説明

携帯通信端末およびプログラム

【課題】電波中継器を確実に探索でき、しかも電池の消費を可及的抑制できる携帯端末を提供する。
【解決手段】携帯通信端末10は無線通信回路14を含み、無線通信回路14の位相検出部20で、マルチパスの各電波の位相差を検出する。コンピュータ12は位相差データを受け、閾値以上の位相差があるとき、携帯通信端末10がそのとき屋内に在ると推定または判断して、Wi‐Fi方式の近距離無線通信部40の探索部42に、電波中継器(アクセスポイント)44を探索する探索命令を与える。探索部42が探索に成功すると、コンピュータ12は、当該電波中継器に接続するために、近距離無線通信回路40に対して接続命令を与える。応じて、携帯通信端末10は近距離無線通信回路40を用いて有線LANにアクセスできる。携帯通信端末10が屋外に存在すると判断したとき、コンピュータ12は探索部42に探索停止命令を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯通信端末およびプログラムに関し、特にたとえば携帯電話機のような無線通信機能とたとえばWi‐Fi方式の近接無線通信機能を備える、携帯通信端末およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の携帯通信端末において、Wi‐Fi(商品名)のような近接無線通信機能を利用する場合、通常、アクセスポイント(Access Point: AP)と呼ばれる電波中継器を通して、有線LANにアクセスする。このような電波中継器は屋内のしかも限られた場所にしか設置されていない。したがって、近距離無線通信を実行しようとするユーザは、電波中継器を探す必要がある。最近ではそれがどこにあるかという情報を提供してくれるインタネットサービスもあるが、それでもなお、電波中継器を探す作業は面倒である。
【0003】
一方、近距離無線通信機能付の携帯通信端末では、近距離無線通信回路に電波中継器を自動的に探索して接続する機能が設けられているので、近接無線通信機能を利用しようとするユーザは、常に、この近距離無線通信回路をオン状態にしておく。そうすれば、その近距離無線通信回路が自動的に電波中継器(アクセスポイント)を探索してくれるので、ユーザ自身が手動的に電波中継器を探さなくてもよい。しかしながら、近距離無線通信回路は屋外でもオンしておくため、電池の消費が大きい。
【0004】
近距離無線通信回路を使って電波中継器を探索し、しかも電池の消費を最小にするには、屋外に出たらユーザが近距離無線通信回路をオフし、屋内に入ったらオンするようにすればよいが、そのようなオン/オフ操作は面倒である。
【0005】
特許文献1には、カメラを使って、屋外か屋内かを推定する方法が開示されているので、この背景技術を使って自動的に屋外か屋内かを判断することによって、近距離無線通信回路を自動的にオン/オフすることも考えられる。そうすれば、ユーザは、必要なときだけ近距離無線通信回路をオンすることによって電波中継器を自動的に探索できるので、電池の無駄な消費を抑制する一方で面倒なオン/オフの手動操作から解放される。
【特許文献1】特開2001‐103002号公報[H04B 7/26 H01Q 3/24]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の背景技術では、たとえばポケットやかばんの中に入れた状態では通常カメラは作動しないので、そのような状態にあるときには、屋外か屋内かを適切に推定することはできず、上で考えた自動的な近距離無線通信回路のオン/オフ切り換えが確実かつ適正に実行されるとは限らない。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、携帯通信端末およびそれのプログラムを提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、ユーザ操作なしに確実かつ適正に電波中継器を探索できる、携帯通信端末およびそれのプログラムを提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、ユーザ操作なしにしかも電池を無駄に消費することなく電波中継器を探索できる、携帯通信端末およびそれのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために記述する実施形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0011】
