説明

携帯容器

【課題】蓋部を片手の指先で簡単に開閉操作することができ、しかも耐久性に優れ、さらに錠剤等の粒状物の防湿性に優れると共に、これら粒状物を小出しするのが非常に簡単な携帯容器を提供する。
【解決手段】蓋体1の両側面部1aに設けた一対の枢支部3を、容器体2の両側面2aに設けた一対の枢支部7に枢支すると共に、前記蓋体1の上部前面部1bに設けた筒状の封止部4を、前記容器体2の凹部6の前面部6aに設けた開口部8に対向するようにして、前記蓋体1を前記容器体2の上部に回動自在として取り付け、前記蓋体1の封止部4を前記容器体2の開口部8に嵌脱自在として、前記封止部4によって前記開口部8を開閉自在としたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医薬品や栄養補助食品などの粒状物、特に錠剤を収容して携帯するのに適した携帯容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品や栄養補助食品などの錠剤等の粒状物は、ビン等の大容量の容器に収容して販売されることがある。しかし、このような大容量の容器を携帯するのは不便であるため、小分けして携帯するのに適した携帯容器が存在する。
【0003】
このような携帯容器としては、例えば図8、9に示したように、上端に開口部21を有する有底筒状の容器本体22と、この容器本体22上端の左右の一側にヒンジ機構23を介して連結した蓋部24とを備えたものとしている。そして、この蓋部24は、ヒンジ機構23を中心に俯仰揺動して、開口部21を開放する開放状態と、開口部21を封止する封止状態とに切り換え可能にしたものとしている。さらに、前記ヒンジ機構23は、一対の平行ヒンジ25、25と、この両平行ヒンジ25、25間に配置した略L字状のL型ヒンジ26とから構成したものとしている。このL型ヒンジ26は、一端を容器本体22に連結し、他端を蓋部24の頂面27の周縁よりも内方位置に連結したものとしている。また、前記容器本体22を平面視で前後方向よりも左右に長く形成し、開口部21の少なくとも前縁部21aと後縁部21bとを、容器本体22の外周縁22aに近接させて形成したものとしている(特許文献1)。
【0004】
このように構成した従来の携帯容器は、蓋部24を片手の指先で簡単に開閉操作することができ、しかも開口部21を大きく開口して錠剤等の粒状物を容易に取り出すことができるという効果を有しているとしている。
【特許文献1】特開平8−337260号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の携帯容器では、蓋部24とヒンジ機構23とは軟質合成樹脂で一体成形したものとし、蓋部24を、ヒンジ機構23を中心に俯仰揺動して、開口部21を開放したり封止するものとしているため、この操作を長年に渡って行っていると軟質合成樹脂の薄肉部が弱り、ヒンジ機構23の動作が悪くなったり、ヒンジ機構23が切断されて動作しなくなったりするので、耐久性に劣るという問題点を有していた。
【0006】
さらに、上記従来の携帯容器では、開口部21を大きく開口して錠剤等の粒状物を容易に取り出すことができるとしているが、錠剤等の粒状物を小出しする場合には親指等で開口部21の一部を閉塞するなどしなければならず、その操作が面倒であるという問題点を有していた。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、蓋部を片手の指先で簡単に開閉操作することができ、しかも耐久性に優れ、さらに錠剤等の粒状物の防湿性に優れると共に、これら粒状物を小出しするのが非常に簡単な携帯容器を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、この発明の携帯容器は、蓋体1の両側面部1aに設けた一対の枢支部3を、容器体2の両側面2aに設けた一対の枢支部7に枢支すると共に、前記蓋体1の上部前面部1bに設けた筒状の封止部4を、前記容器体2の凹部6の前面部6aに設けた開口部8に対向するようにして、前記蓋体1を前記容器体2の上部に回動自在として取り付け、前記蓋体1の封止部4を前記容器体2の開口部8に嵌脱自在として、前記封止部4によって前記開口部8を開閉自在としたものとしている。
【0009】
そして、この発明の携帯容器は、前記蓋体1の上面部1cに指掛け部5を設けたものとしている。
【0010】
さらに、この発明の携帯容器は、前記封止部4および開口部8を、容器体2内に収容する粒状物Pが円盤型の錠剤である場合には、この粒状物Pの中央断面の略楕円形状より一回り大きくした略楕円形状としている。
【0011】
また、この発明の携帯容器は、前記蓋体1の枢支部3を貫通孔とし、前記容器体2の枢支部7を凸部としている。
【0012】
