説明

携帯型情報処理装置及びその制御方法

【課題】ファームウエア等の書き換え処理を迅速化することができる携帯型情報処理装置を提供する。
【解決手段】無線通信機能と有線通信機能との何れか一方で受信中の書き換えデータを他方の通信機能で受信すると、先に受信を開始していた第1の通信機能の受信速度の方が後に受信を開始した第2の通信機能の受信速度より速いか否かを判定するステップS203と、第1の通信機能の受信速度の方が速い場合に、第1の通信機能による書き換えデータの受信を継続し、第1の通信機能によって継続して受信した書き換えデータで、不揮発性のメモリを書き換えるステップS207と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト装置と相互に無線通信を行う携帯型情報処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によって、ID情報を埋め込んだタグとリーダ/ライタとの間で情報をやりとりするRFID(Radio Frequency Identification)技術が知られている。
特許文献1には、遊技機や遊技媒体貸出装置(台間機)などの遊技関連機器に関するデータを正確かつ迅速に更新して管理するため、RFID技術を採用したデータ管理システムが記載されている。
【0003】
特許文献2には、物品に管理情報を記録したRFIDタグを付すことにより、物品の貸出管理を自動的に行うことが可能で、物品管理の省力化を実現した物品貸出期限管理システムが記載されている。
【0004】
特許文献3には、建物の出入口、部屋の出入口、及び保管棚にそれぞれリーダライタを備え、それぞれのリーダライタから読み取られたIDコードの論理性をチェックすることにより、保管棚の施開錠の制御と保管棚に収納されている物品持ち出しを管理する物品管理システムが記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、個識別用固有データ(IDコード)やプログラムを記憶させたICカードと、このICカードとの間で相互に無線通信を行うホスト装置とを備えて、例えば、ホテルの部屋等の出入口部分の電気錠の施解錠を制御する電子ロックシステムが記載されている。この場合、ICカードと相互に無線通信が可能なホスト装置として、電子ロック装置と、カード発行機とが用意されている。
【0006】
電子ロック装置は、ICカードの保有者が出入りする扉などの電子錠に組み込まれて配置され、ICカードが所定の認証位置に挿入されたり、あるいは無線通信可能な近距離にICカードが存在すると、カード内部の情報を読み取って正当使用であるか否かを非接触に判定し、正当使用であると判定した時には施解錠を実施する。カード発行機は、例えば、ホテルの管理部門等に設置され、未使用のICカードに電子錠の施解錠に必要な個識別用固有データ(IDコード)やプログラムを書き込んでカードの発行をしたり、あるいは、使用済みのICカードに記憶済みのデータやプログラムを書き換えして再発行したりする。
【0007】
ところで、上記の各特許文献で紹介されているRFIDメモリを搭載した台間機やRFIDタグあるいはICカードなどは、リーダ/ライタやホスト装置と無線通信をするため、その無線通信処理を制御するファームウエア(プログラム)や、個識別用の固有データを搭載している。これらの台間機やRFIDタグあるいはICカードなどでは、前述したファームウエアや固有データは、フラッシュメモリやEEPROMなどのような書き換え可能な不揮発性のメモリに記憶されている。これらのファームウエアや固有データ等の書き換えが必要になったときには、書き換えすべきプログラムやデータを無線通信によってホスト装置からICカード等に転送することで、書き換え処理を実行させる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
また、上記のファームウエアや固有データをホスト装置から受信するための通信機能として、無線通信機能の他に、例えばRS232CやUSBなどのようなインタフェースを介してホスト装置と有線接続する有線通信機能を備えたものも開発されている。このように無線通信機能と有線通信機能との2つの通信機能を備えた装置では、通常、書き換え用のデータを先に受信した通信機能により、データの書き換えを実行するようにしている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−212341号公報
【特許文献2】特開2005−298100号公報
【特許文献3】特開2005−301331号公報
