説明

携帯無線通信端末

【課題】 端末の移動方向や方位の変化が大きい使用状況、別の端末からの干渉により電波状態が悪くなる使用状況であっても、アンテナの指向性を最適に設定可能にする。
【解決手段】
GPSアンテナ1及びGPS受信部と位置情報検出部3は、自端末の位置情報を検出する。方位センサー11及び方位情報検出部10は、自端末が向いている方向を表す端末方位を検出する。受信品質モニタリング部9は、通信アンテナ7での電波受信時の受信品質をモニタリングする。情報処理部4は、基地局位置情報記憶部6に記憶されている基地局位置と、位置情報検出部3からの自端末の位置とから、通信アンテナ7の指向性を向けるべき方位を算出すると共に、アンテナ指向性の変更制御の過程でモニタリングされた受信品質により、受信品質が良くなるアンテナ指向性の向き(方位)を求める。制御部5は、その方位へ通信アンテナ7の指向性の向きを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電波を使用して基地局との間で信号の送受信を行う携帯無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体無線通信端末は、例えば人や車等の移動体において使用されるものであるため、当該端末と基地局との間の相対的な位置関係は一定ではなく常に変化する。そのため、移動体無線通信端末に搭載されるアンテナを設計する際には、水平面指向性が等方性となるように設計するのが一般的となされている。
【0003】
また、移動体無線通信端末におけるアンテナ特性の重要性は、受信系と送信系の無線周波数回路(RF回路)に関する次の事実から明らかである。すなわち、受信系においては、LNA(ローノイズアンプ)での前段の損失がそのまま受信系全体のNF(ノイズ指数)の劣化となるので、アンテナ利得の改善がそのまま受信感度の改善につながる。一方、送信系においては、パワーアンプ(PA)の後段での損失が大きいと、そのパワーアンプをより高出力で動作させることが必要となり、それが消費電力の増加につながるため、アンテナ利得を改善すれば、パワーアンプ出力を低減でき、通信可能時間を延ばすことができるようになる。
【0004】
以上を踏まえて、移動体無線通信端末のアンテナ指向性を積極的に基地局方向に制御することで、アンテナ利得を改善可能とした技術として、例えば特開2002−26800号の公開特許公報(特許文献1)や特開2004−64741号の公開特許公報(特許文献2)に記載された技術が提案されている。
【0005】
なお、特開2002−26800号の公開特許公報(特許文献1)には、基地局位置情報を記憶すると共にGPS(Global Positioning System)信号から移動局位置情報を算出するカーナビゲーションシステムと、基地局からの電波を受信した際の受信電界強度情報を算出して、この受信電界強度情報と、カーナビゲーションシステムからの基地局位置情報と移動局位置情報とを基にして、指向性アンテナのビーム方位を制御する情報処理部と制御部とを備えた移動通信端末及び移動通信システムが開示されている。
【0006】
また、特開2004−64741号の公開特許公報(特許文献2)には、方位センサから得られる移動端末の回動、傾き、所在位置の情報と地図情報を基に、基地局の方向にアンテナの指向性を補正する移動端末用適応アンテナ装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−115725号公報(第1図)
【特許文献2】特開2002−112218号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特開2002−26800号の公開特許公報に記載の手法の場合、例えば自動車電話のように、移動方向が一定であることが多く、また、方位の変化が比較的少ない用途においては、受信電界強度の変化から移動通信端末の方位を精度良く計算することができると考えられる。しかしながら、例えば携帯電話端末のように、ユーザの動きに応じて、端末の移動方向や方位の変化が大きい用途の場合、上述のような受信電界強度の変化のみから、方位情報を精度良く得ること、つまりアンテナ指向性を最適化することは難しいと考えられる。
【0009】
