説明

携帯端末のカバー及びそれを備えた携帯端末

【課題】携帯端末本体の側面及び背面を覆う携帯端末のカバーを構成する木材が水分を含んで膨張しても全体として見映えが悪化することなく快適に使用できるようにする。
【解決手段】カバー10を平坦な内側平板部21及びこの内側平板部21に連続する内側湾曲部22を有する樹脂成形品よりなる内側部材20と、内側平板部21に当接し、この内側平板部21を覆う平坦な外側平板部31及び、この外側平板部31に連続して内側湾曲部22を覆う外側湾曲部32を有し、木材よりなる外側部材30とで構成する。内側平板部21と外側平板部31とを接着する一方、少なくとも内側湾曲部22及び外側湾曲部32における携帯端末本体1の長手方向に伸びる側面を覆う部分は互いに非接着とし、内側湾曲部22には、外側へ広がり、外側湾曲部32の端面32aが当接するフランジ部23を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の背面側を覆うカバー及びそれを備えた携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材は、その手触り、色合い、香りなど金属や合成樹脂にはない独特の特徴を有するが、劣化の問題があるため、携帯端末のカバーとして広く利用されることはなかった。
【0003】
しかし、近年、特許文献1のように、木材表面を圧縮加工することにより、木目による自然な風合いを残しつつ、カメラなどの筐体に使用することが行われている。この筐体では、圧縮による変形を抑えるために裏面に熱可塑性シート部材を一体に圧縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−229935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のカバーでは、圧縮により、木材とシート部材とを一体成形しているので、シート側に複雑な形状を形成することができない。
【0006】
一方、圧縮加工された木材を金型に入れて溶融した樹脂を流し込んで成形することは技術的に難しい。
【0007】
このため、木材と樹脂成形品とを別々に成形して接合する必要があった。しかし、木材は、水分を吸収すると膨張する一方、樹脂成形品は水分を吸収しないことから、収縮差が生じ、カバーが変形しやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カバーを構成する木材が水分を含んで膨張しても全体として見映えが悪化することなく快適に使用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、木材よりなる外側部材と、樹脂成形品よりなる内側部材の平板部とを主として接着するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、携帯端末本体の側面及び背面を覆う携帯端末のカバーを前提とし、
上記カバーは、
平坦な内側平板部及び該内側平板部に連続する内側湾曲部を有する樹脂成形品よりなる内側部材と、
上記内側平板部に当接して該内側平板部を覆う平坦な外側平板部及び該外側平板部に連続して上記内側湾曲部を覆う外側湾曲部を有し、木材よりなる外側部材とを備え、
上記内側平板部と上記外側平板部とが接着される一方、少なくとも上記内側湾曲部及び上記外側湾曲部における上記携帯端末本体の長手方向に伸びる側面を覆う部分は互いに非接着であり、
上記内側湾曲部には、外側へ広がり、上記外側湾曲部の端面が当接するフランジ部が形成されている。
【0011】
上記の構成によると、木材よりなる外側部材と樹脂成形品よりなる内側部材との二重構造であるため、強度が向上する上に、内側部材が樹脂成形品で構成されているので、携帯端末本体に係合するための係合爪やカメラ用開口など複雑な形状でも容易に形成できる。また、木材が含水により膨張しても、少なくとも変形の大きい携帯端末本体の長手方向側面を覆う湾曲部同士で外側部材と内側部材とが接着されていないので、この部分では外側部材のみが膨張し、内側部材が一緒に変形することはない。このため、内側部材が木材の膨張作用を阻害しないので、含水により膨張しない内側部材との間で無理な力がかからず、木材が劣化しにくく、外観も悪化しにくい。内側部材は含水により変形しないので、携帯端末本体との間で寸法変化が生じず、係合爪などによる携帯端末本体との嵌合が弱まるなどの悪影響が避けられる。