説明

携帯無線装置

【課題】アンテナエレメントの製造や筐体への装着が容易で、アンテナエレメントの占有スペースを減少できるとともに、アンテナエレメントの配置位置や形成方法に制約が少ない携帯無線装置を提供すること。
【解決手段】本発明の携帯無線装置1は、樹脂から形成される筐体2と、導電性ゴムから形成され、アンテナエレメントとして機能するゴム部材120と、ゴム部材120の一端部120Aに電気的に接続する給電端子76を有する回路基板70と、を備え、ゴム部材120は、ゴム部材120と筐体2の内部とを接着させる接着剤を含み、該接着剤により筐体2の内部に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機等の携帯無線装置において、無線通信のためのアンテナにおけるアンテナエレメント(アンテナ放射素子)は、例えば、導体線から形成されるエレメント、コイル及び導体板から形成されるエレメント、樹脂製の筐体や部品などに蒸着されるメッキ膜から形成されるエレメント等から構成される。
前述のアンテナエレメントのうち、導体線から形成されるエレメント、又はコイル及び導体板から形成されるエレメントは、絶縁材料の成形部分に組み込まれてこの成形部分を介して筐体に取り付けられたり、筐体との一体成形により筐体に取り付けられて、筐体に保持される。
【0003】
しかし、このような構造を採用した場合、成型用の専用金型が必要であり、高コストとなる。また、アンテナ自体の占有スペースだけではなく、アンテナエレメントを保持して装着するためのスペースが必要となるため、携帯無線装置の小型化や筐体へのアンテナの内蔵化が困難である。
また、メッキ膜から形成されるアンテナエレメントは、樹脂製の筐体や部品などにメッキ膜を形成するときにおいてメッキ膜の厚みの管理が困難である。また、メッキ膜における無線通信用の回路部と接触する部分について摩耗や経年変化の懸念もある。
【0004】
ところで、下記特許文献1には、リーダライタ機能を有する情報携帯端末において、情報携帯端末の筐体の接合部分に設けられる導電性ゴムパッキンを、リーダライタ機能のためのアンテナ回路とする技術が開示されている。
しかし、特許文献1に記載の技術は、アンテナ回路(アンテナエレメント)として機能する導電性ゴムパッキンを、筐体の接合部分に設けているため、アンテナエレメントの配置位置や形成方法に制約が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−157206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アンテナエレメントの製造や筐体への装着が容易で、アンテナエレメントの占有スペースを減少できるとともに、アンテナエレメントの配置位置や形成方法に制約が少ない携帯無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂から形成される筐体と、導電性ゴムから形成され、アンテナエレメントとして機能するゴム部材と、前記ゴム部材の一端部に電気的に接続する給電端子を有する回路基板と、を備え、前記ゴム部材は、該ゴム部材と前記筐体の内部とを接着させる接着剤を含み、該接着剤により前記筐体の内部に接着されている携帯無線装置に関する。
【0008】
また、前記ゴム部材と前記給電端子とは、前記導電性ゴムの弾性に起因する付勢力により互いに押し付け合う状態で接触していることが好ましい。
【0009】
また、前記筐体における前記ゴム部材が接着する領域には、ローレット加工が施されていることが好ましい。
【0010】
本発明は、導電性ゴムから形成され、アンテナエレメントとして機能するゴム部材と、前記ゴム部材の一端部に電気的に接続する給電端子を有する回路基板と、を備え、前記ゴム部材は、該ゴム部材と前記回路基板とを接着させる接着剤を含み、該接着剤により前記回路基板に接着されている携帯無線装置に関する。
【0011】
また、前記回路基板における前記ゴム部材が接着する領域には、凹凸形状が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンテナエレメントの製造や筐体への装着が容易で、アンテナエレメントの占有スペースを減少できるとともに、アンテナエレメントの配置位置や形成方法に制約が少ない携帯無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の携帯無線装置の第1実施形態としての携帯電話機1を開状態で示す斜視図である。
【図2】第1実施形態における操作部側筐体2に内蔵される部品を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態における操作部側筐体2において、フロントケースを外してゴム部材120を露出させた状態を示す部分拡大斜視図である。
【図4】図3に示すA−A線断面図である。
