説明

搬送装置

【課題】車両の走行を規制して、車両の暴走を防止することができる搬送装置を提供すること。
【解決手段】本願発明の搬送装置1によれば、暴走防止用シリンダ13から付与される駆動力により暴走防止部材11がフレーム2から張り出す張出位置に揺動される。これにより、前輪100aが持ち上げられた車両100の搬送時において、接地した後輪の回転によりエンジンが始動し、車両100が暴走した場合に、張出位置に位置する暴走防止部材11が暴走した車両100と衝突して車両100の走行を規制し、車両100の暴走を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、特に、車両の走行を規制して、車両の暴走を防止することができる搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンテナを搭載した車両をX線検査する場合には、車両を搬送するための搬送装置が用いられる。かかる搬送装置は、車両の前輪を持ち上げつつ自走可能に構成されるものであり、車両及びコンテナをX線が照射される遮蔽室内を通過させて、車両及びコンテナのX線検査が行われる。
【0003】
例えば、特開2003−287507号公報では、搬送台車(搬送装置)の上部に上下動可能な乗用車用フォーク(保持装置)を配設する技術が開示されている。この搬送台車は、地下に形成された台車用通路を自走するように配置され、乗用車用フォークが地上の車両の前輪を持ち上げる。そして、車両の前輪を持ち上げた状態で搬送台車が台車用通路内を自走することにより、車両及びコンテナが遮蔽室を通過して、車両及びコンテナのX線検査が行われる。
【特許文献1】特開2003−287507号公報(段落[0013]、図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、搬送台車が車両を搬送する際には、接地した後輪の回転により動力がエンジンに伝達してエンジンが始動するいわゆる引き掛かりを防止するために、車両の運転手にギアをニュートラルに位置させることを義務づけている。
【0005】
しかしながら、仮に、ギアがドライブに位置した状態で運転手が降車した場合には、引き掛かりによりエンジンが始動し、車両が暴走するという問題点があった。また、車両の暴走により、衝突事故を引き起こすという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両の走行を規制して、車両の暴走を防止することができる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の搬送装置は、フレームと、前記フレームを走行させる走行駆動装置と、前記フレームに昇降可能に配設される保持装置とを備え、前記保持装置で車両の前輪を保持しつつ前記保持装置を上昇させると共に前記走行駆動装置により前記フレームを走行させて前記車両を前記前輪が持ち上げられた状態で搬送するものであり、前記保持装置よりも前記車両の進入方向前方側に配置されると共に、前記フレームから張り出す張出位置と前記フレーム側に格納される格納位置との間で揺動可能に前記フレームに軸支される暴走防止部材と、前記暴走防止部材に駆動力を付与して前記暴走防止部材を前記張出位置と前記格納位置との間で揺動させる揺動駆動装置とを備え、前記揺動駆動装置により前記暴走防止部材を前記張出位置に位置させ前記車両の走行を規制すると共に、前記揺動駆動装置により前記暴走防止部材を前記格納位置に位置させ前記車両の走行を許容するように構成されている。
【0008】
請求項2記載の搬送装置は、請求項1記載の搬送装置において、前記張出位置に位置する前記暴走防止部材が前記車両の進入方向前方側へ揺動することを規制する受台部材を備えている。
【0009】
請求項3記載の搬送装置は、請求項2記載の搬送装置において、前記張出位置に位置する前記暴走防止部材と前記受台部材との間に介設され弾性材料から構成される緩衝部材を備えている。
【0010】
請求項4記載の搬送装置は、請求項2又は3に記載の搬送装置において、前記暴走防止部材又は前記揺動駆動装置の一方に突設されるピン部と、前記ピン部と係合するために前記暴走防止部材又は前記揺動駆動装置の他方に形成されるピン溝とを備え、前記揺動駆動装置は、伸縮式のアクチュエータとして構成され、前記ピン溝は、前記暴走防止部材を前記揺動駆動装置に対して前記車両の進入方向前方へ相対移動させるために前記ピン部が動く隙間を有して構成されている。
【0011】
請求項5記載の搬送装置は、請求項1から4のいずれかに記載の搬送装置において、前記暴走防止部材の鉛直方向における配置位置は、前記保持装置の最下点から少なくとも400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内に設定されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の搬送装置によれば、保持装置よりも車両の進入方向前方側に配置されつつフレームに軸支される暴走防止部材と、その暴走防止部材を揺動させる揺動駆動装置とを備え、揺動駆動装置から付与される駆動力により暴走防止部材がフレームから張り出す張出位置に揺動される。これにより、保持装置により前輪が持ち上げられた車両の搬送時において、接地した後輪の回転によりエンジンが始動するいわゆる引き掛かりによりエンジンが始動し、車両が暴走した場合に、張出位置に位置する暴走防止部材が暴走した車両と衝突して車両の走行を規制し、車両の暴走を防止することができるという効果がある。
【0013】
更に、車両の暴走を防止することができるので、暴走した車両が衝突事故を引き起こすことを防止できるという効果がある。
【0014】
また、揺動駆動装置から付与される駆動力により暴走防止部材がフレーム側に格納される格納位置に揺動される。これにより、暴走防止部材が車両と衝突することなく車両の走行を許容するので、搬送後の車両を後進させることなくそのまま搬送させて、搬送後の車両の取り扱いを簡略化することができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の搬送装置によれば、請求項1記載の搬送装置の奏する効果に加え、暴走防止部材の車両の進入方向前方側に配設される受台部材を備え、その受台部材が張出位置に位置する暴走防止部材の車両の進入方向前方側への揺動を規制するので、暴走した車両が暴走防止部材に衝突した場合に、その暴走防止部材が張出位置から車両の進入方向前方側へ向けて揺動することを防止できる。
【0016】
その結果、暴走防止部材が張出位置から車両の進入方向前方側へ向けて揺動しつつ揺動駆動装置を押出して、揺動駆動装置を損傷させることを防止できるという効果がある。
【0017】
