説明

搾乳装置

【課題】 効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことを可能とする搾乳装置を得る。
【解決手段】 搾乳装置10は、乳首を挿入する挿入部及び搾乳した乳を排出する排出部とを有する筒状の弾性体から成るパッド42と、それぞれ一端側を中心に揺動可能に支持されると共に他端側にしごき棒20、26、32が設けられた複数のアーム14、16、18と、各アーム14、16、18を揺動させるカム40を備えている。カム40が回転すると、各アーム14、16、18がそれぞれ揺動し、各しごき棒20、26、32がパッド42における軸方向に異なる部位をそれぞれ押圧する。これにより、パッド42に蠕動運動が生じ、この蠕動運動によって乳首が直接的しごかれて搾乳が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から母乳を採取するための搾乳装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体から母乳を採取する搾乳装置が知られている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。これらの搾乳装置は、乳房または乳頭に椀状部材を被せた状態で、該椀状部材の内部に連通したポンプを作動することで、乳房等に陰圧をかけて搾乳を行なうようになっている。
【0003】
ところで、乳児が母乳を吸う哺乳運動のメカニズムの原理として、上記ポンプによる吸引に相当する陰圧形成の他に、舌が乳首を圧する部分(舌の山部分)を乳首の先端側である後方に順次移動させる蠕動運動が含まれることが知られている(例えば、特許文献4参照)。そして、この特許文献4には、哺乳運動のメカニズムを再現する哺乳運動シミュレータが記載されている。この哺乳運動シミュレータは、真空ポンプにより陰圧形成を行なうと共に、駆動カムを回転して舌模型に蠕動運動に近似した運動を起こさせる構成とされている。
【特許文献1】特表平3−505420号公報
【特許文献2】特表2000−511443号公報
【特許文献3】特表2003−518412号公報
【特許文献4】特許第3476941号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き陰圧のみを利用する従来の搾乳装置は、乳児の哺乳メカニズムを再現するものではない。一方、上記哺乳運動シミュレータでは、舌模型を直接駆動する単一の駆動カムの運動によって蠕動運動に近似する運動を行なう構成であるため、蠕動運動に良く一致する運動を行なわせることが困難である。したがって、この技術を搾乳装置に適用した場合には、搾乳装置の動作が被搾乳者に違和感を与える原因となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことを可能とする搾乳装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る搾乳装置は、乳首を挿入する挿入部及び搾乳した乳を排出する排出部とを有する筒状の弾性体から成るパッドと、それぞれ一端側を中心に揺動可能に設けられた複数のアームと、それぞれ前記アームの他端側に設けられ、前記パッドにおける該パッドの軸方向に異なる部分に接触可能に配置された複数の押圧部と、前記アームを揺動させて前記各押圧部に前記パッドを押圧させ、該パッドに蠕動運動を生じさせる駆動機構と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の搾乳装置では、パッドに挿入部から乳首を挿入した状態で駆動機構を作動すると、複数のアームがそれぞれの一端側に位置する揺動中心廻りに揺動し、各アームの他端側に設けられた押圧部がそれぞれパッドの軸方向に異なる部分を押圧する。これにより、パッドには蠕動運動が生じ、この蠕動運動によって乳首がしごかれて乳(母乳)が採取される。すなわち、乳首が蠕動運動を行なうパッドによって直接的にしごかれて搾乳が行なわれ、この搾乳された乳はパッドの排出部から回収される。
【0008】
ここで、複数の押圧部がそれぞれパッド(を介して乳首)を押圧するため、各押圧部の簡単な動作の組み合わせでパッドに蠕動運動を生じさせることができる。このため、本搾乳装置では、全体として乳児の舌の蠕動運動に良く一致する運動を再現することが可能である。これにより、被搾乳者にとって自然で、かつ効率的な搾乳を行なうことが可能となる。
【0009】
このように、請求項1記載の搾乳装置では、効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る搾乳装置は、請求項1記載の搾乳装置において、前記駆動機構は、前記各押圧部が、蠕動運動する乳児の舌における前記パッドとの接触位置に対応する部分が該乳児の上顎に対し接離する動作の周期、振幅、及び位相差で前記パッドを押圧するように、前記各アームを揺動する。
【0011】
請求項2記載の搾乳装置では、各押圧部がパッドを押圧する動作が、蠕動運動する乳児の舌における対応部分が上顎に接離する動作の周期、振幅、位相差に一致する。すなわち、各押圧部が乳児の舌における長手方向各部の蠕動運動に伴う動作を再現する。これにより、本搾乳装置では、乳児の舌の蠕動運動に良く一致する蠕動運動をパッドに生じさせ、一層効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことができる。
【0012】
請求項3記載の発明に係る搾乳装置は、請求項1または請求項2記載の搾乳装置において、前記駆動機構は、前記各アームを揺動可能に支持するフレームに回転自在に支持されて周面を前記アームに接触させるカムを含む。
【0013】