また、外側部材と内側部材とを全面を接着する場合に比べて接着剤の量が減ってコストダウンとなると共に、接着剤がはみ出して見映えが悪くなることはない。なお、ここでいう平坦とは、断面で必ずしも完全な直線ではなく、若干湾曲した部分を有するものでもよいことを意味する。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記内側部材を正面側から見たときの上記フランジ部の幅は、該フランジ部の内周が上記外側湾曲部が最も収縮したときの内周と同一位置又はそれよりも内側にあり、該フランジ部の外周が該外側湾曲部が最も膨らんだときの内周よりも外側にあるように設定されている。
【0013】
上記の構成によると、フランジ部の幅が適切に設定されているので、木材が最も収縮したときに外側湾曲部の内面が内側湾曲部の外面に強く当接せず、内側部材が変形しない。また、外側部材が最も膨張しても、内側部材のフランジとの間に隙間が生じないので、外観が悪化したり、隙間に異物が入り込んだりすることはない。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記内側部材には、上記携帯端末本体に係合させるための弾性変形可能な係合爪が設けられている。
【0015】
上記の構成によると、外側部材が含水により膨張しても内側部材は変形しないので、携帯端末本体との間で寸法変化が生じず、係合爪による携帯端末本体との嵌合が弱まることはない。
【0016】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
上記木材の含水による変形の大きい方向を上記携帯端末本体の幅方向とし、含水による変形の小さい方向を上記携帯端末本体の長手方向とするように、該木材の木目が配置されている。
【0017】
すなわち、木材の木目は、繊維の伸びる長手方向には膨張しにくく、幅方向には膨張しやすいという性質がある。そこで、上記の構成によると、木材の膨張しにくい方向を携帯端末本体の長手方向としているので、含水による外側部材の変形による影響を最小限にとどめることができる。
【0018】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記内側部材及び外側部材には、対応する位置にそれぞれ貫通孔が形成され、
上記外側部材の貫通孔の内周には、フランジ付きの環状補強部材が嵌め込まれている。
【0019】
上記の構成によると、木材よりなる外側部材の貫通孔周辺をフランジ付きの環状補強部材で補強しているので、外側部材が損傷しにくく、膨張によって貫通孔が拡大しても、環状補強部材はフランジを有するので、外観が悪化したり外れたりしない。
【0020】
第6の発明では、第5の発明において、
上記環状の補強部材のフランジは、上記内側部材側へ若干突出した突出部を有し、該突出部に対応して該内側部材には、該突出部が嵌め込まれる凹陥部が形成され、該凹陥部と突出部とで該内側部材と上記外側部材との位置決めが行われるように構成されている。
【0021】
上記の構成によると、内側部材に外側部材を接着するときに、フランジの突出部が内側部材の凹陥部に嵌合するので、位置決めが極めて容易である。
【0022】
第7の発明では、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、
表面側にタッチパネルを含む表示部が設けられ、背面及び側面が上記カバーで覆われている。
【0023】
上記の構成によると、手触りがよく、コンパクトで操作性のよい携帯端末が得られる。
【0024】
第8の発明では、第7の発明において、
上記カバーは、着脱可能に構成され、該カバーを外した状態でバッテリーが露出すると共に、内部の修理が可能となる。
【0025】
上記の構成によると、カバーを取り外せば、バッテリーが露出するのでバッテリーの交換が可能であり、内部の修理も行える。カバーは着脱可能なので、複数カバーを用意しておけば、着せ替えも可能であり、商品価値が向上する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂成形品よりなる内側部材を木材よりなる外側部材で覆う際に少なくともその内側湾曲部及び外側湾曲部における携帯端末本体の長手方向に伸びる側面を覆う部分を互いに非接着とし、さらに、内側部材に外側部材の端面が当接するフランジ部を設けたことにより、木材が水分を含んで膨張しても全体として見映えが悪化することなく快適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態の携帯端末のカバーの分解斜視図である。