第1の発明は、電波中継器を経由して第1電波による近距離無線通信を行なう近距離無線通信部と、第1電波とは異なる第2電波を受信する受信部とを有する携帯通信端末であって、受信部で受信した第2電波の状態に基づいて、携帯通信端末(10)が屋内に在るか屋外に在るかを判断する判断部、および判断部が携帯通信端末は屋内に在ると判断したとき、電波中継器を探索する探索部を備える、携帯通信端末である。
【0012】
第1の発明では、携帯通信端末(10:実施例において相当する部分を例示する参照符号。以下、同様。)において、たとえばWi‐Fi方式の近距離無線通信部(40)は、たとえばアクセスポイントと呼ばれることもある電波中継器(44)を経由して近距離無線通信用の第1電波による近距離無線通信を行なう。受信部(14:50)は、携帯通信端末(10)がたとえば携帯電話機のときには、携帯電話用の第2電波を受信する。判断部(12,S1:S21)は、たとえばコンピュータで構成され、受信部で受信した第2電波の状態、たとえば所定以上の強度で受信できているかどうか、または所定以上のマルチパスがあるかどうか、などに基づいて、携帯通信端末(10)が屋内に在るか屋外に在るかを判断する。たとえばWi‐Fi方式の近距離無線通信部(40)に含まれる探索部(42)は、判断部(12,S1:S21)が携帯通信端末は屋内に在ると判断したときたとえばコンピュータ(12)からの探索命令によって能動化され、電波中継器(アクセスポイント)を自動的に探索する。
【0013】
第1の発明によれば、携帯通信端末が屋内にあるときには探索部が自動的に電波中継器を探索するので、ユーザが近距離無線通信部をオン/オフする面倒な操作を省略できる。しかも、第2電波が携帯電話用の電波である場合、携帯電話機は待ち受け状態でも常にそのような第2電波を受信しているので、携帯通信端末が屋内にあるか屋外に在るかを判断するために特別な受信部を用いる必要がなく、電池の消費を抑制することができる。ただし、携帯通信端末が携帯電話機であっても第2電波が携帯電話用の電波でないとき、つまり第2電波が携帯通信端末が常時受信している電波でないときには、別の受信部を用いる必要があるので、電池の消費の抑制という効果はあまり期待できないかも知れないが、電波(第2電波)の状態に基づいて屋内か屋外かを判断するので、たとえばカメラの画像で屋内屋外を判断する場合に比べて、携帯通信端末をかばんやポケットに入れた状態でも、屋内か屋外かを判断でき、確実に電波中継器を探索することができ、そのためのユーザの面倒な操作を省略できるという効果は期待できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に従属し、判断部が携帯通信端末は屋外に在ると判断したとき、探索部による探索を停止する停止部をさらに備える携帯通信端末である。
【0015】
第2の発明では、停止部(12,S2)は、判断部が携帯通信端末は屋外に在ると判断したとき、探索部(42)による探索を停止させる。
【0016】
第2の発明によれば、携帯通信端末が屋外に在るときには探索部による電波中継器の探索動作を強制的に停止させるので、探索部が屋外で、存在するはずもない電波中継器を探索してしまうということがなく、無駄な探索による電池の消費を確実に抑制することができる。
【0017】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、第2電波のマルチパスを検出するマルチパス検出部をさらに備え、判断部はマルチパス検出部が所定以上のマルチパスを検出したとき、携帯通信端末は屋内に在ると判断する、携帯通信端末である。
【0018】
第2の発明では、マルチパス検出部(20)が第2電波のマルチパスを検出する。ここで、マルチパス(multipath)は、多重波伝送路と訳されるとおり、送信された電波が受信されるまでに複数の経路をたどる現象をいい、たとえば、直線で最短距離を結ぶ直接波のほかに反射波や透過波、回折波などによって発生するものである。そして、判断部(12,S1)はマルチパス検出部が所定以上のマルチパスを検出したとき、携帯通信端末は屋内に在ると判断する。
