説明

搬送装置

【課題】 搬送容器の落下防止を搬送路の直下領域のスペース利用に制約を生じることなく実現できるような搬送装置を提供する。
【解決手段】 本搬送装置は、物品を収納するための容器であってその上部には搬送方向に対して横向きのフック1cを有する搬送容器1を吊り下げ状態で搬送するものであって、搬送容器1の搬送路を規定するレール5に沿ってフック1cを掛けるためのキャッチ8を移動させるチェーン7を有する。キャッチ8の移動経路に沿うようにしてその直下域に、フック1cを掛けることのできるバー部材10−1を持つ落下防止部材10を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納して吊り下げ状態で搬送可能な搬送容器を用いる搬送装置に関し、特に、ピッキング設備に適用されて搬送容器がピッキング設備の設置床面に落下することを防止できるようにした搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピッキング設備の一例を図6〜図8を参照して説明する。図6は本発明が適用され得る商品ピッキング設備の概略構成図、図7は搬送容器の斜視図、図8は搬送装置の説明図である。
【0003】
まず、図6に基づき、商品ピッキング設備の基本構成を説明する。この商品ピッキング設備は、大きく分けて、伝票投入エリアAとピッキングエリアBと検品梱包エリアDとからなる。そして、伝票投入エリアA内には伝票投入ラインLaが配設され、ピッキングエリアB内には主搬送ラインLbが配設され、検品梱包エリアD内には検品梱包ラインLdが配設されている。検品梱包ラインLdと伝票投入ラインLa間には返送ラインLrが配設されている。伝票投入ラインLaと主搬送ラインLbと検品梱包ラインLdと返送ラインLrは一連に接続され、多数の搬送容器が循環できるようになっている。
【0004】
伝票投入エリアAは、複数の、例えば4カ所の伝票投入ステーションa1,a2,a3,a4を備えている。各伝票投入ステーションa1〜a4は、いずれもオーダ別に発行された伝票を空の搬送容器に入れ伝票投入ラインLaに投入し発進させる場所である。
【0005】
ピッキングエリアBは、商品をオーダピッキングする最も重要な場所である。なお、商品をABC分類(アイテム別出荷傾向)により分類すると出荷頻度の高い商品をAランク品といい、Bランク品とは中位の出荷頻度、Cランク品とは低い出荷頻度の商品をいう。また、特定商品とは、品種は少ないが、ほとんどの顧客に提供するような、出荷量の多い商品、パンフレット、宣伝品等をいう。
【0006】
ピッキングエリアBは、多数の商品ピッキングアイランドP1と、小数の特定商品ピッキングアイランドP2とから構成されている。商品ピッキングアイランドP1の数は任意であるが、数カ所から数10カ所位設けられる。この商品ピッキングアイランドPlは、通信販売される非常に多種多様な膨大な数の商品、例えばAランク品からCランク品までの商品群を、各商品ピッキングアイランドP1に均等に入れるように分け、個々の商品群に属する商品を保管し、その商品群中の商品のみをピッキングする目的で設けられたものである。
【0007】
各商品ピッキングアイランドP1でのピッキングは、主搬送ラインLbから分岐し再度合流する商品ピッキングラインで搬送容器を各商品ピッキングアイランドP1に立寄らせることにより行われる。特定商品ピッキングアイランドP2の数も任意であり、1カ所から数カ所設けられる。この特定商品ピッキングアイランドP2は、多くのオーダに共通する商品、例えば、Aランク品や特定商品などの品種は少ないが、多くの顧客に提供するような出庫量の多い商品を、搬送容器に投入する場所である。この特定商品ピッキングアイランドP2でのピッキングも、主搬送ラインLbと並列に設けられた特定商品ピッキングラインで搬送容器を特定商品ピッキングアイランドP2に立寄らせることにより行われる。
【0008】
検品梱包エリアDは、ピッキングを完了した搬送容器を集め、各搬送容器から商品を取出して検品し、梱包する場所であり、多数の梱包ステーションd1,d2,・・・,d10と、梱包ラインLdから各梱包ステーションd1〜d10に分岐した梱包シュートラインから構成されている。各梱包ステーションd1,・・・で搬送容器1から商品が取り出されると、空の搬送容器1は各梱包ステーションd1,・・・を循回する内部の返送ラインLrと、これを伝票投入ラインLaに接続する外部の返送ラインLrを通って伝票投入ラインLaへ進んでいく。
【0009】
