説明

搬送装置

【課題】 異音の発生を防止しつつ、メンテナンス(整備)性を向上させる。
【解決手段】 固定ボックス9を介してフレーム3の外側から弾性材料製の支持部材7をフレーム3に組み付ける。これにより、内側から転がり軸受がフレームに挿入装着された場合に比べて、固定ボックス9、つまり支持部材7を容易に搬送装置1から取り外すことができる。したがって、搬送装置1全体を分解することなく、異音の発生を防止するための支持部材7を容易に取り外すことができるので、搬送装置1の異音発生を防止しつつ、整備性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のフレーム間を架け渡すように設けられた回転可能なローラを有する搬送装置に関するものであり、特に、車両部品の搬送又は組立ラインに適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の搬送装置では、転がり軸受(JIS B 1511等参照)を介してローラのシャフトがフレームに対して回転可能に固定されている。
そして、転がり軸受とフレームとの間で異音が発生することを防止しつつ、転がり軸受の寿命を向上させることを目的として、転がり軸受の内輪にシャフトが圧入され、外輪の外周面とフレームとの間にゴム製の防振部材が配設されている。
【特許文献1】特開平11−165834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の発明では、転がり軸受をフレームの内側の面、つまり一対のフレームのうち互いに対向する対向面側からフレームに挿入装着しているので、転がり軸受を交換する際には、交換対象の転がり軸受が装着されているフレームをローラから離間させるように搬送装置から取り外す必要がある。
【0004】
このため、特許文献1に記載に発明では、特定の転がり軸受を取り外すために、実質的に搬送装置全体を分解する必要があり、メンテナンス(整備)性が著しく低いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、異音の発生を防止しつつ、メンテナンス(整備)性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、ワークを搬送するための搬送装置であって、所定間隔を有して対向するとともに、ワークの搬送方向に延びる一対のフレーム(3)と、一対のフレーム(3)間を架け渡すように設けられた回転可能なローラ(5)と、一対のフレーム(3)のうち互いに対向する対向面(3A)と反対側(3B)に配設され、ローラ(5)をその長手方向両端側で支持する弾性材料からなる支持部材(7)と、支持部材(7)を覆うようにして支持部材(7)を収納するとともに、前記反対側(3B)からフレーム(3)に着脱可能に固定された固定ボックス(9)とを備え、支持部材(7)は、固定ボックス(9)を介してフレーム(3)に組み付け固定されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、請求項1に記載の発明では、フレーム(3)の反対側、つまりフレーム(3)の外側から支持部材(7)が固定ボックス(9)を介してフレーム(3)に組み付けられた構成となるので、内側から転がり軸受がフレームに挿入装着された特許文献1に記載の発明に比べて、固定ボックス(9)、つまり支持部材(7)を容易に搬送装置から取り外すことができる。
【0008】
したがって、搬送装置全体を分解することなく、異音の発生を防止するための支持部材(7)を容易に取り外すことができるので、搬送装置の異音発生を防止しつつ、メンテナンス(整備)性を向上させることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、ローラ(5)は、長手方向両端側が支持部材(7)に支持されたシャフト(5B)、及びシャフト(5B)に回転可能に支持された円筒状のローラ本体(5A)を有して構成されていることを特徴とする。
【0010】
これにより、請求項2に記載の発明では、フレーム(3)に組み付けられた支持部材(7)は、主に異音の発生を防止し、ローラ(5)を回転可能とするための構成は、ローラ(5)自体が有することとなる。
【0011】
これに対して、特許文献1に記載の発明では、転がり軸受の外輪とフレームとの間に配設された防振部材により異音発生を防止する構成としているので、ローラを回転可能となるための構成と異音発生を防止するための構成とが実質的に一体化されている構成となる。
