説明

携帯端末部品

【課題】機械的強度、衝撃強度等の物性に優れ、低ひけ、低そり変形に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる携帯端末部品を提供する。
【解決手段】(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維40〜140重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる携帯端末部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物で成形された携帯端末部品に関する。更に詳しくは、機械的強度、衝撃強度等の物性、および低ひけ、低そり変形等の成形性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた携帯端末部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のOA機器、家電製品、電話機等の電気・電子機器は小型化の要求があり、特に携帯として使用する電子機器製品では小型・軽量の要求が強い。従来、各種携帯端末の電子機器を収容するための筐体(ハウジング)、この製品強度を維持するための補強板(シャーシ)等の材料としては、電子機器を保護するという観点から、アルミニウム、マグネシウム等の金属材料やセラミック材料が使用されてきた。しかし、これらの材料の比重はアルミニウムの2.69をはじめとしてかなり大きいため、電子機器の総重量に占める筐体の割合が大きくなり、かなり重いものとなっていた。また、金属材料は価格が高く、成形加工も難しいため、重量、コストおよび生産性の面で問題があった。金属材料が抱えている上記の問題点を解決するため、代替材料として低比重で値段が安く、且つ成形加工性に優れたプラスチック材料が注目を浴びるようになってきた。
【0003】
一般的なプラスチック材料の比重は2.0以下と金属材料の比重に比べて小さいため、これらの部品に応用することで、携帯端末製品の軽量化をはかることができる。また、プラスチック材料は、一般的に圧縮成形、射出成形、射出−圧縮成形、ブロー成形等の方法によって成形されるが、その中でも射出成形法は量産性に優れているため低価格化をはかることができるので、電子機器の筐体成形法として最も多く用いられている成形技術である。これら携帯端末には、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂もしくはポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂とのブレンド材料等のプラスチック材料単独もしくは炭素繊維、ガラス繊維等の強化材料を充填した複合材料の使用が検討されてきた(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ABS樹脂、PC樹脂、ABS/PC樹脂、ABS/PBT樹脂等の一般的なプラスチック材料単独の使用は、引張強度、弾性率等の機械的強度、衝撃特性が比較的低いため、成形品の厚みを厚くしたり金属の補強板を併用する必要があるため、部品点数が増加し製品設計上の制約が発生する問題があった。これに対し、機械的強度、剛性、衝撃特性を改善する目的で、一般的なガラス繊維、炭素繊維で補強された複合材料も提案されているが、その効果は十分でなく、特に炭素繊維で補強された複合材料は剛性は高いものの材料価格が著しく高くなるため実用性がなかった。
【0005】
また、芳香族ポリアミド樹脂と変性ポリフェニレン樹脂のブレンド材料(特許文献2)を用いた補強樹脂材料が提案されている。しかしながら、これら樹脂材料では、優れた強度、剛性は得られるものの、衝撃特性は不十分であり、成形時に発生するガスが多いため成形量産性が悪く、成形品に発生するバリ処理が必要とされるため製品製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献3においては、ガラス繊維として長手形状の断面を有する非円形断面繊維を用いることで、機械的強度に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。しかし、通常のポリブチレンテレフタレート樹脂は、射出成形等の成形加工時の固化過程で発生する収縮が大きく、成形品のひけ量が大きい問題や、収縮異方性によるそり変形が大きいという問題があった。携帯端末部品のように、高強度、高剛性、高衝撃、成形品のひけとそり変形等が同時に要求される成形品への応用は困難とされていた。
【特許文献1】特開平7−60777号公報
【特許文献2】特開平6−240132号公報
【特許文献3】特開昭62−268612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、機械的強度、衝撃強度等の物性に優れ、低ひけ、低そり変形に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる携帯端末部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と扁平な断面形状を有するガラス繊維とを組み合わせた樹脂組成物を成形することにより、上記目的を達成し得る携帯端末部品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は
(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、
(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維40〜140重量部
を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる携帯端末部品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる携帯端末部品は、軽量化効果が高く、剛性および衝撃にも強いため破壊しにくい特徴を持つ。また、成形性に優れ後処理加工が簡略化できるため、製造コスト低減が可能である。本発明は、携帯端末部品の筐体(ハウジング)、補強板(シャーシ)、フレーム、ヒンジ又はこれらの周辺関連部品に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。
【0011】
本発明に用いられる(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、(1)テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、1,4 −ブタンジオールまたはそのエステル形成誘導体を重縮合反応して得られるポリブチレンテレフタレートを主成分とし、これに5〜30モル%のイソフタル酸をコモノマーユニットとして導入した共重合体、あるいは該共重合体を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂、また(2)テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成誘導体を重縮合反応して得られるポリエチレンテレフタレートを主成分とし、これに5〜30モル%のイソフタル酸をコモノマーユニットとして導入した変性ポリエチレンテレフタレート共重合体を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂であり、更に(1)、(2)を合わせたイソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートの3種を組み合わせたものでもよい。