また、受台部材が張出位置に位置する暴走防止部材の車両の進入方向前方側への揺動を規制するので、暴走した車両が暴走防止部材に衝突した際の荷重が受台部材により分担され、その分、揺動駆動装置が暴走防止部材を張出位置に保持するために必要な揺動駆動装置の駆動力を小さくすることができるという効果がある。
【0018】
請求項3記載の搬送装置によれば、請求項2記載の搬送装置の奏する効果に加え、張出位置に位置する暴走防止部材と受台部材との間に介設される緩衝部材を備え、その緩衝部材が弾性材料から構成されているので、暴走した車両が暴走防止部材に衝突した場合に、緩衝部材が弾性変形して衝突時の荷重を吸収し、暴走防止部材及び受台部材が損傷することを防止できるという効果がある。
【0019】
請求項4記載の搬送装置によれば、請求項2又は3に記載の搬送装置の奏する効果に加え、暴走防止部材又は揺動駆動装置の一方に穿設されるピン部と、暴走防止部材又は揺動駆動装置の他方に形成されピン部と係合するピン溝とを備え、そのピン溝は、暴走防止部材を揺動駆動装置に対して車両の進入方向前方へ相対移動させるための隙間を有して構成されているので、暴走した車両が暴走防止部材に衝突した場合に、その暴走防止部材が受台部材により車両の進入方向前方側への揺動を規制されつつ揺動駆動装置に対して車両の進入方向前方側へ相対移動して、揺動駆動装置に衝突時の荷重がかかることを防止できる。その結果、揺動駆動装置が損傷することを防止できるという効果がある。
【0020】
請求項5記載の搬送装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の搬送装置の奏する効果に加え、暴走防止部材の鉛直方向における配置位置は、保持装置の最下点から少なくとも400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内に設定されているので、暴走防止部材を車両のバンパと衝突させることができる。
【0021】
即ち、一般的な車両は、保護装置であるバンパの少なくとも一部分が保持装置の最下点から400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内に配置されている。その結果、暴走防止部材の略鉛直方向における配置位置を保持装置の最下点から少なくとも400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内に設定することにより、暴走防止部材が暴走した車両のバンパと衝突するので、衝突時の車両の損傷を抑制できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における搬送装置1の側面図である。また、図2(a)は、搬送装置1の正面図であり、図2(b)は、搬送装置1の上面図である。
【0023】
なお、図1及び図2(b)では、車両100及びコンテナ101の一部のみが図示されている。また、理解を容易とするために、図1では、フォーク用シリンダ9及び回転部材93,94の図示が省略され、図2では、伸縮部材7及びアーム用シリンダ8の図示が省略され、図2(b)では、衝突防止部材24の図示が省略されている。また、図1及び図2では、車両100及びコンテナ101が2点鎖線で図示されている。
【0024】
まず、図1及び図2を参照して搬送装置1の全体構成について説明する。図1及び図2に示すように、搬送装置1は、車両100の前輪100aを持ち上げた状態で自走して車両100を所定位置に搬送するためのものであり、略門状に形成されるフレーム2と、そのフレーム2に軸支される車輪3と、フレーム2の走行方向一端側(図1及び図2(b)右側)から張り出す一対のアーム部材4と、そのアーム部材4に揺動可能に軸支される一対のフォーク部材5と、地面に敷設されるレール151上を転動する補助輪6と、その補助輪6とアーム部材4との間に介設される伸縮部材7と、その伸縮部材7を伸縮させる駆動力を付与するアーム用シリンダ8と、フォーク部材5を揺動させる駆動力を付与するフォーク用シリンダ9と、アーム部材4をフレーム2に対して支持するための支持装置10と、フレーム2に揺動可能に軸支される一対の暴走防止部材11と、その暴走防止部材11のフレーム2の走行方向他端側(図1及び図2(b)左側)に配置される受台部材12と、暴走防止部材11に駆動力を付与して揺動させる暴走防止用シリンダ13と、その暴走防止用シリンダ13の駆動力により揺動される暴走防止部材11の位置を検出する第1及び第2近接センサ14,15とを主に備えて構成されている。
【0025】
フレーム2は、図1及び図2に示すように、略門状の一対の門部2aと、それら一対の門部2aの上部を互いに連結する上側連結部2bと、一対の門部2aの中央を互いに連結する中央連結部2cと、一対の門部2aの下部を互いに連結する下側連結部2dとを備えて構成されている。
【0026】
門部2aは、その高さ寸法が車両100に搭載されたコンテナ101の高さ寸法よりも大きく設定され、かつ、その幅寸法が車両100及びコンテナ101の幅寸法以上に設定され、コンテナ101を搭載した車両100が門部2aを通過可能に構成されている。
【0027】
そして、門部2aのフレーム2の走行方向と直交する方向の一端側(図1紙面垂直方向奥側、図2(a)左側及び図2(b)上側)には、後述する制御盤21が張り出し固定され、門部2aのフレーム2の走行方向一端側(図1右側)であって幅方向両端側には、後述する衝突防止部材24及び張出部材26が張り出し固定されている。
【0028】
下側連結部2dは、その上面に後述する走行モータ22及び油圧ユニット23が載置され、下面には、車輪3を挟持するための挟持部材25が固定されている。また、下側連結部2dの互いに対向する側の側面には、後述する暴走防止部材11、受台部材12、暴走防止用シリンダ13及び第1近接センサ14が配設されている。
【0029】
制御盤21は、図1及び図2に示すように、走行モータ22及び油圧ユニット23を制御するためのものであり、例えば、走行モータ22を制御してフレーム2の走行速度を設定したり、油圧ユニット23を制御してアーム用、フォーク用及び暴走防止用シリンダ8,9,13の伸縮を行う。
【0030】
走行モータ22は、図1に示すように、後述する駆動輪3c,3dを駆動させるためのものであり、駆動ローラ22aを時計方向及び反時計方向(図1右回り方向及び左回り方向)に回転させる。そして、駆動ローラ22aの回転により、駆動ローラ22a及び車輪側ローラ3d1に巻回された駆動チェーン22bを介して駆動輪3dを回転させ、フレーム2を走行させる。なお、レール151の隙間部でも走行可能とするため、駆動輪3cと駆動輪3dとをチェーン22dにより駆動させている。
【0031】
また、走行モータ22には、駆動ローラ22aの回転を検出するための速度センサ22cが配設されており、その速度センサ22cが検出した駆動ローラ22aの回転数からフレーム2の現在位置が算出される。
