説明

摘出物スライス補助具及び補助装置

【課題】複数の針が相互に平行な状態に維持され長期間にわたって適切に摘出物をスライスできるとともに、使用後に摘出物から容易に分離できるようにする。
【解決手段】水平方向成分を有する方向に延びるベース30と、等間隔を隔ててベース30に対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針50と、複数の孔61に対して複数の針50が各々挿通して、複数の針50の長さ方向に沿ってほぼ鉛直に移動可能である針間隔規定具60と、ベース30の上側においてベース30に沿って延びる操作部材70と、複数の針50を挟んでほぼ鉛直に延び、ベース30に設けられた貫通孔61を摺動可能に貫通し、針間隔規定具60と操作部材70を連結する貫通連結棒75とを有する。針間隔規定具60は、最も下降した最下降位置として、複数の針50の先端部が針間隔規定具60の下縁部と上縁部との間に位置する針先包含位置まで移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際に使用される補助具等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の診断又は研究のために、病理検査が行われる。
病理検査とは、手術,生検等によって人体等から摘出された疾患を有する臓器,組織等の摘出物から病理標本を作成し、その病理標本について、顕微鏡等を用いて医学的見地から検査することをいう。
例えば、胃ガンの病理検査が行われる際には、胃(その全部又は一部)が摘出され、その摘出された胃(摘出物)から病理標本が作成され、その病理標本が検査される。
こうして、胃ガンの広がり(摘出物における断端の状態を含む),進行,良性・悪性の程度,脈管侵襲の有無等が診断される。
なお、ここで、「摘出物における断端」とは、切断されて摘出された摘出物の当該切断面であるが、その断端の状態を正確に診断するためには当該摘出物の内部の情報も重要であり、内部とともに当該断端の状態が正確に診断されると、胃ガンの広がり等がより明確に診断され得るのである。
【0003】
ある程度以上の大きさの摘出物から病理標本を作成する際の第1の段階として、摘出物を複数(多数)の薄肉状のものにスライス(薄切り)するという工程がある。
そして、最終的な病理標本を高精度のものとするためには、摘出物が均一にスライスされる必要がある。
すなわち、スライスされたもの(「スライス片」ということとする)の各々において、いずれの部位においても肉厚が同一である(これを広義の「均一」ということとする)必要がある。また、それに加えて、複数のスライス片の肉厚が同一である(これを狭義の「均一」ということとする)と、さらに好ましい。
【0004】
以前においては、そのスライスの作業は、次のようにされている。
すなわち、執刀者が、摘出物を自身の一方の手(例えば左手)で押さえて、その摘出物の位置を固定しつつ、他方の手(例えば右手)で、ナイフを用いて、各スライス片における各部位の厚みが同一(広義の均一)になることを目分量等で目指しつつ、さらには、すべてのスライス片の厚みが同一(狭義の均一)になることを同じく目分量等で目指しつつ、その摘出物をスライスするのである。
【0005】
しかしながら、上述の方法では、摘出物が均一にスライスされるか否かは、その執刀者の技量によるところとなり、特別に優れた技量を有する執刀者以外の者がスライスする場合は、摘出物は均一にはスライスされない。また、優れた技量を有する執刀者であっても、その個人によってスライス片の厚みが異なり、スライス片の厚みについて執刀者ごとにバラツキが生じる。
【0006】
そこで、人又は動物から摘出した摘出物をスライスする際に使用される補助具等として、特許文献1に開示されているものがある。
その摘出物スライス補助具は、水平方向成分を有する方向に延びるベースと、前記ベースの延びる方向に沿って整列状態で等間隔を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に(相互に平行に)延びる複数の針とを有している。
そして、摘出物が受け板に載置された状態で、一対の摘出物スライス補助具が摘出物の上方からその摘出物に向けて下降され、各摘出物スライス補助具の針が摘出物に対して突き刺され、摘出物を貫通し、受け板によって保持される。
そのように各摘出物スライス補助具がセットされた状態で、執刀者によって、一方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間と、他方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間とによって形成される空間(「一対隙間形成空間」ということとする)にナイフの刃が挿通され、その一対隙間形成空間に沿って(すなわち、その一対隙間形成空間を形成する2対の針にガイドされつつ)ナイフが下降されることによって、その摘出物が切断される。
上記の切断作業が他の複数の一対隙間形成空間においても行われることによって、摘出物が均一にスライスされ得る。すなわち、各スライス片のいずれの部位においても肉厚が同一となり得る(広義の均一になり得る)。
また、各摘出物スライス補助具が、複数の針が等間隔を隔てて設けられている態様の場合は、すべてのスライス片の肉厚が同一となり得る(狭義の均一になり得る)。
【0007】
しかしながら、上述の摘出物スライス補助具には、次のような改良の余地があることが判明した。
すなわち、その摘出物スライス補助具がセットされる(針が摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく)際に、針には衝撃が加わり、その衝撃によって針が多少曲がることもある。
そして、そのことが長期間(多数回)にわたって繰り返されることによって、徐々に複数の針が相互に平行な状態ではなくなる場合がある。すなわち、その基端部(ベースの側)から先端部に向かうにつれて、隣接する針の間隔が徐々に広がったり狭まったりする場合等がある。
そのようになった場合は、均一(広義の均一・狭義の均一とも)に摘出物をスライスすることが困難又は不可能になってしまうのである。
【0008】
また、摘出物スライス補助具を使用して摘出物がスライスされた後に、その摘出物(すべてのスライス片)及び受け板から摘出物スライス補助具を分離する(すなわち、摘出物等から複数の針を抜く)ことは容易ではない。
すなわち、各針に対して摘出物(各スライス片)及び受け板は密着しているため、摘出物等から複数の針を抜こうとして、摘出物スライス補助具(複数の針)を上昇させようとすると、各針と摘出物(各スライス片)等との間に作用する摩擦力によって、針とともに摘出物(各スライス片)等も上昇してしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−288169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、複数の針が相互に平行な状態に維持され、長期間にわたって適切に摘出物をスライスすることができるとともに、使用後に摘出物から容易に分離することができる摘出物スライス補助具等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助具であって、水平方向成分を有する方向に延びるベースと、前記ベースの延びる方向に沿って相互に隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針と、前記複数の針に対応する複数の孔を有し、当該複数の孔に対して前記複数の針が各々挿通して、前記複数の針の長さ方向に沿ってほぼ鉛直に移動可能である針間隔規定具と、前記ベースの上側において当該ベースに沿って延びる操作部材と、前記ベースの長さ方向において前記複数の針を挟んでほぼ鉛直に延び、前記ベースに設けられた貫通孔を摺動可能に貫通し、前記針間隔規定具と前記操作部材を連結する貫通連結棒とを有する、摘出物スライス補助具である。
【0012】
なお、この発明に関連する発明として、次の発明がある。
「人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助具であって、
水平方向成分を有する方向に延びるベースと、
前記ベースの延びる方向に沿って相互に隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針と、
前記複数の針に対応する複数の孔を有し、当該複数の孔に対して当該複数の針が各々挿通して、当該複数の針の長さ方向に沿って移動可能である針間隔規定具と
を有する、摘出物スライス補助具。」
そして、以下の請求項2,請求項5,請求項7〜請求項9に係る発明において、従属する元の発明として「請求項1に係る発明」を上記の発明に置き換えた発明も考えられる。
【0013】
ここで、「摘出」とは、人体等の内部から内臓等を取り出す場合に限らず、皮膚等、人体等の外表面の一部を構成するものを当該人体等から切断し分離させる場合も含まれる。
「水平方向成分を有する方向に延びる…」「ほぼ鉛直下方に延びる…」とは、使用状態におけるものである。「ほぼ鉛直下方」には「鉛直下方」が含まれる。
