説明

搬送装置

【課題】ベルト式の搬送装置において、長期間使用せずに放置してもベルトに有害な変形が生じず、使用時にベルトの変形等に起因する有害な振動等が生じないようにする。
【解決手段】搬送装置1は、駆動ローラ3及び従動ローラ6にベルト10を掛け回したもので、ソレノイド9で従動ローラを押した状態ではローラ間隔が伸びてベルトに張力が生じて搬送可能となる。ソレノイドをOFFにすると従動ローラが戻ってローラ間隔が伸び、ベルトの張力が下がるので、停止中にローラに巻き付いたベルトが変形しない。次に駆動する時にベルトが振動、蛇行、バタツキを起こすことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラにベルトを掛け回したベルト式の搬送装置であって、ローラを駆動してベルトをまわすことによりベルト上の物品を搬送する搬送装置に係り、特に長時間放置した場合にもベルトに変形が生じないようにした搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、金属検出機に設けられるベルトコンベアのテンション調整を行う際に、金属検出を行う検出ヘッド等の検出に影響を与えることなく、容易にテンション調整を行うことを目的としたコンベアテンション装置の発明が開示されている。この発明によれば、コンベア31には平行にノブ付ボルト2が設けられ、このノブ付ボルト2は回転自在で移動棒3に螺合しているとともに、移動棒3は従動ローラ36の固定軸36aに接しており、ノブ付ボルト2を回転させて固定軸36aを平行移動させることにより、コンベアのベルトのテンションを可変することができる。
【0003】
下記特許文献2には、比較的安価且つ安全に煮沸による洗浄・殺菌を実施できるようにしたコンベアに関するものである。このコンベアは、耐熱性及び耐水圧性を有した固形の潤滑部材を有した軸受42,43 を介して支持される駆動・従動ローラ11A,11B の間に、耐熱性及び耐湿性を有た無端状のベルト12を張設した基本構造を備えている。そして、さらに、従動ローラ11B を駆動ローラ11A に接離する方向に拡縮する弾性力を以て支持してベルト12の張力を受ける圧縮コイルばね39を有する支持手段36を備えている。搬送ユニット3を煮沸した際、ベルト12に収縮があっても、支持手段36を介して従動ローラ11B が駆動ローラ11A 側に近接してベルト12の収縮を受け流すことができる。そして、ベルトの張力が大きく異なった場合には、支持手段36の調整ねじ38によって支持手段の押圧力を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2540905号公報
【特許文献2】特開平11−334833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1、2は、いずれもベルトコンベアにおけるベルトの張力の調整をボルトの回動によって行ない、ベルトの張力を調整して一定の値に固定しておくものであるため、当該ベルトコンベアを長期間使用しないで放置しておいた場合には、ベルトのローラに巻かれた部分には同じ向きの力が加わり続けることとなり、その結果ベルトの当該部分はローラになじんでくせがつき、ローラの形状に合致したのび、変形が生じてしまうことがあった。ベルトに変形が一旦生じると再度駆動しても元に戻ることはなく、ベルトが変形したベルトコンベアを駆動すれば、ベルトの変形部分が周期的に巡ってくるために一定周期で振動が発生してしまう。
【0006】
また、ベルトに所定の張力を与えた状態でベルトコンベアを駆動し続けると、ベルトが伸びてしまい、この伸びによってベルトの張力が低下し、駆動中にベルトが幅方向に不測の動きを示す蛇行が発生したり、ベルト面に垂直な方向にベルトが往復動作するバタツキが発生することがある。
【0007】
このようなベルトコンベアにおける振動、蛇行、バタツキは、搬送速度を不安定化し、搬送されている物品を傾けたり、転倒させたり、向きを替えさせたり、設定した物品ピッチを変動させたり、搬送に対する種々の悪影響を招来するので、物品を搬送する産業上の目的にとっては一般的に好ましくない。
【0008】
例えば、ベルトコンベアに秤量装置を設け、ベルトコンベアで物品を搬送しながら秤量装置で当該物品の重量値を測定する秤量装置においては、ベルトコンベアにおける物品の搬送が安定化しなければ、重量値の測定にも高い精度が望めない。
