説明

摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法

【課題】回転ツールの破損の予兆を精度良く検出することができる摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法を提供する。
【解決手段】摩擦攪拌接合システム1では、加速度検出センサ201によって検出された測定用の出力信号の波形パターンMが所定時間内に標本線H1,H2と交差した回数をカウントし、その回数が一定以上になった場合に、回転ツール3の破損の予兆を検出している。また、測定用の出力信号の波形パターンMの周期が回転ツール3の回転周期と同期していることに着目し、交差回数をカウントする所定時間を、回転ツール3が複数回にわたって回転する時間に設定している。これにより、複数周期にわたって現れる予兆部分M2を明確に捉えることができ、回転ツール3の破損の予兆を精度良く判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材の接合方法として、摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合では、接合しようとする金属材を接合部において対向させる。そして、回転ツールの先端に設けられたプローブを接合部に押し込んで高速回転させることによって生じる摩擦熱を利用し、塑性流動によって2つの金属を接合する。
【0003】
このような摩擦攪拌接合において、接合中の回転ツールには、相当の荷重が加えられる。そのため、送り速度などの条件が不整合であった場合や、接合を繰り返し行った場合などに、回転ツールが大きく変形(破損)してしまうことが生じ得る。このような問題に対し、例えば特許文献1に記載の摩擦攪拌接合方法では、回転主軸にかかるトルクをモニタリングすることにより、工具の破損を検出している。そして、工具の破損を検出した場合に、工具を金属材から退避さるようになっている。
【特許文献1】特開2004−298900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転ツールが完全に破損してしまってから回転ツールを金属材から退避させたとしても、回転ツールの破損箇所において接合部の接合状態が劣化してしまうおそれがある。また、回転ツールが完全に破損してから回転ツールを停止させるまでの時間が長くなればなる程、システムの各部品に二次的な破損が生ずる可能性が高くなる。そのため、摩擦攪拌接合システムにおいては、回転ツールの破損の予兆を精度良く検出することができる技術が要求されていた。
【0005】
本発明は、上記課題解決のためになされたものであり、回転ツールの破損の予兆を精度良く検出することができる摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記課題解決のため、鋭意研究を行う過程で、摩擦攪拌接合で使用する回転ツールの材料の特性に着目した。その結果、回転ツールの材料として多用される金属のような延性材料では、完全な破損が生じる直前に一定の予備的な変形が生じるという特徴があることを見出した。そこで、本願発明者らは、このような回転ツールの予備的な変形に関連して変化する物理量に一定の処理を加えれば、回転ツールの破損前の予兆を精度良く検出することができるとの知見を得て本発明に想到するに至った。
【0007】
本発明に係る摩擦攪拌接合システムは、延性材料からなる回転ツールを金属材の端面同士の突き合せ部分に押し込み、回転ツールを回転させることにより金属材同士を接合する摩擦攪拌接合システムであって、回転ツールの変形状態に関する物理量の変化を検出する物理量検出手段と、物理量検出手段から出力される出力信号の波形パターンと、物理量検出手段から回転ツールの変形が見られない場合に出力される出力信号の波形パターンの標準偏差に基づいて予め設定された標本線とを比較し、波形パターンが所定時間内に標本線と交差した回数に基づいて、回転ツールにおける破損の予兆の有無を判断する予兆判断手段と、予兆判断手段によって回転ツールに破損の予兆があると判断された場合に、回転ツールを回転させたまま金属材から離間させ、その後に回転ツールの回転を停止させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、摩擦攪拌接合方法は、延性材料からなる回転ツールを金属材の端面同士の突き合せ部分に押し込み、回転ツールを回転させることにより金属材同士を接合する摩擦攪拌接合方法であって、物理量検出手段が、回転ツールの変形状態に関する物理量の変化を検出するステップと、予兆判断手段が、物理量検出手段から出力される出力信号の波形パターンと、物理量検出手段から回転ツールの変形が見られない場合に出力される出力信号の波形パターンの標準偏差に基づいて予め設定された標本線とを比較し、波形パターンが所定時間内に標本線と交差した回数に基づいて、回転ツールにおける破損の予兆の有無を判断するステップと、制御手段が、予兆判断手段によって回転ツールに破損の予兆があると判断された場合に、回転ツールを回転させたまま金属材から離間させ、その後に回転ツールの回転を停止させるステップとを備えたことを特徴とする。
