説明

携帯用電子キー

【課題】水中に没したとしても、容易に見出すことが可能な携帯用電子キーを提供する。
【解決手段】上カバー12と下カバー14とで、密封された空間を形成し、内部に基板42とバッテリ44とアンテナ46の如き電装品を配設し、上カバー12、下カバー14を発泡性樹脂で形成し、その表面をシボ模様とし、全体を比重1以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された制御装置との間で無線通信を行い、IDを照合してエンジンの始動等を行うために使用者が携帯して用いる携帯用電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が携帯している電子キーと、実車に搭載された制御装置との間で、無線通信を行いIDを照合して正規の使用者からの作動要求である場合にエンジンの始動等を行う電子キーシステムに関しては、例えば、特許文献1や特許文献2が提案されている。
【0003】
特許文献1は、車両等の盗難防止装置に関するものであり、特にキー及びキーシリンダを廃して、キーを使用することなく、車両等から離れた場所でエンジンの運転許可或いは運転禁止を簡便に行うことができる構成が開示されている。この特許文献1の技術的思想では、具体的には、エンジンの運転許可或いは運転禁止を簡便に行うために携帯型送信機(電子キー)が用いられる。この携帯型送信機は、電源となるバッテリと、運転者が操作して、例えば、ハンドル等の車両操作機器のロック状態を解除するためにIDコードを車両側に送信するアンロックボタンと、運転者が操作してエンジンの運転を不許可にするためのIDコードを車両側に送信するロックボタンと、前記アンロックボタン又はロックボタンからの送信信号を波形整形した後、この信号に対応する信号に変換するリモコン制御部と、このリモコン制御部で変換された信号を車両側へ送信する送信回路とから構成されてなるものである。
【0004】
特許文献2は、車両用電子キーシステムに関するものであり、車両の停止中並びに走行中において使用者が電子キーを落とした場合にそれを警告として出力することができ、使用者が電子キーを落とすことによる紛失の確率を極力少なくしようとする技術的思想を開示している。
【0005】
特に、この特許文献2の携帯型送受信機(電子キー)は、外形がカードの形状であって内部にICチップが組み込まれてなるものであり、具体的には、図7に示すように、内部にバッテリ1、電源回路2、CPU3、受信回路4及び送信回路5が組み込まれ、この場合、電源回路2は、バッテリ1からの電力を受信回路4、送信回路5、及びCPU3に供給し、図示しない制御回路との間で信号の送受信を行ってハンドルのロックやアンロック、エンジンの始動や停止、警告灯の点灯や消灯等を行う。前記電子キーや制御回路の詳細については、特許文献2にその具体的構成及び作用効果が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−276760号公報
【特許文献2】特開2004−114860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、電子キーは携帯することを前提とする。そして、その使用領域には、原則として制約がない。従って、例えば、水上スキーや、プレジャーボート等において、電子キーが用いられる場合がある。この場合、使用者の取り扱いの不手際から、水中や雪中に電子キーを落下させ紛失してしまうおそれがある。また、従来の電子キーは、ケース本体が合成樹脂等で構成されている。そこで、プレジャーボート等の操作者が素肌に電子キーを吊り下げたりすると、ケース自体が硬質であるために違和感を感じることもある。素肌に直接硬いケースが当接するためである。
【0008】
本発明は、前記のような問題点を考慮してなされたものであって、例えば、前記電子キーが何らかの原因によって水中に没しても、その所在を容易に確認することができ、また素肌に当接しても違和感のない携帯用電子キーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、ケース本体と、前記ケース本体の内部に収納された受信回路、送信回路、スイッチ等を含む電装部とからなり、前記ケース本体と電装部の比重が全体として、1以下であることを特徴とする。
【0010】
前記のように、ケース本体と電装部等を合わせて、比重が1以下であることから、この携帯用電子キーが水中に没した場合であっても、水面上に容易に浮くことが可能である。従って、水面に浮いた状態の携帯用電子キーは視認して回収することが可能であるために、その紛失から免れることができる。
【0011】
