説明

携帯電話端末用試験装置及び方法

【課題】携帯電話プロトコルとアプリケーションの競合試験や不具合現象の再現を容易に行う。
【解決手段】基地局シミュレータ2は、携帯電話端末からの上りデータをプロトコルメッセージとアプリ用ユーザデータとに識別する。アプリケーションサーバ部3は、アプリ用ユーザデータからシナリオ制御対象のアプリケーションデータを識別する。基地局シミュレータ制御部4は、受信したプロトコルメッセージとアプリ用ユーザデータが所望のものかシナリオ4aに基づいて判定し、判定結果によりシナリオ4aに従った下りデータを基地局シミュレータ2とアプリケーションサーバ部3に送信する。アプリケーションサーバ部3からの下りデータと基地局シミュレータ制御部4からの下りデータとは基地局シミュレータ2で多重されて携帯電話端末に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末のプロトコル開発や機能試験に用いられ、例えばチップセット、携帯電話端末の符号・復号処理の機能試験、プロトコルシーケンス試験(位置登録・発信・着信・移動機/網側切断・ハンドオーバなど)、音声通話・データ通信(回線交換・パケット)・移動機対向などの各種アプリケーションおよびミドルウェア(OSとアプリケーションの中間に位置するソフトウェア)の試験を行うことができる携帯電話端末用試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話端末用に開発されたプロトコルの試験を行う場合には、例えば図8に示すような試験装置51が用いられていた。図8の試験装置51では、基地局シミュレータ制御部52が基地局シミュレータ53を制御し、携帯電話端末プロトコルを記述した試験シナリオを実行することにより、実網に代わって試験対象となる携帯電話端末Wとの間でデータ通信し、プロトコルの試験を行っている。
【0003】
ところで、この種の試験装置51では、試験シナリオに基づく携帯電話端末Wとの間の制御(Cプレーン)データの送受信によりプロトコルの試験を行っていたが、高速データ傾向にあるユーザ(Uプレーン)データの送受信によるアプリケーションの試験を特に行っていなかった。しかし、携帯電話端末を開発する場合には、上述したプロトコル開発とは別にアプリケーションの開発も行われているため、このアプリケーションの試験も行う必要があった。また、最終的にはプロトコルとアプリケーションを組み合わせた試験を行うことが望まれていた。
【0004】
そこで、図8の試験装置51の基地局シミュレータ53には、アプリケーションの試験も行えるように、例えばイーサネット(登録商標)を介してアプリケーションサーバ54を接続するためのポート53aが用意されていた。これにより、ユーザは、基地局シミュレータ53にアプリケーションサーバ54を接続し、基地局シミュレータ53を介してアプリケーションサーバ54と携帯電話端末Wとの間でデータ通信し、アプリケーションの試験を行っていた。
【0005】
ところが、図8の試験装置51では、アプリケーションサーバ54がユーザ側に手に委ねられていた。このため、アプリケーションレイヤと携帯電話端末プロトコルレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現を容易に行うことができなかった。
【0006】
しかも、携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと、携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオとが別々の試験プラットフォームで記述されていた。このため、障害が発生した場合、その原因が基地局シミュレータ53側にあるのか、アプリケーションサーバ54側にあるのか、その区別がしにくいという問題があった。
【0007】
ところで、上述した携帯電話端末Wに相当するネットワークアシスト型GPS受信機の検査を行う場合、ネットワークを介してサーバに接続する必要があった。その課題を解決するため、擬似の基地局であるシグナリングテスタと、擬似のGPSサーバである模擬衛星信号発生装置とを備え、GPS受信機の検査を行う検査装置の発明が下記特許文献1に開示されている。
【0008】
さらに説明すると、この特許文献1に開示される検査装置61では、図9に示すように、模擬搬送波発生器62a、PNコード発生器62b、拡散変調器62c、アッテネータ62d等を有する模擬衛星信号発生装置62から実際の衛星信号を模擬した模擬衛星信号を発生させ、この模擬衛星信号を送信アンテナ63から輻射している。そして、模擬サーバを構成するパーソナルコンピュータ64或いはそれと連携するシグナリングテスタ65から検査対象品Wに模擬測位指示を与える。この模擬測位指示は測位指示と同じく衛星番号情報を含んでいる。そして、検査対象品Wは、模擬測位指示に従い模擬衛星信号を受信及び捕捉している。また、パーソナルコンピュータ64では、検査対象品Wの動作内容又は結果に関する情報を収集している。
【0009】
また、下記特許文献2には、GSM方式での音声通信とパケットデータ通信との同時通信をスムーズな接続手順で行うDTM通信装置が開示されている。この特許文献2に開示されるDTM通信装置は、図10に示す構成により、音声通話中であるか否かの状態を判別し、パケットデータ通信の要求があったときに音声通信中であった場合にはこれに対して無線リソース割当て処理を行うものである。
【特許文献1】特開2003−255039号公報
【特許文献2】特開2007ー208722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示される検査装置61では、パーソナルコンピュータ64とシグナリングテスタ65で携帯電話プロトコルとGPSサーバコマンドの連携動作ができないために、携帯電話プロトコルとアプリケーション(GPS)の競合試験、不具合現象の再現ができないという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に開示されるDTM通信装置では、携帯電話端末プロトコルレイヤとアプリケーションレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現を行うことができないという問題があった。