説明

搬送装置

【課題】シートの交換作業を容易に行うことができる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置1は、直動装置を構成するレール10及びスライダ20と、スライドユニット30と、これらの上面を覆う防塵用の可撓性のシートとを有する。スライドユニット30は、スライドベース31と、その移動方向に沿って防塵用のシートを収容し、シートの方向を転換するためのローラからなる第1の方向転換部41と第2の方向転換部42とを有する。スライドベース31には、それぞれシートに向かって開口し第1の方向転換部材を支持する第1の支持部31cと、第2の方向転換部材を支持する第2の支持部32cが形成される。第1の方向転換部材41及び第2の方向転換部材42は、第1の支持部31cと第2の支持部32cに容易に着脱可能に嵌合する。これによって、スライドベース31上にワークや工具などが搭載されていても、シートの交換が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械等に用いられ、断面凹形状をなすレール又はケーシングを有する直動案内装置と、前記レール又はケーシングに形成された開口部を覆うように前記レール又はケーシングに沿って張り渡される可撓性のシートとを備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送装置は、横断面が略U字形状のレール又はケーシングに形成された開口部内に駆動力伝達機構と、前記開口部より少なくとも一部突出し、前記駆動力伝達機構によってスライド移動可能に設けられたスライドベースからなる。また、前記シートは、前記レール又はケーシング袖部間の開口部を覆うように前記レールに沿って張り渡されると共に、前記シートの両端が前記レール又はケーシングに固定されてなる(特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された搬送装置の構成を示す図であり、(a)は側断面図、(b)は横断面図である。図7(a),(b)に示すように、搬送装置100は、所定長さの基台ケーシング101の内部にボールねじ102及び1対の直動案内装置103が収容され、幅方向に離間した基台ケーシング101の開口部101aを覆うように可撓性のシート104が設置されている。なお、図示はしないが、シート104は、両端部が基台ケーシング101に固定されている。
【0004】
一方、スライドベース106が開口部101aから一部を突出させて備えられている。スライドベース106には、直動案内装置103と、直動案内装置103の長手方向と同じ方向にボールねじナット106aが形成されている。スライドベース106は、ボールねじナット106aが図示しない転動体を介してボールねじ102と螺合することにより、直動案内装置103の長手方向に沿って移動する。
ここで、スライドベース106には、挿通孔106cが設けられており、この挿通孔106cを通じて固定軸108及び長尺筒体109からなるガイドロール107a,107a,107b,107bが計4つ取付けられる。
【0005】
開ロ部101aを覆うように取り付けられたベルト状のシート104は、外側に位置するガイドロール(以下、外側ガイドロールと呼ぶ。)107a,107aに対して下側から巻掛けられる。一方、外側ガイドロール107a,107aに対して下側から巻掛けられたシート104は、中央側に位置するガイドロール(以下、内側ガイドロールと呼ぶ。)107b,107bに対して上側から巻掛けられる。
【0006】
これにより、シート104は、スライダ106bの端部で方向転換され、スライドベース106の上方において迂回するようにして張り渡されている。このような構成を採用することにより、スライドベース106の移動を妨げることなく、ケーシング内への異物の侵入を防止することができる。また、シート104を組付けた搬送装置100の断面寸法及び長手寸法をコンパクトに構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平5−29829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された搬送装置においては、スライドベースの上面に搭載物(例えばワークや工具を搭載するテーブル)が取付けられている状態でシートを取付けることが容易ではないという問題があった。
即ち、スライドベースにシートを取付ける際には、外側ガイドロールを外した状態で、先にシートをスライドベースに通す必要がある。そして、その後、外側ガイドロールを取付けるが、シートを避け、長尺筒体を所定の位置に支持しつつ、挿通孔と長尺筒体の軸穴に固定軸を挿入し、且つ固定軸を固定するために止め輪などを取付けるため、作業性が悪かった。
特に、先にシートを固定した場合は、シートの張力が作用するため、ガイドロールの取付けは非常に困難になってしまっていた。
【0009】
また、シートを固定していない状態でガイドロールを取付けたとしても、その後、シートに張力を与えるためシートを任意の張力になるよう引っ張りながら固定する必要があり、工作機械のような別装置に取付けた状態でシートを交換する場合は作業性が悪い。
