説明

携帯無線機

【課題】折りたたみ構造の携帯無線機において、ヒンジをアンテナとして使用する場合、下筐体内に配置された回路基板と上筐体内に配置された回路基板を接続する接続線がヒンジ部内を通ったり、近接したりしても、アンテナ利得の劣化を低減できる携帯無線機を提供する。
【解決手段】下筐体10と、下筐体10と回動可能に接続された上筐体20と、下筐体10と上筐体20とを接続する第1ヒンジ31と、下筐体10と上筐体20とを接続する第2ヒンジ32とを備え、第1ヒンジ31は樹脂部材310と導体部材311の2つの部材から構成され、第2ヒンジ32は少なくとも一部が導体部材から構成され、第1ヒンジ31の導体部材311は下筐体10内に配置された第1無線部101と電気的に接続されており、第2ヒンジ32は下筐体10内に配置された第2無線部107と電気的に接続されており、第1ヒンジ31の導体部材311は上筐体20内のインサート板金202と電磁結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ構造の携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
折りたたみ構造の携帯無線機には、下筐体に対して上筐体を回動自在に連結させて開閉のみの行える構造のもの、下筐体に対して上筐体を回動自在に連結させるとともに、上筐体を水平方向(上下筐体の開閉方向を垂直方向とする)に180度の回動可能とした構造(スイベル構造と呼ばれる)のもの、縦方向及び横方向のそれぞれの方向に対して折りたたむことができる構造(ダブルオープン構造と呼ばれる)のものがある。
【0003】
折りたたみ構造の携帯無線機の上下それぞれの筐体内には回路基板が配置されており、これらの回路基板はフレキシブルケーブルや細線同軸ケーブル等の接続線で電気的に接続されている。図12は、特許文献1で開示された折りたたみ構造の携帯無線機の上下筐体の接続部分の構造を示す斜視図である。同図に示すように、ヒンジ部500の第2筐体510側の一部と第1筐体520側の一部に軸部材501と軸受け部材502を収容し、軸部材501の少なくとも一部を金属材料で形成し、アンテナとして使用している。また、軸部材501には、第2筐体510内の回路基板511に設けたアンテナ給電回路512を接続している。また、第1筐体520内の回路基板521の導体部(図示略)の一部を軸部材501に近接するように配置して、電磁的に結合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−081410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヒンジをアンテナとして使用する場合、下筐体内に配置された回路基板と上筐体内に配置された回路基板を接続する接続線(フレキシブルケーブルや細線同軸ケーブル等)がヒンジ部内を通ったり、近接したりするために、接続線とヒンジが電磁結合し、アンテナ利得が劣化するという課題がある。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、折りたたみ構造の携帯無線機において、ヒンジをアンテナとして使用する場合、下筐体内に配置された回路基板と上筐体内に配置された回路基板を接続する接続線がヒンジ部内を通ったり、近接したりしても、アンテナ利得の劣化を低減できる携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯無線機は、第1筐体と、前記第1筐体と回動可能に接続された第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第1ヒンジと、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第2ヒンジと、前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、前記第1ヒンジ内を通り、前記第1回路基板と前記第2回路基板を接続する接続線と、を備えた携帯無線機であって、前記第1ヒンジは樹脂部材と導体部材の2つの部材から構成され、前記導体部材は前記第1筐体もしくは前記第2筐体内に配置された第1無線部と第1給電部を介して電気的に接続されており、前記導体部材は前記第1筐体もしくは前記第2筐体内の金属板と電磁結合する。
【0008】