【図2】携帯端末の正面側を示す斜視図である。
【図3】携帯端末の背面側を示す斜視図である。
【図4】携帯端末を示す背面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】携帯端末本体の背面側を示す斜視図である。
【図7】カバーの正面側を示す斜視図である。
【図8】外側部材単体の正面側を示す斜視図である。
【図9】環状補強部材が嵌め込まれた外側部材の正面側を示す斜視図である。
【図10】膨張試験で測った寸法を示す概略説明図であり、(a)外側部材の正面図であり、(b)が外側部材の底面図である。
【図11】膨張試験の結果を示す表である。
【図12】膨張試験の幅寸法の変化を示すグラフである。
【図13】膨張試験の長手寸法の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図2〜図5は本発明の実施形態の携帯端末1を示し、例えば、この携帯端末1は携帯電話機と携帯情報端末とを融合させた、いわゆるスマートフォンである。携帯端末1は、正面側に平坦な表示部2を有する。表示部2は、液晶ディスプレイでも有機液晶ディスプレイでもよく、さらに2次元画像だけでなく、3次元画像を表示可能に構成してもよい。表示部2の下側には例えば3つの機能ボタン3が設けられ、これらは例えば、通話開始ボタン、ロックボタン及び通話終了ボタンよりなる。表示部2は、平坦なアクリル板2aで覆われ、タッチパネル4を有する。アクリル板2aは、携帯端末本体5の外周を形成する表示部側フランジ部2bの内周側に嵌め込まれている。本実施形態の携帯端末1は、例えば、正面視で湾曲した上下方向に長い豆型を有する。そして、この携帯端末本体5の側面5a全体及び背面5b全体がカバー10で覆われている。なお、携帯端末1の形状は、このような正面視豆型のものに限定されず、丸みの少ない略矩形状のものであってもよい。但し、丸みが多い方が見た目やさわり心地がよい上に後述する内側部材20の圧縮成形が容易である。
【0030】
図6に示すように、携帯端末本体5の背面側の上側には、例えば、カメラ部6、フラッシュ部7、スピーカ部8、赤外線センサ部9等が配置されている。それに対応させて図7に示すように、カバー10には、カメラ窓11、フラッシュ窓12、スピーカ窓13、赤外線センサ用窓14が形成されている。図6に示すように、携帯端末本体5の背面側の下側には、バッテリー収容部15が凹陥され、このバッテリー収容部15には図示しないバッテリーが収容されるようになっている。また、カード挿入部18も複数箇所に設けられている。すなわち、カバー10を外すことで、携帯端末本体5の背面側が露出し、バッテリーやカード類を脱着したり、内部の修理を行ったりできるようになっている。携帯端末本体5の上端には、バッテリーに充電したり、データのやりとりをするためのUSB端子(図示せず)が設けられ、図4に示すように、このUSB端子をUSB端子用蓋17が開閉可能に覆っている。
【0031】
そして、図1に分解して示すように、カバー10は、平坦な内側平板部21及びこの内側平板部21に連続する内側湾曲部22を有する内側部材20を備える。本実施形態では、例えば、内側部材20は、ABS樹脂などの射出成形による樹脂成形品よりなり、その厚さは1mm程度である。なお、内側部材20をアルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属成形品で構成してもよいが、樹脂成形品の方が、複雑な形状を一度に成形できて製造コストが安く、軽量で無線に対して悪影響を及ぼさない点で望ましい。
【0032】
一方、カバー10は、内側平板部21に当接し、この内側平板部21を覆う平坦な外側平板部31及び、この外側平板部31に連続して内側湾曲部22を覆う外側湾曲部32を有する外側部材30を備える。この外側部材は、例えば、ヒノキなどの木材を圧縮して成形したものよりなる。ヒノキであれば、機械的強度が高く、よい香りがする上に抗菌効果もある。
【0033】