【0014】
この発明を限定した態様として、「前記ベースの延びる方向に沿って相互に隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」を「前記ベースの延びる方向に沿って等間隔を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」と置き換えたものが考えられる。
【0015】
この摘出物スライス補助具は一対の状態で使用され、次の作用効果が得られる。
すなわち、摘出物が受け板に載置された状態で、一対の摘出物スライス補助具が対向状態とされつつ、各摘出物スライス補助具が、摘出物の上方からその摘出物に向けて下降され、その各摘出物スライス補助具の針が、摘出物に対して突き刺され、その摘出物を貫通し、受け板に突き刺され、その受け板によって保持される(そのような受け板が使用される)。
このようにして、摘出物が受け板上において所定の位置に容易に固定されるとともに、各摘出物スライス補助具自身も所定の位置に固定される(これを摘出物スライス補助具のセットということとする)。
なお、両摘出物スライス補助具は、2つ同時にセットされてもよいし、1つずつ順次セットされてもよい。
【0016】
上記のように各摘出物スライス補助具がセットされた状態で、執刀者によって、一方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間と、他方の摘出物スライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間とによって形成される空間(「一対隙間形成空間」ということとする)にナイフの刃が挿通され、その一対隙間形成空間に沿って(すなわち、その一対隙間形成空間を形成する2対の針にガイドされつつ)ナイフが下降されることによって、その摘出物が切断される。
上記の切断作業が他の複数の一対隙間形成空間においても行われることによって、摘出物が均一にスライスされ得る。すなわち、各スライス片のいずれの部位においても肉厚が同一となり得る(広義の均一になり得る)。
また、前述したように、この発明を限定した態様として「前記ベースの延びる方向に沿って相互に隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」が「前記ベースの延びる方向に沿って等間隔を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に延びる複数の針」と置き換えられた発明の場合は、すべてのスライス片の肉厚が同一となり得る(狭義の均一になり得る)。
【0017】
そして、この発明の摘出物スライス補助具では、前述のようにセットされる際に、針間隔規定具が次のように使用され、次の作用効果が得られる。
まず、針間隔規定具は、摘出物スライス補助具の複数の針の先端部又は先端部にできるだけ近い位置に位置づけられる。
その状態で、前述のように針が摘出物に向かって下降され、摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく過程(そのすべて又は一部)において、針間隔規定具は、摘出物の上面に当接した状態にあり、針間隔規定具は、針に対して相対的に上方に移動する。
このようにして、この摘出物スライス補助具では、各針が摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく過程(そのすべて又は一部)において、複数の針のうちの摘出物の上面に対応する部分は、針間隔規定具によって、相互の間隔が規定された状態にある。すなわち、複数の針のうちの当該部分は、針間隔規定具の孔の間隔に対応する間隔に規定される。
このため、摘出物スライス補助具がセットされる(複数の針が摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく)際に、その衝撃によって針が曲がることが防止され、複数の針が相互に平行に延びる状態が維持される。
こうして、この発明の摘出物スライス補助具では、長期間にわたって摘出物を均一にスライスすることが可能となるのである。
【0018】
なお、上述のように針間隔規定具が摘出物スライス補助具の複数の針の先端部に維持されることについては、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置で維持する、という態様のほか、請求項2又は請求項3に係る発明において述べる態様がある。
【0019】
また、上述のように摘出物スライス補助具がセットされた後には、針間隔規定具は、摘出物よりも十分に高い位置に(すなわち、ナイフの刃が、針間隔規定具よりも低い高さ位置で、摘出物に対して干渉しない状態で、所定の各一対隙間形成空間に挿通され得る程度に、十分に高い位置に)維持される必要がある。それによって、前述したように執刀者がナイフで摘出物をスライスすることができるからである。
そのように針間隔規定具が高い位置に維持されることについては、執刀者又はその補助者が針間隔規定具をその位置で維持する、という態様のほか、請求項5又は請求項6に係る発明において述べる態様がある。
このことは請求項2に係る発明においても同様である。
【0020】
また、この発明の摘出物スライス補助具では、前述のようにセットされ、スライス作業が行われた後に、次のように使用され、次の作用効果が得られる。
すなわち、針間隔規定具が摘出物(スライスされたもの)に当接した状態で、操作部材が下方に押圧されつつ、ベースが上方に付勢される。
操作部材が下方に押圧されることによって、その押圧力が貫通連結棒を経て針間隔規定具に伝わり、針間隔規定具が摘出物を下方に押圧する。これによって摘出物及び受け板が上昇しようとすることが阻止される。それと同時にベースが上方に付勢されることによって、ベースとともに各針が上昇しようとする。
こうして、摘出物及び受け板が上昇することが阻止されつつ、複数の針は、各針と摘出物及び受け板との間に作用する摩擦力に抗して上昇する(針間隔規定具が複数の針に対して相対的に下降するともいえる)。
このようにして、この摘出物スライス補助具は、摘出物及び受け板から容易に分離されやすくなる(分離される場合も含まれる)。
【0021】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具は、最も下降した最下降位置として、前記複数の針の先端部が当該針間隔規定具の下縁部と上縁部との間に位置する針先包含位置まで移動可能である、摘出物スライス補助具である。
【0022】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具では、針間隔規定具が針先包含位置まで下降し得ることから、前述のようにセットされる際に、針間隔規定具が次のように使用され、次の作用効果が得られる。
まず、針間隔規定具は、針先包含位置に位置づけられる。
その状態で、前述のように針が摘出物に向かって下降され、摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく過程のすべてにおいて、針間隔規定具は、摘出物の上面に当接した状態にあり、針間隔規定具は、針に対して相対的に上方に移動する。
このようにして、この摘出物スライス補助具では、各針が摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく過程のすべてにおいて、複数の針のうちの摘出物の上面に対応する部分は、針間隔規定具によって、相互の間隔が規定された状態にある。すなわち、複数の針のうちの当該部分は、針間隔規定具の孔の間隔に対応する間隔に規定される。
このため、摘出物スライス補助具がセットされる(複数の針が摘出物に対して突き刺されて摘出物を貫通していく)際に、その衝撃によって針が曲がることがより効果的に防止され、複数の針が相互に平行に延びる状態がより効果的に維持される。
こうして、この発明の摘出物スライス補助具では、より長期間にわたって摘出物を均一にスライスすることが可能となるのである。
【0023】
また、この針間隔規定具の摘出物スライス補助具では、前述のようにセットされ、スライス作業が行われた後に、次のように使用され、次の作用効果が得られる。
すなわち、針間隔規定具が摘出物(スライスされたもの)に当接した状態で、操作部材が下方に押圧されつつ、ベースが上方に付勢される。
操作部材が下方に押圧されることによって、その押圧力が貫通連結棒を経て針間隔規定具に伝わり、針間隔規定具が摘出物を下方に押圧する。これによって摘出物及び受け板が上昇しようとすることが阻止される。それと同時にベースが上方に付勢されることによって、ベースとともに各針が上昇しようとする。
こうして、摘出物及び受け板が上昇することが阻止されつつ、複数の針は、各針と摘出物及び受け板との間に作用する摩擦力に抗して上昇する(針間隔規定具が複数の針に対して相対的に下降するともいえる)。
そして、針間隔規定具が最下降位置(又はその近傍)に到ることによって、複数の針は摘出物及び受け板から抜け出る。すなわち、複数の針の先端部が針間隔規定具の下縁部と同じ高さ(摘出物の上面と同じ高さ)に到ることによって、複数の針は摘出物から抜け出るのである。