上記構成によれば、第1ヒンジを樹脂部材と導体部材の2つの部材から構成したので、導体部材の小型化が図れ、第1ヒンジ内を通る接続線の第1ヒンジ内を並走する距離を短くできる。これにより、第1ヒンジを導体部材のみで構成したときよりも接続線と第1ヒンジの電磁結合が小さくなり、アンテナ利得の劣化が低減する。
【0009】
上記構成において、前記第1ヒンジにおいて、前記導体部材は前記樹脂部材から露出する形状である。
【0010】
上記構成によれば、第1ヒンジの導体部材を樹脂部材から露出する形状としたので、導体部材と第1筐体もしくは第2筐体内の金属板との間の距離を短くできる。これにより、導体部材と金属板の電磁結合量が増加し、アンテナ利得が向上する。
【0011】
上記構成において、前記第1ヒンジにおいて、前記樹脂部材に、前記第1筐体内に配置された回路基板と前記第2筐体内に配置された回路基板とを電気的に接続する接続線の位置を固定する凹部が前記導体部材の近傍に設けられている。
【0012】
上記構成によれば、樹脂部材の凹部を導体部材の近傍に設けて接続線の位置を固定するので、接続線の導体部材と並走する距離を短くできる。これにより、接続線と導体部材の電磁結合が小さくなり、アンテナ利得の劣化量が低減する。
【0013】
上記構成において、前記第2ヒンジは少なくとも一部が導体部材から構成され、前記第2ヒンジは前記第1筐体もしくは前記第2筐体内に配置された第2無線部と第2給電部を介して電気的に接続されている。
【0014】
上記構成によれば、第2ヒンジを別の無線部のアンテナとして用いることで新たにアンテナを設ける必要がなくなるため、携帯無線機自体の小型化が図れる。
【0015】
上記構成において、前記第1ヒンジと前記第2ヒンジは携帯無線機の幅方向に対して離隔している。
【0016】
上記構成によれば、第1ヒンジと第2ヒンジは携帯無線機の幅方向に対して距離が離れるので、第1ヒンジを用いたアンテナと第2ヒンジを用いたアンテナのアイソレーションが確保でき、アンテナ間での電磁結合によるアンテナ利得の劣化量が低減する。
【0017】
上記構成において、前記第1ヒンジと前記第1無線部を接続する前記第1給電部が、前記第1回路基板に設けられ、前記第2ヒンジと前記第2無線部を接続する前記第2給電部が、前記第1回路基板と同じ筐体内の第3回路基板に設けられている。
【0018】
上記構成によれば、第1給電部と第2給電部が同一筐体内にある別々の回路基板に設けられているため、第1ヒンジを用いたアンテナの放射に寄与するアンテナ電流と、第2ヒンジを用いたアンテナの放射に寄与するアンテナ電流が別々の回路基板に流れる。それにより各アンテナ間のアイソレーションが向上するので、アンテナ間での電磁結合によるアンテナ利得の劣化量がさらに低減する。
【0019】
上記構成において、前記接続線が挿通され、前記第1ヒンジの前記導体部材に挿入される円筒形状の位置規制部材を設けた。
【0020】
上記構成によれば、接続線と導体部材の近接を防ぎ、かつ、接続線から導体部材までの距離を一定に保つことができるので、アンテナ性能の劣化及びバラツキを防ぐことができる。
【0021】
上記構成において、前記位置規制部材の少なくとも一端部は、内径が徐々に拡がっていくようなラッパ形状に形成されている。
【0022】
上記構成によれば、接続線が位置規制部材の角に当たるのを防止することができ、第1,第2筐体の開閉動作による接続線の耐久性を向上させることができる。すなわち、接続線の断線を防止することができる。
【0023】
上記構成において、前記位置規制部材は、樹脂で形成されている。
【0024】
上記構成によれば、接続線と位置規制部材の間の接触抵抗を低減でき、第1,第2筐体の開閉動作による接続線の耐久性を向上させることができる。すなわち、接続線の断線を防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、折りたたみ構造の携帯無線機において、ヒンジをアンテナとして使用する場合、下筐体内に配置された回路基板と上筐体内に配置された回路基板を接続する接続線がヒンジ部内を通ったり、近接したりしても、アンテナ利得の劣化を低減できる。さらに複数のアンテナを搭載でき、携帯無線機の小型化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係る携帯無線機の概観を示す斜視図
【図2】図1の携帯無線機のヒンジを含むその周囲の構造を示す斜視図
【図3】図1の携帯無線機の第1ヒンジの概観を示す斜視図
【図4】図1の携帯無線機の第1ヒンジの導体部材の概観を示す斜視図
【図5】図2のA−A’線断面図
【図6】図2のB−B’線断面図
【図7】図1の携帯無線機の第1ヒンジと第1給電板金の接続状態を示す斜視図