【図5】第2実施形態の携帯電子機器1Aにおける操作部側筐体2のフロントケース21及びリアケース22を仮想的に展開した状態を示す模式図で、(A)はフロントケース21側を示す図、(B)はリアケース22側を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明の携帯無線装置の第1実施形態である携帯電話機1の基本構造について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の携帯無線装置の第1実施形態としての携帯電話機1を開状態で示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態の携帯電話機1は、折り畳み型の携帯電話機であって、略直方体形状の操作部側筐体(筐体)2と、略直方体形状の表示部側筐体3と、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを連結する連結部4と、を備える。操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、連結部4を介して開閉可能に連結される。
【0016】
連結部4は、操作部側筐体2における一端側に配置され、表示部側筐体3を操作部側筐体2に対して相対移動可能に連結する。具体的には、連結部4は、表示部側筐体3と操作部側筐体2とを開閉軸Iを中心に開閉可能に連結する。携帯電話機1は、連結部4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とが相対的に回転(回動)されることにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開状態、図1参照)や、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが折り畳まれた状態(閉状態、図示せず)に変形される。
【0017】
まず、操作部側筐体2について説明する。操作部側筐体2は、外郭を形成するフロントケース21及びリアケース22を備える。フロントケース21は、操作部側筐体2の前面2a側を構成する。操作部側筐体2の前面2aは、携帯電話機1が折り畳まれた状態で表示部側筐体3と向かい合う面である。リアケース22は、操作部側筐体2における前面2aと反対側の面である背面2b側を構成する。
【0018】
フロントケース21は、操作キー群11が前面2aに露出するように構成される。操作キー群11は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー13と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するためのテンキー等の入力操作キー14と、各種操作における決定や上下左右方向のスクロール等を行う決定操作キー15と、を有する。
【0019】
操作キー群11を構成する各キーそれぞれには、操作部側筐体2と表示部側筐体3との開閉状態や、起動されているアプリケーションの種類に応じて所定の機能が割り当てられる(キー・アサイン)。携帯電話機1において、操作キー群11を構成する各キーがユーザにより押圧されることで、各キーに割り当てられている機能に応じた動作が実行される。
【0020】
操作部側筐体2の前面2aには、携帯電話機1のユーザが通話時に発した音声が入力される音声入力部12が配置される。音声入力部12は、操作部側筐体2の長手方向における連結部4とは反対側の端部(下端部)の近傍に配置される。
【0021】
操作部側筐体2の側面には、例えば、外部機器(例えば、ホスト装置)とデータの送受信を行うためのインターフェースや、ヘッドホン/マイク端子、着脱可能な外部メモリのインターフェースや、バッテリを充電するための充電端子等が設けられる。
【0022】
次に、表示部側筐体3について説明する。表示部側筐体3は、外郭を形成するフロントケース30a、カバー部材33及びリアケース30bを備える。フロントケース30a及びカバー部材33は、表示部側筐体3の前面3a側を構成する。表示部側筐体3の前面3aは、携帯電話機1が折り畳まれた状態で操作部側筐体2と向かい合う面である。リアケース30bは、表示部側筐体3における前面3aと反対側の面である背面3b側を構成する。
【0023】
表示部側筐体3の内部には、各種情報を表示させるメイン液晶モジュール34が配置されている。メイン液晶モジュール34の一方の面には、メイン表示部34aが設けられる。メイン表示部34aは、全部又は一部が透明なカバー部材33を介して、表示部側筐体3の前面3a側から視認可能となっている。
【0024】
また、フロントケース30aには、通話の相手側における音声を出力する音声出力部31が配置される。音声出力部31は、表示部側筐体3の長手方向における連結部4とは反対の端部側に配置される。
【0025】
