携帯機器及び携帯時計
【課題】押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器を提供する。
【解決手段】腕時計(携帯機器)11において、押し釦(押し引き操作部材)27は係合部30を有し、この押し釦27を時計外装体(機器外装体)12に取付ける。時計外装体12にストッパ54を配置する。ストッパ54は、係合部30との係合により押し釦27を所定位置に保持するロック位置と押し釦27の操作を許すロック解除位置にわたって移動可能である。時計外装体12に取付けられた文字板(表示部)14を囲む円形の操作リング61を時計外装体12にその正面側から回転操作可能に取付ける。この操作リング61の回転操作にロック位置とロック解除位置にわたるストッパ54の動きを連動させたことを特徴としている。
【解決手段】腕時計(携帯機器)11において、押し釦(押し引き操作部材)27は係合部30を有し、この押し釦27を時計外装体(機器外装体)12に取付ける。時計外装体12にストッパ54を配置する。ストッパ54は、係合部30との係合により押し釦27を所定位置に保持するロック位置と押し釦27の操作を許すロック解除位置にわたって移動可能である。時計外装体12に取付けられた文字板(表示部)14を囲む円形の操作リング61を時計外装体12にその正面側から回転操作可能に取付ける。この操作リング61の回転操作にロック位置とロック解除位置にわたるストッパ54の動きを連動させたことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し釦や竜頭等のような押し引き操作部材を、その非使用時に誤って押し引き方向に動かされないように規制できる構成を備えた携帯機器及び携帯時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計や懐中時計などの携帯時計、ストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器の中には、例えば機器外装体内の接点等を動作させる押し釦を機器外装体に取付けたものがある。押し釦が押圧されることによって、例えばクォーツ式携帯時計では、時計表示をアナログ表示からデジタル表示に切換えたり、デジタル表示された日付や曜日を修正したりできるようになっている。
【0003】
従来、この種の携帯機器例えば腕時計では、押し釦が誤って押し込み操作されることを防止するために、円筒からなるロック部材の内周に形成した雌ねじ部を、機器外装体が備える胴に取付けられたパイプの外周に形成した雄ねじ部に螺合させて、これらねじ部の螺合位置の変化によりロック部材をロック位置とロック待機位置とにわたって移動可能に設けている。又、円筒からなるロック部材の回転操作の支障とならないように、前記パイプに挿入された押し釦の正面形状は円形となっている。
【0004】
ロック部材がロック待機位置に配置された状態で、ロック部材の規制部がパイプを貫通した押し釦の頭部から離れるため、その離れた距離に相当するストロークで押し釦の押し込み操作が許容される。この逆に、ロック部材がロック位置に配置された状態では、規制部が押し釦の頭部に接した状態となるため、押し釦の押し込みが規制される。
【特許文献1】特開2003−7164号公報(段落0002−0006、段落0026−0038、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術で、ロック部材は押し釦に見合った径を有する円筒からなるが、このロック部材は例えば機器外装体の厚み以下と小径である。このため、機器外装体の側方らロック部材を掴み難く、このロック部材を回転操作する際の作業性が悪い。特に、腕時計として実施した場合に、この腕時計が人体の腕に装着された状態ではロック部材を操作し難い。
【0006】
本発明の目的は、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器及び携帯時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯機器は、係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされるストッパを前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの回転操作に前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる前記ストッパの動きを連動させたことを特徴としている。
【0008】
本発明で、押し引き操作部材とは、軸方向に沿って押し込み操作される押し釦、又は軸方向に沿って引き出しされた状態で回転される時計の竜頭等を指している。本発明で、所定位置とは、押し引き操作部材が押し釦である場合、この押し釦が押し込み可能な待機状態に配置された位置を指しており、押し引き操作部材が竜頭である場合に、この竜頭が引き出し可能な待機状態に配置された位置を指している。これとともに、前記所定位置に配置された押し引き操作部材は非使用状態にある。
【0009】
本発明で、機器外装体とは、携帯機器の駆動部品が収容される外装ケースを指しており、携帯機器が例えば腕時計や懐中時計等の携帯時計である場合には、時計ムーブメントなどの駆動部品が収容される外装ケースを指している。本発明で、表示部は、時刻表示に限らず各種の情報を静止画や動画などの画像として表示するものでもよいとともに、この表示部は円形であることが好ましいがそうでなくても良い。
【0010】
本発明で、操作リングは、その少なくとも周部がこれに使用者の手指が掛けられるように露出して設けてあればよい。操作リングの表面全体を露出させる場合には、この表面に、回転操作の指標となる表示を大きく設けることができるとともに、回転操作用の引っ掛かり部を更に必要により設けることも可能である点で好ましい。
【0011】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これに連動させて、ストッパをロック位置又はロック解除位置に配置できる。ロック位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部に係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。ロック解除位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部から外れているので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に押し込み操作又は引き出し操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0012】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きく、そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0013】
又、本発明の携帯機器は、係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされる弾性変形可能なストッパを有したロック部材を前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの裏面に前記ストッパを接触させて、このストッパの前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる動きを前記操作リングの回転操作に連動させたことを特徴としている。
【0014】
本発明で、ストッパを有したロック部材は板ばねで形成することが好ましいが、これに限られるものではない。
【0015】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これに連動させて、ロック部材のストッパをその弾性を利用してロック位置又はロック解除位置に配置できる。ロック位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部に係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。ロック解除位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部から外れているので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に押し込み操作又は引き出し操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0016】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きく、そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0017】
又、本発明の携帯機器は、貫通孔並びにこの貫通孔に連通する通孔が夫々形成された機器外装体と、この機器外装体に取付けられた表示部と、前記貫通孔に挿入して前記機器外装体に固定されたパイプと、このパイプ内に摺動可能に挿入された軸部、この軸部の一端部に設けられて前記貫通孔に挿入された操作ヘッド、及びこの操作ヘッドに形成された係合部を有する押し引き操作部材と、前記表示部を囲む大きさに形成されているとともに、前記通孔に対向可能なロック面及びこのロック面に開放するロック解除凹部を有して、前記機器外装体にこの外装体の正面側から回転操作可能に取付けられた円形の操作リングと、前記ロック面及びロック解除凹部に追従して弾性変形されこの弾性変形を伴って前記通孔を通って前記貫通孔に挿脱されることにより前記係合部が係合可能なロック位置と前記係合部から離れたロック解除位置とにわたって移動されるストッパを有して前記機器外装体に取付けられたロック部材と、を具備したことを特徴としている。
【0018】
本発明で、押し釦等の押し引き操作部材の操作ヘッドは軸部と一体でも別体で軸部に連結されたものであっても良い。
【0019】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これにロック部材の弾性変形が可能なストッパを連動させて、このストッパをロック位置又はロック解除位置に配置できる。
【0020】
即ち、回転操作された操作リングのロック面がロック部材のストッパに接した状態では、ストッパは自身の弾性力に抗してロック面で押されてロック位置に配置される。ロック位置に配置されたストッパには押し引き操作部材の係合部が係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。又、回転操作された操作リングのロック面がストッパから外れるとともにロック解除凹部がストッパに対向した状態では、ストッパが、自身の弾性力によってロック解除凹部に入り込んでロック解除位置に配置される。それにより、ロック部材のストッパが押し引き操作部材の係合部から外れるので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0021】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きい。そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0022】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記押し引き操作部材が押し釦であって、この押し釦の押し込み操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴としている。
【0023】