このように、スライドベース上面に搭載物が取付けられている従来の搬送装置においては、経年劣化や、異物による損傷により生じるシートの交換に手間がかかってしまうという問題点があった。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、シートの交換作業を容易に行うことができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る搬送装置は、横断面が略U字形状のレール又はケーシングの上部に形成された開口部内に、駆動力伝達機構と、前記開口部より少なくとも一部突出し、前記駆動力伝達機構によってスライド移動可能に設けられたスライドベースと、前記開口部を覆うように前記レール又はケーシングに沿って張り渡される可撓性のシートと、
前記スライドベースに設けられて、前記スライドベースの移動方向に沿って、前記シートを収容し、前記シートの張り渡し方向を前記スライドベース内へ迂回させるように転換する方向転換部を有するスライドユニットとを備える搬送装置であって、
前記スライドユニットは、前記スライドベースと、前記方向転換部とを有し、前記方向転換部は、前記スライドベースに収容された前記シートの下面を上方に押し上げて張架する第1の方向転換部材と、該第1の方向転換部材の外側に設置され、前記シートの上面を押さえつけて、前記開口部を覆うように前記シートを案内する第2の方向転換部材とを有し、
前記スライドベースには、前記シートの下面に対向して開口する第1の支持部と、前記シートの上面に対向して開口する第2の支持部とが形成され、
前記第1の方向転換部材及び前記第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方が、前記シートの搬送方向の動きが制限されるように前記第1の支持部に着脱可能に嵌合された軸部と、該軸部に対して回転可能に設けられた筒体とを有することを特徴としている。
【0011】
本発明に係る搬送装置によれば、前記第1の方向転換部材及び前記第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方が、前記第1の支持部及び前記第2の支持部の少なくともいずれか一方によって固定された軸部と該軸部に対して回転する筒体とからなるので、前記軸部自体が回転せず、スライドベースに対する前記軸部の摩耗を防ぐことができる。その結果、ガイドロール(第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方)の損傷を防ぐことができ、それに起因する搬送装置自体の寿命低下を防ぐことができる。また、ガイドロール(前記第1の方向転換部材及び前記第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方)が、前記シートの下面に対向して開口する第1の支持部と前記シートの上面に対向して開口する第2の支持部とにそれぞれ着脱可能に嵌合されていることからスライドベースの上面に搭載物が取付けられている状態のまま、ガイドロール支持ブロックが着脱可能であるため、容易かつ確実にシートの交換を行うことができる。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る搬送装置は、請求項1に記載の搬送装置において、前記軸部の両端部には、前記第1の支持部又は第2の支持部に前記シートの搬送方向に直交する方向に嵌合する軸方向に平坦な平坦部が1以上形成されたことを特徴としている。
また、本発明の請求項3に係る搬送装置は、請求項1に記載の搬送装置において、前記第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方が、前記軸部の両端部に固定され、前記第1の支持部又は第2の支持部に前記シートの搬送方向に直交する方向に嵌合するブロック体を有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る搬送装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の搬送装置において、前記第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方を前記シートに押し付ける弾性部材が前記第1の支持部又は第2の支持部に設けられたことを特徴としている。
また、本発明の請求項5に係る搬送装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の搬送装置において、前記第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方には、筒体を保護するためのワッシャーが前記筒体と前記スライドベースとの間に位置するように設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明に係る搬送装置によれば、シートの上面及び下面に付勢する方向転換部材をスライドベース又はガイドロール支持ブロックに着脱自在に設置したので、シートの交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る搬送装置の第1の実施形態の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の1b−1b線に沿う側面図、(c)は(b)の1c−1c線に沿う断面図である。
