説明

携帯無線機

【課題】折り畳み構造の携帯無線機において、折り畳んだ状態での使用時にアンテナ性能劣化が起こり難い携帯無線機を提供する。
【解決手段】携帯無線機1の上筐体10Aのヒンジ部11側と下筐体10Bのヒンジ部11側のそれぞれに導電体30を配置する。これにより、上筐体10A内の回路基板15のグランドパターン17と下筐体10B内の回路基板20のグランドパターン18との間で共振が起こり難くなり、アンテナ性能の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPHS(Personal Handy Phone System)等の携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPHS等の携帯無線機において、例えば特許文献1や特許文献2にあるように、アンテナ性能の改善を図る提案がなされている。特許文献1には、ヒンジ部にアンテナを備えた折り畳み構造の携帯電話機において、前記アンテナと接近する上部筐体に反転エレメントを設け、前記アンテナと逆方向に流れる電流を低減する技術が開示されている。特許文献2には、アンテナ給電点近傍の回路基板のグランド部分に接触端子を設け、導電性を有する筐体部分と導通させることで、筐体の誘導電流の発生を防止し、放射素子として動作させることでアンテナ性能を向上させる技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−086715号公報
【特許文献2】特開平11−340867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の折り畳み式の携帯無線機においては、折り畳んだ状態即ち閉状態にすると、上筐体の回路基板のグランドパターンと下筐体の回路基板のグランドパターンとの高周波的な結合によって共振が起こり、その共振の発生箇所(即ち共振発生周波数)におけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio、電圧定在波比)が大きくなってアンテナ性能が劣化する問題がある。なお、上述した特許文献1で開示された技術は、閉状態では上下筐体内の回路基板間に発生する誘導電流を低減することができない。また、特許文献2で開示された技術は折り畳み構造の携帯無線機を想定していない。
【0005】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、折り畳み構造の携帯無線機において、折り畳んだ状態での使用時にアンテナ性能劣化が起こり難い携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の携帯無線機は、非導体で構成される第1の筐体と、非導体で構成される第2の筐体と、前記第1の筐体と前記第2の筐体とを回動自在に連結するヒンジ部と、前記第1の筐体又は前記第2の筐体のいずれかに設けられた回路基板と、前記回路基板に設けられた無線回路と、前記ヒンジ部に配置されたアンテナ素子と、前記無線回路に接続され前記アンテナ素子に給電する給電部と、折り畳んだとき筐体厚み方向において重なるように前記第1の筐体及び前記第2の筐体の前記ヒンジ部側に配置された複数の導電体と、を備えた。
【0007】
上記構成によれば、第1の筐体のヒンジ部側と第2の筐体のヒンジ部側のそれぞれに導電体を配置したので、第1の筐体内の回路基板のグランドパターンと第2の筐体内の回路基板のグランドパターンとの間で共振が起こり難くなり、アンテナ性能の向上が図れる。
【0008】
また、上記構成において、前記複数の導電体の各々は、所定の面積で構成される。例えば、幅40mm、長さ10mmの400mmとする。
【0009】
また、上記構成において、前記複数の導電体の各々は、筐体短手方向における前記回路基板の幅と略等しい幅で構成される。
【0010】
また、上記構成において、前記複数の導電体の各々は、前記回路基板のグランドパターンと直接あるいはリアクタンス素子を介して電気的に接続される。
【0011】