このようにして、この摘出物スライス補助具は、摘出物及び受け板から容易に分離され得るのである。
【0024】
また、この発明の摘出物スライス補助具では、針間隔規定具が針先包含位置に位置する状態で、複数の針の先端部は、針間隔規定具の上縁部と下縁部との間に位置することから、非使用時には、その状態が維持されることによって、針の先端部が針間隔規定具の内部(上縁部と下縁部との間)に遮蔽された状態に維持されることとなる。
こうして、非使用時に針の先端部が露出することが防止され、安全が保たれる。
【0025】
また、この発明の摘出物スライス補助具では、針間隔規定具が、最下降位置として、針先包含位置までしか下降し得ないともいえる。
このため、針間隔規定具が複数の針から分離することが防止される。
このことから、前述したように針間隔規定具を針先包含位置まで下降させる際に、針間隔規定具が複数の針から抜け出ることをあえて別の手段で防止する必要がなく、容易に針間隔規定具を針先包含位置まで下降させることができるのである。
【0026】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具の前記最下降位置は、前記操作部材が前記ベースに当接する位置に対応している、摘出物スライス補助具である。
【0027】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項2に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明では、操作部材がベースに当接する状態で針間隔規定具が最下降位置に位置するように貫通連結棒の長さが設定されることによって、針間隔規定具の最下降位置を容易に規定することができる。
【0028】
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、前記ベースには、使用者の手の指が挿入され得る挿入孔が形成されている、摘出物スライス補助具である。
【0029】
ここで、「指」には親指も含まれる。
【0030】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
この発明の摘出物スライス補助具は、スライス作業が行われた後に、操作部材が下方に押圧されつつ、ベースが上方に付勢されて、摘出物及び受け板から分離される(このことは前述)。
その際、使用者は、指で操作部材の上縁部等を下方に押圧しつつ、他の指をベースの挿入孔に挿入して、当該他の指で挿入孔においてベースを上方に付勢することによって、この作業を容易に行うことができる。
【0031】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具について、前記複数の針の長さ方向に沿ってほぼ鉛直に移動可能な状態と、所定の高さ位置において留まる状態とを切り換える切り換え機構を有する、摘出物スライス補助具である。
【0032】
「所定の高さ位置」の一形態として「任意の高さ位置」がある。
【0033】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具では、針間隔規定具が所定の高さ位置に留まるべき場合には、切り換え機構によってそのようにされる。このため、針間隔規定具が所定の留まるべき場合に、使用者が自身の手で針間隔規定具を所定の高さ位置に維持する等の煩雑さが回避される。
【0034】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記切り換え機構が、前記ベースにおいて前記貫通連結棒に対応して形成されたねじ穴と、そのねじ穴に対して螺合され、前記貫通連結棒に対して圧接する圧接位置と、前記貫通連結棒に対して圧接しない非圧接位置との間を移動可能なねじとを有するものである、摘出物スライス補助具である。
【0035】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項5に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果が、次のように具体的に得られる。
すなわち、ねじがゆるめられて、ねじが貫通連結棒に対して圧接しない非圧接位置に位置する状態で、針間隔規定具は複数の針の長さ方向に沿って移動することが許容される。 一方、ねじが締められて、ねじが貫通連結棒に対して圧接する圧接位置に位置する状態で、針間隔規定具は複数の針の長さ方向に沿って移動することが阻止され、その高さ位置に維持される。
【0036】
請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記針間隔規定具には、隣接する前記針同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、当該隙間を特定する隙間識別標識が設けられている、摘出物スライス補助具である。
【0037】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項1〜請求項6のいずれかに係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の摘出物スライス補助具においては、隣接する針同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、当該隙間を特定する隙間識別標識が針間隔規定具に設けられている。
このため、一対のこの発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において、執刀者が摘出物をスライスするために所定の一対隙間形成空間に対してナイフの刃を挿通しようとする際には、その各摘出物スライス補助具の隙間識別標識が目安とされることによって、その作業が、容易に行われ得ることとなる。すなわち、一方のスライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間にナイフの刃を挿通し、さらに、他方のスライス補助具の複数の針のうちの隣接する所定の針同士の隙間であって前記一方のスライス補助具における隙間に対応する隙間に対してナイフの刃を挿通することが、容易に行われ得ることとなる。
このようにして、この発明の摘出物スライス補助具においては、執刀者によってナイフの刃が複数の所定の一対隙間形成空間に容易に挿通され得ることとなり、摘出物がより容易に均一にスライスされることとなる。
【0038】
また、この発明の摘出物スライス補助具では隙間識別標識が針間隔規定具に設けられているため、隙間識別標識がベースに設けられていて執刀者がそれを目安にする場合と比較して、次の作用効果も得られる。
すなわち、複数の針はベースに対してほぼ鉛直下方に延びるように設けられ、針間隔規定具は複数の針に対してその長さ方向に沿って移動可能に設けられている。
このため、針間隔規定具(その隙間識別標識)は、必然的に、ベースよりも低い位置に位置し、摘出物に対してより近い位置に位置することとなる。このことから、ベースに設けられた隙間識別標識を目安にするよりも、より容易にナイフの刃が一対隙間形成空間に挿通され得ることとなり、摘出物がより容易に均一にスライスされることとなる。
【0039】
また、この発明の摘出物スライス補助具では針間隔規定具は複数の針の長さ方向に沿って移動可能であるため、さらに次のことがいえる。
すなわち、一対のこの発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において、執刀者が所定の一対隙間形成空間に対してナイフの刃を挿通しようとする際には、針間隔規定具は摘出物よりも十分に高い位置に維持される必要があるのであるが、それは、ナイフの刃が、針間隔規定具よりも低い高さ位置で、摘出物に対して干渉しない状態で、当該所定の一対隙間形成空間に挿通され得る程度に、十分に高い位置に針間隔規定具が維持される必要がある、ということである(これらのことは前述)。
したがって、その条件を満たす範囲でできるだけ低い位置に針間隔規定具が維持されることによって、針間隔規定具は(その隙間識別標識)は、摘出物に対してさらに近い位置に位置することとなる。このことから、ベースに設けられた隙間識別標識を目安にするよりも、ナイフの刃がさらに容易に所定の一対隙間形成空間に挿通され得ることとなり、摘出物がさらに容易に均一にスライスされることとなるのである。
【0040】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明の摘出物スライス補助具であって、前記隙間識別標識は、前記針間隔規定具のうちの前記複数の孔を基準に当該針間隔規定具の幅方向における双方に、当該複数の孔の側を自身の上の側として各々設けられている、摘出物スライス補助具である。
【0041】
この発明の摘出物スライス補助具では、請求項7に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明のスライス補助具では、針間隔規定具のうちの複数の孔を基準に当該針間隔規定具の幅方向における双方に、隙間識別標識が当該複数の孔の側を自身の上の側として各々設けられている。