この発明の形態では、押し釦が非使用時に誤って動かされないように押し釦を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器を提供できる。更に、この押し釦は操作リングとは別の位置に配置されていてこの操作リングの回転を拘束するものではないので、押し釦の正面形状が、円形に限られることはなく、この正面形状を携帯機器のデザインに応じて非円形を含めた任意形状にすることができる点で好ましい。
【0024】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であることを特徴としている。
【0025】
この発明の形態では、押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であるにも係わらず、この押し釦が非使用時に誤って動かされないように規制することが可能な携帯機器を提供できる。
【0026】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記ロック部材が板ばねであることを特徴としている。
【0027】
この発明の形態では、板ばねが薄いので機器外装体の厚みを増やし難い点で好ましいとともに、弾性変形が可能なストッパを有したロック部材をプレス機による打ち抜きで簡単に製造できる利点がある。
【0028】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、弾性変形が可能で前記操作リング側に突出する節度片を前記ストッパとは異なる位置に前記ロック部材が有しており、この節度片が前記操作リングの回転に伴って挿脱されるとともに前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で前記節度片が係合される節度溝が前記操作リングの裏面に設けられていることを特徴としている。
【0029】
この発明の形態では、操作リングの回転操作に伴いロック部材のストッパがロック位置に配置された状態において、操作リングの節度溝にロック部材の節度片が係合するので、このクリックストップ動作により操作リングを仮保持できる。これとともに、このクリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材のストッパがロック位置に配置されたことを報知できる点で好ましい。
【0030】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で、前記操作リングを仮保持するクリックストップ機構を備えたことを特徴としている。
【0031】
この発明の形態では、操作リングの回転操作に伴いロック部材のストッパがロック位置に配置された状態において、クリックストップ機構がクリックストップ動作をして操作リングが仮保持される。これとともに、クリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材のストッパがロック位置に配置されたことを報知できる点で好ましい。
【0032】
又、本発明の携帯時計は、前記各発明の携帯機器で形成されていることを特徴としている。
【0033】
この発明の携帯時計においては、前記各発明の携帯機器で形成されているので、押し釦が非使用時に誤って動かされないように押し釦等の押し引き操作部材を所定位置に規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易である。
【0034】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記各発明の携帯機器で形成された携帯時計であって、この携帯時計の竜頭が前記押し引き操作部材であるとともに、この竜頭の引出し操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴としている。
【0035】
この発明の形態では、操作リングが、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、竜頭に比較してはるかに大きい。このため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、竜頭が非使用時に誤って引き出されないように竜頭を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器及び携帯時計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の第1実施形態を図1〜図8を参照して説明する。
【0038】
図1〜図3中符号11は携帯機器例えば携帯時計具体的には腕時計を示している。機器外装体をなす腕時計11の時計外装体12には、内蔵部品例えば時計ムーブメント13が内蔵されているとともに、表示部例えば円形の文字板14が取付けられている。文字板14の表示は、時計ムーブメント13で駆動される時針・分針・秒針などの時刻表示針15により指し示される。
【0039】
時計ムーブメント13は板ばね等からなる接点16(図2及び図3参照)を有している。この接点16が後述の押し釦で押されることによって、時計ムーブメント13の機能の切換えがなされる。
【0040】
時計外装体12は、ステンレス鋼やチタン等の金属又は合成樹脂等により環状に作られた外装体本体をなす胴21の厚み方向の一面に、文字板14を透視させるガラス22を液密に装着するとともに、胴21の厚み方向の他面に、金属や合成樹脂などで作られた裏蓋23を液密に装着して形成されている。
【0041】
図2及び図3に示すように胴21は、その正面部(上面部)に環状凸部25とリング配置溝26を有している。環状凸部25は円形であり、その内周にガラス22が装着されている。リング配置溝26は環状凸部25を囲んで設けられていて、胴21の上方及び側方に開放している。このリング配置溝26の底面26aは水平面で作られている。
【0042】
胴21には、押し引き操作部材例えば竜頭81(図1及び図6参照)が取付けられているとともに、他の押し引き操作部材例えば押し釦27が取付けられている。押し釦27は例えば竜頭81に対して12時側及び6時側にずれて夫々設けられている。これら押し釦27の構成及び胴21への取付けの構成は同じであるので、その内の一方について図2及び図3等を参照して以下説明する。
【0043】
胴21には、この胴21を半径方向に貫通した貫通孔35が、環状凸部25及びリング配置溝26よりも胴21の裏側にずれて設けられている。貫通孔35はパイプ取付け孔部35aとこれに連続したヘッド挿入孔部35bを有している。
【0044】
パイプ取付け孔部35aは円形の孔からなり、その一端は、胴21の内部、つまり、時計外装体12の内部に開口されている。パイプ取付け孔部35aの他端はヘッド挿入孔部35bに開口されている。ヘッド挿入孔部35bは、パイプ取付け孔部35aの径より大きく、例えば四角い孔で形成されている。このヘッド挿入孔部35bは胴外面(外装体外面)21aに開口されている。
【0045】
胴21にヘッド挿入孔部35bに連通して通孔37が形成されている。図6等に示すように通孔37は幅が狭い四角な穴からなり、その上端はリング配置溝26の底面26aに開放されている。
【0046】
軸方向と直交する方向の断面が丸のパイプ41が胴21に固定されている。パイプ41は金属好適にはステンレス鋼等で作られている。パイプ41は、小径部と大径部を有した段付きに形成されている。
【0047】
パイプ41は、その小径部を貫通孔35のパイプ取付け孔部35aにヘッド挿入孔部35b側から圧入して胴21に固定されている。この固定は、金属製ろう材を用いたろう付け接合でなされている。ろう材はパイプ41と胴21との間の防水を担っている。以上のように胴21に固定されたパイプ41の大径部はヘッド挿入孔部35b内に突出されている。
【0048】
図3及び図4に示すように押し釦27は、金属又は合成樹脂により作られていて、軸部28と、操作ヘッド29と、係合部30を有している。胴21内に突出された軸部28の先端(一端)は、押し釦27が胴外側から押込まれることにより、前記接点16を押して移動(図3中二点鎖線参照)させるようになっている。
【0049】
軸部28の軸方向と直交する方向の断面は円形である。操作ヘッド29は軸部28の他端に一体に形成されている。この操作ヘッド29は、前記ヘッド挿入孔部35bの形状に見合った形状に作られていて、その形状は軸部28より大きい非円形であって、本実施形態では略四角形状をなしている。係合部30は例えば操作ヘッド29の裏面で形成されている。なお、符合29aは軸部28の他端部を囲んで操作ヘッド29の裏面から一体に突設された円筒部を示している。
【0050】
押し釦27の軸部28はパイプ41に胴外側から挿入され、胴21内部側に位置された操作ヘッド29の一端部はヘッド挿入孔部35bに挿入されている。図2及び図3中符号43は軸部28に装着された防水用のシールリングを示しており、このシールリング43は弾性変形をした状態でパイプ41の内面に摺動可能に密接されている。図2及び図3に示すように軸部28の先端部に、押し釦27の軸方向移動に伴いパイプ41の小径部先端に接離する抜け止め部材例えば止め輪44が装着されている。
【0051】
円筒部29aにより操作ヘッド29の裏面から隔離して配置されるコイルばね45が、軸部28を巻装してパイプ41の大径部と操作ヘッド29の裏面との間に挟まれている。このコイルばね45は押し釦27を胴外側方向に付勢しており、この付勢による押し釦27の抜け止めを止め輪44が担っている。押し釦27が止め輪44で位置決めされた状態では、胴21の外部側に位置された操作ヘッド29の他端部が押し込み可能に胴外面21aから突出されている。これとともに、同状態では軸部28の先端が接点16から離されている。
【0052】
腕時計11の携帯時等に胴21内へ押し釦27が不用意に押込まれることを妨げるためのロック部材51が、胴21に取付けられている。
【0053】
ロック部材51は例えば金属の板ばねからなり、図6に示すように基部52と、複数例えば二つの取付け部53と、押し釦27の数に見合った数例えば二つのストッパ54を有している。
【0054】
基部52は環状凸部25の外周に嵌合される大きさのリング形に形成されている。取付け部53は、180°離れて設けられていて、図7に示すように基部52からその裏側に折り曲げられている。ロック部材51は、環状凸部25に嵌合されるとともに、前記底面26aに開口して胴21に形成された固定孔21cに取付け部53を圧入することによって、リング配置溝26の底面26aに重なって取付けられている。
【0055】
ストッパ54は、基部52に対して片持ち状態にこの基部52から外側に一体に延出されていて、弾性変形が可能である。ストッパ54を平面的に見た形状は図6に示すように略L字状である。これとともに、基部52に沿うように延びているストッパ54の部位は側方から見て凸形状、例えば図5に示すように上方に突出して略台形状に折り曲げられている。
【0056】
ストッパ54の前記略台形状をなした部位は、図6に示すように通孔37の真上に近接して配置されていて、通孔37を通ってヘッド挿入孔部35bに挿脱可能に形成されている。ストッパ54は、後述の操作リング61によって弾性変形されて、操作リング61の回転操作に従動して図4に示すようにヘッド挿入孔部35bに挿入されたロック位置と、図5に例示するようにヘッド挿入孔部35bの外部に配置されたロック解除位置とにわたって動かされるようになっている。ロック位置のストッパ54には押し釦27の係合部30が係合可能である。
【0057】
時計外装体12のリング配置溝26に円形の操作リング61が環状凸部25及びロック部材51を被って回転可能に配置されている。なお、操作リング61は図示のように切れ目なく連続するリングであることが好ましいが、一つの切れ目を有していても良い。図2及び図3中符号21bは環状凸部25の外周面に一体に形成された環状係止突起を示しており、この環状係止突起21bに操作リング61の内周面が引っ掛かって、操作リング61が外れ止めされている。そのため、操作リング61は文字板14を囲んだ環状凸部25の外周に回転可能に嵌合して胴21に取付けられている。