【特許文献4】特開2007−170022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年のデータ通信は、ネットワークを介在して実施されていることが多く、データの転送速度がネットワーク上のトラフィックやサーバへの負荷により大きな影響を受けることが少なくない。通常、何の障害もない理想的な通信状況であれば、有線通信では、無線通信よりも大きなデータ転送速度を確保して、無線通信よりも効率的にデータ転送を完了させることが可能である。
【0011】
しかし、前述したネットワーク上のトラフィックやサーバへの負荷によっては、無線通信によるデータ転送速度が有線通信によるデータ転送速度を上回る場合も考えられる。このため、通信機能として、無線通信機能と有線通信機能との双方を備えている端末装置等において前述したファームウエア等の書き換えを速やかに完了させるには、実質的に高いデータ転送速度が得られる通信機能を適宜選択して使用できることが望ましい。
【0012】
しかし、無線と有線の双方の通信機能を備えていても、実際に書き換えデータのダウンロードを実施するのは、前述したように先にデータ受信を開始した通信機能に限定されてしまう。例えば、書き換え用のデータの受信が転送速度の遅い通信機能側で先に開始されれば、転送速度の早い通信機能は活用することができず、ファームウエア等の書き換え処理の遅延要因になる。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ホスト装置との間でデータの送受信が可能な無線通信機能を備えた例えばICカードのような携帯型情報処理装置において、書き換え用のデータの受信が無線と有線の双方の通信機能で可能なとき、実質的に書き換えデータのダウンロードを短時間で完了させることのできる通信機能を選択して受信を実行することで、ファームウエア等の書き換え処理を迅速化することができる携帯型情報処理装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することのできるH、本発明は、ホスト装置との間でデータの送受信が可能な無線通信機能を備えた携帯型情報処理装置において、
ホスト装置との間でデータの送受信が可能な有線通信機能と、
書き換え可能な不揮発性のメモリと、
前記無線通信機能と前記有線通信機能との何れか一方で受信中の書き換えデータを他方の通信機能で受信すると、先に受信を開始していた第1の通信機能の受信速度の方が後に受信を開始した第2の通信機能の受信速度より速いか否かを判定し、前記第1の通信機能の受信速度の方が速い場合に、前記第1の通信機能による書き換えデータの受信を継続する通信制御部と、
前記第1の通信機能によって継続して受信した書き換えデータで、前記不揮発性のメモリを書き換えるメモリ書き換え実行部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、無線通信機能と有線通信機能のうち、先に受信を開始していた第1の通信機能の受信速度の方が速いか否かを判断する。そして第1の通信機能の受信速度の方が速ければ第1の通信機能による書き換えデータの受信を継続する。言い換えると、後に受信を開始した第2の通信機能の受信速度の方が速ければ、第2の通信機能によって受信した書き換えデータに基づき書き換え処理を実行することが可能となる。したがって、従来のように無線と有線の双方の通信機能を備えていても、先にデータ受信を開始した通信機能に限定されてしまうことがない。
【0015】
また、本発明において、前記通信制御部は、前記第2の通信機能の受信速度の方が速い場合に、それぞれの通信機能における受信完了までの所要時間を比較し、第2の通信機能における所要時間の方が短い場合に、第1の通信機能から第2の通信機能に切り替え、
前記メモリ書き換え実行部は、前記第2の通信機能によって新たに受信した書き換えデータで前記不揮発性のメモリを書き換えることが好ましい。
上記構成によれば、第2の通信機能の受信速度の方が速い場合は、それぞれの通信機能における受信完了までの所要時間をさらに比較する。そして、第2の通信機能における所要時間の方が短い場合は第1の通信機能から第2の通信機能に切り替える。すなわち、書き換えデータの受信が無線と有線の双方の通信機能で可能なときには、必ず、その書き換えデータの受信完了までの所要時間が短い方の通信機能に自動的に切り替えるので、書き換えデータのダウンロードをより短時間で完了させることができ、書き換えデータによるファームウエア等の書き換え処理を迅速化することができる。