【図2】本発明に係る搬送装置の第1の実施形態における直動案内装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る搬送装置の第1の実施形態における方向転換部の構成を示す図である。
【図4】本発明に係る搬送装置の第2の実施形態の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の4b−4b線に沿う側面図、(c)は(b)の4c−4c線に沿う断面図である。
【図5】本発明に係る搬送装置の第2の実施形態における方向転換部の構成を示す図である。
【図6】本発明に係る搬送装置の第3の実施形態の構成を示す断面図である。
【図7】従来の搬送装置の構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る搬送装置の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る搬送装置の第1の実施形態の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の1b−1b線に沿う側面図、(c)は(b)の1c−1c線に沿う断面図である。また、図2(a)は、本発明に係る搬送装置の第1の実施形態における直動案内装置の構成を示す斜視図であり、図2(b)は、本発明に係る搬送装置の第1の実施形態におけるガイドロール支持ブロックの構成を示す下方から見た斜視図である。また、図3は、本発明に係る搬送装置の第1の実施形態における方向転換部の構成を示す図であり、(a)及び(b)は方向転換部に形成される平坦部の例を示すものである。
【0017】
なお、本発明に係る搬送装置は、横向きにしたり、立てて使用することがあるため、本実施形態の説明では、レール又はケーシングの開口部が開口する向きを上方として説明する。
図1(a)〜(c)及び図2(a)に示すように、搬送装置1は、レール10と、スライダ20と、スライドユニット30と、可撓性のシート5とを有する。これらのうち、レール10及びスライダ20によって直動案内装置が構成される。
【0018】
<直動案内装置>
図1(a)〜(c)及び図2(a)に示すように、直動案内装置は、横断面が略U字形状をなすレール10と、該レール10に形成された開口部(凹部)11内でレール10の長手方向に沿ってスライド移動可能に設けられたスライダ20とを有する。
レール10は、長手方向を同じくして離間した一対のレール袖部12,12と、これら一対のレール袖部12,12を連結するレール基部13とが一体構造をなして構成されている。離間したレール袖部12,12の各内側面と、レール基部13の上面とによって開口部11が形成される。
【0019】
スライダ20は、該スライダ20の両側面に設けられた転動体転動溝20a,20aと、一対のレール袖部12,12の内側面に設けられた転動体転動溝12a,12aとの間に配置された転動体(図示せず)を介して、レール10の長手方向に沿って案内される。また、スライダ20には、長手方向にボールねじナット51が設けられる。スライダ20は、ボールねじナット51が転動体(図示せず)を介して、開口部11内に設置されたボールねじ52と螺合することにより、レール10の長手方向に沿って移動する。
【0020】
<スライドユニット>
スライドユニット30は、スライドベース31と、スライドベース31の移動方向の両端部に着脱可能に固定されたガイドロール支持ブロック32と、方向転換部40とによって構成されている。なお、スライドベース31と、ガイドロール支持ブロック32とは一体に形成されてもよい。
[スライドベース]
スライドベース31は、図2(a)に示すように、スライダ20の上面に固定されるスペーサプレート基部31aと、スペーサプレート基部31aの側面に固定されるスペーサプレート側壁部31b,31bとを有してなる。スライドベース31は、スライダ20と、スペーサプレート基部31a、及びスペーサプレート側壁部31bからなるスペーサプレート31fとが一体に形成されてもよい。側壁部31b,31bの移動方向の両端部近傍には、側壁部31b,31bの上面に開口された第1の支持部31c,31cがスライドベース31の幅方向に亘るように対応して1対ずつ形成される。
【0021】
[ガイドロール支持ブロック]
ガイドロール支持ブロック32は、図2(b)に示すように、直方体形状をなし、スライドユニット30の移動方向に貫通した貫通孔32aが形成されている。また、貫通孔32a,32aの形成位置に対応してスライドベース31の移動方向の両端部に孔部31d,31dが形成されている。孔部31dはねじ切り加工されている。これら貫通孔32a,32aと、孔部31d,31dとにねじSが螺合されて、ガイドロール支持ブロック32がスライドベース31に固定される。