【0012】
このため、特許文献1に記載の発明では、ローラの回転機能に損傷が発生した場合、及び防振部材に損傷が発生した場合のいずれの場合おいても、搬送装置全体を分解してメンテナンス(整備)を行う必要がある。
【0013】
つまり、特許文献1に記載の発明では、搬送装置を整備する際には、常に、搬送装置全体を分解する必要があるのに対して、請求項2に記載の発明では、異音防止機能を発揮する構成部分とローラ(5)を回転可能とするための構成部分とが分離しているので、整備を必要とする機能部分のみ独立して整備することができ、搬送装置の整備性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、シャフト(5B)の長手方向両端部は、支持部材(7)に形成された穴部(7A)に挿入されており、さらに、シャフト(5B)と穴部(7A)の内周面との接触部で発生する回転抵抗は、シャフト(5B)に対するローラ本体(5A)の回転抵抗より大きいことを特徴とする。
【0015】
これにより、請求項3に記載の発明では、ローラ本体(5A)が回転する際に、シャフト(5B)が支持部材(7)に対して回転してしまうことを抑制できるので、シャフト(5B)と支持部材(7)との接触部において、弾性部材製の支持部材(7)が早期に摩耗してしまうことを防止できる。
【0016】
したがって、支持部材(7)の耐久性(寿命)が低下することを防止できるので、搬送装置のランニングコスト(維持管理費用)の増加を抑制することができる。
また、請求項4に記載の発明では、ローラ本体(5A)は、円筒状に形成された樹脂製であり、さらに、ローラ本体(5A)は、シャフト(5B)の外周面がローラ本体(5A)の内周面に摺動可能に接触することにより、シャフト(5B)に対して回転可能であることを特徴とする。
【0017】
これにより、請求項4に記載の発明では、ローラ本体(5A)それ自体が滑り軸受として機能するので、転がり軸受を用いた軸受に比べて、高荷重に耐えることができ、搬送装置の耐久性を向上させることができる。
【0018】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態は、本発明に係る搬送装置を、車両部品の搬送又は組立ラインに適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.図面の説明
図1は、本実施形態に係る搬送装置1の斜視図であり、図2は図1のA矢視図であり、図3は図2において、固定ボックス9を取り外した状態を示す図であり、図4は図3において、支持部材7を取り外した状態を示す図であり、図5は搬送装置1の断面図であり、図6は搬送装置の分解斜視図である。
【0020】
2.搬送装置の構造
搬送装置1は、図1に示すように、一対のフレーム3、及びこれらフレーム3間を架け渡すように設けられた複数本の回転可能なローラ5等から構成されたものであり、一対のフレーム3は、所定間隔を有して対向するとともに、ワークの搬送方向に平行に延びるL字状断面(図5参照)で構成された鋼材である。
【0021】
また、ローラ5は、図5に示すように、円筒状のローラ本体5A及びローラ本体5Aに内周面に摺動(摺接)可能に貫通挿入されたシャフト5B等を有して構成されており、本実施形態では、ローラ本体5Aは、超高分子量ポリエチレン等の耐摩耗性に優れ、かつ、摩擦係数の小さい樹脂材であり、シャフト5Bは、構造用炭素鋼等の金属製である。このため、ローラ本体5Aそれ自体が滑り軸受として機能するため、ローラ本体5Aが容易にシャフト5Bに対して回転することができる。
【0022】
また、一対のフレーム3のうち互いに対向する対向面3A(以下、フレーム3の内側という。)と反対側3B(以下、フレーム3の外側という。)には、シャフト5Bの長手方向両端を支持する弾性材料(本実施形態では、ウレタンゴム、合成ゴム又はシリコンゴム)からなる支持部材7が配設されており、この支持部材7は、固定ボックス9を介してフレーム3に組み付け固定されている。
【0023】
すなわち、固定ボックス9は、図2及び図6に示すように、支持部材7をフレーム3の外側から覆う箱状の収納部9A、及び固定ボックス9をフレーム3の外側に固定するためのフランジ部9Bを有して形成されている。
【0024】
因みに、固定ボックス9は、冷間圧延鋼板等の金属板材にプレス加工を施すことにより成型されたものであり、支持部材7は、削り加工又は型成形に形成されたものである。
