説明

摩擦材料組成物及び添加剤

本発明は、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅の混合物を含む新規組成物に関する。Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムの新規組成物も請求する。本発明は、優れた制動効力のためのFe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む新規摩擦ライニング添加剤にも関する。Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムは、本発明に従って摩擦ライニング添加剤としても使用することができる。本発明は、優れた摩耗のためにFe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む新規モーターブラシにも関する。Fe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウムは、本発明に従ったモーターブラシ添加剤としても使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般には摩擦ライニング、具体的には優れた性能をもつ摩擦材料組成物及び、摩擦材料用の添加剤に関する。
【0002】
発明の背景
摩擦ライニングはよく知られている。その主な目的は、系内の運動エネルギーを摩擦を介して熱に転換し、次いで熱を周囲に消散させることによって、車両を減速、停止させることである。クラッチでは、主な目的はエンジンによって生じたトルクを維持することである。ブレーキ性能全体に影響を与える摩擦ライニングの他の側面は、摩擦係数、フェード(fade)、効力(effectiveness)(制動時間及び速度)、熱安定性及び摩耗である。
【0003】
近年まで、摩擦ライニングでは広くアスベストが使用されていた。アスベストは、熱制御、摩擦面の再生、及び耐久性という能力により、摩擦ライニング添加剤として多くのプラスの性質を備えていることは公知である。しかしながら、アスベスト繊維に関連する健康被害を考慮して、摩擦材料の供給業者及び車両製造業者は、摩擦ライニングでのアスベスト使用を停止した。従って、アスベストの有益な特徴を示すが、アスベストを使用しない、他の摩擦ライニング組成物を開発する必要性がある。
【0004】
一般的にいえば、摩擦ライニングは、摩擦材料、研磨剤、フィラー、潤滑剤及びバインダーの機能を充足する、多種多様な材料の複合材料である。公知のごとく、添加剤成分及び濃度を少しでも変えると、摩擦ライニング性能に大きく影響することがある。たとえば一つの添加剤を変えると、長持ちするかもしれないが、制動効率が低下するかもしれない。従って、摩擦ライニング組成物の開発における目的は、具体的な用途に依存して、摩擦係数、効力、フェード、熱安定性及び摩耗に関して優れた性能を達成する最高の全体的な組成物を見つけることである。
【0005】
発明の概要
以下の概要は、請求された組成物の概要を説明するものである。これは本発明をどの側面においても限定するものではなく、詳細且つ完全に実施可能な開示は、本発明の詳細な説明の部分で説明される。同様に本発明は、本発明中で他に記載しない限り、どの数値パラメーター、加工装置、薬品、成分、操作条件にも他の変数にも限定されるべきではない。
【0006】
摩擦ライニングの態様は、摩擦ライニング組成物の約1〜約20重量%を構成するFe-Mo金属間化合物と酸化銅とのブレンド(ブレンドA)の添加剤を含むことができる。
摩擦ライニングの他の態様は、摩擦ライニング組成物の約1〜約20重量%を構成するFe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムとのブレンド(ブレンドB)の添加剤を含むことができる。
【0007】
摩擦ライニングのさらなる態様は、少なくとも一種の摩擦材料、少なくとも一種の研磨剤、少なくとも一種のフィラー、少なくとも一種のバインダー及び、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤を含むことができる。摩擦ライニングの他の態様は、少なくとも一種の摩擦材料、少なくとも一種の研磨剤、少なくとも一種のフィラー、少なくとも一種のバインダーと、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムを含む添加剤とを含むことができる。
【0008】
さらなる態様において、本発明のFe-Mo金属間化合物及び酸化銅組成物(ブレンドA)は、約1〜約10重量%を構成する量でモーターブラシに添加することができる。Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウム(ブレンドB)は、約1〜約10重量%を構成する量でモーターブラシに添加することができる。
【0009】
本明細書に含まれ、明細書の一部をなす付記図面は、本発明の種々の態様を説明し、記載と一緒になって、本発明を説明するものである。
発明の詳細な説明
おおまかにいって、本発明に従った摩擦ライニングの態様は、摩擦材料と、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤(ブレンドA)とを含むことができる。他の態様において、添加剤は、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウム(ブレンドB)とを含むことができる。ブレンドAとブレンドBにおいて、Fe-Mo金属間化合物は、約50〜約75重量%のMoを含むことができ、残余はFeを含むことができる。Fe-Mo金属間化合物は、Mo約55〜約73重量%、より好ましくはMo約59〜約70重量%を含み、残余はFeを含む。「摩擦材料」とは通常、一種以上の金属、一種以上の金属硫化物、金属酸化物、アラミド繊維、グラファイト、コークス、バーミキュライト、クロマイト、ケブラーまたはセラミックを包含する。「研磨剤」、「フィラー」及び「バインダー」なる用語は、当業界で公知であり、当業者の理解に従って慣用的な意味をもつ。「研磨剤」とは、通常、以下のジルコン、珪酸ジルコニウム、アルミナ、マグネシア、酸化鉄、酸化スズまたは石英の一つ以上の意味を包含する。「フィラー」とは、以下の硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石灰、チタン酸カリウム、ゴム、酸化亜鉛、カシューナッツ殻または繊維の一つ以上を包含する。「バインダー」とは、通常、フェノール樹脂及び変性樹脂、例えばクレゾール、エポキシ、カシュー、ゴム、亜麻仁油または硼素を包含する。多くの態様を本明細書中で記載する。しかしながら一方が他方より好ましいと見なされるかは、所望の性能基準に依存する。たとえば、乾燥環境中で安定で高い摩擦係数が必要なら、一つの態様が他方よりも好ましいと考えるだろう。他方、優れたブレーキ有効性が低温、湿った塩気を含んだ環境で必要なら、もう一方の態様が好ましいと見なされ得る。
【0010】
本発明に従った添加剤の第一の態様は、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む。添加剤の第一の態様は、乾燥条件下で全性能をベースとして、約1重量%〜約20重量%の量、好ましくは少なくとも約2〜約10重量%の量で摩擦ライニングに添加することができる。添加剤の第一の態様は、約60〜約99重量%のFe-Mo金属間化合物と約1〜約40重量%の酸化銅を含むことができる。あるいは、約90〜約99重量%のFe-Mo金属間化合物と約1〜約10重量%の酸化銅、より好ましくは約95重量%のFe-Mo金属間化合物と約5重量%の酸化銅を含むことができる。本発明に従った第二の側面では、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムを含む。第二の態様の添加剤は、約2(例えば1.912重量%)〜約10重量%(たとえば9.56重量%)の量で摩擦ライニングに配合することができる。添加剤の第三の態様では、約50〜約99重量%のFe-Mo金属間化合物と約1〜約50重量%の酸化銅と、約1〜約10重量%の炭酸カルシウムを含むことができる。あるいは、約80〜約95重量%のFe-Mo金属間化合物、約5〜約15重量%の酸化銅と、約1〜約5重量%の炭酸カルシウム、好ましくは約90重量%のFe-Mo金属間化合物、約5重量%の酸化銅と、約5重量%の炭酸カルシウムとを含むことができる。
