説明

携帯端末用キーボード

【課題】機能を削減することなく、操作の容易さ、間違いの減少を実現する携帯電話用のキーボードを提供する。
【解決手段】本発明による携帯端末用キーボードは、少なくとも、決定キー、通話キー、終話キー、および0から9までの数字キーを備えて、決定キー、通話キー、終話キー、数字5キーの素材または表面粗さは、他のキーの素材または表面粗さと異なっており、決定キーと数字5キーを結ぶ直線は、通話キーと終話キーを結ぶ直線と直角に交わっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末用キーボードに関する。より詳細には、操作性を重視した携帯電話のキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話の普及は目覚ましく、老若男女問わず広い世代にわたって使用されるようになってきており、高齢者、年少者、障害者等にも使用されている。それに伴い、高齢者、年少者、障害者等の特定の層に対する携帯電話が検討されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では視覚障害者用の携帯電話を開示している。本携帯電話は、1角部だけが異なる形状をしており、利用者は即座に1角部を認識することができるため、携帯電話の向きを認識することができる。また、受話(通話)ボタンが1角部に配されているため、即座に受話(通話)ボタンを押して電話に出ることができる。
【0004】
また、視覚障害者にとって不要な機能やボタン、又はディスプレイを構成しないことにより、携帯電話寸法に占める操作ボタンの割合を通常の携帯電話より大きくすることができる。そのため、操作ボタンを大きくすることができ、その操作ボタンの表面に点字を表示するスペースを作ることができ、その結果、視覚障害者が操作ボタンを誤操作することが少なくなり、操作性を格段に向上させることができる。
【0005】
また、高齢者向けの携帯電話では、表示類(ボタン、文字サイズ等)を大きくして見やすくしたり、複雑な操作が必要な機能を搭載せずに基本の機能に絞った携帯電話が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−252703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の携帯電話用のキーボードは、デザインが優先されており、操作性は重視されていなかった。従来の携帯電話用のキーボードは、多すぎるボタン、小さすぎる文字、密度の高い配列が特徴であった。また、従来の高齢者向けの携帯電話は、単に表示類を大きくしたり機能を削減するだけで、操作性の向上は考えられていない。
【0008】
以上のように、従来の携帯電話キーボードは、初心者や高齢者、障害者にとって使い易いものではなかった。特に、キーボードに書かれている文字が小さく読みにくかったり、指のふるえにより押し間違うことが多く、結果として、携帯電話の利用を控えるということになっていた。
【0009】
従って、本発明は、機能を削減することなく、操作の容易さ、間違いの減少を実現する携帯電話用のキーボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するため本発明による携帯端末用キーボードは、少なくとも、決定キー、通話キー、終話キー、および0から9までの数字キーを備えている携帯端末用のキーボードであって、前記決定キー、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字キーの数字5キーの素材または表面粗さは、他のキーの素材または表面粗さと異なっている。
【0011】
また、前記決定キーと前記数字5キーを結ぶ直線は、前記通話キーと前記終話キーを結ぶ直線と直角に交わっていることも好ましい。
【0012】
また、前記決定キーの素材または表面粗さは、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材または表面粗さと異なっていることも好ましい。
【0013】
また、前記決定キーの素材はアクリルであり、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材はゴムであり、前記他のキーの素材はプラスチックであることも好ましい。
【0014】
また、前記決定キーの素材はアクリルであり、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの文字の素材はゴムであり、前記他のキーの素材はプラスチックであることも好ましい。
【0015】
また、前記決定キーの素材はアクリルであり、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材はアルミであり、前記他のキーの素材はプラスチックであることも好ましい。
【0016】
また、前記アルミの表面は、鏡面、ざらざら、または溝であることも好ましい。
【0017】
また、前記決定キーの素材はアクリルであり、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材は、表面がざらざらしたプラスチックであり、前記他のキーの素材は、表面が平滑なプラスチックであることも好ましい。
【0018】