請求項3記載の搾乳装置では、駆動機構を構成するカムを回転すると、揺動中心以外の部位を該カムの周面に接触させているアームがその揺動中心廻りに揺動する。これにより、簡単な構造でパッドに蠕動運動を生じさせることができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係る搾乳装置は、請求項3記載の搾乳装置において、前記カムは、前記各アームを周方向の異なる位置に接触させる単一のカム面を有する。
【0015】
請求項4記載の搾乳装置では、一つのカムの周面に形成された単一のカム面に、複数(全部でも一部でも良い)のアームの揺動中心以外の部位が接触している。これにより、一つのカムによって、複数のアーム(押圧部)に位相差を有する動作を行なわせることができ、全体として部品点数を削減して構造を簡素化することができる。そして、各アームのフレームに対する支持位置、各アームの揺動中心から押圧部、カムとの接触部位までの各距離を、各アームごとに設定することで、単一のカム面により複数のアームを駆動する構成において、各押圧部の押圧動作(パッド押圧位置、押圧方向、振幅、位相)を蠕動運動に良く一致させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明に係る搾乳装置は、請求項3記載の搾乳装置において、前記駆動機構は、前記各アームにそれぞれ独立して接触する複数の前記カムを有する。
【0017】
請求項5記載の搾乳装置では、複数のアームは、それぞれ異なるカムに独立して接触しており、それぞれ対応するカムの回転によって揺動して蠕動運動を生じる。このため、パッドの各位置における押圧動作(パッド押圧位置、押圧方向、振幅、位相)を蠕動運動に良く一致させる設計・調節が容易である。すなわち、蠕動運動を良く再現する搾乳装置を得ることができる。
【0018】
請求項6記載の発明に係る搾乳装置は、請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の搾乳装置において、前記パッドに連通され、該パッドの蠕動運動によって採取された母乳を回収するための回収容器と、前記フレームを、前記パッドの周方向における複数の回転位置で前記回収用に対して保持し得る位置決め機構と、をさらに備えた。
【0019】
請求項6記載の搾乳装置では、パッドの蠕動運動によって採取された母乳が回収容器に回収される。位置決め機構は、回収容器に対しフレームを支持し、またはフレームに対し回収容器を支持しており、使用者はフレームまたは回収容器を支持しつつ本搾乳装置を使用することができる。ここで、位置決め機構は、回収容器に対するフレームの位置をパッドすなわち乳房の周方向に変化させ得るため、回収容器を略一定の姿勢に保持しつつ、周方向の一部分が各押圧部に押圧されて蠕動運動するパッドによって、乳首の周方向の異なる部分(周方向の各部)をしごくことが可能になる。これにより、乳首における周方向の同じ位置(例えば下側)だけをしごく場合と比較して、より効果的な母乳採取が期待される。また、効果的に母乳を採取することができるしごき位置の個人差を解消することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明に係る搾乳装置は、効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことが可能となるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る搾乳装置としての搾乳装置10について、図1乃至図9に基づいて説明する。先ず、搾乳装置10の概略全体構成を説明し、次いで、本発明の要部を詳細に説明することとする。なお、説明の便宜上、適宜矢印Fにて示す方向の手前側ということとする。
【0022】
図1には、搾乳装置10が側段面図にて示されており、図2には搾乳装置10が一部切り欠いた斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、搾乳装置10はフレーム12を備えており、フレーム12は互いに対向する左右一対の側板12Aを有し構成されている。図4に示される如く、左右の側板12Aは、手前側及び奥側に配置されたフレーム連結部材12Bにて連結されている(図4では奥側のフレーム連結部材12Bのみ図示している)。各側板12Aには、それぞれ駆動機構を構成する第1アーム14、第2アーム16、第3アーム18が回動自在に支持されている。左右の第1アーム14は、互いに同形状に形成されており、かつ互いの回動軸14Aが同軸上に配置されている。
【0023】
同様に、左右の第2アーム16、左右の第3アーム18も、それぞれ互いに同形状に形成されると共に、回動軸16A同士、回動軸18A同士が同軸上に配置されている。そして、各回動軸14A、16A、18Aは、手前側から後側に向けてこの順に互いに離間して(それぞれ異なる位置に)配置されると共に、互いに平行とされている。また、各第1アーム14、第2アーム16は、それぞれ左右の側板12A外側に配置され、各第3アーム18は左右の側板12A間に配置されている。
【0024】
左右の第1アーム14は、それぞれ側面視で略鋭角三角形状に形成されており、一つの頂部近傍に回動軸14Aが設けられている。左右の第1アーム14の別の頂部間には、押圧部としての第1しごき棒20が架け渡されている。第1しごき棒20は、略円柱状に形成されており、その長手(軸線)方向が回動軸14Aの軸線と略平行とされている。また、左右の第1アーム14の残余の頂部間には、略円柱状に形成された第1シャフト22が第1しごき棒20と略平行に架け渡されている。第1シャフト22の長手方向中央部には第1ローラ24が遊嵌しており、第1ローラ24は第1シャフト22に対し回転自在とされている。本実施の形態では、回動軸14Aが最上位に、第1シャフト22が最下位に、第1しごき棒20が最も手前側にそれぞれ位置するように、第1アーム14の後述する形状、向き等が決められている。