このため、一対のこの発明の摘出物スライス補助具が前述のようにセットされた後において、執刀者が所定の一対隙間形成空間にナイフの刃を挿通しようとする際には、執刀者は、当該一対の摘出物スライス補助具のうちの一方の側に位置し、各摘出物スライス補助具の針間隔規定具のうちの当該執刀者の側の隙間識別標識を目安とするとともに、執刀者の補助者は、当該一対の摘出物スライス補助装置のうちの他方の側(すなわち、一対のこの発明の摘出物スライス補助具を挟んで執刀者とは反対の側)に位置し、各摘出物スライス補助具の針間隔規定具のうちの当該補助者の側の隙間識別標識を目安とすることが可能である。
このようにして、この発明の摘出物スライス補助具では、執刀者がナイフの刃を所定の一対隙間形成空間に挿通しようとする際には、一対の当該摘出物スライス補助具を挟んで位置する執刀者及び補助者が、その各針間隔規定具のうちの各々の側の隙間識別標識を目安とすることが可能である。こうして、補助者の補助とともに、執刀者によってその作業がさらに容易に行われ得ることとなり、摘出物がさらに容易に均一にスライスされることとなるのである。
【0042】
請求項9に係る発明は、人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助装置であって、一対の請求項1〜請求項8のいずれかに記載の摘出物スライス補助具と、その一対の摘出物スライス補助具を対向状態に維持しつつ、その一対の摘出物スライス補助具の間隔を調整可能に、その一対の摘出物スライス補助具を連結する連結材とを有する、摘出物スライス補助装置である。
【0043】
この発明に係る摘出物スライス補助装置では、一対の請求項1〜請求項8に係る発明の摘出物スライス補助具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、一対の摘出物スライス補助具が対向状態で連結材によって連結されて1つの摘出物スライス補助装置が形成されている。
このため、その摘出物スライス補助装置全体が一括的に摘出物の上方からその摘出物に向けて下降されることによって、容易に、一対の摘出物スライス補助具が対向状態でセットされ得る。
このようにして、この発明の摘出物スライス補助装置においては、摘出物をスライスするための準備が、より容易に行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例の摘出物スライス補助セットを示す斜視図である。摘出物スライス補助装置において両摘出物スライス補助具の間隔を広げた状態を示す。便宜的に、一方の摘出物スライス補助具において針間隔規定具は最下降位置(針先包含位置)に位置し、他方の摘出物スライス補助具において針間隔規定具は最上昇位置に位置している。
【図2】本発明の一実施例の摘出物スライス補助具の要部を示す拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施例の摘出物スライス補助装置を示す拡大斜視図である。
【図4】本発明の一実施例の摘出物スライス補助具を示す拡大正面図(一部破断)である。針間隔規定具については、最下降位置(針先包含位置)に位置する状態が実線で示され、最上昇位置に位置する状態が2点鎖線で示されている。
【図5】本発明の一実施例の摘出物スライス補助装置を示す拡大正面図である。便宜的に、一方の摘出物スライス補助具において針間隔規定具は最下降位置(針先包含位置)に位置し、他方の摘出物スライス補助具において針間隔規定具は最上昇位置に位置している。
【図6A】本発明の一実施例の摘出物スライス補助具の使用方法(セット/分離の方法)を示す図である。
【図6B】本発明の一実施例の摘出物スライス補助具の使用方法(セット/分離の方法)を示す図である。図6Aの次/前の段階を示す。
【図6C】本発明の一実施例の摘出物スライス補助具の使用方法(セット/分離の方法)を示す図である。図6Bの次/前の段階を示す。
【図6D】本発明の一実施例の摘出物スライス補助具の使用方法(セット/分離の方法)を示す図である。図6Cの次/前の段階を示す。
【図7A】本発明の一実施例の摘出物スライス補助装置の使用方法(スライスの方法)を示す斜視図である。
【図7B】本発明の一実施例の摘出物スライス補助装置の使用方法(スライスの方法)を示す拡大平面図(一部破断)である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明の一実施例について、図面に基づいて説明する。
図1及び図3等に示すように、摘出物スライス補助装置10は、一対の摘出物スライス補助具20,連結材80を有している。
図7A等に示すように、摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)は、受け板100(図1も参照)及びナイフ200(図3も参照)とともに使用される。
【0046】
図1〜図5に示すように、各摘出物スライス補助具20は、ベース30,多数(複数)の針50,針間隔規定具60,操作部材70を有しており、左右対称の構造を有している。
【0047】
ベース30は、合成樹脂によって形成され、一方向に延びる棒状(厚肉帯板状)をしている。使用時においては、ベース30は、自身の長さ方向としてほぼ水平に延びるとともに、自身の幅方向としてほぼ鉛直に延びる。
【0048】
図1〜図4に示すように、多数の針50は、ベース30に対して設けられている。例えば、針50は、20〜100本設けられている。
なお、各針50は、損傷した場合のために、1本ずつ(又は複数本ずつ)交換可能にベース30に対して取り付けられていてもよい。
各針50は、金属によって形成され、ベース30に対して垂直に延びている。すなわち、各針50は、相互に平行に延びている。使用時においては、各針50は、ベース30からほぼ鉛直下方に直線状に延びる。
各針50は、すべて、同一の形状,大きさを有している。各針50は、その全長にわたって、円形断面を有している。
各針50は、ベース30の長さ方向に沿って、等間隔を隔てて、一列に並んでいる。すなわち、各針50は、相互に均一な間隔を隔てて、一列に並んでいる。
図3に示すように、各針50の間隔(正確には、隣接する針50同士の隙間の幅)は、ナイフ200の刃210の厚みに対応している。正確には、ナイフ200の刃210の厚みのうちの最大部分の当該厚みに対応している。すなわち、隣接する針50同士の各隙間は、刃210のうち最も厚い部分の厚みとほぼ同一であり、それよりも若干大きな寸法の幅を有している。例えば、隣接する針50同士の各隙間は、2〜4mmである。
【0049】
ベース30には、針50の隙間(隣接する針50同士の隙間)又は針50に対応して、当該針50の隙間又は当該針50を特定するための識別標識が設けられている。針50の隙間を特定するための識別標識のことを「隙間識別標識」といい、針50を特定するための識別標識のことを「針識別標識」ということとする。
【0050】
図2〜図4に示すように、この実施例においては、ベース30に隙間識別標識32が設けられている(図1,図6A〜図7Aにおいては図示省略)。これをベース隙間識別標識32ともいうこととする。
隙間識別標識32は、「数字(自然数)」によって形成されており、各針50の隙間(すべての隙間)に付されている。すなわち、1番目の隙間(1番目の針50と2番目の針50との隙間)に対応して「1」の数字が付され、2番目の隙間(2番目の針50と3番目の針50との隙間)に対応して「2」の数字が付され、…とされている。
なお、それに限らず、偶数番目の隙間のみ、又は、5倍数番目の隙間のみ等、一部の隙間のみについて隙間識別標識(32)が付されていてもよい。
また、隙間識別標識(32)として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0051】
また、図示されてはいないが、ベース30には、上述の隙間識別標識32に代えて、又は、上述の隙間識別標識32とともに、針識別標識が付されていてもよい。
針識別標識の一例として、「数字(自然数)」がある。すなわち、1番目の針50に対応して「1」の数字が付され、2番目の針50に対応して「2」の数字が付され、…とされてもよい。
なお、それに限らず、偶数番目の針50のみ、又は、5倍数番目の針50のみ等、一部の針50のみについて針識別標識が付されていてもよい。
また、針識別標識として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0052】
図示されてはいないが、針50にも、自身を特定する識別標識(針自身識別標識)が付されている。
図3に示すように、この実施例においては、各針50には、針自身識別標識として、その全長にわたって、又は、その全長のうちの一部において、「色彩」が付されている。
すなわち、例えば、1番目の針50には赤色が付され、2番目の針50には黄色が付され、3番目の針50には緑色が付され、4番目の針50には青色が付され、5番目の針50には紫色が付されている。6番目以降の針50には、1番目〜5番目の針50と同様に、各種の色彩が循環的に付されている。
なお、それに限らず、偶数番目の針50のみ、又は、5倍数番目の針50のみ等、一部の針50にのみ針自身識別標識が付されていてもよい。
【0053】