そして、フランジ部9Bに設けられたボルト穴9C(図6参照)には、六角穴付きボルト9D(図2参照)等の機械的締結手段が挿入されているとともに、このボルト9Dがフレーム3に形成された雌ねじ部9E(図6参照)に螺合することより、固定ボックス9がフレーム3の外側に着脱可能に固定されている。

また、支持部材7には、図5に示すように、シャフト5Bの長手方向端部が挿入される挿入穴7Aが設けられており、この挿入穴7Aは、支持部材7が貫通する貫通穴ではなく、収納部9A側が閉塞された止まり穴となっている。このため、シャフト5Bは、支持部材7により、弾性的に支持されながら軸方向に変位することが防止される。
【0025】
そして、シャフト5Bと挿入穴7Aの内周面との接触部で発生する回転抵抗が、シャフト5Bに対するローラ本体5Aの回転抵抗より大きくなるように、挿入穴7Aの内径寸法及びローラ本体5Aの内径寸法が設定されている。
【0026】
具体的には、支持部材7を取り外した状態における挿入穴7Aの内径寸法は、シャフト5Bの外径寸法と同一寸法、又は僅かに小さい寸法となるように設定されているのに対して、ローラ本体5Aの内径寸法は、シャフト5Bの外径寸法より大きい寸法に設定されている。
【0027】
因みに、挿入穴7Aの内径寸法は、搬送装置1の使用に伴う経年変化により次第に大きくなるが、少なくとも、搬送装置1の製造時においては上記の寸法関係を満たしている。
そして、経年変化により、挿入穴7Aの内径寸法がシャフト5Bの外径寸法より大きくなったときには、防振効果が著しく低下していると想定されるため、このような状況となったときには、支持部材7を交換することが望ましい。
【0028】
また、フレーム3に設けられたシャフト5Bが貫通する貫通穴3Cの内径寸法は、図4に示すように、経年変化により挿入穴7Aの内径寸法が拡大した場合であっても、シャフト5Bと貫通穴3Cとが干渉することがないように、シャフト5Bの外径寸法に対して十分大きい寸法に設定されている。
【0029】
そして、本実施形態では、図3に示すように、支持部材7のうち荷重を受ける側の厚み寸法H1をこれと反対側の厚み寸法H2より大きくしている。つまり、挿入穴7Aの下側縁部から支持部材7の下端部までの寸法H1を、挿入穴7Aの上側縁部から支持部材7の上端部までの寸法H2に比べて大きくしている。
【0030】
3.本実施形態に係る搬送装置の特徴
本実施形態では、前述したように、フレーム3の外側から支持部材7が固定ボックス9を介してフレーム3に組み付けられているので、内側から転がり軸受がフレームに挿入装着された特許文献1に記載の発明に比べて、固定ボックス9、つまり支持部材7を容易に搬送装置1から取り外すことができる。
【0031】
したがって、搬送装置1全体を分解することなく、異音発生を防止するための支持部材7を容易に取り外すことができるので、搬送装置1の異音発生を防止しつつ、メンテナンス(整備)性を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ローラ5は、長手方向両端側が支持部材7に支持されたシャフト5B、及びシャフト5Bに回転可能に支持されたローラ本体5Aを有して構成されているので、フレーム3に組み付けられた支持部材7は、主に異音の発生を防止し、ローラ5を回転可能とするための構成は、ローラ5自体が有することとなる。
【0033】
これに対して、特許文献1に記載の発明では、転がり軸受の外輪とフレームとの間に配設された防振部材により異音発生を防止する構成としているので、ローラを回転可能となるための構成と異音発生を防止するための構成とが実質的に一体化されている構成となっている。
【0034】
このため、特許文献1に記載の発明では、ローラの回転機能に損傷が発生した場合、及び防振部材に損傷が発生した場合のいずれの場合おいても、搬送装置1全体を分解してメンテナンス(整備)を行う必要がある。
【0035】
つまり、特許文献1に記載の発明では、搬送装置を整備する際には、常に、搬送装置全体を分解する必要があるのに対して、本実施形態では、異音防止機能を発揮する構成部分とローラ5を回転可能とするための構成部分とが分離しているので、整備を必要とする機能部分のみ独立して整備することができ、搬送装置1の整備性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、シャフト5Bと挿入穴7Aの内周面との接触部で発生する回転抵抗は、シャフト5Bに対するローラ本体5Aの回転抵抗より大きくなるように設定されているので、ローラ本体5Aが回転する際に、シャフト5Bが支持部材7に対して回転することを抑制できる。
【0037】
