説明

携帯通信端末、ホスト通信装置及びRFIDシステム

【課題】専用の充電装置が不要でかつ充電忘れがない携帯通信端末と、当該携帯通信端末及びホスト通信装置を備えたRFIDシステムを提供する。
【解決手段】携帯通信端末200は、ホスト通信装置300と通信するためのアンテナ201と、アンテナ201に誘起する誘導起電力を直流電圧に変換する電力変換回路202と、蓄電池203とを備える。蓄電池203に対する充電を実行するか否かは、携帯通信端末200が備える基準値又はRFIDシステムのユーザがホスト通信装置300に設定した基準値のいずれかを、蓄電池203の残量と比較することによって決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ(Radio Frequency IDentification)と通信する携帯通信端末と、前記携帯通信端末と通信するホスト通信装置とを備えたRFIDシステム、携帯通信端末及びホスト通信装置に関し、特に蓄電池を内蔵した携帯通信端末の電源制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFIDタグの小型化及び低価格化が著しく進み、さらに、バーコードに比べ圧倒的に多くの情報量を扱えるため、多くの製品や商品などに取り付けられ利用されるようになってきた。例えば、商店に陳列されている商品の内容や流通履歴などの情報が、商品に取り付けられているRFIDタグのメモリに格納されており、消費者はリーダ・ライタを目的の商品に近づけるだけで商品の情報を確認することが出来るようになった。
【0003】
さらに、RFIDタグは近距離通信の機能を備えているため、各種センサと組み合わせて、センサが検出した情報をRFIDタグからリーダ・ライタに送信することで、さまざまな情報を収集することができる。なお、RFIDタグと組み合わせるセンサは、温度センサ、圧力センサ、光量センサ、磁気センサなどのどのようなセンサでもよい。
【0004】
RFIDタグをセンサと組み合わせて、センサが検出した情報をデータとしてリーダ・ライタで受信する場合、センサによってはリーダ・ライタの近くまで移動できない場合がある。そのような場合は、リーダ・ライタをRFIDタグの近くまで移動させ、目的のRFIDタグからセンサが検出した情報を取得するようにしなくてはならない。そのためにはリーダ・ライタを携帯通信端末にして、電池駆動にする必要がある。このような携帯通信端末の電源としては通常蓄電池が用いられるため、充電装置が必要になる。また、リーダ・ライタを携帯通信端末にした場合は、できるだけ小型でしかも低消費電力にするため、データ処理能力が低下する。これを補うために、通常携帯通信端末で取得したデータをホスト通信装置に送信し、ホスト通信装置でデータを保管・管理するようにしている。このようなRFIDシステムにおいては、携帯通信端末が内蔵する蓄電池の充電方法が問題となる。
【0005】
特許文献1は、無線カードに内蔵した蓄電池の電圧が所定の値以下に低下したときに、その旨を表示し、充電の必要性を知らせる。無線カードを電波式充電器に挿入すると、電波式充電器によって充電電波が無線カードに照射されて、充電が行われる。
【0006】
特許文献2は、電池を用いた非接触ICカードと質問器との間で、コイルの電磁誘導作用を利用して通信を行ない、前記コイルを用いて電磁誘導作用により生成した電力で、非接触ICカードの主要回路部に電源を供給し、非接触ICカードを動作させるとともに、内蔵する電池を充電する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では専用の充電装置が必要であり、しかも充電が必要な旨の表示を見逃すと、無線カードを充電せずに使い続けてしまい、使用途中で無線カードの電池がなくなるという問題がある。また、充電中は無線カードを使用できないという問題もある。特許文献2では、ICカードが質問器と通信する際にICカードを充電するため、充電のし忘れはなくなった。特許文献1及び特許文献2ともに、ICカードの電源として蓄電池を備えているが、通常ICカードで消費する電力はきわめて小さいため、ICカードに内蔵される蓄電池の容量は、かなり小さいもので足りる。このため、特許文献2のように、ICカードが質問器と通信しているわずかな時間でも蓄電池を充電することができるが、背景技術で説明したリーダ・ライタとしても使用可能な携帯通信端末の場合は、内蔵する蓄電池の容量が大きいため、携帯通信端末が質問器と通信する時間だけでは、蓄電池を満充電まで充電することができない。
【0008】
本発明の目的は以上の問題を解決し、RFIDタグと通信する携帯通信端末と、前記携帯通信端末と通信するホスト通信装置とを備えたRFIDシステムにおいて、専用の充電装置が不要で、かつ充電忘れがない携帯通信端末と、当該携帯通信端末及びホスト装置を備えたRFIDシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る携帯通信端末は、携帯通信端末とホスト通信装置とを備えたRFIDシステムのための携帯通信端末において、
RFIDタグ及び前記ホスト通信装置との通信に使用するアンテナと、
蓄電池とを備え、
前記蓄電池は、前記ホスト通信装置から出力される電波によって、前記アンテナに誘起する誘導起電力によって満充電になるまで充電されることを特徴とする。
【0010】
また、前記携帯通信端末は、
リーダ・ライタとして機能するリーダ・ライタモードと、
RFIDタグとして機能するタグモードとを備え、
前記RFIDタグと通信する場合は、リーダ・ライタモードで動作し、
前記ホスト通信装置からの起動コマンドに応答してタグモードで動作し、
前記ホスト通信装置を起動した場合は、リーダ・ライタモードで動作して前記ホスト通信装置に対して起動コマンドを送信することを特徴とする。
【0011】
さらに、前記携帯通信端末は、
前記リーダ・ライタモードで動作して、前記RFIDタグ又は前記ホスト通信装置と通信する場合は前記蓄電池を用い、
前記タグモードで動作して、前記ホスト通信装置と通信する場合は、所定の切り換え信号に応じて、前記蓄電池と前記アンテナに誘起する誘導起電力とのうちのいずれか一方を選択して用いることを特徴とする。
【0012】
またさらに、前記携帯通信端末は、
前記アンテナに誘起する誘導起電力を直流電圧に変換して出力する電力変換回路と、
前記誘導起電力と前記蓄電池とのうちのいずれか一方を選択する電源ライン切り換え手段と、
前記アンテナを用いたデータの送受信を制御する送受信制御回路と、