図1〜図4に示すように、ベース30には、左右一対の挿入孔42が形成されている。挿入孔42は、摘出物スライス補助装置10を形成する一対の摘出物スライス補助具20の各ベース30のうちの対向する側の面と、同じく相反する側の面とを連通している。
各挿入孔42は、使用者(執刀者又はその補助者)の各方の手のうちの親指又は親指以外の1本若しくは複数本の指が挿入され得る大きさに形成されている。
【0054】
図1〜図4に示すように、針間隔規定具60は、ベース30の下側において、すべての針50に対して設けられている。
針間隔規定具60は、合成樹脂によって形成され、ほぼ四角形断面を有し、複数の針50と垂直に(すなわち、ベース30と平行に)に延びる棒状をしている。使用時においては、針間隔規定具60は、ほぼ水平に延びる。
図2及び図4に示すように、針間隔規定具60には、各針50に対応して、孔61が形成されている。各針50は円形断面を有しており(このことは前述)、それに対応して、各孔61も円形断面を有している。
そして、各針50が各孔61に対して相対的に摺動可能に挿通している。
こうして、針間隔規定具60は、複数の針50の長さ方向に沿って移動(摺動)可能である。
【0055】
針間隔規定具60にも、針50の隙間(隣接する針50同士の隙間)又は針50に対応して、当該針50の隙間又は当該針50を特定するための識別標識が設けられている。針50の隙間を特定するための識別標識のことを「隙間識別標識」といい、針50を特定するための識別標識のことを「針識別標識」ということとする。
【0056】
図2及び図3に示すように、この実施例においては、針間隔規定具60に隙間識別標識62が設けられている。これを針間隔規定具隙間識別標識62ともいうこととする。
隙間識別標識62は、「数字(自然数)」によって形成されており、各針50の隙間(すべての隙間)に付されている。すなわち、1番目の隙間(1番目の針50と2番目の針50との隙間)に対応して「1」の数字が付され、2番目の隙間(2番目の針50と3番目の針50との隙間)に対応して「2」の数字が付され、…とされている。
なお、それに限らず、偶数番目の隙間のみ、又は、5倍数番目の隙間のみ等、一部の隙間のみについて隙間識別標識(62)が付されていてもよい。
また、隙間識別標識(62)として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0057】
また、この実施例においては、隙間識別標識62は、針間隔規定具60のうちの複数の孔61(その列)を基準に、針間隔規定具60の幅方向における双方に設けられている。その各側の隙間識別標識62(自然数)は、複数の孔61(その列)の側を自身の上の側として各々設けられている。
【0058】
また、図示されてはいないが、針間隔規定具60においても、上述の隙間識別標識62に代えて、又は、上述の隙間識別標識62とともに、針識別標識が付されていてもよい。
針識別標識の一例として、「数字(自然数)」がある。すなわち、1番目の針50に対応して「1」の数字が付され、2番目の針50に対応して「2」の数字が付され、…とされてもよい。
なお、それに限らず、偶数番目の針50のみ、又は、5倍数番目の針50のみ等、一部の針50のみについて針識別標識が付されていてもよい。
また、針識別標識として、「数字」に限らず、各種の記号又は図形等が使用されてもよい。
【0059】
図1〜図5に示すように、操作部材70は、ベース30の上側に位置している。
操作部材70は、合成樹脂によって形成され、ほぼ四角形断面を有する棒状をしており、ベース30とほぼ同一の長さを有し、ベース30と平行に延びている。こうして、操作部材70は、ベース30に沿って延びている。使用時においては、操作部材70は、ほぼ水平に延びる。
【0060】
操作部材70は、次のように、一対の貫通連結棒75によって、針間隔規定具60に対して連結されている。
図1〜図4に示すように、ベース30には、一対の貫通孔35が形成されている。各貫通孔35は、ベース30の各端部に、すなわち、ベース30の長さ方向においてすべての針50を挟んで形成されている。各貫通孔35は、複数の針50と平行に(すなわち、使用時においてはほぼ鉛直に)延びている。
各貫通連結棒75は、金属によって形成され、複数の針50と平行に延びている。すなわち、使用時においては、各貫通連結棒75は、ほぼ鉛直に延びる。各貫通連結棒75は、ベース30(各貫通孔35)に対して、自身の長さ方向に沿って摺動可能に貫通している。
各貫通連結棒75の下端部は、針間隔規定具60の各端部に(すなわち、すべての孔61を挟んで)固定されている。各貫通連結棒75の上端部は、操作部材70の各端部に固定されている。
こうして、一対の貫通連結棒75によって、針間隔規定具60と操作部材70とが連結されている。
【0061】
このため、操作部材70及び針間隔規定具60は、一対の貫通連結棒75を介して一体的に移動(上下動)可能である。こうして、針間隔規定具60は最下降位置と最上昇位置との間を上下動する。
図4において実線で示すように、針間隔規定具60の最下降位置とは、操作部材70がベース30に対して当接した位置である。図1及び図5において、左側の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60が、最下降位置に位置している。
図4において2点鎖線で示すように、針間隔規定具60の最上昇位置とは、針間隔規定具60がベース30に対して当接した位置である。図1及び図5において、右側の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60が、最上昇位置に位置している。
【0062】
針間隔規定具60について、すべての針50の先端部が針間隔規定具60の上縁部と下縁部との間に位置する位置、すなわち、すべての針50の先端部が針間隔規定具60の厚み(鉛直方向の寸法)のうちに含まれる位置のことを針先包含位置ということとする。
そして、この摘出物スライス補助具20においては、針間隔規定具60は、最下降位置として、針先包含位置まで移動(下降)可能である。一対の貫通連結棒75の長さは、そのように設定されている。
針間隔規定具60の高さ(鉛直方向の長さ)に対応して、針先包含位置には幅があり、この実施例では、針先包含位置の範囲のほぼ中央の高さ位置が最下降位置になるようにされている。このため、この実施例では、針間隔規定具60は、最下降位置のみならず、その近傍に位置する状態でも、針先包含位置に位置し得る。
【0063】
図5に示すように、ベース30には、各貫通孔35に対応して、ねじ穴36が形成されている。各ねじ穴36は、摘出物スライス補助装置10を形成する一対の摘出物スライス補助具20の各ベース30のうちの相反する側の面から貫通孔35まで延びている。
ねじ穴36に対して、ねじ37が設けられている。ねじ37は、頭部38及び軸部39を有し、軸部39がねじ穴36に対して螺合されている。頭部38が回転操作されることによって、軸部39が、ねじ穴36内において貫通連結棒75に対して接近・離隔する方向に移動する(非圧接位置と圧接位置との間を移動する)。
【0064】
そして、図5において左側の摘出物スライス補助具20に示されるように、軸部39の先端部が貫通連結棒75に対して圧接しない(非圧接位置に位置する)状態で、貫通連結棒75が貫通孔35内を摺動することが許容され、操作部材70とともに針間隔規定具60が上下動することが許容される。
一方、図5において右側の摘出物スライス補助具20に示されるように、軸部39の先端部が貫通連結棒75に対して圧接する(圧接位置に位置する)状態で、貫通連結棒75が貫通孔35内を摺動することが阻止される。こうして、操作部材70とともに針間隔規定具60が上下動することが阻止され、針間隔規定具60は、任意の高さ位置(複数の針50の長さ方向における位置)に維持される。
一般的に、非使用時には、操作部材70及び針間隔規定具60は針先包含位置(最下降位置又はその近傍)に位置づけられた状態でねじ37が締められ、操作部材70及び針間隔規定具60は針先包含位置(最下降位置又はその近傍)に維持されている。
【0065】
図1,図3,図5に示すように、両摘出物スライス補助具20(そのベース30)は、連結材80によって連結されている。こうして、1つの摘出物スライス補助装置10が形成されている。
連結材80は、直線状をなし、その長さ方向にわたって、均一な断面(形状・大きさ)を有している。例えば、正方形状又は長方形状をしている。
各摘出物スライス補助具20のベース30には、挿通孔45が形成されている。挿通孔45(形状・大きさ)は、連結材80の断面(形状・大きさ)に対応している。例えば、正方形状又は長方形状をしている。
【0066】
連結材80は、両摘出物スライス補助具20(ベース30)の挿通孔45に対して、自身の長さ方向に沿って相対的に摺動可能に挿通されている。このようにして、両摘出物スライス補助具20は連結材80を介して連結され、摘出物スライス補助装置10が形成されている。
このため、連結材80に対して、各摘出物スライス補助具20が連結材80の長さ方向に適宜摺動されることによって、両摘出物スライス補助具20同士の間隔が調整される。
【0067】