また、上述の特開2004−64741号の公開特許公報に記載の手法の場合、基地局の位置情報と移動端末の所在位置情報、及び、移動端末の回動や傾き情報を用いて、アンテナの指向性を基地局の方向に補正したとしても、例えば、それと同じ方向に別の移動端末が存在していたような場合には、当該別の移動端末等からの干渉を受けることが懸念され、その場合、良好な通信を行い難くなる。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、例えば、携帯電話端末のように端末の移動方向や方位の変化が大きい使用状況、別の端末からの干渉により電波状態が悪くなってしまう使用状況であっても、アンテナの指向性を最適に設定することを可能にする携帯無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の携帯無線通信端末は、指向性を変更可能なアンテナ素子を備えたアンテナ手段と、自端末の位置情報を検出する端末位置情報検出手段と、通信先の基地局の位置情報を取得する基地局位置情報取得手段と、自端末が向いている方向を表す第1の方位を検出する第1の方位検出手段と、自端末の位置情報と基地局の位置情報とに基づいて、自端末の位置から基地局の位置への方向を表す第2の方位を求める第2の方位算出手段と、第1の方位と第2の方位との間の相対的な方位に基づいてアンテナ指向性を向けるべき方向と量を表す第3の方位を求める第3の方位算出手段と、アンテナ手段による電波の受信品質を測定する受信品質測定手段と、第3の方位へアンテナ手段の指向性の向きを設定すると共に受信品質の変化に基づいてアンテナ手段の指向性の向きを補正する指向性設定制御手段とを有することにより、上述した課題を解決する。
【0012】
すなわち、本発明によれば、自端末が向いている第1の方位と自端末位置から基地局位置への第2の方位とから、アンテナ指向性を向けるべき方位である第3の方位を求めていると共に、受信品質により、そのアンテナ指向性の向きを補正している。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、自端末が向いている第1の方位を検出し、その第1の方位と自端末位置から基地局位置への第2の方位とから、アンテナ指向性を向けるべき方位である第3の方位を求めているため、例えば、携帯電話端末のように端末の移動方向や方位の変化が大きい使用状況であってもアンテナの指向性を正確に第3の方位に設定することができ、また、受信品質によりアンテナ指向性を補正しているため、例えば別の端末からの干渉により電波状態が悪くなってしまう使用状況であっても良好な受信感度が得られる最適な方向へアンテナ指向性を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の携帯電話端末の一実施形態について説明する。
【0015】
なお、本実施形態では、本実施形態の携帯無線通信端末の一例として、携帯電話端末等を挙げるが、ここで説明する内容はあくまで一例であり、本発明はこの例に限定されないことは言うまでもない。また、以下の説明では、携帯電話端末が備えている各種の構成要素のうち、本発明に関連した主要な構成要素についてのみ述べており、携帯電話端末が通常備えている他の構成要素については、その図示及び説明を省略している。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態の携帯電話端末の主要部の概略的な構成を示す。
【0017】
この図1において、本実施形態の携帯電話端末は、GPS信号電波を受信するためのGPSアンテナ1及びGPS受信部2と、そのGPS受信部2からのGPS信号により自端末の現在位置情報(緯度,経度等の絶対位置を表す情報)を検出する位置情報検出部3とを備えている。
【0018】
通信アンテナ7は、例えばダイバーシティアンテナや超小型電子走査アンテナなどの指向性を変更可能なアンテナであり、当該通信アンテナ7と送受信部8とにより基地局との間で無線通信を行う。
【0019】
制御部5は、上記通信アンテナ7の指向性を必要に応じて変更制御する。なお、上記通信アンテナ7が例えばダイバーシティアンテナである場合、制御部5は、各アンテナエレメントへ給電する電圧の振幅と位相を変えることで指向性を変更制御する。また、通信アンテナ7が例えば電子走査アンテナである場合、制御部5は、例えばアンテナアレイの励振振幅と位相を変えることで指向性を変更する。
【0020】
受信品質モニタリング部9は、上記通信アンテナ7及び送受信部8が基地局と通信を行っている際のSIR(Signal to Interference Ratio)やRSSI(Received Signal Strength Indicator)等を測定し、それらSIR値やRSSI値等を利用して、通信信号の受信品質をモニタリングする。
【0021】
基地局位置情報記憶部6は、携帯電話網の各基地局の位置情報(緯度、経度等の絶対位置を表す情報)を記憶している。
【0022】