【0022】
また、ガイドロール支持ブロック32には、スライドベース31に対向する面と下面とを貫通する湾曲した開口部32bが形成されている。シート5は、この開口部32bに挿入される。開口部32bの下面側近傍の内側面には、ガイドロール支持ブロック32の幅方向に対応する位置に切り欠かれた溝形状の第2の支持部32c,32cが形成されている。
【0023】
[方向転換部]
方向転換部40は、シート5の張り渡し方向を、スライドベース31内へ迂回させるように転換する手段である。
方向転換部40は、第1の方向転換部41と、第2の方向転換部42とを有する。第1の方向転換部41は、円柱形状の軸部41aと、該軸部41aに対して回転可能に支持された筒体41bとを有する。また、第2の方向転換部42も、円柱形状の軸部42aと、該軸部42aに対して回転可能に支持された筒体42bとを有する。
【0024】
ここで、軸部41a及び軸部42aの少なくともいずれか一方の両端部は、シート5の搬送方向(スライドベース31の長手方向)の動きが制限されて第1の支持部31c,31cの形状に嵌合するように加工される。
例えば、第1の支持部31c,31cの形状が、スライドベース31の上面に矩形をなして開口する溝として形成される場合、図3(a)及び図3(b)に示すように、軸部41aの両端部には、シート5の搬送方向(スライドベース31の長手方向)の動きが制限されて第1の支持部31c,31cの形状(矩形)に嵌合するように、平坦部41cが形成される。同様に、第2の支持部32c,32cの形状が、ガイドロール支持ブロック32の下面に矩形をなして開口する溝として形成される場合、図2(b)に示すように、軸部42aの両端部には、シート5の搬送方向(スライドベース31の長手方向)の動きが制限されて第2の支持部32c,32cの形状(矩形)に嵌合するように、平坦部42cが形成される。そして、これら軸部41a,42aは第1の支持部31c及び第2の支持部32cが開口する方向に着脱可能とされる。
【0025】
すなわち、これら方向転換部(ガイドロール)は、スライドベース31に固定された軸部41a,42aに対して筒体41b、42bが回転する。
なお、筒体41b、42bを保護するための円環形状のワッシャー35が筒体41b及び軸部42aの少なくともいずれか一方とスライドベース31との間に位置するように設けられている。具体的には、ワッシャー35は、筒体41b、42bの両端部に配置されるように、軸部41a及び軸部42aの少なくともいずれか一方に遊嵌されている(図3(a)参照)。このワッシャー35が設置されることによって、軸部42aや筒体41b、42bの取付け誤差によって生じる筒体41b、42bの摩耗を低減でき、結果としてガイドロールの損傷に伴う搬送装置1としての寿命低下を防ぐことができる。
【0026】
また、開口部32b内に形成された第2の支持部32c,32cは、開口部32bと同様に下方に開口した形状とされてもよいが、ガイドロール支持ブロック32がスライドベース31に固定された際に、開口部32bが側壁部12の上面によって閉じられるので、第2の方向転換部42が脱落することはない。このように、スライドベース31に設置される1対の第1の方向転換部41は、内側ガイドロール41として機能し、ガイドロール支持ブロック32に設置される1対の第2の方向転換部42は、外側ガイドロール42として機能する。
【0027】
<シート>
シート5は、レール10の開口部11を覆うように、レール10の上面に沿ってスライドユニット30内で張り渡されている。具体的には、図1(c)に示すように、開ロ部11を覆うように取り付けられたベルト状のシート5は、外側ガイドロール42,42に対して下側から巻掛けられる。一方、外側ガイドロール42,42に対して下側から巻掛けられたシート5は、内側ガイドロール41,41に対して上側から巻掛けられる。なお、図示はしないが、シート5は、その両端部がレール10に固定されている。即ち、シート5は、レール10に固定された一方の端部側では、開口部11を覆った状態から、スライドユニット30内に収容され、外側ガイドロール42、内側ガイドロール41,41、外側ガイドロール42の順で巻掛けられ、スライドユニット30から案内されて再び開口部11を覆ってレール10に固定された他方の端部に至る。
このように、シート5は、スライドユニット30の端部で方向転換され、スライドベース31の上方において迂回するようにして張り渡されている。従って、スライドユニット30の移動を妨げることなく、レール10内への異物の侵入を防止することができる。
【0028】
ここで、シート5は、伸縮性を備え、十分な引張強度、耐摩耗性、耐熱性を備えた材料からなるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。シートとしては、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、炭素繊維、PPS繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ガラス繊維、レーヨン繊維、チタン繊維、及びそれらにアルミ、樹脂をコーティングさせたもの、例えば、「ケブラー(登録商標)」、「ノーメックス(登録商標)」、「アルミナイズドクロス(ジェンテックス社製)」、「コーテッドガラスM(ユニチカユーエムグラス社製)」、「HBシート(住友電工社製)」、「SGSシート(泰陽社製)」等が挙げられる。