ここで、前記ケース本体を発泡性樹脂で形成すれば、容易に携帯用電子キーの比重を1以下とすることができる。しかも、発泡性樹脂は一般的に硬度が低く、直接肌に接触させても違和感がなく、プレジャーボート等の操作や或いは遊びに差障りが生ずることも少ない。また、ケース本体内部に空気層(空気室)を設けてもよい。これによっても、携帯用電子キー全体として、比重を1以下とすることができる。
【0012】
さらにまた、前記ケース本体の内部に浮力体を充填してもよい。すなわち、発泡性樹脂やスポンジ等の浮力を有するものを充填しても携帯用電子キー全体として比重を1以下に抑制することができ、それによって水中に没しようとする携帯用電子キーをその浮力により容易に水面上に導き出すことが可能であり、紛失を容易に免れることができる。
【0013】
また、携帯用電子キーを、船舶に用いることにより、前記携帯用電子キーを前記船舶から水上に落下させてしまった場合においても、前記携帯用電子キーを確実且つ迅速に視認して回収することが可能であるため、前記携帯用電子キーの紛失から免れることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、携帯用電子キー全体の比重を1以下に構成しているので、携帯用電子キーが水中に没しようとしても水面上に浮かぶため、その紛失から免れることが可能となる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る携帯用電子キーについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
図1において、参照部号10は、本発明の第1の実施の形態に係る電子キーを示し、この電子キー10は上カバー12と下カバー14とを含む。好ましくは、前記上カバー12及び下カバー14は、ウレタン等の発泡性樹脂で形成されている。上カバー12の上面には、この電子キー10をON/OFF制御するためのスイッチング用のボタン16の押圧部位17が設けられている。一方、下カバー14の下面には7つの同一直径の凹部18が形成されており、この凹部18は操作者が手中に保持した際の滑り止としても機能する。なお、発泡性樹脂からなる上カバー12及び下カバー14の表面は、シボ模様とすれば、さらなる滑り止め効果が得られる。
【0017】
上カバー12と下カバー14の境界部位には図示しない硬貨の周縁部を嵌合する溝20が形成されている。前記硬貨をひねるようにすることにより、上カバー12と下カバー14とを離間させるためのものである。なお、図1〜3において、参照符号22は、上カバー12と下カバー14との両者によって形成される貫通孔であり、この貫通孔22に、例えば、金属製や合成樹脂製の鎖、紐等を通すことにより、操作者は電子キー10を首に下げたり、或いは腕や足に巻き付けることもできる。
【0018】
次に前記のように構成される電子キー10の内部について、図4を参照しながら説明する。
【0019】
図4に示されるように、下カバー14には、その開口部全周に渡って凹部30が形成され、この凹部30に、上カバー12の下部に設けられた周回するツメ部32が嵌合して、前記上カバー12と下カバー14とが一体化される。好ましくは、前記凹部30に嵌合するツメ部32によって、可及的に液密に構成されることが好ましい。このようにして、上カバー12と下カバー14が一体化することによって、電子キー10の内部に、空間、すなわち室40が形成される。前記室40の内部に電源回路、受信回路、送信回路、CPU等を搭載した基板42が配設される。基板42には、バッテリ44とアンテナ46とが電気的に接続するように設けられる。この基板42はその略全体に上カバー12に収納されるシール部材48によって包被される。シール部材48は、その上面に上方へと突出する突部49と下方へと突出する円環状部51を有する。円環状部51の内部空間に基板42に装着されたボタン16が配設され、突部49はこのボタン16の上方に位置し、前記押圧部位17の直下にある。従って、上カバー12の突部49に対応する押圧部位17を押圧すれば、ボタン16により、基板42に形成された図示しない電気回路をON/OFF制御することができる。上カバー12は下カバー14の凹部30を指向する端縁部50を有し、この端縁部50は、上カバー12に形成された段部52によって下カバー14に指向して押圧され、シール効果が達成される。シール部材48は、段差部54を経て、その上縁部が上カバー12の室40を画成する内壁部に当接する。
【0020】
この場合、本実施の形態では、基板42の下側に前記バッテリ44を囲繞保持するバッテリホルダ56が設けられるとともに、アンテナ46を囲繞保持するアンテナホルダ58が設けられる。バッテリホルダ56及びアンテナホルダ58はその下面を下カバー14の室40を形成する壁面に当接してバッテリ44とアンテナ46、ひいては基板42をシール部材48側へ押圧して、これらを一体的且つ堅牢に保持する。なお、図中、参照符号60はバッテリホルダ56、アンテナホルダ58に圧接する補助シール部材を示す。