詳しく説明すると、内側部材20の内側平板部21は、図5に断面で示すようにほぼ完全な平坦でなくても、一部の断面が若干湾曲していてもよい。内側湾曲部22は、断面円弧状に滑らかに湾曲している。例えば、内側平板部21の範囲は、図4に破線で例示するように、携帯端末本体5のカメラ部6、フラッシュ部7、スピーカ部8、赤外線センサ部9、バッテリー収容部15等が形成された領域に相当する。なお、内側平板部21と内側湾曲部22との境界は必ずしも明確である必要はない。図1及び図7に示すように、内側部材20には、カメラ窓11a、フラッシュ窓12a、スピーカ窓13a及び赤外線センサ用窓14aよりなる貫通孔が形成されている。図1及び図5に示すように、内側部材20の内側湾曲部22には、外側へ広がり、外側湾曲部32の端面32aが当接するフランジ部23が形成されている。USB端子用蓋17に対応して内側部材20の上端には、内側端子用開口24が切り欠かれている。図7に示すように、内側部材20の下端には、携帯端末本体5の下端に設けた係合孔5cに係合する係合部25が上方に突出するように一体形成されている。なお、図1に示すように、内側部材20の正面側の外周には、カバー10を携帯端末本体5に着脱自在に係合するための弾性変形可能な係合爪としての金属バネ16を収容するバネ収容部26が間隔をあけて凹陥され、各バネ収容部26のフランジ部23側には、金属バネ16の先端16aを露出させるためのバネ用開口27が設けられている。なお、図6に示すように、携帯端末本体5には、この金属バネ16の先端16aが係合する係合突起5dが突設されている。なお、内側部材20の内側平板部21の下端側には、バッテリーとの干渉を避けるための三角形状切欠28が形成されている。
【0034】
外側部材30の外側平板部31も内側平板部21と同様に完全に平坦である必要はなく、断面が若干湾曲していてもよい。その範囲も内側平板部21と同様である。外側湾曲部32は、内側湾曲部22と同様に断面円弧状に滑らかに湾曲している。図4に示すように、外側部材30においては、木材の含水による変形の大きい方向を携帯端末1の幅方向とし、含水による変形の小さい方向を携帯端末1の長手方向とするように木材の木目30aが配置されている。具体的には、図4に例示するように、外側部材30の板目の山形の頂点部分が携帯端末1の上下方向に向くように木目30aが配置され、木目30aの直線状部分が上下方向に伸びている。一方、木目30aの直線状部分が携帯端末1の幅方向に伸びるような木目30aの配置は、木材の膨張の影響が大きくなって望ましくない。なお、図4以外の図では、木目30aは省略している。
【0035】
図8に示すように、外側部材30には、カメラ窓11b、フラッシュ窓12b、スピーカ窓13b及び赤外線センサ用窓14bよりなる貫通孔が形成されている。詳しくは図示しないが、小さな貫通孔よりなるスピーカ窓13b以外の各貫通孔にはザグリ33が形成されている。図1に示すように、これらの貫通孔の内周には、フランジ40a付きの環状補強部材40が嵌め込まれている。フランジ40aは、ザグリ33に嵌め込まれて位置決めされて抜け止めされている。図3等に示すように、見映えや触感を重視し、環状補強部材40は、嵌め込まれた状態でその表面側が外側部材30の表面と段差がないようになっている。一方、フランジ40a側については、図9に示すように、フラッシュ窓12b及び赤外線センサ用窓14bに対応するフランジ40aについては、外側部材30の裏面と段差がないように嵌め込まれているが、カメラ窓11bについては、フランジ40aが外側部材30の裏面よりも若干突出した突出部40bを形成している。USB端子用蓋17に対応して外側部材30の上端には、上記内側端子用開口24よりも若干大きく、外側端子用開口34が切り欠かれている。
【0036】
この突出部40bに対応して内側部材20には、図1に示すように、突出部40bが嵌め込まれる凹陥部41が形成されている。このことで、凹陥部41と突出部40bとで、内側部材20と外側部材30との位置決めが行われるように構成されている。
【0037】
そして、外側部材30の肉厚は、例えば、1.5mmであり、図5に示す内側部材20のフランジ部23の幅Wは、このフランジ部23の内周が外側湾曲部32が最も収縮したときの内周と同一位置又はそれよりも内側にあり、外側湾曲部32が最も膨らんだときの内周よりも外側にあるように設定されている。言い換えれば、外側湾曲部32が最も収縮したときに内側湾曲部22の外面に強く接触せず、外側湾曲部32が最も膨らんだときに内側湾曲部22との間に隙間が生じないようになっている。この実施形態では、例えばフランジ部23の幅は1mmである。なお、外側部材30の肉厚は、薄い方が圧縮成形は容易であり、本実施形態の外側部材30は、内側部材20との二重構造であるため、1.5mm程度に薄くすることができる。外側部材30の膨張度合いや肉厚に合わせてフランジ部23の幅を調整するとよい。
