説明

摂食/絶食による変動性を低減し、かつ経口バイオアベイラビリティーを改善するための難水溶性薬物の多相医薬製剤

活性医薬成分;溶媒;非混和性液体;安定剤;および水を含む多相医薬組成物(ここで、該活性医薬成分は、微粒子状態、可溶化状態、または微粒子状態および可溶化状態の両方である)を含有し、経口剤形である医薬製剤が開示される。このような医薬製剤は、多くの活性医薬成分が影響を受けやすい、摂食/絶食による変動性を低減する能力、および経口バイオアベイラビリティーを改善する能力を有する。それゆえ、本発明の医薬製剤は、摂食および絶食状態で生物学的に同等であり、かつ改善された経口バイオアベイラビリティーを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、2007年1月22日出願の「Multi−phasic Pharmaceutical Formulations of Poorly Water−soluble Drugs for Reduced Fed/Fasted Variability and Improved Oral Bioavailability」と題する米国特許仮出願第60/881470号の利益を主張し、その内容全体を、参照によりすべての目的に関して本明細書に組み込む。
【0002】
[0002] 一般に、本発明は、難水溶性薬物の多相組成物、および該組成物の製造方法を対象とする。より詳細には、これらの組成物は、摂食−絶食による吸収の変動性を低減し、かつ活性医薬成分の経口バイオアベイラビリティーを改善するのに使用できる。
【背景技術】
【0003】
[0003] 水に易溶性である活性医薬成分(API)は、適切な剤形に製剤化するのは困難ではない。さらに、これらの薬物は、経口またはその他の投与経路を介して投与される場合に、バイオアベイラビリティーに関して重大な問題を引き起こすとは考えられない。しかし、難水溶性の治療薬を適切な剤形に製剤化することは、かなりの難題を提起する。これは、水性の生物学的系中でAPIを生物学的に利用可能にすることの困難性のためである。経口投与を意図した製剤の場合、多くの難水溶性APIは、薬物吸収が不十分になりやすいか、あるいは薬物吸収の速度および/または程度の激しい変動のもとで吸収される。このことは、胃内食物の存否による変動性、すなわち摂食/絶食による変動性によってさらに複雑になる場合がある。難水溶性APIの中には、それらを生物学的環境中で効果的に可溶化することができず、それゆえインビボで満足できる治療活性を示すことができないため、決して商業化できないものもある。あるいは、該薬剤の難水溶性および許容できない毒性をもたらす可能性を考慮すると、満足できるレベルの治療活性を達成するために投与することが必要とされる難水溶性APIの量が不当に多いものとなり得る。
【0004】
[0004] APIの粒径を小さくすると、表面積が増加し、そのことが、より大きな水溶性および/またはより良好な溶出特性をもたらし得る。マイクロ沈殿(microprecipitation)、微粒化、摩砕、均質化、超臨界流体での粒子生成などの技術が、APIの粒径を小さくするのに使用されている。典型的な摩砕技術には、典型的には、乾式および湿式摩砕が含まれる。しかし、乾式摩砕は、表面安定化、湿潤性の増加、または分散特性の改善などの付加的利益を提供せず、湿式摩砕は、多くのAPIにとってコストが極めて高い場合がある。これらの問題に取り組むためのいくつかの商業的技術、すなわち、elan社のNanoCrystal(登録商標)技術、Baxter社のNanoEdge(登録商標)技術、Skye Pharma社のInsoluble Drug Delivery(IDD(登録商標))技術、およびEurand社のBiorise(登録商標)技術がある。
【0005】
[0005] 液状形態の薬物組成物は、製薬工業のいたるところに存在し、液剤、懸濁剤、乳剤などの組成物として存在する。液状剤形は、特に小児科および老人病での適用に好都合な形態であるが、これらの液状組成物を固形剤形(すなわち、錠剤またはカプセル剤)へ転換することは、患者のコンプライアンスおよび商業的価値の両方を製品に相当に付け加える。水をベースにした単純な液剤または懸濁剤は、例えば、適切な凍結防止剤と一緒に凍結乾燥し、生じた塊を1種または複数の適切な希釈剤と混合し、続いてカプセル剤に充填または圧縮して錠剤にすることによって対応する固形剤形に転換することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 当技術分野では、難水溶性および水溶性APIをインビボで最善の効力を示す適切な剤形に製剤化する費用効果の高い方法が求められている。特に、摂食および絶食条件下で投与された場合に、摂食/絶食による吸収の変動性の低減、あるいは類似のまたは生物学的に同等な吸収プロフィールを示す難水溶性APIの経口剤形が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 一態様において、経口剤形などの剤形中に多相医薬組成物を含有する医薬製剤であって、(a)微粒子状態、可溶化状態、あるいは微粒子状態及び可溶化状態の両方である活性医薬成分、(b)溶媒、(c)非混和性液体、(d)安定剤、および(e)水を含有する医薬剤形が提供される。
【0008】
[0008] 従来技術による多くの薬物製剤は、該製剤を絶食条件下で投与した場合に、摂食条件下で投与した場合と比較して、薬物吸収量(AUC)および/または薬物吸収速度(Cmaxおよび/またはTmax)の有意な差を示す。好ましくは、本発明の医薬製剤は、同一APIの従来技術による製剤と比較して、該製剤を絶食条件下で投与した場合と摂食条件下で投与した場合の薬物吸収量(AUC)および/または薬物吸収速度(Cmaxおよび/またはTmax)の差の低減を示す。
【0009】
[0009] 本発明の一実施形態において、本発明の医薬製剤を哺乳動物に投与した際に、該製剤は、絶食条件下で投与された同一組成物の吸収プロフィールと類似のまたは生物学的に同等である摂食条件下での吸収プロフィール(例えば、CmaxおよびAUC、またはCmax、AUC、およびTmax)を示す。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態において、本発明の医薬製剤をラットまたはラットモデルに投与した際に、摂食状態で測定した平均AUCと絶食状態で測定した平均AUCとの間の差は、約90,000h*ng/ml未満である。他の実施形態において、摂食状態で測定した平均AUCと絶食状態で測定した平均AUCとの間の差異は、約85,000h*ng/ml未満、約80,000h*ng/ml未満、約75,000h*ng/ml未満、約70,000h*ng/ml未満、約65,000h*ng/ml未満、約60,000h*ng/ml未満、約55,000h*ng/ml未満、約50,000h*ng/ml未満、約45,000h*ng/ml未満、約40,000h*ng/ml未満、約35,000h*ng/ml未満、約30,000h*ng/ml、約25,000h*ng/ml未満、約20,000h*ng/ml未満、約15,000h*ng/ml未満、および約10,000h*ng/ml未満からなる群から選択される。
【0011】
[0011] 他の実施形態において、本発明の医薬製剤を哺乳動物に投与した際に、絶食状態で測定した平均AUC、平均Cmax、および/または平均Tmaxと、摂食状態で測定した平均AUC,平均Cmax、および/またはTmaxとの間のパーセント差は、約1000%未満、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、または約0.1%未満である。
【0012】
[0012] 一実施形態において、本発明の医薬製剤を哺乳動物に投与した際に、該製剤は、摂食状態と絶食状態との間で、約1000%未満のAPI相対曝露量の差を示す。他の実施形態において、摂食状態と絶食状態との間での相対的曝露の差は、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、および約3%未満からなる群から選択される。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態において、経口剤形の医薬製剤は、固形剤形であり、他の実施形態において、液状剤形である。剤形は、経口投与用、またはその他任意の薬学上許容される投与法用のものでよい。本発明の組成物は、潜在的には、他の投与経路(局所、経皮、膣、直腸、鼻、眼、爪、非経口、粘膜など)用にも使用することができ、薬物のバイオアベイラビリティーを改善する同様の利益を提供する。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態において、APIは、フェノフィブラート、シクロスポリン、シロリスム、ダナゾール、ナプロキセン、シルデナフィル、グリセオフルビン、マイコフェノレートまたはモフェチル、あるいはこれらのいずれか2種以上の混合物である。
【0015】
[0015] 本明細書に記載の医薬製剤の調製方法も提供される。したがって、別の態様において、医薬製剤の調製方法は、API、溶媒、安定剤、および非混和性液体を混合して第1混合物を形成すること;該第1混合物を水と乳化して多相医薬組成物を形成すること;および該多相医薬組成物を経口剤形などの適切な剤形に製剤化することを含む。剤形が固形剤形である実施形態において、該方法は、乳化された第1混合物を吸着性担体と混合することをさらに含むことができる。
【0016】
[0016] さらに、本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、限定はされないが、粘度修正剤、着色剤および風味剤などを含む適切な不活性成分をさらに含むことができる。