上記の基本構成を有する商品ピッキング設備の特徴は、後述する搬送容器が任意の商品ピッキングアイランドP1,・・・及び特定商品ピッキングアイランドP2に対し、主搬送ラインLbから自由に分岐して立寄り、再び合流することが可能であり、かつ他の商品ピッキングアイランドP1及び特定商品ピッキングアイランドP2に立寄らないで通過することも自由にできるという点にある。顧客からのオーダは種々様々であるから各搬送容器に投入する商品及び特定商品もバラバラになっている。これに対し、各搬送容器は異なる商品ピッキングアイランドP1,・・・及び特定商品ピッキングアイランドP2に立寄ってピッキングし、別の商品ピッキングアイランドP1,・・・及び特定商品ピッキングアイランドP2は通過する。このことにより、各搬送容器は別の搬送容器の走行やピッキング動作を待つことなく、ほとんど自由に所望の商品がピッキングされて検品梱包エリアDへ搬送することができる。
【0010】
このように、本例では、各搬送容器がランダムに動いてピッキングが行われることにより、オーダピッキングが可能となっている点に特徴があり、出荷リードタイムを短縮することができる。
【0011】
次に、上記のごときオーダピッキングに好適な搬送容器1を説明する。図7に示す搬送容器1は、伝票投入ラインLaを走行する間にオーダ伝票が投入され、主搬送ラインLbを走行する間にオーダ伝票に基づいてピッキングされた商品や特定商品が収容され、梱包ラインLdまで搬送するものである。
【0012】
図7に基づき、搬送容器1の具体的構成を説明する。搬送容器1は、箱状の容器1aとハンガー1bとフック1cとから構成された吊下型容器である。容器1aは縦長の合成樹脂製の箱であり、剛性があり、上面と前面上部が開口されている。この開口が大きいことにより、かなり大形の商品や特定商品でも容器1aに投入することができる。また、前記開口から手の届きやすい位置にある内壁の上部にはオーダ伝票Sを挟んでおくためのポケット1dが設けられている。
【0013】
ハンガー1bは容器1aに対し揺動可能に任意のヒンジ1eで連結されている。このため、容器1aを傾けることができ、商品や特定商品の投入、取り出しが容易にできるようになっている。フック1cはハンガー1bの中央に立設されており、上端部が半球状に湾曲している。フック1cは搬送方向に対して横向きであり、後述する搬送手段に係合して、搬送容器1が搬送されるようになっている。
【0014】
ハンガー1bの片側の上面にはIDタグ2が取付けられている。このIDタグ2は、固有の搬送容器番号の他に、オーダされた商品情報、商品投入の有無、分岐指令信号など、オーダに付随する各種オーダ情報を記録することができる。一方、各搬送ラインLa,Lb,Ld,Lrの要所要所にはIDタグリーダー3やIDタグライター4が設置されており、これらにより、IDタグ2に必要な制御情報を読み出し、また書き込んで必要な個所で搬送容器1を分岐させたり、合流させる等の制御を行っている。このように、IDタグ2とIDタグリーダー3及びIDタグライター4を組合せた結果、搬送容器1は、ピッキングされた商品を収納する容器となるだけでなく、それ自体を動かす制御情報搬送媒体となっている。
【0015】
図8は搬送容器1の搬送装置の一例を示している。この搬送装置は、図6に示す伝票投入ラインLa、主搬送ラインLb、梱包ラインLd及び返送ラインLrを構成するものである。なお、前記各ラインLa,Lb,Ld,Lrから分岐する商品ピッキングラインや特定商品ピッキングライン、梱包シュートラインなどは、フック1cを自由すべりさせるレールや、これとコンベヤとの組合せなど、任意の搬送手段を用いることができる。
【0016】
図8の搬送装置においては、前記各ラインLa,Lb,Ld,Lrを含む搬送路を規定するガイド部材としてのレール5が建屋の構造体100に固定されており、レール5には走行車輪6が等間隔で配置されている。各走行車輪6には一連のチェーン7が取付けられている。このチェーン7は図示しないモータ等で走行動力を与えられて搬送部材として作用し、各ラインLa,Lb,Ld,Lrを循環するようになっている。そして、チェーン7には一定ピッチでキャッチ(引っ掛け部)8が取付けられている。キャッチ8は、搬送容器1を自由に着脱できるツメ状ラッチを有している。キャッチ8に搬送容器1のフック1cが引っ掛けられることにより、搬送容器1は吊り下げられた状態で搬送される。
【0017】