なお、連結材80の両端部には、抜け止め部(各挿通孔45よりも大きなもの)が設けられていてもよい。また、連結材80には、目盛りが設けられていてもよい。これによって、両摘出物スライス補助具20(ベース30)の間隔が視認され得るとともに、当該間隔が容易に所定のものに調整され得る。
また、連結材80の数は、1本である必要はなく、複数本あってもよい。
【0068】
図3及び図4に示すように、ベース30には、挿通孔45に対応して、凹部44が形成されている。凹部44は、ベース30の上面から下方に向けて形成されている
凹部44には、ねじ穴46が形成されている。ねじ穴46は、凹部44から挿通孔45まで延びている。
ねじ穴46に対して、ねじ47が設けられている。ねじ47は、頭部48及び軸部49を有し、軸部49がねじ穴46に対して螺合されている。頭部48が回転操作されることによって、軸部49が、ねじ穴46内において連結材80に対して接近・離隔する方向に移動する。
そして、軸部49の先端部が連結材80に対して圧接した状態で、連結材80が挿通孔45内を摺動することが阻止される。こうして、ベース30(摘出物スライス補助具20)は、連結材80の任意の位置に固定され、両ベース30(両摘出物スライス補助具20)は、任意の間隔に維持される。
また、ねじ47(頭部48)に対応して、操作部材70にも凹部74が形成されている。凹部74は、操作部材70の下面から上方に向けて形成されている。こうして、操作部材70が最下降位置に位置する状態で、操作部材70とねじ47(頭部48)とが干渉することが回避されている。
【0069】
受け板100(図1)は、主として発泡スチロール又はコルク材によって形成されている。すなわち、発泡スチロール又はコルク材のみによって形成されている場合のほか、下側の部分が他の材質によって形成され、上側の部分(おもて面の側の部分)のみが発泡スチロール又はコルク材によって形成されている場合等がある。
受け板100が主として発泡スチロール又はコルク材によって形成されているために、針50(その先端部)が受け板100に対して突き刺された際に、針50が、その突き刺された状態で維持(保持)される。
【0070】
次に、この摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)の使用方法及び作用効果について説明する。
【0071】
使用者(執刀者)が摘出物300(図7A及び図7B)をスライスするための準備として、使用者(執刀者又はその補助者)は、摘出物スライス補助装置10(両摘出物スライス補助具20)をセットする。
その摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)のセットの方法について、図6A〜図6D等に基づいて説明する。
【0072】
図7Aに示すように、まず、使用者(執刀者又はその補助者)は、受け板100に対して摘出物300を載置する(図6Aも参照)。
一方では、それと相前後して、使用者は、摘出物スライス補助装置10において、その摘出物300の大きさに応じて、両摘出物スライス補助具20の間隔を調整する。すなわち、摘出物300が大きい場合は、両摘出物スライス補助具20の間隔が長くされ、摘出物300が小さい場合は、両摘出物スライス補助具20の間隔が短くされる。
【0073】
次に、図6Aに示すように、使用者は、各摘出物スライス補助具20において、ねじ37をゆるめて(図5のうちの左側の摘出物スライス補助具20参照)、針間隔規定具60を上下動可能な状態とするとともに、針間隔規定具60を針先包含位置(最下降位置)に位置づける(一般的に、非使用時にはこの位置に位置づけられている)。
【0074】
次に、図6Aに示すように、使用者は、各針間隔規定具60が摘出物300(その上面)に当接するように、各摘出物スライス補助具20を位置づける。
【0075】
次に、図6A→図6Bに示すように、使用者は、操作部材70及び針間隔規定具60をその位置のままに維持しつつ、ベース30を下降させる。これによって、針50が下降し、針50(その先端部)が摘出物300に対して突き刺さる。
その際、使用者は、自身の左右の各方の手の親指又は親指以外の1本又は複数本の指をベース30の各挿入孔42に挿入して、挿入孔42においてベース30を下方に押圧したり、連結材80(図7A参照)を下方に押圧したりすることによって、この作業を容易に行うことができる。
この作業によって、針間隔規定具60及び操作部材70等は、それまでの高さ位置に留まるが、針50及びベース30に対して相対的に上昇するといえる。
【0076】
図6B→図6Cに示すように、さらに、上述の作業が進められることによって、各針50は摘出物300を貫通し、各針50(その先端部)は受け板100に突き刺さる。
こうして、各針50は受け板100によって保持され、摘出物300とともに両摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)は所定の位置に固定される。
【0077】
次に、図6C→図6Dに示すように、使用者は、各摘出物スライス補助具20において、操作部材70を上昇させる。これによって、操作部材70とともに、針間隔規定具60が上昇する。針間隔規定具60が摘出物300よりも十分高い高さに位置する状態で、使用者はねじ37を締める(図5の右側の摘出物スライス補助具20を参照)。
こうして、針間隔規定具60は、摘出物300よりも十分高い位置に維持され、執刀者によるスライス作業(次述)の邪魔にはならない。
すなわち、図7Aに示すように、ナイフ200の刃210が、針間隔規定具60よりも低い高さ位置で、摘出物300に対して干渉しない状態で、対応する両摘出物スライス補助具20の各針50の隙間に挿通され得る。針間隔規定具60は、そのような高さ位置に維持されるのである。
【0078】
次に、使用者(執刀者)は、摘出物300をスライスする。そのスライスの方法について、図7A及び図7B等に基づいて説明する。
まず、図7A及び図7Bにおいて実線→1点鎖線で示すように、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20における各針50の隙間と、それに対応する他方の摘出物スライス補助具20における各針50の隙間にわたってナイフ200(その刃210)を挿通させる。次に、図7Aにおいて、1点鎖線→2点鎖線で示すように、その挿通状態でナイフ200を下降させて、その刃210で摘出物300を切断する。
この作業を両摘出物スライス補助具20のうちの一方の側の隙間から、順次、他方の側の隙間について行う。
こうして、摘出物300が多数のスライス片310にスライスされる。
【0079】
上述のスライス作業の詳細について、図3,図7A,図7Bに基づいて説明する。
すなわち、執刀者は、まず、一方の摘出物スライス補助具20における1番目の隙間(隣接する針50の間の隙間)と、他方の摘出物スライス補助具20における1番目の隙間とによって形成される空間(1番目の一対隙間形成空間)にわたって、ナイフ200の刃210を挿通させる。
その際、図7Bに示すように、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60における執刀者の側の「1」の隙間識別標識62を目安とするとともに、他方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60における執刀者の側の「1」の隙間識別標識62を目安とする。
同時に、執刀者の補助者は、この摘出物スライス補助装置10を挟んで執刀者とは反対の側に位置し、一方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60における補助者の側の「1」の隙間識別標識62を目安とするとともに、他方の摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60における補助者の側の「1」の隙間識別標識62を目安とする。
また、図3に示すように、執刀者及びその補助者は、一方の摘出物スライス補助具20における1番目の針50の針自身識別標識としての「赤色」及び2番目の針50の針自身識別標識としての「黄色」を目安とするとともに、他方の摘出物スライス補助具20における1番目の針50の針自身識別標識としての「赤色」及び2番目の針50の針自身識別標識としての「黄色」を目安とすることもある。
このように、執刀者は、補助者の補助とともに、針間隔規定具隙間識別標識62及び針自身識別標識を目安としつつ、その1番目の一対隙間形成空間にわたって、ナイフ200の刃210を挿通する。
なお、上述の際に、執刀者及び/又はその補助者は、針間隔規定具60に設けられた隙間識別標識(針間隔規定具隙間識別標識)62と併せて、又は、それに代えて、ベース30に設けられた隙間識別標識(ベース隙間識別標識)32(図3)を目安としてもよい。
【0080】
次に、執刀者は、その挿通状態でナイフ200を下降させて、摘出物300を切断する。すなわち、その1番目の一対隙間形成空間を構成する2対の針50によってナイフ200の刃210がガイドされつつ、ナイフ200を下降させて切断する。
【0081】