【0032】
油圧ユニット23は、図1に示すように、アーム用、フォーク用及び暴走防止用シリンダ8,9,13の伸縮を行うためのものであり、ホース(図示せず)を介してアーム用、フォーク用及び暴走防止用シリンダ8,9,13にそれぞれ連結されている。
【0033】
そして、油圧ユニット23がホースを介してアーム用、フォーク用及び暴走防止用シリンダ8,9,13内の油圧をそれぞれ変化させ、アーム用、フォーク用及び暴走防止用シリンダ8,9,13をそれぞれ伸縮させる。
【0034】
衝突防止部材24は、図1に示すように、2本の支持部材24aを介して門部2aのフレーム2の走行方向一端側(図1右側)であって幅方向両端側の側面に固定されており、車両100が左右いずれかに限界以上に寄ったまま移動させた後、フレーム2を後退させた場合の衝突防止用である。
【0035】
挟持部材25は、図1及び図2(a)に示すように、車輪3の両側面に配置されつつ車輪3を挟持して、車輪3を回転可能に軸支する。
【0036】
張出部材26は、図1及び図2(b)に示すように、門部2aについてフレーム2の走行方向と直交する方向(図1紙面垂直方向及び図2(b)上下方向)の両端にそれぞれ張り出し固定され、支持装置10を軸支する。
【0037】
車輪3は、図1及び図2(a)に示すように、レール151上を転動するものであり、各下側連結部2dの下部にそれぞれ4つずつ配設されている。
【0038】
また、フレーム2の走行方向一端側(図1右側)であって幅方向両端側に配置される駆動輪3c,3dは、上述したように、走行モータ22により回転駆動し、駆動輪3c,3d以外の車輪3である従動輪3a,3bは、フレーム2の走行に従動して回転する。
【0039】
なお、フレーム2の走行方向他端側(図1左側)に配置される従動輪3a,3b同士の離間寸法、及び、フレーム2の走行方向一端側に配置される駆動輪3c,3d同士の離間寸法は、後述するレール151の隙間寸法d2〜d4(図3参照)よりも大きく設定されている。
【0040】
これにより、一の車輪3がレール151の隙間に位置する場合においても、他の車輪3がレール151上に位置するので、全ての車輪3がレール151の隙間から脱落して、その脱落による衝撃がフレーム2にかかることを防止できる。また、レール151の隙間を片方の駆動輪3c,3dが走行している時でも、もう片方の駆動輪3c,3dが走行可能である。
【0041】
アーム部材4は、図1及び図2(b)に示すように、支持装置10を介してフレーム2に支持される一対の略L字状部材であり、門部2aについてフレーム2の走行方向と直交する方向(図1紙面垂直方向及び図2(b)上下方向)の両端にそれぞれ配置されつつ、フレーム2と対向する側(図1及び図2(b)右側)へ向けて張り出している。
【0042】
また、アーム部材4の張り出し方向先端側(図1及び図2(b)右側)には、略円筒状の先端部材41が配設され、その先端部材41の張り出し方向先端側には、先端部材41よりも小径に設定された当接部材42が外嵌されている。
【0043】
かかる当接部材42は、フレーム2の走行方向(図1及び図2(b)左右方向)に沿って伸縮するものであり、後述するストッパ部材151a(図3参照)との当接により収縮して、その当接時の衝撃を吸収する。
【0044】
フォーク部材5は、図1及び図2(b)に示すように、アーム部材4の下面に揺動可能に軸支される2本の第1及び第2フォーク部材51,52で構成されるものであり、第1フォーク部材51がアーム部材4の張り出し方向先端側(図1及び図2(b)右側)に配置され、第2フォーク部材52が第1フォーク部材51よりもフレーム2側(図1及び図2(b)左側)に配置されている。
【0045】
そして、第1及び第2フォーク部材51,52は、後述するフォーク用シリンダ9の伸縮により揺動して、車両100の前輪100aを挟持する。なお、アーム部材4が下降した状態では、第1及び第2フォーク部材51,52と地面との間に隙間が形成され、第1及び第2フォーク部材51,52がフォーク用シリンダ9の伸縮により地面と当接することなく揺動される。
【0046】
補助輪6は、図1に示すように、アーム部材4毎に2つ設けられると共に後述する2本の第2リンク部材72にそれぞれ軸支されるものであり、レール151(図2(a)参照)上を転動可能に構成されている。
【0047】
伸縮部材7は、図1に示すように、アーム部材4と補助輪6との間に介設されつつ伸縮可能に構成されるものであり、アーム部材4の側面に所定距離を隔てて軸支される2本の第1リンク部材71と、その各第1リンク部材71に軸支されつつ各補助輪6をそれぞれ軸支する2本の第2リンク部材72と、各補助輪6の軸を連結する第1連結部材73と、その第1連結部材73のフレーム2側(図1左側)端部を軸支する第2連結部材74と、第1及び第2リンク部材71,72の連結部同士を連結する第3連結部材75とを備えて構成されている。
【0048】
第1リンク部材71は、第1及び第2フォーク部材51,52の間に配置され、一端側(図1上側)がアーム部材4の側面に軸支されると共に他端側(図1下側)が第2リンク部材72を軸支する。
【0049】
第2リンク部材72は、その一端側(図1上側)が第1リンク部材71に軸支され、他端側(図1下側)が補助輪6を軸支する。
【0050】
なお、第1及び第2リンク部材71,72の長さ寸法は、アーム部材4が下降した状態で、各第1及び第2リンク部材71,72のなす形状がフレーム2側(図1左側)に角部を有する略くの字状となるように設定されている。
【0051】
第1連結部材73は、各補助輪6の軸同士を連結するためのものであり、その両端部に各補助輪6を軸支するための穴が穿設されている。なお、かかる穴同士の離間寸法は、後述するレール151の隙間寸法d2〜d4(図3参照)よりも大きく設定されており、その各穴に軸支される各補助輪6同士の離間寸法がレール151の隙間寸法d2〜d4よりも大きくなる。
【0052】
これにより、一方の補助輪6がレール151の隙間に位置する場合においても、他方の補助輪6がレール151上に位置して、一方の補助輪6がレール151の隙間から脱落することを防止できる。その結果、全ての補助輪6がレール151の隙間から脱落して、アーム部材4の支持位置が下がり、前輪100aが接地することを防止できる。
【0053】
第2連結部材74は、各補助輪6のフレーム2の走行方向(図1左右方向)における動きを規制するためのものであり、一端側(図1左側)がアーム部材4の側面に軸支されると共に他端側(図1右側)が第1連結部材73のフレーム2側(図1左側)端部を軸支して、第1連結部材73の動きを規制している。
【0054】