このため、シャフト5Bと支持部材7との接触部において、弾性部材製の支持部材7が早期に摩耗してしまうことを防止できるので、支持部材7の耐久性(寿命)が低下することを防止でき、搬送装置1のランニングコスト(維持管理費用)の増加を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、ローラ本体5Aを樹脂製とするとともに、シャフト5Bの外周面がローラ本体5Aの内周面に摺動可能に接触することにより、ローラ本体5Aをシャフト5Bに対して回転可能としているので、本実施形態では、ローラ本体5Aそれ自体が滑り軸受として機能する。したがって、転がり軸受を用いた軸受に比べて、高荷重に耐えることができるので、搬送装置1の耐久性を向上させることができる。
【0039】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、シャフト5Bの外周面をローラ本体5Aの内周面に摺動可能に接触させてローラ本体5Aを回転可能としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、転がり軸受を介してローラ本体5Aを回転可能としてもよい。
【0040】
また、上述の実施形態では、支持部材7の挿入穴7Aを止まり穴とするに当たり、削り加工又は型成形により支持部材7を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、挿入穴7Aを構成する貫通穴が形成された部材と、この貫通穴を閉塞する板状の部材との2部品で支持部材7を構成してもよい。
【0041】
また、上述の実施形態では、シャフト5Bと挿入穴7Aの内周面との接触部で発生する回転抵抗は、シャフト5Bに対するローラ本体5Aの回転抵抗より大きくなるように設定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送装置1の斜視図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2において、固定ボックス9を取り外した状態を示す図である。
【図4】図3において、支持部材7を取り外した状態を示す図である。
【図5】搬送装置1の断面図である。
【図6】搬送装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1…搬送装置、3…フレーム、3C…貫通穴、5…ローラ、5A…ローラ本体、
5B…シャフト、7…支持部材、7A…挿入穴、9…固定ボックス、9A…収納部、
9B…フランジ部、9C…ボルト穴、9D…ボルト、9E…雌ねじ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送するための搬送装置であって、
所定間隔を有して対向するとともに、ワークの搬送方向に延びる一対のフレームと、
前記一対のフレーム間を架け渡すように設けられた回転可能なローラと、
前記一対のフレームのうち互いに対向する対向面と反対側に配設され、前記ローラをその長手方向両端側で支持する弾性材料からなる支持部材と、
前記支持部材を覆うようにして前記支持部材を収納するとともに、前記反対側から前記フレームに着脱可能に固定された固定ボックスとを備え、
前記支持部材は、前記固定ボックスを介して前記フレームに組み付け固定されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ローラは、長手方向両端側が前記支持部材に支持されたシャフト、及び前記シャフトに回転可能に支持された円筒状のローラ本体を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記シャフトの長手方向両端部は、前記支持部材に形成された穴部に挿入されており、
さらに、前記シャフトと前記穴部の内周面との接触部で発生する回転抵抗は、前記シャフトに対する前記ローラ本体の回転抵抗より大きいことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記ローラ本体は、円筒状に形成された樹脂製であり、
さらに、前記ローラ本体は、前記シャフトの外周面が前記ローラ本体の内周面に摺動可能に接触することにより、前記シャフトに対して回転可能であることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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