次に、上述と同様にして、執刀者は、一方の摘出物スライス補助具20における2番目の隙間と、他方の摘出物スライス補助具20における2番目の隙間とによって形成される空間(2番目の一対隙間形成空間)にわたって、ナイフ200の刃210を挿通させ、その挿通状態(ガイド状態)でナイフ200を下降させて、摘出物300を切断する。
以上を繰り返すことによって、各針50の隙間に対応して、摘出物300が多数のスライス片310にスライスされる。
【0082】
なお、2番目の隙間,4番目の隙間,6番目の隙間,…のように、偶数番目の隙間のみにおいてスライスしたり(すなわち、1つおきの隙間においてスライスしたり)、3番目の隙間,6番目の隙間,9番目の隙間,…のように、3の倍数の隙間のみにおいてスライスしたり(すなわち、2つおきの隙間においてスライスしたり)してもよい。
【0083】
上述のように摘出物300がスライスされた後には、次に、使用者(執刀者又はその補助者)は、摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)を摘出物300(すべてのスライス片310)及び受け板100から分離させる。
その摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)の分離の方法について、図6A〜図6D等に基づいて説明する。
【0084】
まず、使用者(執刀者又はその補助者)は、ねじ37をゆるめて(図5の左側の摘出物スライス補助具20を参照)、その後、図6D→図6Cに示すように、各摘出物スライス補助具20の操作部材70を下方に押圧し、最大限下降させる。これによって、針間隔規定具60は、摘出物300(その上面)に当接するまで下降する。
【0085】
次に、図6C→図6Bに示すように、使用者は、操作部材70を下方に押圧しつつ、ベース30を上方に付勢する。これによって、針間隔規定具60が摘出物300を押圧しつつ、各針50とともにベース30が上昇する。
すなわち、操作部材70が下方に押圧されることによって、その押圧力が一対の貫通連結棒75を経て針間隔規定具60に伝わり、針間隔規定具60が摘出物300(スライス片310の集合体)を下方に押圧する。これによって摘出物300及び受け板100が上昇しようとすることが阻止される。
それと同時に、ベース30が上方に付勢されることによって、ベース30とともに各針50が上昇しようとする。
こうして、すべての針50は、各針50と摘出物300(各スライス片310)及び受け板100との間に作用する摩擦力に抗して上昇する。
その際、使用者は、自身の左右の各方の手の親指又は親指以外の1本若しくは複数本の指で操作部材70の上縁部を下方に押圧しつつ、同じく自身の左右の各方の手の親指以外の1本若しくは複数本の指又は親指をベース30の各挿入孔42に挿入して、当該親指以外の指又は親指で挿入孔42においてベース30を上方に付勢することによって、この作業を容易に行うことができる。
【0086】
図6B→図6Aに示すように、さらに、上述の作業が進められることによって、各針50は摘出物300から抜け出る。
すなわち、針間隔規定具60が最下降位置の近傍に到り、すべての針50の先端部が針間隔規定具60の下縁部と同一の高さ(摘出物300の上面と同一の高さ)となった時点で、すべての針50は摘出物300(各スライス片310)から抜け出るのである。
こうして、摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)が摘出物300から分離される。
【0087】
その後、図4に示すように、針間隔規定具60が針先包含位置(最下降位置又はその近傍)に位置する状態でねじ37が締められ、針間隔規定具60が針先包含位置(最下降位置又はその近傍)に維持される。
以上のようにして、摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)を使用した摘出物300のスライスが終了する。
【0088】
上述のように摘出物300がスライスされた状態(すなわち、スライスされた直後の状態)においては、摘出物300にはスライスされた切れ目が存在するものの、全体としては、スライスされる前の形状が保たれている。
このため、そのスライスされた直後の状態において、執刀者等は、各スライス片310に対して番号を付する等、位置情報(摘出物300がスライスされる前の状態において、各スライス片310がどの位置にあったかという情報)を各スライス片310に対して容易に付することができる。
このようにして、各スライス片310に対して位置情報が付された上で、各スライス片310は相互に分離され、各スライス片310についてその後の処理がされ、各スライス片310について分析がされる。そして、その分析結果が各スライス片310の位置情報とともに総合されることによって、摘出物300全体について、病変の分布が明らかにされつつ、病理診断がされるのである。
【0089】
以上のように、この摘出物スライス補助装置10(図7A等参照)では、両摘出物スライス補助具20の複数の針50によって、摘出物300(スライスの対象物)を受け板100に対して容易に固定することができる。それとともに、各々の複数の針50によって、各摘出物スライス補助具20自身を受け板100に容易に固定(セット)することができる。
【0090】
そして、そのように摘出物300及び各摘出物スライス補助具20が受け板100に対して固定された状態で、所定の一対隙間形成空間にナイフ200の刃210を挿通させ、その2対の針50にガイドされつつ、ナイフ200を下降することによって、摘出物300をほぼ鉛直に(2対の針50の方向に沿って)、かつ、均一の間隔を隔てて切断することができる。
こうして、この摘出物スライス補助装置10では、摘出物300を均一にスライスすることができる。すなわち、各スライス片310においては、いずれの部位においても肉厚が同一であるとともに、すべてのスライス片310の肉厚が同一である。
【0091】
また、この摘出物スライス補助装置10では、前述したように、両摘出物スライス補助具20の針間隔規定具60に隙間識別標識62が付され(図2及び図7B等参照)、ベース30に隙間識別標識32が付されている(図2及び図3参照)とともに、両摘出物スライス補助具20の各針50には針自身識別標識(自身を特定するための色彩)が付されている(図3参照)。
このため、執刀者は、その隙間識別標識62,32、及び、針自身識別標識を目安とすることによって、容易に、両摘出物スライス補助具20間において対応する針50の隙間(一対隙間形成空間)にナイフ200を挿通することができる。
こうして、この摘出物スライス補助装置10では、摘出物300を容易に適切にスライスすることができる。
その際、針間隔規定具60の方がベース30よりも低い位置にあって摘出物300に近いため、一般的に、ベース30に設けられた隙間識別標識(ベース隙間識別標識)32を目安とするよりも、針間隔規定具60に設けられた隙間識別標識(針間隔規定具隙間識別標識)62を目安とした方が便利である。また、針間隔規定具60を摘出物300よりも十分に高い位置に維持させるのであるが、それも上述のスライス作業が円滑に行える範囲内で低い位置に維持させることによって、そのことがより一層いえるのである。
【0092】
また、この摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)では、各針50が針間隔規定具60の各孔61を挿通した状態にあって、針間隔規定具60が各針50に沿って上下動可能であり、最下降位置として針先包含位置まで下降可能であるため(図6A〜図6D等参照)、次の作用効果が得られる。
すなわち、各針50が摘出物300に対して突き刺されて摘出物300を貫通していく際に、各針50には衝撃が加わる。
しかしながら、この摘出物スライス補助具20では、各針50が摘出物300に対して突き刺されて摘出物300を貫通していく過程のすべてにおいて、すべての針50のうちの摘出物300の上面に対応する部分は、針間隔規定具60によって、相互の間隔が規定された状態にある。すなわち、すべての針50のうちの当該部分は、針間隔規定具60の孔61の間隔に対応する間隔に規定される。
このため、摘出物スライス補助具20がセットされる(複数の針50が摘出物300に対して突き刺されて摘出物を貫通していく)際に、その衝撃によって針50が曲がることが防止され、すべての針50が相互に平行に延びる状態が維持されるのである。
【0093】
また、上述と同じく、この摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)では、各針50が針間隔規定具60の各孔61を挿通した状態にあって、針間隔規定具60が各針50に沿って上下動可能であり、最下降位置として針先包含位置まで下降可能であるため(図6A〜図6D等参照)、次の作用効果が得られる。
すなわち、この摘出物スライス補助装置10(摘出物スライス補助具20)では、複数の針50が摘出物300を貫通して受け板100に突き刺さった状態で摘出物300のスライス作業が行われるのであり、そのスライス作業が終了した後、摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)は摘出物300(すべてのスライス片310)及び受け板100から分離される必要がある(これらのことは前述)。