【0019】
第3の発明によれば、通常屋内で発生し易いマルチパスを検出するので、携帯通信端末が屋内か屋外のどちらにあるかを確実に判断することができる。また、第2電波が携帯通信端末が常時受信している電波であるときには、上述のように、電池の消費を抑制することができる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明に従属し、マルチパス検出部は、基準信号との位相差に基づいて所定以上のマルチパスの有無を検出する、携帯通信端末である。
【0021】
第4の発明では、マルチパス検出部(20)は、基準信号との位相差に基づいて所定以上のマルチパスの有無を検出するので、簡単にマルチパスの発生を検知できる。
【0022】
第5の発明は、第1または第2の発明に従属し、受信部はGPS信号を受信するGPS信号受信部を含み、判断部はGPS信号の電波強度が所定以下になったとき、携帯通信端末は屋内に在ると判断する、携帯通信端末である。
【0023】
第5の発明では、GPS信号受信部(50)はGPS信号を受信し、GPS信号の受信強度が所定以下になったとき、判断部(12,S21)は携帯通信端末が屋内に在ると判断する。
【0024】
第5の発明によれば、GPS電波の状態に基づいて屋内か屋外かを判断するので、たとえばカメラの画像で屋内屋外を判断する場合に比べて、確実に屋内か屋外かを判断でき、電波中継器を探索するためのユーザの面倒な操作を省略できるという効果は期待できる。
【0025】
第6の発明は、電波中継器を経由して第1電波による近距離無線通信を行なう近距離無線通信部と、第1電波とは異なる第2電波を受信する受信部とを有し、さらに電波中継器を探索する探索部を備える携帯通信端末のコンピュータによって実行されるプログラムであって、プログラムはコンピュータに、受信部で受信した第2電波の状態に基づいて、携帯通信端末が屋内に在るか屋外に在るかを判断する判断ステップ、および判断ステップで携帯通信端末は屋内に在ると判断したとき、探索部に探索指示を与えるステップを実行させる、携帯通信端末のプログラムである。
【0026】
第6の発明でも第1の発明と同様の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、ユーザの面倒な操作なしに、確実にかつ適正に電波中継器を探索することができる。また、第2電波がその携帯通信端末が常時受信する電波であるある場合、携帯通信端末が屋内にあるか屋外に在るかを判断するために特別な受信部を用いる必要がなく、電池の消費を抑制することができる。
【0028】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1はこの発明の一実施例である携帯通信端末の電気的な構成を示す図解図である。
【図2】図2は図1に示すRAMのメモリマップの一例を示す図解図である。
【図3】図3は図1実施例の動作の一例を示すフロー図である。
【図4】図4はこの発明の他の実施例である携帯通信端末の電気的な構成を示す図解図である。
【図5】図5は図4実施例の動作の一例を示すフロー図である。
【図6】図6は図3実施例の変形例の動作の一例を示すフロー図である。
【図7】図7は図6実施例においてユーザに電波中継器の探索中止の許可を求めるメッセージの一例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照して、この実施例の携帯通信端末10は、一例として、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)方式の携帯電話機であり、プロセサないしCPUなどと呼ばれるコンピュータ12を含む。コンピュータ12は、無線通信回路14およびアンテナ16を通して携帯電話用の電波(第2電波)を受信し、または送信させる。無線通信回路14は、この実施例では携帯通信端末10がCDMA方式の携帯電話機であるので、レイク受信部18を含み、レイク受信部18は位相検出部20を含む。
【0031】
なお、図1のブロック図は、この実施例の説明に必要な部分を主として描き、一般的に携帯通信端末に含まれてはいるが実施例の説明に重要ではない部分は図示を省略していることを予め指摘しておく。
【0032】