前記携帯通信端末の動作を切り換えるオート/マニュアルスイッチと、
前記携帯通信端末の動作を制御するコントローラとを備え、
前記オート/マニュアルスイッチは、オート又はマニュアルの信号をコントローラに出力し、
前記コントローラは、
前記蓄電池の残量を検知する残量検知機能と、
前記蓄電池を充電するか否かを決定して、前記蓄電池の充電を制御する充電制御機能と、
前記電源ライン切り換え部に前記切り換え信号を出力する電源ライン制御機能とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記携帯通信端末において、前記切り換え信号は、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合は、前記蓄電池の残量が所定の基準値未満であれば前記誘導起電力を選択し、前記蓄電池の残量が前記所定の基準値以上であれば前記蓄電池を選択し、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がマニュアルの場合は、前記蓄電池の残量を前記ホスト通信装置に送信し、前記ホスト通信装置から受信する電源指定コマンドに応じて、前記誘導起電力と前記蓄電池とのうちのいずれか一方を選択することを特徴とする。
【0014】
さらに、前記携帯通信端末は、前記ホスト通信装置から送信された充電コマンドに応じて充電動作を開始することを特徴とする。
【0015】
またさらに、前記携帯通信端末は、前記充電コマンドに応答して前記残量検知機能を用いて前記蓄電池の残量を調べ、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合は、前記蓄電池の残量が所定の基準値未満であれば充電を開始し、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がマニュアルの場合は、前記蓄電池の残量を前記ホスト通信装置に送信し、前記ホスト通信装置から受信する充電可否コマンドに応じて充電を開始することを特徴とする。
【0016】
また、前記携帯通信端末は、前記蓄電池の充電中において、前記ホスト通信装置との間でコマンドを送受信することを特徴とする。
【0017】
さらに、前記携帯通信端末は、前記蓄電池が充電中であることを表示する表示手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
またさらに、前記携帯通信端末において、前記蓄電池の満充電の検出は、前記残量検知機能によって行なうことを特徴とする。
【0019】
また、前記携帯通信端末は、手動で操作して自身の電源をオンする通信スイッチを備え、
前記通信スイッチを操作することにより、電源がオンした場合は、前記携帯通信端末は前記リーダ・ライタモードで動作し、
前記携帯通信端末の電源がオフのときに、前記ホスト通信装置から起動されて電源がオンした場合は、前記携帯通信端末は前記タグモードで動作することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記携帯通信端末は、前記携帯通信端末のID情報と、前記RFIDタグから取得したデータとを記憶する記憶手段を備え、
前記ホスト通信装置との通信時に、前記記憶手段に記憶された、前記ID情報、及び前記データを前記ホスト通信装置に送信することを特徴とする。
【0021】
またさらに、前記携帯通信端末において、前記記憶手段は不揮発性メモリであることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るホスト通信装置は、携帯通信端末とホスト通信装置とを備えたRFIDシステムのためのホスト通信装置において、
リーダ・ライタとして機能するリーダ・ライタモードと、
RFIDタグとして機能するタグモードとを備え、
前記携帯通信端末を起動した場合は、リーダ・ライタモードで動作し、
前記携帯通信端末からの起動コマンドに応答してタグモードで動作することを特徴とする。
【0023】
また、前記ホスト通信装置は、
前記リーダ・ライタモードで動作しており、前記携帯通信端末から前記蓄電池の残量を受信したとき、
前記残量がユーザが設定可能な第1の基準値未満であれば、前記誘導起電力を指定する前記電源指定コマンドを前記携帯通信端末に送信し、
前記残量が前記第1の基準値以上であれば、前記蓄電池を指定する前記電源指定コマンドを前記携帯通信端末に送信することを特徴とする。
【0024】
さらに、前記ホスト通信装置は、
リーダ・ライタモードで動作しており、前記充電コマンドを前記携帯通信端末に送信した後、前記携帯通信端末から前記蓄電池の残量を受信したとき、
前記残量がユーザが設定可能な第2の基準値未満であれば、充電を実行すると指定した充電可否コマンドを前記携帯通信端末に送信し、
前記残量が前記第2の基準値以上であれば、充電を実行しないと指定した充電可否コマンドを前記携帯通信端末に送信することを特徴とする。
【0025】
またさらに、前記ホスト通信装置は、前記携帯通信端末が装着される装着受け部を備え、
前記装着受け部に前記携帯通信端末が装着された場合は、前記携帯通信端末の電源をオンすることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るRFIDシステムは、前記携帯通信端末と、前記ホスト通信装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、携帯通信端末がリーダ・ライタモードで動作している場合は、蓄電池から電力供給を行ない、タグモードで動作している場合は、オート/マニュアルスイッチの信号及び蓄電池の残量に応じて、蓄電池を用いるか誘導起電力から変換された直流電圧を用いるかを決定する。オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合は、携帯通信端末が備える基準値を蓄電池の残量と比較して、残量が基準値以上の場合は蓄電池を使用する。一方、マニュアルの場合は、ユーザがホスト通信装置に設定した基準値を蓄電池の残量と比較して、残量が基準値以上の場合は蓄電池を使用する。これにより、携帯通信端末が誘導起電力から変換された直流電圧を使用するときの蓄電池の残量をユーザが設定でき、蓄電池の残量をホスト通信装置で管理することができる。
【0028】