【0029】
シート5の材料として、柔軟性を備えた材料を採用することにより、鋼製のシートが用いられていた従来の搬送装置に比べて、内側及び外側のガイドロールのロール径を小さくすることができ、搬送装置の小型化に寄与する。
シート5の交換時には、まず、2つのガイドロール支持ブロック32,32をスライドベース31から離脱させて、シート5に対する下向きの付勢力を解除する。その後、古いシート5の端部に新しいシート5の端部を連結して引き抜くことによって、古いシート5と新しいシート5とを入れ替える。その後、スライドベース31の両端部において、外側ガイドロール42をシート5に下向きに押さえつけた状態で、各ガイドロール支持ブロック32,32をスライドベース31に設置する。このように、スライドベース31に着脱可能とされたガイドロール支持ブロック32に外側ガイドロール42が取付けられているため、シート5の交換時には、ガイドロール支持ブロック32をスライドベース31に設置するだけで外側ガイドロール42によるシート5への下向きの付勢が容易になされる。また、スライドベース31の上面に搭載物が取付けられている状態のまま、容易かつ確実にシート5の交換を行うことができる。
【0030】
次に、シートを固定した状態で、外側ガイドロール42を備えたガイドロール支持ブロック32,32をスライドベース31の両端部に取付けることにより、シート5は伸縮性を備えた材料からなるため、ガイドロール支持ブロック32を取付けると同時に張力も与えることが可能になる。
また、シート5の張力に抗って、ガイドロール支持ブロック32を支持しながら取付ける必要はなく、張力が作用していない、又はまだ張力が小さい範囲より、ねじSを締め付けていくことで、支持も必要なくガイドロール支持ブロック32をスライドベース31の両端部にしっかり固定することができる。
従って、スライドベース31の上面に搭載物が取付けられている状態のままでも、シート5が交換可能であり、交換時間を大幅に減少させることができる。
【0031】
ここで、本実施形態では、方向転換部40として、シート5の下面を上方に押し上げて張架する第1の方向転換部材41、及びシート5の上面を押さえつけて、開口部を覆うようにシート5を案内する第2の方向転換部材42を、ガイドロールを例示して説明したが、第1の方向転換部材41及び第2の方向転換部材42は、第1の支持部31c及び第2の支持部32cに対して固定された軸部31a,41aと該軸部41a,42aに対して回転可能に設置された筒体41b,42bとを有する限りにおいて、シート5に対して上記のように作用するものであれば、滑り案内する部材が採用されてもよい。
【0032】
(第2の実施形態)
図4は、本発明に係る搬送装置の第2の実施形態の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の4b−4b線に沿う側面図、(c)は(b)の4c−4c線に沿う断面図である。また、図5は、本発明に係る搬送装置の第2の実施形態における方向転換部の構成を示す図である。なお、本実施形態は、軸部の構成を異ならせた以外は、前述した第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と同じ符号を付した同様の構成については説明を省略する。図4(a)〜(c)に示すように、本実施形態では、スライドベース31に形成された第1の支持部31cに、第1の方向転換部材41の軸部41aが直接嵌合せず、軸部41aの両端部に固定した略直方体形状のブロック体43が第1の支持部31cに嵌合されている。具体的には、図5に示すように、本実施形態の軸部41aの両端部には略直方体形状のブロック体43が固定部材44によって固定されている。このブロック体43の外形は、第1の支持部31cの内面に嵌合する形状をなし、少なくとも第1の支持部31cにブロック体43を嵌合させたとき、シート5の搬送方向に軸部41aの動きが制限される形状であればよい。また、図示はしないが、筒体41bはブロック体43,43の間に収まる寸法で形成され、軸部41aに対して回転可能に設置される。なお、同様にして、ガイドロール支持ブロック32に形成された第2の支持部32cに、軸部42aの両端部に固定した略直方体形状のブロック体(図示せず)が第2の支持部32cに嵌合されてもよい。