何れにしても、上述した特許文献1や特許文献2に開示される技術を含む従来の構成では、携帯電話端末プロトコルレイヤとアプリケーションレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現を行うことができなかった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、携帯電話端末プロトコルレイヤとアプリケーションレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現を容易に行うことができる携帯電話端末用試験装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された携帯電話端末用試験装置は、携帯電話端末を試験対象Wとし、シナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルに従って前記携帯電話端末との間でデータ通信する基地局シミュレータ2と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部3と、前記基地局シミュレータ及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部4とを備えた携帯電話端末用試験装置1であって、
前記基地局シミュレータ2は、前記携帯電話端末からの上りデータを受信し、当該受信した上りデータを携帯電話端末プロトコルメッセージとアプリケーション用ユーザデータとに識別する機能と、前記識別された携帯電話端末プロトコルメッセージを前記基地局シミュレータ制御部に送信するとともに前記識別されたアプリケーション用ユーザデータを前記アプリケーションサーバ部に送信する機能と、前記アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りデータとを多重して前記携帯電話端末に送信する機能とを有し、
前記アプリケーションサーバ部3は、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部3cを備え、前記アプリケーション用ユーザデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別する機能と、前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信する機能と、前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して前記基地局シミュレータに送信する機能とを有し、
前記基地局シミュレータ制御部4は、前記基地局シミュレータからの前記携帯電話端末プロトコルメッセージと、前記アプリケーションサーバ部からの前記アプリケーションデータとが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りデータとして前記基地局シミュレータと前記アプリケーションサーバ部に送信する機能を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載された携帯電話端末用試験装置は、携帯電話端末で使用される携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験対象Wとし、シナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行う基地局シミュレータ擬似部5と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部3と、前記基地局シミュレータ擬似部及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部4とを備えた携帯電話端末用試験装置1であって、
前記アプリケーションサーバ部3は、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部3cを備え、前記シナリオに記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行っている状態で、前記携帯電話端末アプリケーションソフトウェアによる上りアプリケーションデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別する機能と、前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信する機能と、前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して送信する機能とを有し、
前記基地局シミュレータ制御部は、前記アプリケーションサーバ部からの前記アプリケーションデータが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りアプリケーションデータとして前記アプリケーションサーバ部に送信する機能を有することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載された携帯電話端末用試験方法は、携帯電話端末を試験対象Wとし、シナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルに従って前記携帯電話端末との間でデータ通信する基地局シミュレータ2と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部3と、前記基地局シミュレータ及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部4とを備えて前記携帯電話端末を試験する携帯電話端末用試験方法であって、
前記携帯電話端末からの上りデータを受信し、当該受信した上りデータを携帯電話端末プロトコルメッセージとアプリケーション用ユーザデータとに識別するステップと、
前記識別された携帯電話端末プロトコルメッセージを前記基地局シミュレータ制御部に送信するとともに前記識別されたアプリケーション用ユーザデータを前記アプリケーションサーバ部に送信するステップと、
前記アプリケーション用ユーザデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータを、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部3cに送信するステップと、
前記アプリケーションデータが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りアプリケーションデータとして前記アプリケーションサーバ部に送信するステップと、
前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して送信するステップと、