【0011】
一つの態様において、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムは、本明細書中に記載の態様を製造するために粉末形で提供し、種々の量で混合することができる。Fe-Mo金属間化合物の粒子は、2μm〜200μmのサイズを変動し得る。酸化銅の粒子は、2μm〜200μmを変動し得、炭酸カルシウムの粒子は1μm〜100μmを変動し得る。本発明の第一の側面の粒径の範囲は10μm〜200μmであった。本発明の第二の側面の平均粒径は5μm〜200μmであった。粉末成分(たとえばFe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウム)は、当業者に公知の多様なプロセスにより製造することができる。たとえば、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムは、Climax Engineered Materials、Sahuarita、Arizonaから入手可能である。
【0012】
Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む摩擦ライニング添加剤は、フェード、硬度、強度、耐摩耗性及び熱安定性の優れたブレーキ性能をもたらす。Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムを含む摩擦ライニング添加剤は、ブレーキライニングの摩耗が少ないことに加えて、優れたブレーキ効力(たとえば、短い制動時間及び低い車輪速度)をもたらす。これらの性能の強化は、バインダー、一つの態様においては、複合体材料のマトリックスを表すフェノール樹脂の硬化プロセスでFe-Mo金属間化合物と酸化銅添加剤の触媒作用に起因すると考えられる。この硬化プロセスは、優れたフェード性能にもリンクし得る、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む特定の摩擦層の形成に起因すると考えられる。本発明に従った摩擦ライニング組成物の多くの態様が形成され、広範な条件下で試験された。一つの態様が他のどの態様よりも良く実施される限り、具体的な試験条件の結果であるかもしれない。
【0013】
本発明の一つの態様において、第一のオリジナル装置(OE-A)ブレーキ摩擦ライニング組成を、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤が約4重量%を構成し、スチールチップが約6重量%を構成するように、元の配合物中に存在するスチールチップがいくらか、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末と置き換わるように変更した。この態様において、添加剤は約95重量%のFe-Mo金属間化合物と5重量%の酸化銅を含んでいた。この添加剤は、約200μm〜約2ミクロンの平均粒径のFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末を含んでいた。本発明に従った摩擦ライニング組成物の種々の態様は、当業者に公知の方法によって製造した。第一に、全組成物の種々の成分を秤量し混合した。次いで、摩擦ライニング組成物をモールドに入れ、プレスし、硬化させた。最終的に、この組成物を後硬化及び機械加工にかけた。一度製造したら、摩擦ライニング組成物を一連のブレーキ性能試験にかけた。未変性OE-Aブレーキ摩擦ライニングと比較して、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤約4重量%を添加すると、熱安定性が増加し、硬度と剪断強さが増加し、摩擦係数が安定し、フェードが減少し、摩耗が減少した。
【0014】
他の態様において、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤は、OE-Aブレーキ摩擦ライニング組成物の約2重量%を構成することができ、スチールチップが約8重量%を構成することができる。この態様において、添加剤はFe-Mo金属間化合物約95重量%と酸化銅約5重量%を含んでいた。Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤は、約200μm〜約2μmの範囲の粒径であった。未変性OE-Aブレーキ摩擦ライニングと比較して、これは摩擦係数が低いけれども、スチールチップ約2重量%の代わりにFe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤約2重量%を添加すると、硬度と剪断強さがやや増加し、摩耗が減少した。
【0015】
他の態様では、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅添加剤が約6重量%を構成し、スチールチップが約4重量%を構成するように、OE-Aブレーキ摩擦ライニング組成物にFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末の添加剤を添加することを含む。この態様において、添加剤はFe-Mo金属間化合物を約95重量%と酸化銅約5重量%を含み、添加剤は約200μm〜約2μmの範囲の粒径であった。未変性OE-A摩擦ライニング組成物と比較して、スチールチップ約6重量%をFe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤約6重量%で置き換えると、硬度と剪断強さが増加した。摩擦係数はやや増加し、0.4μに近い安定した値に達した。
【0016】
もう一つの態様では、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末を含む添加剤は、元の配合物のスチールチップ成分を完全に置き換えて、変性OE-Aブレーキ摩擦ライニング組成物の約10重量%を構成することができる。この態様において、添加剤はFe-Mo金属間化合物約95重量%と酸化銅約5重量%を含んでいた。添加剤は約2μm〜約200μmの粒径のFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末を含んでいた。OE-A摩擦ライニングの元の組成物と比較して、摩耗はやや高くなったが、元の配合物のスチールチップの代わりに、約10重量%のFe-Mo金属間化合物と酸化銅で置き換えると、熱安定性が上昇し、硬度と剪断強さが増加し、摩擦係数が上昇した。
【0017】
さらに他の態様において、第二のOEブレーキ摩擦ライニング(OE-B)の組成物を変性して、元の組成物中の炭素質材料約10%の代わりに、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウムを含む添加剤で置き換えた。元の配合物中の炭素質材料は、グラファイトとコークスを含み、元の組成物の約19.12重量%以下を形成している。従って炭素質材料の10%をFe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤で置き換えるということは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤が約2重量%(約1.912重量%)を構成したことを意味する。この添加剤は約93重量%のFe-Mo金属間化合物、約5重量%の酸化銅と、約2重量%の炭酸カルシウムを含み、約2μm〜約200μmの範囲の粒径であった。
【0018】
すでに開示の態様の場合と同様に、次の態様に従った摩擦ライニング組成物は、当業者に公知のプロセスにより製造した。すでに説明したように、全組成物の個々の成分を秤量し混合した。次いで混合物を成形し、プレスし、硬化し、後硬化して、機械加工にかけた。
【0019】
ベースライン試験において、OE-Bブレーキ摩擦ライニングは、塩素イオン(冬期、路上で使用される塩化マグネシウムと塩化ナトリウム型の塩由来)に暴露されたとき、冷たく湿った環境では制動時間がかなり増加した。OE-Bブレーキ摩擦ライニングと比較して、約2重量%(約1.912重量%)のFe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤を含む本発明の態様は、低い平均の摩擦係数を示し、ブレーキ効力が良く(短い制動時間及び低速)、摩耗が少なく、速度感受性(speed sensitivity)が低く、フェードが良く、回復特性(recovery property)も良好であった。