方位センサー11は、当該携帯電話端末の正確な方位を検出するためのセンサーであり、予め決められている基準方位に対する相対的な方位を検出する。この方位センサー11の検出信号は方位情報検出部10に送られる。当該方位情報検出部10は、上記方位センサー11による方位検出信号から、当該携帯電話端末が向いている現在の方位(以下、端末方位と呼ぶ)情報を生成する。当該端末方位は本発明にかかる第1の方位となっている。
【0023】
情報処理部4は、上記送受信部8が通信アンテナ7を介して通信している基地局の識別情報を上記制御部5から受け取り、その基地局識別情報に基づいて上記基地局位置情報記憶部6から当該基地局の位置情報を取得し、その基地局位置情報と、上記位置情報検出部3が検出した端末現在位置情報とに基づいて、端末現在位置の緯度,経度から基地局位置の緯度,経度への方位(本発明にかかる第2の方位、以下、絶対方位と呼ぶ)を算出する。すなわち、この絶対方位は、アンテナ指向性を向けるべき方位である。
【0024】
さらに、情報処理部4は、上記端末方位と上記絶対方位との間の相対的な方位(本発明にかかる第3の方位、以下、相対方位と呼ぶ)を算出する。すなわちこの相対方位は、アンテナ指向性を制御する際に、当該アンテナ指向性を何れの方向にどれだけ動かすべきかを示す情報となる。
【0025】
当該情報処理部4にて算出された上記相対方位情報は、制御部5に送られる。そして、制御部5は、上記情報処理部4から供給された相対方位情報に基づいて、上記通信アンテナ7の指向性の変更制御を行う。
【0026】
以上のように、本実施形態の携帯電話端末は、方位センサー11の検出信号に基づく正確な方位情報を用いたアンテナ指向性制御が可能となる。また、本実施形態の携帯電話端末は、基地局位置情報記憶部6に基地局位置情報が予め記憶されているため、ユーザが基地局位置情報を気にすることなくアンテナ指向性制御が可能となる。
【0027】
またこの時、情報処理部4は、上記制御部5によるアンテナ指向性制御の過程において、上記受信品質モニタリング部9がモニタリングしている受信品質情報の変化を見るようになされており、当該受信品質情報の変化を基に、受信品質が良くなるアンテナ指向性の方位を求めて上記相対方位を補正することも行う。すなわち例えば、上記相対方位の線上近傍つまり端末と基地局との間に存在する別の携帯電話端末等からの干渉などの影響により、上記アンテナ指向性の方向が上記相対方位に合わせられた時の受信品質よりも良くなる別の方位がある場合、上記情報処理部4は、上記相対方位を当該受信品質が良くなる上記別の方位へ補正し、その補正後の相対方位情報を上記制御部5へ送るようにする。
【0028】
これにより、本実施形態の携帯電話端末は、別の携帯電話端末等からの干渉などによる影響が少ない、最適なアンテナ指向性を設定することが可能となる。
【0029】
一方で、上記制御部5によるアンテナ指向性制御の過程で、略々全ての方位について受信品質が良い場合には、アンテナ指向性制御をあえて行う必要が無いため、情報処理部4は、上記受信品質モニタリング部9がモニタリングしている受信品質情報を一定時間見るようにし、その一定時間内に所定の閾値レベル以上の受信品質が得られている場合には、アンテナ指向性制御を停止することも行う。
【0030】
これにより、不要なアンテナ指向性制御が行われるのを防止できることになる。
【0031】
さらに、本実施形態において、例えば、携帯電話端末の向いている方向(端末方位)が短時間に目まぐるしく変わっているような場合には、アンテナ指向性制御の応答が追いつかず、受信品質を劣化させてしまう虞があるため、情報処理部4は、上記方位情報検出部10が検出している端末方位情報を一定時間見るようにし、その一定時間内で端末方位情報が頻繁に変化するような場合には、アンテナ指向性制御を停止し、当該端末方位情報の変化が頻発するようになった一定時間の直前に求められていた相対方位情報を制御部5へ送るようにする。
【0032】
このように、本実施形態では、アンテナ指向性制御の応答が追いつかないような短時間の端末方位変化がある場合には、アンテナ指向性制御を一時的に停止することで、受信品質が劣化するのを防止することができる。
【0033】
なお、上述の説明では、情報処理部4が受信品質に基づいて相対方位情報の補正を行ったり相対方位の算出を一時的に停止する例を挙げたが、情報処理部4は相対方位情報の補正や一時的な算出停止を行わずに、相対方位情報をそのまま制御部5に送り、当該制御部5において、上記受信品質モニタリング部9からの受信品質情報に基づいて、他端末からの干渉の影響を排除する最適なアンテナ指向性制御を行ったり、相対方位の算出を一時的に停止したり、また、上記方位情報検出部10からの方位情報に基づいてアンテナ指向性制御の応答が追いつかない短時間の方位情報の変化による受信品質の劣化を無くすようにアンテナ指向性制御を行うようにしても良い。
【0034】
〔第2の実施形態〕