操作部側筐体2におけるフロントケース21及びリアケース22、表示部側筐体3におけるフロントケース30a、カバー部材33及びリアケース30bなどは、樹脂から形成される。
【0026】
続けて、図2から図4を参照しながら、操作部側筐体2の内部構造について説明する。図2は、第1実施形態における操作部側筐体2に内蔵される部品を示す分解斜視図である。図3は、第1実施形態における操作部側筐体2において、フロントケースを外してゴム部材120を露出させた状態を示す部分拡大斜視図である。図4は、図3に示すA−A線断面図である。
【0027】
図2に示すように、フロントケース21とリアケース22とは、互いの凹状の内側面が向き合うように配置され、互いの外周縁が重なり合うようにして結合される。また、フロントケース21とリアケース22との間には、キー構造部40と、キー基板50と、シールドケース60と、回路基板70と、メインアンテナ90と、サブアンテナのアンテナエレメントとして機能するゴム部材120とが、挟まれるようにして内蔵される。
なお、図2においては、リアケース22の内部の形状を簡略化して図示している。
【0028】
フロントケース21には、携帯電話機1の閉状態において表示部側筐体3のメイン表示部34aと対向する内側面に、キー孔13a、14a、15aが形成される。キー孔13a、14a、15aそれぞれからは、機能設定操作キー13を構成する機能設定操作キー部材13bの押圧面、入力操作キー14を構成する入力操作キー部材14bの押圧面、及び決定操作キー15を構成する決定操作キー部材15bの押圧面が露出する。露出した機能設定操作キー部材13b、入力操作キー部材14b及び決定操作キー部材15bの押圧面を押下することで、対応するキースイッチ51、52、53それぞれに設けられる後述のメタルドームの頂点が押圧されて、スイッチ端子に接触して電気的に導通する。
【0029】
キー基板50は、複数の絶縁層(絶縁フィルム)の間に配線を挟み込んで形成されるフレキシブル基板である。キー基板50は、シールドケース60における後述する平板部61に載置される。キー基板50は、機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15にそれぞれ対応してキー構造部40側に形成される複数のキースイッチ51、52、53を備える。キースイッチ51、52、53は、椀状に湾曲して立体的に形成された金属板のメタルドームを有する。メタルドームは、その椀状形状の頂点が押圧されると、キー基板50の表面に印刷された電気回路(図示せず)に形成されるスイッチ端子に接触して、電気的に導通するように構成される。
【0030】
キー構造部40は、キー基板50に対向して配置される。キー構造部40は、複数のキースイッチ51、52、53を押圧可能な押し子と、操作キー群11の押圧面を有するキートップとが、弾性を有するシリコンゴム等で構成された基体シートに設けられて構成される。キー構造部40における操作キー群11を構成する機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15は、キー基板50におけるキースイッチ51、52、53と対向する位置に配置されると共に、フロントケース21に形成されるキー孔13a、14a、15aから露出するように配置される。
【0031】
シールドケース60は、薄型の直方体における一の広い面が開口した形状を有する導電性の部材である。シールドケース60は、キー基板50の載置面となる平板部61と、平板部61における開口側の面に略垂直に形成されるリブ62と、を備える。リブ62は、回路基板70に実装される各種電子部品のうち最も高い電子部品の高さと同等又はそれよりも十分に高くなるように形成される。リブ62は、平板部61の周縁及び内側に、回路基板70における基準電位部を構成する基準電位パターン層75に対応するように形成される。具体的には、リブ62は、シールドケース60が回路基板70に載置された状態で、基準電位パターン層75上に配置されるように形成される。
【0032】
シールドケース60は、リブ62の底面が基準電位パターン層75に当接されることで、基準電位パターン層75と電気的に接続される。シールドケース60は、基準電位パターン層75と電気的に導通して基準電位パターン層75と同じ大きさの電位を有するようになる。
【0033】
シールドケース60は、外部からの高周波等のノイズが回路基板70に配置される各種電子部品に作用するのを抑制すると共に、RF(Radio Frequency)回路、CPU回路、電源回路等から放出されるノイズを遮蔽して、他の電子部品やアンテナに接続される受信回路等に作用することを抑制する。具体的には、シールドケース60におけるリブ62の底面が基準電位パターン層75上に配置されることで、各回路は、リブ62により囲われると共に平板部61の一部により覆われる。リブ62は、各回路における隔壁として機能し、平板部61の一部と共に各回路をシールドする。