【0025】
左右の第2アーム16は、それぞれ側面視で略逆「へ」字状に形成されており、その一端部の近傍に回動軸16Aが設けられている。左右の第2アーム16の他端部間には、押圧部としての第2しごき棒26が架け渡されている。第2しごき棒26は、略円柱状に形成されており、その長手(軸線)方向が回動軸16Aの軸線と略平行とされている。また、左右の第2アーム16の中間屈曲部間には、略円柱状に形成された第2シャフト28が第2しごき棒26と略平行に架け渡されている。第2シャフト28の長手方向中央部には第2ローラ30が遊嵌しており、第2ローラ30は第2シャフト28に対し回転自在とされている。本実施の形態では、回動軸16Aが最上位に、第2シャフト28が最下位に、第2しごき棒26が最も手前側にそれぞれ位置するように、第2アーム16の後述する形状、向き等が決められている。
【0026】
左右の第3アーム18は、それぞれ側面視で略鈍角三角形状に形成されており、一つの頂部近傍に回動軸18Aが設けられている。左右の第3アーム18の別の頂部間には、押圧部としての第3しごき棒32が架け渡されている。第3しごき棒32は、略円柱状に形成されており、その長手(軸線)方向が回動軸18Aの軸線と略平行とされている。また、左右の第3アーム18の残余の頂部間には、略円柱状に形成された第3シャフト34が第3しごき棒32と略平行に架け渡されている。第3シャフト34の長手方向中央部には第3ローラ36が遊嵌しており、第3ローラ36は第3シャフト34に対し回転自在とされている。本実施の形態では、回動軸18Aが最奥位に、第3シャフト34が最下位に、第3しごき棒32が最も手前側にそれぞれ位置するように、第3アーム18の後述する形状、向き等が決められている。
【0027】
また、フレーム12の左右の側板12Aは、それぞれ各回動軸14A、16A、18Aと略平行に架け渡されたカム軸38を回転自在に軸支している。このカム軸38の長手方向中央部には、駆動機構を構成する駆動部材としてのカム40が設けられている。カム40は、外周面がカム面40Aとされた略円板状に形成され、カム軸38に対し偏心して固定されている。そして、このカム40のカム面40Aにおける周方向の異なる位置には、それぞれ第1ローラ24、第2ローラ30、第3ローラ36が摺動可能に接触している。
【0028】
図4に示される如く、搾乳装置10は、フレーム12に支持された駆動源としてのモータ41を備えている。そして、カム軸38は、図示しない歯車列等の動力伝達機構を介してモータ41に接続されており、該モータ41の作動によって軸心廻りに回転する構成とされている。これにより、カム40は、その偏心軸であるカム軸38の軸心廻りに回転し、カム面40Aにおいて各ローラ24、30、36と摺動または転がり接触しつつ、各アーム14、16、18をそれぞれの回動軸14A、16A、18A廻りに往復回動(揺動)させる構成とされている。そして、これら各アーム14、16、18の揺動によって、各しごき棒20、26、32がパッド42を周期的に押圧するようになっている。すなわち、本実施形態では、各ローラ24、30、36が、各アーム14、16、18と共に、それぞれ本発明におけるアーム(カム面40Aと接触する部位)を構成している。
【0029】
図1に想像線にて示される如く、パッド42は、乳首に装着されて該乳首を外周側から覆う筒状部材であって、乳児の口腔内形状を模した形状に形成されている。本実施形態では、パッド42は、乳首を挿入する挿入部側(図1の紙面左側)から母乳を排出する排出部側(同図紙面右側)に向かって内外径共に徐々に小さくなる略漏斗状に形成されている。このパッド42は、例えば厚みが3mm乃至5mm程度のシリコーンゴム等の柔軟な弾性材料にて構成されており、外側から押圧されて容易に撓むようになっている。
【0030】
図4に示される如く、パッド42は、フレーム12に取り付けられた固定側部材としてのパッド支持プレート44と各しごき棒20、26、32との間に配置され、これら各しごき棒20、26、32に周期的に押圧されることで適宜変形し、蠕動運動を生じるようになっている。そして、この蠕動運動がパッド支持プレート44に支持された乳首に伝達されて(乳首がしごかれて)搾乳が行なわれる構成である。なお、パッド支持プレート44は、乳児の上顎に相当する剛性が比較的高い部材であれば良く、例えばプレートに代えてローラを採用することも可能である。また、搾乳装置10は、乳首の大きさの個人差を吸収するために、パッド42を変形しながら初期位置の調整(固定側部材に対するしごき棒20等の接離)を行なうことができる構成とされている。
【0031】
さらに、図4に示される如く、パッド42の排出部(窄められた先端)は、連通管46を介して採取した母乳を回収するための回収容器としての哺乳瓶48に連通されている。連通管46は、パッド42の軸線方向(水平方向)に沿って長手とされパッド42の排出部に接続された横管46Aと、該横管46Aにおけるパッド42とは反対側の端部に連設された立管46Bとで構成されている。立管46Bの上端には、外部(大気)に連通した空気抜き部46Cが設けられている。本実施形態では、空気抜き部46Cがチューブ等を介して陰圧付与手段としての真空ポンプに連通されており、この真空ポンプ等の作動よって、上記蠕動運動を生じている間、乳首に陰圧を与える構成とされている。この陰圧付与については、周知の技術を適用することができるので、説明を省略する。
【0032】
また、連通管46の立管46Bの下端には、上記した哺乳瓶48の上端である開口端が液密状態で接続されている。哺乳瓶48は、フレーム12に固定された哺乳瓶ホルダ50に支持されている。哺乳瓶ホルダ50は、哺乳瓶48が載置される底板50Aと、底板の手前端から立設された手前壁50Bと、奥向きに開口する略U字状の縁部を有し底板50Aと対向するように手前壁50Bの上端から延設され哺乳瓶48の上方への移動を規制する哺乳瓶押え板50Cとを含み構成されている。手前壁50Bは、ブラケット52を介してフレーム12(フレーム連結部材12B)に固定的に支持されている。