さらに、この発明の携帯容器は、前記容器体2を、一面が開口した合成樹脂製の偏平状ケース体2Aと、この偏平状ケース体2Aの一面の開口を閉鎖する合成樹脂製の平板状体2Bを重ね合わせ、その周辺部を熱溶着したものとしている。
【0013】
また、この発明の携帯容器は、前記蓋体1の枢支部3を容器体2の枢支部7に枢支するときに、この容器体2の枢支部7を蓋体1の枢支部3に案内する傾斜溝10を、前記枢支部3に至るようにして蓋体1の両側面部1aの内面に設けたものとしている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の携帯容器は、以上に述べたように構成されているので、蓋部を片手の指先で簡単に開閉操作することができ、しかも耐久性に優れ、さらに錠剤等の粒状物の防湿性に優れると共に、これら粒状物を小出しするのが非常に簡単なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の携帯容器の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
この発明の携帯容器は、図1〜3に示したように、略倒U字形状の蓋体1と、平面視すると略長円形状をした偏平な容器体2とからなる。
【0017】
前記蓋体1は、弾性変形可能な合成樹脂からなり、両側面部1aの下部に一対の枢支部3を設け、上部前面部1bに筒状の封止部4を突設し、上面部1cに指掛け部5を設けたものとしている。枢支部3は、図示したものでは貫通孔としているが、凹部としてもよく、または凸部としてもよい。封止部4は、容器体2内に収容する粒状物Pの中央断面より大きくした円形状等とすることができるが、容器体2内に収容する粒状物Pが円盤型の錠剤である場合には、この粒状物Pの中央断面の略楕円形状より一回り大きくした略楕円形状とすることができる。指掛け部5は、掛けた指が滑り難い形状、例えば線状突起にするのが好ましい。
【0018】
前記容器体2は、弾性変形可能または弾性変形不可能な合成樹脂からなり、上部の略中央に平面視すると截頭楕円形状をした凹部6を設け、この凹部6の下方の容器体2の両側面部2aに一対の枢支部7を設け、凹部6の前面部6aに前記蓋体1の封止部4と嵌脱自在とした開口部8を設けたものとしている。枢支部7は、図示したものでは凸部としているが、前記枢支部3を凸部とした場合には凹部としてもよい。開口部8は、前記蓋体1の封止部4に対応した形状としている。なお、前記蓋体1の封止部4には、この開口部8を密閉すると共に開口部8から容易に抜けないようにするために、その先端周囲にリブ4aを設けたものとしている。
【0019】
そして、この発明の携帯容器は、前記蓋体1の両側面部1aに設けた一対の枢支部3を、前記容器体2の両側面2aに設けた一対の枢支部7に枢支すると共に、前記蓋体1の上部前面部1bに設けた筒状の封止部4を、前記容器体2の凹部6の前面部6aに設けた開口部8に対向するようにして、前記蓋体1を前記容器体2の上部に回動自在として取り付け、前記蓋体1の封止部4を前記容器体2の開口部8に嵌脱自在として、前記封止部4によって前記開口部8を開閉自在としたものとしている。なお、前記蓋体1の枢支部3を容器体2の枢支部7に枢支するには、蓋体1が弾性変形可能な合成樹脂からなるため、この蓋体1の両側面部1aを外側に少し開くように力をかければ、その枢支操作を簡単に行うことができる。また、前記蓋体1の封止部4を前記容器体2の開口部8に嵌脱するにも、蓋体1が弾性変形可能な合成樹脂からなるため、その操作が簡単に行うことができると共に、嵌合時に両者を密接状態に保っておける。
【0020】
さらに、この発明の携帯容器は、前記容器体2を、一面が開口した合成樹脂製の偏平状ケース体2Aと、この偏平状ケース体2Aの一面の開口を閉鎖する合成樹脂製の平板状体2Bを重ね合わせ、その周辺部を熱溶着したものとしている。これにより、ケース体2Aと平板状体2Bの周辺部はシールされ密着される。なお、前記偏平状ケース体2Aには、粒状物Pの容器体2内での移動や配置を制御して、粒状物Pが容器体2の開口部8へスムーズに送られるようにした仕切り9を設けたものとしている。
【0021】
また、この発明の携帯容器は、前記蓋体1の枢支部3を容器体2の枢支部7に枢支するときに、この容器体2の枢支部7を蓋体1の枢支部3に案内する傾斜溝10を、前記枢支部3に至るようにして蓋体1の両側面部1aの内面に設けたものとしている。このようにすれば、蓋体1の両側面部1aを外側にほんの少し開くように力をかければ、その枢支操作を簡単に行うことができる。
【0022】
さらに、この発明の携帯容器は、前記蓋体1が容器体2の上部で回動するときに、蓋体1の上面部1cの裏面が摺動するようにした円弧状凹部11を前記凹部6の後方に設けたものとしている。なお、前記円弧状凹部11の後端は、蓋体1の回動を制限するストッパー部12としている。
【0023】