既述のごとく、上記の搬送装置は、各ラインLa,Lb,Ld,Lrを構成するものであり、これらから分岐したシュートや分岐ライン等への分岐動作及び合流動作は、任意の構成の合流装置及び分岐装置を用いて行われる。このため、搬送容器1は、各搬送ラインLa,Lb,Ld,Lrを循環し、かつ各分岐ラインヘ進入し、分岐ラインから合流する等の自由な動きが可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0018】
ところで、この種の搬送装置においては、フック1cがキャッチ8から外れて搬送容器1が落下することがあり、この落下は、特に搬送路の分岐点を通過した直後に起こり易い。また、この落下の原因は、分岐失敗、分岐のためのソレノイドの誤動作、出力タイミングのずれ等、様々な要因がある。
【0019】
搬送路の下では作業者が作業をしていることがあり、搬送容器1の落下があると危険である。そこで、これまでは図5に示すように、搬送路の直下域にネット取付けフレーム201を介して落下防止ネット200を張るようにしている。この落下防止ネット200は、フック1cがキャッチ8から外れることにより落下した搬送容器1を受けるものであるので、移動している搬送容器1よりも下側に設置されなければならない。
【0020】
ここで、搬送容器1の搬送方向の厚さを150mmとした場合、吊り下げられた状態にある搬送容器1の底面と落下防止ネット200との間には、200mm(=150+α)以上の空間を確保する必要がある。これは、万一、落下した搬送容器1が落下防止ネット200上に横倒しになった状態でも次の搬送容器1の搬送を妨げないようにする必要があるからである。
【0021】
このために、落下防止ネット200の設置床面からの有効高さH1を十分に高い値に設定することができない。その結果、落下防止ネット200は、作業者の作業に伴う通行を妨げることになり、作業効率の低下、作業者の疲労の要因になっているという問題がある。
【0022】
また、建屋内で作業者の目に入り易い高さ位置に落下防止ネット200があると、見栄えが悪いという問題点もある。
【0023】
更に、搬送容器1が搬送部材から外れて落下したことを検出する手段を備えていないので、ある搬送容器1の落下があった場合でも搬送装置の運行が続けられ、以後のピッキング作業に支障を来すことがある。
【0024】
【特許文献1】特開2001−261127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、本発明の課題は、搬送容器の落下防止を搬送路の直下領域のスペース利用に制約を生じることなく実現できるような搬送装置を提供することにある。
【0026】
本発明の他の課題は、搬送容器の落下防止をネットのような手段を用いることなく実現できるようにして見栄えの良好な搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、物品を収納するための容器であってその上部には搬送方向に対して横向きのフックを有する搬送容器を吊り下げ状態で搬送する搬送装置であって、前記搬送容器の搬送路を規定するガイド部材に沿って前記フックを掛けるための引っ掛け部を移動させる搬送部材を有する搬送装置において、前記引っ掛け部の移動経路に沿うようにしてその直下域に、前記フックを掛けることのできるバー部材を持つ落下防止部材を設置したことを特徴とする。このような搬送装置によれば、落下防止部材の設置高さは移動している搬送容器よりも下側にする必要が無いので、搬送路の直下領域のスペース利用に制約を生じることが無い。
【0028】
本搬送装置においては、前記落下防止部材は搬送方向に連続的または間隔をおいて複数箇所に設置され、各落下防止部材自体あるいはその近傍にはそれぞれ、前記搬送容器のフックが前記引っ掛け部から外れて前記バー部材に掛かったことを検知する検知手段を設置することが好ましい。このような検知手段を備えることにより、搬送容器のフックが引っ掛け部から外れたことが検知された場合には搬送装置の運行を停止する等の措置を講ずることができる。
【0029】
本搬送装置においてはまた、前記落下防止部材は、前記搬送容器のフックが掛かった時に前記バー部材が水平状態を維持しながら下方向に所定角度だけ回動可能なように軸支されており、前記検知手段は前記バー部材の下方向への回動を検知するリミットスイッチで構成される。このような構成により、搬送容器が搬送部材から外れたことの検知を安価な手段で実現することができる。
【0030】
本搬送装置においては更に、前記落下防止部材は、略長四角形のフレーム形状であって2つの長辺の一方が前記バー部材として前記引っ掛け部の移動経路の直下域に延在するように設置されると共に、2つの短辺の中間部において回動可能に軸支されており、その軸支部には前記バー部材の下方向への回動を前記所定角度で規制する第1のストッパと、前記バー部材の上方向への回動を規制する第2のストッパとが設置されている。このような構成によれば、落下防止部材は単純な略長四角形状で設置部位も限定されるので、落下防止ネットに比べればはるかに見栄えが良い。