【0009】
また前記特許文献1、2は、いずれもベルトコンベアにおけるベルトの張力の調整をボルトの回動によって行なうものであるため、その張力の調整の程度は作業者によって異なり、必ずしも一定にはできない場合が多い。ベルトの張力が不足すると、駆動時に前述した蛇行やバタツキが発生するという問題があり、逆にベルトに張力をかけすぎると、ローラやローラを支持するベアリングの摩耗が早まるという問題がある。そしてローラやベアリングが摩耗すると、ローラの残留アンバランスが大きくなり、ベルトコンベアを駆動する場合に表れる不定周期の振動が大きくなってしまう。このベルトコンベアが上述した秤量装置の搬送手段として使用される場合には、上述したベルトの変形に起因した周期的な振動の問題と合せて、この点においても測定値の精度に問題が生じることとなる。
【0010】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、ローラにベルトを巻装してなるベルト式の搬送装置において、長期間使用せずに放置しておいてもベルトに有害な変形が生じず、使用時にベルトの変形等に起因する有害な振動等が生じないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された搬送装置1,20,30,40,50,60は、
少なくとも一部が駆動される複数のローラ3,6と前記ローラ3,6に掛け回されるベルト10を備え、ローラ3,6の駆動によってベルト10をまわすことによりベルト10上にある物品を搬送する搬送装置1,20,30,40,50,60において、
駆動する場合には、前記ベルト10に相対的に大きいテンションが加わるような位置に少なくとも一部の前記ローラ3,6を移動させるとともに、駆動しない場合には、前記ベルト10に相対的に小さいテンションが加わるような位置に少なくとも一部の前記ローラ3,6を移動させるように制御されるアクチュエータ9,21を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された搬送装置1,30,40,50,60は、請求項1記載の搬送装置において、
前記アクチュエータが、前記ローラを移動させるソレノイド9であることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された搬送装置20,30,40,50,60は、請求項1記載の搬送装置において、
前記アクチュエータが、前記ローラを移動させるステップモータ21であることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載された搬送装置1,20,30,40,50,60は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の搬送装置において、
前記搬送装置に取り付けられて前記搬送装置によって搬送される物品の重量値を計測する秤量装置を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載された搬送装置1,20,30,40,50,60は、請求項4に記載の搬送装置において、
前記秤量装置から得られる重量値が許容範囲内に収まるように前記ベルト10に加わるテンションを調整するために、前記アクチュエータ9,21による前記ローラ3,6の移動量が調整されることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載された搬送装置1,20,30,40,50,60は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の搬送装置において、
前記ローラ3,6を移動させる前記アクチュエータ9,21が、前記ローラ3,6の両端をそれぞれ移動させる一対のアクチュエータ9,21を含んでおり、
前記ベルト10の移動方向と直交する幅方向の両端縁を検出する一対のセンサ12を備え、
一対の前記センサ12による前記ベルト10の両端縁の検出状況に応じて一対の前記アクチュエータ9,21を制御することにより、前記ベルト10の前記幅方向への移動を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された搬送装置によれば、駆動時には、ローラを移動してベルトに相対的に高いテンションを加えるので、ベルトはローラにしっかりと巻き掛けられて振動、蛇行、バタツキを起こすことなく安定した状態で駆動されるので、安定した物品の搬送を行なうことができる。非駆動時には、ローラを戻してベルトに加わるテンションを相対的に低くするので、長期間放置してもベルトにはローラの形状になじんだ変形が生じることはなく、次に駆動する場合にベルトが振動、蛇行、バタツキを起こすことはない。