また、携帯通信端末に内蔵された蓄電池の充電は、携帯通信端末がRFIDタグから取得したデータをホスト通信装置に送信する際に、ホスト通信装置からの指示で行なわれる。その結果、専用の充電器が不要となり、しかも通常の動作であるホスト通信装置との通信に付随して充電が行なわれるため、充電のし忘れがない。さらに、蓄電池の充電は、携帯通信端末の通信用のアンテナに誘起する誘導起電力から変換された直流電圧を用いるので、充電専用のアンテナが不要となり携帯通信端末が小型化できる。さらに、蓄電池の充電を開始する蓄電池の残量をユーザがホスト通信装置に設定した基準値に基づいて決定することから、電池の種類や容量が変わっても適正な充電開始残量を設定できる。さらに、蓄電池の充電を開始すると、蓄電池が満充電になるまで充電を継続するので、携帯通信端末をリーダ・ライタモードで動作させるときには、常に蓄電池を満充電の状態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るRFIDシステムを示すブロック図である。
【図2】図1の携帯通信端末200によるRFIDタグ100との通信処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の携帯通信端末200による使用電源の判定処理を示すフローチャートである。
【図4】図1のホスト通信装置300による使用電源の判定処理を示すフローチャートである。
【図5】図1の携帯通信端末200(タグモード)による充電処理の第1の部分を示すフローチャートである。
【図6】図1の携帯通信端末200(タグモード)による充電処理の第2の部分を示すフローチャートである。
【図7】図1の携帯通信端末200(タグモード)による充電処理の第3の部分を示すフローチャートである。
【図8】図1のホスト通信装置300(リーダ・ライタモード)による充電処理の第1の部分を示すフローチャートである。
【図9】図1のホスト通信装置300(リーダ・ライタモード)による充電処理の第2の部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係るRFIDシステムを示すブロック図である。RFIDシステムはRFIDタグ100と、携帯通信端末200と、ホスト通信装置300とで構成される。
【0032】
まず、RFIDタグ100について説明する。RFIDタグ100は、例えば温度センサなどに取り付けられ、センサが計測したデータ、及び自分自身のID情報を携帯通信端末200に送信する。なお、RFIDタグ100は、携帯通信端末200から送信される電波を整流して得られる電圧で動作する。
【0033】
次に、携帯通信端末200について説明する。携帯通信端末200は、動作モードとして、リーダ・ライタとして動作するリーダ・ライタモードと、RFIDタグとして動作するタグモードとを含む。RFIDタグ100と通信する場合、携帯通信端末200はリーダ・ライタモードで動作し、RFIDタグ100からID情報及びデータを取得する。また、ホスト通信装置300と通信する場合は、携帯通信端末200の起動方法によって、タグモード又はリーダ・ライタモードのいずれかのモードで動作する。携帯通信端末200が備える通信スイッチ207を押すことによって携帯通信端末200を起動させたときは、携帯通信端末200はリーダ・ライタモードで動作する。このとき、携帯通信端末200は、ホスト通信装置300に対して起動コマンドを送信してホスト通信装置300を起動し、その後、ホスト通信装置300にコマンド、ID情報、及びデータを送信する。一方、ホスト通信装置300から起動コマンドを受信することによって起動したときは、携帯通信端末200はタグモードで動作し、ホスト通信装置300のコマンドに応じて、ID情報、及びデータをホスト通信装置300に送信する。
【0034】
携帯通信端末200は、アンテナ201と、電力変換回路202と、蓄電池203と、電源ライン切り換え部204と、充電切り換え部205と、送受信制御回路206と、通信スイッチ207と、オート/マニュアルスイッチ208と、メモリ209と、表示部210と、コントローラ211とを備える。
【0035】
アンテナ201は、RFIDタグ100及びホスト通信装置300との間で、電波を送受信する。また、アンテナ201に誘起する誘導起電力は、内部回路212を動作させるため、及び蓄電池203を充電するために利用される。電力変換回路202は、アンテナ201に誘起する誘導起電力を整流し、定電圧回路などを介して直流電圧として出力する。この直流電圧は、後述するように、携帯通信端末200がタグモードで動作するときの電源電圧として、及び蓄電池203の充電用電源電圧として用いられる。
【0036】
蓄電池203は、携帯通信端末200がリーダ・ライタモードで動作するときの電源として使用され、また、携帯通信端末200がタグモードで動作するときの電源として用いられる場合もある。蓄電池203を充電するときは、電力変換回路202により誘導起電力から変換された直流電圧を用いる。なお、蓄電池203として、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池などの二次電池、又は電気二重層キャパシタなどの大容量コンデンサが用いられる。
【0037】
電源ライン切り換え部204は、コントローラ211からの切り換え信号S1によって制御されて、電力変換回路202からの直流電圧と、蓄電池203からの直流電圧とのいずれか一方を選択して電源供給ライン213を介して内部回路212に供給する。また、充電切り換え部205は、コントローラ211からの切り換え信号S2によって制御されて、電力変換回路202からの直流電圧を蓄電池203に出力するか否かを切り換えることにより充電するか否かを切り換える。
【0038】
送受信制御回路206は、コントローラ211からコマンド、ID情報、及びデータを受け取り、アンテナ201を介してRFIDタグ100、及びホスト通信装置300に送信する。また、送受信制御回路206は、アンテナ201を介してRFIDタグ100、及びホスト通信装置300からコマンド、ID情報、及びデータを受信し、コントローラに出力する。
【0039】
通信スイッチ207は、携帯通信端末200の手動の押し釦式電源スイッチである。通信スイッチ207は、コントローラ211と接続されており、通信スイッチ207を押すと、携帯通信端末200の電源がオンして、携帯通信端末200はリーダ・ライタモードで動作し、RFIDタグ100又はホスト通信装置300と通信する。通信が終了すると、携帯通信端末200の電源は一定時間後に自動的にオフとなる。また、通信終了後、電源が自動的にオフする前に再度通信スイッチ207を押すと、通信を再開する。
【0040】