図2には、本発明の第2の実施形態の携帯電話端末の主要部の概略的な構成を示す。
【0035】
この図2に示す第2の実施形態の携帯電話端末は、図1に示した第1の実施形態の携帯電話端末が備えている方位センサー11に代えて、地磁気方位センサー12を搭載していること以外、第1の実施形態と同じであるため、この図2の各構成要素の説明については省略する。
【0036】
当該第2の実施形態の携帯電話端末によれば、地磁気方位センサー12を用いることにより、地磁気を基準にして、その地磁気に対する端末の相対的な方位を検出することができるため、簡易な構成で正確な方位を検出可能となり、したがって、簡易な構成でより正確なアンテナ指向性制御が可能となる。
【0037】
〔第3の実施形態〕
図3には、本発明の第3の実施形態の携帯電話端末の主要部の概略的な構成を示す。
【0038】
上述した第1の実施形態では、基地局位置情報記憶部6に予め基地局位置情報が記憶されている例を挙げたが、図3には、本発明の第3の実施形態として、例えば、インターネットを介して基地局位置情報をデータベースとして取得して上記基地局位置情報記憶部6に記憶させるようにした構成を示す。なお、この図3に示す第3の実施形態の携帯電話端末は、図1に示した第1の実施形態の携帯電話端末において通信アンテナ7及び送受信部8を介してインターネットに接続し、そのインターネットから基地局位置情報を取得すること以外、第1の実施形態と同じであるため、この図3の各構成要素の説明については省略する。この第3の実施形態の場合、最新の基地局位置情報を取得できるため、当該最新の基地局位置情報に基づいたアンテナ指向性制御が可能となる。
【0039】
なお、上記基地局位置情報は、上記インターネットを介して取得する場合の他、基地局から受信する電波により得ても良い。基地局から直接基地局位置情報を取得する場合、アンテナ指向性制御の際に使用される基地局位置情報としては、近接した基地局の位置情報のみに絞ることができることになるため、基地局位置情報を記憶するための記憶領域を最小限にとどめることができる。また、基地局位置情報は、上述のように通信アンテナ7及び送受信部8を用いた無線通信により取得する以外にも、例えば、USB(Universal Serial Bus)に代表される有線若しくはブルートゥース(Bluetooth)等に代表される無線方式を用いて取得したり、当該携帯電話端末が備えている数字キーやジョグダイヤル等(図示は省略する)に代表される入力手段を用いてユーザが直接入力して、上記基地局位置情報記憶部6に記憶させても良い。
【0040】
このように、本実施形態の携帯電話端末によれば、インターネットや有線,無線,ユーザによる直接入力等により最新の基地局位置情報を得て、基地局位置情報記憶部6に記憶させることができるため、例えば頻繁に基地局の増設等がある場合であっても、アンテナ指向性制御の際に最新の基地局位置情報を反映させることができることになり、より正確なアンテナ指向性制御が可能となる。
【0041】
〔第4の実施形態〕
図4には、本発明の第4の実施形態の携帯電話端末の主要部の概略的な構成を示す。
【0042】
この図4に示す第4の実施形態の携帯電話端末は、図3に示した第3の実施形態の携帯電話端末が備えている方位センサー11に代えて、地磁気方位センサー12を搭載していること以外、第3の実施形態と同じであるため、この図4の各構成要素の説明については省略する。
【0043】
当該第4の実施形態の携帯電話端末によれば、地磁気方位センサー12を用いて端末の方位を検出することにより、簡易な構成でより正確なアンテナ指向性制御を、最新の基地局位置情報に基づいて行うことが可能となっている。
【0044】
〔アンテナ指向性制御のフロー〕
図5には、上述した第1〜第4の実施形態の携帯電話端末におけるアンテナ指向性制御の全体的な流れを示す。なお、この図5に示す処理の流れの順番は一例であり、ステップS1とステップS2の処理は何れが先に行われても良く、ステップS4の処理はステップS1からステップS3までの処理と同時に行われても良い。また、ステップS8の処理は実際にはステップS7の処理中に同時に行われる処理である。
【0045】
この図5において、本実施形態の携帯電話端末が基地局の通信を開始すると、ステップS1の処理として、位置情報検出部3は、GPSアンテナ1及びGPS受信部2からのGPS信号により、現在の端末位置(緯度,経度等)を測定し、その端末位置情報を情報処理部4へ送る。
【0046】
情報処理部4は、ステップS2の処理として、上記送受信部8が通信アンテナ7を介して通信している基地局の識別情報を制御部5から受け取り、その基地局識別情報に基づいて上記基地局位置情報記憶部6から当該基地局の位置情報を取得する。