【0020】
さらに別の態様では、OE-Bブレーキ摩擦ライニング組成物由来の炭素質材料の約50%を、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウムを含む添加剤で置き換えた。この炭素質材料は、元の配合物の約19.12重量%を構成していたので、その約50%をFe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤で置き換えるということは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤が、約10重量%(たとえば9.56重量%)を構成したことを意味する。この添加剤は約93重量%のFe-Mo金属間化合物、約5重量%の酸化銅と、約2重量%の炭酸カルシウムを含み、粒径は約2μm〜約200μmであった。OE-Bブレーキ摩擦ライニングと比較して、約10重量%(たとえば9.56重量%)のFe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤を含む本発明の態様は、やや低い平均の摩擦係数を示したが、よいブレーキ効力(短い制動時間及び低速)、低い摩耗、低い速度感受性及び良好なフェードと回復特性を示した。
【0021】
さらに別の態様では、OE-Bブレーキ摩擦ライニングの組成を変性して、元の配合物中の炭素質材料約10%の代わりに、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤で置き換えた。炭素質材料は元の配合物の約19.12重量%を構成していたので、炭素質材料の約10%をFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤で置き換えるということは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤が約2重量%(たとえば1.912重量%)を構成したことを意味する。添加剤は約95重量%のFe-Mo金属間化合物と約5重量%の酸化銅を含み、約2μm〜約200μmの平均粒径であった。OE-Bブレーキ摩擦ライニングと比較して、本発明のこの態様は、やや低い摩擦係数と低い摩耗と速度感受性を示したが、フェードと回復特性は良好であった。
【0022】
さらにもう一つの態様では、OE-Bブレーキ摩擦ライニング中の炭素質材料の約50%を、本発明に従ったFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤で置き換えることを含んでいた。炭素質材料は、OE-Bブレーキ摩擦ライニングの約19.12重量%を構成していたので、その約50%を置き換えるということは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤が約10重量%(たとえば9.56重量%)であったことを意味する。添加剤は約95重量%のFe-Mo金属間化合物と、約5重量%の酸化銅を含み、平均粒径は約2μm〜200μmであった。OE-Bブレーキ摩擦ライニングと比較して、約10重量%(たとえば9.56重量%)のFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤を含む本発明の態様は、やや低い摩擦係数と高い速度感受性を示したが、摩耗は低く、フェードと回復特性は良好であった。
【0023】
本発明に関するさらなる情報を提供するために以下の実施例を提供する。示された実施例は、いかなる態様においても本発明を限定するものではない。
実施例1〜4
実施例1〜4において、第一のOEブレーキ摩擦ライニング、OE-Aは、OE-Aライニング材料のスチールチップ成分のいくらかまたはその全体と、本発明に従ったFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末の添加剤で置き換えることによって変性した。実施例1〜4の全摩擦ライニングの種々の成分を秤量し、混合し、成形し、プレスして硬化させた。次いで組成物を後硬化と機械加工にかけた。OE-Aブレーキライニングと、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末を含む配合物を、当業界で公知の一連のブレーキ性能試験にかけた。
【0024】
OE-Aブレーキライニングを分析して、含まれる成分とその量を同定した。この目的に関して使用した試験は、光学顕微鏡法(LM)、x線回折(XRD)、エネルギー分散ミクロ分析装置(EDX)を備えた走査電子顕微鏡法(SEM)及び、フーリエ変換赤外線分析法(FTIR)であった。これらの方法は、物質のキャラクタリゼーションで公知の方法である。
【0025】
LM、XRD、SEMとEDX用の全てのサンプルは、15×15×10mmセグメントに注意深く切断した。次いでこのセグメントをエポキシ樹脂ホルダーに埋め込み、削って磨いた。これらは、定性及び定量分析用に使用した。FTIRは、定性分析に使用した。(画像分析を使用する)定量分析は、ランダムに実施した切断部上の選択的な相(たとえばコークス)によって覆われた総面積がこの相の容積と比例するという事実に基いていた。統計分析は、実験デザインと結果の評価に適用した。測定したデータは、約90%の信頼性と、所定の値の±10%の精度に相当した。
【0026】
表1は、実施例1〜4の性能試験用のベースラインとして供給した、OE-A摩擦ライニング配合物で検出した成分を列記する。この摩擦ライニング中の金属粒子の総量は約20重量%である。さらに、この摩擦ライニングは、研磨剤(ジルコン、アルミナ、マグネシア)及び潤滑剤(グラファイト、コークス、バーミキュライト及び硫化モリブデン)を含む。バライト(Barite)はフィラーであり、トワロン(Twaron:アラミド繊維)は、摩擦ライニングの強度とゴムの減衰(rubber damping)を下支えする。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1〜4において、OE-A摩擦ライニング中のスチールチップ成分の幾らかまたはその全部を、本発明に従ったFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末の添加剤で置き換えた。Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤は、約95重量%のFe-Mo金属間化合物と5重量%の酸化銅を含んでいた。添加剤は、約2μm〜200ミクロンの粒径をもつFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末を含んでいた。実施例1では、スチールチップ約2重量%をFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤約2重量%で置き換えた。実施例2では、スチールチップ約4重量%をFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤約4重量%で置き換えた。実施例3では、スチールチップ約6重量%をFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤約6重量%で置き換えた。そして実施例4では、スチールチップのほとんど全部を、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤約10重量%で置き換えた。
【0029】
実施例1〜4のそれぞれとベースラインOE-A摩擦ライニングを、一連の摩擦ライニング性能試験にかけた。しかし、実施例の全てを、以下の試験全てにかけたわけではない。実施した試験については以下に詳細に記載する。
【0030】
摩擦評価及びスクリーニング試験(The Friction Assessment and Screening Test:FAST)は、1960年代にフォード(Ford Motor Company)によって開発されたもので、摩擦係数の測定に用いられる。約6.35平方ミリメートルの小さな試験片を90分間、回転する鋳鉄製ディスクに押しつける。温度は室温から約300℃まで急激に上昇させる。試験は、Ling Egineering FAST装置を使用して実施した。