オート/マニュアルスイッチ208は、携帯通信端末200の動作を切り換えるためのスイッチであり、コントローラ211に接続されている。オート/マニュアルスイッチ208の切り換えにより、オート又はマニュアルの信号がコントローラ211に出力される。オート又はマニュアルのいずれが選択されているのかによって、携帯通信端末200が使用する電源を判定するときの動作、及び蓄電池203を充電するときの動作が変化する。動作の詳細については、以下の本実施形態の動作において説明する。
【0041】
メモリ209は、コントローラ211に接続されており、RFIDタグ100又はホスト通信装置との通信に使用するコマンド、携帯通信端末200のID情報、及びRFIDタグ100から取得したデータを保存し、保存しているコマンド、ID情報、及びデータをコントローラ211に出力する。また、メモリ209は、蓄電池203の電圧が低下した場合に備え、不揮発性メモリで構成される。
【0042】
表示部210は、コントローラ211に接続され、RFIDシステムのユーザに必要な情報を表示する。例えば、携帯通信端末200の電源のオンオフ状態、蓄電池203の残量、蓄電池203が充電中か否か、RFIDタグもしくはホスト通信装置と通信中か否か、及び通信可能なRFIDタグの有無などを表示する。なお、表示部は、LED及び液晶ディスプレイなどで構成される。
【0043】
コントローラ211は携帯通信端末200の各回路を制御し、残量検知機能と、充電制御機能と、電源ライン制御機能とを含む。残量検知機能において、コントローラ211は蓄電池203の電圧及び電流を測定して、蓄電池203の残量を検知する。また、充電制御機能において、コントローラ211は、携帯通信端末200の動作モードと、残量検知機能から出力される蓄電池203の残量と、アンテナ201及び送受信制御回路206を介してホスト通信装置300から受信するコマンドと、オート/マニュアルスイッチ208から出力されるオート又はマニュアルの信号とに基づいて切り換え信号S2を出力して、充電切り換え部205を制御する。さらに、電源ライン制御機能において、コントローラ211は、携帯通信端末200の動作モードと、残量検知機能から出力される蓄電池203の残量と、アンテナ201及び送受信制御回路206を介してホスト通信装置300から受信するコマンドと、オート/マニュアルスイッチ208から出力されるオート又はマニュアルの信号とに基づいて切り換え信号S1を出力して電源ライン切り換え部204を制御する。なお、コントローラ211は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで構成される。
【0044】
次に、ホスト通信装置300について説明する。ホスト通信装置300は、携帯通信端末200と通信し、携帯通信端末200のメモリ209に保存されているID情報及びデータを取得して、保管・管理する。ホスト通信装置300は、動作モードとして、リーダ・ライタとして動作するリーダ・ライタモードと、RFIDタグとして動作するタグモードとを含む。いずれのモードで動作するのかは、ホスト通信装置300の起動方法によって決まる。ホスト通信装置300が備える装着受け部(図示せず。)に携帯通信端末200が装着されたときは、ホスト通信装置300はリーダ・ライタモードで動作する。このとき、ホスト通信装置300は、携帯通信端末200に対して起動コマンドを送信して、通信スイッチ207の操作に関わらず携帯通信端末200をタグモードで動作させて通信するとともに、蓄電池203の残量が少ない場合は、アンテナ201を介して充電するための電力を供給する。一方、ホスト通信装置300が携帯通信端末200からの起動コマンドを受信することによって起動されたときは、ホスト通信装置300はタグモードで動作し、携帯通信端末200から送信されるID情報及びデータを受信して、保管・管理する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯通信端末200及びホスト通信装置300はともに、動作モードとして、リーダ・ライタとして機能するリーダ・ライタモードと、RFIDタグとして機能するタグモードを有する。
【0046】
携帯通信端末200とRFIDタグ100との通信処理.
図2は、図1の携帯通信端末200によるRFIDタグ100との通信処理を示すフローチャートである。各ステップの左に付したSn(nは整数である。)は、以下の説明で用いるためのステップ番号である。
【0047】
まず、ステップS21において、携帯通信端末200の通信スイッチ207が押されたか否かを調べる。押されていないときは、押されるまでステップ21を繰り返す。ステップS21で通信スイッチ207が押されると、携帯通信端末200の電源がオンし、携帯通信端末200がリーダ・ライタモードで動作する。なお、このときの携帯通信端末200の電源電圧は、蓄電池203から供給される。その後、ステップS22において、携帯通信端末200は、RFIDタグ100との間でコマンド及びデータを送受信する。携帯通信端末200とRFIDタグ100との通信が終了すると、ステップS23に移動して、待機状態時間の計測を開始し、待機状態となる。このとき、携帯通信端末200の電源はオンしており、アンテナ201からは電波が出力されて、RFIDタグ100からのデータを受信できる状態である。また、待機状態では、通信スイッチが押されたか否か(S24)、及び所定の待機時間が経過したか否か(S25)を判定している。通信スイッチ207が押されると、携帯通信端末200はステップS22に戻り通信を再開する。通信スイッチ207が押されない場合は、待機状態を継続する。所定の待機時間が経過した場合は、携帯通信端末200の電源をオフしてRFIDタグ100との通信を終了する。一方、所定の待機時間が経過していない場合は、待機状態を継続する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯通信端末200がRFIDタグ100と通信する場合、携帯通信端末200は、リーダ・ライタモードで動作し、電源として蓄電池203を使用する。なお、ホスト通信装置300をタグモードで動作させて通信する場合の動作も図2と同様である。通信中に携帯通信端末200が受信するID情報が、RFIDタグ100とホスト通信装置300とでは異なるため、携帯通信端末200は、通信相手がRFIDタグ100又はホスト通信装置300のいずれであるのかを判断することができる。
【0049】
携帯通信端末200が使用する電源の判定処理.