【0033】
(詳細構成)
次に、搾乳装置10の詳細構成を、その設計方法と共に説明する。
【0034】
図3(A)及び図3(B)には、搾乳装置10の模式的な側面図が示されている。図3(A)に示す三角形Sは、アーム14、16、18に相当する。この図3(A)は、三角形Sが回動軸14A等に相当する頂部A廻りに角θだけ回動すると、しごき棒20等に相当する頂部Bがxだけ変位すると共にローラ24等に相当する頂部Cがyだけ変位することを示している。すなわち、変位xはしごき棒20等によるパッド42の押圧動作に対応し、変位yはカム40の回転によって与えられるアーム14等の変位に対応する。
【0035】
ここで、頂部Bの変位xは、頂部AB間の距離をaとして、以下に示す式(1)で表される。
【0036】
x=a×sinθ (1)
一方、頂部Cの変位yは、頂部AC間の距離をbとして、以下に示す式(2)で表される。
【0037】
y=b×sinθ
=b×sin(sin-1(x/a)) (2)
これにより、しごき棒20、26、32によるパッド42の押圧動作となるべきカム曲線xが与えられれば、カム面40Aのカム曲線yを得ることができる。そして、本実施形態では、乳児の実際の哺乳時における舌の蠕動運動に近似するカム曲線xを用いてカム40の設計を行なっている。
【0038】
図5は、口腔内各部における乳児の舌の蠕動運動を、上顎に対する舌の変位として実測した線図である。具体的には、図5の凡例部に示す口腔Mの測定点1乃至6の各部における、実際に哺乳動作すなわち蠕動運動を行なっている乳児の上顎部Jと舌Tとの距離の時間変化である波形を、略1周期分に亘り示している。ここで、測定点1乃至4は、舌Tが実際に乳首に接触して上顎部Jとの間で該乳首をしごいている(押圧している)部位であり、測定点5、6では、舌Tは陰圧をかけるような動作をしている。
【0039】
搾乳装置10では、陰圧の付与については上記真空ポンプ等で行なうので、図6に示される如く、舌Tの測定点2乃至4に対応するパッド42の位置42A、42B、42Cに、各しごき棒20、26、32を配置することとした。なお、測定点1については、蠕動運動を構成するしごき動作を行なっているものの振幅が小さいので、本実施の形態では測定点1に対応するしごき棒の設置を省略した。
【0040】
本実施形態では、測定点2乃至4のうち、上顎部Jに対する舌Tの振幅が最も大きい測定点3の実測波形D3に基づいてカム40のカム曲線を決めている。具体的には、先ず、図7に示される如く、測定点3の実測波形D3の近似曲線を求める。ここでは、互いに同じ周期のsin関数とcos関数との重ね合わせである以下の式(4)を用いて、第2しごき棒26によるパッド42の押圧動作となるべきカム曲線x(t)を得た。
【0041】
x(t)=Gsin(ωt+α)+Hcos(ωt+β)+I (3)
本実施の形態では、G=−2.7、H=−4.4、I=10.6、ω=13.4、α=0.43、β=−0.62として、カム曲線x(t)が特定されている。
【0042】
そして、第2回動軸16Aと第2しごき棒26との軸心間距離a2、第2回動軸16Aと第2ローラ30との軸心間距離b2をそれぞれ決め、a2をa、b2をbとして式(3)と共に上記式(2)に代入すると、カム40のカム曲線yが決まる。これにより、本実施形態では、カム40は、直径が約26.5mmでほぼ一定、偏心量が約3.2mmの略円板状部材として形成されている。
【0043】
なお、距離a2、b2を決める時点で、第2アーム16の形状及び配置(カム40に対する姿勢)、すなわち図3(b)に示す回動軸16A、第2しごき棒26、第2シャフト28の各軸心を結んで形成される三角形S2の形状等を定めても良いが、本実施形態では、しごき棒26がパッド42の位置42Bを略垂直に押圧するように、カム曲線yを得た後に三角形S2の形状、配置を決めている。具体的には、回動軸16Aの位置及び頂角(図3(A)における∠BAC)を変更した繰り返し計算によって、しごき棒26がカム40の回転に伴いパッド42の位置42Bとの略直交方向(図3に示す矢印R2方向)に沿って上記x(t)で表す押圧動作をするように、カム軸38に対する回動軸16Aの位置(三角形S2の配置)、三角形S2における回動軸16Aの頂角φ(三角形S2の形状)を決めている。
【0044】
ここで、図5に示す舌Tの蠕動運動を構成する各波形D2、D3、D4は、互いに周期が同じで位相及び振幅が異なっている。このため、カム曲線yを実現するカム40を用いて、しごき棒20、32に測定点2、4の実測波形D2、D4に近似するパッド42の押圧動作をさせることができる。したがって、上記しごき棒26の押圧動作を決める繰り返し計算と同様の繰り返し計算によって、第1しごき棒20、第3しごき棒32が、それぞれパッド42の位置42A、42Cとの略直交方向(図3に示す矢印R1、R3方向)に沿って、測定点2、4の実測波形D2、D4に近似するパッド42の押圧動作をするように各部の寸法(形状、配置)を決めている。なお、この繰り返し計算では、各回動軸14A、18Aと各しごき棒20、32との軸心間距離a1、a3、及び各回動軸14A、18Aと各ローラ24、36との軸心間距離b1、b3をも変数としても良い。
【0045】
そして、本実施形態では、第1ローラ24、第2ローラ30、第3ローラ36のカム40の周面との接触位置を、該カム40の周方向に異ならせることで、各しごき棒20、26、32の押圧動作の位相差を創出している。また、回動軸14A、第1しごき棒20、第1シャフト22の各軸心を結ぶ三角形S1及び回動軸18A、第3しごき棒32、第3シャフト34の各軸心を結ぶ三角形S3のそれぞれの寸法形状及び配置を、上記三角形S2の寸法形状及び配置と異ならせることで、各しごき棒20、26、32の押圧動作の振幅を異ならせている。