【0031】
熱重量分析を実施して、サンプルの熱的安定性を評価した。さらに、試験を実施して、サンプルのブリネル硬さ、剪断強さ並びにスエリング(swelling)及び成長(growth)を確認した。ノイズ試験J2521も実施した。
【0032】
このJ2430試験の手順を使用して、フルスケールダイナモメーター試験にも使用した。Society of Automotive Engineers(SAE)により推奨されるJ2430試験では、新しいブレーキに関し摩擦ライニングとFederal Motor Vehicle Safety Standard(FMVSS)135最小ブレーキ性能標準とを比較する。この試験では、装置のチェックストップ、バーニッシュ(burnish)、効力、フェード、ホットパフォーマンス(hot performance)、冷却、回復、リバーニッシュ(reburnish)及び摩耗を測定する。AO4D試験も、フェードと摩耗についての試験に使用した。この試験には、Link Engineeringダイナモメーターを使用した。
【0033】
摩擦試験後、摩擦ライニングサンプルを、LM、XRD、SEM及びEDXを使用して検査した。
FAST
ベースラインOE-A摩擦ライニング、並びに実施例1〜4をFAST試験にかけた。図1a〜eは、時間の関数として測定した摩擦係数を示す。ベースラインOE-A摩擦ライニングと比較して、実施例1〜4は、最初、低い摩擦係数を示した。これらの実施例は約400〜800秒の間に一時的な挙動を示したが、温度が上昇すると、摩擦係数は増加し、試験の最終段階で安定した。摩擦係数の初期の変化は、ブレーキライニングサンプルと回転するディスクとの間の接触現象に関係している可能性がある。この過渡的現象は、実施例1〜4のサンプル表面に安定な摩擦層が形成したためと考えられる。
【0034】
ベースラインOE-Aサンプルと実施例1〜4の摩擦係数の平均の値を図2に示す。このベースラインサンプルは図2では、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末が0重量%のように見える。実施例1は、ベースラインサンプルよりもやや低い平均の摩擦係数を示したが、実施例2〜4の摩擦係数の平均データは、約6重量%まで添加したFe-Mo金属間化合物と酸化銅によって摩擦係数がやや増加して、0.4μに近い安定した値に到達していることを示している。
【0035】
実施例1〜4とベースラインOE-A摩擦ライニングを、以下の摩擦試験に関して試験した。図3は、サンプルの平均摩耗データの比較を示す。ベースラインサンプルと比較したとき、実施例1〜3は同じような摩耗を示した。実施例4の摩耗はやや高かった。
【0036】
スエルと成長
スエルと成長は、基板を400°F(204.4℃)に加熱したときの厚さの一時的増加分と永久的増加分の尺度である。現行の試験法を使用すると、スエルはせいぜい2.7%のはずと考えられる。ベースラインと実施例1〜4の試験結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
全てのサンプルに関して試験したスエルと成長は2.7%を大きく下回った。
ブリネル硬さ
表3は、ベースラインサンプルと実施例1〜4のブリネル硬さの検出値を列記する。
【0039】
【表3】

【0040】
Fe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末を添加すると、表3に示されているようにブレーキライニングの硬度が増加し、これは試験しなかったが、圧縮性に影響を与え得る。試験した材料の密度は、1.86〜1.93g/cm3であった。
【0041】
剪断強さ
ベースラインサンプルと実施例1〜4の剪断強さのデータを表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
予想通り、実施例1〜4の剪断強さは、試験した摩擦ライニング組成物中のFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末の量が増えるにつれて増加した。
熱重量分析(TGA)
TGA試験を実施して、ベースラインサンプルと実施例2と4の熱安定性を確かめた。温度を上昇させるのと同時に、それぞれのサンプルの質量をモニターした。図4は、温度の関数として重量減少をプロットすることにより、ベースラインサンプルと実施例2と4の熱安定性を示す。この試験の結果として、本発明のFe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末を添加すると、フェノール樹脂の重合に触媒作用を及ぼし、それによってFe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末の量が増加するにつれてより安定な複合材料となったと考えられる。図4に示されているように、ベースラインサンプルは約200℃までの温度で分解し始めるが、実施例2と4は、その温度でも水分の減少しか示さなかった。全てのサンプルに関して400℃を超える温度では顕著な重量減少となったが、実施例2と4は、その重量減少が少ないことからも明らかなように、ベースラインOE-A摩擦ライニングよりもずっとゆっくりと分解した。
【0044】
ダイナモメーター試験
フルスケールダイナモメーター試験(full-scale dynamometer test)SAEJ2430とAO4D試験を、ベースラインOE-A摩擦ライニングと実施例2で実施した。実施例2は、上記の試験パラメーターをベースとした最高の性能を示したため、追加の試験として選択した。三つの試験をベースラインOE-Aで実施し、八つの試験を実施例2のサンプルで実施した。摩耗に関しては、全てのサンプルをJ2430試験にかけた。
【0045】
図5aと5bは、ベースラインOE-Aサンプルと実施例2のJ2430性能データを示す。実施例2は、ベースラインサンプルのブレーキ性能を超えた。実施例2は、FMVSS135によって要求された制動効力評価手順に合格した。ベースラインサンプルよりも実施例2が主に優れている点は、フェードスナッブで検出した。フェードは、大きく減少し、制動効力(遅いスピードで早く停止する)は、ベースラインOE-A摩擦ライニングと比較して、実施例2で改善した。
【0046】
図6aと6bは、ベースライン摩擦ライニングサンプルと実施例2のAO4D性能データを示す。実施例2は、フェードスナッブの間に摩擦係数で減少を示したのに対し、ベースラインOE-A摩擦ライニングは、AO4D試験の間、強いフェードを示した。
【0047】
ベースラインOE-A 摩擦ライニングと実施例2を、J2430試験のフェードスナッブに続いて摩擦表面分析にかけた。図7aはベースラインOE-A摩擦ライニングのSEM画像であり、図7bは実施例2のSEM画像である。図7cに示されているように、EDX分析ははっきりと、ベースラインOE-A摩擦ライニングと比較して、実施例2は、高い含有量のモリブデン、銅、鉄、アンチモン及びバリウムの摩擦層を形成したことを示す。XRD分析は、これらの元素が摩擦面で酸化物の複合混合物を形成していることを明らかにした。摩擦層の種々の酸化物量は、ベースラインOE-A摩擦ライニングよりも実施例2の優れた摩擦性能に関与すると考えられる。
【0048】
摩耗
ベースラインOE-A摩擦ライニングと実施例の摩擦データは、表5に示すように、AO4D試験の間に得られた。
【0049】
【表5】

【0050】
ベースラインOE-A摩擦ライニングの平均重量減少(17.27%)は、実施例2(15.01%)を上回った。ベースラインOE-A摩擦ライニング(15.05%)と比較して、摩耗による厚さの変化は、実施例2でも低かった(12.00%)。
【0051】
実施例とベースラインOE-A摩擦ライニングサンプルの全てを、表6に示すように、J2430試験後に摩耗試験にかけた。
【0052】
【表6】

【0053】
データが示すように、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末を摩擦ライニング組成物へ添加量を増やしていくと、摩耗率は減少する。実施例3と4は、摩耗に関しては同じとみなすことができる。
【0054】
ノイズ
実施例2とOE-A摩擦ライニングは、当業者に公知のJ2521ノイズ試験を使用してノイズに関して試験した。ノイズは、70dB以上の圧力レベルとして定義される。実施例2とベースラインOE-Aサンプルは両方とも、約20dBの圧力レベルを示したので、これらはノイズを出しているとはみなさない。