図3は、図1の携帯通信端末200による使用電源の判定処理を示すフローチャートであり、図4は、図1のホスト通信装置300による使用電源の判定処理を示すフローチャートである。
【0050】
まず、図1及び図3を参照して、携帯通信端末200の動作を説明する。携帯通信端末200は、リーダ・ライタモード又はタグモードのいずれかで起動しているものとする。ステップS31で携帯通信端末200の動作モードを確認する。リーダ・ライタモードで動作している場合は、ステップS34に移動して、蓄電池203を使用すると決定する。このとき、コントローラ211は、切り換え信号S1によって電源ライン切り換え部204を制御する。電源ライン切り換え部204は、電源供給ライン213に蓄電池203を接続し、蓄電池203から内部回路212へ電圧を供給する。一方、タグモードで動作している場合、携帯通信端末200はホスト通信装置300に装着されているため、携帯通信端末200とホスト通信装置300との距離が近く、電力変換回路202は、アンテナ201の誘導起電力から携帯通信端末200の回路を動作させるために十分な直流電圧を発生させることができる。この場合、ステップS32に移動し、コントローラ211に入力されているオート/マニュアルスイッチの信号を確認する。
【0051】
オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合、ステップS33に移動し、コントローラ211は、残量検知機能を用いて蓄電池203の残量を検知し、携帯通信端末200が備える所定の基準値と比較する。残量が所定の基準値以上であれば、ステップS34に移動し、蓄電池203を使用すると決定する。以降の動作は、上述したものと同様である。一方、残量が所定の基準値未満であれば、ステップS35に移動し、誘導起電力から変換された直流電圧を使用すると決定する。このとき、コントローラ211は、切り換え信号S1によって電源ライン切り換え部204を制御する。電源ライン切り換え部204は、電源供給ライン213に電力変換回路202を接続し、内部回路212へ電圧を供給する。
【0052】
ステップS32に戻り、オート/マニュアルスイッチの信号が、マニュアルの場合について説明する。この場合、ステップS36に移動し、コントローラ211は、残量検知機能を用いて蓄電池203の残量を検知し、送受信制御回路206を用いて残量をホスト通信装置300に送信する。その後、ステップS37において、ホスト通信装置300から送信される電源指定コマンドを待機する。ホスト通信装置300が送信する電源指定コマンドには、携帯通信端末200が使用すべき電源が指定されている。携帯通信端末200が電源指定コマンドを受信すると、ステップS38に移動し、電源指定コマンドに指定されている電源を判定する。蓄電池203が指定されている場合、ステップS34に移動し、蓄電池203を使用すると決定する。以降の動作は、上述したものと同様である。一方、誘導起電力が指定されている場合、ステップS35に移動し、誘導起電力から変換された直流電圧を使用すると決定する。以降の動作は、上述したものと同様である。
【0053】
次に、図1及び図4を参照して、ホスト通信装置300の動作を説明する。ホスト通信装置300は、リーダ・ライタモードで動作している。ホスト通信装置300は、ステップS41において、携帯通信端末200から送信される蓄電池203の残量を待機する。図3のステップS36で携帯通信端末200が送信した蓄電池203の残量を受信すると、ステップS42に移動し、残量を評価する。ステップS42では、送信された残量をホスト通信装置300内の基準値と比較することで、携帯通信端末200が蓄電池203を使用するか、誘導起電力から変換された直流電圧を使用するかを判定する。蓄電池203の残量が基準値以上であれば、ステップS43に移動し、蓄電池203を使用すると決定して、蓄電池203を指定した電源指定コマンドを携帯通信端末200に送信する。一方、蓄電池203の残量が基準値未満であれば、ステップS44に移動し、誘導起電力から変換された直流電圧を使用すると決定して、誘導起電力を指定した電源指定コマンドを携帯通信端末200に送信する。
【0054】
なお、ステップS42で用いる基準値を、本RFIDシステムを使用するユーザが設定できるようにしておくことで、携帯通信端末200をリーダ・ライタモードで動作させるときの蓄電池203の残量を設定することができる。つまり、基準値を満充電に近い値に設定すると、携帯通信端末200をタグモードで動作させるときには蓄電池203がほとんど使われないため、蓄電池203の残量を多くすることができる。その結果、携帯通信端末200をリーダ・ライタモードで動作させるときには、蓄電池203に満充電に近い容量が残っており、携帯通信端末200を長時間使用できる。なお、ステップS42で用いる基準値は、後述する図9のステップS614で用いる基準値と同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯通信端末200がリーダ・ライタモードで動作している場合は、蓄電池203から電力供給を行ない、タグモードで動作している場合は、オート/マニュアルスイッチ208の信号及び蓄電池203の残量に応じて、蓄電池203を用いるか誘導起電力から変換された直流電圧を用いるかを決定する。オート/マニュアルスイッチ208の信号がオートの場合は、コントローラ207は、携帯通信端末200が備えた基準値を蓄電池203の残量と比較して、残量が基準値以上の場合には蓄電池203を使用すると決定し、切り換え信号S1を電源ライン切り換え部204に出力する。一方、オート/マニュアルスイッチ208の信号がマニュアルの場合は、コントローラ207は、蓄電池203の残量をホスト通信装置300に送信し、ホスト通信装置300は、受信した残量をユーザがホスト通信装置300に設定した基準値と比較して、残量が基準値以上の場合は蓄電池203を使用すると決定し、電源指定コマンドを携帯通信端末200に送信し、携帯通信端末200は、電源指定コマンドに応じて切り換え信号S1を電源ライン切り換え部204に出力する。これにより、携帯通信端末200が誘導起電力から変換された直流電圧を使用するときの蓄電池203の残量をユーザが設定でき、蓄電池203の残量をホスト通信装置300で管理することができる。
【0056】
携帯通信端末200の蓄電池203に対する充電処理.