なお、シールドケース60は、その全体を金属から構成することができる他、その骨格を樹脂から形成し、この骨格の表面に導体膜を形成して構成することもできる。
【0034】
回路基板70の第1面72には、各種の複数の電子部品71や回路が配置される。各種電子部品は、所定の組み合わせにより複数の回路ブロックを形成する。例えば、回路基板70には、CPU回路、受信処理部71a、送信処理部71bのようなアナログ処理系の回路ブロック、電源回路等を含む各種回路ブロックが形成される。
【0035】
受信処理部71aは、例えば、所定の使用周波数帯で公衆無線通信網に接続される外部装置(基地局)との間で無線通信を行う。そして、受信処理部71aは、メインアンテナ90や、サブアンテナのアンテナエレメントとして機能するゴム部材120等のアンテナより受信した信号を復調処理し、処理後の信号をCPU回路に供給する。また、受信処理部71aは、CPU回路から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ90や、ゴム部材120から外部装置に送信する。また、送信処理部71bは、デジタルテレビアンテナ(図示せず)に接続され、当該アンテナで受信した信号をCPUに送信する。
【0036】
回路基板70におけるシールドケース60側の第1面72には、上述の各種電子部品の他、基準電位部を構成する基準電位パターン層75が形成される。基準電位パターン層75は、上述の各回路ブロックを区画するように形成される。基準電位パターン層75は、回路基板70の第1面72の表面に導電性の部材を所定パターンで印刷することで形成される。
【0037】
メインアンテナ90は、操作部側筐体2(リアケース22)における連結部4とは反対側に配置される。メインアンテナ90は、図示しない配線を介して回路基板70に接続される。
【0038】
リアケース22の一端側には、取り外し可能なバッテリリッド101が設けられている。バッテリリッド101は、バッテリ100をリアケース22の外側から収納した後、リアケース22に装着される。また、リアケース22における一端側には、ユーザの音声を入力する音声入力部12のマイク(図示せず)が収容される。
【0039】
次に、ゴム部材120について説明する。
図3及び図4に示すように、ゴム部材120は、リアケース22における連結部4側の領域に配置される。ゴム部材120の断面形状は、円形又は略円形であることが好ましい。
ゴム部材120は、導電性ゴムから形成され、サブアンテナのアンテナエレメントとして機能する部材である。ゴム部材120は、ゴム部材120と操作部側筐体2(リアケース22)の内部とを接着させる接着剤を含む。
【0040】
ゴム部材120は、この接着剤により、リアケース22の内部に接着されている。詳細には、ゴム部材120は、リアケース22の内部におけるゴム部材配置領域130に接着されている。ゴム部材配置領域130は、リアケース22におけるゴム部材120が接着(配置)する領域である。ゴム部材配置領域130は、操作部側筐体2の厚み方向に、リアケース22における背面2b側よりもフロントケース21側(回路基板70側)に位置し、平坦状となっている。
【0041】
ゴム部材配置領域130には、ローレット加工が施されており、ローレット131が形成されている。ローレット加工とは、ナーリング加工とも呼ばれる加工であり、例えば、断面視で方形形状や略鋸歯状のきざみ目を、平面視で縞模様や網模様に形成する加工である。ローレット加工を施すことにより、滑りにくさを向上させることができ、従って、リアケース22のゴム部材配置領域130とゴム部材120との接着性(接着力)を向上させることができる。
【0042】
リアケース22には、ゴム部材配置領域130に隣接して台座部132が設けられている。台座部132は、ゴム部材配置領域130よりもフロントケース21側(回路基板70側)に突出している。台座部132における回路基板70側の面には、ゴム部材120の一端部120Aが配置される。ゴム部材120の他端部120Bは、ゴム部材配置領域130に配置される。ゴム部材120は、アンテナ特性に応じて所定形状に延びている。
【0043】
次に、ゴム部材120を形成する導電性ゴムについて説明する。
ゴム部材120を形成する導電性ゴムは、ベースゴムに導電性フィラー及び接着剤を含有した導電性ゴム組成物で構成される。
ベースゴムとしては、例えば、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、クロロプレン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチル系樹脂、フロロシリコーン系樹脂などを用いることができる。
【0044】
このようなベースゴムを用いたゴム部材120は、筐体や外装材として一般的な金属材料、樹脂系材料(ポリカーボネートなど)、ゴム系材料(ポリウレタン系樹脂など)の材料に対して、接着性や密着性に優れる。