【図8】図1の携帯無線機の第1ヒンジの凹部の働きを説明するための斜視図
【図9】図1の携帯無線機に位置規制部材を設けた例を示す断面図
【図10】図1の携帯無線機に位置規制部材を設けた例を示す断面図
【図11】図9の位置規制部材の概観を示す斜視図
【図12】特許文献1で開示された折りたたみ構造の携帯無線機の上下筐体の接続部分の構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係る携帯無線機の概観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の携帯無線機1は、下筐体(第1筐体)10に対して上筐体(第2筐体)20を回動自在に連結させて開閉のみの行える折りたたみ構造の携帯無線機である。図1の(a)は上下筐体を開いたときの状態、図1の(b)は上下筐体を閉じたときの状態である。下筐体10と上筐体20はヒンジ30によって回動自在に接続されている。上筐体20の内面側にはメイン液晶部40が配置されており、上筐体20の外面側にはサブ液晶部41が配置されている。
【0029】
図2は、携帯無線機1のヒンジ30を含むその周囲の構造を示す斜視図である。特に、この図は携帯無線機1の背面側から見た図である。同図において、下筐体10内には、第1無線部101、第1給電部103を実装した第1回路基板104と、第2無線部107、第2給電部106を実装した第2回路基板108と、第2回路基板108の凹状部分108aに配置されたカメラ109とが配置されている。第1回路基板104は略L字状に形成され、第2回路基板108は略凹状に形成されている。第1回路基板104は、第2回路基板108上に積層配置されている。
【0030】
上筐体20内には、メイン液晶部40とサブ液晶部41を電気的に接続する第3回路基板201と、メイン液晶部40を補強するためのインサート板金(金属板)202とが配置されている。インサート板金202は、ヒンジ30を含む上筐体20内の略全域に亘る大きさに形成されている。下筐体10内に配置された第2回路基板108と上筐体20内に配置された第3回路基板201は細線同軸ケーブル(接続線)50で電気的に接続されている。ヒンジ30は、第1ヒンジ31と第2ヒンジ32の2つの部材から構成されており、第1ヒンジ31は図2に向かって左側に、第2ヒンジ32は図2に向かって右側にと筐体幅方向に対して離隔するように配置されている。第1ヒンジ31は、例えばワンセグ用のダイポールアンテナの励振器として用いられ、第1給電板金102及び第1給電部103を介して第1無線部101に接続される。第2ヒンジ32は、例えばセルラ用のモノポールアンテナとして用いられ、第2給電板金105及び第2給電部106を介して第2無線部107に接続される。第2ヒンジ32は、導体部材から構成される。このように第1ヒンジ31と第2ヒンジ32が筐体幅方向に対して離隔するように配置されることにより、第1ヒンジ31を用いたダイポールアンテナと、第2ヒンジ32を用いたモノポールアンテナのアイソレーションが確保でき、アンテナ間の電磁結合によるアンテナ利得の劣化量を低減することができる。
【0031】
また、第1給電板金102と第1無線部101を接続する第1給電部103が、第1回路基板104、第2給電板金105と第2無線部107を接続する第2給電部106が、第2回路基板108というように異なる回路基板に給電部を備えることにより、第1ヒンジ31を用いたダイポールアンテナの放射に寄与するアンテナ電流は第1回路基板104に、第2ヒンジ32を用いたモノポールアンテナの放射に寄与するアンテナ電流が第2回路基板108にと、異なる基板に主に流れる。それにより各アンテナ間のアイソレーションが向上するので、アンテナ間での電磁結合によるアンテナ利得の劣化量がさらに低減する。
【0032】
図3は、第1ヒンジ31の概観を示す斜視図である。同図において、第1ヒンジ31は、樹脂を用いて形成された樹脂部材310と、金属を用いて形成された導体部材311の2つの部材から構成される。樹脂部材310は、導体部材311を収容できる大きさ及び形状に形成されている。導体部材311は、細線同軸ケーブル50を通すことができるように中空に形成されている。樹脂部材310と導体部材311は、樹脂部材310内に導体部材311の一部を挿入することで一体化する。樹脂部材310の導体部材311の近傍には、導体部材311内を通過させた細線同軸ケーブル50の位置を固定する凹部310aが形成されている。
【0033】