【0018】
請求項2に記載された搬送装置によれば、請求項1記載の搬送装置による効果を、前記アクチュエータとしてのソレノイドで前記ローラを移動させることによって実現することができる。
【0019】
請求項3に記載された搬送装置によれば、請求項1記載の搬送装置による効果を、前記アクチュエータとしてのステップモータで前記ローラを移動させることによって実現することができる。
【0020】
請求項4に記載された搬送装置によれば、請求項1乃至3の何れか一つに記載の搬送装置による効果を、搬送装置に秤量装置を取り付けて搬送装置で搬送される物品の重量値を計測する計量装置における効果として実現することができる。すなわち搬送装置のベルトが振動、蛇行、バタツキを起こさず、物品を安定して搬送することができるので、計量装置の計量精度が向上する。
【0021】
請求項5に記載された搬送装置によれば、請求項4に記載の搬送装置における効果において、アクチュエータによるローラの移動量を調整することにより、物品を搬送しない状態で搬送装置を駆動している場合に、作動中の秤量装置から得られる重量値の振動が許容範囲内に収まるように、ベルトに加わるテンションを調整することができる。従って、前記計量装置において、搬送装置の振動を重量値の測定に影響を及ぼさない程度に設定することができるので、計量装置の計量精度の向上を確実なものとすることができる。
【0022】
請求項6に記載された搬送装置によれば、請求項1乃至5の何れか一つに記載の搬送装置によつ効果において、一対のセンサによってベルトの両端縁を検出し、その結果に応じてローラの両端をそれぞれ移動させる一対のアクチュエータを制御するので、ベルトがローラの幅方向に移動する蛇行の防止乃至修正を容易に自動的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は第1実施形態に係る搬送装置のテンションがかかっている状態における平面図、(b)は同正面図である。
【図2】(a)は第1実施形態に係る搬送装置のテンションがかかっていない状態における平面図、(b)は同正面図である。
【図3】第1実施形態の搬送装置を有する計量装置において、物品を搬送していない状態で搬送装置を作動させている場合に、作動している秤量手段から出力される重量値の振動状態を示すグラフを表した図である。
【図4】図3で示した重量値の振動状態を示すグラフに、重量測定に影響を与えない振動の幅として設定した上下限範囲を一例として重ねて示した図である。
【図5】(a)は第2実施形態に係る搬送装置のテンションがかかっている状態における平面図、(b)は同正面図である。
【図6】(a)は第2実施形態に係る搬送装置のテンションがかかっていない状態における平面図、(b)は同正面図である。
【図7】本発明の実施形態におけるローラ配置のバリエーションを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態(図1〜図4)
(1)搬送装置
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る搬送装置1は、装置1の基体として略箱型のフレーム2を備えている。フレーム2の長手方向の一端部の所定位置には、フレーム2の短手方向と平行に、駆動ローラ3が回動自在となるように取り付けられている。フレーム2の一端部の下方には駆動モータ4が設置されており、この駆動モータ4の出力軸と駆動ローラ3の回動軸の一端が駆動ベルト5によって連動連結されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、フレーム2の他端部には、駆動ローラ3に平行となるように、従動ローラ6が回動可能に取り付けられている。ここで従動ローラ6が取り付けられたフレーム2の他端部の両側面には、水平方向に沿って所定長さの移動溝7が形成されており、従動ローラ6の回動軸8の両端が両移動溝7にそれぞれ摺動可能に係合している。このため従動ローラ6は、駆動ローラ3と平行を保ちつつ、かつ回転可能な状態のままでフレーム2に対して水平方向に移動溝7の長さ分だけ移動することができる。