【0058】
操作リング61の表面(上面)及び周面は露出している。図1中符合61a,61bは操作リング61に複数形成された指掛け部を示しており、これら指掛け部61a,61bは例えば凹部からなるとともに操作リング61の周部に設けられている。
【0059】
操作リング61の露出された表面に、図1に示すように第1の表示62と第2の表示63が設けられている。第1の表示62と第2の表示63は操作リング61の径方向に対応して設けられて、第1の表示62は「LOCK」という文字列からなり、第2の表示63は「UNLOCK」という文字列からなる。これら第1の表示62と第2の表示63は、例えば竜頭81を目印としてこれに合わされるようになっているが、目印は竜頭81とは別に胴21に設けても良い。
【0060】
図8に示すように操作リング61はロック面61c及びロック解除凹部64を有している。ロック面61cはリング配置溝26の底面26aに近接して対向する操作リング61の裏面で形成されている。ロック解除凹部64はロック面61cに開放して押し釦27と同数設けられている。ロック面61cにはロック部材51のストッパ54が自身の弾性力で押付けられている。ロック解除凹部64にはストッパ54が挿脱可能である。
【0061】
操作リング61のロック面61cが通孔37に対向されると、この開放に対向されたロック面61cにより図2及び図4に示すようにストッパ54がそれ自身の弾性力に抗して押下げられるので、このストッパ54が通孔37を通ってヘッド挿入孔部35bに押し込まれて、押し釦27の係合部30に胴21の内部側から近接対向した状態に保持される。
【0062】
操作リング61のロック解除凹部64が通孔37に対向されると、ストッパ54がそれ自身の弾性力で図3及び図5に示すようにロック解除凹部64に挿入されるので、ストッパ54は押し釦27の係合部30の上方に外れた状態に保持される。
【0063】
前記ロック部材51及び操作リング61は、係合部30を有した押し釦27を、その非使用時に所定位置に位置決めしてロック状態に保持するとともに、このロック状態を押し釦27が操作される際に解除可能なロック手段をなしている。
【0064】
又、腕時計11は図7に示すクリックストップ機構71を例えば一対有している。このクリックストップ機構71は、機構部72とストップ凹部73とからなる。
【0065】
図6に示すように機構部72は、例えば、12時−6時を通る直線上に位置して胴21に取付けられている。これら機構部72は、図7に示すように胴21に埋め込まれた筒状のホルダ72aと、ホルダ72aに上下動可能でかつ上方に抜けないように支持された回転可能な鋼球72bと、ホルダ72aに収容されて鋼球72bを上向きに付勢するばね72cとで形成されている。鋼球72bの上部はリング配置溝26の底面26aから突出されている。
【0066】
ストップ凹部73は図8に示すように操作リング61の裏面をなしたロック面61cに開口して操作リング61に180°隔てて設けられている。これらのストップ凹部73には鋼球72bが着脱自在に係合できる。
【0067】
前記第1の表示62が竜頭81に合うように操作リング61が回転操作された状態では、鋼球72bがストップ凹部73に係合して操作リング61が仮保持されるとともに、この仮保持状態でロック部材51のストッパ54は、操作リング61のロック面61cで押し下げられてロック位置に配置されるようになっている。又、第2の表示63が竜頭81に合うように操作リング61が回転操作された状態では、ロック部材51のストッパ54は、自身の弾性力によりもたげられてロック解除凹部64に係合しロック解除位置に配置されるようになっている。なお、この回転操作に伴いストップ凹部73は鋼球72bに係合して操作リング61が仮保持されるが、その場合に係合されるのは、それまで係合していた鋼球72bに対して180度隔たって配置されているクリックストップ機構71の鋼球72bである。
【0068】
前記構成を備えた腕時計11において携帯時など押し釦27が使用されない状態では、胴21の内部側へ向けて押し釦27が不用意に押し込まれることを防止するために、図2及び図4に示すようにロック部材51のストッパ54はロック位置に配置されている。このロック状態は、操作リング61を回転操作して、その表面の第1の表示62を竜頭81に合わせることにより得ることができる。
【0069】
操作リング61の回転操作によりロック部材51のストッパ54がロック位置に適正に配置されると、その時点において、クリックストップ機構71がクリックストップ動作をして操作リング61を仮保持する。この場合、クリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材51のストッパ54がロック位置に配置されたことを報知できる。
【0070】
ロック状態では、操作リング61のロック面61cがロック部材51のストッパ54を押しているので、ストッパ54は、その根元を基点として自身の弾性力に抗して押下げられて、図2中実線及び図4に示したロック位置に配置されている。
【0071】
このロック位置に配置されたロック部材51のストッパ54には、胴21の外側から押し釦27の係合部30が至近距離で対向している。そのため、前記ロック状態で、腕時計11が落下した際の衝撃等により押し釦27に誤って押し込み力が作用すると、直ちに押し釦27の係合部30がロック部材51のストッパ54に引っ掛かる。こうした係合により押し釦27が所定位置から動かないように規制されて、押し釦27が誤って押し込まれる誤操作が防止される。
【0072】
なお、この誤操作防止において、ストッパ54の厚み方向の面ではなく、幅方向の側端面に係合部30が引っ掛かるので、押し込み力をストッパ54の厚み方向の面で受ける場合と比較してストッパ54は変形し難い。よって、誤操作防止の信頼性が高い。
【0073】
押し釦27を操作する必要があるときは、まず、図2中実線及び図4に示した状態から操作リング61を180°回転させ、その第2の表示63を竜頭81に合わせることにより、ロック部材51のストッパ54をロック解除位置に移動させた後に、押し釦27を押し込み操作すればよい。
【0074】
こうした操作リング61の回転により、ロック面61cがロック部材51のストッパ54から外れるとともに、操作リング61のロック解除凹部64がストッパ54に対向する。そのため、ストッパ54が、自身の弾性力によってもたげられてロック解除凹部64に入り込んで、ロック解除位置に配置される。これに伴い、ストッパ54が押し釦27の係合部30に対向しないようにこの上方に外れて、押し釦27の押し込み操作が許容された状態となる。
【0075】
なお、この場合にも、ロック部材51のストッパ54が自身の弾性力でロック解除凹部64に入り込んで、クリックストップ機構71と同様なクリックストップ動作を得られる。そのため、この動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音で、使用者にロック部材51のストッパ54がロック解除位置に配置されたことを報知できる。
【0076】
こうしたロック解除状態で押し釦27を軸方向に押し込むことにより、この押し釦27を図2及び図3中実線で示した所定位置から胴21の内部側に移動できる。それにより、押し釦27で接点16を押して、この接点16に与えられた所定の機能を行わせることができる。
【0077】
以上のように時計外装体12に回転操作可能に取付けられた円形の操作リング61はカムとして機能し、そのカム面(ロック面61c及びこれに連続したロック解除凹部64)に、自身の弾性力で押付けられたロック部材51のストッパ54が従動される。したがって、時計外装体12の正面側から操作リング61を回転操作することによって、これに連動させて、ロック部材51のストッパ54をロック位置又はロック解除位置に配置できる。
【0078】
操作リング61は、時計外装体12に取付けられた文字板14を囲んでいるので、胴21の側方から押し込み操作される押し釦27に比較してはるかに大きい。そのため、この操作リング61を容易に掴んで回転操作することができる。これとともに、操作リング61は時計外装体12の正面側から操作されるので、腕時計11が使用者の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。
【0079】
したがって、押し釦27が非使用時に誤って動かされないように規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0080】
更に、第1実施形態では、ロック位置に配置されたロック部材51のストッパ54を用いて押し釦27の押し込み操作を妨げる構成であるので、ストッパ54を連動する操作リング61と押し釦27とが別々の位置に配置されていて、押し釦27が操作リング61の回転を拘束することがない。そのため、押し釦27の正面形状を第1実施形態で例示したように四角形にすることができる。なお、押し釦27の正面形状は、円形であっても良いとともに、これに代えて、四角形以外の任意な非円形形状とすることが可能である。したがって、腕時計11のデザインの自由度を高めることができる点で好ましい。
【0081】
第1実施形態の構成では、ロック部材51のストッパ54を操作リング61のカム面に弾性的に接触された状態を維持するのに、ストッパ54自身の弾性力を用いている。そのために、ロック手段を構成する部品の数を削減できる点で好ましい。
【0082】
更に、第1実施形態の構成によれば、従来技術のようにねじ山の噛み合いを要しないので、ロック部材51のストッパ54がロック位置に配置されたときに、押し釦27に胴外側へ向かう負荷を与えることがない。これとともに、例え操作リング61を何回回転させても押し釦27に対する胴外側へ向けての負荷が次第に強化されることがないので、安全である。なお、従来技術のようにねじ山の噛み合いを利用したものでは、ロック部材をロック位置に移動させる場合に、このロック部材を回転させ過ぎると、押し釦が胴外側に抜ける恐れが考えられる。又、従来技術のようにねじ山の噛み合いを要しないので、加工が簡単である。即ち、ロック部材51はプレス加工により打ち抜いて簡単に得ることが可能であるとともに、操作リング61に対する加工も容易であるので製造性に優れている。
【0083】
図9〜図14は本発明の第2実施形態を示している。この実施形態は以下説明する事項を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
第2実施形態は、押し引き操作部材である竜頭81を、前記ロック手段により非使用時に所定位置から動かないように規制するとともに、この規制を竜頭81が操作される際に解除可能にした点が第1実施形態とは異なる。この実施において、ロック手段は竜頭81に対応して一つのみ設けられ、又、押し釦27についてのロック手段は省略されている。更に、第2実施形態は、第1実施形態で説明したクリックストップ機構に代えて、ロック部材51のストッパ54がロック位置とロック解除位置に配置された状態で操作リング61を位置決めするクリックストップ機構を、ロック部材を利用して構成した点でも第1実施形態とは異なる。
【0085】
具体的には、竜頭81は、軸部82とこれに例えば一体に連続した操作ヘッド83とを有してなり、軸部82は、これに接続された巻真84を介して時計ムーブメント13に接続されている。
【0086】
操作ヘッド83は軸部82より大径であり、その外周に、操作ヘッド83を回すために掴んだ使用者の指が滑り難くするための凹凸83aが、スプライン加工により形成されている。更に、操作ヘッド83の外周には凹凸83aを横切って円環形の凹部からなる係合部85が形成されている。