【0012】
(1)、(2)のいずれにおいても、イソフタル酸はエステル形成可能な誘導体、例えばジメチルエステルの如き低級アルコールエステルの形で重縮合に使用し、コポリマー成分として導入することが可能である。
【0013】
ここで、イソフタル酸コモノマーユニットの導入量は5〜30モル%であり、好ましくは10〜30モル%、特に好ましくは10〜20モル%である。導入量は5モル%未満では、結晶性が高いため、成形収縮の異方性が大きくなりそり変形が大きくなる。また、導入量が30モル%を超えると、本来のポリブチレンテレフタレートの優位点である強度および熱安定性の低下が大きく、且つ結晶化が著しく低下、遅延されることで、成形サイクルの低下、離型性の低下を引き起こし、実用的に用いられない問題を生じるおそれがある。
【0014】
(1)の場合、イソフタル酸変性共重合体単独か、またはイソフタル酸変性共重合体とイソフタル酸成分を含まないポリブチレンテレフタレートとの併用のいずれでも使用できる。併用の場合、イソフタル酸変性共重合体とイソフタル酸成分を含まないポリブチレンテレフタレートを合わせた全ジカルボン酸成分に対して5〜30モル%のイソフタル酸成分を含むことが必要である。例えば、カルボン酸成分がテレフタル酸のみからなるポリブチレンテレフタレートと10モル%イソフタル酸変性共重合体の併用組成100重量%のうち、ポリブチレンテレフタレートの割合は50重量%未満である。
【0015】
(2)の場合、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートは併用して用いられる。この場合、変性ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対して5〜30モル%のイソフタル酸成分を含むことが必要である。また、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートを合わせて100重量%とした場合のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートの割合は10〜60重量%が好ましい。10重量%未満ではそり変形抑制効果が不十分であり、60重量%を超えるとポリブチレンテレフタレートとしての成形性が損なわれ、100℃以下の金型温度で成形できない場合がある。
【0016】
(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、共重合可能なモノマー(以下、単に共重合性モノマーと称する場合がある)と共重合させた共重合体として用いることができる。共重合性モノマーとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸を除くジカルボン酸成分、炭素数2〜4のアルキレングリコール以外のジオール、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等が挙げられる。共重合性モノマーは、1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0017】
ジカルボン酸(又はジカルボン酸成分又はジカルボン酸類)としては、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などのC4〜40ジカルボン酸、好ましくはC4〜14ジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸成分(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などのC8〜12ジカルボン酸)、テレフタル酸、イソフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸成分(例えば、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸などのC8〜16ジカルボン酸)、またはこれらの反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル(ジメチルフタル酸などのフタル酸のC1〜4アルキルエステルなど)、酸クロライド、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)などが挙げられる。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステルなど)などを併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
【0018】
ジオール(又はジオール成分又はジオール類)には、例えば1,4 −ブタンジオールを除く脂肪族アルカンジオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール(1,6−ヘキサンジオールなど)、オクタンジオール(1,3−オクタンジオール、1,8−オクタンジオールなど)、デカンジオールなどの低級アルカンジオール、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2〜12アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2〜10アルカンジオールなど);(ポリ)オキシアルキレングリコール(例えば、複数のオキシC2〜4アルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)など]、脂環族ジオール(例えば、1,4 −シクロヘキサンジオール、1,4 −シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール[例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオールなどのジヒドロキシC6〜14アレーン;ビフェノール(4,4'−ジヒドロキシビフェニルなど);ビスフェノール類;キシリレングリコールなど]、及びこれらの反応性誘導体(例えば、アルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体などのエステル形成性誘導体など)などが挙げられる。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
【0019】
なお、共重合体において、共重合性モノマーの割合は、例えば、0.01〜30モル%程度の範囲から選択でき、通常、1〜30モル%、好ましくは3〜25モル%、さらに好ましくは5〜20モル%(例えば、5〜15モル%)程度である。また、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)と共重合体(コポリエステル)とを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.1〜30モル%(好ましくは1〜25モル%、さらに好ましくは5〜25モル%)程度となる範囲であり、通常、前者/後者=99/1〜1/99(重量比)、好ましくは95/5〜5/95(重量比)、さらに好ましくは90/10〜10/90(重量比)程度の範囲から選択できる。
【0020】
また、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂についても、本発明の効果を阻害しない範囲で、イソフタル酸以外の共重合可能なモノマーと共重合させた共重合体として用いることができる。