図5〜7は、図1の携帯通信端末200(タグモード)による充電処理を示すフローチャートであり、図8及び9は、図1のホスト通信装置300(リーダ・ライタモード)による充電処理を示すフローチャートである。
【0057】
まず、図1、及び図5〜7を参照して、携帯通信端末200の動作を説明する。ステップS501で携帯通信端末200がホスト通信装置300の装着受け部に装着される。ステップS502において、携帯通信端末200は、ホスト通信装置300から送信される起動コマンドを待機する。携帯通信端末200が起動コマンドを受信すると、電源がオンになりタグモードで起動する(ステップS503)。その後、携帯通信端末200は、ホスト通信装置300から送信されるコマンドを待機する。ホスト通信装置300から送信されるコマンドには、少なくともID取得コマンド、データ取得コマンド、充電コマンドの3種類がある。これら3種類のコマンドを受信したかどうかは、それぞれステップS504、ステップS506、及びステップS508で判定する。携帯通信端末200がID取得コマンドを受信すると、ステップS505に移動し、自分自身のID情報をメモリ209から読み出して、ホスト通信装置300に送信する。また、データ取得コマンドを受信すると、ステップS507に移動し、必要なデータをメモリ209から読み出して、ホスト通信装置300に送信する。また、充電コマンドを受信すると、充電動作を開始する。
【0058】
充電動作ではまず、ステップS509において、コントローラ211が残量検知機能を用いて蓄電池203の残量を検知する。次にステップS510で、オート/マニュアルスイッチの信号を調べる。オートであれば、ステップS511に移動し、ステップS509で調べた残量を携帯通信端末200が備える所定の基準値と比較し、基準値以上であれば、充電を行なわずにステップS504へ戻り、ホスト通信装置300から送信されるコマンドを待機する。一方、残量が所定の基準値未満であれば、ステップS515に移動して、コントローラ211が切り換え信号S2によって充電切り換え部205を制御し、充電を開始する。上述したように、蓄電池203は、誘導起電力から変換された直流電圧で充電される。充電が開始されると、ステップS516において表示部210が充電中であることを表示する。充電中では、蓄電池203の充電が完了したか否かを判定する(S517)とともに、ホスト通信装置300と通信するために、ホスト通信装置300から送信されるコマンドを判定する(ステップS518、ステップS520、及びステップS522)。ID取得コマンド又はデータ取得コマンドを受信したときは、上述した動作と同様に動作する。ただし、充電コマンドを受信したときは、すでに充電中であるので何も行わない。ステップS517における充電完了の判定は、コントローラ211が残量検知機能を用いて実行する。充電が完了した場合は、ステップS523に移動して、コントローラ211が切り換え信号S2によって充電切り換え部205を制御し、充電を停止する。さらにステップS524において、充電中の表示を消灯し、ステップS504へ戻ってホスト通信装置300から送信されるコマンドを待機する。
【0059】
ステップS510に戻り、オート/マニュアルスイッチの信号がマニュアルの場合について説明する。この場合は、ステップS512に移動し、ステップS509で調べた蓄電池203の残量をホスト通信装置300に送信する。その後、携帯通信端末200は、ステップS513で充電可否コマンドを待機する。ホスト通信装置300が送信する充電可否コマンドには、携帯通信端末が充電を実行すべき(充電可)か、充電を実行すべきでない(充電否)かが指定されている。携帯通信端末200が充電可否コマンドを受信すると、ステップS514に移動し、充電の可否を判定する。判定結果が充電否の場合は、充電せずにステップS504へ戻り、ホスト通信装置300から送信されてくる次のコマンドを待機する。一方、充電可の場合は、ステップS515に移動して充電を開始する。ステップS515以降の動作については、既に説明しているので省略する。
【0060】
次に、図1、図8及び図9を参照して、ホスト通信装置300の動作を説明する。ステップS601で携帯通信端末200がホスト通信装置300の装着受け部に装着されることを待機する。携帯通信端末200が装着されたことを検出すると、ホスト通信装置300は、ステップS602に移動し、携帯通信端末200に起動コマンドを送信する。このとき、ホスト通信装置300の動作モードは、リーダ・ライタモードである。
【0061】
ホスト通信装置300は、ステップS602で携帯通信端末200を起動させた後、携帯通信端末200に対して、コマンドを送信する。このときに送信するコマンドには、(1)携帯通信端末200のID情報を取得するためのID取得コマンド、(2)携帯通信端末200のメモリ209に保存されているデータを取得するためのデータ取得コマンド、及び(3)蓄電池203を充電するための充電コマンドの少なくとも3つがある。携帯通信端末200に対して送信するコマンドは、ステップS603、ステップS607、及びステップS611で決定する。
【0062】
ホスト通信装置300が、ID取得コマンドを送信する場合、ステップS604に移動してID取得コマンドを送信し、その後、ステップS605で携帯通信端末200から送信されるID情報を待機する。ID情報を受信すると、ステップS606で携帯通信端末200から送られてきたID情報に基づいて所定の処理を実行し、ステップS603に戻って次のコマンドを送信する。また、データ取得コマンドを送信する場合、ステップS608に移動してデータ取得コマンドを送信し、その後、ステップS609で携帯通信端末200から送信されるデータを待機する。データを受信すると、ステップS610で携帯通信端末200から送られてきたデータに対して所定の処理を実行し、ステップS603に戻る。
【0063】
ホスト通信装置300が、充電コマンドを送信する場合、ステップS612に移動して充電コマンドを送信し、その後、ステップS613で携帯通信端末200から蓄電池203の残量を受信したか否かを調べる。残量を受信していない場合は、次の通信を行なうためにステップS603に戻る。残量を受信した場合は、ステップS614に移動し、ホスト通信装置300内の基準値を受信した残量と比較する。残量が基準値以上である場合は、ステップS615に移動し、充電しないと決定し、充電可否コマンド(充電否)を携帯通信端末200に送信する。一方、残量が基準値未満である場合は、充電すると決定し、充電可否コマンド(充電可)を携帯通信端末200に送信する。充電可否コマンドを送信した後は、ステップS603に戻り、次のコマンド送信に備える。なお、ホスト通信装置300は、携帯通信端末200の充電が完了するまで、充電のための電波の送信を継続する。