前記アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りデータとを多重して前記携帯電話端末に送信するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載された携帯電話端末用試験方法は、携帯電話端末で使用される携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験対象Wとし、シナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行う基地局シミュレータ擬似部5と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部3と、前記基地局シミュレータ擬似部及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部4とを備えて前記携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験する携帯電話端末用試験方法であって、
前記シナリオに記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行っている状態で、前記携帯電話端末アプリケーションソフトウェアによる上りアプリケーションデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータを、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部3cに送信するステップと、
前記アプリケーションサーバ部からの前記アプリケーションデータが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りアプリケーションデータとして前記アプリケーションサーバ部に送信するステップと、
前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して送信するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオとを同一の試験プラットフォームで記述することが可能になる。その結果、これまで実現困難であった、アプリケーションレイヤと携帯電話端末プロトコルレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現が容易に可能になる。
【0018】
また、基地局シミュレータの使用を前提としたシナリオ(携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオの両方を記憶したシナリオ)を、携帯電話端末アプリケーションソフトウェア単体の試験に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る携帯電話端末用試験装置(以下、試験装置と略称する)の第1実施形態のブロック構成図、図2は図1の汎用的な構成を示すブロック図、図3は図1における基地局シミュレータとアプリケーションサーバ部の具体的な階層構造を示す図、図4は本発明に係る試験装置の第2実施形態のブロック構成図、図5は図4の汎用的な構成を示すブロック図、図6は図4における基地局シミュレータとアプリケーションサーバ部の具体的な階層構造を示す図、図7は本発明に係る試験装置の第3実施形態のブロック構成図である。
【0020】
本発明に係る試験装置は、携帯電話端末のプロトコル開発や機能試験に用いられ、チップセット、携帯電話端末の符号・復号処理の機能試験、プロトコルシーケンス試験(位置登録・発信・着信・移動機/網側切断・ハンドオーバなど)、音声通話・データ通信(回線交換・パケット)・移動機対向などの各種アプリケーション試験を行うものである。
【0021】
そして、本発明に係る試験装置では、以下に説明する第1〜3実施形態の構成により、携帯電話端末プロトコルレイヤとアプリケーションレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現を容易に実現している。
【0022】
まず、本発明に係る試験装置の第1実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態の試験装置1(1A)は、携帯電話端末を試験対象Wとし、基地局シミュレータ2、アプリケーションサーバ部3、基地局シミュレータ制御部4を備えて概略構成される。
【0024】
基地局シミュレータ2は、後述するシナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルメッセージやアプリケーションデータに従ったデータ通信を行うシグナリングテスタであり、図1に示すように、上りデータ受信部2a、データ識別部2b、下りデータ送信部2cを備えている。
【0025】
上りデータ受信部2aは、試験対象Wである携帯電話端末からの上りデータを受信し、この受信した上りデータをデータ識別部2bに送出している。
【0026】
データ識別部2bは、上りデータ受信部2aが受信した携帯電話端末の上りデータを携帯電話端末プロトコルメッセージとアプリケーション用ユーザデータとに識別している。そして、識別した携帯電話端末プロトコルメッセージを基地局シミュレータ制御部4に送信している。また、識別したアプリケーション用ユーザデータをアプリケーションサーバ部3に送信している。
【0027】
下りデータ送信部2cは、基地局シミュレータ制御部4から受信した携帯電話端末プロトコルメッセージと、アプリケーションサーバ部3から受信した下りアプリケーションデータとを多重し、この多重化したデータを試験対象Wである携帯電話端末に送信している。
【0028】
ここで、基地局シミュレータ2は、各種アプリケーションおよびミドルウェアといったソフトウェアの試験を可能とするため、図2に示すように、レイヤ1とレイヤ2の階層構造からなる。ここでは、GSM+SUPLに特化した具体的な構成として、図3に示すように、基地局シミュレータ2がPHY、RLC/MAC、LLC、SNDCPの階層構造からなり、これらの階層構造によって上りデータ受信部2aと下りデータ送信部2cの機能を実現している。また、図3の階層構造では、LLCがデータ識別部2bの機能を実現している。
【0029】
PHY(Physical)は、規格:3GPP TS45.001で定義される。PHYは、伝送路上のデータ表現形式とインタフェース形状の規定をする物理層(OSI参照モデルの最下位層)を制御する物理層制御ブロックとして機能している。PHYでは、試験対象Wである携帯電話端末と無線周波数信号によりパケットデータ通信を行い、パケットデータ及び通信制御メッセージを階層構造の上位層へ出力している。