【0009】
この摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法では、回転ツールの破損の予兆を検出するために、回転ツールの変形状態に関する物理量の変化を物理量検出手段によって検出する。回転ツールに異常が生じた場合、物理量検出手段からの出力信号の波形パターンは、回転ツールの破損前の予備的な変形に対応して、まず複数周期にわたって正常状態よりも振幅が増加する挙動を示し、その後、回転ツールの破損と同期して、瞬間的に振幅が更に増加する。したがって、物理量検出手段からの出力信号の波形パターンを予め設定した標本線と比較し、波形パターンが所定時間内に標本線と交差した回数をカウントすることで、回転ツールの破損前の予備的な変形に対応して複数周期にわたって現れる波形パターンの挙動を誤りなく検出することができる。また、この摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法では、回転ツールに破損の予兆があると判断された場合に、回転ツールを回転させたまま金属材から離間させ、その後に回転ツールを停止させる。これにより、破損の予兆が認められた回転ツールと金属材との溶着を防止できる。回転ツールが完全に破損する前に回転ツールを停止させることで、システムの二次的な破損の発生も回避できる。
【0010】
また、所定時間は、回転ツールが少なくとも複数回にわたって回転する時間であることが好ましい。物理量検出手段からの出力信号の波形パターンの周期は、回転ツールの回転周期と対応する。したがって、回転ツールが少なくとも複数回にわたって回転する時間を所定時間として設定することで、回転ツールの破損前の変形に対応して複数周期にわたって現れる波形パターンの挙動を一層確実に検出することができる。
【0011】
また、複数の回転ツールがセットされたツールステーションと、制御手段によって回転ツールの回転が停止した後に、回転ツールをツールステーションに移送する移送手段とを更に備えたことが好ましい。この場合、破損の予兆が認められた回転ツールが、速やかに別の回転ツールと交換されるので、摩擦攪拌接合が再開されるまでの時間が短縮され、作業効率を維持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る摩擦攪拌接合システム及び摩擦攪拌接合方法によれば、回転ツールの破損の予兆を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る摩擦攪拌接合システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態にかかる摩擦攪拌接合システムを用いた摩擦攪拌接合を説明する斜視図である。図1に示す例では、例えば鉄道車両の外板10a,10b同士を接合する。外板10a,10bは、例えばステンレス鋼によって形成された厚さ数mm程度の平板材である。摩擦攪拌接合システム1は、外板10a,10bを接合するための構成要素として、図1に示すように、載置部2と、回転ツール3と、ツールホルダ4とを有している。回転ツール3は、金属といった延性材料から形成され、略円柱状をなしている。回転ツール3の先端には、回転ツール3の直径よりも小径の略円柱状のプローブ5が同軸に設けられている。ツールホルダ4は、金属といった延性材料から形成され、略円柱形をなしている。ツールホルダ4の内部には、回転ツール3の直径とほぼ同等の略円柱形の内部空間Sが長軸方向に沿って形成されている(図3参照)。内部空間Sの下端部には、回転ツール3の上部が差し込まれており、これにより、回転ツール3は、ツールホルダ4の下端部4aに把持されている。
【0015】
摩擦攪拌接合システム1を用いた摩擦攪拌接合では、載置部2に載置した外板10a,10bの端面同士を突き合わせ、回転ツール3を例えば600rpmの回転速度で回転させながら、外板10a,10bの突き合わせ部分Lの一端に押し込む。そして、回転ツール3を、例えば600mm/minの移動速度で突き合わせ部分Lに沿って移動させる。このとき、回転する回転ツール3と外板10a,10bとの間で発生する摩擦熱よる塑性流動によって接合部Wが形成され、突き合わせ部分Lに沿って外板10a,10bの端面同士が接合される。回転ツール3が、外板10a,10bの突き合わせ部分Lの他端まで到達すると、回転ツール3を外板10a,10bから引き上げ、回転ツール3を外板10a,10bから離間させて、処理が終了する。
【0016】
このような摩擦攪拌接合では、接合する外板10a,10bの厚さに対して、回転ツール3の移動速度の条件が不整合であった場合や、接合を繰り返し行った場合などに、回転ツール3に過剰な負荷が蓄積してしまい、延性材料からなる回転ツール3に大きな歪み(破損)が生じることがある。このような回転ツール3の破損が生じると、回転ツール3の破損箇所において接合部Wの接合状態が劣化してしまうおそれがある。また、回転ツール3が完全に破損してから回転ツール3を停止させるまでの時間が長くなればなる程、システムの各部品に二次的な破損が生ずる可能性が高くなる。