ここで、摘出物300(各スライス片310)及び受け板100は各針50に対して密着しており、受け板100及び摘出物300から摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)を分離させようとする(すなわち、すべての針50を受け板100及び摘出物300から抜こうとする)際には、各針50と受け板100及び摘出物300(各スライス片310)との間に摩擦力が作用する。すなわち、針50を受け板100及び摘出物300から抜こうとして針50(摘出物スライス補助具20)上昇させようとすると、摘出物300等も、針50とともに上昇しようとする。
しかしながら、この摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)では、操作部材70が下方に押圧されることによって、針間隔規定具60が摘出物300(スライス片310の集合体)を下方に押圧して摘出物300等が上昇しようとすることが阻止されつつ、ベース30が上方に付勢されることによって、ベース30とともに各針50が上昇する。
こうして、すべての針50は、各針50と摘出物300(各スライス片310)及び受け板100との間に作用する摩擦力に抗して上昇し、受け板100及び摘出物300から抜け出る。
このようにして、この摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)は、摘出物300及び受け板100から容易に分離され得るのである。
【0094】
また、摘出物スライス補助具20のベース30には、挿入孔42が形成されている。
このため、前述したように、摘出物300等から摘出物スライス補助具20を分離しようとする際に、使用者は、自身の左右の各方の手の親指及び親指以外の指(1本又は複数本)のうちの一方で操作部材70の上縁部を下方に押圧しつつ、他方をベース30の各挿入孔42に挿入して、当該他方で挿入孔42においてベース30を上方に付勢することによって、この作業を容易に行うことができる。
すなわち、各方の手の5本の指(親指を含む)のうち、操作部材70の上縁部に位置するものと、挿入孔42に挿入されたものとを接近させるように操作することによって、この作業を容易に行うことができるのである。
【0095】
また、この摘出物スライス補助具20では、針間隔規定具60が最下降位置として針先包含位置に位置することが可能であるため(図4等参照)、非使用時には、針間隔規定具60が針先包含位置に位置する状態でねじ37が締められ、針間隔規定具60が最下降位置に維持されることによって、針50の先端部が針間隔規定具60の内部(上縁部と下縁部との間)に遮蔽された状態に維持されることとなる。
こうして、針50の先端部が露出することが防止され、安全が保たれる。
【0096】
また、逆の見方として、この摘出物スライス補助具20では、針間隔規定具60は、最下降位置として、針先包含位置までしか下降し得ないともいえる(図4等参照)。
このため、針間隔規定具60が針50から分離することが防止される。すなわち、針50が針間隔規定具60から抜け出ると、再度、針間隔規定具60の孔61に針50を挿通する必要があり、複数の針50を針間隔規定具60の各孔61に同時に挿通する作業は煩雑である。しかしながら、この摘出物スライス補助具20(摘出物スライス補助装置10)では、針50が針間隔規定具60から抜け出る(針間隔規定具60が針50から分離する)ことが防止されるため、そのような煩雑な作業を行う必要性が回避される。
このことから、この摘出物スライス補助具20では、針間隔規定具60を針先包含位置まで下降させようとする際に、針間隔規定具60が針50から抜け出ることをあえて別の手段で防止する必要がなく、容易に針間隔規定具60を針先包含位置まで下降させることができるのである。
【0097】
なお、上記のものはあくまで本発明の数例の実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0098】
例えば、ベース30及び針間隔規定具60のいずれかには、隙間識別標識(32,62)は設けられなくてもよい。
また、必ずしも、隙間識別標識(32,62)及び針自身識別標識の双方が設けられていなくてもよく、一方のみが設けられていてもよい。
【0099】
また、針間隔規定具(60)については、最下降位置として針先包含位置まで下降せず、それよりも上の位置までしか下降しない態様もあり得る。
【0100】
また、一対の摘出物スライス補助具(20)については、連結材(80)によって連結されて1つの摘出物スライス補助装置(10)が形成されているのではなく、ともに独立した単体としての一対の摘出物スライス補助具(20)とされていてもよい。
その場合は、使用時においては、使用者が、一対の摘出物スライス補助具(20)が対向状態となるようにして、両者をセットすることになる。
【符号の説明】
【0101】
10 摘出物スライス補助装置
20 摘出物スライス補助具
30 ベース
36 ねじ穴
37 ねじ
42 挿入穴
50 針
60 針間隔規定具
61 孔
62 隙間識別標識(針間隔規定具隙間識別標識)
70 操作部材
75 貫通連結棒
80 連結材
300 摘出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助具であって、
水平方向成分を有する方向に延びるベースと、
前記ベースの延びる方向に沿って相互に隙間を隔てて前記ベースに対して設けられ、ほぼ鉛直下方に相互に平行に延びる複数の針と、
前記複数の針に対応する複数の孔を有し、当該複数の孔に対して前記複数の針が各々挿通して、前記複数の針の長さ方向に沿ってほぼ鉛直に移動可能である針間隔規定具と、
前記ベースの上側において当該ベースに沿って延びる操作部材と、
前記ベースの長さ方向において前記複数の針を挟んでほぼ鉛直に延び、前記ベースに設けられた貫通孔を摺動可能に貫通し、前記針間隔規定具と前記操作部材を連結する貫通連結棒と
を有する、摘出物スライス補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具は、最も下降した最下降位置として、前記複数の針の先端部が当該針間隔規定具の下縁部と上縁部との間に位置する針先包含位置まで移動可能である、
摘出物スライス補助具。
【請求項3】
請求項2に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具の前記最下降位置は、前記操作部材が前記ベースに当接する位置に対応している、
摘出物スライス補助具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記ベースには、使用者の手の指が挿入され得る挿入孔が形成されている、
摘出物スライス補助具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具について、前記複数の針の長さ方向に沿ってほぼ鉛直に移動可能な状態と、所定の高さ位置において留まる状態とを切り換える切り換え機構を有する、
摘出物スライス補助具。
【請求項6】
請求項5に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記切り換え機構が、前記ベースにおいて前記貫通連結棒に対応して形成されたねじ穴と、そのねじ穴に対して螺合され、前記貫通連結棒に対して圧接する圧接位置と、前記貫通連結棒に対して圧接しない非圧接位置との間を移動可能なねじとを有するものである、
摘出物スライス補助具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の摘出物スライス補助具であって、
前記針間隔規定具には、隣接する前記針同士の複数の隙間のうちの少なくとも一部に対応して、当該隙間を特定する隙間識別標識が設けられている、
摘出物スライス補助具。
【請求項8】
請求項7に記載の摘出物スライス補助具であって、
前記隙間識別標識は、前記針間隔規定具のうちの前記複数の孔を基準に当該針間隔規定具の幅方向における双方に、当該複数の孔の側を自身の上の側として各々設けられている、
摘出物スライス補助具。
【請求項9】
人又は動物から摘出された摘出物をスライスする際の補助のための摘出物スライス補助装置であって、
一対の請求項1〜請求項8のいずれかに記載の摘出物スライス補助具と、
その一対の摘出物スライス補助具を対向状態に維持しつつ、その一対の摘出物スライス補助具の間隔を調整可能に、その一対の摘出物スライス補助具を連結する連結材と
を有する、摘出物スライス補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−230087(P2012−230087A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100226(P2011−100226)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(500079850)
【出願人】(512095358)
【出願人】(308011007)
【Fターム(参考)】