第1ヒンジ31を樹脂部材310と導体部材311の2つの部材から構成することで、導体部材311の小型化が図れる。導体部材311を小型化することにより、第1ヒンジ31内を通る細線同軸ケーブル50が導体部材311内を並走する距離が短くなり、第1ヒンジ31を1つの導体部材で構成したときよりも細線同軸ケーブル50と当該導体部材との電磁結合によるアンテナ利得の劣化量を低減できる。
【0034】
図4は、第1ヒンジ31の導体部材311の概観を示す斜視図である。同図に示すように、導体部材311は、大小異なる経の2つの断面C字状の部分(以下、C字状部と呼ぶ)311a,311bを有するとともに、C字状部311bから長さ方向に延設する延設部311cを有する。導体部材311のC字状部311aの径が樹脂部材310の先端部分の径より大きく形成されており、導体部材311を樹脂部材310に挿入したときに導体部材311のC字状部311aが樹脂部材310の先端部分から露出するようにしている。導体部材311のC字状部311aが樹脂部材310の先端部分から露出することで、導体部材311とインサート板金202との間の距離が短くなる。導体部材311とインサート板金202との間の距離が短くなることで、導体部材311とインサート板金202の電磁結合量が増加する。電磁結合量が増加することにより、インサート板金202にアンテナ放射に寄与するアンテナ電流の量が増加し、アンテナ利得の向上が図れる。
【0035】
図5は図2のA−A’線断面図、図6は図2のB−B’線断面図である。図5に示すように、細線同軸ケーブル50は、第1ヒンジ31の導体部材311を通過している。また、図6に示すように、導体部材311のC字状部311aとインサート板金202との間の距離L1が、導体部材311のC字状部311bとインサート板金202との間の距離L2よりも短くなっている。上述したように導体部材311とインサート板金202との間の距離を短くすることで、導体部材311とインサート板金202の電磁結合量を増加させることができる。
【0036】
図7は、第1ヒンジ31と第1給電板金102の接続状態を示す斜視図である。同図に示すように、第1ヒンジ31の導体部材311の延設部311cに第1給電板金102の延設部102aが電気的に接続される。
【0037】
図8は、第1ヒンジ31の凹部310aの働きを説明するための斜視図である。同図に示すように、樹脂部材310の導体部材311の近傍に形成された凹部310aが、導体部材311通過後の細線同軸ケーブル50を樹脂部材310から外側に逃がすように細線同軸ケーブル50を固定する。この凹部310aを形成することで、細線同軸ケーブル50の導体部材311と並走する距離(図6に示す距離L3)を短くでき、細線同軸ケーブル50と導体部材311の電磁結合が小さくなる。細線同軸ケーブル50と導体部材311の電磁結合が小さくなることで、凹部310aによる処理を施していない場合と比べてアンテナ利得の劣化が低減し、アンテナ利得が改善する。
【0038】
このように本実施の形態の携帯無線機1によれば、下筐体10と、下筐体10と回動可能に接続された上筐体20と、下筐体10と上筐体20とを接続する第1ヒンジ31と、下筐体10と上筐体20とを接続する第2ヒンジ32とを備え、第1ヒンジ31を樹脂部材310と導体部材311の2つの部材から構成したので、導体部材311の小型化が図れ、第1ヒンジ31内を通る細線同軸ケーブル50の第1ヒンジ31内を並走する距離を短くできる。これにより、第1ヒンジを導体部材のみで構成したときよりも細線同軸ケーブル50と第1ヒンジ31の電磁結合が小さくなり、アンテナ利得の劣化が低減する。
【0039】
また、第1ヒンジ31において、導体部材311を樹脂部材310から露出する形状としたので、導体部材311と上筐体20内のインサート板金202との間の距離を短くできる。これにより、導体部材311とインサート板金202の電磁結合量が増加し、アンテナ利得が向上する。
【0040】
また、第1ヒンジ31において、樹脂部材310に、下筐体10内に配置された第1回路基板104と上筐体20内に配置された第3回路基板201とを電気的に接続する細線同軸ケーブル50の位置を固定する凹部310aを導体部材311の近傍に設けたので、細線同軸ケーブル50の導体部材311と並走する距離を短くできる。これにより、細線同軸ケーブル50と導体部材311の電磁結合が小さくなり、アンテナ利得の劣化が低減する。
【0041】