【0016】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、ホスト装置との間でデータの送受信が可能な無線通信機能と、前記ホスト装置との間でデータの送受信が可能な有線通信機能と、書き換え可能な不揮発性のメモリと、を備えた携帯型情報処理装置の制御方法において、
前記無線通信機能と前記有線通信機能との何れか一方で受信中の書き換えデータを他方の通信機能で受信すると、先に受信を開始していた第1の通信機能の受信速度の方が後に受信を開始した第2の通信機能の受信速度より速いか否かを判定するステップと、
前記第1の通信機能の受信速度の方が速い場合に、前記第1の通信機能による書き換えデータの受信を継続し、前記第1の通信機能によって継続して受信した書き換えデータで、前記不揮発性のメモリを書き換えるステップと、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、従来のように無線と有線の双方の通信機能を備えていても、第1の通信機能における受信速度の方が速い場合に書き換えデータを受信するので、第1の通信機能における受信速度の方が遅い場合は第2の通信機能によって書き換えデータを受信することもできる。したがって、従来のように先にデータ受信を開始した通信機能に限定されてしまうことなく、書き換えデータのダウンロードをより短時間で完了させることができファームウエア等の書き換え処理を迅速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る携帯型情報処理装置及びその制御方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る携帯型情報処理装置の一実施形態であるICカードにおける画像表示をホスト装置により制御するICカードシステムの全体構成を示す図である。
【0018】
図1に示したICカードシステム300は、ICカード10−1,10−2と、これらのICカード10−1,10−2と相互に無線通信して、これらのICカード10−1,10−2に表示情報を送るホスト装置200とで構成されている。
【0019】
ホスト装置200は、具体的には、図1に示すように、通信ルータ20−1,20−2、制御装置30−1,30−2、ネットワーク40、管理装置50、およびユーザ端末装置60−1,60−2を備えている。ホスト装置200は、ICカード10−1,10−2との無線通信で得たカード固有のデータと、カード保有者の識別用データとを照合してICカードの認証を行い、認証結果を示す表示データをICカード10−1,10−2に送信する。
これに対して、ICカード10−1,10−2は、ホスト装置200から送信された表示データを、後述するEPDパネル11aに表示する。
【0020】
次に、ホスト装置200の各構成部品について、その動作や機能を説明する。
通信ルータ20−1,20−2は、無線通信用としてループアンテナA11〜A13およびループアンテナA21〜A23を有し、通信対象となるICカードが属している通信可能エリアに対応するループアンテナを用いてICカード10−1,10−2との無線通信を実施し、更に、後述の管理装置50から送信される表示データをICカード10−1,10−2に送信する。さらに、本実施の形態の通信ルータ20−1,20−2は、有線通信用として、ICカード10−1,10−2と有線接続する例えばRS232CやUSBなどのような適宜インタフェースIn−1,In−2を有していて、ICカード10−1,10−2との間で有線通信によるデータの送受信を行うことができる。すなわち、通信ルータ20−1,20−2には、通信機能として、無線通信機能と有線通信機能とが、それぞれ装備されている。
【0021】
制御装置30−1,30−2は、通信ルータ20−1,20−2が受信したICカード10−1,10−2からの情報を、ネットワーク40を介して管理装置50に送ったり、管理装置50から送信された表示情報を、通信対象のICカード10−1,10−2に対応するコマンドに変換し、通信ルータ20−1,20−2を介して通信対象のICカードに送信する。
【0022】
ネットワーク40は、例えば、LAN(Local Area Network)またはインターネット等によって構成され、制御装置30−1,30−2、ユーザ端末装置60−1,60−2、および、管理装置50を相互に接続し、これらの間で情報を送信する。
【0023】
管理装置50は、各種のデータベースを保有している。例えば、カード識別情報データベースを保有しており、通信ルータ20−1,20−2が受信したICカード10−1,10−2からの通信内容におけるカード固有のデータとカード識別情報データベースに格納しているカード保有者の識別用データとを照合してICカード10−1,10−2の認証を行う。また、他のデータベースからその認証結果に応じたデータを抽出し、それらのデータを結合して結合データを作成したりする。