第3連結部材75は、第1及び第2リンク部材71,72の連結部同士を連結するためのものであり、その両端部には、第1及び第2リンク部材71,72を軸支するための穴が穿設されている。なお、かかる穴同士の離間寸法は、アーム部材4に対する各第1リンク部材71の取付け位置同士の離間寸法と略同等に設定されており、各第1リンク部材71の地面に対する傾斜角が略同等となる。
【0055】
アーム用シリンダ8は、図1に示すように、アーム部材4の第1リンク部材71が配設される側面に配設され略水平方向(図1左右方向)に伸縮するものであり、一端側(図1左側)がアーム部材4の側面に軸支されると共に他端側(図1右側)が第3連結部材75のフレーム2側(図1左側)端部に軸支されている。
【0056】
フォーク用シリンダ9は、図2(b)に示すように、アーム部材4の上面に2つ設けられるものであり、アーム部材4の張り出し方向先端側(図2(b)右側)に配置される第1フォーク用シリンダ91と、その第1フォーク用シリンダ91よりもフレーム2側(図2(b)左側)に配置される第2フォーク用シリンダ92とを備えて構成されている。
【0057】
第1フォーク用シリンダ91は、アーム部材4の上面に固定される固定部材4aに軸支されるものであり、その先端部に後述する第1回転部材93が軸支されている。そして、第1フォーク用シリンダ91が伸縮することにより、第1回転部材93を回転させる。
【0058】
第1回転部材93は、第1フォーク部材51を軸支する略L字状部材であり、第1フォーク用シリンダ91の伸縮により回転して、第1フォーク部材51を揺動させる。
【0059】
第2フォーク用シリンダ92は、アーム部材4の上面に軸支されるものであり、その先端部に後述する第2回転部材94が軸支されている。そして、第2フォーク用シリンダ92が伸縮することにより、第2回転部材94を回転させる。
【0060】
第2回転部材94は、第2フォーク部材52を軸支する略L字状部材であり、第2フォーク用シリンダ92の伸縮により回転して、第2フォーク部材52を揺動させる。
【0061】
支持装置10は、図1及び図2(b)に示すように、フレーム2とアーム部材4との間に介設されてアーム部材4と地面との間隔を平行に保ったまま移動させるものであり、張出部材26及びアーム部材4に軸支される上側及び下側リンク部材10a,10bを備える平行リンク機構として構成されている。
【0062】
上側リンク部材10aは、一端側(図1及び図2(b)左側)が上側第1軸支ピン10a1により張出部材26に軸支され、他端側(図1及び図2(b)右側)が上側第2軸支ピン10a2によりアーム部材4に軸支される。同様に、下側リンク部材10bは、一端側が下側第1軸支ピン10b1により張出部材26に軸支され、他端側が下側第2軸支ピン10b2によりアーム部材4に軸支される。
【0063】
なお、上側第1軸支ピン10a1と上側第2軸支ピン10a2との離間寸法は、下側第1軸支ピン10b1と下側第2軸支ピン10b2との離間寸法と略同等に設定されている。また、上側第1軸支ピン10a1と下側第1軸支ピン10b1との離間寸法は、上側第2軸支ピン10a2と下側第2軸支ピン10b2との離間寸法と略同等に設定されている。
【0064】
その結果、上側第1及び上側第2軸支ピン10a1,10a2と下側第1及び下側第2軸支ピン10b1,10b2とがなす形状が略平行四辺形となる。これにより、アーム部材4は、フレーム2に対して平行移動する、即ち、地面に対しても平行移動する。
【0065】
ここで、図1及び図2を参照して、アーム部材4及びフォーク部材5の動作について説明する。
【0066】
第1フォーク部材51は、第1フォーク用シリンダ91が伸長した状態では、その先端がフレーム2の走行方向一端側(図2(b)右側)へ向けて張り出しつつ先端部材41の下方に配置されている。
【0067】
一方、第2フォーク部材52は、第2フォーク用シリンダ92が伸長した状態では、その先端がフレーム2の走行方向他端側(図2(b)左側)へ向けて張り出しつつアーム部材4の下方に配置されている。
【0068】
そして、図2(b)に示すように、車両100の前輪100aが第1及び第2フォーク部材51,52同士の略中央に配置され、第1及び第2フォーク用シリンダ91,92が収縮される。
【0069】
即ち、フレーム2の一端側(図2(b)上側)に配設されるアーム部材4において、第1フォーク用シリンダ91が収縮した場合には、第1回転部材93が時計方向(図2(b)右回り方向)に約90°回転する。そして、その第1回転部材93の回転により第1フォーク部材51が時計方向に約90°回転して、フォーク部材51が前輪100aの下方(図2(b)紙面垂直方向奥方)に配置される。
【0070】
同様に、フレーム2の他端側(図2(b)下側)に配設されるアーム部材4において、第1フォーク用シリンダ91が収縮した場合には、第1回転部材93及び第1フォーク部材51が反時計方向(図2(b)左回り方向)に約90°回転し、第1フォーク部材51が前輪100aの下方に配置される。
【0071】
一方、フレーム2の一端側に配設されるアーム部材4において、第2フォーク用シリンダ92が収縮した場合には、第2回転部材94が反時計方向に約90°回転する。そして、その第2回転部材94の回転により第2フォーク部材52が反時計方向に約90°回転し、第2フォーク部材52が前輪100aの下方に配置される。
【0072】
同様に、フレーム2の他端側に配設されるアーム部材4において、第2フォーク用シリンダ92が収縮した場合には、第2回転部材94及び第2フォーク部材52が時計方向に約90°回転し、第2フォーク部材52が前輪の下方に配置される。
【0073】
このように、第1及び第2フォーク用シリンダ91,92が収縮することで各第1及び第2フォーク部材51,52が前輪100aの下方にそれぞれ配置され、各第1及び第2フォーク部材51,52が前輪100aを挟持する。
【0074】
次に、図1に示すように、アーム用シリンダ8がフレーム2の走行方向一端側(図1右側)へ向けて伸長して、フレーム2の走行方向他端側(図1左側)に配置される第1及び第2リンク部材71,72の連結部及び連結部材8を押出する。これにより、各第1及び第2リンク部材71,72が略鉛直方向(図1上下方向)に伸長して、アーム部材4を上昇させる。
【0075】
以上のように、前輪100aが第1及び第2フォーク部材51,52に挟持された状態でアーム部材4を上昇させることで、車両100が持ち上げられる。
【0076】
なお、伸縮部材7は、アーム部材4を地面に対して支持しつつアーム部材4を上昇させるように構成されているので、車両100の荷重がアーム部材4にかかった際に、伸縮部材7がアーム部材4を地面に対して支持して、フレーム2の走行方向他端側(図1左側)が浮き上がることを防止できる。
【0077】
また、フレーム2の浮き上がりを防止するためのデッドウエイトをなくすことができるため、全体の軽量化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0078】