【0046】
以上により、各しごき棒20、26、32は、カム40のカム軸38廻りの回転によって図8に押圧波形E1、E2、E3として示すパッド42の押圧動作を行なう構成とされている。これらの押圧波形E1、E2、E3は、図5に示した測定点2乃至4の蠕動運動の波形D2、D3、D4と重ね合わせて示すと、図9に示す如く良く一致する。したがって、搾乳装置10では、カム軸38を回転駆動することで、3つのしごき棒20、26、32がそれぞれ対応する部位の蠕動運動を構成する波形(周期、振幅、位相差)に近似するパッド42の押圧動作を行ない、全体として乳児の舌の蠕動運動に良く一致する蠕動運動をパッド42に生じさせるようになっている。
【0047】
なお、上記の通り各しごき棒20、26、32がパッド42を押圧する方向は、パッドの42の位置42A、42B、42Cに対する略直交方向である矢印R1、R2、R3方向であり、上顎部Jと舌Tとを結び測定点2乃至4を示す鉛直方向とは異なる。これは、パッド42を効果的に変形させて、複数の押圧動作の組み合わせで構成される蠕動運動を乳首に良好に伝達することを考慮したものであり、各しごき棒20、26、32によるパッド42の押圧方向は、パッド42の形状や材質に応じて適宜変更が可能である。すなわち、しごき棒20、26、32による押圧動作の方向を、実際の上顎部Jに対する舌Tの変位方向に一致させても良いことは言うまでもない。また、押圧波形E1、E3と蠕動運動の波形D2、D4との間にはそれぞれ若干のずれが生じているが、これらのずれは試作上の各種制約から生じたものであり、上記設計方法による誤差ではないため、適宜修正することが可能である。
【0048】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0049】
上記構成の搾乳装置10では、搾乳を行なう際には、乳首に装着されたパッド42を固定側部材と各しごき棒20、26、32との間に入り込ませる。この状態でモータ41を作動してカム軸38を回転駆動すると、カム40が回転して各ローラ24、30、36をカム曲線yに倣って動作させる。すると、各アーム14、16、18がそれぞれの回動軸14A、16A、18A廻りに回動し、各しごき棒20、26、32がパッド42の位置42A、42B、42Cをそれぞれ周期的に押圧する。これらパッド42の軸方向に異なる各部の周期的な押圧動作が該パッド42に蠕動運動を生じさせ、この蠕動運動を行なうパッド42によって乳首が直接的にしごかれて母乳が採取される。すなわち、搾乳が行なわれる。このとき、パッド42の排出部側の先端(空気抜き部46C)からは真空ポンプによって陰圧がかけられており、搾乳が促進されると共に採取された母乳が哺乳瓶48に効率的に回収される。
【0050】
ここで、本搾乳装置10では、複数のしごき棒20、26、32がそれぞれ乳首(パッド42)をしごくので、各しごき棒20等の簡単な動作の組み合わせで乳首に対し複雑なしごき運動を与えることが実現される。特に、パッド42の長手方向における異なる3位置を異なる位相及び振幅でしごく3つのしごき棒20、26、32を備えるため、簡単な動作の組み合わせで乳児の舌の蠕動運動に近似したしごき運動を行なうことができる。
【0051】
具体的には、乳児の口腔Mの奥行方向(乳首の突出方向、パッド42の長手方向)に異なる舌Tの複数の位置(測定点2、3、4)における蠕動運動に伴う波形を抽出し、これらの波形に基づく互いに位相及び振幅の異なるしごき運動を各しごき棒20、26、32に行なわせるように構成したため、乳児の舌の蠕動運動と良く一致する運動によって効率的に搾乳を行なうことができる。これにより、被搾乳者に違和感を与えることのない自然でかつ効率的な搾乳を行なうことが可能となる。
【0052】
そして、第1の実施形態では、単なる偏心円板カムであるカム40による各しごき棒20、26、32の往復回動の組み合わせによって、蠕動運動を良く再現して効率的で自然な搾乳を実現することができた。また、単一のカム面40Aを有するカム40にて各ローラ24、30、36やアーム14、16、18等を介し各しごき棒20、26、32を駆動する構造であるため、構造が簡単で信頼性が高い。すなわち、単一のカム40が駆動源となるため、各しごき棒20、26、32は常に同期して作動し、位相ずれ(設定された位相差のずれ)を生じたりすることがない。
【0053】
このように、第1の実施形態に係る搾乳装置10では、効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る搾乳装置90について説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品、部分については上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図10には、搾乳装置90の要部が斜視図にて示されている。この図に示される如く、搾乳装置90は、3つのアーム14、16、18に対し、それぞれ対応する3つのカム92、94、96を備える点で、第1の実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0056】
左右の第1アーム14間には、連結板98が架け渡されており、左右の第2アーム16間、左右の第3アーム18間にはそれぞれ連結板100、102が架け渡されている。書く連結板98、100、102は、それぞれブラケット104、106、108を介してローラ110、112、114を回転自在に支持している。各ローラは、フレーム12の左右の側板12A間において、左右方向の異なる位置に配設されている。これにより、各ローラ110、112、114は、他のローラに接触するカムに干渉しないようになっている。