【0024】
また、管理装置50は、ICカード10−1,10−2と相互に無線通信しているループアンテナの位置を特定する情報と、そのループアンテナを有する制御装置を特定する情報とを対応付けして格納する位置特定データベースを有している。例えば、ICカード10−1,10−2を、テーマパーク等において場内の施設案内を表示する入場券として利用した場合に、ICカード10−1,10−2と無線通信するループアンテナの位置を特定することで、ICカード10−1,10−2の保有者の存在区域を検知し、通信対象のICカード10−1,10−2に、より適切に施設情報を提供することが可能になる。
【0025】
ユーザ端末装置60−1,60−2は、例えば、ICカード10−1,10−2がテーマパーク等において場内の施設案内を表示する入場券として利用される場合に、テーマパーク等の施設管理者が操作可能な端末で、管理装置50に対して、所定の情報を所定のICカードに対して送信する要求を行うことができる。
【0026】
管理装置50は、例えば、ユーザ端末装置60−1,60−2から特定のICカードに対して所定の情報を送信する要求がなされた場合には、この位置特定データベースを参照して、通信対象のICカードが属する通信エリアに対応するループアンテナおよび制御装置を特定し、通信対象のICカードに対して情報を送信する。
【0027】
管理装置50が作成する結合データは、ICカード10−1,10−2に備えられたEPDパネル11aに表示する表示データを含み、通信ルータ20−1,20−2よりICカード10−1,10−2に送信される表示データである。例えば、一部の画像データをICカード10−1,10−2が出入りする区域や施設毎の要求等に応じて変更することにより、ICカード10−1,10−2に表示させる画像を出入りする区域や施設毎に必要な認証画像に自動的に切り替えることができるようになっている。
したがって、各種の区域や施設の受付等では、ICカード10−1,10−2に表示している画像を視認することで、容易にそのICカードの提示者の施設利用条件等を認証することができ、該当施設への出入り許可を視覚的に確認する認証カードとしても、利用することができる。
【0028】
なお、本実施の形態の管理装置50は、ICカード10−1,10−2が各種の動作をするために内蔵の不揮発性のメモリに記憶させている固有データやファームウエアのバージョンアップを、通信ルータ20−1,20−2から対象のICカード10−1,10−2へ、書き換え用のデータを送信することで実施する。書き換え用のデータの送信は、相手のICカード10−1,10−2との接続状況により、無線通信又は有線通信のいずれか一方または双方を利用して実施される。
【0029】
図2は、上記のICカード10−1,10−2がテーマパークの場内案内を表示する入場券として利用される場合に、管理装置50が作成した表示データによりICカード10−1,10−2に表示される画像を例示したものである。
【0030】
ここに例示した入場券は、場内案内の対象となっているテーマパークがアクアパークの場合を示したもので、場内の各区域や施設毎、あるいは更に細分したエリア毎に、ICカード10−1,10−2と相互に無線通信可能な通信ルータ20−1,20−2が配置されている。ICカード10−1,10−2を保有した入場者が各通信ルータ20−1,20−2により通信可能な範囲に入ると、自動的にICカード10−1,10−2と通信ルータ20−1,20−2との間で相互に通信が実行される。管理装置50が認証処理結果に応じて作成した表示データがICカード10−1,10−2に送信されて、各ICカード10−1,10−2に認証用の画像及び場内の施設案内の画像が表示される。
【0031】
図2において、(a)は初期状態の時のICカード10−1,10−2における表示画像であり、(b)〜(f)は既にアクアパークの入場券としての基本的な識別用データが登録されて、発券処理後のICカード10−1,10−2における表示画像の例を示したものである。
【0032】
図2(b)に示した表示画像は、アクアパークの入場口等で発券された時の画像データで、画像表示するデータとしては、本テーマパークの名称D1と、購入した入場件種別(大人)D2、歓迎のメッセージD3等が表示されている。
【0033】
図2(c)は、カードを保有する入場者が入場口を通過してアクアパーク内に入場したときの画面で、発券時の画像D1,D2の他に、入場日時D4,入場時間D5,当日のイベント情報D6,D7などの画像が表示される。