【0064】
なお、ステップS614において、ホスト通信装置300が用いる基準値は、RFIDシステムのユーザが設定できる。その結果、蓄電池203の充電を開始する蓄電池203の残量をユーザが決めることができる。また、ステップS614で用いる基準値は、上述した図4のステップS42で用いる基準値と同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯通信端末200に内蔵された蓄電池203の充電は、携帯通信端末200がRFIDタグ100から取得したデータをホスト通信装置300に送信する際に、ホスト通信装置300からの充電コマンドに応じて行なわれる。その結果、専用の充電器が不要となり、しかも通常の動作であるホスト通信装置300との通信に付随して充電が行なわれるため、充電のし忘れがない。また、蓄電池203の充電は、携帯通信端末200の通信用のアンテナ201に誘起する誘導起電力から変換された直流電圧を用いるので、充電専用のアンテナが不要となり携帯通信端末200が小型化できる。
【0066】
さらに、オート/マニュアルスイッチ208の信号がオートの場合は、コントローラ207は、携帯通信端末200が備えた基準値を蓄電池203の残量と比較して、残量が基準値未満の場合には蓄電池203を充電する。一方、オート/マニュアルスイッチ208の信号がマニュアルの場合は、コントローラ207は、蓄電池203の残量をホスト通信装置300に送信し、ホスト通信装置300は、受信した残量をユーザがホスト通信装置300に設定した基準値と比較して、残量が基準値未満の場合は蓄電池203を充電すると決定し、充電可否コマンドを携帯通信端末200に送信し、携帯通信端末200は、充電可否コマンドに応じて蓄電池203を充電する。この結果、蓄電池203の充電を開始する蓄電池203の残量をユーザがホスト通信装置300に設定した基準値に基づいて決定することから、電池の種類や容量が変わっても適正な充電開始残量を設定できる。
【0067】
またさらに、蓄電池203の充電を開始すると、蓄電池が満充電になるまで充電を継続するので、携帯通信端末200をリーダ・ライタモードで動作させるときには、常に蓄電池203を満充電の状態で使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上詳述したように、本発明に係る携帯通信端末、ホスト通信装置、及びRFIDシステムによれば、携帯通信端末がリーダ・ライタモードで動作している場合は、蓄電池から電力供給を行ない、タグモードで動作している場合は、オート/マニュアルスイッチの信号及び蓄電池の残量に応じて、蓄電池を用いるか誘導起電力から変換された直流電圧を用いるかを決定する。オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合は、携帯通信端末が備える基準値を蓄電池の残量と比較して、残量が基準値以上の場合は蓄電池を使用する。一方、マニュアルの場合は、ユーザがホスト通信装置に設定した基準値を蓄電池の残量と比較して、残量が基準値以上の場合は蓄電池を使用する。これにより、携帯通信端末が誘導起電力から変換された直流電圧を使用するときの蓄電池の残量をユーザが設定でき、蓄電池の残量をホスト通信装置で管理することができる。
【0069】
また、携帯通信端末に内蔵された蓄電池の充電は、携帯通信端末がRFIDタグから取得したデータをホスト通信装置に送信する際に、ホスト通信装置からの指示で行なわれる。その結果、専用の充電器が不要となり、しかも通常の動作であるホスト通信装置との通信に付随して充電が行なわれるため、充電のし忘れがない。さらに、蓄電池の充電は、携帯通信端末の通信用のアンテナに誘起する誘導起電力から変換された直流電圧を用いるので、充電専用のアンテナが不要となり携帯通信端末が小型化できる。さらに、蓄電池の充電を開始する蓄電池の残量をユーザがホスト通信装置に設定した基準値に基づいて決定することから、電池の種類や容量が変わっても適正な充電開始残量を設定できる。さらに、蓄電池の充電を開始すると、蓄電池が満充電になるまで充電を継続するので、携帯通信端末をリーダ・ライタモードで動作させるときには、常に蓄電池を満充電の状態で使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100…RFIDタグ、
200…携帯通信端末、
201…アンテナ、
202…電力変換回路、
203…蓄電池、
204…電源ライン切り換え部、
205…充電切り換え部、
206…送受信制御回路、
207…通信スイッチ、
208…オート/マニュアルスイッチ、
209…メモリ、
210…表示部、
211…コントローラ、
212…内部回路、
213…電源供給ライン、
300…ホスト通信装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開平7−154288号公報。
【特許文献2】特開平11−345292号公報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯通信端末とホスト通信装置とを備えたRFIDシステムのための携帯通信端末において、
RFIDタグ及び前記ホスト通信装置との通信に使用するアンテナと、
蓄電池とを備え、
前記蓄電池は、前記ホスト通信装置から出力される電波によって、前記アンテナに誘起する誘導起電力によって満充電になるまで充電されることを特徴とする携帯通信端末。
【請求項2】
前記携帯通信端末は、
リーダ・ライタとして機能するリーダ・ライタモードと、
RFIDタグとして機能するタグモードとを備え、
前記RFIDタグと通信する場合は、リーダ・ライタモードで動作し、
前記ホスト通信装置からの起動コマンドに応答してタグモードで動作し、
前記ホスト通信装置を起動した場合は、リーダ・ライタモードで動作して前記ホスト通信装置に対して起動コマンドを送信することを特徴とする請求項1記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記携帯通信端末は、
前記リーダ・ライタモードで動作して、前記RFIDタグ又は前記ホスト通信装置と通信する場合は前記蓄電池を用い、