【0057】
第2アーム16は、連結板100、ブラケット106と共に、回動軸16A、第2しごき棒26、ローラ112を頂点とする三角形を形成している。そして、第2しごき棒26について、第1の実施形態と同様に、パッド42の測定点3に対応するカム曲線x(t)が特定され、ローラ112に接触して第2アーム16を駆動するカム94のカム曲線yが決められている。したがって、カム94は偏心円板とされている。
【0058】
また、第1アーム14は、連結板98、ブラケット104と共に、回動軸14A、第1しごき棒20、ローラ110を頂点とする三角形を形成しており、第3アーム18は、連結板102、ブラケット108と共に、回動軸18A、第3しごき棒32、ローラ114を頂点とする三角形を形成している。この実施形態では、ローラ110、114に接触して第1しごき棒20、32にパッド42の押圧動作を行わせるためのカム92、96について、カム94と同じカム曲線yを有する(カム軸38に対する偏心量が同じである)偏心円板を用いている。
【0059】
そして、この実施形態では、カム軸38に対する各カム92、94、96の取付位相、カム94とローラ112との接触位置を基準とするカム92、96とローラ110、116との周(カム曲線y)方向の各接触位置を、それぞれ図9に示す押圧波形E1、E3と蠕動運動の波形D2、D4との位相を一致させるように設定している。
【0060】
以上説明した搾乳装置90では、各しごき棒20、26、32による押圧波形E1、E2、E3は、図5に示した測定点2乃至4の蠕動運動の波形D2、D3、D4と重ね合わせて示すと、図11に示す如く、振幅、位相共にきわめて良く一致する。したがって、搾乳装置90では、カム軸38を回転駆動することで、3つのしごき棒20、26、32がそれぞれ対応する部位の蠕動運動を構成する波形(周期、振幅、位相差)に近似するパッド42の押圧動作を行ない、全体として乳児の舌の蠕動運動にきわめて良く一致する蠕動運動をパッド42に生じさせることができる。
【0061】
このように、第2の実施形態に係る搾乳装置90では、効果的かつ自然に母乳の採取を行なうことができる。
【0062】
また、搾乳装置90では、各アーム14、16、18に独立して接触するカム92、94、96を備えるため、パッド42の異なる部位を押圧する各しごき棒20、26、32の押圧運動を容易に蠕動運動に近似させることができる。すなわち、単一のカム40を用いた構成では、各ローラ24、30、36のカム40、パッド42に対する配置に制約があり、各アーム14、16、18に対応するカム92、94、96をそれぞれ設けることで、上記した各ローラ24、30、36の配置の制約がなくなる。このため、各しごき棒20、26、32の押圧運動を容易に蠕動運動に近似させる設計、設定が容易になる。また、各カム92、94、96のカム曲線yすなわちカム軸38に対する偏心量は同じであるため、3つのカム92、94、96に異なるカム曲線を与える構成と比較して、設計が容易である。
【0063】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る搾乳装置60について説明する。なお、上記第1または第2の実施形態と基本的に同一の部品、部分については上記第1または第2の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図12には、搾乳装置60を一部分解した状態が斜視図にて示されている。この図に示される如く、搾乳装置60は、フレーム12と哺乳瓶ホルダ50とが分離可能に構成されている点で、第1または第2の実施形態に係る搾乳装置10、90とは異なる。すなわち、搾乳装置60は、フレーム12に支持された搾乳ユニット(しごきユニット)62と、哺乳瓶ホルダ50側のホルダユニット64とが着脱可能に構成されている。そして、搾乳ユニット62とホルダユニット64とを分離可能に接続する機構が、搾乳ユニット62がホルダユニット64に対しパッド42(図12では図示省略)の軸線廻りの複数の回転位置を取り得るように構成された位置決め機構66とされている。以下、具体的に説明する。
【0065】
位置決め機構66は、搾乳ユニット62におけるフレーム12の奥側上部で左右の側板12Aを固定的に架け渡す被位置決め板68を備えている。被位置決め板68には、パッド42の軸線方向中間部を挿通させ得る内径を有する円孔68Aが該パッド42と略同軸的に形成されている。被位置決め板68における円孔68Aの上方には、透孔68Bが形成されている。さらに、位置決め機構66は、押え板78を備えている。押え板78には、軸心部に位置し円孔68Aと略同径の円孔78A、透孔68Bに対応して配置された透孔78Bが形成されている。
【0066】
さらに、上記した被位置決め板68と押え板78との間には、スペーサ板70が配設されている。スペーサ板70は、円孔68Aと略同径の円孔70Aを有する円環状に形成されている。スペーサ板70は、被位置決め板68と押え板78とが図示しないビスにて接合されることで、これらの間に固定的に保持されている。
【0067】
また、位置決め機構66は、ホルダユニット64に固定された位置決め板72を備えている。位置決め板72は、下端側が手前壁50Bに固定されたブラケット74の上端に下端が接続されると共に、下端が哺乳瓶押え板50Cに固定された一対の支持アーム76の上端に上端側の異なる2箇所がそれぞれ接続されることで、上位の通りホルダユニット64(哺乳瓶ホルダ50)に固定されている。この位置決め板72には、スペーサ板70の外径と略同径の円孔72Aが形成されている。円孔72Aの周りには、複数(本実施形態では8つ)の位置決め孔72Bが周方向に等間隔で配置されている。また、複数の位置決め孔72Bは、それぞれ円孔72Aとの軸心間距離が円孔68Aと透孔68Bとの軸心間距離と一致している。