図2(d)は、カードを保有する入場者がラッコ飼育施設の周辺に移動したとき、そのエリアに送信されている表示情報による表示画面で、当日のイベント情報D6,D7が表示されて画面表示域の下側に、ラッコの餌付け時間などを示すそのエリア専用のサービス情報画像D8が、表示される。
【0034】
サービス情報画像D8に表示される内容は、施設毎に専用の画像を表示させることができる。図2(e)は、入場者がレストランの付近に移動した時に、サービス情報画像D8に表示される内容が、レストランの割引クーポンに変更された状態を示している。
図2(f)は、入場者がテーマパークの退場口に近づいた時に表示される画像を示している。入場券を返却する旨の画像D9と、来場のお礼のメッセージ画像D10が表示される。
【0035】
なお、本実施形態では、ICカードは2枚とされ、制御装置および通信ルータはそれぞれ2台とされ、ループアンテナは3本ずつとされ、ユーザ端末装置は2台とされ、管理装置は1台とされているが、これ以外の数であってもよい。
【0036】
図3は、図1に示すICカード10−1の外観構成を示す図である。
なお、ICカード10−1とICカード10−2は、同様の構成とされているので、以下では、ICカード10−1を例に挙げて説明を行う。
【0037】
図3に示すように、ICカード10−1は、略長方形の薄型の形状を有する担体100を有しており、ICカード10−1の表面(図3における奥行き方向の手前側の面)には、前述のホスト装置200の通信ルータ20−1,20−2から送信された表示データを表示する表示部として、EPD(Electrophoretic Display)パネル11aがはめ込まれている。そして、このEPDパネル11aの下側(図3の上下方向の下側)には、後述する入力操作部15を構成する3つの操作ボタン15a〜15cが配置されている。
また、本実施の形態のICカード10−1は、EPDパネル11aの上側(図3の上下方向の上側)には、後述する有線通信用のケーブルCaによりICカード10−1,10−2に接続される有線通信ポートPuが装備されている。
【0038】
図4は、ICカード10−1の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、ICカード10−1は、EPDパネル11a(表示部)、SRAM(Static RAM)11b、表示制御回路12、バッテリ13、電源回路14、入力操作部15、主制御MCU16(メモリ書き換え実行部)、不揮発性のメモリ17、通信制御MCU18(通信制御部)、RF(Radio Frequency)回路19、および、ループアンテナ19a、有線通信ポートPu、及び有線通信用データ送受信回路81を主要な構成要素としている。なお、上記主制御MCU16及び通信制御MCU18に表記の「MCU」は、Main Control Unitを略記したものである。
【0039】
ここで、EPDパネル11aは、透明な液体の中で浮動する微粒子を電界によって移動させることにより文字および図形等の表示を行うと共に、電源の供給を絶っても表示が継続する不揮発性の表示デバイスである。また、本実施の形態のEPDパネル11aは、薄肉シート状の表示デバイスで、いわゆる電子ペーパーとも呼称されるものである。
【0040】
SRAM11bは、EPDパネル11aに表示する情報を一時的に格納するメモリである。より詳細には、EPDパネル11aは、例えば、横および縦がそれぞれ352×450画素から構成されており、SRAM11bは、横および縦がそれぞれ352×450ビットの情報を格納可能な記憶容量を有しており、SRAM11bに格納されている情報の各ビットに応じてEPDパネル11aを構成する画素を黒または白の状態とすることにより、種々の情報を表示することができる。なお、この実施の形態では、SRAM11bは、書き込みのみが可能なライトオンリ(Write Only)のメモリとして構成される。
【0041】
表示制御回路12は、EPDパネル11aに情報を表示する際の制御を行う回路であり、例えば、主制御MCU16とEPDパネル11aとの間の電圧の変換を行う制御を行う。また、表示制御回路12は、電源回路14から供給された電力をSRAM11bおよびEPDパネル11aに供給する。
【0042】
バッテリ13は、例えば、リチウムイオン電池等によって構成され、電源回路14に直流電力を供給する。電源回路14は、バッテリ13から供給される電源電圧を、所定の電圧に昇圧または降圧し、表示制御回路12に供給する。なお、図4では、電源回路14によって生成された電源電力は、表示制御回路12のみに供給されているが、実際にはその他の部分にも供給されている。