【0030】
RLC/MAC(Radio Link Control/Media Access Control)は、規格:3GPP TS44.060で定義される。RLC/MACは、例えば相手まで確実に効率良くデータを届けるためのデータ分割、結合、再送制御、相手までデータを届けるための各通信チャネルの変換等、無線に関わるリンク制御を行う無線リンク/媒体アクセス制御ブロックとして機能している。
【0031】
そして、PHYとRLC/MACとの間では、GSM/GPRSシステムのユーザ(Uプレーン)データ、制御(Cプレーン)データの送受信を行っている。
【0032】
LLC(Logical Link Control)は、パケットデータ送受信時のパケット通信路を確立するためのリンク制御を行う論理リンク制御ブロックとして機能するもので、規格:3GPP TS44.064で定義される。また、LLCでは、LLCレイヤのヘッド部を解析することで、GSM/GPRSシステムのCプレーン(携帯電話端末プロトコルメッセージ)とUプレーン(アプリケーション用ユーザデータ)を識別している。そして、LLCは、識別したUプレーンをSNDCPに送信し、識別したCプレーンを基地局シミュレータ制御部4に送信している。
【0033】
SNDCP(Subnetwork Dependent Convergence Protocol )は、パケットデータ通信に係るプロトコルの整合を基地局シミュレータ2とネットワークとの間で制御するネットワーク統合プロトコル制御ブロックとして機能するもので、規格:3GPP TS44.065で定義される。SNDCPでは、LLCからのUプレーンをアプリケーションサーバ部3に送信している。また、SNDCPでは、アプリケーションサーバ部3からのUプレーンをLLCに送信している。
【0034】
アプリケーションサーバ部3は、後述するシナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコル上で動作するアプリケーションクライアントのサーバとして動作するもので、パーソナルコンピュータ等の端末装置で構成され、図1に示すように、上りアプリケーションデータ受信部3a、データ識別部3b、制御対象外アプリケーションサーバ部3c、下りアプリケーションデータ送信部3dを備えている。
【0035】
上りアプリケーションデータ受信部3aは、基地局シミュレータ2からのアプリケーション用ユーザデータ(Uプレーン)を受信し、受信したアプリケーション用ユーザデータをデータ識別部3bに送出している。
【0036】
データ識別部3bは、上りアプリケーションデータ受信部3aが受信したアプリケーション用ユーザデータ(Uプレーン)が後述するシナリオ4aの制御対象となるアプリケーションデータであるか否かを識別している。そして、シナリオ制御対象と識別したアプリケーション用ユーザデータを基地局シミュレータ制御部4に送信している。また、シナリオ制御対象外と識別したアプリケーション用ユーザデータを制御対象外アプリケーションサーバ部3cに送信している。
【0037】
制御対象外アプリケーションサーバ部3cは、データ識別部3bからのシナリオ制御対象外のアプリケーション用ユーザデータにより試験対象Wとなる携帯電話端末で動作するサーバとして自律動作している。
【0038】
下りアプリケーションデータ送信部3dは、基地局シミュレータ制御部4から受信した下りアプリケーションデータを制御対象外アプリケーションサーバ部3cから受信したアプリケーションデータと多重し、この多重化したアプリケーションデータを基地局シミュレータ2に送信している。
【0039】
ここで、アプリケーションサーバ部3は、各種アプリケーションおよびミドルウェアといったソフトウェアの試験を可能とするため、図2に示すように、ネットワーク/トランスポートレイヤ、プレゼンテーションレイヤの階層構造からなる。ここでは、GSM+SUPLに特化した具体的な構成として、図3に示すように、アプリケーションサーバ部3がTCP/IP、TLSの階層構造からなり、これらの階層構造によって上りアプリケーションデータ受信部3aと下りアプリケーションデータ送信部3dの機能を実現している。また、TCP/IPがデータ識別部3bの機能を実現している。
【0040】
TCP/IP(Transmission Control Protocol /Internet Protocol )は、規格:IETF RFC791,RFC793で定義される。TCP/IPでは、パケットデータのコネクションを確立しており、アプリケーション用ユーザデータのTCPのポート番号から後述するシナリオ4aの制御対象となるアプリケーションデータであるか否かの識別を行っている。
【0041】
TLS(Transport Layer Security)は、規格:IETF RFC2246で定義される。TLSでは、TCP/IPで確立したコネクションを暗号化している。また、TLSでは、ユーザの認証も行うことができる。
【0042】
基地局シミュレータ制御部4は、図1に示すように、シナリオ4aとシナリオ制御部4bを備えており、シナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルメッセージやアプリケーションデータに従ったデータ通信を行うべく基地局シミュレータ2とアプリケーションサーバ部3を制御している。
【0043】
シナリオ4aには、携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと、携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオとが同一の試験プラットフォームで記述されている。さらに説明すると、このシナリオ4aには、基地局シミュレータ2が携帯電話端末との間で3GPP GSM/GPRS規格で規定される手順に従ってデータ通信を行うための各種条件(制御対象となるプロトコルメッセージやアプリケーションデータなど)が記述されている。
【0044】
なお、シナリオ4aは、L3(Layer 3)を含んでおり、例えばメッセージの設定関係、試験対象Wである携帯電話端末に出力する周波数と信号の関係等、基地局シミュレータ2と携帯電話端末との間でやり取りされる様々な通信手順を定義している。
【0045】