【0045】
ベースゴムに含有される導電性フィラーにおいては、体積抵抗率は、好ましくは1×10−1Ω・cm以下であり、更に好ましくは1×10−2Ω・cm以下である。これにより、導電性ゴム全体の体積抵抗率を、1×10−1Ω・cm以下にすることが容易である。
【0046】
このような条件を満たす導電性フィラーとしては、例えば、導電性カーボンブラックの1種であるケッチェンブラックやアセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノファイバー(CNF)又はカーボンナノチューブ(CNT)のいずれかの炭素材料、金、銀又は白金のいずれかの金属材料、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン又はポリパラフェニレンビニレンのいずれかの誘導体、これらの誘導体にアニオン又はカチオンに代表されるドーパントを添加した導電性高分子材料、及び、極性の大きい有機フィラーであるイオン性液体などのうちのいずれか1つ以上を用いることが好ましい。
【0047】
ゴム部材120に含有される接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0048】
次に、給電端子76について説明する。
図4に示すように、回路基板70の第2面73には、給電端子76が実装される。給電端子76は、回路基板70の内部を通じて、RF回路に電気的に接続されている。ゴム部材120には、給電端子76を介して給電が行われる。給電端子76は、回路基板70の厚み方向に、ゴム部材120の一端部120Aに対向する位置に配置され、ゴム部材120の一端部120Aに電気的に接続する。なお、回路基板70の厚み方向は、操作部側筐体2の厚み方向に略一致する。
【0049】
リアケース22の台座部132における回路基板70側の面と回路基板70における給電端子76との間隔は、ゴム部材120の一端部120Aの厚みよりも若干薄くなっている。そのため、台座部132における回路基板70側の面と回路基板70における給電端子76との間で、ゴム部材120の一端部120Aで挟み込むことができる。そして、その状態において、ゴム部材120の一端部120Aに、導電性ゴムの弾性に起因する付勢力(反力)が発生する。
【0050】
給電端子76は、ゴム部材120の一端部120Aに当接することにより、回路基板70とゴム部材120とを電気的に接続する。ゴム部材120を形成する導電性ゴムは弾性を有しているため、ゴム部材120と給電端子76とは、導電性ゴムの弾性に起因する付勢力により互いに押し付け合う状態で接触している。
【0051】
ゴム部材120は、例えば、ゴム部材120の素材である導電性ゴムを線状に吐出可能な吐出装置を用い、吐出装置から導電性ゴムをリアケース22のゴム部材配置領域130に吐出することにより、ゴム部材配置領域130に所定形状で形成することができる。
【0052】
第1実施形態の携帯電話機1によれば、例えば、以下の効果が奏される。
第1実施形態の携帯電話機1は、導電性ゴムから形成され、アンテナエレメントとして機能するゴム部材120と、ゴム部材120の一端部Aに電気的に接続する給電端子76を有する回路基板70と、を備える。また、ゴム部材120は、ゴム部材120と操作部側筐体2のリアケース22の内部とを接着させる接着剤を含み、この接着剤によりリアケース22の内部に接着されている。そのため、アンテナエレメントの製造や筐体への装着が容易で、アンテナエレメントの占有スペースを減少できるとともに、アンテナエレメントの配置位置や形成方法に制約が少ない携帯無線装置を提供することができる。
【0053】
具体的には、第1実施形態によれば、専用金型でアンテナエレメントを形成する場合に比して、アンテナエレメントの成型用の専用金型を不要とすることができ、専用金型の製造コストや管理コストを低減できる。
第1実施形態によれば、アンテナエレメントを保持して装着するための部材やスペースを不要とすることができるため、携帯電話機(携帯無線装置)の小型化や操作部側筐体2へのアンテナの内蔵化に有利である。
【0054】
第1実施形態によれば、アンテナエレメントと給電端子との接続性を向上させるためのバネ部材を有する専用給電端子を不要とすることができる。また、携帯電話機(携帯無線装置)に加わる衝撃、圧力、ねじり等に対する耐久性や信頼性に優れている。
第1実施形態によれば、ゴム部材120によりアンテナエレメントを、操作部側筐体2の内部や回路基板70に、特段の制約もなく、設けることができる。そのため、アンテナエレメントの配置位置や形成方法の自由度が高い。
【0055】
また、第1実施形態においては、ゴム部材120と給電端子76とは、導電性ゴムの弾性に起因する付勢力により互いに押し付け合う状態で接触している。そのため、ゴム部材120と給電端子76との電気的接続が維持されやすい。