【0047】
そして、情報処理部4は、ステップS3の処理として、上記基地局位置情報と端末現在位置情報とに基づいて、アンテナ指向性を向けるべき方位(絶対方位)を算出する。
【0048】
また、方位情報検出部10は、ステップS4の処理として、方位センサー11や地磁気方位センサー12の検出信号から、携帯電話端末の現在の方位(端末方位)を算出する。
【0049】
次に、情報処理部4は、ステップS3で得られた絶対方位とステップS4で得られた端末方位とから、それらの間の相対方位、つまり、アンテナ指向性を制御する際に、当該アンテナ指向性を何れの方向にどれだけ動かすべきかを示す情報を算出する。
【0050】
そして、制御部5は、ステップS6の処理として、ステップS5で得られた相対方位情報に基づいて、上記通信アンテナ7の指向性の変更制御を行う。
【0051】
またこの時、受信品質モニタリング部9は、ステップS7の処理として、上記制御部5によるアンテナ指向性制御の過程において受信品質情報をモニタリングしており、情報処理部4は、ステップS8の処理として、上記ステップS7で得られた受信品質情報に基づいて、受信品質が良くなる方向への指向性補正や、相対方位情報の一時停止のためのON/OFF制御を行う。
【0052】
以上のフローチャートの処理は、例えば携帯電話端末が基地局との通信を終了するまで続けられる。
【0053】
〔端末方位の頻繁な変更がある場合のアンテナ指向性制御のフロー〕
図6には、図5のフローチャートのステップS8で行われる処理のうち、携帯電話端末の向いている方向(端末方位)が短時間に目まぐるしく変わる場合のアンテナ指向性制御の流れを示す。
【0054】
この図6において、情報処理部4は、当該携帯電話端末が備えている時間計測手段(図示は省略する。)から得られる時間情報と、上記方位情報検出部10から得られる端末方位情報とを用い、ステップS11の処理として一定時間が経過したか否か判定すると共に、ステップS12及びステップS13の処理として上記一定時間内で端末方位が変化した回数をカウントする。
【0055】
そして、情報処理部4は、ステップS14の処理として、一定時間内での端末方位の変化カウント数が所定のカウント閾値を越えたか否か判断する。当該ステップS14において、一定時間内における端末方位の変化カウント数がカウント閾値を超えたと判断された場合、アンテナ指向性制御の応答が追いつかず受信品質が劣化してしまう虞があるため、ステップS15の処理として、制御部5はアンテナ指向性制御をOFFとし、また、情報処理部4は上記一定時間の前に求めていた相対方位情報を上記制御部5へ送るようにする。一方、当該ステップS14において、端末方位の変化カウント数がカウント閾値を超えていないと判断されている場合、ステップS16の処理として、制御部5はアンテナ指向性制御をONとし、また、情報処理部4は端末方位の変更毎に求めている相対方位情報を制御部5へ送るようにする。
【0056】
〔受信品質が良い場合のアンテナ指向性制御のフロー〕
図7には、図5のフローチャートのステップS8で行われる処理のうち、略々全ての方位について受信品質が良い場合におけるアンテナ指向性制御の流れを示す。
【0057】
この図7において、情報処理部4は、当該携帯電話端末が備えている時間計測手段から得られる時間情報と、上記方位情報検出部10から得られる端末方位情報とを用い、ステップS21の処理として一定時間が経過したか否か判定すると共に、ステップS22の処理として当該一定時間内における受信品質情報(この例ではRSSIとする。)を蓄積する。
【0058】
そして、情報処理部4は、ステップS23の処理として、一定時間内で蓄積したRSSIレベルが所定のレベル閾値より低いか否か判断する。当該ステップS23において、一定時間内におけるRSSIレベルがレベル閾値より低い場合には、アンテナ指向性制御を行う方が望ましいため、ステップS24の処理として、制御部5はアンテナ指向性制御をONとし、また、情報処理部4は端末方位情報から求めている相対方位情報を制御部5へ送るようにする。一方、上記ステップS23において、一定時間内におけるRSSIレベルがレベル閾値より高い場合には、アンテナ指向性制御をあえて行う必要が無いため、ステップS25の処理として、制御部5はアンテナ指向性制御をOFFとし、また、情報処理部4は上記一定時間の前に求めていた相対方位情報を制御部5へ送るようにする。
【0059】
〔まとめ〕