シナリオ制御部4bは、シナリオ4aを解析し、解析結果の手順に従って基地局シミュレータ2とアプリケーションサーバ部3を制御している。シナリオ制御部4bは、基地局シミュレータ2から受信した携帯電話端末プロトコルメッセージやアプリケーションサーバ部3から受信したアプリケーション用ユーザデータが所望のものであるか否かをシナリオ4aに基づいて判定し、その判定結果に応じた送信データを基地局シミュレータ2やアプリケーションサーバ部3に送信している。すなわち、判定結果に応じた送信データとして、下り携帯電話端末プロトコルメッセージは基地局シミュレータ2に送信され、下りアプリケーションデータはアプリケーションサーバ部3に送信される。
【0046】
また、シナリオ制御部4bは、上述した送受信機能を有して各種アプリケーションおよびミドルウェアといったソフトウェアの試験を可能とするため、図2に示すように、レイヤ3制御部4baとアプリケーション制御部4bbを備えている。ここでは、GSM+SUPLに特化した具体的な構成として、図3に示すように、シナリオ制御部4bがGSM/GPRS制御部4baとSUPL制御部4bbを備えている。
【0047】
GSM(Global Systems for Mobile communications)は、FDD−TDMA方式で実現されている第2世代携帯電話(2G)規格であり、規格:3GPP TS44.018,TS24.008で定義される。
【0048】
なお、図3に示すように、試験対象Wである携帯電話端末に対し、GPS衛星を模擬する外部のGPSシミュレータ7から模擬測位指示(衛星番号情報を含む)が与えられるようになっている。そして、試験対象Wである携帯電話端末は、模擬測位指示に含まれる衛星番号情報に従って模擬衛星信号を受信および捕捉している。
【0049】
また、GPRS(General Packet Radio Service)は、規格:3GPP TS44.018,TS24.008で定義され、SUPL(Secure User Plane Location)は、規格:Secure User Plane Location Architecture Approved Version 1.0-15 Jun 2007で定義される。
【0050】
GSM/GPRS制御部4baは、GSM/GPRSシステムのCプレーンの送受信制御を行うもので、基地局シミュレータ2で識別された上り携帯電話端末プロトコルメッセージを受信している。また、GSM/GPRS制御部4baは、シナリオ4aに記述された下り携帯電話端末プロトコルメッセージを基地局シミュレータ2に送信している。
【0051】
SUPL制御部4bbは、SUPLデータの送受信制御を行うもので、アプリケーションサーバ部3で識別された上りアプリケーションデータを受信している。また、SUPL制御部4bbは、シナリオ4aに記述された下りアプリケーションデータをアプリケーションサーバ部3に送信している。
【0052】
なお、基地局シミュレータ2から受信した携帯電話端末プロトコルメッセージやアプリケーションサーバ部3から受信したアプリケーション用ユーザデータが所望のものであるか否かを判定し、その判定結果に応じた送信データを基地局シミュレータ2やアプリケーションサーバ部3に送信する機能をシナリオ4aに直接持たせることもできる。
【0053】
そして、上記構成による第1実施形態の試験装置1Aでは、基地局シミュレータ2のシナリオ4aが開始されると、試験対象Wである携帯電話端末からの上りデータを基地局シミュレータ2が受信する。
【0054】
基地局シミュレータ2は、受信した上りデータを携帯電話端末プロトコルメッセージとアプリケーション用ユーザデータとに識別する。そして、識別した携帯電話端末プロトコルメッセージを基地局シミュレータ制御部4に送信する。また、識別したアプリケーション用ユーザデータをアプリケーションサーバ部3に送信する。
【0055】
アプリケーションサーバ部3は、アプリケーション用ユーザデータがシナリオ制御対象のアプリケーションデータであるか否かを識別する。そして、シナリオ制御対象と識別したアプリケーション用ユーザデータを基地局シミュレータ制御部4に送信する。また、シナリオ制御対象外と識別したアプリケーション用ユーザデータを制御対象外アプリケーションサーバ部3cに送信する。
【0056】
制御対象外アプリケーションサーバ部3cは、シナリオ制御対象外と識別されたアプリケーション用ユーザデータにより試験対象Wとなる携帯電話端末で動作するサーバとして自律動作する。
【0057】
また、基地局シミュレータ制御部4は、アプリケーションサーバ部3からのシナリオ制御対象のアプリケーション用ユーザデータに対するアプリケーションデータをアプリケーションサーバ部3に送信する。そして、アプリケーションサーバ部3は、制御対象外アプリケーションサーバ部3cからのアプリケーションデータと基地局シミュレータ制御部4からのアプリケーションデータとを多重し、この多重化されたアプリケーションデータを携帯電話端末に送信する。以上の動作を繰り返すことにより、シナリオ4aに基づく携帯電話端末の各種試験が行われる。
【0058】
次に、上記構成による試験装置1の具体的な動作の一例として、試験装置1を使用した携帯電話端末のGSM/GPRS,SUPL動作確認試験について説明する。
【0059】
まず、基地局シミュレータ2のシナリオをスタートさせる。続いて、試験対象Wである携帯電話端末(3GPP GSM/GPRS、及び、OMA SUPL規格準拠)の電源を入れる。その後、携帯電話端末は、3GPP GSM/GPRS規格で規定されるGSM/GPRS位置登録(レジストレーション)手順に従い、基地局シミュレータ2に位置登録を行う。この時点では、試験対象Wである携帯電話端末とアプリケーションサーバ部3との間でのデータのやりとりはない。その際、基地局シミュレータ制御部4のシナリオ制御部4bでは、携帯電話端末が3GPP GSM/GPRS規格に準拠しているか否かを確認することができる。
【0060】
続いて、操作者は、試験対象Wである携帯電話端末側で位置情報を取得するように、携帯電話端末のユーザインタフェースを操作する。これにより、携帯電話端末は、3GPP GSM/GPRS規格に規定されるPDP CONTEXTの確立手順に従い、基地局シミュレータ2を介してアプリケーションサーバ部3とのデータセッションを確立する。その際、シナリオ制御部4b(シナリオ4a)では、携帯電話端末が3GPP GSM/GPRS規格に準拠しているか否かを確認することができる。
【0061】
続いて、携帯電話端末は、OMA SUPL規格に従った基地局シミュレータ制御部4の制御により、GPSアシストデータを基地局シミュレータ2から取得する。その際、シナリオ制御部4b(シナリオ4a)では、携帯電話端末がOMA SUPL規格に準拠しているか否かを確認することができる。
