とする該部材の搬送方法であり、組成物が接着剤組成物であることを特徴とする該部材の搬送方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の部材の搬送方法は、搬送時に部材を傷や塵埃等の汚染から保護するという効果が得られる。本発明の部材の搬送方法は、量産性が向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用する(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーや2個以上の(メタ)アクロイル基を有するモノマー等が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0019】
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0020】
4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
(A)多官能(メタ)アクリレートは、疎水性のものが好ましい。疎水性の多官能(メタ)アクリレートとは、水酸基を有さない(メタ)アクリレートをいう。水溶性の場合には、切削加工時に組成物の硬化体が膨潤することにより位置ずれを起こし、加工精度が劣る恐れがあるため好ましくない。親水性であっても、その組成物の硬化体が水により大きく膨潤又は一部溶解することがなければ、使用しても差し支えない。
【0022】
(A)多官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部中、15〜95質量部が好ましく、20〜50質量部が好ましい。15質量部以上であれば、組成物の硬化体を温水に浸漬した時に被着物より当該硬化体が剥離する性質(以下、単に「剥離性」という)が充分に助長されるし、組成物の硬化体がフィルム状に剥離できる。95質量部以下であれば、初期の接着性が低下する恐れもない。
【0023】
本発明で使用する(B)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(B)単官能(メタ)アクリレートは、(A)同様に疎水性のものがより好ましい。疎水性の多官能(メタ)アクリレートとは、水酸基を有さない(メタ)アクリレートをいう。水溶性の場合には、切削加工時に組成物の硬化体が膨潤することにより位置ずれを起こし、加工精度が劣る恐れがあるため好ましくない。親水性であっても、その組成物の硬化体が水によって膨潤又は一部溶解することがなければ、使用しても差し支えない。
【0025】
(B)単官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部中、5〜85質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましい。5質量部以上であれば初期の接着性が低下する恐れがなく、85質量部以下であれば、剥離性が確保でき、組成物の硬化体がフィルム状に剥離する。
【0026】
組成物に、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジブチル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジオクチル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルポリエチレングリコールアシッドフォスフェート等のビニル基又は(メタ)アクリル基を有するリン酸エステルを併用することにより、金属面への密着性をさらに向上させることができる。
【0027】
本発明で使用する(C)光重合開始剤は、例えば、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて組成物の光硬化を促進するために使用するものであり、公知の各種光重合開始剤が使用可能である。
【0028】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、エントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(C)光重合開始剤の使用量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。0.1質量部以上であれば、硬化促進の効果が確実に得られ、20質量部以下であれば充分な硬化速度を得ることができる。より好ましい形態として(C)成分を1質量部以上使用することにより、光照射量に依存なく硬化可能となり、組成物の硬化体の架橋度が高くなり、切削加工時に位置ずれ等を起こさなくなり、剥離性が向上する。
【0030】
本発明に於いては、組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50℃〜40℃である。剥離性と寸法精度の観点から、−25℃〜35℃が好ましく、−20℃〜25℃がより好ましく、0℃〜20℃が最も好ましい。本発明は、前記組成物を用いて、部材を接着仮固定し、該仮固定された部材を加工後、該加工された部材を90℃以下の温水に浸漬する。前記組成物から得られる硬化体のガラス転移温度がこの範囲内にあることにより、該加工された部材を90℃以下の温水に浸漬した時に、組成物の硬化体自体が大きく熱膨張し、その結果、接着面積が減少し、接着強度が低下する。そのため、容易に部材のみを回収することができる。組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50℃以上であれば、仮固定した部材の加工時にずれを生じにくく、寸法精度が優れる。40℃以下であれば、剥離性が向上する。
【0031】
本発明で使用する組成物から得られる硬化体のガラス転移温度の測定方法は特に制限はないが、DSCや動的粘弾性スペクトル等の公知の方法で測定される。ガラス転移温度の測定方法としては、動的粘弾性スペクトルを用いる方法が好ましい。
【0032】
本発明で使用する組成物に於いては、(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質を、(A)、(B)、(C)と共に用いても良い。(D)を使用することにより、硬化後の組成物が一定の厚みを保持でき、加工精度が向上する。組成物の硬化体の線膨張係数と(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の線膨張係数が異なるので、前記組成物を用いて、部材を接着し、仮固定し、該仮固定された部材を加工後、該加工された部材を90℃以下の温水に浸漬した時に、部材と組成物の硬化体の界面にうねり状又は三次元的の変形が生じ、その結果、接着面積が減少し、剥離性が向上する。