【0026】
図1は、従動ローラ6と駆動ローラ3の間隔(以下、単にローラ間隔とも称する)が最大である状態を示しており、この時の従動ローラ6の位置を駆動位置と呼ぶ。後述するが、従動ローラ6が駆動位置にある時、ベルト10にテンションがかかり、搬送装置1は回動が可能な駆動状態となる。また図2は、ローラ間隔が最小である状態を示しており、この時の従動ローラ6の位置を停止位置と呼ぶ。後述するが、従動ローラ6が停止位置にある時、ベルト10にはテンションがかからず、搬送装置1は駆動できない停止状態となる。
【0027】
図1に示すように、フレーム2の他端部の内部には、従動ローラ6の回動軸8の両端部の近傍にソレノイド9がそれぞれ配置されている。ソレノイド9は、従動ローラ6を移動溝7に沿って移動させることにより、ベルト10のテンションを調整する手段としてのアクチュエータである。各ソレノイド9の棒状の作動部は、従動ローラ6の回動軸8の対応する各端部を押圧できるようになっており、ソレノイド9に電流を与えることにより回動軸8を軸線と直交する方向に押すことができる。ソレノイド9の作動部のストロークは一定であるが、与える電流値を変えることにより従動ローラ6の回動軸8を押す力を調整することができる。このソレノイド9を作動させれば、ローラ間隔が最小である図2の停止位置から同最大である図1の駆動位置まで、従動ローラ6を移動させることができる。ソレノイド9への通電をうち切れば、図示しない付勢手段乃至復帰手段によってソレノイド9の作動部は元の位置に戻って回動軸8から離れ、押圧を解かれた従動ローラ6は駆動位置から停止位置に戻り、ベルト10は弛んだ状態となる。このように、ソレノイド9の制御によって従動ローラ6を移動溝7に沿って移動させることにより、前記両位置のいずれかに従動ローラ6を設定することができる。
【0028】
図1に示すように、ローラ間隔を設定する2つのソレノイド9は、制御手段11に接続されている。制御手段11は、搬送装置1の作動状況に応じて信号を出力し、ソレノイド9に適当な値の電流を与えて作動させ、従動ローラ6を上述した駆動位置又は停止位置のいずれか必要な方の位置に設定する。なお、ソレノイド9はプッシュ型だけでなく、その他のタイプ、例えばプル型でも使用できる。
【0029】
図1及び図2に示すように、駆動ローラ3と従動ローラ6には搬送用の無端ベルト10(以下、単にベルト10と称する)が掛け回されている。ベルト10の長さは、図1に示す従動ローラ6の駆動位置に合せて定めてあり、その場合にはベルト10は両ローラ3,4間で弛みなく適切なテンション(張力)で張られ、ベルト10と両ローラ3,4との間に適切な摩擦が生じて良好な搬送を行うことができるようになっている。一方、この搬送装置1では、前述し図2にも示したようにローラ間隔を搬送時よりも短くすることができ、その場合にはベルト10は図示のように弛むこととなる。
【0030】
図1に示すように、搬送装置1を作動して物品を搬送する際は、制御手段11が両ソレノイド9をONにする。ソレノイド9のストロークは電流値に関わらず一定であるが、ソレノイド9に与える電流値は予め定めた所定の値とされているので、従動ローラ6はローラ間隔が長い所定の駆動位置に設定されてベルト10には搬送に適した必要な一定のテンションが加わる。この駆動状態で駆動モータ4によって駆動ローラ3を駆動すれば、ベルト10を介して従動ローラ6が円滑に回動し、ベルト10上に置いた物品を安定して搬送することができる。
【0031】
図2に示すように、搬送装置1を停止した場合には、制御手段11が両ソレノイド9をOFFにする。ソレノイド9の作動部は元位置に復帰し、従動ローラ6はローラ間隔が狭い停止位置に設定される。ベルト10は弛み、テンションは作用しなくなる。このため、搬送装置1の停止状態が長期に及んでも、ベルト10が両ローラ3,4になじんで変形してしまうことはない。このため、長期の停止後に再起動した場合にも、ベルト10の変形に起因した振動が生じることはない。なお、ここでは、搬送装置1の停止時にはベルト10にテンションが生じないようにしたが、全くテンションが働かないようにするのでなく、ベルト10がローラに巻き付いた部分でベルト10が変形しない程度にベルト10のテンションを低下させるようにするものとしてもよい。
なお、以上の説明では従動ローラ6が移動してローラ間隔が変わったが、従動ローラ6は位置を固定し、駆動ローラが移動してローラ間隔が変わることとしてもよいし、両ローラ3,6が互いに反対方向に移動することとしてもよい。
