説明

携帯式空気吸入器

【課題】有害ガスに曝されそうになったとき、瞬時に新鮮な空気や酸素が吸引できる携帯式空気吸引器を提供することを目的とする。
【解決手段】吸引キャップと空気缶からなる携帯式空気吸入器であって、前記吸引キャップは、噴射ボタン押圧部と、呼気を排出する逆止弁と、鼻と口を同時に覆うことができる顔面密着用シール部と、空気缶と結合する嵌合部とを有することを特徴とする携帯式空気吸入器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急避難用携帯式空気吸入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プラント等では一酸化炭素ガスを含む可燃性の有毒ガスを取り扱っており、設備の運転やメンテナンスにおいて、まれなケースであるが大気に噴出した少量の有毒ガスに曝される危険性がある。この場合、安全な場所まで避難するための10数秒の間有毒ガスに汚染されていない空気を吸引するための防具が必要となる。
【0003】
また作業者は、一般的に一酸化炭素ガスを検知する携帯型検知器を所持しているものであるが、現実的には、有毒ガスに曝されて初めてそのガスの存在に気づくケースが多々あり、この場合は、避難する間もなくこのガスによって呼吸困難となり意識を失い倒れてしまう事故が発生することもある。
【0004】
このような非常時における呼吸器具として、特許文献1には口の周囲を覆うマウスパッドとこのパッドに連結される密閉袋とによって、非常時に自分の肺内に溜まった空気を密閉袋内に入れて臨時呼吸を行える非常用呼吸器具が開示されている。
【0005】
特許文献2には、顔面を覆う耐熱性密閉袋内に空気混入酸素または圧縮空気ボンベを収納してなる非常用呼吸装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、開栓装置の上流側にカートリッジ式小型ボンベを、下流側に鼻と口を覆うマスクを取り付けた避難用呼吸器が開示されている。
【0007】
特許文献4には、空気ボンベの出側に送給空気量を減圧調整するレギュレータプラグにマスクが接続された送気管を接続した緊急避難用空気吸引装置が開示されている。
【0008】
特許文献5には、顔面に密着するマスクの密閉空間に供給量調節手段付酸素ボンベと互いに吸排気調節袋で連結する呼気排気ワンウエイバルブ付排気管と呼気吸引ワンウエイバルブ付吸気管をそれぞれ接続した避難マスクが開示されている。
【0009】
特許文献6には、水中メガネ式のアイマスクと圧搾空気を充填した小型ボンベを組み合わせて火災時に安全な避難脱出が行える火災時の避難脱出用マスクが開示されている。
【特許文献1】特開平11−146922号公報
【特許文献2】特開2003−190306号公報
【特許文献3】特開平6−47102号公報
【特許文献4】特開平6−47103号公報
【特許文献5】特開平10−248947号公報
【特許文献6】特開平11−299908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1または特許文献2に開示されている自呼吸式のマスクの場合、このマスクを装着するのに約10秒程度かかるため、その間に周辺空気中の有害なガスを吸い込む恐れがあり緊急時には実用的とは言い難いという問題がある。
【0011】
また、特許文献3から特許文献6に開示されているガスマスクの場合、ガスマスク装置が重く、構造が複雑であり、しかも大きな酸素缶を有するため携帯性に問題があり、危険が差し迫った緊急時に使い辛いという問題がある。また装置の価格も非常に高く各個人使用するには実用的でない。
【0012】
また、登山やマラソン等の激しい運動後に使用する携帯式濃縮酸素スプレーにおいては、吸引キャップが別付け式であるため、緊急時の瞬時の使用には耐えられないこと及び酸素吹出し量が呼気の吸い込み量より少ないため、吸引キャップの外側にある外気取り入れ穴から有害ガスを吸い込む危険性があり実用できないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記した問題点を解消し、有害ガスに曝されそうになったとき、瞬時に新鮮な空気や酸素が吸引できる携帯式空気吸引器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は、上述した問題点を解決すべく鋭意検討を行い本発明をなしたもので、その要旨は以下の通りである。
【0015】
第一の発明は、吸引キャップと空気缶からなる携帯式空気吸入器であって、前記吸引キャップは、噴射ボタン押圧部と、呼気を排出する逆止弁と、鼻と口を同時に覆うことができる顔面密着用シール部と、空気缶と結合する嵌合部とを有することを特徴とする携帯式空気吸入器である。
【0016】
第二の発明は、被服に固定して持ち運べることを特徴とする第一の発明に記載の携帯式空気吸入器である。
【0017】
第三の発明は、前記空気缶がスプレー式空気缶であって、空気吹出し口を顔面密着用シール部と反対側に設けたことを特徴とする第一の発明または第二の発明に記載の携帯式空気吸入器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の携帯式空気吸入器を使用すると有害ガスを取り扱う操作や設備のメンテナンス作業において、有害ガスに曝されたとき、瞬時に新鮮な空気を吸引することができるので、確実に安全な場所に避難することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図1は携帯式空気吸入器10の吸引キャップ1を模式的に示す断面図である。
【0021】
吸引キャップ1は携帯性を考慮して、軽量で保形性を有する合成樹脂で作製するのが望ましいがこれに限定されるものではない。また、全体に透明であるのが内部を透視できるので望ましいがこれに限定されるものではない。鼻と口を覆えるように顔面に密着する部位4には、顔面にソフトフィットし、有害ガスが侵入しないように気密性、柔軟性を有する合成樹脂性スポンジ等で補強されている。
【0022】
5は空気スプレー缶3の噴射ボタン2を吸引キャップ1の外側から押圧する押圧部であり、吸引キャップ1の材質よりも軟質な材料から成り、指で軽く押すだけで噴射ボタン2を押下げて空気を噴射できるようになっている。