【0038】
図5に例示するように、本実施形態のカバー10では、内側平板部21と外側平板部31とが接着剤42又は両面テープ42により接着されている。一方、内側湾曲部22及び外側湾曲部32における携帯端末本体5の長手方向に伸びる側面5a、すなわち左右側面を覆う部分は互いに非接着となっている。場合によっては、携帯端末本体5の上下側の側面5aを覆う内側湾曲部22及び外側湾曲部32を若干接着することは可能である。接着剤42を塗布する範囲は、厳密には特定されないが、要は、木材の収縮の大きい携帯端末1の幅方向(左右方向)で接着を行わず、木材の膨張及び収縮を許容させるようにするとよい。なお、接着剤42がはみ出さないように、貫通孔11b,12b,13b,14b、三角形状切欠28、ザグリ33等の周辺では接着しない。
【0039】
本実施形態の携帯端末1は、表面側にタッチパネル4を含む表示部2が設けられ、背面5b及び側面5aがカバー10で覆われているので、手触りがよく、コンパクトで操作性のよいものとなっている。
【0040】
−カバーの組付方法−
次に、本実施形態にかかる携帯端末のカバー10の組付方法について簡単に説明する。
【0041】
まず、図1に示すように、内側部材20と外側部材30とを別々に成形しておく。内側部材20のバネ収容部26に金属バネ16を嵌め込み、その先端16aをバネ用開口27から露出させておく。外側部材30のカメラ窓11b、フラッシュ窓12b及び赤外線センサ用窓14bにそれぞれ対応する環状補強部材40を嵌め込んでおく。このように、木材よりなる外側部材30の貫通孔周辺をフランジ40a付きの環状補強部材40で補強しているので、外側部材30が損傷しにくく、膨張によって貫通孔が拡大しても、環状補強部材40はフランジ40aを有するので、外観が悪化したり外れたりしない。
【0042】
次いで、内側平板部21に接着剤42を塗布する。なお、外側平板部31側に接着剤42を塗布してもよく、また、接着剤42でなく、両面テープ42を貼り付けてもよい。場合により、上下の内側湾曲部22に接着剤42を若干塗布してもよいが、左右の内側湾曲部22には、接着剤42を塗布しない。
【0043】
次いで、内側部材20に外側部材30を押しつけて接着する。このときに、フランジ部23の突出部40bが内側部材20の凹陥部41に嵌合するので、位置決めが極めて容易である。
【0044】
このようにして内側部材20と外側部材30とが接着されたカバー10を携帯端末本体5に嵌め込むには、まず、内側部材20の下端部にある係合部25を携帯端末本体5の下端部にある係合孔5cに嵌め込み、表示部側フランジ部2bの背面に内側部材20のフランジ部23の端面32aを当接させるように嵌め込んでいく。すると、金属バネ16の先端16aが携帯端末本体5側の係合突起5dに乗り上げられるときに、その弾性により押し曲げられ、次に係合突起5dを乗り越えると、弾性により元に戻ってカバー10が携帯端末本体5から外れにくくなる。
【0045】
最後に携帯端末本体5の上端に取り付けられているUSB端子用蓋17で内側端子用開口及び外側端子用開口34を塞ぐ。
【0046】
逆にカバー10を外すには、USB端子用蓋17を開き、露出した内側端子用開口及び外側端子用開口34の部分と表示部側フランジ部2bとに爪を掛けて押し広げると、金属バネ16の先端16aが係合突起5dを乗り越え、カバー10が携帯端末本体5から外れる。
【0047】
カバー10は簡単に着脱できるので、木目30aや色合いの異なるカバー10や異なる木材よりなるカバー10を用意しておけば、着せ替えにより、異なる色合いや香りを楽しむことができる。
【0048】
−カバーの膨張試験−
次いで、外側部材30の膨張試験を行った結果について説明する。
【0049】
まず、内側平板部21及び外側平板部31のみが両面テープ42により接着されたカバー10を用意する。
【0050】
次いで、室温40℃湿度95%の高温高湿に一定に保って放置する。図10に示す幅A〜C、長手方向長さD及び反りEを計測した結果を図11〜図13に示す。
【0051】