【0033】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の材質は、一般的に使用される有機粒子、無機粒子いずれでもかまわない。有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリポリプロピレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋したポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体等挙げられる。無機粒子としてはガラス、シリカ、アルミナ、チタン等のセラミック粒子が挙げられる。
【0034】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の比重は、組成物の比重と等しいか、又は小さい方が好ましい。然るに粒状物質の比重が組成物の比重と等しいか、又は、小さいと、粒状物質が組成物内で沈殿せず、前記粒状物質が組成物内で分散し、仮固定した部材を加工する時の寸法精度及び剥離性が向上する。
【0035】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質は、加工精度の向上、つまり接着剤の膜厚の制御の観点から、球状であることが好ましい。粒子の変形が少なく、粒径のバラツキによる硬化後の組成物の膜厚のバラツキが少ない観点から、有機粒子としては、メタクリル酸メチルモノマー、スチレンモノマーと架橋性モノマーとの公知の乳化重合法により単分散粒子として得られる架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋したポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体の粒子からなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。粒子の変形が少なく、粒径のバラツキによる硬化後の組成物の膜厚のバラツキが少ない観点から、無機粒子としては、球状シリカが好ましい。粒子の沈降等に因る貯蔵安定性や組成物の反応性の観点から、有機粒子としては、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子や架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0036】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質のレーザー法による平均粒径は、剥離性と寸法精度の観点から、20〜200μmが好ましく、35〜150μmがより好ましく、50〜120μmが最も好ましい。20μm以上であると剥離性に優れ、200μm以下であると仮固定した部材の加工時にずれを生じにくく、寸法精度面が優れる。本発明に於ける粒子径及び粒径分布の標準偏差は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」により測定する。
【0037】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の粒径のレーザー法による粒径(μm)を対数で表示した時の粒径に対する粒子体積分布の標準偏差は、寸法精度及び剥離性の観点から、0.0001〜0.25が好ましく、0.0001〜0.15がより好ましく、0.0001〜0.1が著しく好ましく、0.0001〜0.08が更に好ましく、0.0001〜0.072が最も好ましい。粒状物質の粒径の標準偏差がこの範囲内にあると、粒径のバラツキによる硬化後の組成物の膜厚のバラツキが少なくなり、仮固定した部材の加工時のずれが生じ難くなり、寸法精度面で優れ、剥離性も著しく向上する。
【0038】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の使用量は、接着強度、加工精度、剥離性の観点から、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、0.2〜6質量部が最も好ましい。
【0039】
本発明で使用する組成物は、貯蔵安定性向上のため重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0040】
重合禁止剤の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば、貯蔵安定性が確保されるし、3質量部以下であれば、良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0041】
本発明で使用する組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されているアクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム等の各種エラストマー、無機フィラー、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤、極性有機溶媒及び界面活性剤等の添加剤を使用してもよい。
【0042】
本発明に於いて、温水を使用することが好ましい。適度に加熱した温水を用いる時に、水中での剥離性が短時間に達成でき、生産性が向上する。温水の温度は、90℃以下が好ましく、30℃〜90℃がより好ましく、40〜90℃が最も好ましい。所定の温度を有する温水を用いると、短時間で接着剤の硬化物が熱膨張するとともに、組成物が硬化した際に生じる残留歪み応力が解放される。所定の温度を有する温水を用いると、組成物の硬化体と粒状物質の線膨張係数が異なることから、前記組成物を用いて、部材を接着仮固定し、該仮固定された部材を加工し、搬送し、該搬送された部材を温水に浸漬した時に、部材と組成物の硬化体の界面にうねり状又は三次元的の変形が生じ、その結果、接着面積の減少が達成されて接着強度が低下し、フィルム状に組成物の硬化体を取り外すことができる。硬化体と水との接触の方法については、水中に接合体ごと浸漬する方法が、簡便である観点から、好ましい。
【0043】
本発明に於いて、仮固定する際に用いられる部材の材質に特に制限はない。紫外線硬化型接着剤組成物として用いる場合には、紫外線を透過できる材料からなる部材が好ましい。このような材料として、水晶部材、ガラス部材、プラスチック部材等が挙げられる。本発明の仮固定方法は、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ、光ディスク、ハードディスク、携帯等の小型ガラス表示パネル等の加工後の搬送に適用可能である。
【0044】
接着剤組成物として光硬化性接着剤組成物を用いる場合、接着剤組成物の使用方法としては、固定する一方の部材又は支持基板の接着面に接着剤を適量塗布し、続いてもう一方の部材を重ね合わせるという方法や、予め仮固定する部材を多数積層しておき、接着剤を隙間に浸透させ、塗布させる方法等で接着剤を塗布した後に、該部材を可視光又は紫外線を照射して、光硬化性接着剤を硬化させ部材同士を仮固定する方法等が挙げられる。
【0045】