【0056】
また、第1実施形態においては、操作部側筐体2のリアケース22におけるゴム部材120が接着する領域(ゴム部材配置領域130)には、ローレット加工が施されており、ローレット131が形成されている。そのため、ゴム部材120とゴム部材配置領域130との接着性(接着力)を向上させることができる。
【0057】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。他の実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、他の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0058】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態の携帯電子機器1Aにおける操作部側筐体2のフロントケース21及びリアケース22を仮想的に展開した状態を示す模式図で、(A)はフロントケース21側を示す図、(B)はリアケース22側を示す図である。
【0059】
図5に示すように、第2実施形態は、第1実施形態に比して、ゴム部材120が、回路基板70に接着している第1ゴム部材121と、リアケース22に接着している第2ゴム部材122とから構成されている点において、主に異なっている。
第2実施形態においては、第1ゴム部材121は、第1ゴム部材121と回路基板70の第2面73とを接着させる接着剤を含む。第1ゴム部材121は、この接着剤により、回路基板70の第2面73に接着されている。
【0060】
第1ゴム部材121は、回路基板70の第2面73におけるゴム部材配置領域130Aに接着されている。ゴム部材配置領域130Aは、回路基板70の第2面73における第1ゴム部材121が接着(配置)する領域である。ゴム部材配置領域130Aには、凹凸形状135が形成されている。
【0061】
ここでいう凹凸形状135は、例えば、レーザー加工により、回路基板70の表面におけるソルダーレジストを部分的に除去したり(ソルダーレジストが残っている部分が凸、ソルダーレジストが除去された部分が凹となる凹凸形状となる)、回路基板70の表面に部分的に凸が形成されるように加工を施す(元々の回路基板70の表面が凹、加工が施された部分が凸となる凹凸形状となる)ことにより形成される。凹凸形状135を形成することにより、滑りにくさを向上させることができ、従って、回路基板70のゴム部材配置領域130Aとゴム部材120との接着性(接着力)を向上させることができる。
【0062】
操作部側筐体2のリアケース22の内部には、第1実施形態と同様に、ゴム部材配置領域130が形成されている。第2ゴム部材122は、リアケース22の内部におけるゴム部材配置領域130に接着されている。ゴム部材配置領域130は、リアケース22における第2ゴム部材122が接着する領域である。ゴム部材配置領域130には、ローレット加工が施されており、ローレット131が形成されている。
【0063】
第1ゴム部材121の他端部121Bと第2ゴム部材122の他端部122Bとは対向している。第1ゴム部材121の他端部121Bは、第1ゴム部材121における他の部位(一端部121Aを含む)よりも第2ゴム部材122の他端部122Bに接近する位置に位置している。第2ゴム部材122の他端部122Bは、第2ゴム部材122における他の部位(一端部122Aを含む)よりも第1ゴム部材121の他端部121Bに接近する位置に位置している。
【0064】
そして、操作部側筐体2においてフロントケース21とリアケース22とを結合した(組み合わせた)状態において、第1ゴム部材121の他端部121Bと第2ゴム部材122の他端部122Bとは、互いに押し付け合う。従って、第1ゴム部材121の他端部121Bと第2ゴム部材122の他端部122Bとは、電気的に接続されると共に、接続状態が維持されやすい。また、第1ゴム部材121における前記他の部位と第2ゴム部材122における前記他の部位とは、離間している。
【0065】
そのため、第1ゴム部材121及び第2ゴム部材122は、第1ゴム部材121の一端部121A、第1ゴム部材121の他端部121B、第2ゴム部材122の他端部122B及び第2ゴム部材122の一端部122Aの順で延びる一体的なアンテナエレメントとして構成され、機能する。
【0066】
回路基板70には、前述した受信処理部71a及び送信処理部71bと共に、送信受信切替部71cが実装されている。送信受信切替部71cは、無線通信の受信処理時又は送信処理時において、給電端子76における接続先を受信処理部71a又は送信処理部71bに切り替える。
【0067】
第2実施形態においては、第1実施形態と同様の効果が奏される他、例えば、以下の効果が奏される。