【0032】
本実施形態によれば、駆動時には、従動ローラ6を駆動位置に移動してベルト10に適当なテンションを加えるので、ベルト10はローラ3,4にしっかりと巻き掛けられる。このため、ベルト10に振動、蛇行、バタツキを起こすことなく安定した状態で物品の搬送を行なうことができる。停止時には、従動ローラ6を停止位置に戻してベルト10に加わるテンションを相対的に低く設定し、実質的には0にするので、仮にそのまま長期間放置してもベルト10にローラ3,4の形状になじんだ変形が生じたり、くせがつくことはなく、次に駆動する場合にベルト10の変形に起因した振動、蛇行、バタツキが起きることはない。従って、本実施形態の搬送装置1によれば、搬送速度や搬送状態が不安定化することがないので、物品を搬送するあらゆる産業上の目的にとって好ましい結果が得られる。
【0033】
また本実施形態によれば、駆動時にベルト10に与えるテンションはソレノイド9に与える電流値で定まるので、ソレノイド9に与えるべき最適な電流値を予め定めておけば、常に一定かつ最適なテンション調整を簡単な構成で容易に実現することができる。従来のようなねじの締め加減でベルトのテンションを設定する手法では、作業が困難であるとともに、作業者による調整のばらつきが多かった。例えば、搬送装置の清掃時にはベルトをローラから外すため、テンション調節用のねじを緩める必要があったが、清掃後にベルトを戻して元のテンションの通りにねじで調整するのは困難であったが、本実施形態によればそのような不都合はない。
【0034】
次に、本実施形態の変形例を、第1実施形態の図1及び図2を参照して説明する。
図1及び図2に破線で示すように、搬送装置1には、ベルト10の移動方向と直交する幅方向の両端縁を検出する一対のセンサ12,12を設けてもよい。これらのセンサ12は、図中に示すように、ベルト10の上方において、下方にあるベルト10の両端縁を検出するよう下向きに設置されており、正規位置にあるベルト10の端縁が移動した場合には、移動した方向と移動量を検知することができる。両センサ12,12からの検知信号は制御手段11に与えられ、制御手段11は2つのセンサ12,12からの検知信号を適宜利用し、2つのソレノイド9に与える電流値を適宜増減する。これによって、駆動ローラ3及び従動ローラ6とベルト10との間に働く摩擦力が軸方向で変化するため、ベルト10にはセンサ12が検知した幅方向の移動量と向きを修正して正規位置に戻るような幅方向の力が生じ、結果としてベルト10の正規位置が維持されることとなる。
【0035】
(2)計量装置
第1実施形態の搬送装置1を利用した計量装置について説明する。
この計量装置は、第1実施形態の搬送装置1に秤量装置を取り付け、搬送装置1によって搬送される物品の重量値を計測する装置である。
【0036】
このように物品を搬送しながら重量値を測定する計量装置では、物品の搬送が安定化しなければ重量値の測定には高い精度が望めない。ところが、第1実施形態の搬送装置1は前述したように搬送状態が安定しており、搬送中の物品が振動する等の不都合がないので、高い精度の重量測定ができる。
【0037】
図3は、第1実施形態の搬送装置1を有する計量装置において、物品を搬送していない状態で搬送装置1を作動させている場合に、作動している秤量手段から出力される重量値の振動状態を示すグラフを表した図である。物品を載せていない状態であるから、本例、重量値は0になるはずであるが、本発明によっても搬送装置1に起因する振動を完全に0にすることはできない。同図中、「テンション:標準」は、例えば第1実施形態において従動ローラ6を駆動位置に設定した場合にベルト10に与えられるテンションを意味し、「テンション:弱」は、第1実施形態の駆動位置よりも停止位置に近いある位置に従動ローラ6を設定した場合にベルト10に与えられるテンションを意味する。この場合、ベルト10に与えられるテンションの強弱により、秤量装置の振動(振幅R)には差があるので、どの程度の振動であれば重量値の測定に問題ないかを種々の条件を勘案して定める必要がある。
【0038】