これらの図を見てわかるように、吸湿して含水すると、カバー10の幅A〜Cが1.3〜1.4mm膨張する一方、長手方向長さDは、0.2mm程度しか膨張しなかった。反りEについては、ない、又は、ほぼない状態であった。木材の木目30aは、繊維の伸びる長手方向には膨張しにくく、幅方向には膨張しやすいという性質がある。ここでは、木材の膨張しにくい方向を携帯端末本体5の長手方向としているので、含水による外側部材30の変形による影響を最小限にとどめることができた。
【0052】
カバー10では、外側部材30が含水により膨張しても内側部材20は変形しないので、最も膨張した場合でも、携帯端末本体5との間で寸法変化が生じず、金属バネ16による携帯端末本体5との嵌合が弱まることはないことがわかった。
【0053】
なお、図11の表に参考で記載したように、ほぼ一定の温度及び湿度で乾燥させると、徐々にカバー10の形は元に収縮することがわかった。
【0054】
このように幅方向に外側湾曲部32が左右で合計1.4mm程度膨張しても、内側部材20のフランジ部23の幅が左右それぞれ1mm以上あるので、外側湾曲部32が最も膨らんだときの内周よりもフランジ部23の外周が外側にある。収縮時のフランジ部23の内周を外側湾曲部32に接触しないように又は軽く接触する程度に設定しておけば、木材が最も収縮したときにも内側部材20に悪影響が生じないことがわかった。このように、フランジ部23の幅が適切に設定されているので、木材である外側部材30が膨張しても、内側部材20のフランジとの間に隙間が生じないので、外観が悪化したり、隙間に異物が入り込んだりすることはない。
【0055】
また、長手方向長さDが0.2mm程度しか伸びないことから、上下方向の内側湾曲部22及び外側湾曲部32を互いに接着しても悪影響が発生しにくいことから、場合により、上下方向の内側湾曲部22及び外側湾曲部32を互いに接着してもよいことが判明した。
【0056】
なお、詳しい説明は省略するが、比較データとして、外側部材30の全体を内側部材20に接着した場合の膨張試験を行ったところ、カバー10全体での幅A〜Cの変化は小さくなったが、その分反りEが大きくなった。これは、内側部材20が外側部材30の膨張を無理に押さえ込んだことに起因すると考えられ、そうすることで、カバー10を携帯端末本体5に嵌め込みにくくなったり、意図せず外れてしまうという不具合が発生した。
【0057】
このように、本実施形態のカバー10は、木材よりなる外側部材30と樹脂成形品よりなる内側部材20との二重構造であるため、強度が向上する上に、内側部材20が樹脂成形品で構成されているので、携帯端末本体5に係合するための係合部25、貫通孔11a,12a,13a,14aなど複雑な形状でも容易に形成できる。また、木材が含水により膨張しても、少なくとも変形の大きい携帯端末本体5の長手方向5aを覆う湾曲部22,32同士で外側部材30と内側部材20とが接着されていないので、この部分では外側部材30のみが膨張し、内側部材20が一緒に変形することはない。このため、内側部材20が木材の膨張作用を阻害しないので、含水により膨張しない内側部材20との間で無理な力がかからず、木材が劣化しにくく、外観も悪化しにくい。内側部材20は含水により変形しないので、携帯端末本体5との間で寸法変化が生じず、金属バネ16などによる嵌合が弱まるなどの悪影響が避けられる。また、外側部材30と内側部材20とを全面を接着する場合に比べて接着剤42の量が減ってコストダウンとなると共に、接着剤42がはみ出して見映えが悪くなるのを防止できる。
【0058】
したがって、本実施形態にかかる携帯端末1のカバー10によると、木材が水分を含んで膨張しても全体として見映えが悪化することなく快適に使用できる。
【0059】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0060】
すなわち、上記実施形態では、ストレートタイプの携帯端末1としたが、表示部筐体が背面側筐体に対して回転する携帯端末や、表示部筐体が背面側筐体に対してスライドする携帯端末においては、背面側筐体の側面及び背面を覆うカバーに対して本発明を適用することができる。
【0061】
上記実施形態では、携帯端末は、スマートフォンとしたが、PHS(Personal Handy-phone System )、PDA(Personal Digital Assistant)、パソコン、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等であってもよい。
【0062】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 携帯端末