【0017】
そこで、摩擦攪拌接合システム1では、回転ツール3の破損の予兆を検出するための機能的な構成要素として、図2に示すように、加速度検出センサ(物理量検出手段)201と、出力信号取得部202と、標本線格納部203と、予兆判断部(予兆判断手段)204と、制御部(制御手段)205と、移送部(移送手段)206とを有している。
【0018】
加速度検出センサ201は、回転ツール3の変形状態に関する物理量として、回転ツール3の加速度を検出するセンサである。図3は、加速度検出センサ201の配置構成の一例を示す図である。同図に示すように、加速度検出センサ201は、ツールホルダ4の内部空間S内に配置され、ツールホルダ4の下端部4aに把持された回転ツール3の上端面3aに接する位置で、ツールホルダ4の内壁に接着固定されている。
【0019】
加速度検出センサ201のケーブル8は、ツールホルダ4の内部空間Sの上方に延び、ケーブル8の先端9は、内部空間Sの上端部においてツールホルダ4の内壁に固定されている。ケーブル8の先端9とツールホルダ4の内壁との固定には、例えば圧着端子が用いられる。このような構成により、加速度検出センサ201は、回転ツール3に加わる上下方向の加速度を検出し、検出した加速度に応じた測定用の出力信号をスリップリング6の電極7a,7bを介して出力信号取得部202に出力する。
【0020】
出力信号取得部202は、加速度検出センサ201で検出された加速度に応じた測定用の出力信号を取得する部分である。出力信号取得部202は、取得した測定用の出力信号を波形パターン化し、予兆判断部204に出力する。
【0021】
標本線格納部203は、回転ツール3における破損の予兆の有無を判断する際に閾値として用いる標本線を格納する部分である。標本線は、接合中において回転ツール3に変形等の異常が生じなかった場合に加速度検出センサ201から出力された基準用の出力信号を用いて予め算出される。図4は、基準用の出力信号の波形パターンの一例を示す図である。図4に示す例では、基準用の出力信号の波形パターンRは、回転ツール3の回転周期と対応する周期で、摩擦攪拌接合の開始から終了に至るまで一様な振幅となっている。標本線格納部203は、基準用の出力信号の波形パターンRを標準偏差σに基づいて正規化し、図5に示すように、標準偏差σの例えば3倍(±3σ)を標本線H1,H2として格納している。
【0022】
予兆判断部204は、回転ツール3における破損の予兆の有無を判断する部分である。ここで、図6は、接合中に回転ツール3の破損が生じた場合の測定用の出力信号の波形パターンを示す図である。図6に示す例では、測定用の出力信号の波形パターンMに、回転ツール3に異常が生じる前の正常部分M1と、回転ツール3の破損の予兆を示す予兆部分M2と、回転ツール3の完全な破損を示す破損部分M3とが現れている。
【0023】
正常部分M1では、基準用の波形パターンRと同様に回転ツール3の回転周期と対応する周期で、一様な振幅となっている。予兆部分M2では、複数周期にわたり、振幅が正常部分M1に比べてほぼ倍増する挙動を示している。破損部分M3では、瞬間的に、振幅が予兆部分M2に比べて倍増する挙動を示している。
【0024】
予兆判断部204は、回転ツール3が複数回にわたって回転する間に波形パターンMが標本線H1,H2と交差した回数に基づいて、回転ツール3における破損の予兆の有無を判断する。例えば、予兆判断部204は、図7に示すように、波形パターンMに予兆部分M2が現れ、波形パターンMと標本線H1,H2とが例えば10回交差したときに、回転ツール3に破損の予兆があると判断する。一方、予兆判断部204は、波形パターンMに予兆部分M2が現れず、波形パターンMと標本線H1,H2との交差回数が10回を超えないうちは、回転ツール3に破損の予兆があると判断しない。予兆判断部204は、破損の予兆があると判断するまでは特段の処理をせず、回転ツール3に破損の予兆があると判断した場合に、その旨を示す判断結果情報を制御部205に出力する。
【0025】
制御部205は、予兆判断部204から受け取った判断結果情報に基づいて、回転ツール3を制御する部分である。制御部205は、判断結果情報を受け取ると、最初に回転ツール3を外板10a,10bから離間させ、その後に回転ツール3の回転を停止させる。制御部205は、回転ツール3の回転を停止させると、動作指示情報を移送部206に出力する。
【0026】
移送部206は、回転ツール3をツールステーション30に移送する部分である。ツールステーション30には、例えば先端にプローブ15を備えた未使用の回転ツール12が複数セットされている(図10参照)。移送部206は、制御部205から動作指示情報を受け取ると、回転ツール3を接合中の外板10a,10bからツールステーション30に移送する。ツールステーション30では、破損の予兆が認められた回転ツール3がツールホルダ4から取り外され、新しい回転ツール12がツールホルダ4に装着される。ツールステーション30において回転ツール3の交換が行われた後、移送部206は、回転ツール3を外板10a,10b上に復帰させる。