図4は、図3で示した重量値の振動状態を示すグラフに、重量測定に影響を与えない振動の幅として設定した上下限範囲を一例として重ねて示した図である。この図示例では、第1実施形態において、従動ローラ6を駆動位置に設定した場合のベルト10のテンションである「テンション:標準」の波形を含む範囲を許容しうる上下限範囲として定め、上下に制限範囲の設定を行なったものである。すなわち、第1実施形態の搬送装置1を有する計量装置において、物品を搬送しながら計量を行なう際には、従動ローラ6は駆動位置に設定されるので、物品がない場合に計量装置が出力する重量値は図4の上下限範囲に入る。よって、この状態で物品を実際に搬送装置1で搬送しながら計量装置で測定すれば、十分な精度の測定値が得られる。
【0039】
上述したような上下限範囲によるテンションの設定は、例えば次のように行なうことができる。制御手段11には図示しない表示装置と入力装置を設けておく。物品を載せない状態で搬送装置1と秤量装置をONとし、秤量装置から出力される図4に示すような時間に対する重量値のグラフを表示装置に表示させる。作業者は、この表示を見ながら、種々の条件から必要な精度を実現しうる振動の限度を上下限範囲として画面上に設定する。そして、作業者は、重量値の振動がこの上下限範囲内に収まるように、入力装置を操作してソレノイド9に与える電流値を変化させる。ソレノイド9に与える電流値を変化させるとベルト10に加わるテンションが変化するので、表示装置に表示される波形は、図4中に例として示す2つの波形のように変化する。作業者は、このような表示を見ながら、重量値の振動がその範囲内に入るようにソレノイド9に与える電流値を設定する。なお、このような調整の際、2つのソレノイド9の従動ローラ6に対する押圧作用の左右バランスを考慮して、ベルト10に蛇行が生じないようにすることが必要である。適当な電流値が設定できたら、これを制御手段11に記憶させる。これによって、以後はワンタッチでソレノイド9を作動させてベルト10に必要なテンションを与えることができるようになる。なお、ソレノイド9に与える電流値の調整については、上述したように作業者が手動で調整する手法を用いてもよいが、重量値の振幅について許容できる適当な上下限範囲を設定すれば、その範囲内に重量値がおさまるように、ソレノイドの電流値が自動的に調整されるようにしてもよい。
【0040】
2.第2実施形態(図5及び図6)
第2実施形態の搬送装置20は、第1実施形態の搬送装置1において、ベルト10のテンション調整手段であるアクチュエータとして、ソレノイド9に替えてステップモータ21を使用している。その他の構成は第1実施形態と同一であるので、対応する部分には図1及び図2と同一の符号を付して説明は省略する。
【0041】
なお、図5は従動ローラ6が駆動位置にある装置の駆動可能状態であり、第1実施形態の図1に相当する。図6は従動ローラ6が停止位置にある装置の停止状態であり、第1実施形態の図2に相当する。
【0042】
図5に示すように、搬送装置20を作動して物品を搬送する際は、制御手段11が両ステップモータ21に所定数のパルス信号を与え、従動ローラ6をローラ間隔が長い所定の駆動位置に設定する。ベルト10には搬送に適したかつ必要な一定のテンションが加わり、ベルト10上に置いた物品を安定して搬送することができる。
【0043】
図6に示すように、搬送装置20を停止した場合には、制御手段11が両ステップモータ21に逆方向に移動するための所定数のパルス信号を与え、従動ローラ6をローラ間隔が狭い停止位置に設定する。ベルト10は弛み、テンションは作用しなくなる。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
なお、ステップモータ21の場合、最適なテンションの設定は、図4を参照して行なったソレノイド9によるテンションの調整と同様に行なうことができる。すなわち、調整時には、まず最初に適当な数のパルス信号を投入してローラ間隔を広げ、ベルト10のテンションを適宜に設定する。その後、秤量装置からの重量値を表示装置で確認しながら、さらにパルス信号数を調整してテンションを増減し、重量値の変動が必要な上下限範囲に入るようなテンションに調整し、その時のパルス信号数を最適値として制御手段11に設定する。
本実施形態によっても、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0045】
3.その他の実施形態(図7)