【0087】
そのため、第2実施形態の腕時計11において、携帯時など竜頭81が使用されない状態では、図9に示すようにロック部材51のストッパ54が、胴21の外部側方へ向けての竜頭81の不用意な引き出しを防止するロック位置に配置されている。
【0088】
前記ロック手段により竜頭81がロックされた状態では、操作リング61のロック面61cがロック部材51のストッパ54に接していて、ストッパ54が、自身の弾性力に抗して押下げられて、図9に示したロック位置に配置されている。このロック位置に配置されたロック部材51のストッパ54は竜頭81の凹部からなる係合部85に嵌合されている。
【0089】
そのため、前記ロック状態で、竜頭81に誤って引き出し力が作用すると、直ちに係合部85をなす凹部の壁面がロック部材51のストッパ54に胴21の内部側から引っ掛かる。こうした係合により竜頭81が所定位置から動かないように規制されて、竜頭81が誤って引き出される誤操作が防止される。
【0090】
竜頭81を操作する必要があるときは、まず、図9に示した状態から操作リング61を180°回転させ、その第2の表示63(図1参照)を竜頭81に合わせることにより、ロック部材51のストッパ54をロック解除位置に移動させた後に、竜頭81を引き出した上で回転操作すればよい。
【0091】
こうした操作リング61の回転により、ロック面61cがロック部材51のストッパ54から外れるとともに操作リング61のロック解除凹部64がストッパ54に対向する。そのため、ストッパ54が、自身の弾性力でもたげられてロック解除凹部64に入り込んで、ロック解除位置に配置される(図10参照)。これに伴い、ストッパ54が竜頭81の係合部85の上方に外れて移動され、竜頭81の引き出し操作が許容された状態となる。
【0092】
そのため、このロック解除状態で竜頭81を、図9及び図10に示した所定位置から軸方向に沿って引き出すことができ、その上で竜頭81を回転操作して、時刻合わせや日付け合わせ等をすることができる。したがって、第2実施形態でも本発明の課題を解決できる。
【0093】
図11に示すようにロック部材51は、ストッパ54とは異なる位置、例えばストッパ54から180°離れた位置に節度片56を有している。節度片56は基部52に対して片持ち状態にこの基部52から外側に一体に延出されていて、弾性変形が可能である。節度片56を平面的に見た形状は図11に示すように略L字状である。これとともに、基部52に沿うように延びている節度片56の部位は、図13に示すように上方、言い換えれば、操作リング61側に突出する斜状部位56aと、この先端から下方に鋭角に折り曲げられた係止部位56bとにより略V字形状をなしている。係止部位56bは斜状部位56aより短く、この係止部位56bの先端が前記底面26aに接するまで節度片56は弾性変形可能であり、それにより、操作リング61の回転が許されるようになっている。
【0094】
図12〜図14に示すように操作リング61には、この操作リング61の回転操作に伴って節度片56が挿脱される第1の節度溝65と第2の節度溝66とがロック面61cに開放して設けられている。これらの節度溝65,66は図13で代表して示すようにV字状に形成されている。第1の節度溝65と第2の節度溝66は180度隔てて設けられている。
【0095】
第1の節度溝65はロック解除凹部64から180度離れていて、この第1の節度溝65には、ストッパ54がロック解除位置に配置された状態で節度片56が係合される。第2の節度溝66はロック解除凹部64の近傍にこれに並べられていて、この第2の節度溝66には、ストッパ54がロック位置に配置された状態で節度片56が係合される。
【0096】
このため、操作リング61が回転操作されることで図9に示したようにストッパ54がロック位置に配置されると同時に、図12に示したように第2の節度溝66が節度片56を被うように対向するので、節度片56がそれ自身の弾性力でもたげられて第2の節度溝66に係合して、操作リング61が仮保持される。こうしたクリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音で、使用者にロック部材51のストッパ54がロック位置に配置されたことを報知できる。
【0097】
この逆に、操作リング61が回転操作されることで図10に示したようにストッパ54がロック解除位置に配置されると同時に、第1の節度溝65が節度片56を被うように対向するので、節度片56がそれ自身の弾性力でもたげられて第1の節度溝65に係合して、操作リング61が仮保持される。このときのクリックストップ動作においても使用者にロック部材51のストッパ54がロック解除位置に配置されたことを報知できる。
【0098】
以上のように操作リング61が180度回転されるたびに前記クリックストップ動作により、操作リング61を仮保持できる。この仮保持を担う節度片56はロック部材51に一体に形成されているので、節度片として専用の部品を省略でき構成を簡単にできる。
【0099】
なお、操作リング61が図13中実線矢印A方向に回転される場合、節度片56が伏せるように弾性変形して底面26aに近づくので、この節度片56を第1の節度溝65及び第2の節度溝66が通過できる。この逆に図13中点線矢印B方向に操作リング61が回転操作された場合、節度片56が底面26aに対して起きる方向に弾性変形し、その直後に、節度片56が第1の節度溝65又は第2の節度溝66内で突っ張るようになるので、操作リング61の矢印B方向への回転が妨げられる。したがって、操作リング61は一方向回転のみ可能であり、逆方向には回転操作することができない。
【0100】
図13中二点鎖線で示すように、V字状の節度片56が略等しい長さの斜状部位を有した構成とするとともに、その自由端側の斜状部位の変位を許容する逃げ溝67を胴21に底面26aに開口して設ける場合には、操作リング61の回転操作を双方向にすることが可能である。
【0101】
以上説明した事項以外の第2実施形態の構成は、図9〜図14に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。その他の作用も第1実施形態と同様であるので、その説明については省略する。
【0102】
本発明は前記各実施形態に制約されるものではなく、携帯時計の他にも、例えばストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態の腕時計を示す正面図。
【図2】図1の腕時計の押し釦の取付け部を押し釦がロックされた状態で示す断面図。
【図3】図1の腕時計の押し釦の取付け部を押し釦のロックが解除された状態で示す断面図。
【図4】図2中F4−F4線に沿って示す略断面図。
【図5】図3中F5−F5線に沿って示す略断面図。
【図6】図1の腕時計をその操作リングを外した状態で一部を切欠いて示す正面図。
【図7】図1の腕時計のクリックストップ機構まわりを示す断面図。
【図8】図1の腕時計が備える操作リングを示す裏面図。
【図9】本発明の第2実施形態の腕時計の竜頭取付け部を竜頭がロックされた状態で示す断面図。
【図10】第2実施形態の腕時計の竜頭取付け部を竜頭のロックが解除された状態で示す断面図。
【図11】第2実施形態の腕時計をその操作リングを外した状態で一部を切欠いて示す正面図。
【図12】第2実施形態の腕時計の操作リングの回転に節度を与える構成を示す断面図。
【図13】図12中F13−F13線に沿って示す略断面図。
【図14】第2実施形態の腕時計が備える操作リングを示す裏面図。
【符号の説明】
【0104】
11…腕時計(携帯時計・携帯機器)
12…時計外装体(機器外装体)
14…文字板(表示部)
21…胴
27…押し釦(押し引き操作部材)
28…押し釦の軸部
29…押し釦の操作ヘッド
30…押し釦の係合部
35…貫通孔
35a…パイプ取付け孔部
35b…ヘッド挿入孔部
37…通孔
41…パイプ
51…ロック部材
52…ロック部材の基部
53…ロック部材の取付け部
54…ロック部材のストッパ
56…ロック部材の節度片
61…操作リング
61c…ロック面
64…ロック解除凹部
65…節度溝
71…クリックストップ機構
81…竜頭(押し引き操作部材)
82…竜頭の軸部
83…竜頭の操作ヘッド
85…竜頭の係合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し釦や竜頭等のような押し引き操作部材を、その非使用時に誤って押し引き方向に動かされないように規制できる構成を備えた携帯機器及び携帯時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計や懐中時計などの携帯時計、ストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器の中には、例えば機器外装体内の接点等を動作させる押し釦を機器外装体に取付けたものがある。押し釦が押圧されることによって、例えばクォーツ式携帯時計では、時計表示をアナログ表示からデジタル表示に切換えたり、デジタル表示された日付や曜日を修正したりできるようになっている。
【0003】
従来、この種の携帯機器例えば腕時計では、押し釦が誤って押し込み操作されることを防止するために、円筒からなるロック部材の内周に形成した雌ねじ部を、機器外装体が備える胴に取付けられたパイプの外周に形成した雄ねじ部に螺合させて、これらねじ部の螺合位置の変化によりロック部材をロック位置とロック待機位置とにわたって移動可能に設けている。又、円筒からなるロック部材の回転操作の支障とならないように、前記パイプに挿入された押し釦の正面形状は円形となっている。
【0004】
ロック部材がロック待機位置に配置された状態で、ロック部材の規制部がパイプを貫通した押し釦の頭部から離れるため、その離れた距離に相当するストロークで押し釦の押し込み操作が許容される。この逆に、ロック部材がロック位置に配置された状態では、規制部が押し釦の頭部に接した状態となるため、押し釦の押し込みが規制される。
【特許文献1】特開2003−7164号公報(段落0002−0006、段落0026−0038、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術で、ロック部材は押し釦に見合った径を有する円筒からなるが、このロック部材は例えば機器外装体の厚み以下と小径である。このため、機器外装体の側方らロック部材を掴み難く、このロック部材を回転操作する際の作業性が悪い。特に、腕時計として実施した場合に、この腕時計が人体の腕に装着された状態ではロック部材を操作し難い。
【0006】
本発明の目的は、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器及び携帯時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯機器は、係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされるストッパを前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの回転操作に前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる前記ストッパの動きを連動させたことを特徴としている。
【0008】
本発明で、押し引き操作部材とは、軸方向に沿って押し込み操作される押し釦、又は軸方向に沿って引き出しされた状態で回転される時計の竜頭等を指している。本発明で、所定位置とは、押し引き操作部材が押し釦である場合、この押し釦が押し込み可能な待機状態に配置された位置を指しており、押し引き操作部材が竜頭である場合に、この竜頭が引き出し可能な待機状態に配置された位置を指している。これとともに、前記所定位置に配置された押し引き操作部材は非使用状態にある。