第2実施形態においては、ゴム部材120の第1ゴム部材121は、ゴム部材120と回路基板70とを接着させる接着剤を含み、この接着剤により回路基板70に接着されている。そのため、第1ゴム部材121が回路基板70に対して安定的に接着されるため、第1ゴム部材121の一端部121Aと給電端子76との電気的接続が維持されやすい。
【0068】
また、第2実施形態においては、第1ゴム部材121の他端部121Bと第2ゴム部材122の他端部122Bとは電気的に接続されており、これにより、第1ゴム部材121及び第2ゴム部材122は、一体的なアンテナエレメントとして機能する。そのため、ゴム部材120により形成されるアンテナエレメントの有効長を長くすることができる。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、操作部側筐体2のリアケース22にゴム部材120を接着させて、ゴム部材120をアンテナエレメントとして機能させているが、これに制限されない。ゴム部材120は、操作部側筐体2のフロントケース21や、表示部側筐体3のフロントケース30a、リアケース30bなど、筐体を構成する各種部材の内部に接着させることができる。
また、前記第2実施形態においては、ゴム部材120を第1ゴム部材121及び第2ゴム部材122から構成しているが、これに制限されない。ゴム部材120を、回路基板70に接着される第1ゴム部材121のみから構成することもできる。
【0070】
ゴム部材を、筐体を形成するケース、筐体における窓部などにおける嵌合部分(外部に露出することも多い)に設けることにより、ゴム部材を防水パッキンとしても活用(兼用)することができる。ゴム部材は、耐水性、温度変化に対する耐久性、湿度変化に対する耐久性、経年変化などに優れているため、このような筐体の外部に露出する部分に設けるアンテナエレメントに好適である。
【0071】
また、前述の実施形態においては、連結部4により折り畳み可能な携帯電話機1の説明をしているが、このような折り畳み式ではなく、操作部側筐体2と表示部側筐体3との重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、操作部側筐体2と表示部側筐体3との重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転(ターン)式や、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが一つの筐体に配置され連結部を有さない型式(ストレートタイプ)でもよい。
【0072】
また、前述の実施形態は、本発明を携帯電話機に適用したものであるが、本発明は、これに限定されない。本発明は、携帯電話機以外の携帯無線装置、例えば、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 携帯電話機(携帯無線装置)
2 操作部側筐体(筐体)
3 表示部側筐体
70 回路基板
76 給電端子
120 ゴム部材
120A ゴム部材の一端部
130 ゴム部材配置領域(筐体におけるゴム部材が接着する領域)
130A ゴム部材配置領域(回路基板におけるゴム部材が接着する領域)
131 ローレット
135 凹凸形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂から形成される筐体と、
導電性ゴムから形成され、アンテナエレメントとして機能するゴム部材と、
前記ゴム部材の一端部に電気的に接続する給電端子を有する回路基板と、を備え、
前記ゴム部材は、該ゴム部材と前記筐体の内部とを接着させる接着剤を含み、該接着剤により前記筐体の内部に接着されている
携帯無線装置。
【請求項2】
前記ゴム部材と前記給電端子とは、前記導電性ゴムの弾性に起因する付勢力により互いに押し付け合う状態で接触している
請求項1に記載の携帯無線装置。
【請求項3】
前記筐体における前記ゴム部材が接着する領域には、ローレット加工が施されている
請求項1又は2に記載の携帯無線装置。
【請求項4】
導電性ゴムから形成され、アンテナエレメントとして機能するゴム部材と、
前記ゴム部材の一端部に電気的に接続する給電端子を有する回路基板と、を備え、
前記ゴム部材は、該ゴム部材と前記回路基板とを接着させる接着剤を含み、該接着剤により前記回路基板に接着されている
携帯無線装置。
【請求項5】
前記回路基板における前記ゴム部材が接着する領域には、凹凸形状が形成されている
請求項4に記載の携帯無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−205443(P2011−205443A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71350(P2010−71350)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】