【0021】
なお、(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、何れも1.2dL/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0dL/g以下である。異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂又は変性ポリエステルをブレンドすることによって、例えば固有粘度1.2dL/gと0.8dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドすることによって、1.0dL/g以下の固有粘度を実現してもよい。なお、固有粘度(IV)は、例えば、O−クロロフェノール中、温度35℃の条件で測定できる。このような範囲の固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂を使用すると、十分な靱性の付与と溶融粘度の低減とを効率よく実現しやすい。固有粘度が大きすぎると、成形時の溶融粘度が高くなり、場合により成形金型内で樹脂の流動不良、充填不良を起こす可能性がある。
【0022】
本発明で用いられる(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維とは、長さ方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10、好ましくは1.5〜8、特に好ましくは2〜5の間にあるガラス繊維である。具体的な形状としては、略楕円形、略長円形、略まゆ形等である。
【0023】
(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維は、機械的強度、衝撃強度に優れ、そり変形を抑制するとともに成形性にも優れる。
【0024】
又、扁平な断面形状を有するガラス繊維は、その平均断面積が100〜300平方マイクロメートルのものが好ましい。100平方マイクロメートルより小さい場合、機械的強度、衝撃強度が十分でなく、300平方マイクロメートルを超える場合には、射出成形時のゲート詰まりや、金型や成形機の摩耗の問題を生じる。
【0025】
本発明において用いられる(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維の配合量は、(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、40〜140重量部、好ましくは50〜130重量部である。配合量が40重量部未満では機械的強度、衝撃強度が低く、また140重量部を超えると流動性が著しく悪化する。
【0026】
(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維の使用にあたっては、必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。この例を示せば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物がいずれも好ましく用いられる。これ等の化合物は予め表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。また、併用される官能性表面処理剤の使用量は、充填剤に対し0〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0027】
かかるガラス繊維(B)としては、Aガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成や、チョップドストランド、ロービングガラス等の配合時のガラス繊維の形態を問わず、使用可能である。
【0028】
本発明に用いる(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維は、溶融ガラスを吐出するために使用するブッシングとして、長円形、楕円形、矩形、スリット状等の適当な孔形状を有するノズルを用いて紡糸することにより調製される。又、各種の断面形状(円形断面を含む)を有する近接して設けられた複数のノズルから溶融ガラスを紡出し、紡出された溶融ガラスを互いに接合して単一のフィラメントとすることにより調製できる。
【0029】
携帯端末部品では樹脂材料を着色して用いることがある。この場合、各種着色顔料や染料とともに、無機白色顔料を使用するのが一般的である。本発明の樹脂組成物に最適な無機白色顔料としては、(C)モース硬度4.5以下の無機白色顔料、例えば、硫化亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、炭酸マグネシウム、白雲母、硫酸カルシウム、バライト、炭酸カルシウム等である。これら白色顔料では、ガラス繊維折れが少ないため良好な物性を得ることができる。一方、モース硬度が4.5を超える、ルチル型酸化チタン、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等はガラス繊維折れが多く発生することがあり、好ましくない。無機白色顔料の配合量は特に限定されず、一般的な着色必要量であれば良い。
【0030】
なお、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリアリーレンオキシド、ポリアリーレンサルファイド、フッ素樹脂等が例示される。また、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂等の共重合体も例示される。これら他の樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0031】
また、本発明の樹脂組成物には、種々の添加剤(安定剤、成形性改善剤等)を添加してもよい。添加剤としては、例えば、各種安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)核剤(結晶化核剤)、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、染・顔料等の着色剤、分散等が挙げられる。
【0032】
特に、ポリブチレンテレフタレートと、ポリカーボネートや、ポリエチレンテレフタレートをはじめとするアルキレングリコール成分が異なるポリエステルを併用する場合は、エステル交換抑制のためにリン系安定剤を添加することが好ましい。用いられるリン系安定剤としては、例えば有機ホスファイト系、ホスフォナイト系化合物およびリン酸金属塩等である。具体例を示すと、ビス(2,4−ジ−t−4メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、またリン酸金属塩としては、第一リン酸カルシウム、第一リン酸ナトリウムの水和物等が挙げられる。
【0033】
なお、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で他の強化用充填剤を添加することができる。他の強化用充填剤としては、本発明で規定した以外のガラス繊維、ミルドガラスファイバー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、シリカ、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維、黒鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等の金属酸化物、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩や硫酸塩、さらには炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等が例示され、有機充填剤としては、高融点の芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維等が例示される。