上で説明したように、マルチパスは、送信された電波が受信されるまでに複数の経路をたどる現象をいい、直接波の他に反射波や透過波、回折波などが発生するために起こるものである。反射波は高層ビルなどの障害物で反射されながら進むので、直接波よりもやや遅れて受信される。障害物で電波が反射されずに、そのまま素通りしてくるものを透過波と呼ぶ。障害物の角を通過する電波が屈折によって方向を変えたものが回折波である。このようなマルチパスは直接波に対しての障害となる電波である。
【0033】
これに対して、実施例のCDMA方式の携帯電話機では、このマルチパスを積極的に活用する「レイク受信」という技術を採用している。
【0034】
レイク(Rake)とは、「熊手」のことで、レイク受信とは「電波をかき集めて受信する」ことを指す。つまり、マルチパスとして直接波や反射波が複数方向から届いた場合、同じ周波数を持つ干渉波として本来の受信に悪影響を及ぼしてしまう。そこで,マルチパスの電波を個々に受信し、位相のずれなどを修正した上で重ね合わせて利用する技術がレイク受信である。レイク受信で重ね合わせた信号は、直接波だけを取り込んだ信号よりも大きくなるため、S/N比が上がることで雑音にも強くなる。
【0035】
このようなレイク受信を実現するのがレイク受信部18であり、レイク受信部18では上述のように位相のずれを修正する必要があるので、レイク受信部18は、位相検出部20を含む。位相検出部20は、一例として、マルチパスの各電波による信号の位相を基準信号(パイロット信号)の位相と個々に比較することによって、各信号の位相ずれの程度(位相差)を検出し、各信号の位相差を示すデータを得る。この位相差データがレイク受信部18における位相補正に利用される。
【0036】
なお、携帯通信端末10が携帯電話機である場合、無線通信回路14では、上述のレイク受信部18が、アンテナ16から受信した携帯電話用電波を処理して受信信号を出力する。無線通信回路14はこの受信信号から音声信号を再生または復調し、この音声信号がコンピュータ12に入力される。音声信号はコンピュータ12で音声データに変換されて出力され、D/A変換器22で出力音声信号に変換され、スピーカ24から音声として出力される。
【0037】
他方、マイク26からの音声信号は、A/D変換器28によって音声データに変換されてコンピュータ12に入力され、さらにコンピュータ12から無線通信回路14に出力される。無線通信回路14ではその音声データを含む送信信号を生成して、アンテナ16から送信する。送信信号は、基地局(図示せず)を経由して通話相手の携帯電話機に携帯電話信号として受信される。
【0038】
なお、携帯通信端末10が携帯電話機以外の、たとえばPDAやタブレットコンピュータのような携帯通信端末である場合、無線通信回路14は、たとえばメールなどの送受信に利用され得る。つまり、この発明の携帯通信端末10は携帯電話機に限らず、任意の携帯通信端末であってよい。
【0039】
なお、位相検出部20で検出した各マルチパス信号の位相差データは、コンピュータ12にも与えられる。
【0040】
キー入力装置30は操作部として機能し、通話キー、終話キーおよびテンキーなどが含まれる。また、使用者が操作したキーの情報(キーデータ)はコンピュータ12に入力される。
【0041】
表示ドライバ32は、コンピュータ12の指示の下、当該表示ドライバ32に接続されたディスプレイ34の表示を制御する。また、表示ドライバ32は表示する画像データを一時的に記憶するビデオメモリ(図示せず)を含む。
【0042】
フラッシュメモリ36はたとえばプログラム(後述)を予め記憶しておいたり、あるいは外部メモリとして利用されるものであり、RAM38は、一時記憶用に用いられる。
【0043】
携帯通信端末10の近距離無線通信回路40はWi‐Fi方式の近距離無線通信を実行する。Wi‐Fi(Wireless Fidelity)は、IEEE 802.11シリーズ(IEEE 802.11a/IEEE 802.11b)という通信規格を利用した無線機器間の相互接続性等について、所定の認証機関によって認証されたことを示す名称である。つまり、Wi-Fiは近距離無線通信の一方式であり、この実施例の携帯通信端末10では、Wi‐Fi方式の近距離無線通信回路40を用いる。
【0044】