以上説明したように、本発明実施形態によれば、方位センサーを内蔵していることにより、例えば携帯電話端末のように方位の変化が大きい使用状況であっても、アンテナの指向性を最適に設定することができ、また、アンテナの指向性を制御する際の受信品質の変化をモニタリングすることにより、別の端末からの干渉により電波状態が悪くなってしまう使用状況であっても、別の端末等からの干渉の少ない最適なアンテナ指向性に設定することが可能であり、受信感度の改善が可能となる。また、本実施形態によれば、受信感度が改善されることで、送信電力を必要以上に上げなくても良くなり、その結果として、バッテリー消費を減らすことができ、携帯電話端末における通話時間の長時間化への貢献も期待されることになる。
【0060】
なお、上述した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0061】
また、上述の実施形態では、携帯電話端末を例に挙げているが、本発明は、無線通信機能を備えたPDAや携帯型テレビゲーム装置等の携帯通信端末にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態の携帯電話端末の概略的な内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の携帯電話端末の概略的な内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の携帯電話端末の概略的な内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の携帯電話端末の概略的な内部構成を示すブロック図である。
【図5】第1〜第4の実施形態の携帯電話端末におけるアンテナ指向性制御の全体的な流れを示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートのステップS8で行われる処理のうち、携帯電話端末の向いている方向(端末方位)が短時間に目まぐるしく変わる場合のアンテナ指向性制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】図5のフローチャートのステップS8で行われる処理のうち、略々全ての方位について受信品質が良い場合におけるアンテナ指向性制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 GPSアンテナ、2 GPS受信部、3 位置情報検出部、4 情報処理部、5 制御部、6 基地局位置情報記憶部、7 通信アンテナ、8 送受信部、9 受信品質モニタリング部、10 方位情報検出部、11 方位センサー、12 地磁気方位センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を変更可能なアンテナ素子を備えたアンテナ手段と、
自端末の位置情報を検出する端末位置情報検出手段と、
通信先の基地局の位置情報を取得する基地局位置情報取得手段と、
自端末が向いている方向を表す第1の方位を検出する第1の方位検出手段と、
上記端末位置情報検出手段からの上記自端末の位置情報と上記基地局位置情報取得手段からの上記基地局の位置情報とに基づいて、上記自端末の位置から上記基地局の位置への方向を表す第2の方位を求める第2の方位算出手段と、
上記第1の方位検出手段が検出した上記第1の方位と上記第2の方位算出手段が求めた上記第2の方位との相対的な方位に基づいて、上記アンテナ手段の指向性を向けるべき方向と量を表す第3の方位を求める第3の方位算出手段と、
上記アンテナ手段による電波の受信品質を測定する受信品質測定手段と、
上記第3の方位算出手段が求めた第3の方位へ上記アンテナ手段の指向性の向きを設定すると共に、上記受信品質測定手段が測定している上記受信品質の変化に基づいて上記アンテナ手段の指向性の向きを補正する指向性設定制御手段とを有する
ことを特徴とする携帯無線通信端末。
【請求項2】
請求項1記載の携帯無線通信端末であって、
上記指向性設定制御手段は、上記第1の方位検出手段からの上記第1の方位の変化数をカウントし、一定時間内にカウント値が所定のカウント閾値を越えた時には、上記アンテナ指向性の設定制御を停止することを特徴とする携帯無線通信端末。
【請求項3】
請求項1記載の携帯無線通信端末であって、
上記指向性設定制御手段は、上記受信品質測定手段が測定している上記受信品質を表すレベル値が一定時間以上所定の閾値レベルを越えている時には、上記アンテナ指向性の設定制御を停止することを特徴とする携帯無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246338(P2006−246338A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62374(P2005−62374)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】