【0017】
[0017] 本発明の組成物および方法は、1種を超える薬物の配合および投与を容易にすることもできる。
【0018】
[0018] 前述の全般的な説明および以下の詳細な説明は、両方とも、例示的かつ説明的なものであり、特許を請求する本発明のさらなる説明を提供することを意図している。当業者にとって、その他の目的、利点、および新規な特徴も、以下の詳細な本発明の説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】57μmの平均粒径を有する粗製フェノフィブラートの粒径分布を示す図である。
【図2】60nmの平均フェノフィブラートナノ乳液液滴径(乳液液滴内)を有し、かつ100%のフェノフィブラート粒子が3μm未満の大きさを有する、本発明に適用できる米国特許仮出願第60/779420号の方法を使用して粒径を小さくした後のフェノフィブラートの粒径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(A.定義)
[0021] 本発明は、以下でおよび出願のいたるところで示されるいくつかの定義を使用して本明細書中で説明される。
【0021】
[0022] 本開示の目的に関しておよび別途指定しない限り、不定冠詞「a」または「an」は、1つ以上を意味する。
【0022】
[0023] 本明細書中で使用する場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度まで変化するであろう。当業者にとって明瞭でない用語の使用が存在するなら、それが使用される文脈を考慮して、「約」は、特定の用語の±10%までを意味する。
【0023】
[0024] 「吸着性担体」は、液状製剤を吸着および/または吸収するために採用される材料、通常的には固体を指す。
【0024】
[0025] 本明細書中で使用する場合、用語「カプセル剤」、「錠剤」、「ロゼンジ」および「カシェ剤」は、類義の用語であり互換的に使用され、特定の目的のためにカプセル剤、錠剤、ロゼンジ、またはカシェ剤のみが想定されていることを特別に言及していない限り、個々のいずれの用語もそのグループを代表する。
【0025】
[0026] 「API」は、活性医薬成分(active pharmaceutical ingredient)の省略形である。
【0026】
[0027] 「セルロース」には、医薬製剤での使用について周知である各種形態のセルロース、例えば、限定はされないが、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、およびこれらの混合物が含まれる。
【0027】
[0028] クロスカルメロースナトリウムは、架橋されたカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0028】
[0029] 「クロスポビドン」は、1−ビニル−2−ピロリジノンの架橋された非水溶性ホモポリマーである。
【0029】
[0030] 「シクロデキストリン」は、少なくとも6個のD−(+)−グルコピラノース単位を含む環状オリゴ糖のファミリーを指す。
【0030】
[0031] 「乳化剤」は、本明細書中で使用する場合、乳液の形成を促進する材料を指す。
【0031】
[0032] 本明細書中で使用する場合、用語「乳液」は、別の液体中へのある非混和性液体の分散物を指す。
【0032】
[0033] 「脂肪酸」は、本明細書中で使用する場合、一塩基酸の大きな群の任意のメンバー、特に、動物性および植物性の脂肪および油中に見出されるものを指す。いくつかの実施形態において、脂肪酸は、6〜22個の炭素を有する直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニル基を有し、そのカルボン酸基は、炭素鎖の一方の末端に位置する。
【0033】
[0034] 「グリセリド」は、本明細書中で使用する場合、1個または複数の酸とグリセロールとの間で形成されるエステルを指す。いくつかの実施形態において、酸は脂肪酸である。中鎖グリセリドは、6〜12個の炭素原子、あるいはいくつかの実施形態では6〜10個の炭素原子を含む中鎖脂肪酸のグリセロールエステルである。中鎖脂肪酸には、カプロン酸(C)、カプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、およびラウリン酸(C12)が含まれる。長鎖グリセリドは、12〜22個の炭素原子、あるいはいくつかの実施形態では12〜18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸のグリセロールエステルである。
【0034】
[0035] 「脂質」は、本明細書中で使用する場合、水に不溶であるが非極性有機溶媒に可溶であり、かつ触感が油性である有機化合物の任意の群、例えば、限定はされないが、脂肪、オイル、ワックス、ステロール、およびトリグリセリドを指す。
【0035】
[0036] 本明細書中で使用する場合、「マイクロスポンジ」は、液体を吸着または吸収する能力を有する多孔性材料を指す。
【0036】
[0037] 本明細書中で使用する場合、用語「非混和性液体」は、別の液体に溶解しない液体を指す。非混和性液体は、乳液を形成する能力がある。
【0037】
[0038] 「微粒子状態」は、本明細書中で使用する場合、所定材料の不溶性粒子を指す。
【0038】
[0039] 「リン脂質」は、本明細書中で使用する場合、主として脂肪酸、リン酸基、および単純な有機分子、例えばグリセロールから構成されるリン含有脂質を指す。リン脂質は、ホスファチドと呼ぶこともできる。
【0039】
[0040] 本明細書中で使用する場合、「難水溶性」または「非水溶性」は、周囲温度、周囲圧力、および約pH7で、約20mg/mL未満、約10mg/mL、約1mg/L未満、約0.1mg/mL未満、約0.01mg/mL未満、または約0.001mg/mLの水に対する溶解度を有する、APIなどの材料を指す。
【0040】
[0041] ポビドンは、本明細書中で使用する場合、1−ビニル−2−ピロリジノンのポリマーであり、広範な範囲の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、ポビドンは、約2,500g/モル〜約300,000g/モル、またはそれ以上の平均分子量を有する。
【0041】
[0042] 相対曝露量(relative exposure)は、AUCの測定をベースにした百分率値である。百分率は、AUC値、100%の値を指定し、他のAUC値を100%AUC値の百分率として表現することによって計算される。
【0042】
[0043] 本明細書中で使用する場合、「可溶化状態」は、溶液相にあるAPIなどの材料を指す。このような溶液相には、水を含む溶媒中でのAPIの可溶化、または乳液の1種または複数の液状成分中でのAPIの可溶化が含まれる。
【0043】
[0044] 「ソルビタン」は、本明細書中で使用する場合、脱水ソルビトールを指す。
【0044】
[0045] 「デンプン」は、アミロースおよびアミロペクチンからなる複合炭水化物を指す。「α化デンプン(pregelatinized starch)」は、水の存在下で顆粒の全部または一部を破裂させるように化学的および/または機械的に処理され、続いて乾燥されたデンプンである。α化デンプンのいくつかの種類は、性質に圧縮性および流動性を与えるために修飾することができる。
【0045】
[0046] 「糖脂肪酸」は、本明細書中で使用する場合、糖部分が結合した脂肪酸を指す。
【0046】
[0047] 用語「対象」は、本明細書中で使用する場合、本明細書中で具体化される製剤および方法の有益な効果を経験することのできる任意の動物を指す。好ましくは、動物は、哺乳動物、特にヒトであるが、そのように限定されることを意図しない。他の適切な動物の例には、限定はされないが、ラット、マウス、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどが含まれる。
【0047】
[0048] 「治療上有効な量」は、本明細書中でAPIの投与量に関して使用する場合、そのような治療を必要とする有意な数の対象において、APIを投与する目的である特定の薬理学的応答を提供する投与量を意味するものとする。個々の事例で個々の対象に投与される「治療上有効な量」は、特定の疾患に関して治療される100%の患者に対して必ずしも有効であるとは限らず、このような投与量が当業者によって「治療上有効な量」と考えられても、本明細書に記載の疾患を治療するのに必ずしも有効ではないものであり得ることを強調する。
【0048】
[0049] 吸着性担体、ポリマー性担体、リン脂質担体、薬学上許容される添加物、あるいはその他の担体または添加物などの部類に属するものと以下において同定されるいくつかの材料は、当該材料がただ1つの部類のみで挙げられていても、それらの部類の1つ以上のカテゴリーに含まれてもよいことを当業者は容易に理解するであろう。例えば、ケイ酸マグネシウムアルミニウムは、吸着性担体および合成または半合成のポリマー性担体の両方に属する。別の例として、セルロースは、吸着性担体かつポリマー性担体であり得る。1つを超える部類に属するが1つの部類中にのみ挙げられるその他のこのような材料は、当業者によって容易に識別されるであろう。
【0049】
(B.多相組成物および摂食/絶食による変動性)