Wi‐Fi方式の近距離無線通信では、アクセスポイントと呼ばれる電波中継器44を経由して有線LANにアクセスするので、近接無線通信回路40には、このような電波中継器44を自動的に探索(サーチ)する探索部42が設けられる。そして、探索部42が電波中継器44を見つけたら、近距離無線通信回路40は、その電波中継器44との接続処理を自動的に実行する。
【0045】
図2は、RAM38のメモリマップを示す図である。RAM38には、プログラム記憶領域46およびデータ記憶領域48が形成される。プログラム記憶領域46には、OSや携帯通信端末10を動作させるための基本的なプログラム(図示せず)の他に、この実施例のための接続確立プログラム461が記憶される。この接続確立プログラム461は後述の図3で示す近距離無線通信回路40を接続(無線だが、便宜上「接続」という語を使用する。)すべき電波中継器44を探索部42で探索して近距離無線通信回路40を探索に成功した電波中継器44に接続するためのプログラムである。また、データ記憶領域48は上述の各プログラムの実行のためのワークメモリとして機能するが、実施例では、タイマ領域481が設定される。
【0046】
なお、プログラムやデータは、フラッシュメモリ36から一度に全部または必要に応じて部分的かつ順次的に読み出され、RAM38に記憶されてからコンピュータ12によって処理される。
【0047】
図3は図1実施例の動作を示すフロー図であり、この処理ルーチンは、前述したように、コンピュータ12が位相検出部20から位相差データを受信する都度、開始され実行される。
【0048】
コンピュータ12が位相検出部20から位相差データを受信したとき、最初のステップS1において、コンピュータ12は、そのとき受信した位相差データの中に、所定の閾値以上の位相差データが含まれているかどうか判断する。このステップS1で“NO”を判断するということは、基準信号に対して閾値以上遅れて受信した電波がなかったということであり、つまり、所定以上のマルチパスが発生していないことを意味する。所定以上のマルチパスの発生がないということは、このとき携帯通信端末10は屋外に在る可能性が極めて高く、したがって、アクセスポイントのような電波中継器44を探索する意味がないので、コンピュータ12は次のステップS2において、近距離無線通信回路40に含まれる探索部42に、探索の停止を指示する探索停止命令を与える。そのため、探索部42が屋外で電波中継器を探索してしまうという無駄を排除でき、したがって、無駄な探索に伴う電池の無駄な消費を回避できるので、結局電池の消費を抑制することができる。
【0049】
ステップS2で探索部42による探索を停止した後、図3の処理は終了する。
【0050】
ただし、ステップS2は、ユーザが近距離無線通信回路40をオンさせる操作をしていた場合には実行しないで、ステップS1で“NO”が判断されたらそのまま図3の処理は終了するようにしてもよい。しかしながら、仮にユーザが近距離無線通信回路40をオンしていたとしてもステップS2を実行するようにしてもよい。その場合には、ユーザがうっかり近距離無線通信回路40をオンしたままのときでも、電池の無駄な消費を確実に停止できる。
【0051】
ステップS1で“YES”を判断したとき、すなわち所定以上のマルチパスが発生していると判断したとき、コンピュータ12は次のステップS3に進む。所定以上のマルチパスの発生があるということは、このとき携帯通信端末10は屋内に在る可能性が極めて高く、したがって、コンピュータ12はステップS3で、電波中継器(アクセスポイント)44を探索するために、近距離無線通信回路40の探索部42に、探索を指示する探索命令を与える。それとともに、コンピュータ12はステップS5において、タイマ481(図2)を起動し、探索命令を出してからの時間を計測する。
【0052】
コンピュータ12から探索命令が出されると、探索部42は、たとえば近距離無線通信回路40で使用する周波数を少しずつ変化させるなどして、その携帯通信端末10で使用可能な電波中継器44を探索する。
【0053】
探索部42が電波中継器44を探索すると、コンピュータ12に対して探索成功通知がなされる。そこで、ステップS7では、コンピュータ12は、探索部42からその探索成功通知が入力されたかどうか判断する。
【0054】