【0009】
本発明で、機器外装体とは、携帯機器の駆動部品が収容される外装ケースを指しており、携帯機器が例えば腕時計や懐中時計等の携帯時計である場合には、時計ムーブメントなどの駆動部品が収容される外装ケースを指している。本発明で、表示部は、時刻表示に限らず各種の情報を静止画や動画などの画像として表示するものでもよいとともに、この表示部は円形であることが好ましいがそうでなくても良い。
【0010】
本発明で、操作リングは、その少なくとも周部がこれに使用者の手指が掛けられるように露出して設けてあればよい。操作リングの表面全体を露出させる場合には、この表面に、回転操作の指標となる表示を大きく設けることができるとともに、回転操作用の引っ掛かり部を更に必要により設けることも可能である点で好ましい。
【0011】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これに連動させて、ストッパをロック位置又はロック解除位置に配置できる。ロック位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部に係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。ロック解除位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部から外れているので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に押し込み操作又は引き出し操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0012】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きく、そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0013】
又、本発明の携帯機器は、係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされる弾性変形可能なストッパを有したロック部材を前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの裏面に前記ストッパを接触させて、このストッパの前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる動きを前記操作リングの回転操作に連動させたことを特徴としている。
【0014】
本発明で、ストッパを有したロック部材は板ばねで形成することが好ましいが、これに限られるものではない。
【0015】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これに連動させて、ロック部材のストッパをその弾性を利用してロック位置又はロック解除位置に配置できる。ロック位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部に係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。ロック解除位置に配置されたストッパは押し引き操作部材の係合部から外れているので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に押し込み操作又は引き出し操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0016】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きく、そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0017】
又、本発明の携帯機器は、貫通孔並びにこの貫通孔に連通する通孔が夫々形成された機器外装体と、この機器外装体に取付けられた表示部と、前記貫通孔に挿入して前記機器外装体に固定されたパイプと、このパイプ内に摺動可能に挿入された軸部、この軸部の一端部に設けられて前記貫通孔に挿入された操作ヘッド、及びこの操作ヘッドに形成された係合部を有する押し引き操作部材と、前記表示部を囲む大きさに形成されているとともに、前記通孔に対向可能なロック面及びこのロック面に開放するロック解除凹部を有して、前記機器外装体にこの外装体の正面側から回転操作可能に取付けられた円形の操作リングと、前記ロック面及びロック解除凹部に追従して弾性変形されこの弾性変形を伴って前記通孔を通って前記貫通孔に挿脱されることにより前記係合部が係合可能なロック位置と前記係合部から離れたロック解除位置とにわたって移動されるストッパを有して前記機器外装体に取付けられたロック部材と、を具備したことを特徴としている。
【0018】
本発明で、押し釦等の押し引き操作部材の操作ヘッドは軸部と一体でも別体で軸部に連結されたものであっても良い。
【0019】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これにロック部材の弾性変形が可能なストッパを連動させて、このストッパをロック位置又はロック解除位置に配置できる。
【0020】
即ち、回転操作された操作リングのロック面がロック部材のストッパに接した状態では、ストッパは自身の弾性力に抗してロック面で押されてロック位置に配置される。ロック位置に配置されたストッパには押し引き操作部材の係合部が係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。又、回転操作された操作リングのロック面がストッパから外れるとともにロック解除凹部がストッパに対向した状態では、ストッパが、自身の弾性力によってロック解除凹部に入り込んでロック解除位置に配置される。それにより、ロック部材のストッパが押し引き操作部材の係合部から外れるので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0021】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きい。そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0022】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記押し引き操作部材が押し釦であって、この押し釦の押し込み操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴としている。
【0023】
この発明の形態では、押し釦が非使用時に誤って動かされないように押し釦を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器を提供できる。更に、この押し釦は操作リングとは別の位置に配置されていてこの操作リングの回転を拘束するものではないので、押し釦の正面形状が、円形に限られることはなく、この正面形状を携帯機器のデザインに応じて非円形を含めた任意形状にすることができる点で好ましい。
【0024】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であることを特徴としている。
【0025】
この発明の形態では、押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であるにも係わらず、この押し釦が非使用時に誤って動かされないように規制することが可能な携帯機器を提供できる。
【0026】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記ロック部材が板ばねであることを特徴としている。
【0027】
この発明の形態では、板ばねが薄いので機器外装体の厚みを増やし難い点で好ましいとともに、弾性変形が可能なストッパを有したロック部材をプレス機による打ち抜きで簡単に製造できる利点がある。
【0028】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、弾性変形が可能で前記操作リング側に突出する節度片を前記ストッパとは異なる位置に前記ロック部材が有しており、この節度片が前記操作リングの回転に伴って挿脱されるとともに前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で前記節度片が係合される節度溝が前記操作リングの裏面に設けられていることを特徴としている。
【0029】
この発明の形態では、操作リングの回転操作に伴いロック部材のストッパがロック位置に配置された状態において、操作リングの節度溝にロック部材の節度片が係合するので、このクリックストップ動作により操作リングを仮保持できる。これとともに、このクリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材のストッパがロック位置に配置されたことを報知できる点で好ましい。
【0030】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で、前記操作リングを仮保持するクリックストップ機構を備えたことを特徴としている。
【0031】
この発明の形態では、操作リングの回転操作に伴いロック部材のストッパがロック位置に配置された状態において、クリックストップ機構がクリックストップ動作をして操作リングが仮保持される。これとともに、クリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材のストッパがロック位置に配置されたことを報知できる点で好ましい。
【0032】
又、本発明の携帯時計は、前記各発明の携帯機器で形成されていることを特徴としている。
【0033】
この発明の携帯時計においては、前記各発明の携帯機器で形成されているので、押し釦が非使用時に誤って動かされないように押し釦等の押し引き操作部材を所定位置に規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易である。
【0034】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記各発明の携帯機器で形成された携帯時計であって、この携帯時計の竜頭が前記押し引き操作部材であるとともに、この竜頭の引出し操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴としている。
【0035】
この発明の形態では、操作リングが、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、竜頭に比較してはるかに大きい。このため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、竜頭が非使用時に誤って引き出されないように竜頭を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器及び携帯時計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の第1実施形態を図1〜図8を参照して説明する。
【0038】
図1〜図3中符号11は携帯機器例えば携帯時計具体的には腕時計を示している。機器外装体をなす腕時計11の時計外装体12には、内蔵部品例えば時計ムーブメント13が内蔵されているとともに、表示部例えば円形の文字板14が取付けられている。文字板14の表示は、時計ムーブメント13で駆動される時針・分針・秒針などの時刻表示針15により指し示される。
【0039】