【0055】
実施例5〜8
実施例5〜6では、第二のオリジナル備品のブレーキ摩擦ライニング、OE-Bを、種々の量の炭素質材料を本発明に従ったFe-Mo金属間化合物と酸化銅添加剤で置き換えて変性した。実施例7〜8では、OE-B摩擦ライニングは、種々の量の炭素質材料を、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウム粉末で置き換えて変性した。実施例5〜8の試験は、低温、高湿度及び塩を含んだ環境の模擬冬期運転条件下で実施したブレーキ試験でその性能を評価するために実施した。摩擦ライニング性能試験(たとえばFAST、J2430、摩耗試験)は、本明細書にすでに述べた方法で実施した。ベースラインサンプルと実施例5〜8で実施したキャラクタリゼーション分析(たとえばLM、XRD、SEM、EDX)もすでに記載の通りである。
【0056】
冬期、ブレーキは、雪と氷の道路を処理するのに使用される塩化マグネシウムと塩化ナトリウムの生成物である塩素を含む環境中で使用されることが多い。そのような条件下では、高湿度(50%以上の相対湿度)と低温(約0℃以下)とが合わさって、摩擦ライニングは、摩擦係数が急激に大きく低下するかもしれない。図8aに示されているように、たとえば通常の試験条件下では、OE-B摩擦ライニングによって車両は、50km/時間の速度から1.0秒間で停止した。しかしながら、冬期の運転条件下では、ブレーキは十分に機能しない。OE-B摩擦ライニングは、MgCl2噴霧後、6℃、87%相対湿度で試験した。図8bに示されているように、車輪速度は、最初の6秒間で適用したブレーキ後、実際には増加した。もっと重要なことには、車両を停止させるのに必要な時間は、約11秒にも増加していた。OE-Bブレーキライニング中の炭素質材料は、Mg2+、CrとNa+イオンの水分を吸着及び介入(intercalate)する傾向があると考えられる。
【0057】
OE-B摩擦ライニングを分析して、含まれる成分と量を同定した。この分析は、OE-A摩擦ライニングに関して上記のものと同一方法で実施した。OE-B摩擦ライニングの配合を表7に示す。
【0058】
【表7】

【0059】
このOE-B摩擦ライニングは、研究室で再現して、研究室材料の摩擦ライニング(LM)を製造した。OE-BとLM摩擦ライニングの両方を実施例5〜8の試験のベースラインとして使用した。炭素質材料(グラファイトとコークス)の総量は、約20重量%(たとえば19.12重量%)を構成した。実施例5では、炭素質材料の約10%を本発明のFe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末で置き換え、このことは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末が約2重量%(たとえば1.912重量%)を構成したことを意味する。Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤は、約95重量%のFe-Mo金属間化合物と、約5重量%の酸化銅を含んでいた。実施例6では、炭素質材料の約50%を本発明のFe-Mo金属間化合物と酸化銅添加剤で置き換え、このことは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤が約10重量%(たとえば9.56重量%)を構成したことを意味する。このFe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤は、約95重量%のFe-Mo金属間化合物と約5重量%の酸化銅を含んでいた。添加剤は、約2μm〜約200μmの粒径のFe-Mo金属間化合物と酸化銅粉末とを含んでいた。実施例7では、炭素質材料の約10%を本発明のFe-Mo金属間化合物、酸化銅粉末と炭酸カルシウム添加剤で置き換え、このことは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム粉末が約2重量%(たとえば1.912重量%)を構成したことを意味する。Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤は、約93重量%のFe-Mo金属間化合物、約5重量%の酸化銅、約2重量%の炭酸カルシウムを含んでいた。添加剤は、約2μm〜約200μmの粒径のFe-Mo金属間化合物、酸化銅粉末と炭酸カルシウム粉末を含んでいた。実施例8では、炭素質材料の約50%を、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウム添加剤で置き換え、このことは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤が約10重量%(たとえば9.56重量%)を構成したことを意味する。Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤は、約93重量%のFe-Mo金属間化合物、約5重量%の酸化銅と、約2重量%の炭酸カルシウムを含んでいた。この添加剤は約2μm〜200μmの粒径のFe-Mo金属間化合物、酸化銅粉末と炭酸カルシウムを含んでいた。
【0060】
OE-B摩擦ライニング、LM摩擦ライニングと実施例5〜8を、当業者に公知の上記のような種々のブレーキ性能試験にかけた。次いでこれらを冬期運転をシミュレーションするための条件下でフルスケールダイナモメーター試験にかけた。OE-BとLMサンプルをベースライン材料として使用した。七つのLMサンプルを配合し、六つのサンプルをフルスケールダイナモメーターJ2430試験にかけ、一つのサンプルをFAST試験で使用した。J2430については後で繰り返した。最初のセットの試験の間に熱電対に接触して損失したため、温度は必ずしも正しく測定したとは限らない。従って、本明細書のJ2430試験データは第二のセットの試験由来である。
【0061】
FAST
OE-BとLMサンプルと実施例5〜8をFAST試験にかけた。図9aは、OE-Bサンプルの時間を関数とした摩擦係数を示し、図9bはLMサンプルの時間を関数とした摩擦係数を示す。OE-BとLM材料は同じように挙動した。平均の摩擦係数は、OE-B材料に関しては0.41μであり、LM材料に関しては0.40μであった。
【0062】
実施例5と6を使用したFAST試験からの摩擦係数の結果を図9cとdに示す。実施例5と6の摩擦係数は、OE-BとLMベースラインサンプルよりもやや低かったが、SEM試験から、実施例5と6は、試験の間に安定な摩擦層を形成したことが判明した。結果として、摩擦係数は増加し、FAST試験の終盤で安定化した。実施例6は、実施例5よりも高い摩擦係数を示した。実施例5の摩擦係数は最初は低かったが、FAST試験の最初の1000秒の間に十分に効率的であった。
【0063】
実施例7と8の時間を関数とした摩擦係数を図9eとfに示す。実施例7はブレーキ1000秒後に摩擦係数が急激に上昇した。この現象は、接着剤の特性により摩擦層が急速に形成することによって生じたものと考えられる。しかしながら、この摩擦層は実施例5によって生じた層ほど安定ではなかった。従って、実施例7の摩擦係数は、FAST試験の第二の部分では低下した。図9fに見られるように、実施例8は実施例7と比較して、高く、より安定な摩擦係数を示した。以下の表8に示すように、これらの条件下でFAST試験にかけたときに、実施例8の摩擦性能は、ベースラインOE-BとLMサンプルの摩擦性能と非常に酷似している。
【0064】
【表8】

【0065】
表8は、FAST試験の後の平均摩耗データも含む。実施例7と8の摩耗は、ベースラインOE-BとLM材料と匹敵する。実施例5と6の摩耗はやや高い。
ダイナモメーター試験
SAE推奨J2430試験手順を使用して、ベースラインOE-BとLMサンプル、並びに実施例5〜8を試験した。この手順は、23個の装置チェックストップ、続いて200個のバーニッシュ(burnish)ストップ、16個の効力ストップ、15個のフェードストップ、2個のホットパフォーマンスストップ、4つの回復ストップ、2つの回復ランプストップ、35個のリバーニッシュ(reburnish)ストップと15個の最終効力ストップからなっていた。速度、圧力及び温度は、手順ごとに異なっていた。試験結果を図10a〜fに示す。
【0066】