【0021】
前記の実施の形態のよれば、電子キー10は、上カバー12、下カバー14、基板42、バッテリ44、アンテナ46、バッテリホルダ56、アンテナホルダ58、シール部材48等を含めて全体として比重を1以下としている。このため電子キー10が水中に没しようとしても容易に水面に浮遊する。このため、電子キー10の水中での紛失から免れることができる。このように、前記電子キー10は、水上を移動する船舶(例えば、水上スキー、プレジャーボート)に用いた場合に好適である。
【0022】
しかも、上カバー12と下カバー14の表面をシボ模様としたために操作者がこの電子キー10と素肌に当接しても発泡性樹脂材料の性状と相俟って違和感を生じることがない。
【0023】
図5に、本発明に係る電子キー10の第2の実施の形態を示し、図1〜図4の電子キー10と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0024】
この第2の実施の形態では、特に下カバー14を大きく形成して室40を第1の実施の形態よりも大なる室40a(空間)としている。上カバー12と下カバー14とに液密構造を採用し、しかも比較的大容積の室40aの形成によって電子キー10全体として比重を1以下とすることができ、第1の実施の形態と同一の効果が得られる。
【0025】
図6に、本発明に係る電子キー10の第3の実施の形態を示す。この図6に係る実施の形態では、第2の実施の形態で示した室40aに発泡性樹脂やスポンジ等の浮力体70を設けている。浮力体70が室40aに充填され、電子キー10全体として比重1以下にすれば、水没したとしても確実に電子キー10を水面上に浮上させる効果が得られる。
【0026】
以上のような構成において、電子キーは全体として比重が1以上であるために、例え、何らかの衝撃を受けた場合、或いは不注意によって、当該電子キー10を水中に落とした場合であっても、容易にその浮力によって水面上に浮上させることができる。その際、電子キー10には十分な水密構造が採用されるために、中に設けられている基板等の電装品に不都合が生じることがない。従って、それを再び使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子キーの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子キーの平面図である。
【図3】図3は、図1に示す電子キーの底面図である。
【図4】図4は、図1に示す電子キーの縦断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る電子キーの縦断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係る電子キーの縦断面図である。
【図7】図7は、従来技術に係る電子キーのブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
10…電子キー 12…上カバー
14…下カバー 16…ボタン
40、40a…室 42…基板
44…バッテリ 46…アンテナ
56…バッテリホルダ 58…アンテナホルダ
70…浮力体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と、前記ケース本体の内部に収納された受信回路、送信回路、スイッチ等を含む電装部とからなり、前記ケース本体と電装部の比重が全体として、1以下であることを特徴とする携帯用電子キー。
【請求項2】
請求項1記載の電子キーにおいて、前記ケース本体を発泡性樹脂で形成することを特徴とする携帯用電子キー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子キーおいて、ケース本体内部に空気室を設けることを特徴とする携帯用電子キー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子キーにおいて、前記ケース本体の内部に浮力体を充填することを特徴とする携帯用電子キー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子キーにおいて、前記携帯用電子キーは、船舶に用いられることを特徴とする携帯用電子キー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−226026(P2006−226026A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42212(P2005−42212)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】