時計ムーブメント13は板ばね等からなる接点16(図2及び図3参照)を有している。この接点16が後述の押し釦で押されることによって、時計ムーブメント13の機能の切換えがなされる。
【0040】
時計外装体12は、ステンレス鋼やチタン等の金属又は合成樹脂等により環状に作られた外装体本体をなす胴21の厚み方向の一面に、文字板14を透視させるガラス22を液密に装着するとともに、胴21の厚み方向の他面に、金属や合成樹脂などで作られた裏蓋23を液密に装着して形成されている。
【0041】
図2及び図3に示すように胴21は、その正面部(上面部)に環状凸部25とリング配置溝26を有している。環状凸部25は円形であり、その内周にガラス22が装着されている。リング配置溝26は環状凸部25を囲んで設けられていて、胴21の上方及び側方に開放している。このリング配置溝26の底面26aは水平面で作られている。
【0042】
胴21には、押し引き操作部材例えば竜頭81(図1及び図6参照)が取付けられているとともに、他の押し引き操作部材例えば押し釦27が取付けられている。押し釦27は例えば竜頭81に対して12時側及び6時側にずれて夫々設けられている。これら押し釦27の構成及び胴21への取付けの構成は同じであるので、その内の一方について図2及び図3等を参照して以下説明する。
【0043】
胴21には、この胴21を半径方向に貫通した貫通孔35が、環状凸部25及びリング配置溝26よりも胴21の裏側にずれて設けられている。貫通孔35はパイプ取付け孔部35aとこれに連続したヘッド挿入孔部35bを有している。
【0044】
パイプ取付け孔部35aは円形の孔からなり、その一端は、胴21の内部、つまり、時計外装体12の内部に開口されている。パイプ取付け孔部35aの他端はヘッド挿入孔部35bに開口されている。ヘッド挿入孔部35bは、パイプ取付け孔部35aの径より大きく、例えば四角い孔で形成されている。このヘッド挿入孔部35bは胴外面(外装体外面)21aに開口されている。
【0045】
胴21にヘッド挿入孔部35bに連通して通孔37が形成されている。図6等に示すように通孔37は幅が狭い四角な穴からなり、その上端はリング配置溝26の底面26aに開放されている。
【0046】
軸方向と直交する方向の断面が丸のパイプ41が胴21に固定されている。パイプ41は金属好適にはステンレス鋼等で作られている。パイプ41は、小径部と大径部を有した段付きに形成されている。
【0047】
パイプ41は、その小径部を貫通孔35のパイプ取付け孔部35aにヘッド挿入孔部35b側から圧入して胴21に固定されている。この固定は、金属製ろう材を用いたろう付け接合でなされている。ろう材はパイプ41と胴21との間の防水を担っている。以上のように胴21に固定されたパイプ41の大径部はヘッド挿入孔部35b内に突出されている。
【0048】
図3及び図4に示すように押し釦27は、金属又は合成樹脂により作られていて、軸部28と、操作ヘッド29と、係合部30を有している。胴21内に突出された軸部28の先端(一端)は、押し釦27が胴外側から押込まれることにより、前記接点16を押して移動(図3中二点鎖線参照)させるようになっている。
【0049】
軸部28の軸方向と直交する方向の断面は円形である。操作ヘッド29は軸部28の他端に一体に形成されている。この操作ヘッド29は、前記ヘッド挿入孔部35bの形状に見合った形状に作られていて、その形状は軸部28より大きい非円形であって、本実施形態では略四角形状をなしている。係合部30は例えば操作ヘッド29の裏面で形成されている。なお、符合29aは軸部28の他端部を囲んで操作ヘッド29の裏面から一体に突設された円筒部を示している。
【0050】
押し釦27の軸部28はパイプ41に胴外側から挿入され、胴21内部側に位置された操作ヘッド29の一端部はヘッド挿入孔部35bに挿入されている。図2及び図3中符号43は軸部28に装着された防水用のシールリングを示しており、このシールリング43は弾性変形をした状態でパイプ41の内面に摺動可能に密接されている。図2及び図3に示すように軸部28の先端部に、押し釦27の軸方向移動に伴いパイプ41の小径部先端に接離する抜け止め部材例えば止め輪44が装着されている。
【0051】
円筒部29aにより操作ヘッド29の裏面から隔離して配置されるコイルばね45が、軸部28を巻装してパイプ41の大径部と操作ヘッド29の裏面との間に挟まれている。このコイルばね45は押し釦27を胴外側方向に付勢しており、この付勢による押し釦27の抜け止めを止め輪44が担っている。押し釦27が止め輪44で位置決めされた状態では、胴21の外部側に位置された操作ヘッド29の他端部が押し込み可能に胴外面21aから突出されている。これとともに、同状態では軸部28の先端が接点16から離されている。
【0052】
腕時計11の携帯時等に胴21内へ押し釦27が不用意に押込まれることを妨げるためのロック部材51が、胴21に取付けられている。
【0053】
ロック部材51は例えば金属の板ばねからなり、図6に示すように基部52と、複数例えば二つの取付け部53と、押し釦27の数に見合った数例えば二つのストッパ54を有している。
【0054】
基部52は環状凸部25の外周に嵌合される大きさのリング形に形成されている。取付け部53は、180°離れて設けられていて、図7に示すように基部52からその裏側に折り曲げられている。ロック部材51は、環状凸部25に嵌合されるとともに、前記底面26aに開口して胴21に形成された固定孔21cに取付け部53を圧入することによって、リング配置溝26の底面26aに重なって取付けられている。
【0055】
ストッパ54は、基部52に対して片持ち状態にこの基部52から外側に一体に延出されていて、弾性変形が可能である。ストッパ54を平面的に見た形状は図6に示すように略L字状である。これとともに、基部52に沿うように延びているストッパ54の部位は側方から見て凸形状、例えば図5に示すように上方に突出して略台形状に折り曲げられている。
【0056】
ストッパ54の前記略台形状をなした部位は、図6に示すように通孔37の真上に近接して配置されていて、通孔37を通ってヘッド挿入孔部35bに挿脱可能に形成されている。ストッパ54は、後述の操作リング61によって弾性変形されて、操作リング61の回転操作に従動して図4に示すようにヘッド挿入孔部35bに挿入されたロック位置と、図5に例示するようにヘッド挿入孔部35bの外部に配置されたロック解除位置とにわたって動かされるようになっている。ロック位置のストッパ54には押し釦27の係合部30が係合可能である。
【0057】
時計外装体12のリング配置溝26に円形の操作リング61が環状凸部25及びロック部材51を被って回転可能に配置されている。なお、操作リング61は図示のように切れ目なく連続するリングであることが好ましいが、一つの切れ目を有していても良い。図2及び図3中符号21bは環状凸部25の外周面に一体に形成された環状係止突起を示しており、この環状係止突起21bに操作リング61の内周面が引っ掛かって、操作リング61が外れ止めされている。そのため、操作リング61は文字板14を囲んだ環状凸部25の外周に回転可能に嵌合して胴21に取付けられている。
【0058】
操作リング61の表面(上面)及び周面は露出している。図1中符合61a,61bは操作リング61に複数形成された指掛け部を示しており、これら指掛け部61a,61bは例えば凹部からなるとともに操作リング61の周部に設けられている。
【0059】
操作リング61の露出された表面に、図1に示すように第1の表示62と第2の表示63が設けられている。第1の表示62と第2の表示63は操作リング61の径方向に対応して設けられて、第1の表示62は「LOCK」という文字列からなり、第2の表示63は「UNLOCK」という文字列からなる。これら第1の表示62と第2の表示63は、例えば竜頭81を目印としてこれに合わされるようになっているが、目印は竜頭81とは別に胴21に設けても良い。
【0060】
図8に示すように操作リング61はロック面61c及びロック解除凹部64を有している。ロック面61cはリング配置溝26の底面26aに近接して対向する操作リング61の裏面で形成されている。ロック解除凹部64はロック面61cに開放して押し釦27と同数設けられている。ロック面61cにはロック部材51のストッパ54が自身の弾性力で押付けられている。ロック解除凹部64にはストッパ54が挿脱可能である。
【0061】
操作リング61のロック面61cが通孔37に対向されると、この開放に対向されたロック面61cにより図2及び図4に示すようにストッパ54がそれ自身の弾性力に抗して押下げられるので、このストッパ54が通孔37を通ってヘッド挿入孔部35bに押し込まれて、押し釦27の係合部30に胴21の内部側から近接対向した状態に保持される。
【0062】
操作リング61のロック解除凹部64が通孔37に対向されると、ストッパ54がそれ自身の弾性力で図3及び図5に示すようにロック解除凹部64に挿入されるので、ストッパ54は押し釦27の係合部30の上方に外れた状態に保持される。
【0063】
前記ロック部材51及び操作リング61は、係合部30を有した押し釦27を、その非使用時に所定位置に位置決めしてロック状態に保持するとともに、このロック状態を押し釦27が操作される際に解除可能なロック手段をなしている。
【0064】
又、腕時計11は図7に示すクリックストップ機構71を例えば一対有している。このクリックストップ機構71は、機構部72とストップ凹部73とからなる。
【0065】
図6に示すように機構部72は、例えば、12時−6時を通る直線上に位置して胴21に取付けられている。これら機構部72は、図7に示すように胴21に埋め込まれた筒状のホルダ72aと、ホルダ72aに上下動可能でかつ上方に抜けないように支持された回転可能な鋼球72bと、ホルダ72aに収容されて鋼球72bを上向きに付勢するばね72cとで形成されている。鋼球72bの上部はリング配置溝26の底面26aから突出されている。
【0066】
ストップ凹部73は図8に示すように操作リング61の裏面をなしたロック面61cに開口して操作リング61に180°隔てて設けられている。これらのストップ凹部73には鋼球72bが着脱自在に係合できる。
【0067】
前記第1の表示62が竜頭81に合うように操作リング61が回転操作された状態では、鋼球72bがストップ凹部73に係合して操作リング61が仮保持されるとともに、この仮保持状態でロック部材51のストッパ54は、操作リング61のロック面61cで押し下げられてロック位置に配置されるようになっている。又、第2の表示63が竜頭81に合うように操作リング61が回転操作された状態では、ロック部材51のストッパ54は、自身の弾性力によりもたげられてロック解除凹部64に係合しロック解除位置に配置されるようになっている。なお、この回転操作に伴いストップ凹部73は鋼球72bに係合して操作リング61が仮保持されるが、その場合に係合されるのは、それまで係合していた鋼球72bに対して180度隔たって配置されているクリックストップ機構71の鋼球72bである。
【0068】
前記構成を備えた腕時計11において携帯時など押し釦27が使用されない状態では、胴21の内部側へ向けて押し釦27が不用意に押し込まれることを防止するために、図2及び図4に示すようにロック部材51のストッパ54はロック位置に配置されている。このロック状態は、操作リング61を回転操作して、その表面の第1の表示62を竜頭81に合わせることにより得ることができる。
【0069】
操作リング61の回転操作によりロック部材51のストッパ54がロック位置に適正に配置されると、その時点において、クリックストップ機構71がクリックストップ動作をして操作リング61を仮保持する。この場合、クリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材51のストッパ54がロック位置に配置されたことを報知できる。