【0033】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係る搬送装置の第3の実施形態の構成を示す断面図である。なお、本実施形態は、スライドベース31に形成された第1の支持部31cの構成を異ならせた以外は、前述した第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と同じ符号を付した同様の構成については説明を省略する。図6に示すように、本実施形態では、スライドベース31に形成された第1の支持部31cの底面31eと第1の方向転換部材41の軸部41aとに挟まれるようにして弾性部材45が設置されている。この弾性部材45は、例えば、コイルばねである。また、シート5の搬送方向の動きが制限されるように第1の支持部31cに嵌合された軸部41aは、第1の支持部31cの開口部方向に摺動可能に設置されている。第1の支持部31cの底面31eと軸部41aとに挟まれるようにして弾性部材45が設置されることによって、弾性部材45が常に軸部41aに付勢するので、シート5に任意の張力を負荷し、シートのたるみを吸収することができる。なお、同様にして、ガイドロール支持ブロック32に形成された第2の支持部32cの底面と第2の方向転換部材42の軸部42aとに挟まれるようにして弾性部材(図示せず)が設置されてもよい。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、上述の各実施形態では、スライドベース及びガイドロール支持ブロックに、内側ガイドロール及び外側ガイドロールをそれぞれ1対ずつ設置したが、各ガイドロールの数はこれより多くてもよい。少なくとも、シートを張架し、上向きに付勢する1対の内側ガイドロールがスライドベースに設けられ、下向きに付勢する1対の外側ガイドロールが両ガイドロール支持ブロックの両端部側に設けられれば、目的に応じて適宜増やしてもよい。また、スライドベース31は、レール10に対して設けられた2つのスライダ20と、これら2つのスライダ20a,20bの上面に固定された1つのスペーサプレート31f(スペーサプレート基部31a,スペーサプレート側壁部31b)からなるようにしてもよい。また、上記の各実施形態から、駆動力伝達機構(駆動手段50)を取り除くと、直動案内装置としても機能する。
【符号の説明】
【0035】
1 搬送装置
5 シート
10 レール
11 開口部
12 レール袖部
13 レール基部
20 スライダ
30 スライドユニット
31 スライドベース
32 ガイドロール支持ブロック
35 ワッシャー
40 方向転換部
41 第1の方向転換部
42 第2の方向転換部
43 ブロック体
44 固定部材
45 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が略U字形状のレール又はケーシングの上部に形成された開口部内に、駆動力伝達機構と、前記開口部より少なくとも一部突出し、前記駆動力伝達機構によってスライド移動可能に設けられたスライドベースと、前記開口部を覆うように前記レール又はケーシングに沿って張り渡される可撓性のシートと、
前記スライドベースに設けられて、前記スライドベースの移動方向に沿って、前記シートを収容し、前記シートの張り渡し方向を前記スライドベース内へ迂回させるように転換する方向転換部を有するスライドユニットとを備える搬送装置であって、
前記スライドユニットは、前記スライドベースと、前記方向転換部とを有し、前記方向転換部は、前記スライドベースに収容された前記シートの下面を上方に押し上げて張架する第1の方向転換部材と、該第1の方向転換部材の外側に設置され、前記シートの上面を押さえつけて、前記開口部を覆うように前記シートを案内する第2の方向転換部材とを有し、
前記スライドベースには、前記シートの下面に対向して開口する第1の支持部と、前記シートの上面に対向して開口する第2の支持部とが形成され、
前記第1の方向転換部材及び前記第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方が、前記シートの搬送方向の動きが制限されるように前記第1の支持部に着脱可能に嵌合された軸部と、該軸部に対して回転可能に設けられた筒体とを有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記軸部の両端部には、前記第1の支持部又は第2の支持部に前記シートの搬送方向に直交する方向に嵌合する軸方向に平坦な平坦部が1以上形成されたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方が、前記軸部の両端部に固定され、前記第1の支持部又は第2の支持部に前記シートの搬送方向に直交する方向に嵌合するブロック体を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方を前記シートに押し付ける弾性部材が前記第1の支持部又は第2の支持部に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第1の方向転換部材及び第2の方向転換部材の少なくともいずれか一方には、筒体を保護するためのワッシャーが前記筒体と前記スライドベースとの間に位置するように設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−230251(P2011−230251A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103719(P2010−103719)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】