2 表示部
4 タッチパネル
5 携帯端末本体
5a 側面
5b 背面
10 カバー
11a カメラ窓(貫通孔)
11b カメラ窓(貫通孔)
12a フラッシュ窓(貫通孔)
12b フラッシュ窓(貫通孔)
14a 赤外線センサ用窓(貫通孔)
14b 赤外線センサ用窓(貫通孔)
16 金属バネ(弾性変形可能な係合爪)
20 内側部材
21 内側平板部
22 内側湾曲部
23 フランジ部
30 外側部材
30a 木目
31 外側平板部
32 外側湾曲部
32a 端面
40 環状補強部材
40a フランジ
40b 突出部
41 凹陥部
42 接着剤、両面テープ
W フランジ部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末本体の側面及び背面を覆う携帯端末のカバーにおいて、
平坦な内側平板部及び該内側平板部に連続する内側湾曲部を有する樹脂成形品よりなる内側部材と、
上記内側平板部に当接して該内側平板部を覆う平坦な外側平板部及び該外側平板部に連続して上記内側湾曲部を覆う外側湾曲部を有し、木材よりなる外側部材とを備え、
上記内側平板部と上記外側平板部とが接着される一方、少なくとも上記内側湾曲部及び上記外側湾曲部における上記携帯端末本体の長手方向に伸びる側面を覆う部分は互いに非接着であり、
上記内側湾曲部には、外側へ広がり、上記外側湾曲部の端面が当接するフランジ部が形成されている
ことを特徴とする携帯端末のカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末のカバーにおいて、
上記内側部材を正面側から見たときの上記フランジ部の幅は、該フランジ部の内周が上記外側湾曲部が最も収縮したときの内周と同一位置又はそれよりも内側にあり、該フランジ部の外周が該外側湾曲部が最も膨らんだときの内周よりも外側にあるように設定されている
ことを特徴とする携帯端末のカバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末のカバーにおいて、
上記内側部材には、上記携帯端末本体に係合させるための弾性変形可能な係合爪が設けられている
ことを特徴とする携帯端末のカバー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の携帯端末のカバーにおいて、
上記木材の含水による変形の大きい方向を上記携帯端末本体の幅方向とし、含水による変形の小さい方向を上記携帯端末本体の長手方向とするように、該木材の木目が配置されている
ことを特徴とする携帯端末のカバー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の携帯端末のカバーにおいて、
上記内側部材及び外側部材には、対応する位置にそれぞれ貫通孔が形成され、
上記外側部材の貫通孔の内周には、フランジ付きの環状補強部材が嵌め込まれている
ことを特徴とする携帯端末のカバー。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯端末のカバーにおいて、
上記環状の補強部材のフランジは、上記内側部材側へ若干突出した突出部を有し、該突出部に対応して該内側部材には、該突出部が嵌め込まれる凹陥部が形成され、該凹陥部と突出部とで該内側部材と上記外側部材との位置決めが行われるように構成されている
ことを特徴とする携帯端末のカバー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の携帯端末のカバーを備えた携帯端末において、
表面側にタッチパネルを含む表示部が設けられ、背面及び側面が上記カバーで覆われている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯端末において、
上記カバーは、着脱可能に構成され、該カバーを外した状態でバッテリーが露出すると共に、内部の修理が可能となる
ことを特徴とする携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−100034(P2012−100034A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245558(P2010−245558)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】