実施例5と6は、ベースラインOE-BとLMサンプルと比較して、比較的高い感度を示した。従って、実施例5と6に関しては、速度変化による摩擦係数の変化は、装置のチェックと第一及び第二の効力試験の間のベースラインOE-BとLM材料よりも大きかった。それにもかかわらず、実施例5と6は両方とも、ベースラインLM材料と比較して良好なフェード特性と優れた回復特性を示した。これらのデータは、実施例1〜4のデータと一致する。
【0067】
他方、実施例7と8は、効力試験の間、速度変化に対して感受性がないことを示した。実施例5と6の場合のように、実施例7と8は、ベースラインLMサンプルよりも良好なフェード特性を示した。実施例7と8と比較すると、実施例8の摩擦係数は常に高い。SEM分析から、Fe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウム添加剤の量が増加すると、接着剤の特性により優れた摩擦層が形成することが判明した。
【0068】
全てのサンプルをJ2430試験の後に摩耗試験にかけた。データを表9に示す。
【0069】
【表9】

【0070】
図11は、表9のデータを棒グラフにしたものである。表9及び図11からの摩耗データは、実施例7と8でFe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウムを添加すると、摩擦ライニングの摩耗を大きく減少させたことを示した。摩擦ライニング摩耗は、ベースラインOE-BとLMサンプルと比較して、実施例5と6でも減少した。ローター摩耗は、試験した全てのサンプルで同程度であった。従って、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅、及びFe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウムを添加しても、ローター摩耗は酷くならなかった。
【0071】
変性ダイナモメーター試験
ダイナモメーター試験は、冬期運転条件をシミュレーションするために、OE-Bベースラインブレーキ材料並びに実施例5〜8で実施した。試験は、0℃、87%相対湿度で実施した。摩擦ライニングサンプルを塩溶液と一緒にスプレーした。図12は、観察されたブレーキ効力における差を示す。図12は、同じエネルギーで駆動した車輪にブレーキを適用したときの速度の時間依存性(km/時間)を示す。
【0072】
図12のデータは、50km/時間で5バールの制動圧力を与えることによって得た。この速度に到達すると、トルクはテスターの最大能力(75Nm)まで増加した。図12から容易に観察されるように、車輪速度は、最大速度に到達するまで最初に増加し、次いで減少した。結局は車輪速度は停止した。実施例5〜8は全て、これらの条件下ではベースラインOE-Bサンプルよりもかなり高いブレーキ性能を示した。ベースラインOE-B摩擦ライニングは、ほとんど200km/時間の最大速度に到達し、10秒の停止時間であった。対照的に、実施例7は約130km/時間の最大速度を示し、停止時間は6秒であった。
【0073】
この性能における差は、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅添加剤またはFe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム添加剤のどちらかを炭素質材料の代わりに摩擦ライニングに添加すると、摩擦層が形成することによって発生するものと考えられる。SEM分析によって示されるように、本発明に従って炭素質材料をこれらの粉末で置き換えると、鉄、モリブデン及び銅元素を含む摩擦層を摩擦面に作り出す。たとえば図13は、塩を含んだ環境中、0℃、87%相対湿度における摩擦試験にかけたOE-BサンプルのSEM画像を示す。局所的な画像は、摩擦が、摩擦層によって覆われた大きく変形した金属チップによって示された幾つかの表面で起きていることを示す。摩擦層の化学分析から、図14に示されているように、かなりの量の銅及びアンチモンの存在が明らかである。他の痕跡量の元素も検出された。ベースラインOE-Bサンプルの摩擦層では、かなりの量の炭素も明らかである。
【0074】
図15a及びbに示されているように、実施例6と8のEDXスペクトルは、ベースラインOE-Bサンプルとは異なる。実施例6と8の摩擦層の化学分析から、摩擦面と特に高(elevated)接触面とが、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅添加剤、並びにFe-Mo金属間化合物、酸化銅粉末と炭酸カルシウムにもともと存在する元素を含む摩擦層によって覆われていることが明らかである。図16aとbに示されているように、ベースラインOE-Bサンプルと比較して、実施例6と8の摩擦層は炭素を含まず、アンチモン、クロム、ジルコニウム、珪素、アルミニウムとマグネシウムが非常に少ない。
【0075】
他の用途において、ブレンドAとBの配合物を上記のものと同様の関連する割合でクラッチ摩擦ライニングに添加することができる。ブレーキの摩擦ライニングの場合と同様に、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅またはFe-Mo金属間化合物、酸化銅と炭酸カルシウムを添加すると、摩擦係数を高め、摩耗を減らすと考えられる。
【0076】
本発明のさらにもう一つの態様は、ブレンドAとブレンドBを電気モーターで使用するブラシに添加することを含む。これらのブラシは通常、カーボン、コークス及びグラファイトなどの潤滑剤とフェノールバインダーとを含む。ブレンドAは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末がブラシ組成物の約1〜約10重量%、好ましくは約1〜約4重量%を構成するようにブラシに添加する。このFe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末は、Fe-Mo金属間化合物約60〜約99重量%と、酸化銅約1〜約40重量%を含む。あるいは、Fe-Mo金属間化合物約90〜約99重量%と、酸化銅約1〜約10重量%、より好ましくはFe-Mo金属間化合物約95重量%と酸化銅約5重量%を含んでもよい。Fe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末の粒径は、約2μm〜約200μmであろう。ブレンドBは、Fe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム粉末がブラシ組成物の約1〜約10重量%、好ましくは約1〜約4重量%を構成するようにブラシに添加する。このFe-Mo金属間化合物-酸化銅-炭酸カルシウム粉末は、Fe-Mo金属間化合物約50〜約99重量%と、酸化銅約1〜約50重量%と、炭酸カルシウム約1〜約10重量%を含む。あるいは、Fe-Mo金属間化合物約80〜約95重量%と、酸化銅約5〜約15重量%と炭酸カルシウム約1〜約5重量%、より好ましくはFe-Mo金属間化合物約90重量%、酸化銅約5重量%と炭酸カルシウム約5重量%を含んでもよい。Fe-Mo金属間化合物-酸化銅粉末の粒径は、約2μm〜約200μmであろう。ブレンドAとブレンドBを電気ブラシに添加すると、摩耗が減少すると考えられる。
【0077】
結論として、請求された本発明は、摩擦ライニングの分野で重要な成果を示す。本発明に従った製品は、技術的及び利用の観点から新規で、明確で非常に有用である。本発明の種々の態様から、本発明を理解した後に当業者には当然、種々の変形が可能であろう。そのような修正は本発明の範囲内であると考えられる.従って本発明は、以下の請求の範囲に従って解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1a】図1は、OE-Aベースライン摩擦ライニングと、実施例1〜4のFAST摩擦試験による経時における摩擦係数を示す図である。図1aは、OE-Aベースライン摩擦ライニングのFAST摩擦試験による経時における摩擦係数を示す図である。
【図1b】図1bは、実施例1のFAST摩擦試験による時間の関数としての摩擦係数を示す図である。
【図1c】図1cは、実施例2のFAST摩擦試験による時間の関数としての摩擦係数を示す図である。
【図1d】図1dは、実施例3のFAST摩擦試験による時間の関数としての摩擦係数を示す図である。