【0068】
そして、位置決め板72は、スペーサ板70に遊嵌して該スペーサ板70を回転自在に支持されている。位置決め板72は、被位置決め板68と押さえ板78との間に挟まれている。これにより、搾乳ユニット62は、ホルダユニット64に対し、パッド42の軸線廻りの回転自在に支持されると共に、該回転方向以外の相対変位(脱落)が防止されている。換言すれば、位置決め板72は、被位置決め板68及び押さえ板78の対向面を溝壁とし、スペーサ板70の外周面を溝底とする溝に回転自在に保持されている。
【0069】
また、図13にも示される如く、位置決め機構66は、保持ピン80を備えている。保持ピン80は、透孔68Bを貫通して位置決め板72の位置決め孔72Bに嵌合可能なピン部80Aと、ピン部80Aの手前側に設けられた指先で操作可能なリング部80Bとで構成されている。
【0070】
以上説明した位置決め機構66では、搾乳ユニット62をホルダユニット64に対し、透孔68Bと任意の位置決め孔72Bとが一致する所望の回転位置に位置させて、該透孔68Bを貫通した保持ピン80のピン部80Aを該透孔68Bに一致している位置決め孔72Bに嵌合することで、搾乳ユニット62をホルダユニット64に位置決め、保持することができる構成である。位置決め孔72Bが周方向に等間隔で8つ設けられた本実施形態では、図14(A)〜図14(H)に示される如く搾乳ユニット62がホルダユニット64(哺乳瓶48)に対し8つの位置を取り得る構成とされている。なお、図14では、保持ピン80、パッド42の図示を省略している。
【0071】
次に、第3の実施形態の作用を説明する。
【0072】
上記構成の搾乳装置60では、搾乳を行なう際には、搾乳ユニット62をホルダユニット64に対する所望の位置にセットし、乳首に装着されたパッド42を固定側部材と各しごき棒20、26、32との間に入り込ませる。この状態からモータ41を作動すると、第1の実施形態と同様に、パッド42に生じた蠕動運動によって乳首が直接的にしごかれて母乳が採取される。採取された母乳は、ホルダユニット64の哺乳瓶ホルダ50に支持された哺乳瓶48に回収される。このとき、搾乳装置の使用者(被搾乳者)は、ホルダユニット64を支持している。
【0073】
ここで、搾乳装置60では、ホルダユニット64すなわち哺乳瓶48に対する搾乳ユニット62の位置を、パッド42(乳首)の周方向に変化させ得る位置決め機構66を備えるため、哺乳瓶48を上向きに開口する略一定の姿勢に保持しつつ、パッド42における周方向の異なる位置蠕動運動を生じて搾乳を行なうことができる。すなわち、搾乳装置60では、蠕動運動するパッド42によって、乳首の周方向の異なる部分(周方向の各部)をしごくことが可能になる。これにより、乳首における周方向の同じ位置(例えば下側)だけをしごく場合と比較して、より効果的な母乳採取が期待される。また、効果的に母乳を採取することができるしごき位置の個人差を解消することも可能になる。すなわち、使用者は、搾乳装置60によって、乳首における周方向の各部を満遍なく(略均一に)しごかせたり、乳首における母乳を回収しやすい周方向の位置をしごかせたりすることで、効果的に母乳を採取することができる。
【0074】
そして、本実施形態では、8段階の位置調節を可能としたため、乳首をほぼ全周に亘り(周方向の各部分を)しごく構成が実現された。具体的には、哺乳瓶48は、重力によって母乳を回収可能である範囲で位置をずらして使用可能であるため、ホルダユニット64の使用者による支持角度を適宜調節することで、図14に示す8段階の間の位置をしごくことが可能である。
【0075】
なお、第3の実施形態では、ホルダユニット64に対し回転自在に支持された搾乳ユニット62を、保持ピン80にて結合することで有段の位置決めを行なう例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、被位置決め板68に一体化したウォームホイールをホルダユニット64に支持したウォームに噛み合わせることで、ホルダユニット64に対する搾乳ユニット62の回転位置を無段階に調節可能な構成としても良い。
【0076】
なお、上記各実施形態では、搾乳装置10、60、90がしごき棒20等によりパッド42に蠕動運動を生じさせつつ、真空ポンプ等による陰圧付加を行なう構成としたが、本発明はこれに限定されず、パッド42の蠕動運動に基づくしごき動作のみによって搾乳を行なうようにしても良い。
【0077】
また、上記各実施形態では、第1乃至第3の3つのしごき棒20、26、32を備えた好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、しごき棒を2つ備える構成としても良く、しごき棒を4つ以上備える構成としても良い。また、各しごき棒は、円柱状に形成される構成には限定されず、例えば平板状に形成されても良い。
【0078】
さらに、本発明は、複数のしごき棒20、26、32が共通のカム40または個別のカム92、94、96にて駆動される好ましい構成には限定されず、例えば、各しごき棒20、26、32の一部が共通のカムにて駆動される構成としても良く、各しごき棒20、26、32が他の駆動機構にて構成されても良い。また、カム40と各ローラ24、30、36(シャフト22、28、34)とで確動カムを構成し、搾乳装置10を姿勢によらず(重力やばね力を利用することなく)確実に作動するようにしても良い。
【0079】
さらにまた、上記の実施形態では、回動軸14A等と、しごき棒20等と、ローラ24等とが三角形Sを形成するように配置された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、アーム14、16、18の一部また全部が回動軸14A等と、しごき棒20等と、ローラ24とを一直線上に配置するように形成されても良い。