その後、仮固定された部材を、所望の形状に、切断、研削、研磨、孔開け等の加工を施した後、搬送する。搬送する場合、特殊なキャリアケース等に取り出すことがなく、そのまま該部材を工場内外に搬送し、所定の場所にて水、好ましくは温水に浸漬することにより、組成物の硬化体を部材から剥離することができる。
【0046】
本発明は、積層したガラス部材の加工に最適であり、同心円上にガラス基板に穴あけ加工する部材加工、例えば、光ディスク、ハードディスク、ロータリーエンコーダー、ガラス回路基板、携帯電話等のガラス表示パネル部等の加工後の搬送方法として有益である。
【0047】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ウレタンアクリレート以下「UV−3000B」と略す)30質量部、ジシクロテンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」、以下「R−684」と略す)15質量部、(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す)20質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変成アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)35質量部、(C)光重合開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGACURE907」、以下「I−907」と略す)1質量部、(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質として平均粒径100μm、粒径(μm)を対数で表示した時の粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.063、比重1.05の球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部を添加して接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物を使用して、以下に示す評価方法にてガラス転移温度の測定、引張せん断接着強さの測定、液比重の測定、剥離試験(80℃温水剥離時間、剥離状態)、搬送性の測定を行った。それらの結果を表1に示す。(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示した時の粒径に対する粒子体積分布の標準偏差を測定した。
【0049】
(評価方法)
ガラス転移温度:組成物を、1mm厚のシリコンシートを型枠とし、PETフィルムに挟み込み、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて上面から硬化させた後、さらに下からを365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて硬化させ、厚さ1mmの組成物の硬化体を作製した。作製した硬化体をカッターにて長さ50mm×幅5mmに切断し、ガラス転移温度測定用硬化体とした。得られた硬化体をセイコー電子産業社製、動的粘弾性測定装置「DMS210」により、窒素雰囲気中にて前記硬化体に1Hzの引張方向の応力及び歪みを加え、昇温速度毎分2℃の割合で昇温しながらtanδを測定し、該tanδのピークトップの温度をガラス転移温度とした。
【0050】
引張せん断接着強さ(接着強さ):JIS K 6850に従い測定した。被着材として耐熱パイレックス(登録商標)ガラス(長さ25mm×幅25mm×厚さ2.0mm)を用い、接着部位を直径8mmとし、作製した組成物にて、2枚の耐熱パイレックス(登録商標)ガラスを貼り合わせた。無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、万能試験機を使用し、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
【0051】
液比重:JIS Z8804(液体比重測定法−3、比重びんによる比重測定方法)に従い測定した。
【0052】
剥離試験:上記耐熱パイレックス(登録商標)ガラスに組成物を塗布し、支持体として青板ガラス(150mm×150mm×厚さ1.7mm)に貼り合わせた以外は上記と同様な条件で作製した樹脂組成物を硬化させ、剥離試験体を作製した。得られた試験体を、温水(80℃)に浸漬した。温水(80℃)に浸漬してから耐熱パイレックス(登録商標)ガラスが剥離するまでの時間を測定した(80℃温水剥離時間)。剥離状態も観察した。
【0053】
搬送性:50mm×100mm×1mmの耐熱パイレックス(登録商標)ガラス2枚それぞれに組成物を塗布した。無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量1500mJ/cmの条件にて硬化させ、接着固定した。接着固定した積層体を120km搬送した。搬送した積層体を80℃の温水に浸漬し、剥離させた。剥離した積層体の耐熱パイレックス(登録商標)ガラスの表面を観察した。傷がない場合を良と判断し、傷がある場合を不良と判断した。
【0054】
粒状物質の平均粒径および粒径(μm)を対数で表示した時の粒径に対する粒子体積分布の標準偏差:レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製「SALD−2200」)により測定した。
【0055】
(実施例2〜13、比較例1〜4)
表1、表2に示す種類の原材料を表1、表2に示す組成で使用したこと以外は、実施例1と同様にして組成物を作製した。得られた組成物について、実施例1と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、液比重の測定、剥離試験、搬送性の測定を行った。(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示した時の粒径に対する粒子体積分布の標準偏差を測定した。それらの結果を表1、表2に示す。
【0056】
(使用材料)
BDK:ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGACURE651」)
UV−3700B:ポリエーテル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−3700B」)
UV−7000B:ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−7000B」)
1.6−X−A:ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレート1.6−HX−A」)
EC−A:エトキシジエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートEC−A」)