前記タグモードで動作して、前記ホスト通信装置と通信する場合は、所定の切り換え信号に応じて、前記蓄電池と前記アンテナに誘起する誘導起電力とのうちのいずれか一方を選択して用いることを特徴とする請求項1又は2記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記携帯通信端末は、
前記アンテナに誘起する誘導起電力を直流電圧に変換して出力する電力変換回路と、
前記誘導起電力と前記蓄電池とのうちのいずれか一方を選択する電源ライン切り換え手段と、
前記アンテナを用いたデータの送受信を制御する送受信制御回路と、
前記携帯通信端末の動作を切り換えるオート/マニュアルスイッチと、
前記携帯通信端末の動作を制御するコントローラとを備え、
前記オート/マニュアルスイッチは、オート又はマニュアルの信号をコントローラに出力し、
前記コントローラは、
前記蓄電池の残量を検知する残量検知機能と、
前記蓄電池を充電するか否かを決定して、前記蓄電池の充電を制御する充電制御機能と、
前記電源ライン切り換え部に前記切り換え信号を出力する電源ライン制御機能とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記切り換え信号は、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合は、前記蓄電池の残量が所定の基準値未満であれば前記誘導起電力を選択し、前記蓄電池の残量が前記所定の基準値以上であれば前記蓄電池を選択し、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がマニュアルの場合は、前記蓄電池の残量を前記ホスト通信装置に送信し、前記ホスト通信装置から受信する電源指定コマンドに応じて、前記誘導起電力と前記蓄電池とのうちのいずれか一方を選択することを特徴とする請求項4記載の携帯通信端末。
【請求項6】
前記携帯通信端末は、前記ホスト通信装置から送信された充電コマンドに応じて充電動作を開始することを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載の携帯通信端末。
【請求項7】
前記携帯通信端末は、前記充電コマンドに応答して前記残量検知機能を用いて前記蓄電池の残量を調べ、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がオートの場合は、前記蓄電池の残量が所定の基準値未満であれば充電を開始し、
前記オート/マニュアルスイッチの信号がマニュアルの場合は、前記蓄電池の残量を前記ホスト通信装置に送信し、前記ホスト通信装置から受信する充電可否コマンドに応じて充電を開始することを特徴とする請求項6記載の携帯通信端末。
【請求項8】
前記携帯通信端末は、前記蓄電池の充電中において、前記ホスト通信装置との間でコマンドを送受信することを特徴とする請求項6又は7記載の携帯通信端末。
【請求項9】
前記携帯通信端末は、前記蓄電池が充電中であることを表示する表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか1つに記載の携帯通信端末。
【請求項10】
前記蓄電池の満充電の検出は、前記残量検知機能によって行なうことを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載の携帯通信端末。
【請求項11】
前記携帯通信端末は、手動で操作して自身の電源をオンする通信スイッチを備え、
前記通信スイッチを操作することにより、電源がオンした場合は、前記携帯通信端末は前記リーダ・ライタモードで動作し、
前記携帯通信端末の電源がオフのときに、前記ホスト通信装置から起動されて電源がオンした場合は、前記携帯通信端末は前記タグモードで動作することを特徴とする請求項2記載の携帯通信端末。
【請求項12】
前記携帯通信端末は、前記携帯通信端末のID情報と、前記RFIDタグから取得したデータとを記憶する記憶手段を備え、
前記ホスト通信装置との通信時に、前記記憶手段に記憶された、前記ID情報、及び前記データを前記ホスト通信装置に送信することを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか1つに記載の携帯通信端末。
【請求項13】
前記記憶手段は不揮発性メモリであることを特徴とする請求項12記載の携帯通信端末。
【請求項14】
携帯通信端末とホスト通信装置とを備えたRFIDシステムのためのホスト通信装置において、
リーダ・ライタとして機能するリーダ・ライタモードと、
RFIDタグとして機能するタグモードとを備え、
前記携帯通信端末を起動した場合は、リーダ・ライタモードで動作し、
前記携帯通信端末からの起動コマンドに応答してタグモードで動作することを特徴とするホスト通信装置。
【請求項15】
前記ホスト通信装置は、
前記リーダ・ライタモードで動作しており、前記携帯通信端末から前記蓄電池の残量を受信したとき、
前記残量がユーザが設定可能な第1の基準値未満であれば、前記誘導起電力を指定する前記電源指定コマンドを前記携帯通信端末に送信し、
前記残量が前記第1の基準値以上であれば、前記蓄電池を指定する前記電源指定コマンドを前記携帯通信端末に送信することを特徴とする請求項14記載のホスト通信装置。
【請求項16】
前記ホスト通信装置は、
リーダ・ライタモードで動作しており、前記充電コマンドを前記携帯通信端末に送信した後、前記携帯通信端末から前記蓄電池の残量を受信したとき、
前記残量がユーザが設定可能な第2の基準値未満であれば、充電を実行すると指定した充電可否コマンドを前記携帯通信端末に送信し、
前記残量が前記第2の基準値以上であれば、充電を実行しないと指定した充電可否コマンドを前記携帯通信端末に送信することを特徴とする請求項14記載のホスト通信装置。
【請求項17】
前記ホスト通信装置は、前記携帯通信端末が装着される装着受け部を備え、
前記装着受け部に前記携帯通信端末が装着された場合は、前記携帯通信端末の電源をオンすることを特徴とする請求項14記載のホスト通信装置。
【請求項18】
請求項1乃至13のうちのいずれか1つに記載の携帯通信端末と、請求項14乃至17のうちのいずれか1つに記載のホスト通信装置とを備えたことを特徴とするRFIDシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−60169(P2011−60169A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211472(P2009−211472)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】