また、前記ざらざらは、紙ヤスリで#300以上であることも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、携帯電話のキーボードの中で、操作上重要となるキーの操作性を、他のキーと区別することが可能になり、操作の容易さ、間違いの減少が実現される。これにより、高齢者、障害者、初心者が、容易に携帯電話を操作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】指先無毛部の4つの機械受容器を示す。
【図2】マイスナー小体とパチーニ小体の加齢による触覚受容能力の変化を示す。
【図3】本発明による携帯電話用キーボードの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
平均寿命の向上により、高齢者(65歳)人口は急速に増加している。例えば、日本では2005年1月1日現在、高齢者は2500万人以上と推定され、さらに増えると予測されている。一般に、高齢者は、加齢と共に社会生活をする上で欠かせない生体機能が低下する。例えば、老眼により視覚能力が低下する。従って、高齢者でも携帯電話のキーボードを快適に使用できるようにするためには、低下した生体機能を別の生体機能で補う必要がある。
【0022】
本発明では、加齢により低下した視覚を触覚で補うことを考える。図1は、指先無毛部の4つの機械受容器を示す。図1によると、指先にはメルケル細胞、マイスナー小体、ルフィニ小体およびパチーニ小体の4つの機械受容器がある。ここで、メルケル細胞は縦圧力の検出を行い、マイスナー小体はパタン認識と点字の触読を行い、ルフィニ小体は横圧力、すべりおよびずれの検出を行い、パチーニ小体は振動、ザラザラ・荒さ感の検出を行っている。
【0023】
図2は、マイスナー小体とパチーニ小体の加齢による触覚受容能力の変化を示す。図2によるとマイスナー小体の密度は加齢により低下し、それに伴い触覚の平均閾値は加齢により大きくなっていくことが分かる。一方、パチーニ小体の方は、足指(第1指)の振動感覚閾値は、加齢により増加するが、人差し指の振動感覚閾値は、加齢による影響をほとんど受けないことが分かる。従って、パチーニ小体が検出するザラザラ・荒さ感、つまり、触覚の材質識別能力は加齢による影響をあまり受けないことが分かる。
【0024】
以上のことより、触覚の材質識別能力に着目し、キーボードのキーの材料と配置を工夫することで、高齢者であってもボタンの識別が容易になり、指の動きによるボタンの検索も容易になる。さらに、触覚による始点の認識を可能とするため、始点のボタンを異材料で作成し、検索範囲に従来材料を使用することで、検索動作も容易になる。
【0025】
図3は、本発明による携帯電話用キーボードの例を示す。本例では、携帯電話用キーボード1として、以下の形状、および類似の形状を仮定する。類似というのは、いくつかの付加的なキーがあるが、それらはグループ化することで、下記のキー配列と見なすことができるものである。また、電話帳キー、カメラキー、メールキー、WEBキーについては、位置が異なる場合もあるが、同形とみなす。
【0026】
携帯電話用キーボード1は、決定キーA、通話キーB、終話キーCおよび0〜9までの数字キーを少なくとも備える。ここで、決定キーAは、携帯電話のディスプレイ(図示せず)に表示され、十字キーによって選択された項目を決定するためのキーであり、通話キーBは、通話を開始するときに押下するキーであり、終話キーCは通話を終了するときに押下するキーであり、数字キーは数字を入力するためのキーであり、特に数字5キーDは数字5を入力するためのキーである。
【0027】
このうち、決定キーA、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDは操作の始点となるため重要度の高いキーと考えられる。決定キーA、通話キーB、終話キーCは操作の最後に押すボタンであるため、数字5キーDはダイヤル操作を始めるときの起点として機能するためである。これらの重要度の高いキーを使いやすい配置にする。例えば、ひし形に配置する。つまり、決定キーAと数字5キーDを結ぶ直線と、通話キーBと終話キーCを結ぶ直線は直角に交わる。ただし、決定キーAと通話キーBを結ぶ直線の長さと、終話キーCと数字5キーDを結ぶ直線の長さは同じであると限らない。
【0028】
また、これらの4個のキーの素材または表面粗さを他のキーと異なるものとすることで、操作性を高めることができる。決定キーAと十字キー、通話キーBと数字1キー、終話キーCと数字3キー、数字5キーDとその他の数字2キー、数字4キー、数字6キー、数字8キーなど、隣接するキーの触知弁別が容易になり、操作性が向上し、誤操作を防止できる。なお、決定キーA、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDの素材は同一であっても良いが、決定キーAは操作の始点となるため、決定キーAの素材を、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDの素材と変えることでさらに効果が高まる。また、数字5キーDについては、ダイヤル操作を始めるときの起点として機能するため、同様に周辺キーとの素材を変更することで、スムーズな指の動きが保障される。
【0029】