【0034】
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練込押出してペレットを調製し、しかる後成形する方法、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体としてこれ以外の成分と混合し添加することは、これらの成分の均一配合を行う上で好ましい方法である。 樹脂を金型に充填するための成形法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、回転成形、ガスインジェクションモールディング等が適用可能であるが、射出成形が一般的である。
【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜8、比較例1〜7
各樹脂組成物を表1に示す混合比率でドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼製)を用いて、シリンダー設定温度250℃で溶融混練したのちペレット化し、試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
また、使用した成分の詳細、物性評価の測定法は以下の通りである。
(1)使用成分
(A)成分
(A-1)イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート(固有粘度IV=0.65dL/g)
テレフタル酸と1,4 −ブタンジオールとの反応において、テレフタル酸の一部(12.5モル%)に代えて、共重合成分としてのジメチルイソフタル酸12.5モル%を用いた変性ポリブチレンテレフタレート
(A-2)ポリブチレンテレフタレート(固有粘度IV=0.69dL/g、ウィンテックポリマー(株)製)
(A-3)イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸12.0モル%変性、固有粘度IV=0.80dL/g、(株)ベルポリエステルプロダクツ製)
(B)ガラス繊維
(B-1) ;扁平な断面形状を有するガラス繊維(長径・短径比:4、平均断面積196μm、日東紡(株)製)
(B'-1) ;一般的な円形断面形状を有するガラス繊維(長径・短径比:1、平均断面積133μm、日本電気ガラス(株)製)
(C)白色顔料
(C-1)硫化亜鉛 モース硬度4
(C'-1)ルチル型酸化チタン モース硬度7
尚、実施例6、7、8および比較例5については、表中の組成に更に第一リン酸カルシウムを0.15重量部添加している。
(2)物性評価
<引張強さ>
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形機シリンダー温度260℃、金型温度80℃で、射出成形により引張試験片を作製し、ISO−527(試験片厚み4mm)に準じて測定した。
<シャルピー衝撃強さ>
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形機シリンダー温度260℃、金型温度80℃で、射出成形によりシャルピー衝撃試験片を作製し、ISO−179(試験片厚み4mm)に準じて測定した。
(3)そり変形の評価
下記基準で平板の平面度を測定した。
評価成形品;50mm×50mm×厚さ1mmの平板
成形機;FANUC ROBOSHOTα-100Ia
シリンダー温度;260-260-240-220℃
金型温度;80℃
射出圧力;69MPa
平面度測定機;CNC画像測定機クイックビジョンQVH404(ミツトヨ社製)
平面度測定法は平板上の9点(縦横3×3点)にて測定した。
(4)携帯電話ハウジングでの評価
図1に示す携帯電話ハウジングを成形し、(4-1)〜(4-3)の評価を行った。
成形機;住友重機工業SE100D
シリンダー温度;270-270-260-230℃
金型温度;100℃
(4-1)携帯電話ハウジングのヒンジ部の曲げ強度
図1のヒンジ部を押し曲げて、破壊強度を測定した。
【0037】
測定器;万能試験機テンシロンUTA50KN(オリエンテック社製)
測定速度;1000mm/分
(4-2)携帯電話ハウジングのボス部のひけ
図1のボス部の表面のひけ状況を目視観察した。
判断
○…ひけ少ない
×…ひけ多い
(4-3)携帯電話ハウジングのやけ(ガスによる圧縮発熱)
図1のヒンジ部流動末端のやけ状況を目視観察した。
判断
○…やけ少ない
×…やけ多い
【0038】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例で成形した携帯電話ハウジングおよびその評価状況を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、
(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維40〜140重量部
を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる携帯端末部品。
【請求項2】
(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂が、全ジカルボン酸成分に対して5〜30モル%のイソフタル酸を含むイソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートである請求項1記載のポリブチレンテレフタレート携帯端末部品。
【請求項3】
(A)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂が、ポリブチレンテレフタレートとイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートの混合物である請求項1記載の携帯端末部品。
【請求項4】
(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維が、長さ方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比が1.3〜10の間にあるものである請求項1〜3の何れか1項記載の携帯端末部品。
【請求項5】
(B)扁平な断面形状を有するガラス繊維が、平均断面積100〜300平方マイクロメートルのものである請求項1〜4の何れか1項記載の携帯端末部品。
【請求項6】
更に(C)モース硬度4.5以下の無機白色顔料を用いて着色された請求項1〜5の何れか1項記載の携帯端末部品。
【請求項7】
携帯端末部品の筐体(ハウジング)、補強板(シャーシ)、フレーム、ヒンジ又はこれらの周辺関連部品である請求項1〜6の何れか1項記載の携帯端末部品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−155449(P2009−155449A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334706(P2007−334706)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(501183161)ウィンテックポリマー株式会社 (54)
【Fターム(参考)】