【図1e】図1eは、実施例4のFAST摩擦試験による時間の関数としての摩擦係数を示す図である。
【図2】図2は、Fe-Mo金属間化合物及び酸化銅(ブレンドA)の重量%として示された、OE-Aベースラインと実施例1〜4の平均摩擦係数を示す図である。
【図3】図3は、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅(ブレンドA)の重量%の関数として示された、OE-Aベースラインと実施例1〜4の平均重量減少によって測定した摩耗率を示す図である。
【図4】図4は、OE-A(下の曲線)、実施例2(真ん中の曲線)と実施例4(上の曲線)のTGA結果を示す図である。
【図5a】図5は、OE-Aベースラインと実施例2のJ2430試験の性能データを示す図である。図5aは、OE-Aベースライン摩擦ライニングのJ2430試験の性能データを示す図である。
【図5b】図5bは、実施例2のJ2430試験の性能データを示す図である。
【図6a】図6は、OE-Aベースライン摩擦ライニングと実施例2のAO4D試験の性能データを示す図である。図6aは、OE-Aベースライン摩擦ライニングのAO4D試験の性能データを示す図である。
【図6b】図6bは、実施例2のAO4D試験の性能データを示す図である。
【図7a】図7は、J2430試験におけるフェードスナッブ(fade snub)後の摩擦層のSEMとEDX画像を示す図である。図7aは、フェードスナッブ後のOE-Aベースラインの摩擦層のSEM画像を示す図である。
【図7b】図7bは、フェードスナッブ後の実施例2の摩擦層のSEM画像を示す図である。
【図7c】図7cは、フェードスナッブ後のOE-Aベースラインと実施例2の摩擦層の化学組成のEDX分析を示す図である。OE-Aベースラインの値を挿入し、暗線で下に示す。
【図8a】図8は、ベースラインOE-B摩擦ライニングの時間を関数とした車輪速度を示す。図8aは、通常条件におけるベースライン摩擦ライニングの時間を関数とした車輪速度を示す。
【図8b】図8bは、6℃、87%相対湿度でMgCl2をディスクに適用したときの、ベースラインOE-B摩擦ライニングの時間を関数とした車輪速度を示す。
【図9a】図9は、OE-B及びLMベースラインサンプルと、実施例5〜8の時間を関数とした摩擦係数を示す図である。図9aは、OE-Bベースラインサンプルの時間を関数とした摩擦係数を示す図である。
【図9b】図9bは、LMベースラインサンプルの時間を関数とした摩擦係数を示す図である。
【図9c】図9cは、実施例5の時間を関数とした摩擦係数を示す図である。
【図9d】図9dは、実施例6の時間を関数とした摩擦係数を示す図である。
【図9e】図9eは、実施例7の時間を関数とした摩擦係数を示す図である。
【図9f】図9fは、実施例8の時間を関数とした摩擦係数を示す図である。
【図10a】図10は、ベースラインOE-BとLMサンプルと、実施例5〜8のJ2430試験の性能データを示す図である。図10aは、OE-Bベースライン摩擦ライニングのJ2430試験の性能データを示す図である。
【図10b】図10bは、LMベースライン摩擦ライニングのJ2430試験の性能データを示す図である。
【図10c】図10cは、実施例5のJ2430試験の性能データを示す図である。
【図10d】図10dは、実施例6のJ2430試験の性能データを示す図である。
【図10e】図10eは、実施例7のJ2430試験の性能データを示す図である。
【図10f】図10fは、実施例8のJ2430試験の性能データを示す図である。
【図11】図11は、OE-BとLMベースラインサンプルと、実施例5〜8の摩擦ライニングの重量%における質量減少と厚さ減少(ローターの%減少)として表したデータを示す。
【図12】図12は、6℃、87%相対湿度で、MgCl2をディスクに適用したときの、OE-BとLMベースラインサンプルと、実施例5〜8のブレーキ時の速度における漸進的変化を比較する図である。
【図13a】図13は、J2430試験後のOE-B摩擦ライニングの摩擦面のSEM画像を示す図である。図13aは、J2430試験後のOE-B摩擦ライニングの摩擦面の後方散乱画像を示す図である。
【図13b】図13bは、J2430試験後のOE-B摩擦ライニングの摩擦面の局所分析画像を示す図である。摩擦は暗灰色に示す高い領域で起きる。
【図14】図14は、J2430試験後のOE-B摩擦ライニングの摩擦層の化学組成を示す図である。
【図15a】図15は、6℃、87%湿度、MgCl2をディスクに適用したときの、摩擦試験後の実施例6と8のSEM画像を示す図である。図15aは、6℃、87%湿度、MgCl2をディスクに適用したときの、摩擦試験後の実施例6の後方散乱SEM画像を示す図である。
【図15b】図15bは、6℃、87%湿度、MgCl2をディスクに適用したときの、摩擦試験後の実施例6の後方散乱SEM画像を示す図である。
【図16a】図16は、6℃、87%湿度、MgCl2をディスクに適用したときの、摩擦試験後の実施例6と8の摩擦層の化学組成を示す図である。図16aは、6℃、87%湿度、MgCl2をディスクに適用したときの、摩擦試験後の実施例6の摩擦層の化学組成を示す図である。
【図16b】図16bは、6℃、87%湿度、MgCl2をディスクに適用したときの、摩擦試験後の実施例8の摩擦層の化学組成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦材料と、Fe-Mo金属間化合物及び酸化銅を含む添加剤とを含む、摩擦ライニング。
【請求項2】
前記添加剤がさらに炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項3】
前記添加剤が、さらに少なくとも約90重量パーセントのFe-Mo金属間化合物を含み、残余が酸化銅である、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項4】
前記添加剤がさらに、約60〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物を含み、残余が酸化銅である、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項5】
前記Fe-Mo金属間化合物と酸化銅の添加剤がさらに、約90〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物と約1〜約10重量パーセントの酸化銅を含む、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項6】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの少なくとも約1総重量パーセントを構成する、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項7】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの約1〜約10総重量パーセントを構成する、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項8】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの約4総重量パーセントを構成する、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項9】
前記添加剤の粒子が約2μm〜約200μmのサイズである、請求項1に記載の摩擦ライニング。
【請求項10】
前記添加剤がさらに、少なくとも約80重量パーセントのFe-Mo金属間化合物、少なくとも約1重量パーセントの酸化銅と、少なくとも約1重量パーセントの炭酸カルシウムを含む、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項11】
前記添加剤がさらに、約50〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物、約1〜約50重量パーセントの酸化銅と、約1〜約10重量パーセントの炭酸カルシウムをさらに含む、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項12】