[0050] 投与される多くの薬物、特に経口剤形のものは、対象の消化器系内での食物の存否によりバイオアベイラビリティーの変動を受けやすい。このような変動性は、摂食前および摂食後の対象について測定された値を比較した場合のAUC、Tmax、Cmax、または相対曝露量の変化によって証明することができる。本発明の多相組成物を用いて、広範な範囲の薬物についてこのような変動性を有意に低減し、あるいはいくつかの場合には無くすことができる。
【0050】
[0051] 多相組成物は、広範な種類の活性医薬成分の多用途性ビヒクルであり、難水溶性化合物を送達するのに使用できる。例えば、難水溶性医薬は、患者に送達するのが極めて困難である傾向がある。しかし、微粒子状態のAPIおよび可溶化状態のAPIの両方を含む多相組成物は、このような医薬のために、経口、頬腔内、膣、鼻腔内、非経口、または直腸投与のための新規な経路を提供する。
【0051】
[0052] 多相組成物は、例えばマイクロ−またはナノ−微粒子形態としておよび/または(例えば、オイル、溶媒、および/またはミセル内で)可溶化された形態として同一組成物内に異なる相または形態で分配される薬物を含んでいるようないくつかの実施形態中で説明できる。このような組成物は、主として、複数の相(例えば、固体ナノ粒子、ナノ乳液および/またはミセル)内でのAPIの分配により有意に増大した表面積を有するAPIを提供する。様々な実施形態において、APIは、ビヒクルに対して(i)完全可溶、(ii)完全不溶、および/または(iii)部分可溶である。この相の多様性は、経口投与製剤におけるバイオアベイラビリティーの改善および摂食/絶食による変動性の低減を助ける。いくつかの実施形態において、経口投与製剤は、固形剤形であり、他の実施形態では、液状剤形である。
【0052】
[0053] 本発明の一実施形態において、好ましくはヒトなどの哺乳動物に、絶食条件下で投与された薬物と摂食条件下で投与された同一薬物(および同一薬物量)との間でのAUC、Cmax、Tmax、またはこれらの任意組合せの差は、約1000%未満、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である。
【0053】
[0054] 本発明のさらに別の実施形態において、ヒトなどの哺乳動物に対して摂食条件下で投与された本発明の組成物は、絶食条件下で投与された同一組成物と生物学的に同等である。本発明の別の実施形態において、「生物学的同等性」は、規制ガイドラインによって定義されている。米国食品医薬品庁(U.S.FDA)ガイドラインによれば、2つの製品または方法は、AUCおよびCmaxに関する90%信頼区間(CI)が0.80〜1.25であるなら、生物学的に同等である(Tmaxの測定値は、規制目的については生物学的同等性に関連しない)。以前には、生物学的同等性を示す欧州医薬品庁(EMEA)ガイドラインは、AUCについて0.80〜1.25の90%信頼区間、およびCmaxについては0.70〜1.43の90%信頼区間を必要としていたが、EMEAは、最近、U.S.FDAガイドラインを採用している。
【0054】
[0055] このような制約に拘束されるものではないが、後に提供する実施例では、ラットモデルにおける摂食状態と絶食状態の間でのバイオアベイラビリティーの変動を低減し得る程度を例示する。したがって、APIがフェノフィブラートであるいくつかの実施形態において、製剤は、ラットまたはラットモデルで試験した場合に、摂食状態と絶食状態の間で90,000h*ng/ml未満、約85,000h*ng/ml未満、約80,000h*ng/ml未満、約75,000h*ng/ml未満、約70,000h*ng/ml未満、約65,000h*ng/ml未満、または約60,000h*ng/ml未満の平均AUCの変化を示す可能性がある。
【0055】
[0056] 相対曝露量も、摂食/絶食による変動性を表現するのに使用できる。したがって、活性薬剤が本明細書に記載の任意のAPIである、例えば、限定はされないが活性薬剤がフェノフィブラートであるいくつかの実施形態において、製剤は、摂食状態と絶食状態の間で約1000%未満、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、または約3%未満の相対曝露量の変化を示す可能性がある。
【0056】
[0057] 他の実施形態において、本発明は、(a)活性医薬成分が、限定はされないがフェノフィブラートを含む本明細書に記載の任意の活性薬剤であり、(b)哺乳動物に投与した際に、製剤が摂食状態と絶食状態との間で平均AUC、平均Cmax、および/またはTmaxの最小の差を示す製剤を提供する。
【0057】
[0058] さらに他の実施形態において、ラットまたはラットモデルで試験した場合に、本発明の製剤は、約90,000h*ng/ml未満、約85,000h*ng/ml未満、約80,000h*ng/ml未満、約75,000h*ng/ml未満、約70,000h*ng/ml未満、約65,000h*ng/ml未満、約60,000h*ng/ml未満、約55,000h*ng/ml未満、約50,000h*ng/ml未満、約45,000h*ng/ml未満、約40,000h*ng/ml未満、約35,000h*ng/ml未満、約30,000h*ng/ml未満、約25,000h*ng/ml未満、約20,000h*ng/ml未満、約15,000h*ng/ml未満、および約10,000h*ng/ml未満からなる群から選択される摂食状態と絶食状態との間での平均AUCの差を示す。
【0058】
[0059] 摂食状態と絶食状態との間でのAUCの差は、限定はされないが、任意の2つの測定されたAUC値間の百分率差、または相対曝露量値間の差を含む、いくつかの方法で表現できる。したがって、いくつかの実施形態において、哺乳動物に投与した際に、絶食状態で測定された平均AUC、平均Cmax、および/または平均Tmaxと摂食状態で測定された平均AUC、平均Cmax、および/または平均Tmaxとの間の百分率差は、約1000%未満、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満である。他の実施形態において、百分率差は、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、および約0.05%未満からなる群から選択される。
【0059】
[0060] 本発明の他の実施形態において、本発明は、(a)活性医薬成分が、限定はされないが、フェノフィブラートでよく、かつ(b)哺乳動物に投与した際に、製剤が、摂食状態と絶食状態との間で約1000%未満の相対曝露量の差を示す製剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤は、摂食状態と絶食状態との間で、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、および約3%未満からなる群から選択される相対曝露量の差を示す。
【0060】
(C.固形および液状形態の多相組成物)
[0061] 一態様において、経口剤形中に、(1)微粒子状態、可溶化状態、または微粒子状態および可溶化状態の両方である活性医薬成分、(2)溶媒、(3)非混和性液体、(4)安定剤、および(5)水を含む多相医薬組成物を含有する医薬製剤が提供される。このような医薬製剤中に、多相医薬組成物は、好ましくは、約1〜90wt%で存在する。
【0061】
[0062] 本明細書中で具体化される医薬製剤の経口剤形は、固形または液状剤形でよい。このような固形または液状形態は、カプセル剤、乳剤、錠剤などの当業者に周知の適切な剤形に製剤できる。いくつかの実施形態において、多相医薬組成物は、医薬製剤中に約0.1wt%〜約90wt%で存在する。いくつかの実施形態において、APIは、医薬製剤中に約0.1〜約70wt%で存在する。
【0062】
[0063] 多相医薬組成物において、APIが粒子状態および可溶化状態の両方で存在する場合、粒子状態のAPI量および可溶化状態のAPI量は変わり得る。いくつかの実施形態において、微粒子状態のAPIの量は、約5wt%〜約95wt%、約10wt%〜約90wt%、約15wt%〜約85wt%、約20wt%〜約80wt%、約25wt%〜約78wt%、約30wt%〜約75wt%、約35wt%〜約73wt%、約40wt%〜約70wt%、約45wt%〜約70wt%、約50wt%〜約70wt%、約60wt%〜約70wt%、および/または約65wt%〜約70wt%の範囲である。いくつかの実施形態において、可溶化されたAPIの量は、約0.5wt%〜約80wt%、約1.0wt%〜約75wt%、約5wt%〜約70wt%、約10wt%〜約65wt%、約15wt%〜約60wt%、約20wt%〜約55wt%、約25wt%〜約50wt%、約25wt%〜約45wt%、約25wt%〜約40wt%、約28wt%〜約35wt%、および/または約28wt%〜約33wt%の範囲である。多相組成物のための微粒子状態のAPI量および可溶化状態のAPI量は、微粒子状態のAPI量と可溶化状態のAPI量との重量比として表現することもできる。例えば、このような比率は、約95:5〜約5:95の範囲でよい。いくつかの実施形態において、該比率は、約90:10、約85:15、約80:20、約75:25、約70:30、約65:35、約60:40、約55:45、約50:50、約45:55、約40:60、約35:65、約30:70、約25:75、約20:80、約15:85、約10:90、または約5:95である。
【0063】