【0043】
入力操作部15は、3つの操作ボタン15a〜15cと、図示せぬスイッチによって構成され、図3に示す操作ボタン15a〜15cがユーザによって操作された場合には、スイッチがオンまたはオフの状態になり、主制御MCU16がスイッチの状態に基づいて操作ボタンが操作されたことを検出する。
本実施の形態の場合、操作ボタン15a〜15cが操作されると、ホスト装置200に送信すべきデータが入力されたと主制御MCU16により認識され、操作された操作ボタンに対応するデータが、不揮発性のメモリ17に保存される。
【0044】
不揮発性のメモリ17は、例えば、FeRAM(Ferroelectric RAM)によって構成され、管理装置50から供給された描画コマンドを格納する。また、不揮発性のメモリ17は、主制御MCU16が使用するフォントデータおよびビットマップデータを格納するとともに、主制御MCU16が実行するプログラム等を格納する。
【0045】
本実施の形態の場合、不揮発性のメモリ17は、ホスト装置200において各ICカードの識別や認証処理に必要な使用者毎に割り当てられる固有のデータを格納する固有データ格納部17aを有している。また、主制御MCU16による各種の動作制御に必要なファームウエア(プログラム)を格納するプログラム格納部17bを有している。
【0046】
RF回路19は、ループアンテナ19aによって捕捉された電波を復調し、ディジタル信号を生成して、通信制御MCU18に供給する。ループアンテナ19aは、コイル形状を有しており、通信ルータ20から送信された電波を捕捉し、RF回路19に供給する。
【0047】
有線通信用データ送受信回路81は、有線通信ポートPuに接続されたケーブルCaを介してホスト装置200と接続され、ホスト装置200とデータの送受信をする。
【0048】
通信制御MCU18は、RF回路19及びループアンテナ19aを介してデータを送受信する無線通信機能と、有線通信用データ送受信回路81及び有線通信ポートPu及びケーブルCaを介してデータを送受信する有線通信機能との二つの通信機能を使用することができる。
また、通信制御MCU18は、RF回路19や有線通信用データ送受信回路81から供給されるディジタル信号を解釈し、ディジタル信号から復元されたコマンドを主制御MCU16に供給する。
【0049】
また、本実施の形態の通信制御MCU18は、無線通信機能と有線通信機能との何れか一方で受信中のデータが他方の通信機能でも受信可能になったとき、それぞれの通信機能における受信完了までの所要時間を比較して、そのデータ受信に使用する通信機能を受信完了までの所要時間が短い方の通信機能に切り替える通信制御を行い、受信したデータを主制御MCU16に渡す。
【0050】
主制御MCU16は、通信制御MCU18から供給された描画コマンドを不揮発性のメモリ17に描画コマンドとして格納するとともに、コマンドを解釈し、不揮発性のメモリ17に格納されている対応するフォントデータまたはビットマップデータを取得し、内蔵されているVRAM(Video RAM)をワークエリアとして描画処理を実行し、得られた画像データを表示制御回路12に供給してEPDパネル11aに表示させる処理を実行する。
【0051】
また、本実施形態の場合、主制御MCU16は、メモリ書き換え実行部16aを備えている。メモリ書き換え実行部16aは、通信制御MCU18から新たなデータ又はプログラムを受信すると、不揮発性のメモリ17の固有データ格納部17a又はプログラム格納部17bの書き換え処理を実行する。
【0052】
図5は、ファームウエア等の書き換え用のデータを無線又は有線の何れかの通信機能によりホスト装置200から受信して不揮発性のメモリ17上のデータを書き換える、データ書き換え方法を説明するためのフローチャートである。次に、図5を参照してデータ書き換え方法について説明する。
【0053】
RF回路19あるいは有線通信用データ送受信回路81を介して、不揮発性のメモリ17の固有データ格納部17a又はプログラム格納部17bに格納済みのデータ又はプログラムを書き換える書き換えデータを、何れか一方の通信機能(第1の通信機能)が受信する(ステップS201)。通信制御MCU18は、それぞれの通信機能が受信するデータを監視しており、他方の通信機能(第2の通信機能)において同一のデータの受信処理が実行されているか否かを判定する(ステップS202)。
他方の通信機能において、同一のデータの受信処理が実行されていないとき(すなわち、データ受信が一方の通信機能のみで可能なとき(ステップS202:Yes))には、そのまま、その書き換え用データの受信を継続し、受信した書き換え用データを主制御MCU16に渡して、書き換え処理を実行させる(ステップS208)。