なお、本実施の形態の携帯無線機1において、細線同軸ケーブル50にはアンテナ電流が流れるため、細線同軸ケーブル50と第1ヒンジ31の導体部材311とが近接しすぎるとアンテナとして使用する第1ヒンジ31のアンテナ性能の劣化及びバラツキが大きくなる虞がある。ここで、アンテナ性能のバラツキは、細線同軸ケーブル50の第1ヒンジ31の導体部材311への挿通状態の違いによって生ずる。この場合、挿通状態は、携帯無線機一個一個で異なり、また一個の携帯無線機1でも下筐体10と上筐体20の開閉状態で異なる。
【0042】
このようなアンテナ性能の劣化及びバラツキを防ぐためには、細線同軸ケーブル50と第1ヒンジ31の導体部材311との距離が常に一定になるようにするとよい。そこで、細線同軸ケーブル50と第1ヒンジ31の導体部材311との間の距離が常に一定になるように、第1ヒンジ31の導体部材311に挿入できる大きさの位置規制部材を設ける。図9及び図10は、携帯無線機1に位置規制部材70を設けた例を示す断面図である。図9は、位置規制部材70がある以外、前述した図6と同様の断面図である。図10は、位置規制部材70がある以外、前述した図5と同様の断面図である。また、図11は、位置規制部材70の概観を示す斜視図である。
【0043】
図9〜図11に示すように、位置規制部材70は、細線同軸ケーブル50が挿通され、第1ヒンジ31の導体部材311に挿入される円筒形状に形成されている。この位置規制部材70を第1ヒンジ31の導体部材311内に設けることで、細線同軸ケーブル50から導体部材311までの距離を一定に保つことができるようになり、アンテナ性能の劣化及びバラツキを防ぐことができる。位置規制部材70を導体部材311内に固定する方法としては、位置規制部材70を導体部材311内に圧入する方法、接着剤で固定する方法などがある。
【0044】
また、位置規制部材70は、一方の端部70aの内径が徐々に拡がっていくようなラッパ形状に形成されている。位置規制部材70の一方の端部70aをラッパ形状に形成することで、細線同軸ケーブル50が位置規制部材70の開口部の角に当たるのを防止することができる。これにより、下筐体10と上筐体20の開閉動作による細線同軸ケーブル50の耐久性向上が図れる。すなわち、細線同軸ケーブル50の断線を防止することができる。なお、位置規制部材70の他方の端部も内径が徐々に拡がっていくようなラッパ形状に形成してもよい。
【0045】
また、位置規制部材70は、POM(ポリオキシメチレン又はポリアセタール)等の樹脂で形成するのが望ましい。この種の樹脂で位置規制部材70を形成することで、細線同軸ケーブル50の位置規制部材70における接触抵抗を低減でき、第1ヒンジ31の軸方向及び該軸を中心とした回転方向において規制がかからなくなって、細線同軸ケーブル50が位置規制部材70内でスムーズに動くことになる。これにより、下筐体10と上筐体20の開閉動作による細線同軸ケーブル50の耐久性向上が図れる。すなわち、細線同軸ケーブル50の断線を防止することができる。
【0046】
因みに、位置規制部材70にゴム部材を用いた場合、ゴム部材はPOM等の樹脂と比べて摩擦抵抗が大きいため、細線同軸ケーブル50の位置規制部材70内における接触抵抗が大きくなり、第1ヒンジ31の軸方向及び該軸を中心とした回転方向において規制がかかるようになって、細線同軸ケーブル50が位置規制部材70内でスムーズに動かなくなる。これにより、細線同軸ケーブル50の耐久性が低下し、断線しやすくなる。このようなことから、位置規制部材70の材料としてPOM等の樹脂が好適である。
【0047】
なお、本実施の形態の携帯無線機1では、第1回路基板104及び第2回路基板108を下筐体10内に配置し、第3回路基板201を上筐体20内に配置したが、逆であっても構わない。すなわち、第1回路基板104及び第2回路基板108を上筐体20内に配置し、第3回路基板201を下筐体10内に配置してもよい。
【0048】
また、本実施の形態の携帯無線機1は、下筐体10に対して上筐体20を回動自在に連結させて開閉のみの行える構造のものであったが、下筐体に対して上筐体を回動自在に連結させるとともに、上筐体を水平方向に180度の回動可能としたスイベル構造のものや、縦方向及び横方向のそれぞれの方向に対して折りたたむことができるダブルオープン構造のものにも勿論適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、折りたたみ構造の携帯無線機において、ヒンジをアンテナとして使用する場合、下筐体内に配置された回路基板と上筐体内に配置された回路基板を接続する接続線がヒンジ部内を通ったり、近接したりしても、アンテナ利得の劣化を低減できるといった効果を有し、折りたたみ構造の携帯電話機などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 携帯無線機