[0064] 経口剤形が固形剤形である事例において、本明細書中で具体化される医薬製剤は、多相医薬組成物および吸着性担体を含有する。理論によって拘束されるものではないが、吸着性担体は、多相医薬組成物中に存在する非混和性液体(いくつかの実施形態ではオイル)を吸着して、固形剤形の医薬製剤の形成を助ける。具体化される医薬製剤中で使用するのに適した吸着性担体には、多孔性材料、クレー、ケイ酸塩、セルロースをベースにしたポリマー、マイクロスポンジ、その他の合成ポリマー、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的なクレーには、アタパルジャイト、ベントナイト、カオリン、パーライト、タルク、バーミキュライト、ゼオライト、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的なケイ酸塩には、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、含水ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、アルミノメタケイ酸マグネシウム、およびこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。セルロースをベースにした典型的なポリマーには、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。吸着性担体として使用するのに適したその他の合成ポリマーには、架橋されたアクリルポリマー、ポリプロピレン、ポリウレタンフォーム、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。
【0064】
[0065] 具体化される固形剤形中で使用できるその他の吸着性担体には、限定はされないが、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム無水物、リン酸二カルシウム脱水物、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、乳糖、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マンニトール、二酸化ケイ素、グリコール酸デンプンナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、蔗糖、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。
【0065】
[0066] 具体化される固形剤形中にはその他の担体および添加物を含めることもできる。このようなその他の担体および添加物を使用して、医薬製剤に、結合、着色、圧縮、充填、風味、滑沢、および/または保存特性を付与することができるか、あるいはそれらを、当業者にとって周知のその他の目的のために使用できる。例えば、その他の担体および添加物としては、限定はされないが、ポリマー性担体、リン脂質担体、潤滑油、酸化防止剤、着色剤、風味剤、保存剤、甘味剤、揮発性油、および/またはこれらのいずれか2種以上の混合物を挙げることができる。
【0066】
[0067] 具体化される医薬製剤中で使用できる典型的なポリマー性担体には、限定はされないが、カルボマー、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ドクサートナトリウム、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ポリアニオン性β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−7−β−シクロデキストリン、メタクリル酸コポリマー、ポロキサマー、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレートポリマー、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸−アクリル酸エチル)、アンモニオメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)、ポリ(アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル)、多糖、約20,000〜約200,000g/モルの平均分子量を有するポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン/酢酸ビニル、約2,500〜約300,000g/モルの平均分子量を有するポビドン、ポロキサマー、グリコール酸デンプンナトリウム、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な多糖には、限定はされないが、アラビアゴム、アルギン酸、カラゲナン、セラトニア、キトサン、圧縮糖、粉糖(confectioner's sugar)、デキストレート、デキストリン、デキストロース、果糖、フマル酸、ゼラチン、ブドウ糖、液体、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ラクチトール、乳糖、マルトデキストリン、麦芽糖、マンニトール、ポリデキストロース、ポリメタクリレート、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、不捻性トウモロコシ、蔗糖、球糖、トラガカントガム、トレハロース、キシリトール、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。
【0067】
[0068] ポリマー性担体のいくつかは、崩壊剤、圧縮助剤、または結合剤として当技術分野で多様に知られている可能性がある。例えば、崩壊剤としては、限定はされないが、セルロースをベースにしたポリマー;多糖;クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ドクサートナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、ポビドンなどのその他の材料;またはこれらのいずれか2種以上の混合物;さらには崩壊剤として有用であることが当業者に周知のその他の材料および混合物を挙げることができる。圧縮助剤としては、限定はされないが、多糖およびセルロースをベースにしたポリマー、さらには無機塩などの非ポリマー性材料、例えば、限定はされないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化ナトリウムを挙げることができる。結合剤としては、多糖およびその他の合成または半合成ポリマーなどの材料を挙げることができる。
【0068】
[0069] 具体化される医薬製剤中で使用できる典型的なリン脂質担体には、限定はされないが、ジホスファチジルグリセロール、糖脂質、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な潤滑油には、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、軽質鉱油、微細化ポロキサマー(micronized polyxamers)、ポリエチレングリコール、l−ロイシン、植物油が含まれる。
【0069】
[0070] 本明細書中で具体化される液状および/または固形剤形は、限定はされないが、酸化防止剤、着色剤、風味剤、保存剤、甘味剤、揮発性油、またはこれらのいずれか2種以上の混合物などの、薬学上許容される添加物を含むこともできる。典型的な酸化防止剤には、限定はされないが、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸の塩、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウム、ビタミンE、ビタミンEのエステル、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な保存剤には、限定はされないが、ブチルパラベン、ソルビン酸カルシウム、エチルパラベン、メチルパラベン、モノチオグリセロール、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な甘味剤には、限定はされないが、アスパルテーム、グリシルリチン塩、グリチルリチン一アンモニウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、糖、スクラロース、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な風味剤には、限定はされないが、アニス、バナナ、チェリー、チョコレート、クエン酸、レモン、メントール、オレンジ、ペパーミント、パイナップル、ラム、クエン酸ナトリウム、ストロベリー、バニリン、エチルバニリン、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な着色剤には、限定はされないが、FD&Cブルー#1、FD&Cブルー#2、FD&Cグリーン#3、FD&C赤色#3、FD&C赤色#4、FD&C黄色#5、FD&C黄色#6、D&Cブルー#4、D&Cグリーン#5、D&Cグリーン#6、D&Cオレンジ#4、D&Cオレンジ#5、酸化鉄、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的な揮発性油には、限定はされないが、セイヨウヤマハッカ油、ベイ油、ベルガモット油、シーダー油、チェリー油、シナモン油、クローブ油、ハナハッカ油、ペパーミント油、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。
【0070】