上記構成によれば、導電体を、リアクタンス素子を介して回路基板のグランドパターンに接続した場合、共振周波数が変化するので、該共振周波数を携帯無線機として使用する周波数帯から外すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、折り畳み構造の携帯無線機において、第1の筐体のヒンジ部側と第2の筐体のヒンジ部側のそれぞれに導電体を配置したので、折り畳んだ閉状態で上筐体内の回路基板のグランドパターンと下筐体内の回路基板のグランドパターンとの間での共振の発生が起こり難くなり、アンテナ性能の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る携帯無線機の外観を示す側面図である。また、図2は本実施の形態の携帯無線機の下筐体のケース部を外した状態の外観を示す側面図である。また、図3は図2において矢印Aで示す部分を示す斜視図である。また、図4は本実施の形態の携帯無線機の内部構成を模式的に示した図である。
【0015】
図1から分かるように本実施の形態の携帯無線機1は折り畳み構造の携帯無線機であり、非導体で構成される上筐体(第1の筐体)10Aと、非導体で構成される下筐体(第2の筐体)10Bと、上筐体10Aと下筐体10Bとを回動自在に連結するヒンジ部11とを備える。また、図4に示すように上筐体10Aには主に回路基板15及び液晶表示器16が設けられており、下筐体10Bには主に回路基板20、アンテナ素子25及び給電部26が設けられている。下筐体10Bの回路基板20には無線回路21が実装されており、アンテナ素子25はヒンジ部11の近傍に配置され、給電部26は無線回路21に接続されている。なお、下筐体10Bにはテンキーやファンクションキーなどの複数のキーからなるキーパネル(図示略)も設けられている。
【0016】
また、上筐体10Aと下筐体10Bには、携帯無線機1を折り畳んだときに筐体厚み方向において重なるように上筐体10A及び下筐体10Bのヒンジ部11側に導電体30が設けられている。この導電体30は、図2又は図3に示すように薄い板状に形成されており、バネ部材31で上下筐体10A、10Bのそれぞれに取り付けられている。図2及び図3では下筐体10B側の導電体30を示しているが、上筐体10A側の導電体30も同様の形状を有している。これらの導電体30は筐体短手方向における回路基板15、20の幅と略等しい幅で構成されている。また、導電体30は、上筐体10Aの液晶表示器16と下筐体10Bのキーパネル(図示略)によって制約を受けるので、それらの形状を鑑みた長さになっている。その面積は例えば幅40mm、長さ10mmの400mmである。
【0017】
下筐体10B側の導電体30は、下筐体10Bのケース部12(図1参照)を取り外すことでその外観を見ることができ、上筐体10A側の導電体30も下筐体10B側の導電体30と同様に上筐体10Aのケース部(図示略)を取り外すことでその外観を見ることができる。なお、導電体30は、薄い板状に形成して上下筐体10A、10Bに配置する以外に例えば低抵抗導電性の発泡ウレタンを薄いシート状に形成してケース部12(上筐体10Aのケース部も含む)の裏側に両面テープで貼り付けるようにしても良いし、上下筐体10A、10Bを構成する樹脂材料(非導体)に金属粉を混合させるようにしても良い。さらに、ケース部12(上筐体10Aのケース部も含む)の内側に導電性部材を蒸着させるようにしても良い。
【0018】
このように上筐体10Aのヒンジ部11側と下筐体10Bのヒンジ部11側のそれぞれに導電体30を配置する。導電体30を配置することで上筐体10A内の回路基板15のグランドパターン17と下筐体10B内の回路基板20のグランドパターン18との間で共振が起こり難くなる。図5は、導電体30が有る場合と無い場合のVSWRの周波数特性を比較した図である。同図において、導電体30が無い場合は1.7GHz〜1.8GHz帯でVSWRが悪化するが((a)参照)、導電体30が有ると同周波数帯でのVSWRが略フラットになる((b)参照)。例えば、携帯電話では800MHz帯と2GHz帯が使用されるが、導電体30を設けることで2GHz帯を良好に使用することが可能となる。
【0019】
以上のように本実施の形態の携帯無線機1によれば、上筐体10Aのヒンジ部11側と下筐体10Bのヒンジ部11側のそれぞれに導電体30を配置したので、上筐体10A内の回路基板15のグランドパターン17と下筐体10B内の回路基板20のグランドパターン18との間で共振が起こり難くなり、アンテナ性能の向上が図れる。
【0020】
なお、導電体30を設けることにより、人体の手への電力吸収を低減できる効果が期待できる。即ち、上筐体10Aと下筐体10Bを開いた開状態で使用した際に導電体30に電界が集中し、導電体30以外の部分におけるエネルギー密度が低減する。図6に示すように、折り畳み式の携帯無線機の場合、下筐体を持つことが殆どであるので、導電体30以外の部分を持つことで手への電力吸収が低減し、電波の放射効率が改善される。