ここで、搬送装置1の構成にもどって説明する。
【0079】
暴走防止部材11は、図2に示すように、各下側連結部2dの互いに対向する側面から張り出す軸支部材11aにそれぞれ軸支される一対の棒状部材であり、後述する暴走防止用シリンダ13の伸縮により、揺動可能に構成されている。
【0080】
即ち、暴走防止用シリンダ13が収縮した状態では、暴走防止部材11は、その先端が互いに対向する側に張り出す張出位置に位置する。また、暴走防止用シリンダ13が伸長した状態では、暴走防止部材11は、その先端がフレーム2の走行方向一端側(図2(a)紙面垂直方向奥側及び図2(b)右側)に張り出す格納位置に位置する。
【0081】
なお、請求項1から請求項3に記載の「張出位置」とは、暴走防止部材11の先端が互いに対向する側に張り出し、暴走防止部材11の少なくとも一部が車両100の通路と重なる位置が該当する。
【0082】
また、請求項1記載の「格納位置」とは、暴走防止部材11の先端がフレーム2の走行方向一端側に位置し、暴走防止部材11と車両100の通路とが重ならない位置が該当する。
【0083】
また、暴走防止部材11の長手方向寸法(図2(a)左右方向寸法及び図2(b)上下方向寸法)は、張出位置に位置する暴走防止部材11同士の離間寸法d1が車両100の車幅寸法よりも小さくなるように設定されている。
【0084】
また、暴走防止部材11の略鉛直方向(図2(a)上下方向及び図2(b)紙面垂直方向)における高さ寸法h1は、アーム部材4が下降した状態におけるフォーク部材5の底面から570mmに設定されている。
【0085】
なお、請求項5記載の「保持装置の最下点」とは、アーム部材4が下降した状態におけるフォーク部材5の底面が該当する。
【0086】
ここで、図4を参照して、暴走防止部材11、受台部材12、暴走防止用シリンダ13、第1及び第2近接センサ14,15について説明する。
【0087】
図4に示すように、暴走防止部材11の一端側(図4(a)下側及び図4(b)左側)側面には、係合部材11bが張り出し固定され、暴走防止部材11の底面には、当て板部材11cが下方へ向けて張り出し固定されている。
【0088】
係合部材11bは、暴走防止用シリンダ13との接続部であり、後述するピン部13bと係合するためのピン溝11b1が略鉛直方向(図4紙面垂直方向)に貫通形成されている。
【0089】
ピン溝11b1は、係合部材11bの張り出し方向(図4(a)上下方向及び図4(b)左右方向)に沿って延在する長穴で構成されるものであり、その長手方向寸法(図4(a)上下方向寸法及び図4(b)左右方向寸法)がピン部13bの外径寸法よりも大きく設定されている。
【0090】
当て板部材11cは、暴走防止部材11の底面に張り出し固定され、その張り出し寸法が略鉛直方向における暴走防止部材11と受台部材12との離間寸法よりも大きく設定されている。
【0091】
また、当て板部材11cは、暴走防止部材11が張出位置に位置する状態において、下側連結部材2dからの離間寸法が受台部材12の張り出し寸法と略同等に設定され、後述する緩衝部材12aと当接可能に構成されている。
【0092】
受台部材12は、図4に示すように、暴走防止部材11よりも下方に配置される板状部材であり、各下側連結部2dの互いに対向する側面から張り出し固定されている。また、受台部材12のフレーム2の走行方向一端側(図4右側)側面には緩衝部材12aが配設されている。
【0093】
緩衝部材12aは、受台部材12の張り出し方向先端側(図4下側)に配置される弾性部材であり、暴走防止部材11が張出位置に位置する状態で、当て板部材11cと当接可能に構成されている。
【0094】
暴走防止用シリンダ13は、図4に示すように、各下側連結部2dの互いに対向する側面から張り出す軸支部材13aに軸支される伸縮部材であり、フレーム2の進行方向(図4左右方向)に沿って伸縮可能に構成されている。また、暴走防止用シリンダ13の先端には、その上面及び下面にピン部13bが突設されている。
【0095】
ピン部13bは、ピン溝11b1と係合する略円柱状の部材であり、ピン溝11b1と係合しつつピン溝11b1に沿って摺動可能に構成されている。
【0096】
第1近接センサ14は、略鉛直方向における配置位置が暴走防止部材11の高さ寸法と略同等の高さ寸法に設定されている。更に、フレーム2の進行方向における配置位置が格納位置に位置する暴走防止部材11の先端と対応する位置に設定され、格納位置に位置する暴走防止部材11を検出可能に構成されている。
【0097】
第2近接センサ15は、投光部から照射された光を受光部で受光し、検出された光量変化から暴走防止部材11の有無を検出するための装置であり、当て板部材11cと対応する位置に配置されつつ受台部材12の上面に配設され、張出位置に位置する暴走防止部材11を検出可能に構成されている。
【0098】
次に、図3を参照してX線検査装置150について説明する。図3(a)は、X線検査前の車両100が配置されるX線検査装置150を模式的に示す上面図であり、図3(b)は、X線検査中の車両100が配置されるX線検査装置150を模式的に示す上面図であり、図3(c)は、X線検査後の車両100が配置されるX線検査装置150を模式的に示す上面図である。なお、図3では、車両100及びコンテナ101が2点鎖線で図示され、また、理解を容易とするために、遮蔽室160の天井に配設されるX線照射装置の図示が省略されている。
【0099】
図3(a)に示すように、X線検査装置150は、車両100及びコンテナ101のX線検査を行う装置であり、地面に敷設されるレール151と、そのレール151上を自走して車両100を搬送する1号機1A(搬送装置1)及び2号機1Bと、その2号機1Bに搬送される車両100にX線を照射するX線照射装置161と、そのX線照射装置161が配設されると共に区画形成される遮蔽室160と、レール151に並設される走行集電装置164とを主に備えて構成されている。
【0100】
なお、1号機1Aは、上述した搬送装置1と同様の装置であり、2号機1Bは、暴走防止部材11、受台部材12、暴走防止用シリンダ13、第1及び第2近接スイッチ14,15が配設されていない装置である。
【0101】
レール151は、1号機1A及び2号機1Bが自走するために地面に敷設される搬送路であり、その両端側(図3(a)左右側)には、当接部材42の高さ寸法よりも大きな高さ寸法を有するストッパ部材151a,151bが地面から立設されている。
【0102】
かかるストッパ部材151aは、1号機1Aの当接部材42と当接して1号機1Aの走行を規制し、ストッパ部材151bは、2号機1Bのフレーム2の走行方向他端側(図3(a)左側)と当接して2号機1Bの走行を規制する。
【0103】