【0070】
ロック状態では、操作リング61のロック面61cがロック部材51のストッパ54を押しているので、ストッパ54は、その根元を基点として自身の弾性力に抗して押下げられて、図2中実線及び図4に示したロック位置に配置されている。
【0071】
このロック位置に配置されたロック部材51のストッパ54には、胴21の外側から押し釦27の係合部30が至近距離で対向している。そのため、前記ロック状態で、腕時計11が落下した際の衝撃等により押し釦27に誤って押し込み力が作用すると、直ちに押し釦27の係合部30がロック部材51のストッパ54に引っ掛かる。こうした係合により押し釦27が所定位置から動かないように規制されて、押し釦27が誤って押し込まれる誤操作が防止される。
【0072】
なお、この誤操作防止において、ストッパ54の厚み方向の面ではなく、幅方向の側端面に係合部30が引っ掛かるので、押し込み力をストッパ54の厚み方向の面で受ける場合と比較してストッパ54は変形し難い。よって、誤操作防止の信頼性が高い。
【0073】
押し釦27を操作する必要があるときは、まず、図2中実線及び図4に示した状態から操作リング61を180°回転させ、その第2の表示63を竜頭81に合わせることにより、ロック部材51のストッパ54をロック解除位置に移動させた後に、押し釦27を押し込み操作すればよい。
【0074】
こうした操作リング61の回転により、ロック面61cがロック部材51のストッパ54から外れるとともに、操作リング61のロック解除凹部64がストッパ54に対向する。そのため、ストッパ54が、自身の弾性力によってもたげられてロック解除凹部64に入り込んで、ロック解除位置に配置される。これに伴い、ストッパ54が押し釦27の係合部30に対向しないようにこの上方に外れて、押し釦27の押し込み操作が許容された状態となる。
【0075】
なお、この場合にも、ロック部材51のストッパ54が自身の弾性力でロック解除凹部64に入り込んで、クリックストップ機構71と同様なクリックストップ動作を得られる。そのため、この動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音で、使用者にロック部材51のストッパ54がロック解除位置に配置されたことを報知できる。
【0076】
こうしたロック解除状態で押し釦27を軸方向に押し込むことにより、この押し釦27を図2及び図3中実線で示した所定位置から胴21の内部側に移動できる。それにより、押し釦27で接点16を押して、この接点16に与えられた所定の機能を行わせることができる。
【0077】
以上のように時計外装体12に回転操作可能に取付けられた円形の操作リング61はカムとして機能し、そのカム面(ロック面61c及びこれに連続したロック解除凹部64)に、自身の弾性力で押付けられたロック部材51のストッパ54が従動される。したがって、時計外装体12の正面側から操作リング61を回転操作することによって、これに連動させて、ロック部材51のストッパ54をロック位置又はロック解除位置に配置できる。
【0078】
操作リング61は、時計外装体12に取付けられた文字板14を囲んでいるので、胴21の側方から押し込み操作される押し釦27に比較してはるかに大きい。そのため、この操作リング61を容易に掴んで回転操作することができる。これとともに、操作リング61は時計外装体12の正面側から操作されるので、腕時計11が使用者の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。
【0079】
したがって、押し釦27が非使用時に誤って動かされないように規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0080】
更に、第1実施形態では、ロック位置に配置されたロック部材51のストッパ54を用いて押し釦27の押し込み操作を妨げる構成であるので、ストッパ54を連動する操作リング61と押し釦27とが別々の位置に配置されていて、押し釦27が操作リング61の回転を拘束することがない。そのため、押し釦27の正面形状を第1実施形態で例示したように四角形にすることができる。なお、押し釦27の正面形状は、円形であっても良いとともに、これに代えて、四角形以外の任意な非円形形状とすることが可能である。したがって、腕時計11のデザインの自由度を高めることができる点で好ましい。
【0081】
第1実施形態の構成では、ロック部材51のストッパ54を操作リング61のカム面に弾性的に接触された状態を維持するのに、ストッパ54自身の弾性力を用いている。そのために、ロック手段を構成する部品の数を削減できる点で好ましい。
【0082】
更に、第1実施形態の構成によれば、従来技術のようにねじ山の噛み合いを要しないので、ロック部材51のストッパ54がロック位置に配置されたときに、押し釦27に胴外側へ向かう負荷を与えることがない。これとともに、例え操作リング61を何回回転させても押し釦27に対する胴外側へ向けての負荷が次第に強化されることがないので、安全である。なお、従来技術のようにねじ山の噛み合いを利用したものでは、ロック部材をロック位置に移動させる場合に、このロック部材を回転させ過ぎると、押し釦が胴外側に抜ける恐れが考えられる。又、従来技術のようにねじ山の噛み合いを要しないので、加工が簡単である。即ち、ロック部材51はプレス加工により打ち抜いて簡単に得ることが可能であるとともに、操作リング61に対する加工も容易であるので製造性に優れている。
【0083】
図9〜図14は本発明の第2実施形態を示している。この実施形態は以下説明する事項を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
第2実施形態は、押し引き操作部材である竜頭81を、前記ロック手段により非使用時に所定位置から動かないように規制するとともに、この規制を竜頭81が操作される際に解除可能にした点が第1実施形態とは異なる。この実施において、ロック手段は竜頭81に対応して一つのみ設けられ、又、押し釦27についてのロック手段は省略されている。更に、第2実施形態は、第1実施形態で説明したクリックストップ機構に代えて、ロック部材51のストッパ54がロック位置とロック解除位置に配置された状態で操作リング61を位置決めするクリックストップ機構を、ロック部材を利用して構成した点でも第1実施形態とは異なる。
【0085】
具体的には、竜頭81は、軸部82とこれに例えば一体に連続した操作ヘッド83とを有してなり、軸部82は、これに接続された巻真84を介して時計ムーブメント13に接続されている。
【0086】
操作ヘッド83は軸部82より大径であり、その外周に、操作ヘッド83を回すために掴んだ使用者の指が滑り難くするための凹凸83aが、スプライン加工により形成されている。更に、操作ヘッド83の外周には凹凸83aを横切って円環形の凹部からなる係合部85が形成されている。
【0087】
そのため、第2実施形態の腕時計11において、携帯時など竜頭81が使用されない状態では、図9に示すようにロック部材51のストッパ54が、胴21の外部側方へ向けての竜頭81の不用意な引き出しを防止するロック位置に配置されている。
【0088】
前記ロック手段により竜頭81がロックされた状態では、操作リング61のロック面61cがロック部材51のストッパ54に接していて、ストッパ54が、自身の弾性力に抗して押下げられて、図9に示したロック位置に配置されている。このロック位置に配置されたロック部材51のストッパ54は竜頭81の凹部からなる係合部85に嵌合されている。
【0089】
そのため、前記ロック状態で、竜頭81に誤って引き出し力が作用すると、直ちに係合部85をなす凹部の壁面がロック部材51のストッパ54に胴21の内部側から引っ掛かる。こうした係合により竜頭81が所定位置から動かないように規制されて、竜頭81が誤って引き出される誤操作が防止される。
【0090】
竜頭81を操作する必要があるときは、まず、図9に示した状態から操作リング61を180°回転させ、その第2の表示63(図1参照)を竜頭81に合わせることにより、ロック部材51のストッパ54をロック解除位置に移動させた後に、竜頭81を引き出した上で回転操作すればよい。
【0091】
こうした操作リング61の回転により、ロック面61cがロック部材51のストッパ54から外れるとともに操作リング61のロック解除凹部64がストッパ54に対向する。そのため、ストッパ54が、自身の弾性力でもたげられてロック解除凹部64に入り込んで、ロック解除位置に配置される(図10参照)。これに伴い、ストッパ54が竜頭81の係合部85の上方に外れて移動され、竜頭81の引き出し操作が許容された状態となる。
【0092】
そのため、このロック解除状態で竜頭81を、図9及び図10に示した所定位置から軸方向に沿って引き出すことができ、その上で竜頭81を回転操作して、時刻合わせや日付け合わせ等をすることができる。したがって、第2実施形態でも本発明の課題を解決できる。
【0093】
図11に示すようにロック部材51は、ストッパ54とは異なる位置、例えばストッパ54から180°離れた位置に節度片56を有している。節度片56は基部52に対して片持ち状態にこの基部52から外側に一体に延出されていて、弾性変形が可能である。節度片56を平面的に見た形状は図11に示すように略L字状である。これとともに、基部52に沿うように延びている節度片56の部位は、図13に示すように上方、言い換えれば、操作リング61側に突出する斜状部位56aと、この先端から下方に鋭角に折り曲げられた係止部位56bとにより略V字形状をなしている。係止部位56bは斜状部位56aより短く、この係止部位56bの先端が前記底面26aに接するまで節度片56は弾性変形可能であり、それにより、操作リング61の回転が許されるようになっている。
【0094】
図12〜図14に示すように操作リング61には、この操作リング61の回転操作に伴って節度片56が挿脱される第1の節度溝65と第2の節度溝66とがロック面61cに開放して設けられている。これらの節度溝65,66は図13で代表して示すようにV字状に形成されている。第1の節度溝65と第2の節度溝66は180度隔てて設けられている。
【0095】
第1の節度溝65はロック解除凹部64から180度離れていて、この第1の節度溝65には、ストッパ54がロック解除位置に配置された状態で節度片56が係合される。第2の節度溝66はロック解除凹部64の近傍にこれに並べられていて、この第2の節度溝66には、ストッパ54がロック位置に配置された状態で節度片56が係合される。
【0096】
このため、操作リング61が回転操作されることで図9に示したようにストッパ54がロック位置に配置されると同時に、図12に示したように第2の節度溝66が節度片56を被うように対向するので、節度片56がそれ自身の弾性力でもたげられて第2の節度溝66に係合して、操作リング61が仮保持される。こうしたクリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音で、使用者にロック部材51のストッパ54がロック位置に配置されたことを報知できる。
【0097】
この逆に、操作リング61が回転操作されることで図10に示したようにストッパ54がロック解除位置に配置されると同時に、第1の節度溝65が節度片56を被うように対向するので、節度片56がそれ自身の弾性力でもたげられて第1の節度溝65に係合して、操作リング61が仮保持される。このときのクリックストップ動作においても使用者にロック部材51のストッパ54がロック解除位置に配置されたことを報知できる。
【0098】
以上のように操作リング61が180度回転されるたびに前記クリックストップ動作により、操作リング61を仮保持できる。この仮保持を担う節度片56はロック部材51に一体に形成されているので、節度片として専用の部品を省略でき構成を簡単にできる。