【0021】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る携帯無線機の内部構成を模式的に示した図である。なお、図7において前述した図4と共通する部分には同一の符号を付けている。本実施の形態の携帯無線機2は、前述した実施の形態1の携帯無線機1と同一の構成を有するとともに、上下筐体10A、10Bそれぞれに配置された導電体30を上下筐体10A、10Bそれぞれの回路基板15、20のグランドパターン17、18に電気的に接続するリアクタンス素子40を有している。
【0022】
リアクタンス素子40にて導電体30を回路基板15、20のグランドパターン17、18に接続することで共振周波数が変化する。例えば図8に示すように、共振周波数を携帯無線機2の使用周波数帯である2GHz帯から外すことができる。この手法は、導電体30だけでは共振を完全に除去できない場合やアンテナ性能のばらつきを低減する場合に有効である。リアクタンス素子40として、コンデンサやコイル等のチップ部品が好適である。
【0023】
以上のように本実施の形態の携帯無線機2によれば、上下筐体10A、10Bそれぞれに配置した導電体30を上下筐体10A、10Bそれぞれの回路基板15、20のグランドパターン17、18にリアクタンス素子40を介して電気的に接続するようにしたので、共振周波数を変化させることが可能となり、導電体30だけでは共振を完全に除去できない場合に共振周波数を携帯無線機2の使用周波数帯から外すことができ、またアンテナ性能のばらつきを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、折り畳み構造の携帯無線機を折り畳んだ状態での使用時にアンテナ性能劣化が起り難いといった効果を有し、携帯電話やPHS等の携帯無線機への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る携帯無線機の外観を示す側面図
【図2】図1の携帯無線機の下筐体のケース部を外した状態の外観を示す側面図
【図3】図2において矢印Aで示す部分を示す斜視図
【図4】図1の携帯無線機の内部構成を模式的に示した図
【図5】導電体が有る場合と無い場合のVSWRの周波数特性を比較した図
【図6】図1の携帯無線機の上下筐体を開いた状態での使用時における副次的な効果を説明するための図
【図7】本発明の実施の形態2に係る携帯無線機の内部構成を模式的に示した図
【図8】図7の携帯無線機のVSWRの周波数特性を示す図
【符号の説明】
【0026】
1、2 携帯無線機
10A 上筐体
10B 下筐体
11 ヒンジ部
12 ケース部
15、20 回路基板
16 液晶表示器
17、18 グランドパターン
21 無線回路
25 アンテナ素子
26 給電部
30 導電体
31 バネ部材
40 リアクタンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導体で構成される第1の筐体と、
非導体で構成される第2の筐体と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを回動自在に連結するヒンジ部と、
前記第1の筐体又は前記第2の筐体のいずれかに設けられた回路基板と、
前記回路基板に設けられた無線回路と、
前記ヒンジ部に配置されたアンテナ素子と、
前記無線回路に接続され前記アンテナ素子に給電する給電部と、
折り畳んだとき筐体厚み方向において重なるように前記第1の筐体及び前記第2の筐体の前記ヒンジ部側に配置された複数の導電体と、
を備えた携帯無線機。
【請求項2】
前記複数の導電体の各々は、所定の面積で構成される請求項1に記載の携帯無線機。
【請求項3】
前記複数の導電体の各々は、筐体短手方向における前記回路基板の幅と略等しい幅で構成される請求項1又は請求項2に記載の携帯無線機。
【請求項4】
前記複数の導電体の各々は、前記回路基板のグランドパターンと直接あるいはリアクタンス素子を介して電気的に接続される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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