【0031】
本搬送装置は、前記搬送容器の搬送路として、主搬送路と該主搬送路から分岐した後再び該主搬送路に合流する少なくとも1つの分岐路とを含む物品ピッキング設備に備えられるのに適しており、前記ガイド部材は建屋の天井寄りに設置され、前記落下防止部材は前記搬送路の分岐点の下流側領域に設置される。本搬送装置を物品ピッキング設備に適用した場合、搬送容器が搬送部材から外れたことが検知された場合には搬送装置の運行を停止するようにされ、これにより以後のピッキング作業に支障を来すような事態が生ずることを防止できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、搬送装置の搬送路の直下領域であって床面から所定の有効高さの領域に何も無い状態で搬送容器の落下防止を実現でき、上記直下領域であって床面から所定の有効高さの領域を有効に利用することができる。また、床面から所定の有効高さの領域に落下防止のための部材が存在しないので、見栄えが良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1〜図4を参照して、本発明による搬送装置の好ましい実施の形態について説明する。本搬送装置で搬送される搬送容器は図7で説明したものと同じで良いので、以降では図7に示された搬送容器1を搬送対象として説明する。また、搬送容器1を吊り下げ状態で搬送する搬送部材の構成も図8で説明したものと同じであるので、図8と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0034】
図1において、搬送容器1の搬送路を規定するガイド部材としてのレール5が建屋の構造体100に固定されており、レール5には走行車輪6が等間隔で配置されている。各走行車輪6には一連のチェーン7が取付けられている。チェーン7は図示しないモータ等で走行動力を与えられて搬送部材として作用し、搬送路を循環するようになっている。チェーン7には一定ピッチでキャッチ(引っ掛け部)8が取付けられている。キャッチ8は、搬送容器1のフック1cを自由に着脱できるツメ状ラッチを有している。キャッチ8に搬送容器1のフック1cが引っ掛けられることにより、搬送容器1は吊り下げられた状態で搬送される。
【0035】
図2は、本搬送装置に備えられる落下防止部材を示している。本例においては、落下防止部材10は長四角形のフレーム形状であるが、この形状に限定されるものでは無い。長四角形の2つの長辺の一方がバー部材10−1としてキャッチ8の移動経路の直下域に同じ方向に延在するように設置される。バー部材10−1は、キャッチ8から外れたフック1cを引っ掛けるためのものである。つまり、搬送容器1は、その厚さ方向が搬送方向と同じで、フック1cが搬送方向に対して横向きの状態で搬送されており、フック1cがキャッチ8から外れたとしても搬送容器1は同じ姿勢のままで落下する。この場合、キャッチ8の移動経路の直下にバー部材10−1が同じ方向に延びているので、キャッチ8から外れたフック1cはバー部材10−1に掛かることになる。
【0036】
落下防止部材10はまた、2つの短辺の中間部において2本の支持フレーム30により回動可能に軸支されている。支持フレーム30は、図1に示した建屋の構造体100に取り付けられる。
【0037】
落下防止部材10における長四角形の2つの長辺の他方のバー部材10−2の近くには、バー部材10−1の下方向への回動、言い換えればバー部材10−2の上方向への回動を検知するために、図示しない支持部材を介してリミットスイッチ40が設置されている。具体的には、図3をも参照して、バー部材10−2に舌片10−3が設けられている。落下防止部材10の長四角形フレームが水平状態を維持している時に、舌片10−3がリミットスイッチ40のアクチュエータに当接してリミットスイッチ40がオン状態になっている。本例では、検知手段として安価なリミットスイッチを用いているが、これに限定されるものではなく、他の周知の検知手段を用いても良い。
【0038】
ここで、搬送容器1のフック1cがキャッチ8から外れたとしても、前述したようにその直下にはバー部材10−1があるので、図4に示すようにフック1cがバー部材10−1に掛かることによりバー部材10−1は水平を維持した状態で下側に回動する。すると、リミットスイッチ40はそのアクチュエータが舌片10−3から離れてオフとなる。このようにして、搬送容器1が搬送部材から外れたことを検知できる。