ステップS7で“YES”が判断されたとき、コンピュータ12は近距離無線通信回路40に対して、当該探索した電波中継器44に対する接続動作を実行するようにという接続指示(命令)を与える。応じて、近距離無線通信回路40は探索した周波数の電波(第1電波)を用いて電波中継器44にアクセスする。
【0055】
なお、電波中継器の探索やその後の接続動作は現在実用されている携帯通信端末で一般的に行われている方法と変わるところがないので、それらの詳細な説明はここでは省略する。
【0056】
先のステップS7で“NO”が判断されたとき、ステップS11で、コンピュータ12は、ステップS5で起動したタイマ481がタイムアップしたかどうか判断する。このタイマ481は一例として15秒(ただし、この数値に限定されない。)を計測できるように設定されている。したがって、探索部42が15秒経っても電波中継器44を探索できなかったときには、ステップS11で“NO”が判断され、その場合には、先に説明したステップS2に進む。したがって、15秒経過する前に電波中継器44を探索できなかったときには、電池の無駄な消費を抑制するために、ステップS2で、コンピュータ12は探索部42に探索停止命令を出力する。
【0057】
このように、図1実施例では、携帯通信端末10が屋内に存在すると推定したとき、近距離無線通信回路40の探索部42によってアクセスポイントのような電波中継器44を自動的に探索するので、ユーザが手動的に探索を指示するという煩瑣はない。しかも、たとえばカメラ映像で屋内か屋外かを判別する場合に比べて、携帯通信端末10がかばんやポケットに入れられていても確実に判別することができる。屋外か屋内かを判断するためにその携帯通信端末10が通常受信する第2電波の状態、たとえば所定以上のマルチパスが発生している状態などを検出するようにすれば、屋内屋外判別用に別の電波受信部を用いる必要がないので、携帯通信端末10の通常の待ち受け状態以上の余計な電力は要らない。したがって、電池の消費が抑制できる。
【0058】
しかしながら、図4および図5に示す別の実施例では、第2電波としては携帯通信端末10が通常受信する電波とは違う電波を利用する。そのために、図4に示す実施例では、GPS信号受信回路50が携帯通信端末10に設けられている。GPS信号受信回路50は従来携帯通信端末に設けられているものと同様である。
【0059】
図4の実施例では、コンピュータ12は、図5のステップS21で示すようにGPS受信回路50でのGPS信号の受信強度が所定の閾値以下かどうかを判断する。つまり、コンピュータ12は、GPS信号の信号強度が閾値以下のとき、携帯通信端末10は屋内に存在すると推定する。GPS信号はよく知られているように、携帯通信端末の屋外での地図上の位置を検知するために利用するものであり、通常屋内では受信できない。そこで、この実施例では、GPS信号の受信強度が閾値以下になったかどうかで、携帯通信端末10が屋外にあるのか屋内にあるのかを判断することにしている。
【0060】
図4実施例の動作を示す図5は、ステップS21で上述の動作を実行することを除いて、図3で説明した第1の実施例の動作と同様であるので、ここでは重複する説明は省略する。
【0061】
また、図4の実施例は、無線通信回路14がCDMA方式のものであるかどうかに拘わらず、適用可能である。
【0062】
また、図3の実施例のステップS1とステップS3の間に、図6に示すようにステップS31を設け、図7に示すような問合せメッセージ51を携帯端末のディスプレイ34に表示するようにしてもよい。すなわち、図6の実施例では、コンピュータ12は、ステップS1でマルチパスが生じていると判断した後、ステップS31で、ディスプレイ34に、たとえば、図7のように、「屋外にいると判断しましたので、Wi‐Fiのサーチを停止しますがよろしいでしょうか?」という中止許可を求めるメッセージ51を表示させる。ユーザが「はい」のボタン53を選択すれば、コンピュータ12はステップS33で“YES”を判断し、ユーザが「いいえ」のボタン55を選択すれば、コンピュータ12はステップS33で“NO”を判断する。ステップS33で“YES”を判断したとき、つまり、探索中止をユーザが許可したとき、コンピュータ12はステップS2へ進み、電波中継器の探索を停止させる。一方、ステップS33で“NO”を判断したとき、つまり、探索中止をユーザが許可しなかったとき、コンピュータ12はステップS3へ進み、先に説明したように電波中継器の探索を行う。