また、後述する進入扉162及び退出扉163と対応する位置には、隙間寸法d2,d4を有する隙間がレール151上に形成され、進入扉162及び退出扉163が1号機1A及び2号機1Bの走行方向と直交する方向(図3(a)上下方向)にスライド可能に構成されている。
【0104】
更に、後述するX線照射装置161のX線照射方向(図3(a)下方向)延長線上には、隙間寸法d3を有する隙間がレール151上に形成され、X線検査時にレール151が投影されることを防止している。
【0105】
1号機1Aは、フレーム2の側面に配設される集電装置(図示せず)と走行集電装置164とが係合可能に構成されるものであり、走行集電装置164から供給される電気により第1位置と第2位置との間を往復移動する。
【0106】
なお、上記第1位置とは、1号機1Aの当接部材42とストッパ部材151aとが当接する位置が該当し、上記第2位置とは、1号機1Aのフレーム2の略中央がX線照射装置161のX線照射方向の延長線上に配置される位置が該当する。
【0107】
2号機1Bは、1号機1Aと同様に、フレーム2の側面に配設される集電装置(図示せず)と走行集電装置164とが係合可能に構成されるものであり、走行集電装置164から供給される電気により第2位置と第3位置との間を往復移動する。
【0108】
なお、上記第3位置とは、2号機1Bのフレーム2の走行方向他端側とストッパ部材151bとが当接する位置が該当する。
【0109】
X線照射装置161は、遮蔽室160の側壁及び天井に配置されつつX線を照射する装置であり、略水平方向(図3(a)上下方向)及び略鉛直方向(図3(a)紙面垂直方向)にX線が照射される。照射されたX線により、画像処理装置(図示せず)で画像処理される。
【0110】
遮蔽室160は、車両100の搬送経路の中央付近に配設されるものであり、車両100の進入側(図3(a)右側)及び退出側(図3(a)左側)に開閉可能な進入扉162及び退出扉163がそれぞれ配設され、それら進入扉162及び退出扉163が閉まることにより区画形成される。
【0111】
また、遮蔽室160内には、X線照射装置161、X線検出器等が配設されており、X線の照射時に進入扉162及び退出扉163が閉じられて、X線が外部に漏出することを防止している。
【0112】
走行集電装置164は、1号機1A及び2号機1Bに電気を供給し、搬送装置1と地上制御盤(図示せず)との信号変換を可能とするためのものであり、進入扉162及び退出扉163と対応する位置に隙間寸法d2,d4を有する隙間が形成され、進入扉162及び退出扉163が1号機1A及び2号機1Bの走行方向と直交する方向にスライド可能に構成されている。また、X線照射装置161のX線照射方向延長線上に隙間寸法d3を有する隙間が形成され、X線検査時に走行集電装置164が投影されることを防止している。
【0113】
なお、走行集電装置164と係合して電気を確保する集電装置は、フレーム2の側面に複数配設され、各集電装置のフレーム2の走行方向(図3(a)左右方向)における離間寸法が隙間寸法d2〜d4よりも大きく設定されている。これにより、一の集電装置が走行集電装置164の隙間に位置する場合でも、他の集電装置が走行集電装置164と係合して、電気を確保することができる。
【0114】
以上のように構成されたX線検査装置150において、図3(a)に示すように、X線検査が行われる車両100が搬入される前の状態では、1号機1Aは、第1位置に待機し、2号機1Bは、第3位置に待機している。
【0115】
かかる1号機1Aは、フォーク部材5を揺動させて前輪100aを挟持し、その前輪100aが挟持された状態でアーム部材4を上昇させて車両100を持ち上げる。そして、1号機1Aは、車両100を持ち上げた状態で第1位置から第2位置へ向けて走行し、車両100を第2位置へ搬送する。
【0116】
なお、1号機1Aは、第2近接センサ15(図4参照)が張出位置に位置する暴走防止部材11を検出した場合にのみ、第1位置から第2位置への走行が許容される。これにより、暴走防止部材11が格納位置に位置する状態で車両100を搬送し、車両100の暴走を防止できなくなることを防止している。
【0117】
次に、図3(b)に示すように、第2位置まで車両100を搬送した1号機1Aは、アーム部材4を下降させた後にフォーク部材5を揺動させ、車両100をX線照射装置161と進入扉162との間に配置する。
【0118】
なお、第1位置において張出位置に位置する暴走防止部材11は、第1位置から第2位置へ向かう往路中において地上制御盤からの1号機1Aの減速を検出した際に、格納位置へ向けて揺動される。
【0119】
即ち、1号機1Aが減速するまで少なくとも一定距離搬送された車両100は、そのギアがドライブに位置することにより、接地した後輪の回転によりエンジンが始動し、車両が暴走しないと判断できる。その結果、暴走防止部材11を張出位置に位置させて車両100の暴走を阻止することが不要となり、1号機1Aが第2位置へ着く前に暴走防止部材11を格納位置に格納することができる。
【0120】
その結果、第2位置において車両100を降ろした後に暴走防止部材11を格納位置へ向けて揺動させる場合と比較して、暴走防止部材11の格納に費やす時間を省略して、その分、搬送能率の向上を図ることができる。
【0121】
次に、車両100を降ろした1号機1Aは、第2位置から第1位置へ向けて走行する。なお、1号機1Aは、第1近接センサ14(図4参照)が格納位置に位置する暴走防止部材11を検出した場合にのみ、第2位置から第1位置への走行が許容される。
【0122】
これにより、1号機1Aが第2位置から第1位置へ向かう際に、張出位置に位置する暴走防止部材11と車両100とが衝突することを確実に防止して、車両100が損傷することを確実に防止している。
【0123】
また、第2位置において格納位置に位置する暴走防止部材11は、第2位置から第1位置へ向かう復路中において地上制御盤から1号機1Aの減速を検出した際に、張出位置へ向けて揺動される。
【0124】
これにより、第1位置において車両100を持ち上げた後に暴走防止部材を張出位置へ向けて揺動させる場合と比較して、暴走防止部材11の張り出しに費やす時間を省略して、その分、搬送能率の向上を図ることができる。
【0125】
一方、第3位置で待機した2号機1Bは、第2位置へ向けて走行する。なお、2号機1Bが遮蔽室160内に進入した後に進入扉162及び退出扉163が閉じられ、遮蔽室160内が閉塞される。
【0126】
第2位置に位置する2号機1Bは、フォーク部材5を揺動させて前輪100aを挟持し、その前輪100aが挟持された状態でアーム部材を上昇させて車両100を持ち上げる。そして、2号機1Bは、車両100を持ち上げた状態で第2位置から第3位置へ向けて等速走行し、X線照射装置161から照射されるX線を車両100及びコンテナ101に等間隔に照射させる。