【0027】
続いて、上述した構成を有する摩擦攪拌接合システム1の動作について、図8を参照しながら説明する。図8は、摩擦攪拌接合システム1の動作を示すフローチャートである。
【0028】
まず、回転ツール3を回転させながら外板10a,10bの一端に押し込み、摩擦攪拌接合が開始される(ステップS01)。接合を行っている間、加速度検出センサ201による回転ツール3の加速度の検出が行われる(ステップS02)。出力信号取得部202は、加速度検出センサ201から出力される測定用の出力信号を取得し、この出力信号を時間軸に対して波形パターン化する(ステップS03)。
【0029】
次に、予兆判断部204は、出力信号取得部202から受け取った測定用の波形パターンMと、標本線格納部203に格納されている標本線H1,H2とを比較し、回転ツール3の破損の予兆の有無を判断する(ステップS04)。予兆判断部204は、波形パターンMに予兆部分M2が現れ、波形パターンMと標本線H1,H2とが例えば10回交差したときに、回転ツール3に破損の予兆があると判断する。一方、予兆判断部204は、波形パターンMに予兆部分M2が現れず、波形パターンMと標本線H1,H2との交差回数が10回を超えないうちは、回転ツール3に破損の予兆があると判断しない。
【0030】
ステップS04において、回転ツール3に破損の予兆があると判断されると、制御部205は、まず、図9(a)に示すように、回転ツール3を回転させたまま接合中の外板10a,10bから離間させ、その後に回転ツール3の回転を停止させる(ステップS05)。
【0031】
回転ツール3の回転の停止後、移送部206によるツールステーション30への移送が行われる(ステップS06)。そして、図9(b)に示すように、回転ツール3がツールステーション30のツール破棄部20に破棄される。
【0032】
ツール破棄部20に回転ツール3が破棄されると、ツールステーション30が時計回りに回転し、新しい回転ツール12がツールホルダ4の真下に配置される。ツールホルダ4が下降し、新しい回転ツール12がツールホルダ4に装着されると、移送部206は、図10(a)に示すように、外板10a,10bの上方に回転ツール12を移送し、回転ツール12を摩擦攪拌接合の中断位置Waに復帰させる。この後、図10(b)に示すように、回転ツール12を回転させながら、外板10a,10bにおける中断位置Waに押し込み、摩擦攪拌接合が再開される(ステップS08)。
【0033】
一方、ステップS04において、回転ツール3に破損の予兆があると判断されなかった場合、及びステップS08において、接合が再開された場合には、摩擦攪拌接合が継続され、摩擦攪拌接合が終了したか否かが判断される(ステップS09)。摩擦攪拌接合の継続中は、上述したステップS02〜ステップS09の一連の処理が繰り返される。回転ツール3が外板10a,10bの他端に到達し、摩擦攪拌接合が終了すると、摩擦攪拌接合システム1は、回転ツール3を外板10a,10bから離間させ、回転ツール3の回転を停止させた後、処理を終了する。
【0034】
以上説明したように、摩擦攪拌接合システム1では、加速度検出センサ201によって検出された測定用の出力信号の波形パターンMが所定時間内に標本線H1,H2と交差した回数をカウントし、その回数が一定以上になった場合に、回転ツール3の破損の予兆を検出している。また、測定用の出力信号の波形パターンMの周期が回転ツール3の回転周期と同期していることに着目し、交差回数をカウントする所定時間を、回転ツール3が複数回にわたって回転する時間に設定している。これにより、複数周期にわたって現れる予兆部分M2を明確に捉えることができ、回転ツール3の破損の予兆を精度良く判断することができる。
【0035】
また、摩擦攪拌接合システム1では、回転ツール3の破損の予兆を検出したときに、回転ツール3を回転させたまま外板10a,10bから離間させるので、回転ツール3と外板10a,10bとの溶着を防止できる。また、回転ツール3が完全に破損してしまう前にかかる処理を実行することで、変形によって歪んだ回転ツール3が、外板10a,10bに押し込まれた状態で回転することを防ぎ、回転ツール3の破損の予兆が認められた位置での接合部Wの接合状態の劣化を防止できる。さらには、ツールホルダ4等への過剰な負荷によるシステムの二次的な破損の発生も回避できる。
【0036】
また、回転ツール3の破損の予兆が検出されると、移送部206によって回転ツール3がツールステーション30に移送される。これにより、破損の予兆が認められた回転ツール3が、速やかに未使用の回転ツール12と交換されるので、摩擦攪拌接合が再開されるまでの時間が短縮され、作業効率を維持できる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上述した実施形態では、加速度検出センサ201による回転ツール3の加速度を検出し、その出力信号の波形パターンを解析しているが、加速度検出センサ201に加えて、荷重検出センサを配置し、その出力信号の波形パターンを解析してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る摩擦攪拌接合システムを用いた摩擦攪拌接合を説明する斜視図である。