以上のように構成したこの発明の携帯容器を開閉操作するには、容器体2を片手で持ち、親指を蓋体1の上面部1cの当て前後(図1、2では左右)に動かすことにより、蓋体1を前後(図1、2では左右)に回動させればよい。
【0024】
すなわち、容器体2を片手で持ち、親指を蓋体1の上面部1cの当て、この親指を後方に動かすことにより、蓋体1を後方に回動させれば、蓋体1の封止部4が容器体2の開口部8から抜け、この開口部8が開いた状態となる。そして、前記開口部8が開いた状態で、容器体2を水平にして、さらにその状態から傾けたり逆さにすれば、開口部8から錠剤等の粒状物Pを小出しすることができる。
【0025】
また、前記親指を前方に動かすことにより、蓋体1を前方に回動させれば、蓋体1の封止部4が容器体2の開口部8に嵌まり、開いた状態の開口部8が閉まった状態となる。前記開口部8が閉まった状態では、容器体2内部は密閉された状態となるので、錠剤等の粒状物Pが湿気を帯び難くなり、防湿性に優れたものとなる。
【0026】
したがって、この発明の携帯容器は、蓋体1を片手の指先で簡単に開閉操作することができるものとなり、その開閉機構も蓋体1の枢支部3を容器体2の枢支部7に枢支することにより、蓋体1が回動するようにしたものであるので、耐久性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の携帯容器の蓋体を閉じた状態の平面図である。
【図2】この発明の携帯容器の蓋体を開いた状態の平面図である。
【図3】この発明の携帯容器の分解斜視図である。
【図4】この発明の携帯容器の蓋体を閉じた状態の平面断面図である。
【図5】図4中のA−A線によるこの発明の携帯容器の断面図である。
【図6】この発明の携帯容器の蓋体を開いた状態の平面断面図である。
【図7】図6中のB−B線によるこの発明の携帯容器の断面図である。
【図8】従来の携帯容器の蓋体を開いた状態の断面図である。
【図9】従来の携帯容器の蓋体を開いた状態の平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 蓋体
1a 側面部
1b 上部前面部
1c 上面部
2 容器体
2a 側面部
2A 偏平状ケース体
2B 平板状体
3 枢支部
4 封止部
5 指掛け部
6 凹部
6a 前面部
7 枢支部
8 開口部
10 傾斜溝
P 粒状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体(1)の両側面部(1a)に設けた一対の枢支部(3)を、容器体(2)の両側面(2a)に設けた一対の枢支部(7)に枢支すると共に、前記蓋体(1)の上部前面部(1b)に設けた筒状の封止部(4)を、前記容器体(2)の凹部(6)の前面部(6a)に設けた開口部(8)に対向するようにして、前記蓋体(1)を前記容器体(2)の上部に回動自在として取り付け、前記蓋体(1)の封止部(4)を前記容器体(2)の開口部(8)に嵌脱自在として、前記封止部(4)によって前記開口部(8)を開閉自在としたことを特徴とする携帯容器。
【請求項2】
前記蓋体(1)の上面部(1c)に指掛け部(5)を設けたことを特徴とする請求項1記載の携帯容器。
【請求項3】
前記封止部(4)および開口部(8)を、容器体(2)内に収容する粒状物(P)が円盤型の錠剤である場合には、この粒状物(P)の中央断面の略楕円形状より一回り大きくした略楕円形状としたことを特徴とする請求項1記載の携帯容器。
【請求項4】
前記蓋体(1)の枢支部(3)を貫通孔とし、前記容器体(2)の枢支部(7)を凸部としたことを特徴とする請求項1記載の携帯容器。
【請求項5】
前記容器体(2)を、一面が開口した合成樹脂製の偏平状ケース体(2A)と、この偏平状ケース体(2A)の一面の開口を閉鎖する合成樹脂製の平板状体(2B)を重ね合わせ、その周辺部を熱溶着したものとしたことを特徴とする請求項1記載の携帯容器。
【請求項6】
前記蓋体(1)の枢支部(3)を容器体(2)の枢支部(7)に枢支するときに、この容器体(2)の枢支部(7)を蓋体(1)の枢支部(3)に案内する傾斜溝(10)を、前記枢支部(3)に至るようにして蓋体(1)の両側面部(1a)の内面に設けたことを特徴とする請求項1記載の携帯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−44631(P2008−44631A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219423(P2006−219423)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(391048500)大扇産業株式会社 (16)
【出願人】(391003392)大幸薬品株式会社 (20)
【Fターム(参考)】