【0054】
ステップS202において、既に他方の通信機能において同一のデータ又はプログラムの受信処理が実行されていると判定されたときには(ステップS202:No)、次のステップS203に進む。ステップS203では、先に受信を開始していた他方の通信機能における受信速度B0と、新たに受信を開始する一方の通信機能における受信速度B1と、を比較する。
【0055】
先に受信を開始していた他方の通信機能における受信速度B0が新たに受信を開始する一方の通信機能における受信速度B1よりも大きい(B0>B1)と判定した場合(ステップS203:No)、ステップS207に進む。つまり、B0>B1である場合は、既に受信中の他方の通信機能による受信を継続した方が、その書き換え用データの受信を完了するまでの所要時間が短くなる。このため、既に受信処理を実行中の他方の通信機能による受信を継続する(ステップS207)。
【0056】
一方、ステップS203において、先に受信を開始していた他方の通信機能における受信速度B0が、新たに受信を開始する一方の通信機能における受信速度B1よりも小さい(B0<B1)と判定した場合は、ステップS204へ進む。ステップS204では、それぞれの通信機能において受信を継続したときに書き換えデータの受信が完了するまでの予測所要時間を比較する。
【0057】
図6は、例えば書き換え用データとして700Byteのデータを受信する場合のデータ受信量と経過時間との関係を示したものである。データ転送速度の遅い無線通信機能が先にデータの受信を実行すると、受信完了までの所要時間は後から受信可能になった有線通信機能の方が短くなる様子を示している。図6に示したような通信状況では、ステップS204において、新たに受信を開始する一方の通信機能における予測所要時間T1が、先に受信を開始している他方の通信機能における予測所要時間T0よりも小さいと判定される(ステップS204:Yes)。その結果、先に受信を開始している他方の通信機能における受信処理を停止する(ステップS205)。一方の通信機能において受信したデータにより書き換えを実行させるべくデータの受信処理を一方の通信機能に切り替えて、書き換えデータの書き込みを行う(ステップS206)。
【0058】
図7は、書き換え用のデータとして700Byteのデータを受信する場合のデータ受信量と経過時間との関係を示したものである。データ転送速度の遅い無線通信機能が先にデータの受信を実行しても、受信完了までの所要時間は後から受信可能になった有線通信機能の方が長くなる様子を示している。図7に示したような通信状況では、ステップS204において、新たに受信を開始する一方の通信機能における予測所要時間T1が先に受信を開始している他方の通信機能における予測所要時間T0よりも大きいと判定される(ステップS204:No)。その結果、先に受信を開始している他方の通信機能における受信処理が継続されることになる(ステップS207)。
【0059】
以上に説明した本実施の形態のICカード10−1,10−2及びその制御方法では、書き換え用のデータの受信が無線または有線の何れか一方の通信機能により開始されるとき、他方の通信機能において同一の書き換え用データの受信処理が実行されているか否かを判定する。
そして、既に他方の通信機能において同一の書き換え用データの受信処理が実行されていると判定されると、ステップS203において先に受信を開始していた他方の通信機能における受信速度B0と新たに受信を開始する一方の通信機能における受信速度B1との大小関係を判定する。ステップS203において、先に受信を開始していた他方の通信機能における受信速度B0が新たに受信を開始する一方の通信機能における受信速度B1よりも大きいと判定された時には、他方の通信機能により受信した書き換えデータにより書き換えを実行させるべく、既に受信処理を実行中の他方の通信機能による受信を継続させる。
【0060】
一方、ステップS203において、先に受信を開始していた他方の通信機能における受信速度B0が新たに受信を開始する一方の通信機能における受信速度B1よりも小さいと判定された時には、それぞれの通信機能において受信を継続したときに書き換えデータの受信が完了するまでの予測所要時間T0,T1の算出が実施され、算出した各予測所要時間T0,T1の大小関係が判定される。ステップS204において、新たに受信を開始する一方の通信機能における予測所要時間T1が先に受信を開始している他方の通信機能における予測所要時間T0よりも小さいと判定されたときには、通信機能を切り替える。すなわち、一方の通信機能において受信したデータにより書き換えを実行させるべく、先に受信を開始している他方の通信機能における受信処理を停止し、書き換えデータの受信処理を一方の通信機能に切り替える。