【図2】図1に示した摩擦攪拌接合システムの機能的な構成要素を示す図である。
【図3】加速度検出センサの配置構成の一例を示す図である。
【図4】基準用の出力信号の波形パターンを示す図である。
【図5】図4に示した基準用の出力信号の波形パターンから算出した標本線を示す図である。
【図6】回転ツールに破損が生じた場合の測定用の出力信号の波形パターンを示す図である。
【図7】回転ツールの破損の予兆の判断を示す図である。
【図8】図1及び図2に示した摩擦攪拌接合システムの動作を示すフローチャートである。
【図9】回転ツールに破損の予兆が認められた場合の摩擦攪拌接合システムの動作を示す図である。
【図10】図9の後続の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1…摩擦攪拌接合システム、3…回転ツール、201…加速度検出センサ(物理量検出手段)、204…予兆判断部(予兆判断手段)、205…制御部(制御手段)、206…移送部(移送手段)、30…ツールステーション、L…突き合わせ部分、H1,H2…標本線、M,R…波形パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延性材料からなる回転ツールを金属材の端面同士の突き合せ部分に押し込み、前記回転ツールを回転させることにより前記金属材同士を接合する摩擦攪拌接合システムであって、
前記回転ツールの変形状態に関する物理量の変化を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段から出力される出力信号の波形パターンと、前記物理量検出手段から前記回転ツールの変形が見られない場合に出力される出力信号の波形パターンの標準偏差に基づいて予め設定された標本線とを比較し、前記波形パターンが所定時間内に前記標本線と交差した回数に基づいて、前記回転ツールにおける破損の予兆の有無を判断する予兆判断手段と、
前記予兆判断手段によって前記回転ツールに破損の予兆があると判断された場合に、前記回転ツールを回転させたまま前記金属材から離間させ、その後に前記回転ツールの回転を停止させる制御手段とを備えたことを特徴とする摩擦攪拌接合システム。
【請求項2】
前記所定時間は、前記回転ツールが少なくとも複数回にわたって回転する時間であることを特徴とする請求項1記載の摩擦攪拌接合システム。
【請求項3】
複数の回転ツールがセットされたツールステーションと、
前記制御手段によって前記回転ツールの回転が停止した後に、前記回転ツールを前記ツールステーションに移送する移送手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の摩擦攪拌接合システム。
【請求項4】
延性材料からなる回転ツールを金属材の端面同士の突き合せ部分に押し込み、前記回転ツールを回転させることにより前記金属材同士を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
物理量検出手段が、前記回転ツールの変形状態に関する物理量の変化を検出するステップと、
予兆判断手段が、前記物理量検出手段から出力される出力信号の波形パターンと、前記物理量検出手段から前記回転ツールの変形が見られない場合に出力される出力信号の波形パターンの標準偏差に基づいて予め設定された標本線とを比較し、前記波形パターンが所定時間内に前記標本線と交差した回数に基づいて、前記回転ツールにおける破損の予兆の有無を判断するステップと、
制御手段が、前記予兆判断手段によって前記回転ツールに破損の予兆があると判断された場合に、前記回転ツールを回転させたまま前記金属材から離間させ、その後に前記回転ツールの回転を停止させるステップとを備えたことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
前記所定時間は、前記回転ツールが少なくとも複数回にわたって回転する時間であることを特徴とする請求項4記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
移送手段が、前記制御手段によって前記回転ツールの回転が停止した後に、複数の回転ツールがセットされたツールステーションに前記回転ツールを移送するステップとを更に備えたことを特徴とする請求項4又は5記載の摩擦攪拌接合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−82949(P2009−82949A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254857(P2007−254857)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】