【0127】
なお、上述したように、2号機1Bには、暴走防止部材11、受台部材12、暴走防止用シリンダ13、第1及び第2近接スイッチ14,15が配設されていない。これは、2号機1Bは、少なくとも1号機1Aが第2位置まで搬送した車両100を搬送し、その結果、1号機1Aが搬送した際に暴走しない車両100は、ギアがニュートラルに位置されており、2号機1Bが搬送する際に暴走するおそれがないからである。
【0128】
次に、図3(c)に示すように、車両100及びコンテナ101にX線が照射された後に、進入扉162及び退出扉163が開放され、遮蔽室160内に位置する2号機1Bは、第3位置へ向けて走行する。そして、アーム部材4を下降させた後に、フォーク部材5を揺動させて車両100を降ろし、車両100及びコンテナ101のX線検査を終了する。
【0129】
一方、第1位置で待機する1号機1Aは、次にX線検査を行う車両100の前輪100aを持ち上げた状態で待機している。そして、上述した検査工程を繰り返す。
【0130】
次に、図4を参照して暴走防止部材11の揺動動作について説明する。図4(a)は、格納位置に位置する暴走防止部材11の上面図であり、図4(b)は、張出位置に位置する暴走防止部材11の上面図である。なお、図4(b)の2点鎖線で囲まれた図は、図4(b)中の矢印IVb方向視における暴走防止部材11、受台部材12及び暴走防止用シリンダ13の部分拡大図である。また、図4では、下側連結部2dの一部のみが図示されている。
【0131】
まず、図4(a)を参照して、暴走防止部材11の格納動作について説明する。図4(a)に示すように、張出位置に位置する暴走防止部材11は、暴走防止用シリンダ13の伸長により、そのピン溝11b1の壁面がピン部13bに押出される。そして、ピン部13bに押出された暴走防止部材11は、反時計方向(図4(a)左回り方向)へ揺動されて、格納位置に格納される。
【0132】
このように、暴走防止部材11が格納位置に格納されることで、暴走防止部材11が車両100(図3参照)と衝突することなく車両100の走行を許容し、これにより、第2位置に位置する1号機1A(図3参照)は、第2位置に載置された車両100を移動させることなく、第2位置から第1位置へ向けて走行することができるので、車両100を移動させる場合と比較して、車両100の取り扱いを簡略化することができる。
【0133】
なお、暴走防止用シリンダ13は、その最大伸長時に暴走防止部材11を格納位置に格納させるように構成されており、暴走防止部材11が格納位置から下側連結部2d側(図4(a)上側)へ揺動して第1近接スイッチ14と衝突することを防止している。
【0134】
次に、図4(b)を参照して、暴走防止部材11の張出動作について説明する。図4(b)に示すように、格納位置に位置する暴走防止部材11は、暴走防止用シリンダ13の収縮により、そのピン溝11b1がピン部13bに牽引される。そして、ピン部13bに牽引された暴走防止部材11は、時計方向(図4(b)右回り方向)へ揺動されて、張出位置に位置される。
【0135】
ここで、上述したように、暴走防止部材11の長手方向寸法は、張出位置に位置する暴走防止部材11同士の離間寸法d1(図2参照)が車両100(図2参照)の幅寸法よりも小さくなるように設定されているので、張出位置に位置する暴走防止部材11が車両100の通過経路と重なる。
【0136】
即ち、前輪100aが持ち上げられた車両100の搬送時において、接地した後輪の回転によりエンジンが始動し、車両100が暴走した場合に、張出位置に位置する暴走防止部材11が暴走した車両100と衝突することで車両100の走行を規制し、車両100の暴走を防止できる。
【0137】
更に、車両100の暴走を防止することができるので、暴走した車両100がX線検査装置150(図3参照)や2号機1B(図3参照)に衝突する事故を防止できる。
【0138】
また、受台部材12は、図4(b)に示すように、暴走防止部材11のフレーム2の走行方向他端側(図4(b)左側)に配置され、暴走防止部材11が張出位置から時計方向へ揺動することを規制している。これにより、暴走した車両100が暴走防止部材11に衝突した場合に、その暴走防止部材11が時計方向へ揺動して、暴走用シリンダ13に荷重がかかることを防止できる。その結果、暴走用シリンダ13が損傷することを防止できる。
【0139】
また、受台部材12が暴走防止部材11の時計方向への揺動動作を規制するので、暴走した車両100が衝突した際の荷重が受台部材12により分担され、その分、暴走防止用シリンダ13が暴走防止部材11を張出位置に保持するために必要な駆動力を小さくすることができる。
【0140】
また、図4(b)に示すように、受台部材12のフレーム2の走行方向一端側(図4(b)右側)の側面に緩衝部材12aが配設され、その緩衝部材12aが暴走防止部材11と受台部材12との間に介在する。これにより、暴走した車両100が暴走防止部材11に衝突した際に、緩衝部材12aが弾性変形して衝突時の衝撃を吸収し、暴走防止部材11及び受台部材12が損傷することを防止できる。
【0141】
また、図4(b)に示すように、ピン溝11b1がフレーム2の走行方向(図4(b)左右方向)に沿う長穴で構成され、かつ、ピン部13bとピン溝11b1のフレーム2の走行方向一端側の壁面との間に隙間が形成されている。
【0142】
これにより、暴走した車両100が暴走防止部材11に衝突した場合に、その暴走防止部材11が受台部材12により時計方向への揺動を規制されつつ暴走防止部材11に対してフレーム2の走行方向他端側(図4(b)左側)へ相対移動する。その結果、暴走防止用シリンダ13に衝突時の荷重がかかることを防止して、暴走防止用シリンダ13が損傷することを防止できる。
【0143】
また、上述したように、暴走防止部材11の高さ寸法h1は、アーム部材4が下降した状態におけるフォーク部材5の底面から570mmに設定されている(図2(a)参照)。
【0144】
ここで、一般的な車両、特にトラックでは、保護装置であるバンパの少なくとも一部分が400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内の高さに設定されている。その結果、暴走防止部材11の高さ寸法h1を570mmに設定することで、暴走防止部材11が車両100のバンパ100b(図2(a)参照)と衝突するので、衝突時の車両100の損傷を抑制できる。
【0145】
なお、本実施の形態における暴走防止部材11は、その高さ寸法h1が570mmに設定されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内で種々に変更可能である。
【0146】
また、第1及び第2近接センサ14,15は、暴走防止部材11の揺動動作から暴走防止部材11が張出位置又は格納位置に位置することを検出するように構成されている。