第1の実施例は、これらの4個のキーのうち決定キーAをアクリル、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDをゴム素材(または、類似の手触りのもの)、他のキーをプラスチック素材とする。決定キーAをアクリルとすることで、滑りにくさ、弁別のしやすさを実現できる。さらに操作者にしっかりしたクリック感を与える。また、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDをゴム素材とすることで、抵抗感(滑りにくさ)による弁別のしやすさにより他のキーとの弁別が容易になる。さらに操作者にやさしさや暖かさという感じを与える。なお、ゴム素材(または、類似の手触りのもの)の場合、文字をゴム素材(または、類似の手触りのもの)で印字することで、同様の効果が得られる。
【0030】
第2の実施例は、これらの4個のキーのうち決定キーAをアクリル、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDをアルミ素材、他のキーをプラスチック素材とする。通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDキーをアルミ素材とすることで、滑りにくさ、弁別のしやすさを実現できる。アルミ素材の場合、表面を、鏡面、シボ(ざらざら)、溝とすることで、さらに弁別を容易にできる。アルミ素材は、金属材料であり、熱伝導の高さより最初冷たさを感じ、他のプラスチック素材のキーと区別がしやすい。
【0031】
第3の実施例は、これらの4個のキーのうち決定キーAをアクリル、通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDを、表面にざらざらした加工を加えたプラスチック素材とする。他のキーは、平滑なプラスチック素材とする。通話キーB、終話キーCおよび数字5キーDの表面をざらざらさせることで、滑りにくさ、弁別のしやすさを実現できる。
【0032】
また、粗すぎると指が動かしづらくなるため、アルミおよびプラスチックのざらざら感は、紙やすりで#300以上の「目」の粗さが望ましい。
【0033】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 携帯電話用キーボード
A 決定キー
B 通話キー
C 終話キー
D 数字5キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、決定キー、通話キー、終話キー、および0から9までの数字キーを備えている携帯端末用のキーボードであって、
前記決定キー、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字キーの数字5キーの素材または表面粗さは、他のキーの素材または表面粗さと異なっていることを特徴とする携帯端末用キーボード。
【請求項2】
前記決定キーと前記数字5キーを結ぶ直線は、前記通話キーと前記終話キーを結ぶ直線と直角に交わっていることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項3】
前記決定キーの素材または表面粗さは、前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材または表面粗さと異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項4】
前記決定キーの素材はアクリルであり、
前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材はゴムであり、
前記他のキーの素材はプラスチックであることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項5】
前記決定キーの素材はアクリルであり、
前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの文字の素材はゴムであり、
前記他のキーの素材はプラスチックであることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項6】
前記決定キーの素材はアクリルであり、
前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材はアルミであり、
前記他のキーの素材はプラスチックであることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項7】
前記アルミの表面は、鏡面、ざらざら、または溝であることを特徴とする請求項6に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項8】
前記決定キーの素材はアクリルであり、
前記通話キー、前記終話キー、および前記数字5キーの素材は、表面がざらざらしたプラスチックであり、
前記他のキーの素材は、表面が平滑なプラスチックであることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末用キーボード。
【請求項9】
前記ざらざらは、紙ヤスリで#300以上であることを特徴とする請求項7または8に記載の携帯端末用キーボード。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−278723(P2010−278723A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128764(P2009−128764)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【出願人】(599008654)
【Fターム(参考)】