以上説明した2つの実施形態では、2つのローラ(駆動ローラ3と従動ローラ6)にベルト10を掛け、従動ローラ6に2つのアクチュエータ(ソレノイド9、ステップモータ21)を設けてベルト10のテンションを調整していた。しかしながら、本発明の搬送装置におけるローラの数、アクチュエータを設けるローラの種類と数、アクチュエータの種類及び数等は、停止時にベルトのテンションが実質的に0となり、ベルトの変形を抑えることができるものであれば、任意に設定することができる。
【0046】
例えば、図7(a)に示す搬送装置30の例では、各1本の駆動ローラ3と従動ローラ6にベルト10を掛ける点は第1乃至第2実施形態と同じであるが、従動ローラ6と駆動ローラ3の両方にアクチュエータであるソレノイド9を設けてローラ間隔を調整し、ベルト10のテンションを調整することとしている。この場合、各ローラに設けるソレノイド9は各2個でもよいし、たすき掛けに配置した各1個でもよい。
【0047】
図7(b)乃至(d)に示すように、駆動ローラ3が1個、従動ローラ6が3個、合計4個のローラに、各図に示すように種々の態様でベルト10を巻装した搬送装置40,50,60にも本発明を適用できる。この場合のアクチュエータの配置と数の種々に設定できる。
【0048】
以上説明した実施形態では、搬送装置と、これを利用した計量装置を説明したが、本発明に係る搬送装置を利用しうる産業用機械は計量装置に限るものではなく、物品を搬送しながら検査する各種物品検査装置の他、多様な分野に応用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,20,30,40,50…搬送装置
3…駆動ローラ
6…従動ローラ
9…アクチュエータとしてのソレノイド
10…無端ベルト
11…制御手段
12…センサ
21…アクチュエータとしてのステップモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が駆動される複数のローラ(3,6)と前記ローラに掛け回されるベルト(10)を備え、ローラの駆動によってベルトをまわすことによりベルト上にある物品を搬送する搬送装置(1,20,30,40,50,60)において、
駆動する場合には、前記ベルトに相対的に大きいテンションが加わるような位置に少なくとも一部の前記ローラを移動させるとともに、駆動しない場合には、前記ベルトに相対的に小さいテンションが加わるような位置に少なくとも一部の前記ローラを移動させるように制御されるアクチュエータ(9,21)を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ(9,21)が、前記ローラ(3,6)を移動させるソレノイド(9)であることを特徴とする請求項1記載の搬送装置(1,30,40,50,60)。
【請求項3】
前記アクチュエータ(9,21)が、前記ローラを移動させるステップモータ(21)であることを特徴とする請求項1記載の搬送装置(20,40,50,60)。
【請求項4】
前記搬送装置(1,20,30,40,50,60)に取り付けられて前記搬送装置によって搬送される物品の重量値を計測する秤量装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記秤量装置から得られる重量値が許容範囲内に収まるように前記ベルト(10)に加わるテンションを調整するために、前記アクチュエータ(9,21)による前記ローラ(3,6)の移動量が調整されることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ローラ(3,6)を移動させる前記アクチュエータ(9,21)が、前記ローラの両端をそれぞれ移動させる一対のアクチュエータを含んでおり、
前記ベルト(10)の移動方向と直交する幅方向の両端縁を検出する一対のセンサ(12)を備え、
一対の前記センサによる前記ベルトの両端縁の検出状況に応じて一対の前記アクチュエータを制御することにより、前記ベルトの前記幅方向への移動を調整することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の搬送装置(1,20,30,40,50,60)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207602(P2011−207602A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78198(P2010−78198)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】