【0039】
なお、図2では図示を省略しているが、落下防止部材10の軸支部にはバー部材10−1の下方向への回動を所定角度で規制する第1のストッパ10−5と、バー部材10−1の上方向への回動を規制する第2のストッパ10−6とが設置されている。
【0040】
詳しく説明すると、図3は通常運行中の状態を示し、バー部材10−2側に作用する重量P´に基づく回転力がバー部材10−1側に作用する重量Pに基づく回転力よりやや大きくなるようにしている。そして、これによるバー部材10−1の上方向への回動を第2のストッパ10−6で阻止するようにしている。これは、バー部材10−1側の重量Pとバー部材10−2側の重量P´を考慮して設定することができるが、重量ではなく、支持フレーム30による軸支部の位置を落下防止部材10における長四角形の短辺方向にずらすことで実現することもできる。なお、キャッチ8によるフック1cの引っ掛け高さとバー部材10−1の設置高さとの差は、一例をあげれば65mm前後程度が好ましい。勿論、この値は一例にすぎず、フック1cの通過時にバー部材に当たらない高さで最小の値にされるのが好ましい。
【0041】
図4は搬送容器1が搬送部材から外れた時を示し、バー部材10−2側に作用する重量P´に基づく回転力がバー部材10−1側に作用する重量Pと搬送容器1の重量Wとの和に基づく回転力より小さくなるようにしている。そして、これによるバー部材10−1の下方向への回動を所定角度で第1のストッパ10−5により阻止するようにしている。この所定角度は、バー部材10−1の下方向への変位量が、一例をあげれば25mm前後程度になるような値に設定されるのが好ましい。勿論、この値も一例であり、できるだけ小さいことが望ましい。なお、搬送容器1が空状態の時には、その重量Wがそれほど大きくない場合もある。このような場合を考慮して、バー部材10−1の下方向への回動をバー部材10−1とバー部材10−2とに作用するモーメント力の差で与えるようにしても良い。これは、例えば図3で説明したように、回動中心からバー部材10−1までの距離と、回動中心からバー部材10−2までの距離とを変えることで実現できる。いずれにしても、図4の状態ではリミットスイッチ40はオフであり、この場合には、本搬送装置の運行を停止するようにされる。
【0042】
本発明による搬送装置においては、落下防止部材10は、レール5に近い高さ位置、言い換えれば本搬送装置が設置される建屋の床面から十分に高い高さ位置に設置されるので、床面から搬送状態にある搬送容器1の底面までの有効高さH2を図5に示した従来の有効高さH1より十分に大きくとることができる。
【0043】
なお、バー部材10−1の下方向への変位量が25mm前後程度になるようにしているのは、以下の効果が得られることをも想定している。キャッチ8から外れた搬送容器1のフック1cは、搬送による慣性力が作用しているので、バー部材10−1に掛かるとこのバー部材10−1をスライドして短辺とのコーナに当たる。そして、そこで向きを変えられて今度は短辺に沿ってスライドして支持フレーム30近くまで到達する。フック1cが落下防止部材10の短辺に掛かっている状態では、搬送容器1はその厚さ方向が搬送方向に直角になっている。これは、例えば搬送部材から外れた搬送容器1の直後に次の搬送容器が続いている場合があり、搬送容器1の外れが検知されてから搬送装置がすぐには運行が停止されないようなことがあっても、次の搬送容器が搬送部材から外れた搬送容器1に衝突することを回避できる。しかし、バー防止部材10−1の下方向への変位量が大きすぎると、支持フレーム30近くまで移動した搬送容器10が再びバー部材10−1とのコーナまで戻ってしまい、上記動作を実現できない。
【0044】
以上、本発明による搬送装置の好ましい実施の形態について説明したが、本搬送装置は図6で説明したような商品ピッキング装置の搬送装置に適用されるのが好ましい。これは、図6において説明したように、伝票投入ラインLa、主搬送ラインLb、梱包ラインLdのいずれにおいても搬送路から分岐して再び搬送路に合流する分岐ラインが存在し、搬送容器1の外れが分岐点を過ぎた直後に起こり易いからである。つまり、上記した落下防止部材10は、特に、分岐点を過ぎた直後の領域に設置されるのが好ましい。勿論、落下防止部材10は、複数箇所に連続して設置されても良いし、間隔をおいて設置されても良い。
【0045】