【0147】
ここで、暴走防止用シリンダ13の伸縮動作から暴走防止部材11が張出位置又は格納位置に位置することを検出する場合では、暴走防止部材11と暴走防止用シリンダ13との接続不良を起こしている場合に、暴走防止部材11の位置を検出することができず、暴走防止部材11が張出位置に位置した状態でフレーム2が走行して暴走防止部材11と車両100が衝突して車両100が損傷したり、暴走防止部材11が格納位置に位置する状態で車両100を搬送して車両100の暴走を阻止できない危険性がある。
【0148】
これに対し、暴走防止部材11の揺動動作から暴走防止部材11が張出位置又は格納位置に位置することを検出することで、車両100の損傷や暴走を確実に防止することができる。
【0149】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0150】
例えば、本実施の形態では、暴走防止部材11、受台部材12及び暴走防止用シリンダ13は、フレーム2の走行方向他端側に配置されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、フレーム2の走行方向一端側に配置してもよい。これにより、暴走防止部材11、受台部材12及び暴走防止用シリンダ13とアーム部材4に持ち上げられた車両100との離間寸法を小さくして、暴走防止部材11が暴走した車両100を即座に阻止することができる。
【0151】
また、本実施の形態では、第1位置から第2位置へ向かう往路中又は第2位置から第1位置へ向かう復路中において、暴走防止部材11は、減速センサ22cが1号機1Aの減速を検出した後に揺動されるように構成されているが、例えば、搬送経路上の所定位置にセンサを配設し、そのセンサが1号機1Aの通過を検出した後に暴走防止部材11を揺動させるように構成してもよい。また、1号機1Aが第1位置又は第2位置から出発して所定時間経過した後に暴走防止部材11を揺動させるように構成してもよい。
【0152】
また、本実施の形態では、1号機1Aは、第2近接センサ15が暴走防止部材11が張出位置に位置することを検出した場合にのみ、第1位置から第2位置への走行が許容され、また、第1近接センサ14が暴走防止部材11が格納位置に位置することを検出した場合にのみ、第2位置から第1位置への走行が許容されている。
【0153】
しかしながら、1号機1Aは、第2近接センサ15が暴走防止部材11を検出し、かつ、第1近接センサ14が暴走防止部材11を検出しなかった場合にのみ、第1位置から第2位置への走行が許容され、また、第1近接センサ14が暴走防止部材11を検出し、かつ、第2近接センサ15が暴走防止部材11を検出しなかった場合にのみ、第2位置から第1位置への走行が許容されるように構成しても良い。
【0154】
これにより、暴走防止部材11が張出位置と格納位置との間に位置する場合に、第1及び第2近接センサ14,15が暴走防止部材11を検出して、1号機1Aの走行が許容されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第1実施の形態における搬送装置の側面図である。
【図2】(a)は、搬送装置の正面図であり、(b)は、搬送装置の上面図である。
【図3】(a)は、X線検査前の車両が配置されるX線検査装置を模式的に示す上面図であり、(b)は、X線検査中の車両が配置されるX線検査装置を模式的に示す上面図であり、(c)は、X線検査後の車両が配置されるX線検査装置を模式的に示す上面図である。
【図4】(a)は、格納位置に位置する暴走防止部材の上面図であり、(b)は、張出位置に位置する暴走防止部材の上面図である。
【符号の説明】
【0156】
1 搬送装置
1A 1号機(搬送装置)
2 フレーム
4 アーム部材(保持装置の一部)
5 フォーク部材(保持装置の一部)
11 暴走防止部材
11b1 ピン溝
12 受台部材
12a 緩衝部材
13 暴走防止用シリンダ(揺動駆動装置)
13b ピン部
22 走行モータ(走行駆動装置)
100 車両
100a 前輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、前記フレームを走行させる走行駆動装置と、前記フレームに昇降可能に配設される保持装置とを備え、前記保持装置で車両の前輪を保持しつつ前記保持装置を上昇させると共に前記走行駆動装置により前記フレームを走行させて前記車両を前記前輪が持ち上げられた状態で搬送する搬送装置において、
前記保持装置よりも前記車両の進入方向前方側に配置されると共に、前記フレームから張り出す張出位置と前記フレーム側に格納される格納位置との間で揺動可能に前記フレームに軸支される暴走防止部材と、
前記暴走防止部材に駆動力を付与して前記暴走防止部材を前記張出位置と前記格納位置との間で揺動させる揺動駆動装置とを備え、
前記揺動駆動装置により前記暴走防止部材を前記張出位置に位置させ前記車両の走行を規制すると共に、前記揺動駆動装置により前記暴走防止部材を前記格納位置に位置させ前記車両の走行を許容するように構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記張出位置に位置する前記暴走防止部材が前記車両の進入方向前方側へ揺動することを規制する受台部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記張出位置に位置する前記暴走防止部材と前記受台部材との間に介設され弾性材料から構成される緩衝部材を備えていることを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記暴走防止部材又は前記揺動駆動装置の一方に突設されるピン部と、前記ピン部と係合するために前記暴走防止部材又は前記揺動駆動装置の他方に形成されるピン溝とを備え、
前記揺動駆動装置は、伸縮式のアクチュエータとして構成され、
前記ピン溝は、前記暴走防止部材を前記揺動駆動装置に対して前記車両の進入方向前方へ相対移動させるために前記ピン部が動く隙間を有して構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記暴走防止部材の鉛直方向における配置位置は、前記保持装置の最下点から少なくとも400mm以上、かつ、600mm以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−331853(P2007−331853A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162718(P2006−162718)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】