BZ:ベンジルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルBZ」)
IBX:イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルIB−X」)
2−HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
N−ビニルピロリドリン:N−ビニルピロリドリン(日本触媒社製)
【0057】
【表1】



【0058】
【表2】



【0059】
表1から以下のことが判明する。本発明の組成物をガラス部材に使用すると、高い接着強度を発現できる、温水と接触すると速やかに部材が剥離するので剥離性や作業性に優れる、といった効果が得られる。組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が0℃〜20℃である場合、速やかに部材が剥離するので剥離性や作業性に優れる、といった効果が得られる(実施例1〜7、実施例9と、実施例8、実施例10〜13との比較)。
【0060】
(実施例14)
実施例3の接着組成物を用いた。50mm×100mm×1mmの青板ガラス2枚それぞれに組成物を塗布した。無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量1500mJ/cmの条件にて硬化させ、接着固定した。接着固定した青板ガラスの積層体に更に同サイズの青板ガラスを、実施例3の組成物を用い、前記同様に硬化し、接着固定した。この工程を繰り返し、青板ガラス10枚を積層接着し、固定した。積層体を、コアリング装置を使用し、直径40mmの円形にくり抜き、直径40mmの積層体を作製した。直径40mmの積層体をそのまま梱包し、120km搬送した。搬送した積層体を80℃の温水に浸漬したところ、60分ですべて剥離した。その剥離した各40mmΦの青板硝子の表面状態を確認したところ、10枚いずれも傷がないことを確認した。
【0061】
本実施例から以下の効果が得られることが判る。
(1)本発明の組成物は、光硬化性を有し、可視光又は紫外線により硬化するので、従来のホットメルト系接着剤に比べ、省力化、省エネルギー化、作業短縮の面で著しい効果が得られる。
(2)本発明の組成物は、加工時に用いる切削水等に影響せずに高い接着強度を発現できるので、部材の加工時にずれを生じ難く、寸法精度面で優れた部材が容易に得られるという効果が得られる。
(3)本発明の組成物の硬化体は、搬送時に部材を傷や塵埃等の汚染から保護するという効果を有する。
(4)本発明の組成物は、温水と接触することにより、接着強度が低下し、部材間又は部材と治具との接合力が低下するので、容易に部材の回収ができる特徴がある。
(5)本発明の組成物は、従来の仮固定用の組成物の場合に比べ、高価で、発火性が強く、人体に有害なガスを発生する有機溶媒を用いる必要がないという効果が得られる。
(6)本発明の組成物の硬化体は、硬化体を取り外す時に、温水と接触して膨潤し、フィルム状に組成物を部材から回収できるので、作業性に優れるという効果が得られる。
(7)本発明の組成物は、ガラス部材を複数枚積層して接着した部材加工に於いて、高精度に加工できるという効果が得られる。
(8)本発明の組成物の硬化体は、積層されたガラス部材同士の接触をさける保護膜として働き、搬送時に部材を傷や塵埃等の汚染から保護する。
(9)本発明の組成物は、複数枚のガラス部材を同時に歩留まりよく得られるので、ガラス部材の量産性が向上するという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の部材の搬送方法は、光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品等の搬送方法として、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤を含有し、硬化体のガラス転移温度が−50℃〜40℃である搬送用組成物。
【請求項2】
(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質を含有する請求項1記載の搬送用組成物。
【請求項3】
(D)が架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上である請求項2に記載の搬送用組成物。
【請求項4】
(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤を含有し、硬化体のガラス転移温度が−50℃〜40℃である組成物を硬化し、部材を接着、固定し、該仮固定された部材を加工、搬送した後、該搬送された部材を90℃以下の温水に浸漬して、該組成物の硬化体を取り外すことを特徴とする部材の搬送方法。
【請求項5】
組成物中の(A)及び(B)がいずれも疎水性であること特徴とする請求項4記載の部材の搬送方法。
【請求項6】
組成物中、(A)を15〜95質量部、(B)を5〜85質量部、(C)を0.1〜20質量部を含有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の部材の搬送方法。
【請求項7】
組成物中に(D)(A)〜(C)に溶解しない粒状物質を含有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の部材の搬送方法。
【請求項8】
(D)の比重が、当該組成物の比重と等しいか又は小さいことを特徴とする請求項7に記載の部材の搬送方法。
【請求項9】
(D)の形状が球状であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の部材の搬送方法。
【請求項10】
(D)が、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の部材の搬送方法。
【請求項11】
レーザー法による(D)の平均粒径が20〜200μmであることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の部材の搬送方法。
【請求項12】
レーザー法による粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25の範囲にあることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の部材の搬送方法。
【請求項13】
組成物が接着剤組成物であることを特徴とする請求項4乃至12のいずれか1項に記載の部材の搬送方法。

【公開番号】特開2010−95627(P2010−95627A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267539(P2008−267539)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】