本発明による搬送装置によれば、落下防止部材の設置高さは移動している搬送容器よりも下側にする必要が無いので、搬送路の直下領域のスペース利用に制約を生じることが無い。また、搬送容器の搬送部材からの外れを検知する検知手段を備えることにより、搬送容器の外れが検知された場合には搬送装置の運行を停止する等の措置を講ずることができる。更に、落下防止部材は単純な略長四角形状で設置部位も限定されるので、落下防止ネットに比べればはるかに見栄えが良く、検知手段をも含めて全体的に安価で実現できる。
【0046】
本搬送装置を商品ピッキング設備に適用した場合、搬送容器が搬送部材から外れたことが検知された場合には搬送装置の運行を停止するようにされ、これにより以後のピッキング作業に支障を来すような事態が生ずることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による搬送装置の主要部の構成を説明するための側面図である。
【図2】本発明による搬送装置に設置される落下防止部材を説明するための斜視図である。
【図3】図2に示された落下防止部材の通常時の状態を説明するための図である。
【図4】図2に示された落下防止部材の作動時の状態を説明するための図である。
【図5】搬送容器の落下防止をネットで行うようにした従来例を説明するための図である。
【図6】本発明による搬送装置が適用され得る従来の商品ピッキング設備を全体的に説明するための平面図である。
【図7】図6の搬送装置で使用されている搬送容器を説明するための図である。
【図8】図6の商品ピッキング設備で使用されている従来の搬送装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
1 搬送容器
5 レール
6 走行車輪
7 チェーン
8 キャッチ
10 落下防止部材
10−1、10−2 バー部材
30 支持フレーム
40 リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納するための容器であってその上部には搬送方向に対して横向きのフックを有する搬送容器を吊り下げ状態で搬送する搬送装置であって、前記搬送容器の搬送路を規定するガイド部材に沿って前記フックを掛けるための引っ掛け部を移動させる搬送部材を有する搬送装置において、
前記引っ掛け部の移動経路に沿うようにしてその直下域に、前記フックを掛けることのできるバー部材を持つ落下防止部材を設置したことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、前記落下防止部材は搬送方向に連続的または間隔をおいて複数箇所に設置され、各落下防止部材自体あるいはその近傍にはそれぞれ、前記搬送容器のフックが前記引っ掛け部から外れて前記バー部材に掛かったことを検知する検知手段を設置したことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、前記落下防止部材は、前記搬送容器のフックが掛かった時に前記バー部材が水平状態を維持しながら下方向に所定角度だけ回動可能なように軸支されており、前記検知手段は前記バー部材の下方向への回動を検知するリミットスイッチで構成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送装置において、前記落下防止部材は、略長四角形のフレーム形状であって2つの長辺の一方が前記バー部材として前記引っ掛け部の移動経路の直下域に延在するように設置されると共に、2つの短辺の中間部において回動可能に軸支されており、その軸支部には前記バー部材の下方向への回動を前記所定角度で規制する第1のストッパと、前記バー部材の上方向への回動を規制する第2のストッパとが設置されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の搬送装置において、該搬送装置は、前記搬送容器の搬送路として、主搬送路と該主搬送路から分岐した後再び該主搬送路に合流する少なくとも1つの分岐路とを含む物品ピッキング設備に備えられ、前記ガイド部材は建屋の天井寄りに設置され、前記落下防止部材は前記搬送路の分岐点の下流側領域に設置されることを特徴とする搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−1721(P2006−1721A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182052(P2004−182052)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】