【0062】
さらに、携帯電話端末では、位置情報を取得後、一例として、操作者は、携帯電話端末をシナリオ4aの制御対象外であるWebサーバと接続し、位置情報と連動したWeb情報を取得することができる。その際、正しいWeb情報を取得できたかを携帯電話端末側で確認することができる。
【0063】
なお、試験対象Wである携帯電話端末は、例えばシナリオ4aに記述されたGPSシミュレータに接続して、位置情報を取得することもできる。
【0064】
このように、上記構成による第1実施形態の試験装置1Aでは、基地局シミュレータ制御部4が、同一の試験プラットフォームで記述されたシナリオ4aに従って基地局シミュレータ2とアプリケーションサーバ部3を制御し、試験対象Wである携帯電話端末との間でデータ通信を行うことにより、シナリオ4aの制御対象であるプロトコルとアプリケーションの試験を同一の試験プラットフォームで行うことができる。また、シナリオ4aの制御対象外のアプリケーションを動作させている状態であっても、これと並行してシナリオ制御対象のプロトコルとアプリケーションの試験を行うことができる。
【0065】
次に、本発明に係る試験装置の第2実施形態について図4〜図6を参照しながら説明する。なお、図4〜図6に示す第2実施形態の試験装置1(1B)において、上述した第1実施形態の試験装置1Aと同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略している。
【0066】
第2実施形態の試験装置1Bは、図4〜図6に示すように、携帯電話端末で利用可能な携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験対象Wとし、図1〜図3に示す第1実施形態の試験装置1Aにおける基地局シミュレータ2が基地局シミュレータ擬似部5に変更された構成であり、その他の構成については第1実施形態の試験装置1Aと同一である。
【0067】
この第2実施形態の試験装置1Bにおいて、試験対象Wである携帯電話端末アプリケーションソフトウェアは、例えばパーソナルコンピュータ等の端末装置8に予めインストールされている。
【0068】
また、基地局シミュレータ擬似部5は、パーソナルコンピュータ等の端末装置で構成され、上りデータ受信擬似部5a、下りデータ送信擬似部5bを備えており、シナリオ4aに記述された携帯電話端末プロトコルメッセージに従って擬似的に携帯電話端末とデータ通信を行っている。
【0069】
なお、図6に示すように、端末装置8において、試験対象Wである携帯電話端末アプリケーションソフトウェアに対し、GPS衛星を模擬するGPS信号模擬部8aから模擬測位指示(衛星番号情報を含む)が与えられるようになっている。そして、試験対象Wである携帯電話端末は、模擬測位指示に含まれる衛星番号情報に従って模擬衛星信号を受信および捕捉している。
【0070】
この第2実施形態の試験装置1Bでは、基地局シミュレータ擬似部5の上りデータ受信擬似部5a及び下りデータ送信擬似部5bにより擬似的に携帯電話端末とデータ通信を行っている状態で、アプリケーションサーバ部3の上りアプリケーションデータ受信部3aが、試験対象Wである携帯電話端末アプリケーションソフトウェアからの上りアプリケーションデータを受信する。そして、データ識別部3bは、上りアプリケーションデータがシナリオ制御対象のアプリケーションデータであるか否かを識別する。
【0071】
そして、シナリオ制御対象と識別した上りアプリケーションデータを基地局シミュレータ制御部4に送信する。また、シナリオ制御対象外と識別したアプリケーションデータを制御対象外アプリケーションサーバ部3cに送信する。
【0072】
そして、制御対象外アプリケーションサーバ部3cは、データ識別部3bからのシナリオ制御対象外のアプリケーションデータにより試験対象Wとなる携帯電話端末で動作するサーバとして自律動作する。
【0073】
また、基地局シミュレータ制御部4は、アプリケーションサーバ部3からのシナリオ制御対象のアプリケーションデータに対するアプリケーションデータをアプリケーションサーバ部3に送信する。そして、アプリケーションサーバ部3は、制御対象外アプリケーションサーバ部3cからのアプリケーションデータと基地局シミュレータ制御部4からのアプリケーションデータとを多重し、この多重化されたアプリケーションデータを携帯電話端末アプリケーションソフトウェアがインストールされた端末装置に送信する。
【0074】
このように、第2実施形態によれば、基地局シミュレータ2を基地局シミュレータ擬似部5に置き換える構成により、上述した第1実施形態と同様の効果に加え、基地局シミュレータの使用を前提としたシナリオ4a(携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオの両方を記憶したシナリオ)を、携帯電話端末アプリケーションソフトウェア単体の試験に使用することが可能となる。
【0075】
次に、本発明に係る試験装置の第3実施形態について図7を参照しながら説明する。なお、図7に示す第3実施形態の試験装置1(1C)において、上述した第1実施形態の試験装置1Aと同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略している。
【0076】
第3実施形態の試験装置1Cは、前述した第1実施形態の試験装置1Aを基本構成とし、アプリケーションサーバ部3に対し、制御対象外アプリケーションサーバ部3c(パーソナルコンピュータ等の端末装置)を別体に構成し、例えばイーサネット(登録商標)を介して制御対象外アプリケーションサーバ部3cが接続された構成である。また、基地局シミュレータ2とアプリケーションサーバ3との間に例えばハブ(HUB)やルータ等の中継装置6を介して別のアプリケーションサーバ部3(3B)がイーサネット(登録商標)を介して接続された構成である。
【0077】
第3実施形態の試験装置1Cにおける中継装置6は、試験対象Wである携帯電話端末から受信した基地局シミュレータ2からの上りデータがシナリオ4aの制御対象のアプリケーション用データか否かを識別する機能を有している。
【0078】
なお、特に図示はしないが、図5の構成において、携帯電話端末アプリケーションソフトウェアがインストールされた端末装置とアプリケーションサーバ部3との間に、例えばイーサネット(登録商標)を介して別のアプリケーションサーバ部を接続する構成としてもよい。また、アプリケーションサーバ部3に対し、制御対象外アプリケーションサーバ部3cを別体に構成し、例えばイーサネット(登録商標)を介して制御対象外アプリケーションサーバ部3cを接続する構成としてもよい。