【0080】
さらに、上記各実施形態では、パッド42が略漏斗状に形成された構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、パッド42は、乳首が挿入されて各しごき棒20等に押圧される部分を略円筒状に形成して構成されても良い。この場合、各しごき棒20等によるパッド42の押圧方向を舌Tの上顎部Jに対する接離方向に一致させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る搾乳装置を構成する搾乳機構の該略全体構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る搾乳装置を構成する搾乳機構の斜視図である。
【図3】(A)はカムの設計方法を説明するための模式図、(B)は搾乳装置全体の模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る搾乳装置の概略全体構成を示す斜視図である。
【図5】哺乳中における乳児の舌の蠕動運動曲線を示す線図である。
【図6】乳児の口腔における蠕動運動測定部位と、パッドにおける各しごき棒によるしごき部位との関係を示す模式図である。
【図7】乳児の舌の特定部位の蠕動運動曲線、この蠕動運動に近似させたカム曲線をそれぞれ示す線図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る車両用搾乳装置の各しごき棒の動作を示す線図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る車両用搾乳装置の各しごき棒の動作と、乳児の舌の蠕動運動曲線とを重ねて示す線図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る搾乳装置を構成する搾乳機構の該略全体構成を示す側断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る車両用搾乳装置の各しごき棒の動作と、乳児の舌の蠕動運動曲線とを重ねて示す線図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る搾乳装置を搾乳ユニットとホルダユニットとに分離して示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る搾乳装置を構成する搾乳ユニットとホルダユニットとの接続状態を拡大して示す斜視図である。
【図14】(A)〜(H)のそれぞれは、本発明の第3の実施形態に係る搾乳装置を構成するホルダユニットに対する搾乳ユニットの異なる位置での位置決め状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 搾乳装置
12 フレーム
14 第1アーム(アーム)
16 第2アーム(アーム)
18 第3アーム(アーム)
20 第1しごき棒(押圧部)
26 第2しごき棒(押圧部)
32 第3しごき棒(押圧部)
40 カム(駆動機構)
42 パッド
48 哺乳瓶(回収容器)
60 搾乳装置
62 搾乳ユニット(フレーム)
64 ホルダユニット(回収容器)
66 位置決め機構
90 搾乳装置
92・94・96 カム(駆動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳首を挿入する挿入部及び搾乳した乳を排出する排出部とを有する筒状の弾性体から成るパッドと、
それぞれ一端側を中心に揺動可能に設けられた複数のアームと、
それぞれ前記アームの他端側に設けられ、前記パッドにおける該パッドの軸方向に異なる部分に接触可能に配置された複数の押圧部と、
前記アームを揺動させて前記各押圧部に前記パッドを押圧させ、該パッドに蠕動運動を生じさせる駆動機構と、
を備えた搾乳装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記各押圧部が、蠕動運動する乳児の舌における前記パッドとの接触位置に対応する部分が該乳児の上顎に対し接離する動作の周期、振幅、及び位相差で前記パッドを押圧するように、前記各アームを揺動する請求項1記載の搾乳装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記各アームを揺動可能に支持するフレームに回転自在に支持されて周面を前記アームに接触させるカムを含む請求項1または請求項2記載の搾乳装置。
【請求項4】
前記カムは、前記各アームを周方向の異なる位置に接触させる単一のカム面を有する請求項3記載の搾乳装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記各アームにそれぞれ独立して接触する複数の前記カムを有する請求項3記載の搾乳装置。
【請求項6】
前記パッドに連通され、該パッドの蠕動運動によって採取された母乳を回収するための回収容器と、
前記フレームを、前記パッドの周方向における複数の回転位置で前記回収用に対して保持し得る位置決め機構と、
をさらに備えた請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の搾乳装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−51341(P2006−51341A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202156(P2005−202156)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】