10 下筐体
20 上筐体
30 ヒンジ
31 第1ヒンジ
32 第2ヒンジ
40 メイン液晶部
41 サブ液晶部
50 細線同軸ケーブル
70 位置規制部材
101 第1無線部
102 第1給電板金
102a 第1給電板金の延設部
103 第1給電部
104 第1回路基板
105 第2給電板金
106 第2給電部
107 第2無線部
108 第2回路基板
109 カメラ
201 第3回路基板
202 インサート板金
310 樹脂部材
310a 凹部
311 導体部材
311a,311b 導体部材のC字状部
311c 導体部材の延設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、前記第1筐体と回動可能に接続された第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第1ヒンジと、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第2ヒンジと、前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、前記第1ヒンジ内を通り、前記第1回路基板と前記第2回路基板を接続する接続線と、を備えた携帯無線機であって、
前記第1ヒンジは樹脂部材と導体部材の2つの部材から構成され、
前記導体部材は前記第1筐体もしくは前記第2筐体内に配置された第1無線部と第1給電部を介して電気的に接続されており、
前記導体部材は前記第1筐体もしくは前記第2筐体内の金属板と電磁結合することを特徴とする携帯無線機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯無線機であって、
前記第1ヒンジにおいて、前記導体部材は前記樹脂部材から露出する形状であることを特徴とする携帯無線機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の携帯無線機であって、
前記第1ヒンジにおいて、前記樹脂部材に、前記第1筐体内に配置された回路基板と前記第2筐体内に配置された回路基板とを電気的に接続する接続線の位置を固定する凹部が前記導体部材の近傍に設けられていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の携帯無線機であって、
前記第2ヒンジは少なくとも一部が導体部材から構成され、
前記第2ヒンジは前記第1筐体もしくは前記第2筐体内に配置された第2無線部と第2給電部を介して電気的に接続されていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯無線機であって、
前記第1ヒンジと前記第2ヒンジは携帯無線機の幅方向に対して離隔していることを特徴とする携帯無線機。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の携帯無線機であって、
前記第1ヒンジと前記第1無線部を接続する前記第1給電部が、前記第1回路基板に設けられ、
前記第2ヒンジと前記第2無線部を接続する前記第2給電部が、前記第1回路基板と同じ筐体内の第3回路基板に設けられていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の携帯無線機であって、
前記接続線が挿通され、前記第1ヒンジの前記導体部材に挿入される円筒形状の位置規制部材を設けたことを特徴とする携帯無線機。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯無線機であって、
前記位置規制部材の少なくとも一端部は、内径が徐々に拡がっていくようなラッパ形状に形成されていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の携帯無線機であって、
前記位置規制部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−17147(P2013−17147A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155088(P2011−155088)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】