[0071] 対象に対する医薬の経口、頬腔内、または直腸投与のために、カプセル剤、錠剤、ロゼンジ、および/またはカシェ剤などの固形剤形を使用することは、当技術分野で周知である。本明細書中で具体化される医薬製剤は、このようなカプセル剤、錠剤、ロゼンジ、および/またはカシェ剤などの調合物中で使用できる。液剤、乳剤、カプセル剤など調合物中で使用できる。カプセル剤は、硬質または軟質でよく、限定はされないがセルロース材料、ゼラチン、カラゲナン、寒天、およびペクチンを含む当業者に周知の各種材料で製造することができる。このような固形剤形を水性媒体中に入れると、製剤は、崩壊して活性医薬成分を放出する。
【0071】
[0072] 対象に医薬を経口で投与するために、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、カプセル剤などの液状剤形を使用することは、当技術分野で周知である。本明細書中で具体化される製剤は、このような液剤、乳剤、カプセル剤などの調合物中で使用できる。カプセル剤は、硬質または軟質でよく、限定はされないがセルロース材料、ゼラチン、カラゲナン、寒天、およびペクチンを含む当業者に周知の各種材料で製造することができる。
【0072】
[0073] 具体化される多相医薬組成物中で有用な活性医薬成分には、多相組成物に適した任意のAPIが含まれる。例えば、適切なAPIとしては、限定はされないが、AIDSの治療で使用される薬剤、心臓障害の治療で使用される薬剤、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗狭心症薬、抗不整脈薬、抗コリン薬、抗凝血薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗利尿薬、制吐薬、抗癲癇薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、抗炎症薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、収斂薬、遮断薬、血液製剤、代用血液、心臓変力薬、心血管作動薬、中枢神経系薬、キレート薬、化学療法薬、コロニー刺激因子、コルチコステロイド、鎮咳薬、皮膚科用薬剤、利尿薬、ドーパミン作用薬、エラスターゼ阻害薬、内分泌薬、麦角アルカロイド、去淡薬、胃腸薬、泌尿生殖器薬、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン、血管病薬、造血薬、止血薬、ホルモン、免疫薬、免疫抑制薬、インターロイキン、インターロイキン類似体、脂質調節薬、黄体形成ホルモン放出ホルモン、筋弛緩薬、麻薬拮抗薬、栄養剤、栄養薬、腫瘍治療薬、有機ニトレート、副交感神経刺激薬、プロスタグランジン、抗生物質、腎臓作用薬、呼吸器薬、鎮静薬、性ホルモン、刺激薬、交感神経作動薬、全身性抗感染薬、タクロリムス、血栓溶解薬、甲状腺薬、注意欠陥障害用治療薬、子宮賦活薬、ワクチン、血管拡張薬、キサンチン、コレステロール低下薬、限定はされないがタンパク質、ペプチドおよび抗体を含むバイオテクノロジー製品、あるいはこれらのいずれか2種以上の混合物を挙げることができる。APIの具体例は、当業者によって容易に認識され、限定はされないが、ラロキシフェン;アシクロビルなどの抗ウイルス性化合物;通年性および季節性のアレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、アレルギー性結膜炎、軽症無併発性蕁麻疹および血管浮腫に関連する症状の軽減で;あるいは血液または血漿に対するアレルギー反応、または皮膚描記症の改善で、あるいはアナフィラキシー反応での補助的療法として有用な化合物を挙げることができる。このような化合物の例には、限定はされないが、ロラチジン、デスロラチジン、およびセチリジンが含まれる。名称または部類によって識別される上記APIのいずれか2種以上の混合物も、本明細書中で具体化される。
【0073】
[0074] いくつかの実施形態において、活性医薬成分は、ナルトレキソン、アレンドロン酸、ニコチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、フェノフィブラート、ダナゾール、ナプロキセン、シルデナフィル、グリセオフルビン、マイコフェノレートモフェチル、シクロスポリンまたはシロリムスなどの免疫抑制薬、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である。
【0074】
[0075] 具体化される医薬製剤で有用な溶媒には、限定はされないが、アルコール、N−メチルピロリジノン、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エトキシジグリコール、トリアセチン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、モノ−、ジ−またはトリ−グリセリド、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。典型的なアルコールには、ベンジルアルコール、エチルアルコール、またはこれらの2種以上の混合物が含まれる。典型的なポリエチレングリコールは、約1000g/モル以上の平均分子量を有し、メトキシポリエチレングリコールは、約1000g/モル以上の平均分子量を有する。他の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約1000g/モル〜約20,000g/モルの平均分子量を有し、メトキシポリエチレングリコールは、約1000g/モル〜約20,000g/モルの平均分子量を有する。
【0075】
[0076] 具体化される医薬製剤中で使用するための非混和性液体には、限定はされないが、脂肪酸、中鎖グリセリド、長鎖グリセリド、脂肪酸のエチルエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリグリセリルエステル、グリセリルモノ−、ジ−またはトリ−カプリル酸エステル、グリセリルモノ−、ジ−またはトリカプリン酸エステル、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。非混和性液体には、また、植物油、堅果油、魚油、ラード油、鉱油、スクアラン、トリカプリリン(1,2,3−トリオクタノイルグリセロール)、およびこれらのいずれか2種以上の混合物が含まれる。例えば、アーモンド油(スイート)、アプリコット種子油、ルリジサ油、カノーラ油、ココヤシ油、コーン油、綿実油、魚油、ホホバ種子油、ラード油、亜麻仁油(ボイル処理)、マカダミアナッツ油、中鎖トリグリセリド、鉱油、オリーブ油、ハナハッカ油、ピーナツ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、小麦麦芽油、鉱油(軽質)、DL−α−トコフェロール、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミトステアリン酸、ペパーミント油、オレイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸、モノオレイン酸テトラグリセリル、またはこれらのいずれか2種以上の混合物が、具体化される医薬製剤中で使用するための非混和性液体の全ての例である。
【0076】
[0077] 具体化される医薬製剤中で有用な安定剤には、限定はされないが、非リン脂質界面活性剤、非フェノールポリエチレングリコールエーテル、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコールエステル、ブロックポリマー、アクリルポリマー、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化アルコール、エトキシル化脂肪酸エステル、モノグリセリド、ケイ素をベースにした界面活性剤、ポリソルベート、テルギトール、糖脂肪酸エステル;蔗糖モノ−、ジ−またはトリ−脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンヒマシ油化合物、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンのモノ−またはジ−脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリルモノ−、ジ−またはトリ−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノ−またはジ−C〜C22脂肪酸エステルの混合物、グリセリルモノ−、ジ−またはトリC〜C22脂肪酸エステル、あるいはこれらのいずれか2種の混合物が含まれる。例えば、安定剤は、ARLACEL(商標)、BRIJ(商標)、Cremophore RH−40、モノステアリン酸グリセリン、PEMULEN(商標)、Pluronics(商標)ステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル60水素化ヒマシ油、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、オレイン酸ポリオキシル40、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル10オレイルエーテル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、SPAN(商標)、TERGITOL(商標)NP−40,TERGITOL(商標)NP−70、コハク酸DL−α−トコフェリルポリエチレングリコール、TWEEN(商標)20、TWEEN(商標)60、TWEEN(商標)80、またはこれらのいずれか2種以上の混合物でよい。
【0077】