【0063】
図6の実施例によれば、実際は屋内であったり、電波中継器が近くにあることをユーザが確認した場合に、ユーザの意思により電波中継器の探索を中止することができる。それによって電池の無駄な消費を一層抑制することができる。
【0064】
図6の実施例は図5の実施例にも同様に適用可能であり、この場合、図5のステップS21の後に図6のステップS31およびS33を挿入すればよい。
【0065】
また、図3、図5および図6の実施例のステップS2では、電波中継器の探索を停止させているが、これに限定されず、たとえば、電波中継器の探索を行う周期を長くしてもよい。
【0066】
なお、図1に示す実施例ではマルチパスを検出するために、CDMA方式の無線通信回路14を採用したが、同様にマルチパス処理を実行するLTE(Long Term Evolution)方式、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交波周波数分割多重)方式などの無線通信回路が採用されてもよい。
【0067】
さらに、上述の実施例ではいずれも、無線通信回路14や近距離無線通信回路40がコンピュータ12とは別のハードウェアチップであるように示したが、これらの回路14および/または40はコンピュータ12のチップに内蔵されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 …携帯電話機
12 …コンピュータ
14 …無線通信回路
18 …レイク受信部
20 …位相検出部
40 …近距離無線通信回路
42 …探索部
44 …電波中継器
50 …GPS信号受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波中継器を経由して第1電波による近距離無線通信を行なう近距離無線通信部と、前記第1電波とは異なる第2電波を受信する受信部とを有する携帯通信端末であって、
前記受信部で受信した前記第2電波の状態に基づいて、前記携帯通信端末が屋内に在るか屋外に在るかを判断する判断部、および
前記判断部が前記携帯通信端末は屋内に在ると判断したとき、前記電波中継器を探索する探索部を備える、携帯通信端末。
【請求項2】
前記判断部が前記携帯通信端末は屋外に在ると判断したとき、前記探索部による探索を停止する停止部をさらに備える、請求項1記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記第2電波のマルチパスを検出するマルチパス検出部をさらに備え、
前記判断部は前記マルチパス検出部が所定以上のマルチパスを検出したとき、前記携帯通信端末は屋内に在ると判断する、請求項1または2記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記マルチパス検出部は、基準信号との位相差に基づいて前記所定以上のマルチパスの有無を検出する、請求項3記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記受信部はGPS信号を受信するGPS信号受信部を含み、
前記判断部は前記GPS信号の受信強度が所定以下になったとき、前記携帯通信端末は屋内に在ると判断する、請求項1または2記載の携帯通信端末。
【請求項6】
電波中継器を経由して第1電波による近距離無線通信を行なう近距離無線通信部と、前記第1電波とは異なる第2電波を受信する受信部とを有し、さらに前記電波中継器を探索する探索部を備える携帯通信端末のコンピュータによって実行されるプログラムであって、前記プログラムは前記コンピュータに
前記受信部で受信した前記第2電波の状態に基づいて、前記携帯通信端末が屋内に在るか屋外に在るかを判断する判断ステップ、および
前記判断ステップで前記携帯通信端末は屋内に在ると判断したとき、前記探索部に探索指示を与えるステップを実行させる、携帯通信端末のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227580(P2012−227580A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90719(P2011−90719)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】