【0061】
以上に説明した本実施の形態のICカード10−1,10−2及びその制御方法では、書き換え用データの受信が無線と有線の双方の通信機能で可能なときには、必ず、そのデータの受信完了までの所要時間が短い方の通信機能に切り替えて、データ受信が実施される。このため、書き換え用データのダウンロードをより短時間で完了させることができ、書き換え用データによるファームウエア等の書き換え処理を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態のICカードシステムの全体構成を示す図である。
【図2】ホスト装置との無線通信でICカードに送信される表示データによってICカードに表示される具体的な画像の例の説明図である。
【図3】図1に示すICカードの外観を示す図である。
【図4】図1に示すICカードの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図5】図1に示したICカードにおいて、書き換え用データを受信してファームウエア等の書き換えを行うときの制御方法を示すフローチャートである。
【図6】それぞれの通信機能によるデータ受信量と経過時間との関係を示したグラフである。
【図7】それぞれの通信機能によるデータ受信量と経過時間との関係を示したグラフであって他の例を示したものである。
【符号の説明】
【0063】
10−1,10−2:ICカード、11a:EPDパネル(表示部)、15:入力操作部、15a〜15c:操作ボタン、16:主制御MCU、16a:メモリ書き換え実行部、17:不揮発性のメモリ、17a:固有データ格納部、17b:プログラム格納部、18:通信制御MCU(通信制御部)、81:有線通信用データ送受信回路、200:ホスト装置、300:ICカードシステム、Pu:有線通信ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置との間でデータの送受信が可能な無線通信機能を備えた携帯型情報処理装置において、
ホスト装置との間でデータの送受信が可能な有線通信機能と、
書き換え可能な不揮発性のメモリと、
前記無線通信機能と前記有線通信機能との何れか一方で受信中の書き換えデータを他方の通信機能で受信すると、先に受信を開始していた第1の通信機能の受信速度の方が後に受信を開始した第2の通信機能の受信速度より速いか否かを判定し、前記第1の通信機能の受信速度の方が速い場合に、前記第1の通信機能による書き換えデータの受信を継続する通信制御部と、
前記第1の通信機能によって継続して受信した書き換えデータで、前記不揮発性のメモリを書き換えるメモリ書き換え実行部と、を有することを特徴とする携帯型情報処理装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記第2の通信機能の受信速度の方が速い場合に、それぞれの通信機能における受信完了までの所要時間を比較し、第2の通信機能における所要時間の方が短い場合に、第1の通信機能から第2の通信機能に切り替え、
前記メモリ書き換え実行部は、前記第2の通信機能によって新たに受信した書き換えデータで前記不揮発性のメモリを書き換えることを特徴とする請求項1に記載の携帯型情報処理装置。
【請求項3】
ホスト装置との間でデータの送受信が可能な無線通信機能と、前記ホスト装置との間でデータの送受信が可能な有線通信機能と、書き換え可能な不揮発性のメモリと、を備えた携帯型情報処理装置の制御方法において、
前記無線通信機能と前記有線通信機能との何れか一方で受信中の書き換えデータを他方の通信機能で受信すると、先に受信を開始していた第1の通信機能の受信速度の方が後に受信を開始した第2の通信機能の受信速度より速いか否かを判定するステップと、
前記第1の通信機能の受信速度の方が速い場合に、前記第1の通信機能による書き換えデータの受信を継続し、前記第1の通信機能によって継続して受信した書き換えデータで、前記不揮発性のメモリを書き換えるステップと、を有することを特徴とする携帯型情報処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−217674(P2009−217674A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62232(P2008−62232)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】