【0099】
なお、操作リング61が図13中実線矢印A方向に回転される場合、節度片56が伏せるように弾性変形して底面26aに近づくので、この節度片56を第1の節度溝65及び第2の節度溝66が通過できる。この逆に図13中点線矢印B方向に操作リング61が回転操作された場合、節度片56が底面26aに対して起きる方向に弾性変形し、その直後に、節度片56が第1の節度溝65又は第2の節度溝66内で突っ張るようになるので、操作リング61の矢印B方向への回転が妨げられる。したがって、操作リング61は一方向回転のみ可能であり、逆方向には回転操作することができない。
【0100】
図13中二点鎖線で示すように、V字状の節度片56が略等しい長さの斜状部位を有した構成とするとともに、その自由端側の斜状部位の変位を許容する逃げ溝67を胴21に底面26aに開口して設ける場合には、操作リング61の回転操作を双方向にすることが可能である。
【0101】
以上説明した事項以外の第2実施形態の構成は、図9〜図14に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。その他の作用も第1実施形態と同様であるので、その説明については省略する。
【0102】
本発明は前記各実施形態に制約されるものではなく、携帯時計の他にも、例えばストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態の腕時計を示す正面図。
【図2】図1の腕時計の押し釦の取付け部を押し釦がロックされた状態で示す断面図。
【図3】図1の腕時計の押し釦の取付け部を押し釦のロックが解除された状態で示す断面図。
【図4】図2中F4−F4線に沿って示す略断面図。
【図5】図3中F5−F5線に沿って示す略断面図。
【図6】図1の腕時計をその操作リングを外した状態で一部を切欠いて示す正面図。
【図7】図1の腕時計のクリックストップ機構まわりを示す断面図。
【図8】図1の腕時計が備える操作リングを示す裏面図。
【図9】本発明の第2実施形態の腕時計の竜頭取付け部を竜頭がロックされた状態で示す断面図。
【図10】第2実施形態の腕時計の竜頭取付け部を竜頭のロックが解除された状態で示す断面図。
【図11】第2実施形態の腕時計をその操作リングを外した状態で一部を切欠いて示す正面図。
【図12】第2実施形態の腕時計の操作リングの回転に節度を与える構成を示す断面図。
【図13】図12中F13−F13線に沿って示す略断面図。
【図14】第2実施形態の腕時計が備える操作リングを示す裏面図。
【符号の説明】
【0104】
11…腕時計(携帯時計・携帯機器)
12…時計外装体(機器外装体)
14…文字板(表示部)
21…胴
27…押し釦(押し引き操作部材)
28…押し釦の軸部
29…押し釦の操作ヘッド
30…押し釦の係合部
35…貫通孔
35a…パイプ取付け孔部
35b…ヘッド挿入孔部
37…通孔
41…パイプ
51…ロック部材
52…ロック部材の基部
53…ロック部材の取付け部
54…ロック部材のストッパ
56…ロック部材の節度片
61…操作リング
61c…ロック面
64…ロック解除凹部
65…節度溝
71…クリックストップ機構
81…竜頭(押し引き操作部材)
82…竜頭の軸部
83…竜頭の操作ヘッド
85…竜頭の係合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされるストッパを前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの回転操作に前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる前記ストッパの動きを連動させたことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされる弾性変形可能なストッパを有したロック部材を前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの裏面に前記ストッパを接触させて、このストッパの前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる動きを前記操作リングの回転操作に連動させたことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
貫通孔並びにこの貫通孔に連通する通孔が夫々形成された機器外装体と、
この機器外装体に取付けられた表示部と、
前記貫通孔に挿入して前記機器外装体に固定されたパイプと、
このパイプ内に摺動可能に挿入された軸部、この軸部の一端部に設けられて前記貫通孔に挿入された操作ヘッド、及びこの操作ヘッドに形成された係合部を有する押し引き操作部材と、
前記表示部を囲む大きさに形成されているとともに、前記通孔に対向可能なロック面及びこのロック面に開放するロック解除凹部を有して、前記機器外装体にこの外装体の正面側から回転操作可能に取付けられた円形の操作リングと、
前記ロック面及びロック解除凹部に追従して弾性変形されこの弾性変形を伴って前記通孔を通って前記貫通孔に挿脱されることにより前記係合部が係合可能なロック位置と前記係合部から離れたロック解除位置とにわたって移動されるストッパを有して前記機器外装体に取付けられたロック部材と、
を具備したことを特徴とする携帯機器。
【請求項4】
前記押し引き操作部材が押し釦であって、この押し釦の押し込み操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴とする請求項1から3の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であることを特徴とする請求項4に記載の携帯機器。
【請求項6】
前記ロック部材が板ばねであることを特徴とする請求項2から5の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項7】
弾性変形が可能で前記操作リング側に突出する節度片を前記ストッパとは異なる位置に前記ロック部材が有しており、この節度片が前記操作リングの回転に伴って挿脱されるとともに前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で前記節度片が係合される節度溝が前記操作リングの裏面に設けられていることを特徴とする請求項2から6のうちのいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項8】
前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で、前記操作リングを仮保持するクリックストップ機構を備えたことを特徴とする請求項2から6の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項9】
請求項1から8の内のいずれか一項に記載の携帯機器で形成されたことを特徴とする携帯時計。
【請求項10】
請求項1から8の内のいずれか一項に記載の携帯機器で形成された携帯時計であって、この携帯時計の竜頭が前記押し引き操作部材であるとともに、この竜頭の引出し操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴とする携帯時計。
【請求項1】
係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされるストッパを前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの回転操作に前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる前記ストッパの動きを連動させたことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされる弾性変形可能なストッパを有したロック部材を前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの裏面に前記ストッパを接触させて、このストッパの前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる動きを前記操作リングの回転操作に連動させたことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
貫通孔並びにこの貫通孔に連通する通孔が夫々形成された機器外装体と、
この機器外装体に取付けられた表示部と、
前記貫通孔に挿入して前記機器外装体に固定されたパイプと、
このパイプ内に摺動可能に挿入された軸部、この軸部の一端部に設けられて前記貫通孔に挿入された操作ヘッド、及びこの操作ヘッドに形成された係合部を有する押し引き操作部材と、
前記表示部を囲む大きさに形成されているとともに、前記通孔に対向可能なロック面及びこのロック面に開放するロック解除凹部を有して、前記機器外装体にこの外装体の正面側から回転操作可能に取付けられた円形の操作リングと、
前記ロック面及びロック解除凹部に追従して弾性変形されこの弾性変形を伴って前記通孔を通って前記貫通孔に挿脱されることにより前記係合部が係合可能なロック位置と前記係合部から離れたロック解除位置とにわたって移動されるストッパを有して前記機器外装体に取付けられたロック部材と、
を具備したことを特徴とする携帯機器。
【請求項4】
前記押し引き操作部材が押し釦であって、この押し釦の押し込み操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴とする請求項1から3の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であることを特徴とする請求項4に記載の携帯機器。
【請求項6】
前記ロック部材が板ばねであることを特徴とする請求項2から5の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項7】
弾性変形が可能で前記操作リング側に突出する節度片を前記ストッパとは異なる位置に前記ロック部材が有しており、この節度片が前記操作リングの回転に伴って挿脱されるとともに前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で前記節度片が係合される節度溝が前記操作リングの裏面に設けられていることを特徴とする請求項2から6のうちのいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項8】
前記ストッパが前記ロック位置に配置された状態で、前記操作リングを仮保持するクリックストップ機構を備えたことを特徴とする請求項2から6の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項9】
請求項1から8の内のいずれか一項に記載の携帯機器で形成されたことを特徴とする携帯時計。
【請求項10】
請求項1から8の内のいずれか一項に記載の携帯機器で形成された携帯時計であって、この携帯時計の竜頭が前記押し引き操作部材であるとともに、この竜頭の引出し操作が前記ロック位置に配置された前記ストッパにより妨げられることを特徴とする携帯時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−127684(P2010−127684A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300718(P2008−300718)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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