【0023】
6は逆止弁であり、吸引キャップ1内の圧力が所定圧力になったときに、呼気を吸引キャップ1の外部に排出する弁である。該逆止弁6は、一方向にしか作動しないようになっているので、外部の有害ガスが前記逆止弁6を伝って、吸引キャップ1内に侵入することはない。
【0024】
7は空気スプレー缶3との嵌合部で着脱可能であるが、外部から有害ガスが侵入しないようにシール性に優れた構造となっている。
【0025】
図2は携帯式空気吸入器10の空気スプレー缶3の全体形状を示す断面図である。2は噴射ボタン、9は空気噴射口を示す。空気噴射口9は顔面に直接空気が吹きかからないように顔面に密着する部位4と反対側を向いている。
【0026】
8の部分は、本発明の一実施の形態として、空気スプレー缶3を上腕部に固定するための面ファスナー貼付け部である。なお、空気スプレー缶3は軽量であり、これを被服の一部に固定する手段は、面ファスナーに限定されるものではなく、フックによる吊下げ方法やバンドを用いる方法等、被服の一部に固定され緊急時に素早く取外せる固定方法であれば、常用の固定方法を用いることができる。
【0027】
図3は、図1の吸引キャップ1と図2の空気スプレー缶3とを嵌合して一体化した携帯式空気吸入器10の断面図である。通常は、この状態で携行し、いざ危険が迫った時にすぐ空気を吸引できるようにしておく。本発明の空気スプレー缶3は複雑な機械部品が装着されていないため、約50g程度と軽量であり、常時携帯することが可能である。
【0028】
空気スプレー缶3の缶内の空気量は、危険が迫った時にその場を退避するに必要な空気量を確保する必要があり、作業場所から約30秒かけて退避するに必要な空気量(式(1)に示す)を十分に確保した約8リットルが充填されている。
【0029】
なお、空気スプレー缶3としたが、内量物は空気に限定されるものではなく、純酸素または、空気と純酸素との混合ガス等であってもよい。
【0030】
必要空気量=200CC/1呼吸×15呼吸/30秒・・・・・・・・(1)
図4は、本発明の携帯式空気吸入器10を顔面にセットした状態を模式的に示した断面図である。
【0031】
図5は、本発明の携帯式空気吸入器10を使用して空気を吸引する状態を模式的に示した断面図であり、逆止弁は閉止状態となっている。
【0032】
図6は、本発明の携帯式空気吸入器10を使用して呼気を吐出す状態を模式的に示した断面図であり、逆止弁は開いた状態となっている。
【0033】
図7は、本発明の吸引キャップ1を立体的に俯瞰した鳥瞰図である。図8は、本発明の吸引キャップ1の上面図である。
【0034】
図9は、本発明の携帯式空気吸入器10を作業者の上腕部に固定して持ち歩いている状態を示す図であり、上腕部に面ファスナーを安全ピン等で固定し、対応する空気スプレー缶3側にも面ファスナーが取付けられている。
【0035】
このようにすると、本発明の携帯式空気吸入器10は軽量であるので、持運びに便利であり、また、常時顔面に装着する必要がなく、緊急時に上腕部から取外して顔面に装着できるので、通常時は両手を使用でき、作業性にも優れている。
【0036】
図10は、有毒ガスが発生した時に、即座に本発明の携帯式空気吸入器10を上腕部から外し、鼻と口を覆って避難している様子を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は軽量で携帯性に優れるので、有毒ガスが発生する場所での緊急避難用だけでなく、登山やスポーツ等での酸素吸引用に本発明の携帯式空気吸入器10を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の携帯式空気吸入器の吸引キャップを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の携帯式空気吸入器の空気スプレー缶の全体形状を示す断面図である。
【図3】本発明の吸引キャップと空気スプレー缶とを嵌合して一体化した携帯式空気吸入器の断面図である。
【図4】本発明の携帯式空気吸入器を顔面にセットした状態を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の携帯式空気吸入器を使用して空気を吸引する状態を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の携帯式空気吸入器を使用して呼気を吐出す状態を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の吸引キャップを立体的に俯瞰した鳥瞰図である。
【図8】本発明の吸引キャップの上面図である。
【図9】本発明の携帯式空気吸入器を上腕部に固定して持ち歩いている状態を示す図である。
【図10】本発明の携帯式空気吸入器で鼻と口を覆って避難している様子を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 吸引キャップ
2 噴射ボタン
3 携帯式空気缶
4 顔面密着部シール材
5 噴射ボタン押圧部
6 逆止弁
7 嵌合部
8 面ファスナー部
9 噴射口
10 携帯式空気吸入器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引キャップと空気缶からなる携帯式空気吸入器であって、前記吸引キャップは、噴射ボタン押圧部と、呼気を排出する逆止弁と、鼻と口を同時に覆うことができる顔面密着用シール部と、空気缶と結合する嵌合部とを有することを特徴とする携帯式空気吸入器。
【請求項2】
被服に固定して持ち運べることを特徴とする請求項1記載の携帯式空気吸入器。
【請求項3】
前記空気缶がスプレー式空気缶であって、空気吹出し口を顔面密着用シール部と反対側に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の携帯式空気吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−233110(P2009−233110A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83259(P2008−83259)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】