[0078] 医薬製剤の調製方法も提供される。このような方法は、活性医薬成分、溶媒、安定剤、および非混和性液体を混合して第1混合物を形成し、該第1混合物を水で乳化し、次に経口剤形として製剤化される多相医薬組成物を形成することを含む。経口剤形が固形剤形である場合、該方法は、乳化された第1混合物を吸着性担体と混合することをさらに含む。このような方法は、固形剤形をプレスしてカプセル剤または錠剤にすること、あるいはカプセル剤を液状剤形で満たすことをさらに含むことができる、このような具体化される方法において、APIは、カプセル剤または錠剤の約0.1〜約70wt%を占めることができる。
【0078】
[0079] いくつかの具体化される方法および具体化される医薬製剤において、多相組成物は、非混和性液体の小滴を含み、該小滴は、約10μm未満の直径を有する。例えば、小滴は、約9μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約6μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約290nm未満、約280nm未満、約270nm未満、約260nm未満、約250nm未満、約240nm未満、約230nm未満、約220nm未満、約210nm未満、約200nm未満、約190nm未満、約180nm未満、約170nm未満、約160nm未満、約150nm未満、約140nm未満、約130nm未満、約120nm未満、約110nm未満、約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満の直径を有することができる。
【0079】
[0080] いくつかの具体化される方法および医薬製剤において、多相組成物は、APIの少なくとも一部を微粒子形態で含有する。いくつかの実施形態において、微粒子形態の粒子の平均直径は、約1nm〜約10μmである。いくつかの実施形態において、微粒子形態の粒子の平均直径は、約10μm未満である。例えば、粒子の平均直径は、約9μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約6μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満、または約1μm以上でよい。他の実施形態において、粒子の平均直径は、約1μm未満、例えば、約1nm〜約1μmである。例えば、API粒子の直径は、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約290nm未満、約280nm未満、約270nm未満、約260nm未満、約250nm未満、約240nm未満、約230nm未満、約220nm未満、約210nm未満、約200nm未満、約190nm未満、約180nm未満、約170nm未満、約160nm未満、約150nm未満、約140nm未満、約130nm未満、約120nm未満、約110nm未満、約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満でよい。
【0080】
[0081] 当業者は、APIの有効量は、経験的に決定することができ、純粋な形態で、あるいは、そのような形態が存在する場合には薬学上許容される塩、エステル、またはプロドラッグの形態で用いることを認識するであろう。本発明のナノ微粒子組成物中でのAPIの実際の投与量レベルは、特定の組成物および投与方法に関して所望の治療応答を得るのに有効であるAPI量を達成するように変えることができる。選択される投与量レベルは、したがって、所望される治療効果、投与経路、投与するAPIの効力、所望される治療期間、およびその他の因子によって決まる。
【0081】
[0082] 投与単位組成物は、日用量を構成するのに用いることができるような量またはその約量を含むことができる。しかし、任意の個々の患者に対する具体的な投与量レベルは、種々の因子:達成すべき細胞または生理学的応答の型および程度;採用する具体的な薬剤または組成物の活性;採用する具体的薬剤または組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、および食餌;投与時刻、投与経路および薬剤の排泄速度;治療継続期間;特定の薬剤と併用してまたは同時的に使用される薬物;ならびに医学の技術分野で周知の同様の因子によって決まることを理解するであろう。
【0082】
[0083] 当業者は、議論されるすべての範囲および比率が、すべての目的に関してその中のすべての下位範囲または下位比率をも記述することができ、また必然的に記述すること、またすべてのこのような下位範囲および下位比率が、本発明の部分および一群を構成することを容易に理解するであろう。挙げられた任意の範囲または比率は、同範囲または比率が均等な少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されることを十分に記述し、かつ可能にするものとして容易に認識できる。非制限的例として、本明細書中で議論されるそれぞれの範囲または比率は、下位の3分の1、中間の3分の1、上位の3分の1などに容易に分割できる。
【0083】
[0084] 本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許出願、発行済み特許、およびその他の文献は、もしあれば、すべての目的に関して、それぞれ個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、またはその他の文献の全体が参照により組み込まれていると具体的かつ個別的に示されるように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる原文中に含まれる定義は、それらの定義が、本開示中の定義に矛盾する範囲を限度として無視される。
【0084】
[0085] このように一般的に説明された本発明は、例示的方法によって提供され、本発明を限定することを意図したものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0085】
(製剤I:対照)
[0086] 非微細化フェノフィブラート粉末を、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、E4M級)に懸濁して0.5wt%懸濁液(懸濁液1gにつき48mgのフェノフィブラート)を得た。該懸濁液を、塊および/または凝集物のない均一な懸濁液を確保するために十分に混合した。
【0086】
(製剤II:標準)
[0087] TriCor錠剤(錠剤当たり48mgのフェノフィブラート、Abbott Pharmaから入手できる)を、乳鉢および乳棒を使用して凝集物のない粉砕物が得られるまで粉末化した。次いで、粉砕物を、1mLの精製水に懸濁して均一な懸濁液を得た。
【0087】
(製剤III:試験I)
[0088] フェノフィブラート(4.8g)を、エタノール(8.8g)、ポリソルベート80(9.4g)、およびダイズ油(50.2g)と混合した。水(26.8g)を添加し、全混合物を、パドル型撹拌機を用いて乳化にかけた。次いで、生じた乳剤を、3サイクルの10,000psiでの高圧均質化(APV-1000)にかけた。
【0088】
(製剤IV:試験II)
[0089] フェノフィブラート(4.8g)を、エタノール(15g)および中鎖トリグリセリド(40.0g、Crodamol GTCC)と混合した。撹拌しながら、混合物を温めて(40℃)、フェノフィブラートを溶解した。別個に、ポロキサマー188(7.0g)を水(33.2g)に溶解して溶液を形成し、次いで、この溶液をフェノフィブラート溶液に添加した。生じた混合物を、パドル型撹拌機を用いて乳化にかけた。乳剤を3サイクルの10,000psiでの高圧均質化(APV-1000)にさらにかけた。
【0089】
(臨床前研究)
[0090] 研究は、ラットにおいて、経口胃管栄養法を使用して動物の体重kg当たり90mgのフェノフィブラート投与量で製剤I〜IVを投与し、次いでフェノフィブリン酸の血中濃度を時間の関数として観察することによって実施した。フェノフィブリン酸は、対象へのフェノフィブラートの投与に由来する活性のある主要代謝産物である。
【0090】
(第I相:対照と比較して改善されたバイオアベイラビリティーの実証)
[0091] 第I相では、対照製剤、標準製剤、および試験Iの製剤を、絶食条件下で比較した。この最初の研究では、1群につき5尾のラットを使用した。各ラットに、90mg/kgのフェノフィブラートを単回投与した。24時間にわたる血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)(吸収薬物量またはバイオアベイラビリティーに対応している)、Cmax(血中における最大薬物濃度)、およびTmax(Cmaxに到達するまでの時間)を、3群のそれぞれについて測定した。データを下表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
[0092] 次いで、投与量および平均AUCを使用して、各群に対する相対曝露量(%)を計算した。「相対曝露量」は、対象におけるAPIの全バイオアベイラビリティーの程度を表す。相対曝露量は、試験製剤および対照製剤が、最良の結果を与えた製剤に関してどのように機能するかを表している。この場合、最良の結果を有する製剤は、他の製剤を正規化する基準(100%)となる標準製剤であった。このデータを表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
[0093] 表1および2は、標準および試験Iの製剤の両方が、対照製剤に比較した場合に、フェノフィブラートの経口バイオアベイラビリティーの改善を示している。標準製剤は、試験Iの製剤と比較して、統計的に有意により高いバイオアベイラビリティーを提示した。