【0079】
さらに、図示はしないが、アプリケーションサーバ部3としては、図2および図5におけるプレゼンテーションレイヤ、図3、図6および図7におけるTLSが無い構成も含むものである。
【0080】
そして、本発明によれば、携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオとを同一の試験プラットフォームで記述することが可能になる。その結果、これまで実現困難であった、アプリケーションレイヤと携帯電話端末プロトコルレイヤの通信における競合試験や不具合現象の再現が容易に可能になる。
【0081】
例えば、3GPPシグナリングプロトコルのプリミティブ送受信と、OMA SUPLによるアプリケーションレイヤメッセージシーケンスと一つのシナリオとして記述することができ、双方のメッセージ発行タイミングをユーザが自由に定義することができる。
【0082】
また、図4〜図6に示すように、基地局シミュレータ2を基地局シミュレータ擬似部5に置き換える構成により、基地局シミュレータの使用を前提としたシナリオ(携帯電話端末プロトコルの試験シナリオと携帯電話端末アプリケーションの試験シナリオの両方を記憶したシナリオ)を、携帯電話端末アプリケーションソフトウェア単体の試験に使用することができる。
【0083】
このように、本発明によれば、従来のGPS擬似信号発生装置、シグナリングテスタそれぞれのシナリオを同一プラットフォームで記述できるので、それぞれのタイミングを操作者が自在に定義することができる。これにより、携帯電話端末アプリケーションの汎用的な試験環境を提供することができる。
【0084】
しかも、携帯電話端末プロトコルとアプリケーションのシナリオを同一プラットフォームで記述できるので、携帯電話端末プロトコルシナリオと連動したアプリケーション制御が可能になる。
【0085】
また、アプリケーションのシナリオ制御により試験の再現性も十分に得ることができ、シナリオの制御対象外のアプリケーションが動作している状態であっても試験が可能になる。さらに、携帯電話端末のエミュレーション環境と直結して試験することも可能であり、シナリオも流用することができる。
【0086】
さらに、上述した実施形態では、GSM+SUPLに特化した構成として、携帯電話プロトコルの試験とともに各種アプリケーションの試験を行う場合を例にとって説明したが、同様の構成(図2や図5に示す汎用的な構成)により、ミドルウェア(OSとアプリケーションの中間に位置するソフトウェア)の試験を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る試験装置の第1実施形態のブロック構成図である。
【図2】図1の汎用的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1における基地局シミュレータとアプリケーションサーバ部の具体的な階層構造を示す図である。
【図4】本発明に係る試験装置の第2実施形態のブロック構成図である。
【図5】図4の汎用的な構成を示すブロック図である。
【図6】図4における基地局シミュレータとアプリケーションサーバ部の具体的な階層構造を示す図である。
【図7】本発明に係る試験装置の第3実施形態のブロック構成図である。
【図8】従来の試験装置の概略構成図である。
【図9】特許文献1に開示される検査装置のブロック図である。
【図10】特許文献2に開示されるDTM通信装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0088】
1(1A,1B,1C) 試験装置
2 基地局シミュレータ
2a 上りデータ受信部
2b データ識別部
2c 下りデータ送信部
3 アプリケーションサーバ部
3a 上りアプリケーションデータ受信部
3b データ識別部
3c 制御対象外アプリケーションサーバ部
3d 下りアプリケーションデータ送信部
4 基地局シミュレータ制御部
4a シナリオ
4b シナリオ制御部
4ba GSM/GPRS制御部
4bb SUPL制御部
5 基地局シミュレータ擬似部
5a 上りデータ受信擬似部
5b 下りデータ送信擬似部
6 中継装置
7 GPSシミュレータ
8 端末装置
8a GPS信号模擬部
W 試験対象(携帯電話端末、携帯電話端末アプリケーションソフトウェア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話端末を試験対象(W)とし、シナリオ(4a)に記述された携帯電話端末プロトコルに従って前記携帯電話端末との間でデータ通信する基地局シミュレータ(2)と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部(3)と、前記基地局シミュレータ及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部(4)とを備えた携帯電話端末用試験装置(1)であって、
前記基地局シミュレータ(2)は、前記携帯電話端末からの上りデータを受信し、当該受信した上りデータを携帯電話端末プロトコルメッセージとアプリケーション用ユーザデータとに識別する機能と、前記識別された携帯電話端末プロトコルメッセージを前記基地局シミュレータ制御部に送信するとともに前記識別されたアプリケーション用ユーザデータを前記アプリケーションサーバ部に送信する機能と、前記アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りデータとを多重して前記携帯電話端末に送信する機能とを有し、
前記アプリケーションサーバ部(3)は、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部(3c)を備え、前記アプリケーション用ユーザデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別する機能と、前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信する機能と、前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して前記基地局シミュレータに送信する機能とを有し、
前記基地局シミュレータ制御部(4)は、前記基地局シミュレータからの前記携帯電話端末プロトコルメッセージと、前記アプリケーションサーバ部からの前記アプリケーションデータとが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りデータとして前記基地局シミュレータと前記アプリケーションサーバ部に送信する機能を有することを特徴とする携帯電話端末用試験装置。
【請求項2】
携帯電話端末で使用される携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験対象(W)とし、シナリオ(4a)に記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行う基地局シミュレータ擬似部(5)と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部(3)と、前記基地局シミュレータ擬似部及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部(4)とを備えた携帯電話端末用試験装置(1)であって、
前記アプリケーションサーバ部(3)は、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部(3c)を備え、前記シナリオに記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行っている状態で、前記携帯電話端末アプリケーションソフトウェアによる上りアプリケーションデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別する機能と、前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信する機能と、前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して送信する機能とを有し、
前記基地局シミュレータ制御部は、前記アプリケーションサーバ部からの前記アプリケーションデータが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りアプリケーションデータとして前記アプリケーションサーバ部に送信する機能を有することを特徴とする携帯電話端末用試験装置。
【請求項3】
携帯電話端末を試験対象(W)とし、シナリオ(4a)に記述された携帯電話端末プロトコルに従って前記携帯電話端末との間でデータ通信する基地局シミュレータ(2)と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部(3)と、前記基地局シミュレータ及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部(4)とを備えて前記携帯電話端末を試験する携帯電話端末用試験方法であって、
前記携帯電話端末からの上りデータを受信し、当該受信した上りデータを携帯電話端末プロトコルメッセージとアプリケーション用ユーザデータとに識別するステップと、
前記識別された携帯電話端末プロトコルメッセージを前記基地局シミュレータ制御部に送信するとともに前記識別されたアプリケーション用ユーザデータを前記アプリケーションサーバ部に送信するステップと、
前記アプリケーション用ユーザデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータを、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部(3c)に送信するステップと、
前記アプリケーションデータが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りアプリケーションデータとして前記アプリケーションサーバ部に送信するステップと、
前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して送信するステップと、
前記アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りデータとを多重して前記携帯電話端末に送信するステップとを含むことを特徴とする携帯電話端末用試験方法。
【請求項4】
携帯電話端末で使用される携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験対象(W)とし、シナリオ(4a)に記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行う基地局シミュレータ擬似部(5)と、前記携帯電話端末で動作するアプリケーションのサーバとして自律動作するアプリケーションサーバ部(3)と、前記基地局シミュレータ擬似部及び前記アプリケーションサーバ部を制御する基地局シミュレータ制御部(4)とを備えて前記携帯電話端末アプリケーションソフトウェアを試験する携帯電話端末用試験方法であって、
前記シナリオに記述された携帯電話端末プロトコルに従って擬似的に前記携帯電話端末とデータ通信を行っている状態で、前記携帯電話端末アプリケーションソフトウェアによる上りアプリケーションデータから前記シナリオの制御対象となるアプリケーションデータを識別するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象のアプリケーションデータを前記基地局シミュレータ制御部に送信するステップと、
前記識別された前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータを、前記携帯電話端末で動作する前記シナリオの制御対象外のアプリケーションデータのサーバとして自律動作する制御対象外アプリケーションサーバ部(3c)に送信するステップと、
前記アプリケーションサーバ部からの前記アプリケーションデータが所望のものであるか否かを前記シナリオに基づいて判定し、該判定結果により前記シナリオに従ったデータを前記下りアプリケーションデータとして前記アプリケーションサーバ部に送信するステップと、
前記制御対象外アプリケーションサーバ部からの下りアプリケーションデータと前記基地局シミュレータ制御部からの下りアプリケーションデータとを多重して送信するステップとを含むことを特徴とする携帯電話端末用試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10911(P2010−10911A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166025(P2008−166025)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】