前記添加剤がさらに、約90重量パーセントのFe-Mo金属間化合物、約5重量パーセントの酸化銅と、約5重量パーセントの炭酸カルシウムを含む、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項13】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの少なくとも約2総重量パーセントを構成する、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項14】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの少なくとも2〜約10総重量パーセントを構成する、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項15】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの約10総重量パーセントを構成する、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項16】
前記添加剤がさらに、前記摩擦ライニングの少なくとも約1.9総重量パーセントを構成する、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項17】
前記添加剤の粒子が、約2μm〜約200μmのサイズである、請求項2に記載の摩擦ライニング。
【請求項18】
前記添加剤の粒子が、約2μm〜約200μmのサイズである、請求項3に記載の摩擦ライニング。
【請求項19】
前記添加剤の粒子が、約2μm〜約200μmのサイズである、請求項11に記載の摩擦ライニング。
【請求項20】
さらに炭素質材料約18重量%を含む、請求項13に記載の摩擦ライニング。
【請求項21】
さらに炭素質材料約17.25〜約9.75重量%を含む、請求項14に記載の摩擦ライニング。
【請求項22】
少なくとも一種の摩擦材料、少なくとも一種の研磨剤、少なくとも一種のフィラー、少なくとも一種のバインダーと、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤を含む、摩擦ライニング。
【請求項23】
少なくとも一種の前記摩擦材料が、金属、金属硫化物、金属酸化物、アラミド繊維、グラファイト、コークス、バーミキュライト、クロマイト、ケブラー及びセラミックからなる群から選択される、請求項22に記載の摩擦ライニング。
【請求項24】
少なくとも一種の前記研磨剤が、ジルコン、珪酸ジルコニウム、アルミナ、マグネシア、酸化鉄、酸化スズ及び石英からなる群から選択される、請求項22に記載の摩擦ライニング。
【請求項25】
少なくとも一種の前記フィラーが、硫酸バリウム、酸化防止剤、炭酸カルシウム、石灰、チタン酸カリウム、ゴム、酸化亜鉛、カシューナッツ殻油及び繊維からなる群から選択される、請求項22に記載の摩擦ライニング。
【請求項26】
少なくとも一種の前記バインダーが、フェノール樹脂及び変性樹脂及びからなる群から選択される、請求項22に記載の摩擦ライニング。
【請求項27】
前記添加剤がさらに、炭酸カルシウムを含む、請求項22に記載の摩擦ライニング。
【請求項28】
少なくとも一種の前記摩擦材料が、金属、金属硫化物、金属酸化物、アラミド繊維、グラファイト、コークス、バーミキュライト、クロマイト、ケブラー及びセラミックからなる群から選択される、請求項27に記載の摩擦ライニング。
【請求項29】
少なくとも一種の前記研磨剤が、ジルコン、珪酸ジルコニウム、アルミナ、マグネシア、酸化鉄、酸化スズ及び石英からなる群から選択される、請求項27に記載の摩擦ライニング。
【請求項30】
少なくとも一種の前記フィラーが、硫酸バリウム、酸化防止剤、炭酸カルシウム、石灰、チタン酸カリウム、ゴム、酸化亜鉛、カシューナッツ殻油及び繊維からなる群から選択される、請求項27に記載の摩擦ライニング。
【請求項31】
少なくとも一種の前記バインダーが、フェノール樹脂及び変性樹脂からなる群から選択される、請求項27に記載の摩擦ライニング。
【請求項32】
少なくとも一種の摩擦材料、少なくとも一種の研磨剤、少なくとも一種のフィラーと少なくとも一種のバインダーを含む摩擦ライニング組成物において、少なくとも一種の摩擦材料の少なくとも一部を、Fe-Mo金属間化合物と酸化銅を含む添加剤で置き換えることを含む改良。
【請求項33】
前記添加剤がさらに炭酸カルシウムを含む、請求項32に記載の摩擦ライニング。
【請求項34】
さらに約6重量%のスチールチップを含み、前記添加剤がさらに約4重量%を構成する、請求項32に記載の摩擦ライニング。
【請求項35】
さらに約0重量%のスチールチップを含み、前記添加剤がさらに約8重量%を構成する、請求項32に記載の摩擦ライニング。
【請求項36】
Fe-Mo金属間化合物と酸化銅との混合物を含む組成物であって、前記混合物がさらに約60〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物を含み、残余が酸化銅である、前記組成物。
【請求項37】
前記混合物の粒子が約2μm〜約200μmのサイズである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
さらに炭酸カルシウムを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
Fe-Mo金属間化合物、酸化銅及び炭酸カルシウムの混合物を含む組成物であって、前記混合物はさらに、約50〜99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物、約1〜約50重量パーセントの酸化銅と、約1〜約10重量パーセントの炭酸カルシウムを含む、前記組成物。
【請求項40】
前記混合物の粒子が、約2μm〜約200μmのサイズである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
潤滑剤と、Fe-Mo金属間化合物及び酸化銅を含む添加剤とを含む、モーターブラシ。
【請求項42】
前記添加剤がさらに炭酸カルシウムを含む、請求項41に記載のモーターブラシ。
【請求項43】
前記潤滑剤がさらに炭素質材料を含む、請求項41に記載のモーターブラシ。
【請求項44】
Fe-Mo金属間化合物と酸化銅の前記添加剤がさらに、約60〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物と約1〜約40重量パーセントの酸化銅を含む、請求項41に記載のモーターブラシ。
【請求項45】
Fe-Mo金属間化合物と酸化銅の前記添加剤がさらに、約90〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物を含み、残余が酸化銅である、請求項41に記載のモーターブラシ。
【請求項46】
前記添加剤がさらに、前記モーターブラシの約1〜約10総重量パーセントを構成する、請求項41に記載のモーターブラシ。
【請求項47】
前記添加剤の粒子が約2μm〜約200μmのサイズである、請求項41に記載のモーターブラシ。
【請求項48】
前記添加剤がさらに、約50〜約99重量パーセントのFe-Mo金属間化合物、約1〜約50重量パーセントの酸化銅と、約1〜約10重量パーセントの炭酸カルシウムを含む、請求項42に記載のモーターブラシ。
【請求項49】
前記添加剤がさらに、前記モーターブラシの約1〜約10総重量パーセントを構成する、請求項42に記載のモーターブラシ。
【請求項50】
前記添加剤の粒子が、約2μm〜約200μmのサイズである、請求項42に記載のモーターブラシ。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【公表番号】特表2008−509232(P2008−509232A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523897(P2007−523897)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/027543
【国際公開番号】WO2006/015363
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506032048)クライマックス・エンジニアード・マテリアルズ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】