【0095】
(第II相:摂食/絶食による変動性の排除)
[0094] 第II相では、標準および試験IIの製剤を、摂食および絶食条件下で比較した。ラットを、5尾のラットからなるそれぞれ4つの群:(i)標準−絶食、(ii)標準−摂食、(iii)試験II−絶食、および(iv)試験II−摂食に分割した。90mg/kgのフェノフィブラート投与量に相当する量の各製剤を、単回経口投与として投与し、生じる血中薬物動態を評価した(表3)。
【0096】
【表3】

【0097】
[0095] 表3が示すように、2つの製剤の各々に関するAUC間の差は、摂食および絶食の両方の条件下で、統計的に有意ではなかった。換言すれば、標準製剤の場合、摂食状態と絶食状態の間でラットにおけるフェノフィブラートのバイオアベイラビリティーに差がなかった。試験IIの製剤についても同様であった。前述のように、このデータは、表4に示すように相対曝露量によって表すことができる。
【0098】
【表4】

【0099】
[0096] 表4は、試験IIの製剤が、標準製剤に比較してより大きな相対曝露量を有することを明瞭に示している。AUCで表現すると、試験IIの製剤からのより大きな曝露は、標準製剤と比較して統計的に有意な改善を提供する。したがって、試験IIの製剤は、経口バイオアベイラビリティーの改善および摂食/絶食による変動性の低減に関して、現在市販されているフェノフィブラート用の製剤に優る有意な改善を有すると結論付けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口剤形中に多相医薬組成物を含有する医薬製剤であって、
(a)該組成物が、同一投与量の同一活性医薬成分の従来技術による医薬組成物と比較して、絶食条件下と比較して摂食条件下で哺乳動物へ該組成物を投与した後における平均AUC、平均Cmax、および/または平均Tmaxの変動性の低減を示し、かつ
(b)該組成物が、
(i)微粒子状態、可溶化状態、あるいは微粒子状態および可溶化状態の両方である活性医薬成分;
(ii)溶媒;
(iii)非混和性液体;
(iv)安定剤;および
(v)水
を含む医薬製剤。
【請求項2】
哺乳動物に投与した際に、絶食条件下で投与された同一組成物の吸収プロフィールと類似のまたは生物学的に同等の摂食条件下での吸収プロフィールを示す、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記哺乳動物がヒトである、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記組成物をラットまたはラットモデルに投与した際に、摂食状態で測定された平均AUCと絶食状態で測定された平均AUCとの差が、約90,000h*ng/ml未満である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記の差が、約85,000h*ng/ml未満、約80,000h*ng/ml未満、約75,000h*ng/ml未満、約70,000h*ng/ml未満、約65,000h*ng/ml未満、約60,000h*ng/ml未満、約55,000h*ng/ml未満、約50,000h*ng/ml未満、約45,000h*ng/ml未満、約40,000h*ng/ml未満、約35,000h*ng/ml未満、約30,000h*ng/ml未満、約25,000h*ng/ml未満、約20,000h*ng/ml未満、約15,000h*ng/ml未満、および約10,000h*ng/ml未満からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
哺乳動物に投与した際に、絶食状態で測定された平均AUC、平均Cmax、および/または平均Tmaxと摂食状態で測定された平均AUCとのパーセント差が、約1000%未満である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記パーセント差が、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、および約0.5%未満からなる群から選択される、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
哺乳動物に投与した際に、摂食状態と絶食状態との間で約1000%未満の活性医薬成分の相対曝露量の差を示す、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
摂食状態と絶食状態との間での前記相対曝露量の差が、約900%未満、約800%未満、約700%未満、約600%未満、約500%未満、約400%未満、約300%未満、約200%未満、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、および約3%未満からなる群から選択される、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
吸着性担体、粘度調節剤、着色剤、および風味剤からなる群から選択される1種または複数の化合物をさらに含有し、経口剤形が固形または液状経口剤形である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記多相医薬組成物が、約0.1〜約90wt%で存在する、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記吸着性担体が、クレー、ケイ酸塩、セルロースをベースにしたポリマー、マイクロスポンジ、その他の合成ポリマー、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記吸着性担体が、アタパルジャイト、ベントナイト、カオリン、パーライト、タルク、バーミキュライト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、含水ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、アルミノメタケイ酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、架橋アクリルポリマー、ポリプロピレン、ポリウレタンフォーム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム無水物、リン酸二カルシウム脱水物、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、乳糖、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マンニトール、二酸化ケイ素、グリコール酸デンプンナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、蔗糖、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項14】
潤滑油、崩壊剤、またはこれらの混合物をさらに含有する、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記潤滑油が、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、軽質鉱油、微細化ポロキサマー、ポリエチレングリコール、l−ロイシン、植物油、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記固形製剤が、カプセル剤または錠剤である、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項17】
水性媒体中に沈積した際に、崩壊して活性医薬成分を放出する、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記経口剤形が、液状剤形である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記液状剤形が、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、またはエリキシル剤である、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記活性医薬成分が、AIDSの治療で使用される薬剤、心臓障害の治療で使用される薬剤、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗狭心症薬、抗不整脈薬、抗コリン薬、抗凝血薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗利尿薬、制吐薬、抗癲癇薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、抗炎症薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、収斂薬、遮断薬、血液製剤、代用血液、心臓変力薬、心血管作動薬、中枢神経系薬、キレート薬、化学療法薬、コロニー刺激因子、コルチコステロイド、鎮咳薬、皮膚科用薬剤、利尿薬、ドーパミン作用薬、エラスターゼ阻害薬、内分泌薬、麦角アルカロイド、去淡薬、胃腸薬、泌尿生殖器薬、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン、血管病薬、造血薬、止血薬、ホルモン、免疫薬、免疫抑制薬、インターロイキン、インターロイキン類似体、脂質調節薬、黄体形成ホルモン放出ホルモン、筋弛緩薬、麻薬拮抗薬、栄養剤、栄養薬、腫瘍治療薬、有機ニトレート、副交感神経刺激薬、プロスタグランジン、抗生物質、腎臓作用薬、呼吸器薬、鎮静薬、性ホルモン、刺激薬、交感神経作動薬、全身性抗感染薬、タクロリムス、血栓溶解薬、甲状腺薬、注意欠陥障害用治療薬、子宮賦活薬、ワクチン、血管拡張薬、キサンチン、またはこれらのいずれか2種以上の混合物から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記活性医薬成分が、フェノフィブラート、シクロスポリン、シロリスム、ダナゾール、ナプロキセン、シルデナフィル、グリセオフルビン、マイコフェノレートモフェチル、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記溶媒が、アルコール、N−メチルピロリジノン、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エトキシジグリコール、トリアセチン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、モノ−、ジ−またはトリ−グリセリド、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記アルコールが、ベンジルアルコール、エチルアルコール、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記ポリエチレングリコールが、約1000g/モル以上の平均分子量を有し、メトキシポリエチレングリコールが、約1000g/モル以上の平均分子量を有する、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項25】
前記ポリエチレングリコールが、約1000g/モル〜約20,000g/モルの平均分子量を有し、メトキシポリエチレングリコールが、約1000g/モル〜約20,000g/モルの平均分子量を有する、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項26】
前記非混和性液体が、脂肪酸、中鎖グリセリド、長鎖グリセリド、脂肪酸のエチルエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル、グリセリルモノ−、ジ−またはトリ−カプリル酸エステル、グリセリルモノ−、ジ−またはトリ−カプリン酸エステル、あるいはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記非混和性液体が、植物油、堅果油、魚油、ラード油、鉱油、スクアラン、トリカプリリン(1,2,3−トリオクタノイルグリセロール)、およびこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記非混和性液体が、アーモンド油(スイート)、アプリコット種子油、ルリジサ油、カノーラ油、ココヤシ油、コーン油、綿実油、魚油、ホホバ種子油、ラード油、亜麻仁油(ボイル処理)、マカダミアナッツ油、中鎖トリグリセリド、鉱油、オリーブ油、ハナハッカ油、ピーナツ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、小麦麦芽油、鉱油(軽質)、DL−α−トコフェロール、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミトステアリン酸、ペパーミント油、オレイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸、モノオレイン酸テトラグリセリル、またはこれらのいずれか2種以上の混合物である、請求項27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記安定剤が、非リン脂質界面活性剤、非フェノールポリエチレングリコールエーテル;ソルビタンエステル、ポリエチレングリコールエステル、ブロックポリマー、アクリルポリマー、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化アルコール、エトキシル化脂肪酸エステル、モノグリセリド、ケイ素をベースにした界面活性剤、ポリソルベート、テルギトール、糖の脂肪酸エステル、蔗糖のモノ−、ジ−またはトリ−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンのモノ−またはジ−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリルモノ−、ジ−またはトリ−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンとC〜C22脂肪酸とのモノ−またはジ−エステルの混合物、グリセリルとC〜C22脂肪酸とのモノ−、ジ−またはトリエステル、あるいはこれらのいずれか2種以上の混合物から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記安定剤が、ARLACEL(商標)、BRIJ(商標)、Cremophore RH−40、モノステアリン酸グリセリン、PEMULEN(商標)、PLURONIC(商標)、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル60水素化ヒマシ油、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、オレイン酸ポリオキシル40、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル10オレイルエーテル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、SPAN(商標)、TERGITOL(商標)NP−40、TERGITOL(商標)NP−70、コハク酸DL−α−トコフェリルポリエチレングリコール、TWEEN(商標)20、TWEEN(商標)60、TWEEN(商標)80、またはこれらのいずれか2種以上の混合物から選択される、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記多相医薬組成物が、非混和性液体の小滴を含み、該小滴が、約10μm未満の直径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項32】
前記小滴が、約9μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約6μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約290nm未満、約280nm未満、約270nm未満、約260nm未満、約250nm未満、約240nm未満、約230nm未満、約220nm未満、約210nm未満、約200nm未満、約190nm未満、約180nm未満、約170nm未満、約160nm未満、約150nm未満、約140nm未満、約130nm未満、約120nm未満、約110nm未満、約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満の直径を有する、請求項31に記載の医薬製剤。
【請求項33】
微粒子状態の粒子の平均直径が、約1μm未満である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記平均直径が、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約290nm未満、約280nm未満、約270nm未満、約260nm未満、約250nm未満、約240nm未満、約230nm未満、約220nm未満、約210nm未満、約200nm未満、約190nm未満、約180nm未満、約170nm未満、約160nm未満、約150nm未満、約140nm未満、約130nm未満、約120nm未満、約110nm未満、約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満である、請求項33に記載の医薬製剤。
【請求項35】
酸化防止剤、着色剤、風味剤、保存剤、甘味剤、揮発性油、またはこれらのいずれか2種以上の混合物をさらに含有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項36】
(a)活性医薬成分、溶媒、安定剤、および非混和性液体を混合して第1混合物を形成すること、
(b)該第1混合物を水と乳化して多相医薬組成物を形成すること、および
(c)該多相医薬組成物を経口剤形として製剤化すること
を含む、請求項1に記載の医薬製剤の調製方法。
【請求項37】
前記経口剤形が、液状剤形または固形剤形である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記経口剤形が固体剤形であり、
(d)乳化された第1混合物を吸着性担体と混合すること
をさらに含む、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516704(P2010−516704A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546570(P2009−546570)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/051639
【国際公開番号】WO2008/091855
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(507301246)ノババックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】